JP5466038B2 - 飲食品のメイラード反応抑制方法 - Google Patents

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Description

本発明は、飲食品のメイラード反応抑制方法に関する。
従来より、食品は加熱することにより好ましい香りが発生し、着色が起こることが知られている。これらの反応のメカニズムは未だ完全に解明されていないが、その一つとしてメイラード反応が挙げられる。メイラード反応は、食品中の還元糖とアミノ酸などのアミノ化合物とが反応し褐色物質(メラノイジン)を生成する反応であり、アミノカルボニル反応の一種である。メイラード反応を利用して各種食品が製造されており、例えばパン、ビール、味噌、醤油、チョコレート、コーヒー、乳製品などが挙げられえる。
しかし、メイラード反応は、過剰な加熱、光照射、長期間の保管などにより進み、食品が褐色に着色したり風味の変化などがおこる。過度なメイラード反応は、食品の品質に悪影響を及ぼす場合がありその抑制方法が検討されている。
メイラード反応を抑制する従来技術としては、モノスルフィド化合物を有効成分として含有するメイラード反応阻害剤(特許文献1参照)、サンショウ軟エキス、ウコン抽出液、サフランチンキ、ハッカ軟エキス、ショウガ抽出液、ニンジン抽出液、ハス葉エキス、アカショウマエキス、コレウスフォルスコリエキス、黄杞葉エキス、ヒハツエキス、サンショウ花パウダー、ヒキオコシエキス、シークワーサーエキス、葛根エキス、プーアール茶エキス、甘草エキス、黒米エキス、月見草エキス、グァバ葉エキス、ビワ葉エキス、タマネギ外皮エキス、青花エキス、クワ葉エキス、タラの芽エキス、チョロギエキス、白インゲン豆エキス、羅布麻エキス、クマザサエキス、ニガウリエキス、キクイモエキス、大麦若葉エキス、褐藻類エキス、コンニャク芋エキス、コーヒー豆エキス、ブドウ種子エキス、リンゴエキス、オリーブ葉エキス、コンブエキス、アシタバパウダー、カテキン、キンカン軟エキス、枳実エキス、キンカンエキス、シトラスエキス、ユズパウダーおよび陳皮エキスからなる群から選択される少なくとも一つの活性物質を含むメイラード反応生成物分解剤(特許文献2参照)、乳及び/又は乳製品を含有する飲食品に、ルチンと、青色及び/又は緑色の着色料を添加してなることを特徴とする、加熱処理によっても黄色化や褐変が生じることがなく加熱臭もない風味のすぐれた飲食品(特許文献3参照)などが開示されている。
特開2005−261396号公報 特開2007−119373号公報 特開平5−304887号公報
本発明の目的は、加熱または光に曝される条件下での飲食品のメイラード反応を抑制する方法を提供することである。
本発明者は、上記課題を解決する為に鋭意研究を重ねた結果、飲食品中にトコフェロール及びカテキン類を添加することにより、上記課題を解決すること見出した。
すなわち、本発明は、
1.トコフェロール及びカテキン類を添加することを特徴とする飲食品のメイラード反応抑制方法、
2.更にグリシンを添加することを特徴とする上記1に記載の飲食品のメイラード反応抑制方法、
から成っている。
本発明の方法により、加熱処理した飲食品のメイラード反応、および光の存在下での保管時のメイラード反応を抑制することができる
本発明で用いられるトコフェロールとしては、例えばdl−α−トコフェロール(食品添加物)、d−α−トコフェロール(食品添加物)および抽出トコフェロールなどが挙げられ、好ましくは抽出トコフェロールである。
抽出トコフェロールとしては、植物油が精製される過程で副生する脱臭留出物(例えば脱臭スカム、脱臭スラッジまたはホットウェル油等)から回収されるトコフェロールであれば特に制限はなく、例えば、キャノーラ油、ごま油、米ぬか油、サフラワー油、大豆油、とうもろこし油、なたね油、パーム油、ひまわり油、綿実油及び落花生油等の脱臭留出物から分離・精製して得られる、d−α−、d−β−、d−γ−、d−δ−トコフェロール及びトコフェロールの同族体であるd−α−、d−β−、d−γ−、d−δ−トコトリエノール等を含む混合物が挙げられる。該混合物中の総トコフェロール含有量は約34質量%以上であるのが好ましく、約60質量%以上であるのが特に好ましい。
商業的に販売されているトコフェロールには、上記したトコフェロールに油脂を配合した製品があるが、本発明においては、このような態様のトコフェロールも支障なく用いることができる。また、トコフェロールの水分散性を改善したトコフェロール含有乳化組成物及びその乾燥物をも用いることができる。
トコフェロールとしては、例えば、理研Eオイル600(理研ビタミン社製)、理研ドライEミックスF−20S、理研ドライEミックスSP−T等が商業的に製造・販売されており、本発明ではこれらを用いることができる。
