JP5465455B2 - 凹凸部材の製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、磁気記録媒体に情報を磁気転写する磁気転写用マスター担体、ナノインプリントに用いられるモールド構造体、等の凹凸部材の製造方法、及び該製造方法により製造された凹凸部材、並びに、前記磁気転写用マスター担体を用いた磁気転写方法、及び該磁気転写方法によって作製された垂直磁気記録媒体に関する。
情報を高密度で記録可能な磁気記録媒体として、垂直磁気記録媒体が知られている。この垂直磁気記録媒体の情報記録領域は、狭トラックで構成されている。そのため、垂直磁気記録媒体では、狭いトラック幅において正確に磁気ヘッドを走査し、高いS/N比で信号を再生するためのトラッキングサーボ技術が重要となる。このトラッキングサーボを行うためには、トラッキング用のサーボ信号、アドレス情報信号、再生クロック信号等のサーボ情報を、所定間隔で垂直磁気記録媒体に、いわゆるプリフォーマットとして記録しておく必要がある。
垂直磁気記録媒体に、サーボ情報をプリフォーマットする方法としては、例えば、サーボ情報に対応した、磁性層を含むパターンが形成された磁気転写用マスター担体を、該磁気記録媒体に密着させた状態で記録用磁界(転写磁界)を印加し、磁気転写用マスター担体のパターンを磁気記録媒体に磁気転写する方法がある。
この方法において、該磁気記録媒体に磁気転写用マスター担体を密着させた状態で転写磁界が印加されると、磁束が磁気転写用マスター担体の磁化状態に基づきパターン上の磁性層に吸収され、磁界がパターンの凹凸形状に対応し強められる。このパターン状に強められた磁界によって、磁気記録媒体の所定箇所のみが磁化される。よって、これまでは高飽和磁化を有する磁性材料を用いた磁性層を有する磁気転写用マスター担体が用いられてきた。
これまでに磁気転写によるノイズ成分が少なく転写特性に優れた磁気転写用マスター担体の製造方法として、磁性層形成工程と、反転板形成工程と、剥離工程とを備えた磁気転写用マスターディスクの製造方法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
前記特許文献1の製造方法では、反転板形成工程が電鋳により行われているが、例えば、電鋳液としてスルファミン酸ニッケル溶液を用いると、磁性層中の鉄やコバルトなどが電鋳液に溶解してしまい、磁気転写用マスター担体における磁性層の厚みが減少し、その結果、転写特性が悪化することがあり、問題となっている。
したがって、磁気転写用マスター担体の磁性層の厚みの減少を抑制することができ、磁気転写によるノイズ成分が少なく転写特性に優れた磁気転写用マスター担体を製造することができる方法が望まれているのが現状である。
また、近年、高速性やコストに優れたハードディスクドライブが、ストレージ機器の主力として、携帯電話、小型音響機器や、ビデオカメラなどのポータブル機器に搭載され始め、より一層の小型大容量化という要求に応えるために、記録密度を向上させる技術が求められている。
ハードディスクドライブの記録密度を高めるためには、磁気記録媒体の高性能化、及び磁気ヘッド幅の狭小化という手法が従来より用いられてきたが、データトラック間隔を狭めることにより、隣接トラック間の磁気の影響(クロストーク)や、熱揺らぎの影響が無視できなくなり、磁気ヘッドの狭小化などによる面記録密度の向上には限界があった。
そこで、クロストークによるノイズを解決する手段として、ディスクリートトラックメディア(DTM)と呼ばれる形態の磁気記録媒体が提案されている。
ディスクリートトラックメディアは、隣接するトラック間に非磁性のガードバンド領域を設けて個々のトラックを磁気的に分離したディスクリート構造とすることにより、隣接トラック間の磁気的干渉を低減したものである。
ディスクリートトラックメディアを作製するためには、サーボパターン及びグルーブパターンをかたどったナノインプリント用モールド構造体が必要となり、近年の高密度化の要求に伴い、微細かつ高アスペクト比のモールド構造体が必要となる。
ここで、ナノインプリント用モールド構造体は、例えば、図16Aに示すように、基板100(Si層101上にSiO層102が形成された基板)上にレジストパターン103を形成する電子線(EB)リソグラフィー工程と、図16Bに示すように、SiO層102をレジストパターン103をマスクとしてエッチングするエッチング工程と、図16Cに示すように、エッチング工程で形成されたSiO層102の凹部104にNi層105を堆積するスパッタ工程と、図16Dに示すように、Ni層105が堆積された基板100に対して、電鋳液(例えば、スルファミン酸Ni溶液)を用いて電鋳する電鋳工程と、図16Eに示すように、Ni層105を有するモールド基材106を基板100から剥離する剥離工程とを含むモールド構造体の製造方法により製造される。
しかしながら、凹部にNi層を堆積するスパッタ工程において、凹部のアスペクト比が高いと、Ni層の被覆性が低下すると共に、Ni層が電鋳液に僅かであるが溶解することにより、凹部の底部近傍でNi層が十分に被覆されていない部分(図17の[110]参照)が生じ、電鋳工程において、ス(構造内部にできる隙間や空洞)(図18の[120]参照)が生じるという問題があった。
また、Ni層の代わりに、他の金属(Pt、Ru、Au、Cu)からなる層を堆積した場合は、被覆性を向上し、電鋳液に対する溶解を防止することができるが、基板との密着性が低く、剥離工程において皺が生じるという問題や、密着力が強すぎて密着力にパターンの強度がまけてしまい、複版のパターンが原盤側に残ってしまうという問題があった。
特開2006−216181号公報
本発明は、従来における前記諸問題を解決し、以下の目的を達成することを課題とする。即ち、本発明は、凹凸部材の被覆層の厚みの減少を抑制することができる凹凸部材を製造することができる凹凸部材の製造方法、及び該製造方法により製造された凹凸部材、並びに、該凹凸部材を用いた磁気転写方法、及び該磁気転写方法によって作製された垂直磁気記録媒体を提供することを目的とする。
また、本発明は、磁気転写用マスター担体の磁性層の厚みの減少を抑制することができ、磁気転写によるノイズ成分が少なく転写特性に優れた磁気転写用マスター担体を製造することができる磁気転写用マスター担体の製造方法、及び該製造方法により製造された磁気転写用マスター担体、並びに、該磁気転写用マスター担体を用いた磁気転写方法、及び該磁気転写方法によって作製された垂直磁気記録媒体を提供することを目的とする。
さらに、本発明は、モールド構造体の被覆層の厚みの減少を抑制することができるモールド構造体を製造することができるモールド構造体の製造方法、及び該製造方法により製造されたモールド構造体を提供することを目的とする。
本発明者らは、前記課題を解決するために鋭意検討を行った結果、以下のような知見を得た。即ち、少なくとも凹凸部材(磁気転写用マスター担体、モールド構造体)作製用原盤の凹部に位置する被覆層(磁性層)の表面に、イオン化傾向が前記被覆層(磁性層)に含まれる金属元素のイオン化傾向よりも小さい金属元素を含むバリア層を形成し、前記バリア層の表面に金属を電着し、基材(マスター基材、モールド基材)を形成することにより、前記磁性層の厚みの減少が抑制された凹凸部材(磁気転写用マスター担体、モールド構造体)を製造することができるという知見である。
さらに、本発明者らは、少なくとも磁気転写用マスター担体作製用原盤の凹部に位置する磁性層の表面に、イオン化傾向が前記磁性層に含まれる金属元素のイオン化傾向よりも小さい金属元素を含むバリア層を形成し、前記バリア層の表面に金属を電着し、マスター基材を形成することにより、磁気転写によるノイズ成分が少なく転写特性に優れた磁気転写用マスター担体を製造することができるという知見を得た。
前記課題を解決するための手段としては以下の通りである。即ち、
<1> 基材の表面に、該基材を基準として複数の凸部が配列されたことによって形成された凹凸パターンを有する凹凸部材の製造方法であって、凹凸パターンが形成された凹凸部材作製用原盤の少なくとも凹部の表面に被覆層を形成する被覆層形成工程と、少なくとも凹凸部材作製用原盤の凹部に位置する前記被覆層の表面にバリア層を形成するバリア層形成工程と、少なくとも凹部に被覆層と、バリア層とを有する凹凸部材作製用原盤の表面に金属を電着することにより、基材を形成する基材形成工程と、少なくとも凸部の表面に前記バリア層と、前記被覆層とを有する基材を凹凸部材作製用原盤から剥離する剥離工程とを含み、かつ、前記バリア層に含まれる金属元素のイオン化傾向が、前記被覆層に含まれる金属元素のイオン化傾向よりも小さいことを特徴とする凹凸部材の製造方法である。
<2> 基材がマスター基材であり、凹凸部材が磁気転写用マスター担体であり、被覆層が磁性層である前記<1>に記載の凹凸部材の製造方法である。
<3> 被覆層形成工程において、厚みが10nm以上の磁性層を形成する前記<2>に記載の凹凸部材の製造方法である。
<4> バリア層形成工程において、厚みが4nm以上20nm以下のバリア層を形成する前記<2>から<3>のいずれかに記載の凹凸部材の製造方法である。
<5> 磁性層に含まれる金属元素が、Fe、及びCoの少なくともいずれかであり、かつ、バリア層に含まれる金属元素が、Ni、Cu、Ru、Ag、Pt、及びAuの少なくともいずれかである前記<2>から<4>のいずれかに記載の凹凸部材の製造方法である。
