JP2010231827A - 磁気転写用マスター担体、及びその製造方法 - Google Patents

磁気転写用マスター担体、及びその製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】初期化側の不要な磁化反転を抑えることができ、転写信号品位に優れた磁気転写用マスター担体、及び、前記磁気転写用マスター担体を歩留まりが低下することがなく製造することができる製造方法の提供。
【解決手段】マスター基材42の表面に、該表面を基準として複数の凸部が配列されたことによって形成された凹凸パターンを有し、かつ少なくとも前記凸部表面が磁性層48を有する磁気転写用マスター担体であって、前記凸部の高さHと、前記凸部の頂辺の角部の曲率半径Rとの比率〔(R/H)×100〕が、20%以下である磁気転写用マスター担体である。
【選択図】図4

Description

本発明は、初期化側の不要な磁化反転を抑えることができ、転写信号品位を大幅に向上させることができる磁気転写用マスター担体、及びその製造方法に関する。
情報を高密度で記録可能な磁気記録媒体として、垂直磁気記録媒体が知られている。この垂直磁気記録媒体の情報記録領域は、狭トラックで構成されている。そのため、垂直磁気記録媒体では、狭いトラック幅において正確に磁気ヘッドを走査し、高いS/N比で信号を再生するためのトラッキングサーボ技術が重要となる。このトラッキングサーボを行うためには、トラッキング用のサーボ信号、アドレス情報信号、再生クロック信号等のサーボ情報を、所定間隔で垂直磁気記録媒体に、いわゆるプリフォーマットとして記録しておく必要がある。
垂直磁気記録媒体に、サーボ情報をプリフォーマットする方法としては、例えば、サーボ情報に対応した、磁性層を含むパターンが形成された磁気転写用マスター担体を、該磁気記録媒体に密着させた状態で記録用磁界(転写磁界)を印加し、磁気転写用マスター担体のパターンを磁気記録媒体に磁気転写する方法がある。
この方法において、該磁気記録媒体に磁気転写用マスター担体を密着させた状態で転写磁界が印加されると、磁束が磁気転写用マスター担体の磁化状態に基づきパターン上の磁性層に吸収され、磁界がパターンの凹凸形状に対応し強められる。このパターン状に強められた磁界によって、磁気記録媒体の所定箇所のみが磁化される。よって、これまでは高飽和磁化を有する磁性材料を用いた磁性層を有する磁気転写用マスター担体が用いられてきた。
これまでに磁気転写用マスター担体として、凹凸形状を形成したマスター担体の少なくとも凸部に強磁性薄膜(磁性層)が形成されたマスター担体であって、前記凸部の断面が、表面側を上底、基体側を下底とする台形である磁気転写用マスター担体が提案されている(例えば、特許文献1参照)。この場合のように磁気転写用マスター担体の表面に磁性層を形成すると、例えば、図1に示すように、前記マスター担体の凸部における磁性層がせり出し、丸みをおびた形状となる。そのため、このような形状によって転写された磁化パターンは、漏れ磁場(斜め成分の磁界)の影響を受けるため、初期化側の磁化を不要に反転させてしまい、また、信号品位に悪影響を及ぼすという問題がある。
また、信号品位を改善するために、凹凸形状が形成された磁気転写用マスター担体作成用原盤にあらかじめ磁性層を形成し、次いで、前記磁性層が形成された前記原盤の表面に金属を電着することにより、反転板を形成し、次いで、前記原盤より前記反転板を剥離することにより作製された磁気転写用マスター担体が提案されている(例えば、特許文献2参照)。この場合、前記マスター担体凸部における磁性層のせり出しは、特に問題とはならないが、前記剥離時のパターン形成不良により、前記マスター担体の歩留まりが低下するという問題がある。
したがって、凸部における磁性層のせり出し、及び磁性層の丸みを適正化することにより、初期化側の不要な磁化反転を抑えることができ、転写信号品位に優れた磁気転写用マスター担体、及び、前記磁気転写用マスター担体を歩留まりが低下することがなく製造することができる製造方法が求められているのが現状である。
特開平10−312535号公報 特開2006−216181号公報
本発明は、従来における前記諸問題を解決し、以下の目的を達成することを課題とする。即ち、初期化側の不要な磁化反転を抑えることができ、転写信号品位に優れた磁気転写用マスター担体、及び、前記磁気転写用マスター担体を歩留まりが低下することがなく製造することができる製造方法を提供することを目的とする。
前記課題を解決するための手段としては、以下の通りである。即ち、
<1> マスター基材の表面に、該表面を基準として複数の凸部が配列されたことによって形成された凹凸パターンを有し、かつ少なくとも前記凸部表面が磁性層を有する磁気転写用マスター担体であって、
前記凸部の高さHと、前記凸部の頂辺の角部の曲率半径Rとの比率〔(R/H)×100〕が、20%以下であることを特徴とする磁気転写用マスター担体である。
前記<1>に記載の磁気転写用マスター担体は、前記凸部の高さHと、前記凸部の頂辺の角部の曲率半径Rとの比率〔(R/H)×100〕が、20%以下であるので、初期化側の不要な磁化反転が抑えられ、転写信号品位に優れる。
<2> 磁性層の厚みが40nm以上である前記<1>に記載の磁気転写用マスター担体である。
<3> 前記<1>から<2>のいずれかに記載の磁気転写用マスター担体の製造方法であって、
凹凸パターンを有するマスター基材の少なくとも前記凸部表面に磁性層を形成する磁性層形成工程と、
前記磁性層が形成されたマスター基材の凸部の形状を、前記凸部の高さHと、前記凸部の頂辺の角部の曲率半径Rとの比率〔(R/H)×100〕が、20%以下となるようにドライエッチングで成形する成形工程と、
を含むことを特徴とする磁気転写用マスター担体の製造方法である。
前記<3>に記載の磁気転写用マスター担体の製造方法では、前記磁性層形成工程において、凹凸パターンを有するマスター基材の少なくとも前記凸部表面に磁性層が形成される。前記成形工程において、前記少なくとも前記凸部表面に磁性層が形成されたマスター基材が、ドライエッチングで成形される。その結果、前記凸部の高さHと、前記凸部の頂辺の角部の曲率半径Rとの比率〔(R/H)×100〕が、20%以下である磁気転写用マスター担体が得られる。