トコフェロールの飲食品への添加量は、飲食品100質量部に対して総トコフェロールに換算した量が約0.0001〜0.5質量部、好ましくは約0.001〜0.05質量部の範囲である。
本発明で用いられるカテキン類は、中国南部を原産地とするツバキ科の植物であるチャ(Camellia sinensis var sinensis,var assamicaなど)の葉およびその加工品(例えば緑茶、ほうじ茶、ウーロン茶、プアール茶、紅茶など)に含まれる植物ポリフェノールであり、具体例としてはエピカテキン、エピカテキンガレート、エピガロカテキン、エピガロカテキンガレート、ガロカテキンガレート、カテキンガレート、テアフラビン、テアフラビンガレートA、テアフラビンガレートB、テアフラビンジガレートなどが挙げられる。本発明で用いられるカテキン類としては、上記成分を含む粗製品、精製品、またこれらを含有する製剤などが挙げられ、いずれも好ましく用いることができる。本発明で用いられるカテキン類の好ましい態様は、例えば上記植物の葉およびその加工品からの水および/またはアルコール抽出液、該抽出液の濃縮液および濃縮乾固物、該濃縮液または濃縮乾固物を賦形剤(例えば、澱粉分解物、乳糖、アラビアガムなど)と共に水溶液とし、該水溶液を常法により噴霧乾燥して得られる粉末などが挙げられる。
カテキン類としては、例えば、サンフェノンBG−3(太陽化学社製)、ポリフェノン70S(三井農林社製)、テアビゴ(DSMニュートリションジャパン社製)等が商業的に製造・販売されており、本発明ではこれらを用いることができる。
カテキン類の飲食品への添加量は、飲食品100質量部に対して約0.0001〜0.1質量部、好ましくは約0.0005〜0.02質量部である。
本発明で用いられるグリシンは、アミノ酸の一種であり、化学合成、発酵による合成あるいはタンパク質を加水分解又はそれより単離されたもの等いずれも使用することができる。
グリシンの飲食品への添加量は、飲食品100質量部に対して約0.0001〜0.5質量部、好ましくは約0.001〜0.05質量部である
本発明でいう飲食品としては、メイラード反応を起こす飲食品であれば特に制限はなく、例えば飲料や加工食品、菓子類などが挙げられる。
上記飲料としては、例えば、炭酸飲料、果実飲料、コーヒー飲料、茶系飲料(麦茶飲料、ブレンド茶飲料など)、豆乳類(調整豆乳、豆乳飲料など)、野菜飲料、スポーツ飲料、乳性飲料、ココア飲料、栄養飲料、機能性飲料、ゼリー飲料、乳飲料、アルコール飲料などが挙げられる。
上記加工食品としては、例えば、調味料(味噌、醤油、風味調味料、ドレッシング類、つゆ、たれ類など)、調理品(レトルトカレー、インスタントシチュー、まぜご飯の素、米飯加工品など)、スープ(調理用スープ、インスタントスープなど)、缶詰、練り製品(竹輪、揚げかまぼこなど)、漬物・佃煮、惣菜類(煮豆、中華惣菜、和惣菜、洋惣菜など)、農産乾物(切り干し大根、かんぴょうなど)、加工水産(煮干し、塩蔵魚介類など)などが挙げられる。
上記菓子類としては、例えば、ビスケット・クッキー(ビスケット、クッキー、クラッカーなど)、米菓(煎餅、あられ、おかきなど)、スナック(ポテトチップス、えびせんなど)、半生菓子(どら焼、鯛焼き、蒸しケーキ、カステラなど)、焼菓子・油菓子(かりん糖、揚げ芋せんなど)、デザート類(プリン、ババロアなど)、珍味(農産珍味、水産珍味、畜産珍味など)、シリアル類などが挙げられる。
本発明でトコフェロール及びカテキン類、又はトコフェロール、カテキン類及びグリシンを飲食品に添加する方法は、各有効成分が飲食品に均一に混合されれば特に制限はなく、例えば、有効成分を別々に飲食品に添加しても良く、有効成分の混合物を作成した後に混合物を飲食品に添加しても良い。
上記した有効成分の混合物の形態としては、例えば、有効成分を含有する油脂組成物、有効成分を含有する粉末状組成物、有効成分を含有する水中油型乳化組成物、有効成分を含有する可溶化組成物、有効成分を含有する水中油型乳化組成物の乾燥物(粉末状、顆粒状、カプセル状など)及び有効成分を含有する可溶化組成物の乾燥物(粉末状、顆粒状、カプセル状など)などの形態が挙げられる。好ましくは、有効成分を含有する粉末状組成物、有効成分を含有する水中油型乳化組成物、有効成分を含有する水中油型乳化組成物の乾燥物などが挙げられる。
以下に本発明を実施例で説明するが、これは本発明を単に説明するだけのものであって、本発明を限定するものではない。
<乳飲料の作製1>
(1)原材料
牛乳(商品名:コープ牛乳;生活協同組合製)
トコフェロール製剤(商品名:理研ドライEミックスSP−T;理研ビタミン社製 総トコフェロール含量=20質量%)
カテキン類(商品名:サンフェノンBG−3;太陽化学社製 カテキン含量=95.2質量%)
グリシン(商品名:グリシン;キリン協和フーズ社製)
(2)配合
上記原材料を用いて作製した乳飲料の配合を表1に示した。
Figure 0005466038