<6> 基材がモールド基材であり、凹凸部材がモールド構造体である前記<1>に記載の凹凸部材の製造方法である。
<7> バリア層形成工程において、厚みが3nm以上10nm以下のバリア層を形成する前記<6>に記載の凹凸部材の製造方法である。
<8> 被覆層に含まれる金属元素が、Niであり、かつ、バリア層に含まれる金属元素が、Cu、Ru、Pt、及びAuの少なくともいずれかである前記<6>から<7>のいずれかに記載の凹凸部材の製造方法である。
<9> 前記<1>から<8>のいずれかに記載の凹凸部材の製造方法により製造されたことを特徴とする凹凸部材である。
<10> 基材の表面に、該基材を基準として複数の凸部が配列されたことによって形成された凹凸パターンを有する凹凸部材であって、少なくとも前記基材の凸部の表面にバリア層と、被覆層とを有し、かつ、前記バリア層に含まれる金属元素のイオン化傾向が、前記磁性層に含まれる金属元素のイオン化傾向よりも小さいことを特徴とする凹凸部材である。
<11> 基材がマスター基材であり、凹凸部材が磁気転写用マスター担体であり、被覆層が磁性層である前記<10>に記載の凹凸部材である。
<12> 磁性層の厚みが、10nm以上である前記<11>に記載の凹凸部材である。
<13> バリア層の厚みが、4nm以上20nm以下である前記<11>から<12>のいずれかに記載の凹凸部材である。
<14> 磁性層に含まれる金属元素が、Fe、及びCoの少なくともいずれかであり、かつ、バリア層に含まれる金属元素が、Ni、Cu、Ru、Ag、Pt、及びAuの少なくともいずれかである前記<11>から<13>のいずれかに記載の凹凸部材である。
<15> 少なくともマスター基材の凸部の表面に、バリア層と、磁性層とがこの順に積層されてなる前記<11>から<14>のいずれかに記載の凹凸部材である。
<16> 基材がモールド基材であり、凹凸部材がモールド構造体である前記<10>に記載の凹凸部材である。
<17> バリア層形成工程において、厚みが3nm以上10nm以下のバリア層を形成する前記<16>に記載の凹凸部材である。
<18> 被覆層に含まれる金属元素が、Niであり、かつ、バリア層に含まれる金属元素が、Cu、Ru、Pt、及びAuの少なくともいずれかである前記<16>から<17>のいずれかに記載の凹凸部材である。
<19> 磁界を印加して、垂直磁気記録媒体を初期磁化させる初期磁化工程と、前記初期磁化された垂直磁気記録媒体に対して、前記<11>から<15>のいずれかに記載の凹凸部材を密着させる密着工程と、前記垂直磁気記録媒体と、前記凹凸部材とを密着させた状態で、前記初期磁化において印加した磁界と逆方向の磁界を印加して、前記垂直磁気記録媒体に磁気情報を転写する磁気転写工程と、を含むことを特徴とする磁気転写方法である。
<20> 前記<19>に記載の磁気転写方法を用いて作製されたことを特徴とする垂直磁気記録媒体である。
本発明によると、従来における前記諸問題を解決し、前記目的を達成することができ、
凹凸部材の被覆層の厚みの減少を抑制することができる凹凸部材を製造することができる凹凸部材の製造方法、及び該製造方法により製造された凹凸部材、並びに、該凹凸部材を用いた磁気転写方法、及び該磁気転写方法によって作製された垂直磁気記録媒体を提供することができる。
また、本発明は、磁気転写用マスター担体の磁性層の厚みの減少を抑制することができ、磁気転写によるノイズ成分が少なく転写特性に優れた磁気転写用マスター担体を製造することができる磁気転写用マスター担体の製造方法、及び該製造方法により製造された磁気転写用マスター担体、並びに、該磁気転写用マスター担体を用いた磁気転写方法、及び該磁気転写方法によって作製された垂直磁気記録媒体を提供することができる。
さらに、本発明は、モールド構造体の被覆層の厚みの減少を抑制することができるモールド構造体を製造することができるモールド構造体の製造方法、及び該製造方法により製造されたモールド構造体を提供することができる。
図1Aは、一実施形態に係る磁気転写用マスター担体作製用原盤の製造方法の説明図である。 図1Bは、一実施形態に係る磁気転写用マスター担体作製用原盤の製造方法の説明図である。 図1Cは、一実施形態に係る磁気転写用マスター担体作製用原盤の製造方法の説明図である。 図1Dは、一実施形態に係る磁気転写用マスター担体作製用原盤の製造方法の説明図である。 図1Eは、一実施形態に係る磁気転写用マスター担体作製用原盤の製造方法の説明図である。 図1Fは、一実施形態に係る磁気転写用マスター担体作製用原盤の製造方法の説明図である。 図2は、一実施形態に係る磁気転写用マスター担体作製用原盤と、磁性層の説明図である。 図3は、一実施形態に係る磁気転写用マスター担体作製用原盤と、磁性層と、バリア層の説明図である。 図4は、一実施形態に係る磁気転写用マスター担体作製用原盤と、磁性層と、バリア層と、金属板(マスター基材となるもの)の説明図である。 図5は、一実施形態に係る磁気転写用マスター担体の部分断面図である。 図6は、磁気転写用マスター担体の上面図である。 図7Aは、垂直磁気記録の磁気転写方法の工程を示す説明図である。 図7Bは、垂直磁気記録の磁気転写方法の工程を示す説明図である。 図7Cは、垂直磁気記録の磁気転写方法の工程を示す説明図である。 図8は、スレーブディスクの断面を示す説明図である。 図9は、初期磁化工程後の磁性層(記録層)の磁化方向を示した説明図である。 図10は、磁気転写工程を示す説明図である。 図11は、磁気転写工程に用いる磁気印加装置の概略構成図である。 図12は、磁気転写工程後の磁性層(記録層)の磁化方向を示した説明図である。 図13は、試験例1のスパッタ深さに対するSiとNiとの組成比の変化のグラフである。 図14は、磁気転写用マスター担体作製用原盤のアスペクト比の説明図である。 図15は、バリア層材料としてNiを用いた場合の各電力における成膜圧力と膜密度の関係の一例を示すグラフである。 図16Aは、従来のモールド構造体の作製方法を示す図である(その1)。 図16Bは、従来のモールド構造体の作製方法を示す図である(その2)。 図16Cは、従来のモールド構造体の作製方法を示す図である(その3)。 図16Dは、従来のモールド構造体の作製方法を示す図である(その4)。 図16Eは、従来のモールド構造体の作製方法を示す図である(その5)。 図17は、モールド構造体の作製において、被覆される被覆層を示す図である。 図18は、従来のモールド構造体の作製において形成されるス(構造内部にできる隙間や空洞)を説明するための図である。 図19は、モールド構造体作製用原盤のアスペクト比の説明図である。 図20は、モールド構造体の作製において、被覆される被覆層を示す図である。 図21は、モールド構造体の作製において、形成されるバリア層を示す図である。 図22は、一実施形態に係るモールド構造体作製用原盤と、被覆層と、バリア層と、金属板(モールド基材となるもの)の説明図である。 図23は、一実施形態に係るモールド構造体の部分断面図である。
(凹凸部材の製造方法、及び凹凸部材)
本発明の凹凸部材の製造方法は、基材の表面に、該基材を基準として複数の凸部が配列されたことによって形成された凹凸パターンを有する凹凸部材の製造方法であって、被覆層形成工程と、バリア層形成工程と、基材形成工程と、剥離工程とを含み、更に必要に応じてその他の工程を含んでなる。
本発明の凹凸部材は、基材の表面に、該基材を基準として複数の凸部が配列されたことによって形成された凹凸パターンを有する凹凸部材であって、少なくとも前記基材の凸部の表面にバリア層と、被覆層とを有し、更に必要に応じてその他の層を有してなる。
以下に、本発明の一実施形態に係る、磁気転写用マスター担体の製造方法、及び磁気転写用マスター担体について説明する。
<磁気転写用マスター担体の製造方法、及び磁気転写用マスター担体>
前記磁気転写用マスター担体の製造方法は、マスター基材の表面に、該マスター基材を基準として複数の凸部が配列されたことによって形成された凹凸パターンを有する磁気転写用マスター担体の製造方法であって、磁性層形成工程と、バリア層形成工程と、マスター基材形成工程と、剥離工程とを少なくとも含み、更に必要に応じてその他の工程を含んでなる。
前記磁気転写用マスター担体は、マスター基材の表面に、該マスター基材を基準として複数の凸部が配列されたことによって形成された凹凸パターンを有する磁気転写用マスター担体であって、少なくとも前記マスター基材の凸部の表面にバリア層と、磁性層とを有し、更に必要に応じてその他の層を有してなる。
前記磁気転写用マスター担体は、前記磁気転写用マスター担体の製造方法によって、好適に製造することができる。
<磁性層形成工程、及び磁性層>
前記磁性層形成工程は、凹凸パターンが形成された磁気転写用マスター担体作製用原盤の少なくとも凹部の表面に磁性層を形成する工程である。
−磁気転写用マスター担体作製用原盤−
前記凹凸パターンが形成された磁気転写用マスター担体作製用原盤の製造方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。前記磁気転写用マスター担体作製用原盤の製造方法の一実施形態を図1Aから図1Fに基づいて説明する。
図1Aに示されるように、表面が平滑なシリコンウエハーである原板(Si基板)30を用意し、この原板30の上に、電子線レジスト液をスピンコート法等により塗布して、レジスト層32を形成し(図1B参照)、ベーキング処理(プレベーク)を行う。