<4> ドライエッチングがイオンビームエッチングである前記<3>に記載の磁気転写用マスター担体の製造方法である。
<5> 磁性層が形成されたマスター基材表面に対し、イオンビームを入射角が30°〜60°になるように前記マスター基材に照射する前記<4>に記載の磁気転写用マスター担体の製造方法である。
前記<5>に記載の磁気転写用マスター担体の製造方法では、磁性層が形成され、前記マスター基材の凸部の高さHと、前記凸部の頂辺の角部の曲率半径Rとの比率〔(R/H)×100〕が、20%を超える状態となっているマスター基材表面に対し、イオンビームを入射角が30°〜60°になるように前記マスター基材に照射する。その結果、前記曲率半径Rが小さくなり、前記比率〔(R/H)×100〕が、20%以下である磁気転写用マスター担体が得られる。
本発明によれば、従来における前記諸問題を解決し、前記目的を達成することができ、初期化側の不要な磁化反転を抑えることができ、転写信号品位に優れた磁気転写用マスター担体、及び、前記磁気転写用マスター担体を歩留まりが低下することがなく製造することができる製造方法を提供することができる。
図1は、従来の磁気転写用マスター担体の凸部の形状を説明するための断面概略図である。 図2は、垂直磁気記録の磁気転写方法の工程を示す説明図である。 図3は、一実施形態に係るマスターディスクの部分断面図である。 図4は、本発明の磁気転写用マスター担体の凸部の形状を説明するための断面概略図である。 図5は、一実施形態に係るマスターディスクの製造方法の説明図である。 図6は、一実施形態に係るマスターディスクの製造方法の説明図である。 図7は、一実施形態に係るマスターディスクの製造方法の説明図である。 図8は、マスターディスクの上面図である。 図9は、スレーブディスクの断面を示す説明図である。 図10は、初期磁化工程後の磁性層(記録層)の磁化方向を示した説明図である。 図11は、磁気転写工程を示す説明図である。 図12は、磁気転写工程に用いる磁気印加装置の概略構成図である。 図13は、磁気転写工程後の磁性層(記録層)の磁化方向を示した説明図である。 図14は、本発明の成形工程後における磁気転写用マスター担体の凸部の形状の一例を説明するための断面概略図である。
以下、本発明の一実施形態に係る、磁気転写用マスター担体、及び、前記磁気転写用マスター担体の製造方法について説明する。
(垂直磁気記録の磁気転写技術の概要)
まず、図2を用いて垂直磁気記録の磁気転写技術の概要を説明する。図2は、垂直磁気記録の磁気転写方法の工程を示す説明図である。図2において、符号10は被転写用の磁気ディスクとしてのスレーブディスク(垂直磁気記録媒体に相当)、符号20は磁気転写用マスター担体としてのマスターディスクを表す。
図2(a)に示されるように、スレーブディスク10のディスク平面に対し、垂直の方向から、直流磁界(Hi)を印加して、該スレーブディスク10を初期磁化する(初期磁化工程)。
初期磁化を行った後、図2(b)に示されるように、前記初期磁化後のスレーブディスク10と、マスターディスク20とを密着させる(密着工程)。
さらに、両ディスク10、20を密着させた後、図2(c)に示されるように、初期磁化の際に印加される磁界(Hi)とは、逆向きの磁界(Hd)を印加して、該スレーブディスク10に磁気転写する(磁気転写工程)。
(磁気転写用マスター担体)
本発明の磁気転写用マスター担体は、マスター基材の表面に、該表面を基準として複数の凸部が配列されたことによって形成された凹凸パターンを有し、かつ少なくとも前記凸部表面が磁性層を有し、更に必要に応じてその他の層を有する。
本発明の磁気転写用マスター担体とは、図2において示されるマスターディスク20に相当するものである。以下、このマスターディスク20を例に挙げて、本発明の磁気転写用マスター担体を説明する。
図3(a)は、マスターディスク(磁気転写用マスター担体)20の部分断面図である。このマスターディスク20は、マスター基材202と、該マスター基材202の表面上に形成される磁性層204とを備える。該マスター基材202は、その表面に、凸部206及び凹部207を有する。該凸部206は、その表面に前記磁性層204を有する。なお、本実施形態においては、製造が容易である等の理由により、凹部207の表面にも磁性層208が形成されている。他の実施形態においては、凹部207内に磁性層208がなくてもよい。
マスター基材202の凸部206の表面(頂面)に形成される磁性層204は、転写信号に対応するビット部となる。このビット部は、初期磁化を反転させる部分であり、転写部に相当する。なお、凹部207は、磁化反転しない非転写部に相当する。
図3(b)は、他の実施形態のマスターディスク20Aの部分断面図である。このマスターディスク20Aは、マスター基材212と、該マスター基材212の表面上に、転写信号に対応するビット部となる磁性層214とを備える。このマスターディスク20Aにおいては、該磁性層214が、転写部に相当し、隣り合う磁性層214の間の部分(隙間)が、非転写部に相当する。
<比率〔(R/H)×100〕>
本発明の磁気転写用マスター担体は、前記凸部の高さHと、前記凸部の頂辺の角部の曲率半径Rとの比率〔(R/H)×100〕が、20%以下であることを特徴とする。
前記比率〔(R/H)×100〕としては、20%以下であれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、15%以下が好ましい。
前記比率〔(R/H)×100〕が、20%を超えると、初期化側の磁化を不要に反転させてしまったり、信号品位に悪影響を及ぼしたりすることがある。一方、前記比率〔(R/H)×100〕が、15%以下であると、初期化側の不要な磁化反転を比較的抑えることができる点で有利である。