(3)乳飲料の作製方法
表1に示した配合に基づいて各原材料を容量100mlの無色透明ガラス瓶に加えて栓をし、瓶を軽く振倒して内容物を混合した後に、95℃、10分間の加熱を行った。その後氷水中で約20℃まで冷却して乳製品(実施例品1〜5、比較例品1〜6)を得た。また、対照としてトコフェロール、グリシン及びカテキン類を添加せず、加熱しない乳製品(対象品1)を得た。尚、各原材料の1回の混合量は表1に記載の量である。
<乳製品の評価>
乳製品(実施例品1〜5、比較例品1〜6、対象品1)評価は、官能評価及びメイラード反応の指標の1つであるタンパク質・カルボニル基複合体含量測定を下記方法で行った。
(1)官能評価方法
得られた乳製品(実施例品1〜5、比較例品1〜6、対象品1)の風味についての官能評価を、下記表2に示す評価基準に従い10名のパネラーでおこなった。結果はそれぞれ10名の評価点の平均値として求め、下記基準にて記号化した。結果を表3に示す。
−記号化−
◎:非常に良好 評点の平均値 3.5以上
○:良好 評点の平均値 2.5〜3.5未満
△:やや悪い 評点の平均値 1.5〜2.5未満
×:悪い 評点の平均値 1.5未満
Figure 0005466038
(2)タンパク質・カルボニル基複合体含量の測定方法
タンパク質・カルボニル基複合体含量の測定方法は、下記文献1に記載されている方法に準じて、カルボニル基複合体との反応試薬である2,4−ジニトロフェニルヒドラジン(DNPH)を用いる吸光度を測定する方法で行った。対象品1のタンパク質・カルボニル基複合体含量を100とした際の各乳製品(実施例品1〜5、比較例品1〜6)のタンパク質・カルボニル基複合体含量比(%)を算出した。結果を表3に示す。尚、タンパク質・カルボニル基複合体含量比(%)の数値が大きい程タンパク質と糖質の反応が進み、メイラード反応が進行していることを示す。
※文献1:The Journal of Biological Chemistry,Vol.262,No.12,p5488(1987)
Figure 0005466038
結果より、トコフェロールとカテキン類、又はトコフェロールとカテキン類及びグリシンを添加し、加熱処理した乳飲料(実施例品1〜5)は、風味が良い評価であり、タンパク質・カルボニル基複合体量比(%)も対象品と比較して約1.2〜1.5倍と低い数値であった。
一方比較例品は、風味が悪く、またタンパク質・カルボニル基複合体量比(%)も対象品と比較して約1.6〜2.1倍と高い数値であった。
<乳飲料の作製2>
(1)乳飲料の作製方法
<乳飲料の作製1>に記載の原材料を用いて表4に示した配合に基づいて各原材料を容量100mlの無色透明ガラス瓶に加えて栓をし、瓶を軽く振倒して内容物を混合した後に、オートクレーブを用いて105℃、1分間の加熱殺菌処理を行い、その後氷水中で約20℃まで冷却して乳製品(実施例品6〜10、比較例品7〜12)を得た。また、対照としてトコフェロール、グリシン及びカテキン類を添加しない以外は同様の操作を行い乳製品(対象品2)を得た。
尚、各乳製品の1回の作製量は表1に記載の量である。
Figure 0005466038
<乳製品の評価>
得られた乳製品(実施例品6〜10、比較例品7〜12)は、約10℃、約2000Luxの蛍光灯照射下で7日間保管した。乳製品(対象品2)は、5℃暗所にて7日保管した。保管後の乳製品評価は、官能評価及びタンパク質・カルボニル基複合体含量測定を下記方法で行った。
(1)官能評価方法
乳製品(実施例品6〜19、比較例品7〜12、対象品2)の官能評価は、<乳飲料の作製1>に記載の官能評価方法と同様な方法で行った。結果を表5に示す。
(2)タンパク質・カルボニル基複合体含量の測定方法
タンパク質・カルボニル基複合体含量の測定方法は、<乳飲料の作製1>に記載のタンパク質・カルボニル基複合体含有量の測定と同様な方法で行った。対象品2のタンパク質・カルボニル基複合体含量を100とした際の各乳製品(実施例品6〜19、比較例品7〜12)のタンパク質・カルボニル基複合体含量比(%)を算出した。結果を表5に示す。
Figure 0005466038
結果より、トコフェロールとカテキン類、又はトコフェロールとカテキン類及びグリシンを添加し、10℃で光照射しながら7日間保管した乳飲料(実施例品6〜10)は、風味が良い評価であり、タンパク質・カルボニル基複合体量比(%)も対象品と比較して約1.1〜1.3倍と低い数値であった。
一方比較例品は、風味が悪く、またタンパク質・カルボニル基複合体量比(%)も対象品と比較して約1.3〜1.6倍と高い数値であった。

Claims (1)

  1. トコフェロールカテキン類及びグリシンを添加することを特徴とする飲食品のメイラード反応抑制方法。
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