次いで、高精度な回転ステージ又はX−Yステージを備えた不図示の電子ビーム露光装置のステージ上に原板30をセットし、原板30を回転させながら、サーボ信号に対応して変調した電子ビームを照射し、レジスト層32の略全面に所定のパターン33、例えば各トラックに回転中心から半径方向に線状に延びるサーボ信号に相当するパターンを円周上の各フレームに対応する部分に描画露光(電子線描画)する(図1C参照)。
次いで、図1Dに示されるように、レジスト層32を現像処理し、露光(描画)部分を除去して、残ったレジスト層32による所望の厚みの被覆層を形成する。この被覆層が次工程(エッチング工程)のマスクとなる。なお、基板30上に塗布されるレジストはポジ型、ネガ型のどちらでも使用可能であるが、ポジ型とネガ型では、露光(描画)パターンが反転することになる。この現像処理の後には、レジスト層32と原板30との密着力を高めるためにベーキング処理(ポストベーク)を行う。
次いで、図1Eに示されるように、レジスト層32の開口部より原板30を表面より所定深さだけ除去(エッチング)する。このエッチングにおいては、アンダーカット(サイドエッチ)を最小にすべく、異方性のエッチングが望ましい。このような、異方性のエッチングとしては、反応性イオンエッチング(RIE;Reactive Ion Etching)が好ましく採用できる。
次いで、図1Fに示されるように、レジスト層32を除去する。レジスト層32の除去方法は、乾式法としてアッシングが採用でき、湿式法として剥離液による除去法が採用できる。以上のアッシング工程により、所望の凹凸状パターンの反転型が形成された磁気転写用マスター担体作製用原盤36が作製される。
前記磁気転写用マスター担体作製用原盤の凸部の高さ(H、図14の[H])と、凹部の幅(W、図14の[W])とのアスペクト比(H/W)としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、1.5より大きく2.5以下が好ましく、1.5より大きく2以下がより好ましい。
前記アスペクト比(H/W)が、2.5を超えると、剥離不良(剥離が難しくなる)を起こすことがあり、1.5以下であると、内周での転写信号の出力不足や、アドレスエラーの増加を引き起こすおそれがある。
前記アスペクト比(H/W)の測定方法としては、例えば、FIB(SIIナノテクノロジー社製)でマスターより切片を切り出し、TEM(日立ハイテクノロジーズ社製)にて形状観察する方法が挙げられる。
−磁性層−
前記磁性層は、前記凹凸パターンが形成された磁気転写用マスター担体作製用原盤の少なくとも凹部の表面に形成する(図2の[38]参照)。
前記磁性層38を形成する材料(磁性層材料)としては、後述するバリア層を形成する材料(バリア層材料)に含まれる金属元素のイオン化傾向よりも、イオン化傾向が大きい金属元素を含有していれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、Fe、Co、Pt、Cr、Ni、及びPdなどのうち、少なくとも1つを含有する金属、合金、及び化合物などが挙げられる。
中でも、Fe、及びCoの少なくともいずれかを主成分として含有するものが好ましく、FeとCoとからなる合金(FeCo)であることが特に好ましい。FeCoからなる磁性層を備えた磁気転写用マスター担体は、FeCoが軟磁性であるため、残留磁化が少ない点で有利である。
前記磁性層38の形成方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、前記磁性層の材料のターゲットを用いて、スパッタリングにより形成することができる。
前記磁性層の材料として、FeCoを用いる場合、前記磁性層の組成は、主として、前記磁性層形成時のスパッタ圧(力)、Fe濃度で制御することができる。
前記スパッタ圧(力)としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、0.01Pa〜50Paが好ましく、0.01Pa〜10Paがより好ましい。 前記Fe濃度としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、65原子%〜75原子%が好ましく、70原子%がより好ましい。
また、スパッタリングで磁性層を形成する際に使用するスパッタガスとしては、一般的なアルゴン(Ar)ガスが使用できるが、その他の希ガスを使用してもよい。
また、スパッタリングで磁性層を形成する際の投入電力としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、0.6W/cm〜16.0W/cmが好ましく、3.0W/cm〜10.0W/cmがより好ましい。
前記磁性層の厚みとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、5nm〜60nmが好ましく、10nm〜50nmがより好ましく、20nm〜40nmが特に好ましい。
前記磁性層の厚みが、5nm未満であると、SNR(シグナル/ノイズ比)が低下することがあり、60nmを超えると、内周部で剥離不良を引き起こすことがある。一方、前記磁性層の厚みが、前記特に好ましい範囲内であると、剥離の点と、信号品質の点で有利である。
前記磁性層の厚みは、例えば、Si基板上にカプトンテープを貼り、剥がした段差を触針式膜厚計(SLOAN社製)で5点確認し、その平均値とすることができる。
<バリア層形成工程、及びバリア層>
前記バリア層形成工程は、少なくとも磁気転写用マスター担体作製用原盤の凹部に位置する前記磁性層の表面にバリア層を形成する工程である。
−バリア層−
前記バリア層は、少なくとも磁気転写用マスター担体作製用原盤の凹部に位置する前記磁性層の表面に形成する(図3の[71]参照)。
前記バリア層71を形成する材料(バリア層材料)としては、上述した磁性層を形成する材料(磁性層材料)に含まれる金属元素のイオン化傾向よりも、イオン化傾向が小さい金属元素を含有していれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、Ni、Cu、Ru、Ag、Pt、及びAuなどのうち、少なくとも1つを含有する金属、合金、及び化合物などが挙げられる。
前記磁性層材料がFe、Coであった場合において、前記バリア層材料としては、イオン化傾向がより小さいものが好ましい。前記バリア層材料のイオン化傾向の順序は、Ni>Cu>Ru>Ag>Pt>Auとなる。
また、前記バリア層材料としてNiを用いると、スパッタが行いやすく、電鋳において、電鋳層との相性が良くバリア層の形成性の点で好ましい。
前記バリア層71の形成方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、PVD(Physical Vapour Deposition)、CVD(Chemical Vapour Deposition)、スパッタリング、イオンプレーティングなどの各種の金属成膜法などが挙げられる。
前記スパッタリングにおけるスパッタ圧(力)などは、上述の磁性層の形成方法におけるスパッタリングと同様に行うことができる。
前記バリア層は、緻密な膜であることが好ましい。
前記緻密な膜とは、より膜密度の高い膜のことをいう。
前記緻密な膜を形成する方法としては、例えば、スパッタリングの場合、装置によって異なるが、高電圧(例えば、3.0W/cm以上が好ましい)、低ガス圧(例えば、5Pa以下が好ましい)で形成する方法が挙げられる。
前記緻密な膜であることを確認する方法としては、例えば、X線全反射法により測定することができる。
例えば、Niを用いた場合、膜密度が7(g/cm)以上であれば、緻密な膜であるということができる。図15に各電力における成膜圧力と膜密度の関係の一例を示す。
前記バリア層の厚みとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。中でも、前記磁気転写用マスター担体作製用原盤の凹部に位置する磁性層の表面におけるバリア層の厚みが、4nm〜20nmが好ましく、4nm〜10nmがより好ましく、4nm〜8nmが特に好ましい。
前記磁気転写用マスター担体作製用原盤の凹部に位置する磁性層の表面におけるバリア層の厚みが、4nm未満であると、バリア層として機能せず、磁性層が溶解してしまうことがあり、20nmを超えると、内周部でマスター凸部にス(構造内部にできる隙間や空洞)が発生し、剥離時の剥離不良の問題を起こすおそれがある。一方、前記バリア層の厚みが、前記特に好ましい範囲内であると、バリア層としてしっかりと機能し、パターン形成性の点(剥離不良を生じない)でも有利である。
前記バリア層の厚みは、例えば、Si基板上にカプトンテープを貼り、剥がした段差を触針式膜厚計(SLOAN社製)で5点確認し、その平均値とすることができる。
<マスター基材形成工程、及びマスター基材>
前記マスター基材形成工程は、少なくとも凹部に磁性層と、バリア層とを有する磁気転写用マスター担体作製用原盤の表面に金属を電着することにより、マスター基材を形成する工程である。
−マスター基材−
前記マスター基材としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ニッケル、アルミニウムなどの金属など公知の材料が挙げられる。