ここで、図4に示すように、前記凸部の高さHは、前記凸部における磁性層の頂辺の最も高い位置と、前記凸部に隣接する凹部表面の最も高い位置との差をいう。
また、前記曲率半径Rは、前記凸部における磁性層の頂辺の角部の曲率半径をいう。
前記高さH、及び前記曲率半径Rの測定方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、FIB(集束イオンビーム)により磁気転写用マスター担体から切片を切り出し、TEM(透過型電子顕微鏡)による断面観察により測定する方法が挙げられる。
前記比率〔(R/H)×100〕が20%以下であることは、全ての凸部が満たす必要はないが、測定箇所の80%以上が満たしていることが好ましく、90%以上が満たしていることがより好ましく、100%が満たしていることが特に好ましい。
<マスター基材>
前記マスター基材の形状、構造、大きさ、材質、厚みとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
前記マスター基材の形状としては、例えば、円盤状が挙げられる。
前記マスター基材の構造は、単層構造であってもよいし、積層構造であってもよい。
前記マスター基材の材質としては、公知のものの中から適宜選択することができ、例えば、ニッケル、アルミニウム、ガラス、シリコン、石英、透明樹脂、などが挙げられる。これらの材質は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
前記マスター基材の厚みとしては、50μm以上が好ましく、100μm以上がより好ましい。
前記マスター基材は、適宜製造したものを使用してもよいし、市販品を使用してもよい。
<磁性層>
前記磁性層を形成する材料(磁性層材料)としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、Fe、Co、Pt、Cr、Ni、Pd等のうち、少なくとも1つを含有する金属、合金、化合物などが挙げられる。これらの中でも、前記磁性層材料としては、Co及びPtを主成分として含むものであることが好ましく、CoとPtとからなる合金(CoPt)であることが特に好ましい。CoPtからなる磁性層を備えたマスターディスクは、保管時の錆びの発生を効果的に抑制することができ、耐食性により優れる点で、有利である。
<その他の層>
前記その他の層としては、本発明の効果を損なわない限り特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、保護層、潤滑剤層、下地層などが挙げられる。
−保護層、潤滑剤層−
前記保護層は、前記マスターディスクの機械的、摩擦特性、耐候性を改善するために、前記マスターディスク表面(磁性層上)に形成されていてもよい。前記保護層の材料としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、硬質な炭素膜が好ましく、例えば、無機カーボン、ダイヤモンドライクカーボン等を用いることができる。
また、前記保護層上には、更に、潤滑剤からなる層(潤滑剤層)が形成されていてもよい。前記潤滑剤としては、一般的に、パーフルオロポリエーテル(PFPE)等のフッ素系樹脂が用いられる。
ところで、前記保護層には、微小なピンホールが存在することに加え、前記潤滑剤層の被覆率も低いため、複数回の磁気転写工程において、前記ピンホールから水分が侵入し、従来のマスターディスク表面に磁性層酸化物が生成する場合があった。該酸化物が生成することにより、該磁性層の体積が膨張し、膨張した箇所が凸状となり、スレーブディスク表面に物理的欠陥が発生することがあった。
特に、従来のFeCoからなる磁性層を備えたマスターディスクを接触させると、該磁性層の金属元素、特にFeの腐食、酸化が選択的に発生するという問題があった。
これに対し、Feよりもイオン化傾向が低い、Co、Ptを選択したCoPtからなる磁性層を備えたマスターディスクでは、上記問題を大幅に改善することができる。
−下地層−
また、前記マスターディスクの磁性層の垂直配向性、磁気異方性エネルギー(Ku)、飽和磁化(Ms)、核生成磁界(Hn)等を調整するために、該磁性層の下(磁性層と基材との間)に、下地層が形成されていてもよい。
前記下地層の材料としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、Pt、Ru、Pd、Co、Cr、Ni、W、Ta、Al、P、Si、Tiのうち、少なくとも1つを含有する金属、合金、化合物などが挙げられる。これらの中でも、前記下地層の材料としては、Pt、Ru等の白金属の金属、合金が好ましい。また、前記下地層は、単層でもよく、多層でもよい。
(磁気転写用マスター担体の製造方法)
本発明の磁気転写用マスター担体の製造方法は、磁性層形成工程と、成形工程とを少なくとも含み、更に必要に応じて、凹凸パターンを有するマスター基材製造工程などのその他の工程を含む。
本発明の磁気転写用マスター担体は、本発明の磁気転写用マスター担体の製造方法により、好適に製造することができる。
以下、前記マスターディスクを例に挙げて、本発明の磁気転写用マスター担体の製造方法を説明する。
<凹凸パターンを有するマスター基材製造工程>
前記凹凸パターンを有するマスター基材製造工程は、凹凸パターンを有するマスター基材を製造する工程である。
前記凹凸パターンを有するマスター基材の製造方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。前記凹凸パターンを有するマスター基材の製造方法の一実施形態を図5〜図6に基づき説明する。
まず、図5(a)に示されるように、表面が平滑なシリコンウエハーである原板(Si基板)30を用意し、この原板30の上に、電子線レジスト液をスピンコート法等により塗布して、レジスト層32を形成し(図5(b)参照)、ベーキング処理(プレベーク)を行う。