前記マスター基材の形成は、図4に示されるように、磁気転写用マスター担体作製用原盤36の表面に、電鋳により所望の厚みの金属による金属板40(マスター基材となるもの)を積層することにより形成される。
前記マスター基材形成工程は、電鋳装置の電解液中に磁気転写用マスター担体作製用原盤36を浸し、磁気転写用マスター担体作製用原盤36を陽極とし、陰極との間に通電することにより行われるが、このときの電解液の濃度、pH、電流のかけ方等は、積層された金属板40に歪みのない最適条件で実施されることが求められる。
<剥離工程、及び磁気転写用マスター担体>
前記剥離工程は、少なくとも凸部の表面に前記バリア層と、前記磁性層とを有するマスター基材を磁気転写用マスター担体作製用原盤から剥離する工程である。
前記剥離工程により、少なくとも前記マスター基材の凸部の表面にバリア層と、磁性層とを有する磁気転写用マスター担体を得ることができる。
前記磁気転写用マスター担体は、前記マスター基材の表面にバリア層と、磁性層とがこの順に積層されてなることが好ましい。
−剥離−
前記マスター基材形成工程で形成された、金属板40(マスター基材となるもの)の積層された磁気転写用マスター担体作製用原盤36を電鋳装置の電解液から取り出し、剥離槽(図示略)内の純水に浸す。次いで、剥離槽内において、金属板40を磁気転写用マスター担体作製用原盤36から剥離し、図5に示すような、磁気転写用マスター担体作製用原盤36から反転した凹凸パターンを有する磁気転写用マスター担体42を得ることができる。
−磁気転写用マスター担体−
図5は、磁気転写用マスター担体42の部分断面図である。前記磁気転写用マスター担体42は、マスター基材40と、該基材40の表面上に形成されたバリア層71と、該バリア層の表面上に形成された磁性層38とを備える。前記基材40は、その表面に凸部206、及び凹部207を有する。
なお、本実施形態においては、製造が容易であるなどの理由により、凹部207の表面にも磁性層38が形成されているが、他の実施形態においては、凹部207の表面に磁性層38がなくてもよい。
前記マスター基材40の凸部206の表面(頂面)に形成された磁性層38は、転写信号に対応するビット部となる。前記ビット部は、初期磁化を反転させる部分であり、転写部に相当する。なお、凹部207は、磁気反転しない非転写部に相当する。
図6は、磁気転写用マスター担体の上面図である。図6に示されるように、磁気転写用マスター担体の表面には、凹凸パターンからなるサーボパターン52が形成される。
<その他の工程、及びその他の層>
前記その他の工程としては、本発明の効果を害しない限り、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、保護層形成工程、潤滑剤層形成工程などが挙げられる。なお、前記磁気転写用マスター担体は、前記剥離工程後に、さらに磁性層を形成する磁性層形成工程を行ってもよい。前記磁性層形成工程は、上述の磁性層形成工程と同様に行うことができる。
前記その他の層としては、本発明の効果を害しない限り、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、保護層、潤滑剤層などが挙げられる。
−保護層形成工程、保護層−
前記保護層形成工程は、前記磁気転写用マスター担体の表面(磁性層上)に保護層を形成する工程である。
前記保護層を形成することにより、前記磁気転写用マスター担体の機械的、摩擦特性、耐候性を改善することができる。また、前記磁性層と、前記保護層との密着性を強化するために、前記磁性層上にSiなどの密着強化層を形成し、その後に保護層を形成してもよい。
前記保護層の材料としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、硬質な炭素膜が好ましく、例えば、無機カーボン、ダイヤモンドライクカーボンなどを用いることができる。
前記保護層の形成方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、スパッタリング法、蒸着法、塗布法、ディップコート法、スピンコート法などが挙げられる。
−潤滑剤層形成工程、潤滑剤層−
前記潤滑剤層形成工程は、前記保護層上に潤滑剤層を形成する工程である。
前記潤滑剤層を形成することにより、前記磁気転写用マスター担体と、後述する垂直磁気記録媒体との接触の際に生じる摩擦による傷の発生などを防止し、前記磁気転写用マスター担体の耐久性を向上することができる。
前記潤滑剤層の材料としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、一般的に、パーフルオロポリエーテル(PFPE)などのフッ素系樹脂を用いることができる。
前記潤滑剤層の形成方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、スピンコート法、ディップコート法などが挙げられる。
以下に、本発明の一実施形態に係る、モールド構造体の製造方法、及びモールド構造体について説明する。
<モールド構造体の製造方法、及びモールド構造体>
前記モールド構造体の製造方法は、モールド基材の表面に、該モールド基材を基準として複数の凸部が配列されたことによって形成された凹凸パターンを有するモールド基材の製造方法であって、被覆層形成工程と、バリア層形成工程と、モールド基材形成工程と、剥離工程とを少なくとも含み、更に必要に応じてその他の工程を含んでなる。
前記モールド構造体は、モールド基材の表面に、該モールド基材を基準として複数の凸部が配列されたことによって形成された凹凸パターンを有するモールド構造体であって、少なくとも前記モールド基材の凸部の表面にバリア層と、被覆層とを有し、更に必要に応じてその他の層を有してなる。
前記モールド構造体は、前記モールド構造体の製造方法によって、好適に製造することができる。
<被覆層形成工程、及び被覆層>
前記被覆層形成工程は、凹凸パターンが形成されたモールド構造体作製用原盤の少なくとも凹部の表面に被覆層を形成する工程である。
−モールド構造体作製用原盤−
前記凹凸パターンが形成されたモールド構造体作製用原盤の製造方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
前記モールド構造体作製用原盤の凸部の高さ(H、図19の[H])と、凹部の最小線幅(W、図19の[W])とのアスペクト比(H/W)としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、2以上が好ましい。
前記アスペクト比(H/W)の測定方法としては、例えば、FIB(SIIナノテクノロジー社製)でマスターより切片を切り出し、TEM(日立ハイテクノロジーズ社製)にて形状観察する方法が挙げられる。
なお、モールド構造体には、線幅が太くアスペクト比が低い凹凸パターンが形成されていてもよい。
−被覆層−
前記被覆層は、前記凹凸パターンが形成されたモールド構造体作製用原盤の少なくとも凹部の表面に形成する(図20の[105]参照)。
前記被覆層を形成する材料(被覆層材料)としては、後述するバリア層を形成する材料(バリア層材料)に含まれる金属元素のイオン化傾向よりも、イオン化傾向が大きい金属元素を含有していれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、Niを含有する金属、合金、及び化合物などが挙げられる。
前記被覆層の形成方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、前記被覆層の材料のターゲットを用いて、スパッタリングにより形成することができる。
前記スパッタ圧(力)としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、0.3Pa〜1Paが好ましく、0.1Pa〜0.2Paがより好ましい。
また、スパッタリングで被覆層を形成する際に使用するスパッタガスとしては、一般的なアルゴン(Ar)ガスが使用できるが、その他の希ガスを使用してもよい。
また、スパッタリングで被覆層を形成する際の投入電力としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、0.6W/cm〜16W/cmが好ましく、3.0W/cm〜10W/cmがより好ましい。
前記被覆層の厚みとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、3nm〜60nmが好ましく、3nm〜18nmがより好ましく、3nm〜9nmが特に好ましい。
前記被覆層の厚みが、3nm未満であると、しわやもげと呼ばれる剥離不良が発生することがあり、60nmを超えると、もげが生じることがある。一方、前記被覆層の厚みが、前記特に好ましい範囲内であると、もげやしわが発生しにくいという点で有利である。
前記被覆層の厚みは、例えば、Si基板上にカプトンテープを貼り、剥がした段差を触針式膜厚計(SLOAN社製)で5点確認し、その平均値とすることができる。
<バリア層形成工程、及びバリア層>
前記バリア層形成工程は、少なくともモールド構造体作製用原盤の凹部に位置する前記被覆層の表面にバリア層を形成する工程である。
−バリア層−