次いで、高精度な回転ステージ又はX−Yステージを備えた不図示の電子ビーム露光装置のステージ上に原板30をセットし、原板30を回転させながら、サーボ信号に対応して変調した電子ビームを照射し、レジスト層32の略全面に所定のパターン33、例えば各トラックに回転中心から半径方向に線状に延びるサーボ信号に相当するパターンを円周上の各フレームに対応する部分に描画露光(電子線描画)する(図5(c)参照)。
次いで、図5(d)に示されるように、レジスト層32を現像処理し、露光(描画)部分を除去して、残ったレジスト層32による所望厚さの被覆層を形成する。この被覆層が次工程(エッチング工程)のマスクとなる。なお、基板30上に塗布されるレジストはポジ型、ネガ型のどちらでも使用可能であるが、ポジ型とネガ型では、露光(描画)パターンが反転することになる。この現像処理の後には、レジスト層32と原板30との密着力を高めるためにベーキング処理(ポストベーク)を行う。
次いで、図5(e)に示されるように、レジスト層32の開口部より原板30を表面より所定深さだけ除去(エッチング)する。このエッチングにおいては、アンダーカット(サイドエッチ)を最小にすべく、異方性のエッチングが望ましい。このような、異方性のエッチングとしては、反応性イオンエッチング(RIE;Reactive Ion Etching)が好ましく採用できる。
次いで、図6(f)に示されるように、レジスト層32を除去する。レジスト層32の除去方法は、乾式法としてアッシングが採用でき、湿式法として剥離液による除去法が採用できる。以上のアッシング工程により、所望の凹凸状パターンの反転型が形成された磁気転写用マスター担体作製用原盤36が作製される。
次いで、図6(g)に示されるように、磁気転写用マスター担体作製用原盤36の表面に均一厚さに導電層38を形成する。この導電層38の形成方法としては、PVD(Physical Vapor Deposition)、CVD(Chemical Vapor Deposition)、スパッタリング、イオンプレーティングを含む各種の金属成膜法等が適用できる。このように、導電膜の層(符号38)を1層形成すれば、次工程(電鋳工程)の金属の電着が均一に行えるという効果が得られる。導電層38としては、Niを主成分とする膜であることが好ましい。このようなNiを主成分とする膜は、形成が容易であり、且つ、硬質であるため、導電膜としてふさわしい。この導電層38の膜厚として、特に制限はないが、数十nm程度が一般的に採用できる。
次いで、図6(h)に示されるように、磁気転写用マスター担体作製用原盤36の表面に、電鋳により所望の厚さの金属(ここでは、Ni)による金属板40を積層する(反転板形成工程)。この工程は、電鋳装置の電解液中に磁気転写用マスター担体作製用原盤36を浸し、磁気転写用マスター担体作製用原盤36を陽極とし、陰極との間に通電することにより行われるが、このときの電解液の濃度、pH、電流のかけ方等は、積層された金属板40(マスター基材となるもの)に歪みのない最適条件で実施されることが求められる。
そして、上記のようにして金属板40の積層された磁気転写用マスター担体作製用原盤36が電鋳装置の電解液から取り出され、剥離槽(図示略)内の純水に浸される。
次いで、剥離槽内において、金属板40を磁気転写用マスター担体作製用原盤36から剥離し(剥離工程)、図6(i)に示すような、磁気転写用マスター担体作製用原盤36から反転した凹凸パターンを有するマスター基材42を得ることができる。
<磁性層形成工程>
前記磁性層形成工程は、凹凸パターンを有するマスター基材の少なくとも前記凸部表面に磁性層を形成する工程である。
前記磁性層形成工程の方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。前記磁性層形成工程の一実施形態を図6に基づき説明する。
図6(j)に示されるように、マスター基材42の凹凸表面上に磁性層48を形成する。前記磁性層の材料としては、前記したような磁性層材料が使用できるが、中でも、CoPtを使用することが好ましい。前記磁性層材料としてCoPtを使用することにより、保管時の錆びの発生を抑制でき、耐食性に優れたマスターディスクを得ることが可能となる。前記磁性層48の厚みとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、30nm〜320nmが好ましく、35nm〜300nmがより好ましく、40nm〜100nmが特に好ましい。
該磁性層48は、上記材料のターゲットを用い、例えば、スパッタリングにより形成される。例えば、該磁性層材料としてCoPtを用いる場合、該磁性層の組成は、主として、該磁性層形成時のスパッタ圧(力)、Pt濃度で制御出来る。スパッタ圧(力)は、0.2Pa〜50Paが好ましく、0.2Pa〜10Paがより好ましい。Pt濃度は、5原子%〜50原子%が好ましく、10原子%〜25原子%がより好ましい。また、スパッタリングで磁性層を形成する際に使用するスパッタガスとしては、一般的なアルゴン(Ar)ガスが使用できるが、その他の希ガスを使用してもよい。また、スパッタリングで磁性層を形成する際の投入電力としては、0.6W/cm〜16.0W/cmが好ましく、3.0W/cm〜10.0W/cmがより好ましい。
<成形工程>
前記成形工程は、磁性層が形成されたマスター基材の凸部の形状を、前記凸部の高さHと、前記凸部の頂辺の角部の曲率半径Rとの比率〔(R/H)×100〕が、20%以下となるようにドライエッチングで成形する工程である。
前記成形工程により、マスター基材の表面に、該表面を基準として複数の凸部が配列されたことによって形成された凹凸パターンを有し、かつ少なくとも前記凸部表面が磁性層を有する磁気転写用マスター担体であって、前記凸部の高さHと、前記凸部の頂辺の角部の曲率半径Rとの比率〔(R/H)×100〕が、20%以下である磁気転写用マスター担体を得ることができる。
前記成形工程の一実施形態を図7に基づき説明する。
−ドライエッチング−
図7(k)に示されるように、マスター基材42上に形成された磁性層48に対して、ドライエッチング(図7(k)では、ドライエッチングの一例として、イオンビームエッチングを記載)を行う。
前記ドライエッチングの方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、イオンビームエッチングが好ましい。
前記イオンビームエッチングにおける、前記磁性層が形成されたマスター基材表面に対するイオンビームの入射角としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、20°〜70°が好ましく、30°〜60°がより好ましく、40°〜50°が特に好ましい。
前記イオンビームの入射角の調整方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、前記磁性層が形成されたマスター基材をステージに置き、前記ステージを傾斜させることにより調整する方法が挙げられる。
前記イオンビームエッチングでは、前記ステージを回転させながら前記マスター基材の凸部をミリングすることが、矩形に近い形状を、磁性層の再付着が少ない状態で得られる点で、好ましい。また、前記ステージを回転させないと、前記凸部の形状が非対称になることがある。
前記イオンビームエッチングを行う時間(ミリング時間)としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、300V/30A、入射角45°の場合、ミリング時間は、1分間〜4分間が好ましく、2分間〜3分間がより好ましい。
その後、マスター基材42の内径及び外径を、所定のサイズに打抜き加工する。以上のプロセスにより、図7(l)に示すように、磁性層48(図2における磁性層204に相当)が設けられた凹凸パターンを有するマスターディスク20を作製することができる。
なお、図6(j)と図7(l)とは同図であるが、図6(j)は前記成形工程前の状態を示すのに対して、図7(l)は前記成形工程後の状態を示す。
このように形成されたマスターディスク20上の凹凸パターンは、凸領域(ランド部)のトラック方向(周方向)の幅Laに対する凹領域(スペース部)のトラック方向(周方向)の幅Saの比(Sa/La)が、1.3倍〜1.9倍、好ましくは、1.45倍〜1.75倍となるように作製されている。
図8はマスターディスク20の上面図である。図8に示されるように、マスターディスク20の表面には、凹凸パターンからなるサーボパターン52が形成される。
また、図には示さないが、マスターディスク20表面の磁性層48(図7(l)参照)の上にダイヤモンドライクカーボン等の保護膜(保護層)や、更に、保護膜上に潤滑剤層を設けてもよい。
該保護層を形成する目的は、マスターディスク20とスレーブディスク10とを密着させた際に磁性層48が傷つきやすく、マスターディスク20として使用できなくなってしまうことを防止するためである。また、潤滑剤層は、スレーブディスク10との接触の際に生じる摩擦による傷の発生などを防止し、耐久性を向上させる効果がある。
具体的には、保護層として、厚さが2nm〜30nmのカーボン膜を形成し、更にその上に潤滑剤層を形成した構成などが挙げられる。また、磁性層48と、保護層との密着性を強化するため、磁性層48上にSi等の密着強化層を形成し、その後に保護層を形成してもよい。
(スレーブディスク(垂直磁気記録媒体)の説明)
図2において示される、前記スレーブディスク10は、円盤状の基板の表面の片面或いは、両面に磁性層が形成されたものであり、具体的には、高密度ハードディスク等が挙げられる。このスレーブディスク10を例に挙げ、図9を用いて、垂直磁気記録媒体の説明を行う。
図9は、スレーブディスク10の断面を示す説明図である。図9に示されるように、スレーブディスク10は、ガラスなど非磁性の基板12上に、軟磁性層(軟磁性下地層;SUL)13、非磁性層(中間層)14、磁性層(垂直磁気記録層)16が順次積層形成された構造からなり、磁性層16の上は更に保護層18と潤滑層19とで覆われている。なお、ここでは、基板12の片面に磁性層16を形成した例を示すが、基板12の表裏両面に磁性層を形成する態様も可能である。
円盤状の基板12は、ガラスやAl(アルミニウム)等の非磁性材料から構成されており、この基板12上に軟磁性層13を形成した後、非磁性層14と、磁性層16を形成する。
軟磁性層13は、磁性層16の垂直磁化状態を安定させ、記録再生時の感度を向上させるために有益である。軟磁性層13に用いられる材料は、CoZrNb、FeTaC、FeZrN、FeSi合金、FeAl合金、パーマロイなどのFeNi合金、パーメンジュールなどのFeCo合金等の軟磁性材料が好ましい。この軟磁性層13は、ディスクの中心から外側に向かって半径方向に(放射状に)磁気異方性が付けられている。
軟磁性層13の厚さは、20nm〜2,000nmであることが好ましく、40nm〜400nmであることが更に好ましい。
非磁性層14は、後に形成する磁性層16の垂直方向の磁気異方性を大きくする等の理由により設けられる。非磁性層14に用いられる材料は、Ti(チタン)、Cr(クロム)、CrTi、CoCr、CrTa、CrMo、NiAl、Ru(ルテニウム)、Pd(パラジウム)、Ta、Pt等が好ましい。非磁性層14は、例えば、スパッタリング法により上記材料を成膜することにより形成される。非磁性層14の厚さは、10nm〜150nmであることが好ましく、20nm〜80nmであることが更に好ましい。
磁性層16は、垂直磁化膜(磁性膜内の磁化容易軸が基板に対し主に垂直に配向したもの)により形成されており、この磁性層16に情報が記録される。磁性層16に用いられる材料は、Co(コバルト)、Co合金(CoPtCr、CoCr、CoPtCrTa、CoPtCrNbTa、CoCrB、CoNi等)、Co合金−SiO、Co合金−TiO、Fe、Fe合金(FeCo、FePt、FeCoNi等)等が好ましい。これらの材料は、磁束密度が大きく、成膜条件や組成を調整することにより垂直の磁気異方性を有している。磁性層16は、スパッタリング法により上記材料を成膜することにより形成される。磁性層16の厚さは、10nm〜500nmであることが好ましく、20nm〜200nmであることが更に好ましい。