前記バリア層は、少なくともモールド構造体作製用原盤の凹部に位置する前記被覆層の表面に形成する(図21の[130]参照)。
前記バリア層を形成する材料(バリア層材料)としては、上述した被覆層を形成する材料(被覆層材料)に含まれる金属元素のイオン化傾向よりも、イオン化傾向が小さい金属元素を含有していれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、Cu、Ru、Pt、及びAuなどのうち、少なくとも1つを含有する金属、合金、及び化合物などが挙げられる。
前記被覆層材料がNiであった場合において、前記バリア層材料としては、イオン化傾向がより小さいものが好ましい。前記バリア層材料のイオン化傾向の順序は、Cu>Ru>Pt>Auとなる。
前記バリア層の形成方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、PVD(Physical Vapour Deposition)、CVD(Chemical Vapour Deposition)、スパッタリング、イオンプレーティングなどの各種の金属成膜法などが挙げられる。
前記スパッタリングにおけるスパッタ圧(力)などは、上述の被覆層の形成方法におけるスパッタリングと同様に行うことができる
前記バリア層は、緻密な膜であることが好ましい。
前記緻密な膜とは、より膜密度の高い膜のことをいう。
前記緻密な膜を形成する方法としては、例えば、スパッタリングの場合、装置によって異なるが、高電圧(例えば、3.0W/cm以上が好ましい)、低ガス圧(例えば、5Pa以下が好ましい)で形成する方法が挙げられる。
前記緻密な膜であることを確認する方法としては、例えば、X線全反射法により測定することができる。
前記バリア層の厚みとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。中でも、前記モールド構造体作製用原盤の凹部に位置する被覆層の表面におけるバリア層の厚みが、3nm〜10nmが好ましく、4nm〜10nmがより好ましく、6nm〜10nmが特に好ましい。
前記モールド構造体作製用原盤の凹部に位置する被覆層の表面におけるバリア層の厚みが、3nm未満であると、バリア層として機能せず、被覆層が溶解してしまうことがあり、10nmを超えると、内周部でモールド凸部にス(構造内部にできる隙間や空洞)が発生し、剥離時の剥離不良の問題を起こすおそれがある。一方、前記バリア層の厚みが、前記特に好ましい範囲内であると、バリア層としてしっかりと機能し、パターン形成性の点(剥離不良を生じない)でも有利である。
前記バリア層の厚みは、例えば、Si基板上にカプトンテープを貼り、剥がした段差を触針式膜厚計(SLOAN社製)で5点確認し、その平均値とすることができる。
<モールド基材形成工程、及びモールド基材>
前記モールド基材形成工程は、少なくとも凹部に被覆層と、バリア層とを有するモールド構造体作製用原盤の表面に金属を電着することにより、モールド基材を形成する工程である。
−モールド基材−
前記モールド基材としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ニッケル、アルミニウムなどの金属など公知の材料が挙げられる。
前記モールド基材の形成は、図22に示されるように、モールド構造体作製用原盤140の表面に、電鋳により所望の厚みの金属による金属板150(モールド基材となるもの)を積層することにより形成される。
前記モールド基材形成工程は、電鋳装置の電解液中にモールド構造体作製用原盤140を浸し、モールド構造体作製用原盤140を陽極とし、陰極との間に通電することにより行われるが、このときの電解液の濃度、pH、電流のかけ方等は、積層された金属板150に歪みのない最適条件で実施されることが求められる。
<剥離工程、及びモールド構造体>
前記剥離工程は、少なくとも凸部の表面に前記バリア層と、前記被覆層とを有するモールド基材をモールド構造体作製用原盤から剥離する工程である。
前記剥離工程により、少なくとも前記モールド基材の凸部の表面にバリア層と、被覆層とを有するモールド構造体を得ることができる。
前記モールド構造体は、前記モールド基材の表面にバリア層と、被覆層とがこの順に積層されてなることが好ましい。
−剥離−
前記モールド基材形成工程で形成された、金属板150(モールド基材となるもの)の積層されたモールド構造体作製用原盤140を電鋳装置の電解液から取り出し、剥離槽(図示略)内の純水に浸す。次いで、剥離槽内において、金属板150をモールド構造体作製用原盤140から剥離し、図23に示すような、モールド構造体作製用原盤140から反転した凹凸パターンを有するモールド構造体160を得ることができる。
−モールド構造体−
図23は、モールド構造体160の部分断面図である。前記モールド構造体160は、モールド基材150と、該モールド基材150の表面上に形成されたバリア層130と、該バリア層130の表面上に形成された被覆層105とを備える。前記モールド基材150は、その表面に凸部170、及び凹部180を有する。
<その他の工程、及びその他の層>
前記その他の工程としては、本発明の効果を害しない限り、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、保護層形成工程、潤滑剤層形成工程などが挙げられる。
前記その他の層としては、本発明の効果を害しない限り、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、保護層、潤滑剤層などが挙げられる。
−保護層形成工程、保護層−
前記保護層形成工程は、前記モールド構造体の表面(被覆層上)に保護層を形成する工程である。
前記保護層を形成することにより、前記モールド構造体の機械的、摩擦特性、耐候性を改善することができる。また、前記被覆層と、前記保護層との密着性を強化するために、前記被覆層上にSiなどの密着強化層を形成し、その後に保護層を形成してもよい。
前記保護層の材料としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、硬質な炭素膜が好ましく、例えば、無機カーボン、ダイヤモンドライクカーボンなどを用いることができる。
前記保護層の形成方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、スパッタリング法、蒸着法、塗布法、ディップコート法、スピンコート法などが挙げられる。
−潤滑剤層形成工程、潤滑剤層−
前記潤滑剤層形成工程は、前記保護層上に潤滑剤層を形成する工程である。
前記潤滑剤層を形成することにより、前記モールド構造体と、レジストとの接触の際に生じる摩擦による傷の発生などを防止し、前記モールド構造体の耐久性を向上することができる。
前記潤滑剤層の材料としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、一般的に、パーフルオロポリエーテル(PFPE)などのフッ素系樹脂を用いることができる。
前記潤滑剤層の形成方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、スピンコート法、ディップコート法などが挙げられる。
(磁気転写方法、及び垂直磁気記録媒体)
本発明の磁気転写方法は、初期磁化工程と、密着工程と、磁気転写工程とを少なくとも含み、更に必要に応じてその他の工程を含んでなる。
本発明の垂直磁気記録媒体は、前記本発明の磁気転写方法によって、作製することができる。
<磁気転写技術>
まず、本発明の前記磁気転写用マスター担体を適用した垂直磁気記録の磁気転写技術について図面を参照して説明する。
図7Aから図7Cは、垂直磁気記録の磁気転写方法の工程を示す説明図である。図7Aから図7Cにおいて、符号10は被転写用の磁気ディスクとしてのスレーブディスク(垂直磁気記録媒体に相当)、符号20は磁気転写用マスター担体としてのマスターディスクを表す。
図7Aに示されるように、スレーブディスク10のディスク平面に対し、垂直の方向から、直流磁界(Hi)を印加して、該スレーブディスク10を初期磁化する(初期磁化工程)。
初期磁化を行った後、図7Bに示されるように、前記初期磁化後のスレーブディスク10と、マスターディスク20とを密着させる(密着工程)。
さらに、両ディスク10、20を密着させた後、図7Cに示されるように、初期磁化の際に印加される磁界(Hi)とは、逆向きの磁界(Hd)を印加して、該スレーブディスク10に磁気転写する(磁気転写工程)。
<スレーブディスク(垂直磁気記録媒体)>
図7Aから図7Cにおいて示される、前記スレーブディスク10は、円盤状の基板の表面の片面或いは、両面に磁性層が形成されたものであり、具体的には、高密度ハードディスク等が挙げられる。このスレーブディスク10を例に挙げ、図8を用いて、垂直磁気記録媒体の説明を行う。
図8は、スレーブディスク10の断面を示す説明図である。図8に示されるように、スレーブディスク10は、ガラスなど非磁性の基板12上に、軟磁性層(軟磁性下地層;SUL)13、非磁性層(中間層)14、磁性層(垂直磁気記録層)16が順次積層形成された構造からなり、磁性層16の上は更に保護層18と潤滑層19とで覆われている。なお、ここでは、基板12の片面に磁性層16を形成した例を示すが、基板12の表裏両面に磁性層を形成する態様も可能である。