本実施形態では、例えば、スレーブディスク10の基板12として、外形65mmの円盤状のガラス基板を用い、スパッタリング装置のチャンバー内にガラス基板を設置し、1.33×10−5Pa(1.0×10−7Torr)まで減圧した後、チャンバー内にAr(アルゴン)ガスを導入し、チャンバー内にあるCoZrNbターゲットを用い、同じくチャンバー内の基板の温度を室温として、80nm厚のSUL第1層をスパッタリング成膜する。次にその上に、チャンバー内にあるRuターゲットを用いて0.8nmのRu層をスパッタリング成膜する。さらにその上に、CoZrNbターゲットを用い、80nm厚のSUL第2層をスパッタリング成膜する。こうしてスパッタ成膜されたSULを、半径方向に50Oe以上の磁場を印加した状態で室温まで昇温し室温に冷却する。
次に、例えば、Ruターゲットを用い、基板温度が室温の条件の下で放電させることによりスパッタリング成膜を行う。これによりRuからなる非磁性層14を60nm成膜する。
この後、例えば、上記と同様にArガスを導入し、同じチャンバー内にあるCoCrPtターゲットを用い、同じく基板温度が室温の条件の下で放電させることによりスパッタリング成膜を行う。これによりCoCrPt−SiOからなるグラニュラー構造の磁性層16を25nm成膜する。
以上のプロセスにより、ガラス基板に、軟磁性層、非磁性層と磁性層が成膜された転写用磁気ディスク(スレーブディスク)10を作製することができる。
(磁気転写方法)
以下、本発明の磁気転写用マスター担体を用いた磁気転写方法の一実施形態について説明する。
<スレーブディスクの初期磁化工程>
図2(a)に示されるように、スレーブディスク10の初期磁化(直流磁化)は、スレーブディスク10の表面に対し垂直に直流磁界を印加することができる装置(不図示の磁界印加手段)により初期化磁界Hiを発生させることにより行う。具体的には、初期化磁界Hiとしてスレーブディスク10の保磁力Hc以上の強度の磁界を発生させることにより行う。この初期磁化工程により、図10に示されるように、スレーブディスク10の磁性層16について、ディスク面と垂直な一方向に初期磁化Piさせる。なお、この初期磁化工程は、スレーブディスク10を磁界印加手段に対し相対的に回転させることにより行ってもよい。
<磁気転写における密着工程>
次に、マスターディスク20と、初期磁化工程後のスレーブディスク10とを図2(b)のように重ね合わせて両者を密着させる工程(密着工程)を行う。図2(b)に示されるように、密着工程では、マスターディスク20の突起状パターン(凹凸パターン)の形成されている面と、スレーブディスク10の磁性層16の形成されている面とを所定の押圧力で密着させる。
スレーブディスク10には、マスターディスク20に密着させる前に、グライドヘッド、研磨体等により、表面の微少突起又は付着塵埃を除去するクリーニング処理(バーニッシング等)が必要に応じて施される。
なお、密着工程は、図2(b)に示すように、スレーブディスク10の片面のみにマスターディスク20を密着させる場合と、両面に磁性層が形成された転写用磁気ディスクについて、両面からマスターディスクを密着させる場合とがある。後者の場合では、両面を同時転写することができる利点がある。
<磁気転写工程>
次に、図2(c)に基づき磁気転写工程を説明する。上記密着工程によりスレーブディスク10とマスターディスク20とを密着させたものについて、不図示の磁界印加手段により初期化磁界Hiの向きと反対方向に記録用磁界Hdを発生させる。記録用磁界Hdを発生させることにより生じた磁束がスレーブディスク10とマスターディスク20に進入することにより磁気転写が行われる。
本実施形態では、記録用磁界Hdの大きさは、スレーブディスク10の磁性層16を構成する磁性材料のHcと略同じ値である。
磁気転写は、スレーブディスク10及びマスターディスク20を密着させたものを不図示の回転手段により回転させつつ、磁界印加手段によって記録用磁界Hdを印加し、マスターディスク20に記録されている突起状のパターンからなる情報をスレーブディスク10の磁性層16に磁気転写する。なお、この構成以外にも、磁界印加手段を回転させる機構を設け、スレーブディスク10及びマスターディスク20に対し、相対的に回転させる手法であってもよい。
磁気転写工程における、スレーブディスク10とマスターディスク20の断面の様子を図11に示す。図11に示されるように、凹凸パターンを有するマスターディスク20をスレーブディスク10が密着させた状態で、記録用磁界Hdを印加すると、磁束Gは、マスターディスク20の凸領域とスレーブディスク10が接触している領域では強く、記録用磁界Hdにより、マスターディスク20の磁性層48の磁化向きが記録用磁界Hdの方向に揃い、スレーブディスク10の磁性層16に磁気情報が転写される。一方、マスターディスク20の凹領域は、記録用磁界Hdの印加によって生じる磁束Gが凸領域に比べて弱く、スレーブディスク10の磁性層16の磁化向きが変わることはなく、初期磁化の状態を保ったままである。
図12は、磁気転写に用いられる磁気転写装置について詳細に示したものである。磁気転写装置は、コア62にコイル63が巻きつけられた電磁石からなる磁界印加手段60を有するものであり、このコイル63に電流を流すことによりギャップ64において、密着させたマスターディスク20とスレーブディスク10の磁性層16に対し垂直に磁界を発生する構造になっている。発生する磁界の向きは、コイル63に流す電流の向きによって変えることができる。従って、この磁気転写装置によって、スレーブディスク10の初期磁化を行うことも、磁気転写を行うことも可能である。
この磁気転写装置により初期磁化させた後、磁気転写を行う場合には、磁界印加手段60のコイル63に、初期磁化したときにコイル63に流した電流の向きと逆向きの電流を流す。これにより、初期磁化の際の磁化向きとは反対の向きに記録用磁界を発生させることができる。磁気転写は、スレーブディスク10及びマスターディスク20を密着させたものを回転させつつ、磁界印加手段60によって記録用磁界Hdを印加し、マスターディスク20に記録されている突起状のパターンからなる情報をスレーブディスク10の磁性層16に磁気転写するため、不図示の回転手段が設けられている。なお、この構成以外にも、磁界印加手段60を回転させる機構を設け、スレーブディスク10及びマスターディスク20に対し、相対的に回転させる手法であってもよい。