円盤状の基板12は、ガラスやAl(アルミニウム)等の非磁性材料から構成されており、この基板12上に軟磁性層13を形成した後、非磁性層14と、磁性層16を形成する。
軟磁性層13は、磁性層16の垂直磁化状態を安定させ、記録再生時の感度を向上させるために有益である。軟磁性層13に用いられる材料は、CoZrNb、FeTaC、FeZrN、FeSi合金、FeAl合金、パーマロイなどのFeNi合金、パーメンジュールなどのFeCo合金等の軟磁性材料が好ましい。この軟磁性層13は、ディスクの中心から外側に向かって半径方向に(放射状に)磁気異方性が付けられている。
軟磁性層13の厚みは、20nm〜2000nmであることが好ましく、40nm〜400nmであることが更に好ましい。
非磁性層14は、後に形成する磁性層16の垂直方向の磁気異方性を大きくする等の理由により設けられる。非磁性層14に用いられる材料は、Ti(チタン)、Cr(クロム)、CrTi、CoCr、CrTa、CrMo、NiAl、Ru(ルテニウム)、Pd(パラジウム)、Ta、Pt等が好ましい。非磁性層14は、例えば、スパッタリング法により上記材料を成膜することにより形成される。非磁性層14の厚みは、10nm〜150nmであることが好ましく、20nm〜80nmであることが更に好ましい。
磁性層16においては、その磁性膜内の磁化容易軸が基板に対し主に垂直に配向しており、この磁性層16に情報が記録される。磁性層16に用いられる材料は、Co(コバルト)、Co合金(CoPtCr、CoCr、CoPtCrTa、CoPtCrNbTa、CoCrB、CoNi等)、Co合金−SiO、Co合金−TiO、Fe、Fe合金(FeCo、FePt、FeCoNi等)等が好ましい。これらの材料は、磁束密度が大きく、成膜条件や組成を調整することにより垂直の磁気異方性を有している。磁性層16は、スパッタリング法により上記材料を成膜することにより形成される。磁性層16の厚みは、10nm〜500nmであることが好ましく、20nm〜200nmであることが更に好ましい。
本実施形態では、例えば、スレーブディスク10の基板12として、外形65mmの円盤状のガラス基板を用い、スパッタリング装置のチャンバー内にガラス基板を設置し、1.33×10−5Pa(1.0×10−7Torr)まで減圧した後、チャンバー内にAr(アルゴン)ガスを導入し、チャンバー内にあるCoZrNbターゲットを用い、同じくチャンバー内の基板の温度を室温として、厚みが80nmのSUL第1層をスパッタリング法で形成する。次にその上に、チャンバー内にあるRuターゲットを用いて0.8nmのRu層をスパッタリング法で形成する。さらにその上に、CoZrNbターゲットを用い、厚みが80nmのSUL第2層をスパッタリング法で形成する。こうしてスパッタ法で形成されたSULを、半径方向に50Oe以上の磁場を印加した状態で室温まで昇温し室温に冷却する。
次に、例えば、Ruターゲットを用い、基板温度が室温の条件の下で放電させることによりスパッタリング法で形成を行う。これによりRuからなる非磁性層14を60nm形成する。
この後、例えば、上記と同様にArガスを導入し、同じチャンバー内にあるCoCrPtターゲットを用い、同じく基板温度が室温の条件の下で放電させることによりスパッタリング法で形成を行う。これによりCoCrPt−SiOからなるグラニュラー構造の磁性層16を25nm形成する。
以上のプロセスにより、ガラス基板に、軟磁性層、非磁性層と磁性層が形成された転写用磁気ディスク(スレーブディスク)10を作製することができる。
<磁気転写方法>
以下、本発明の一実施形態に係る磁気転写方法について説明する。
−スレーブディスクの初期磁化工程−
図7Aに示されるように、スレーブディスク10の初期磁化(直流磁化)は、スレーブディスク10の表面に対し垂直に直流磁界を印加することができる装置(不図示の磁界印加手段)により初期化磁界Hiを発生させることにより行う。具体的には、初期化磁界Hiとしてスレーブディスク10の保磁力Hc以上の強度の磁界を発生させることにより行う。この初期磁化工程により、図9に示されるように、スレーブディスク10の磁性層16について、ディスク面と垂直な一方向に初期磁化Piさせる。なお、この初期磁化工程は、スレーブディスク10を磁界印加手段に対し相対的に回転させることにより行ってもよい。
−磁気転写における密着工程−
次に、マスターディスク20と、初期磁化工程後のスレーブディスク10とを図7Bのように重ね合わせて両者を密着させる工程(密着工程)を行う。図7Bに示されるように、密着工程では、マスターディスク20の突起状パターン(凹凸パターン)の形成されている面と、スレーブディスク10の磁性層16の形成されている面とを所定の押圧力で密着させる。
スレーブディスク10には、マスターディスク20に密着させる前に、グライドヘッド、研磨体等により、表面の微少突起又は付着塵埃を除去するクリーニング処理(バーニッシング等)が必要に応じて施される。
なお、密着工程は、図7Bに示すように、スレーブディスク10の片面のみにマスターディスク20を密着させる場合と、両面に磁性層が形成された転写用磁気ディスクについて、両面からマスターディスクを密着させる場合とがある。後者の場合では、両面を同時転写することができる利点がある。
−磁気転写工程−
次に、図7Cに基づき磁気転写工程を説明する。上記密着工程によりスレーブディスク10とマスターディスク20とを密着させたものについて、不図示の磁界印加手段により初期化磁界Hiの向きと反対方向に記録用磁界Hdを発生させる。記録用磁界Hdを発生させることにより生じた磁束がスレーブディスク10とマスターディスク20に進入することにより磁気転写が行われる。
本実施形態では、記録用磁界Hdの大きさは、スレーブディスク10の磁性層16を構成する磁性材料のHcと略同じ値である。
磁気転写は、スレーブディスク10及びマスターディスク20を密着させたものを不図示の回転手段により回転させつつ、磁界印加手段によって記録用磁界Hdを印加し、マスターディスク20に記録されている突起状のパターンからなる情報をスレーブディスク10の磁性層16に磁気転写する。なお、この構成以外にも、磁界印加手段を回転させる機構を設け、スレーブディスク10及びマスターディスク20に対し、相対的に回転させる手法であってもよい。
磁気転写工程における、スレーブディスク10とマスターディスク20の断面の様子を図10に示す。図10に示されるように、凹凸パターンを有するマスターディスク20をスレーブディスク10が密着させた状態で、記録用磁界Hdを印加すると、磁束Gは、マスターディスク20の凸領域とスレーブディスク10が接触している領域では強く、記録用磁界Hdにより、マスターディスク20の磁性層48の磁化向きが記録用磁界Hdの方向に揃い、スレーブディスク10の磁性層16に磁気情報が転写される。一方、マスターディスク20の凹領域は、記録用磁界Hdの印加によって生じる磁束Gが凸領域に比べて弱く、スレーブディスク10の磁性層16の磁化向きが変わることはなく、初期磁化の状態を保ったままである。
図11は、磁気転写に用いられる磁気転写装置について詳細に示したものである。磁気転写装置は、コア62にコイル63が巻きつけられた電磁石からなる磁界印加手段60を有するものであり、このコイル63に電流を流すことによりギャップ64において、密着させたマスターディスク20とスレーブディスク10の磁性層16に対し垂直に磁界を発生する構造になっている。発生する磁界の向きは、コイル63に流す電流の向きによって変えることができる。従って、この磁気転写装置によって、スレーブディスク10の初期磁化を行うことも、磁気転写を行うことも可能である。
この磁気転写装置により初期磁化させた後、磁気転写を行う場合には、磁界印加手段60のコイル63に、初期磁化したときにコイル63に流した電流の向きと逆向きの電流を流す。これにより、初期磁化の際の磁化向きとは反対の向きに記録用磁界を発生させることができる。磁気転写は、スレーブディスク10及びマスターディスク20を密着させたものを回転させつつ、磁界印加手段60によって記録用磁界Hdを印加し、マスターディスク20に記録されている突起状のパターンからなる情報をスレーブディスク10の磁性層16に磁気転写するため、不図示の回転手段が設けられている。なお、この構成以外にも、磁界印加手段60を回転させる機構を設け、スレーブディスク10及びマスターディスク20に対し、相対的に回転させる手法であってもよい。
本実施形態では、記録用磁界Hdは、本実施の形態に用いられるスレーブディスク10の磁性層16の保磁力Hcの40%〜130%、好ましくは、50%〜120%の強度の磁界を印加することにより磁気転写を行う。
これにより、スレーブディスク10の磁性層16には、サーボ信号等の磁気パターンの情報が、初期磁化Piの反対向きの磁化となる記録磁化Pdとして記録される(図12参照)。
なお、本発明の実施に際して、マスターディスク20に形成された突起状のパターンは、図5で説明したポジパターンと反対のネガパターンであってもよい。この場合、初期化磁界Hiの方向及び記録用磁界Hdの方向を各々逆方向にすることにより、スレーブディスク10の磁性層16に、同様の磁化パターンを磁気転写することができるからである。また、本実施の形態では、磁界印加手段は、電磁石の場合について説明したが、同様に磁界が発生する永久磁石を用いてもよい。
なお、上述した本発明の実施形態に係る方法により製造された垂直磁気記録媒体は、例えば、ハードディスク装置等の磁気記録再生装置に組み込まれて使用される。これにより、サーボ精度が高く、良好な記録再生特性の高記録密度磁気記録再生装置を得ることができる。
本発明の磁気転写用マスター担体は、磁性層の厚みの減少を抑制することができる本発明の製造方法により得ることができ、磁気転写によるノイズ成分が少なく転写特性に優れているため、磁気記録媒体への磁気転写に好適に使用することができる。
以下、本発明の実施例について説明するが、本発明は下記実施例に何ら限定されるものではない。
(試験例1−A:バリア層として機能する金属種の判別(1))
Si基板上に表1に記載の各種金属をスパッタリング法により、20nm堆積させた。その後、前記基板を下記のスルファミン酸ニッケル溶液(電鋳液に相当)に2時間浸漬した。
浸漬後の基板の表面(金属面)に、X線光電子分析装置(ESCA、島津/KRATPS製、AXIS−HS)にて加速アルゴンイオンを照射し、金属面の表面を削り、表面から内部側への深さ方向への組成変化を測定した。
−スパッタリング条件−
アルゴン圧力:0.1Pa
基板−ターゲット間距離:300mm
投入電力(DC電源):900W
装置:Ni スパッタ装置(富士第一製作所製)
−スルファミン酸ニッケル溶液−
スルファミン酸ニッケル ・・・ 600g/L
ホウ酸 ・・・ 40g/L
界面活性剤(ラウリル硫酸ナトリウム) ・・・ 0.15g/L
pH4
温度55℃
−評価−
スパッタ深さに対するSiと各種金属との組成比の交点が10nm以上であれば、バリア層として機能する(電鋳液に溶解しない)と判断した。前記交点とは、Siと各種金属との界面である。また、前記交点が10nm以上という基準は、測定誤差を考慮すると、交点が10nm未満では、前記浸漬により金属が溶け出していることもあるため、交点が10nm以上であることをバリア層として機能するための基準とした。
結果を表1に示す。また、図13に、金属としてNiを用いた場合のスパッタ深さに対するSiとNiとの組成比の変化のグラフを示す。
表1の結果から、Ni、Cu、Ru、Ag、Pt、及びAuがバリア層として機能する金属であることが判った。
(試験例1−B:バリア層として機能する金属種の判別(2))
Si基板上に表2に記載の第1層の金属をスパッタリング法により10nm堆積させ、次いで表2に記載の第2層の金属をスパッタリング法により10nm堆積させた以外は、試験例1−Aと同様にして試験を行い、バリア層として機能するか否かを評価した。結果を表2に示す。
表2から、Fe、及びCoよりもイオン化傾向が小さい金属同士を複数用いた場合でもバリア層として機能することが判った。
(試験例2:バリア層の厚みの検討)
Si基板上に磁性層材料としてFeCo(Fe70−Co30、原子%)を用い、スパッタリング法により厚みが50nmの磁性層を形成した。次いで、前記磁性層の表面にバリア層材料としてNiを用い、試験例1と同様の方法により表2に記載の厚みのバリア層を形成した。その後、前記基板を試験例1と同じスルファミン酸ニッケル溶液(電鋳液に相当)に2時間浸漬した。
浸漬後、X線光電子分析装置(ESCA、島津/KRATPS製、AXIS−HS)にて、前記バリア層、及び磁性層の厚みの変化を分析した。
−スパッタリング条件(磁性層の形成)−
アルゴン圧力:0.04Pa
基板−ターゲット間距離:300mm
投入電力(DC電源):500W
装置:Casper キヤノンアネルバ製
−評価−
バリア層、及び磁性層の全厚みの変化を下記基準で評価した。結果を表3に示す。
◎:全く溶解しない
○:ほとんど溶解しない
△:わずかに溶解する
×:溶解する
表3の結果から、バリア層の厚みとしては、4nm以上であることが必要であることが判った。また、10nm以上がより優れていることが判った。
(実施例1、比較例1〜2)
以下のようにして、実施例1の磁気転写用マスター担体(バリア層有り)、及び、比較例1〜2の磁気転写用マスター担体(バリア層無し)を作製した。また、垂直磁気記録媒体を作製し、得られた各マスター担体から垂直磁気記録媒体への磁気転写を行った。
<磁気転写用マスター担体の作製>
−磁気転写用マスター担体作製用原盤の作製−
8インチのSi(シリコン)ウェハー(基板)上に、電子線レジストを、スピンコート法により、100nmの厚みで塗布した。塗布後、基板上の該レジストを、回転式電子線露光装置を用いて露光し、露光後の該レジストを現像して、凹凸パターンを有するレジストSi基板を作製した。
その後、該レジストをマスクとして用い、該基板に対して、反応性イオンエッチング処理を行い、凹凸パターンの凹部を掘り下げた。該エッチング処理後、該基板上に残存するレジストを可溶溶剤で洗浄し、除去した。除去後、該基板を乾燥したものを、磁気転写用マスター担体を調製するための磁気転写用マスター担体作製用原盤とした。
なお、本実施例1で用いたパターンは、大別すると、データ部と、サーボ部からなる。該データ部は、凸巾:90nm、凹巾:30nm(TP=120nm)のパターンで構成されている。該サーボ部は、基準信号長:80nm、総セクタ数:120、プリアンブル(40bit)/SAM(6bit)/Sectorcode(8bit)/CylinderCode(32bit)/Burstパターンで構成されている。該SAM部は、“001010”であり、SectorがBinary、CylinderはGray変換を用いている。Burst部は一般的な4バースト(各バーストは16bit)である。マンチェスター変換を使用した。
−磁性層の形成−
上記磁気転写用マスター担体作製用原盤上に、アルゴン圧力0.04Pa条件下で、スパッタリング法により、FeCo(Fe80−Co20、原子%)からなる磁性層を、厚みが30nmとなるように形成した。磁性層形成時のスパッタリング条件は以下の通りである。
[スパッタリング条件]
アルゴン圧力:0.04Pa
基板−ターゲット間距離:300mm
投入電力(DC電源):500W
装置:Casper キヤノンアネルバ製
−バリア層の形成−
上記磁気転写用マスター担体作製用原盤の磁性層の表面に、スパッタリング方法により、Ni(ニッケル)からなるバリア層を、厚みが6nmとなるように形成した。バリア層形成時のスパッタリング条件は以下の通りである。
[スパッタリング条件]
アルゴン圧力:0.1Pa
基板−ターゲット間距離:300mm
投入電力(DC電源):900W
装置:Ni スパッタ装置(富士第一製作所製)
−マスター基材の形成−
上記バリア層を形成した後の磁気転写用マスター担体作製用原盤を、スルファミン酸Ni浴に浸漬し、30秒後、電解メッキにより、200μmの厚みのマスター基材(Ni膜)を形成した。
[スルファミン酸Ni浴]
スルファミン酸ニッケル ・・・ 600g/L
ホウ酸 ・・・ 40g/L
界面活性剤(ラウリル硫酸ナトリウム) ・・・ 0.15g/L
pH4
温度55℃
−剥離−
上記マスター基材形成後、磁気転写用マスター担体作製用原盤よりマスター基材を引き剥がし、洗浄して、マスター基材と、バリア層と、磁性層とからなる実施例1の磁気転写用マスター担体を得た。
上記において、バリア層の形成を行わなかったこと以外は、実施例1と同様にして比較例1の磁気転写用マスター担体を得た。
また、バリア層の形成を行わず、マスター基材の形成において、スルファミン酸Ni浴に浸漬し、電解メッキを行うまでの時間を60秒間としたこと以外は、実施例1と同様にして比較例2の磁気転写用マスター担体を得た。
<垂直磁気記録媒体の作製>
2.5インチのガラス基板上に、スパッタリング法を用いて、軟磁性層、第1非磁性配向層、第2非磁性配向層、磁気記録層及び保護層を、この順に形成した。更に、該保護層の上に、ディップ法により潤滑剤層を形成した。
軟磁性層の材料として、CoZrNbを用いた。該軟磁性層の厚みは、100nmであった。ガラス基板をCoZrNbターゲットと対向させて配置し、Arガスを0.6Pa圧になるように流入させ、DC1500Wで形成した。
第1非磁性配向層としてTi:5nm、第2非磁性配向層としてRu:6nmを形成した。
第1非磁性配向層は、Tiターゲットと対向配置し、Arガスを0.5Pa圧になるように流入し、DC1000Wで放電し、5nmの厚みになるように、Tiシード層を形成した。第1非磁性配向層形成後にRuターゲットと対向させて配置し、Arガスを0.8Pa圧になるように流入させ、DC900Wで放電し、6nmの厚みになるように第2非磁性配向層を形成した。
磁気記録層として、CoCrPtO:18nmを形成した。CoCrPtOターゲットと対向させて配置し、Oを0.06%を含むArガスを14Pa圧になるように流入させ、DC290Wで放電し磁気記録層を作製した。
磁気記録層を形成した後に、C(カーボン)ターゲットと対向させて配置し、Arガスを0.5Pa圧になるように流入させ、DC1000Wで放電し、1000Wで放電し、C保護層(4nm)を形成した。この記録媒体の保磁力は、334kA/m(4.2kOe)とした。
更に、該媒体にディップ法により、PFPE潤滑剤を2nmの厚みで塗布した。
以上のようにして、垂直磁気記録媒体を調製した。
<磁気転写>
上記垂直磁気記録媒体に対して、初期化を行った(初期磁化工程)。初期化の際に印加する磁界の強度(初期磁界強度)は10kOeであった。