本実施形態では、記録用磁界Hdは、本実施の形態に用いられるスレーブディスク10の磁性層16の保磁力Hcの40%〜130%、好ましくは、50%〜120%の強度の磁界を印加することにより磁気転写を行う。
これにより、スレーブディスク10の磁性層16には、サーボ信号等の磁気パターンの情報が、初期磁化Piの反対向きの磁化となる記録磁化Pdとして記録される(図13参照)。
なお、本発明の実施に際して、マスターディスク20に形成された突起状のパターンは、図7(l)で説明したポジパターンと反対のネガパターンであってもよい。この場合、初期化磁界Hiの方向及び記録用磁界Hdの方向を各々逆方向にすることにより、スレーブディスク10の磁性層16に、同様の磁化パターンを磁気転写することができるからである。また、本実施の形態では、磁界印加手段は、電磁石の場合について説明したが、同様に磁界が発生する永久磁石を用いてもよい。
なお、上述した本発明の磁気転写用マスター担体を用いて製造された垂直磁気記録媒体は、例えば、ハードディスク装置等の磁気記録再生装置に組み込まれて使用される。これにより、サーボ精度が高く、良好な記録再生特性の高記録密度磁気記録再生装置を得ることができる。
以下、本発明の実施例、試験例について説明するが、本発明は下記実施例、試験例に何ら限定されるものではない。
(試験例1)
−磁気転写用マスター担体の凸部の形状の検討−
磁気転写用マスター担体の凸部の高さHと、前記凸部の頂辺の角部の曲率半径Rとの比率〔(R/H)×100〕について、以下のようにして検討した。
<磁気転写用マスター担体の作製>
−磁気転写用マスター担体作製用原盤の作製−
8インチのSi(シリコン)ウェハー(基板)上に、電子線レジストを、スピンコート法により、100nmの厚みで塗布した。塗布後、基板上の該レジストを、回転式電子線露光装置を用いて露光し、露光後の該レジストを現像して、凹凸パターンを有するレジストSi基板を作製した。
その後、該レジストをマスクとして用い、該基板に対して、反応性イオンエッチング処理を行い、凹凸パターンの凹部を掘り下げた。該エッチング処理後、該基板上に残存するレジストを可溶溶剤で洗浄し、除去した。除去後、該基板を乾燥したものを、マスター担体を調製するための原盤とした。
なお、本試験例1で用いたパターンは、大別すると、データ部と、サーボ部からなる。該データ部は、凸巾:90nm、凹巾:30nm(TP=120nm)のパターンで構成されている。該サーボ部は、基準信号長:80nm、総セクタ数:120、プリアンブル(40bit)/SAM(6bit)/Sectorcode(8bit)/CylinderCode(32bit)/Burstパターンで構成されている。該SAM部は、“001010”であり、SectorがBinary、CylinderはGray変換を用いている。Burst部は一般的な4バースト(各バーストは16bit)である。マンチェスター変換を使用した。
−メッキ法による磁気転写用マスター担体中間体の作製−
上記原盤上に、スパッタ法を用いてNi(ニッケル)導電性膜を20nm形成した。該導電性膜を形成した後の原盤を、スルファミン酸Ni浴に浸漬し、電解メッキにより、200μmの厚みのNi膜を形成した。その後、原盤よりNi膜を引き剥がし、洗浄して、Ni製のマスター担体中間体を得た。
−磁性層の形成−
上記磁気転写用マスター担体中間体上に、アルゴン圧力0.3Pa条件下で、スパッタリング法により、磁性層材料としてCoPtを用い、磁性層の厚み(磁性層の堆積量)が下記表1となるように磁性層を形成した。磁性層形成時のスパッタリング条件は以下の通りである。以上により、試験例1の磁気転写用マスター担体を作製した。
[スパッタリング条件]
アルゴン圧力:0.3Pa
基板−ターゲット間距離:200mm
投入電力(DC電源):1000W
装置:芝浦メカトロニクス製スパッタリング装置(OctavaII)
<磁気転写用マスター担体の凸部の形状の測定>
前記で得られた磁気転写用マスター担体について、FIB(SIIナノテクノロジー社製)で切片を切り出し、TEM(日立ハイテクノロジーズ社製)にて形状観察を行い、磁気転写用マスター担体の凸部の高さHと、前記凸部の頂辺の角部の曲率半径Rとを求めた。
磁気転写用マスター担体の凸部の高さHと、前記凸部の頂辺の角部の曲率半径Rとの比率〔(R/H)×100〕を表1に示す。
<垂直磁気記録媒体の作製>
2.5インチのガラス基板上に、スパッタリング法を用いて、軟磁性層、第1非磁性配向層、第2非磁性配向層、磁気記録層及び保護層を、この順に形成した。更に、該保護層の上に、ディップ法により潤滑剤層を形成した。
軟磁性層の材料として、CoZrNbを用いた。該軟磁性層の厚みは、100nmであった。ガラス基板をCoZrNbターゲットと対向させて配置し、Arガスを0.6Pa圧になるように流入させ、DC1500Wで成膜した。
第1非磁性配向層としてTi:5nm、第2非磁性配向層としてRu:6nmを形成した。
第1非磁性配向層は、Tiターゲットと対向配置し、Arガスを0.5Pa圧になるように流入し、DC1000Wで放電し、5nmの厚さになるように、Tiシード層を成膜した。第1非磁性配向層形成後にRuターゲットと対向させて配置し、Arガスを0.8Pa圧になるように流入させ、DC900Wで放電し、6nmの厚さになるように第2非磁性配向層を成膜した。
磁気記録層として、CoCrPtO:18nmを形成した。CoCrPtOターゲットと対向させて配置し、Oを0.06%を含むArガスを14Pa圧になるように流入させ、DC290Wで放電し磁気記録層を作製した。
磁気記録層を形成した後に、C(カーボン)ターゲットと対向させて配置し、Arガスを0.5Pa圧になるように流入させ、DC1000Wで放電し、C保護層(4nm)を形成した。この記録媒体の保磁力は、334kA/m(4.2kOe)とした。