初期化済み垂直磁気記録媒体に対して、上記マスター担体を対向して配置し、これらを0.7MPaの圧力にて密着させた(密着工程)。互いに密着した状態で、磁界を印加して、磁気転写を行った(磁気転写工程)。磁気転写に用いた磁界強度は4.6kOeであった。磁界印加終了後、マスター担体を、垂直磁気記録媒体から剥離した。
<評価>
上記磁気転写により記録された転写信号の品位を評価した。前記評価としては、プリアンブル部のTAA(Track Average Amplitude)再生出力を、半径15mm位置の全セクタに対してそのSNR(シグナル/ノイズ比)を算出し、下記基準により評価した。結果を表4に示す。
なお、評価装置には、協同電子社製 LS−90を用い、リード幅120nm、ライト幅200nmのGMRヘッドを使用した。
◎:12dB以上
△:10dBより大きく、12dB未満
×:10dB以下
表4の結果から、バリア層のある実施例1が最もSNRが高く、転写特性に優れていることが判った。また、磁性層の厚みを確認したところ、実施例1では、磁性層の厚みに変化が無かったのに対し、比較例1では磁性層が10nm減少し、比較例2では磁性層が20nm減少していた。
以上から、本発明の磁気転写用マスター担体の製造方法は、磁性層の厚みの減少を抑制することができ、前記方法により作製された磁気転写用マスター担体は、磁気転写によるノイズ成分が少なく転写特性に優れていることが示された。
(試験例3:被覆性及び剥離性の検討)
<モールド構造体作製用原盤の作製>
8インチのSi(シリコン)ウェハー(基板)上に、電子線レジストを、スピンコート法により、100nmの厚みで塗布した。塗布後、基板上の該レジストを、回転式電子線露光装置を用いて露光し、露光後の該レジストを現像して、凹凸パターンを有するレジストSi基板を作製した。
その後、該レジストをマスクとして用い、該基板に対して、反応性イオンエッチング処理を行い、凹凸パターンの凹部(最小線幅のアスペクト比が3の凹部)を掘り下げた。該エッチング処理後、該基板上に残存するレジストを可溶溶剤で洗浄し、除去した。除去後、該基板を乾燥したものを、モールド構造体作製用原盤とした。
Si基板上にAu、Pt、Cu、Ruを用い、凹凸パターンの凹部に下記スパッタリング条件で被膜を形成した。被膜を形成した凹部について、断面TEMを観察し、下記評価基準で被覆性の評価を行った。また、剥離性についてはクロスカットテープ試験を行い剥離性を評価した。クロスカットテープを被膜に貼り付け、該クロスカットテープを剥がし、どのくらいの割合で被膜が剥がれて、クロスカットテープに剥離被膜が形成されるかで剥離性の評価を行った。例えば、クロスカットテープの面積に対して20%未満の割合で剥離被膜がクロスカットテープに形成されていれば、剥離性を〇とし、20%〜60%未満の割合で剥離被膜がクロスカットテープに形成されていれば、剥離性を△とし、60%以上の割合で剥離被膜がクロスカットテープに形成されていれば、剥離性を×とした。
−スパッタリング条件(被膜の形成)−
アルゴン圧力:1Pa
基板−ターゲット間距離:200mm
投入電力(DC電源):500W
装置:芝浦メカトロニクス製スパッタリング装置(OctavaII)
−被覆性評価−
各金属の被覆性を下記基準で評価した。結果を表5に示す。
−−評価基準−−
◎: 被覆率20%以上
○: 被覆率10%〜20%未満
△: 被覆率3%〜10%未満
×: 被覆率3%未満
−剥離性評価−
各金属の剥離性を下記基準で評価した。結果を表5に示す。
−−評価基準−−
○:クロスカットテープ20%未満
△:クロスカットテープ20%〜60%未満
×:クロスカットテープ60%以上
(試験例4:形成性の検討))
<モールド構造体作製用原盤の作製>
8インチのSi(シリコン)ウェハー(基板)上に、電子線レジストを、スピンコート法により、100nmの厚みで塗布した。塗布後、基板上の該レジストを、回転式電子線露光装置を用いて露光し、露光後の該レジストを現像して、凹凸パターンを有するレジストSi基板を作製した。
その後、該レジストをマスクとして用い、該基板に対して、反応性イオンエッチング処理を行い、凹凸パターンの凹部(最小線幅のアスペクト比が2.7の凹部)を掘り下げた。該エッチング処理後、該基板上に残存するレジストを可溶溶剤で洗浄し、除去した。除去後、該基板を乾燥したものを、モールド構造体作製用原盤とした。
−被覆層の形成−
上記モールド構造体作製用原盤上に、スパッタリング法により、Niからなる被覆層を、厚みが6nmとなるように形成した。被覆層形成時のスパッタリング条件は以下の通りである。
−スパッタリング条件(被覆層の形成)−
アルゴン圧力:0.1Pa
基板−ターゲット間距離:300mm
投入電力(DC電源):900W
装置:Niスパッタ装置、富士第一製作所製
−バリア層の形成−
上記モールド構造体作製用原盤の被覆層(Ni層)の表面に、スパッタリング方法により、Pt、Ru、Cu、Auからなるバリア層を、厚みが表6に示す値となるように形成した。バリア層形成時のスパッタリング条件は以下の通りである。
[スパッタリング条件(バリア層の形成)]
アルゴン圧力:1.0Pa
基板−ターゲット間距離:200mm
投入電力(DC電源):500W
装置:芝浦メカトロニクス製スパッタリング装置(OctavaII)
得られたモールド構造体作製用原盤について、複版得率を下記のように測定し、下記評価基準により評価した。得られた結果を表6に示す。
−−複版得率の測定方法−−
簡易検査方法として複版の表面にハロゲン光を表面にあてると、剥離不良が生じた場合その部分が白く曇ったように見られる。この観察方法を用いてOK(白く曇らない)かNG(白く曇る)を判断する。この判定方法を用いて複版の得率が10回中何回OKとなったかを確認した。
−−評価基準−−
〇:複版得率が80%以上
△:複版得率が40%以上80%未満
×:複版得率が40%未満
本発明の凹凸部材の製造方法は、凹凸部材の被覆層の厚みの減少を抑制することができるので、磁気転写用マスター担体、モールド構造体、などの製造に好適に用いることができる。
30 原板
32 レジスト層
33 パターン
36 磁気転写用マスター担体作製用原盤
38 磁性層
71 バリア層
40 金属板(マスター基材となるもの)
42 磁気転写用マスター担体
52 サーボパターン
206 凸部
207 凹部
10 スレーブディスク
20 マスターディスク
12 基板
13 軟磁性層
14 非磁性層
16 磁性層
18 保護層
19 潤滑層
42 マスター基材
48 磁性層
71 バリア層
62 コア
63 コイル
60 磁界印加手段
64 ギャップ
H 磁気転写用マスター担体(モールド構造体)作製用原盤の凸部の高さ
W 磁気転写用マスター担体(モールド構造体)作製用原盤の凹部の幅
100 基板
101 Si層
102 SiO層
103 レジストパターン
104 凹部
105 Ni層
106 モールド基材
110 Ni層が十分に被覆されていない部分
120 ス(構造内部にできる隙間や空洞)
130 バリア層
140 モールド構造体作製用原盤
150 金属板
160 モールド構造体
170 凸部
180 凹部

Claims (8)

  1. 基材の表面に、該基材を基準として複数の凸部が配列されたことによって形成された凹凸パターンを有する凹凸部材の製造方法であって、
    凹凸パターンが形成された凹凸部材作製用原盤の少なくとも凹部の表面に被覆層を形成する被覆層形成工程と、
    少なくとも凹凸部材作製用原盤の凹部に位置する前記被覆層の表面にバリア層を形成するバリア層形成工程と、
    少なくとも凹部に被覆層と、バリア層とを有する凹凸部材作製用原盤の表面に金属を電着することにより、基材を形成する基材形成工程と、
    少なくとも凸部の表面に前記バリア層と、前記被覆層とを有する基材を凹凸部材作製用原盤から剥離する剥離工程とを含み、かつ、
    前記バリア層がスルファミン酸ニッケル溶液である電解液に溶解しない金属からなり、
    前記バリア層に含まれる全ての金属元素のイオン化傾向が、前記被覆層に含まれる金属元素のイオン化傾向よりも小さいことを特徴とする凹凸部材の製造方法。
  2. 基材がマスター基材であり、凹凸部材が磁気転写用マスター担体であり、被覆層が磁性層である請求項1に記載の凹凸部材の製造方法。
  3. 被覆層形成工程において、厚みが10nm以上の磁性層を形成する請求項2に記載の凹凸部材の製造方法。
  4. バリア層形成工程において、厚みが4nm以上20nm以下のバリア層を形成する請求項2から3のいずれかに記載の凹凸部材の製造方法。
  5. 磁性層に含まれる金属元素が、Fe、及びCoの少なくともいずれかであり、かつ、
    バリア層に含まれる金属元素が、Ni、Cu、Ru、Ag、Pt、及びAuの少なくともいずれかである請求項2から4のいずれかに記載の凹凸部材の製造方法。
  6. 基材がモールド基材であり、凹凸部材がモールド構造体である請求項1に記載の凹凸部材の製造方法。
  7. バリア層形成工程において、厚みが3nm以上10nm以下のバリア層を形成する請求項6に記載の凹凸部材の製造方法。
  8. 被覆層に含まれる金属元素が、Niであり、かつ、
    バリア層に含まれる金属元素が、Cu、Ru、Pt、及びAuの少なくともいずれかである請求項6から7のいずれかに記載の凹凸部材の製造方法。
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