更に、該媒体にディップ法により、PFPE潤滑剤を2nmの厚さで塗布した。
以上のようにして、垂直磁気記録媒体を調製した。
<磁気転写>
上記垂直磁気記録媒体に対して、初期化を行った。初期化の際に印加する磁界の強度(初期磁界強度)は10kOeであった。
初期化済み垂直磁気記録媒体に対して、上記磁気転写用マスター担体を対向して配置し、これらを0.7MPaの圧力にて密着させた。互いに密着した状態で、磁界を印加して、磁気転写を行った。磁気転写に用いた磁界強度は4.6kOeであった。磁界印加終了後、磁気転写用マスター担体を、垂直磁気記録媒体から剥離した。
<転写信号品位の評価>
上記磁気転写により記録された転写信号の品位を評価した。前記評価としては、プリアンブル部のTAA(Track Average Amplitude)再生出力を、半径15mm位置の全セクタに対してそのSNR(シグナル/ノイズ比)を算出し、下記基準により評価した。結果を表1に示す。
◎:12dB以上
○:10dBより大きく、12dB未満
△:5dBより大きく、10dB以下
×:5dB以下
表1の結果から、磁気転写用マスター担体の凸部の高さHと、前記凸部の頂辺の角部の曲率半径Rとの比率〔(R/H)×100〕が17%であるときが、転写信号の品位が最も優れていた。磁性層の厚みは、厚いほうが理想的には転写信号の品位が良いが、磁性層の厚みが40nm以上であると、転写信号の品位がやや低下していた。そのため、前記比率〔(R/H)×100〕は、20%以下とすることが好ましいことがわかった。
なお、磁性層なしの場合の高さHは、前記凸部の最も高い位置と、前記凸部に隣接する凹部表面の最も高い位置との差とし、曲率半径Rは、前記凸部の頂辺の角部の曲率半径とした。
(実施例1〜4)
<磁気転写用マスター担体の作製>
試験例1の磁性層の形成において、磁性層の厚み(磁性層の堆積量)を70nmとし、下記のイオンビームエッチングによる成形工程を行った以外は、試験例1と同様にして実施例1〜4の磁気転写用マスター担体を作製した。
この実施例1〜4では、歩留まりを低下させることがなく磁気転写用マスター担体を作製することができた。
−成形工程−
前記磁性層が形成されたマスター基材の凸部の形状をイオンミリング装置(伯東社製)を用いて成形した。前記成形では、前記磁性層が形成されたマスター基材をステージに置き、該ステージの角度を調整して、前記マスター基材表面に対し、表2に記載の各角度でイオンビームを照射した。その際、前記ステージを回転させながらミリングを行った。前記ミリングは、300V/30Aで3分間行った。
前記成形工程により、図14に示すように前記凸部における磁性層のせり出し、及び磁性層の丸みを適正化することができた。
(実施例5)
<磁気転写用マスター担体の作製>
実施例1の磁気転写用マスター担体の作製において、磁性層の厚み(磁性層の堆積量)を30nmとし、成形工程を行わなかった以外は、実施例1と同様にして実施例5の磁気転写用マスター担体を作製した。
(比較例1)
<磁気転写用マスター担体の作製>
実施例1の磁気転写用マスター担体の作製において、成形工程を行わなかった以外は、実施例1と同様にして比較例1の磁気転写用マスター担体を作製した。
(比較例2)
<磁気転写用マスター担体の作製>
試験例1の磁性層の形成において、磁性層の厚み(磁性層の堆積量)を70nmとし、下記のArエッチングを行った以外は、試験例1と同様にして比較例2の磁気転写用マスター担体を作製した。
−Arエッチング−
前記磁性層を形成した後、以下の条件でスパッタリング装置に逆バイアスをかけた逆スパッタリング現象を用いたArエッチングを3分間行った。
<Arエッチング条件(基本条件)>
プラズマ圧力=0.16Pa、基板−ターゲット間距離=75mm、DCパワー=1500W
装置:芝浦メカトロニクス製スパッタリング装置(OctavaII)
<評価>
前記試験例1と同様にして、前記実施例1〜5、及び比較例1〜2の磁気転写用マスター担体の凸部の形状を測定した。結果を表2に示す。
また、前記実施例1〜4の磁気転写用マスター担体の成形工程後の磁性層の厚み、及び前記比較例2の磁気転写用マスター担体のArエッチング後の磁性層の厚みについて、得られた磁気転写用マスター担体をFIB(SIIナノテクノロジー社製)で切片を切り出し、TEM(日立ハイテクノロジーズ社製)にて形状観察を行うことにより求めた。
また、前記試験例1と同様にして、前記実施例1〜5、及び比較例1〜2の磁気転写用マスター担体を用いて垂直磁気記録媒体へ磁気転写を行い、該磁気転写により記録された転写信号の品位を評価した。結果を表2に示す。
表2の結果から、イオンビームエッチングにより、磁気転写用マスター担体の凸部の高さHと、前記凸部の頂辺の角部の曲率半径Rとの比率〔(R/H)×100〕が20%以下であった実施例1〜4の磁気転写用マスター担体の場合では、前記比率〔(R/H)×100〕が20%より大きかった比較例1、及びスパッタ装置の逆スパッタリング現象によるArエッチングを行った比較例2の磁気転写用マスター担体の場合と比べて、転写信号の品位が優れていた。
また、実施例1〜4の中でも、イオンビームエッチングを行い、前記〔(R/H)×100〕が15%以下であり、磁性層の厚みが40nm以上であり、イオンビームの入射角が30°〜60°であった実施例1〜3の磁気転写用マスター担体は、特に転写信号の品位が優れていた。
(試験例2)
−成形工程の時間の検討−
前記成形工程の時間について、以下のようにして検討した。
<磁気転写用マスター担体の作製>
実施例1の磁気転写用マスター担体の作製において、成形工程におけるイオンビームの入射角を45°とし、ミリング時間を表3に記載のミリング時間とした以外は、実施例1と同様にして磁気転写用マスター担体を作製した。
<評価>
前記試験例1と同様にして、試験例2の磁気転写用マスター担体の凸部の形状を測定した。また、前記実施例1と同様にして成形工程後の磁性層の厚みを測定した。結果を表3に示す。
また、前記試験例1と同様にして、試験例2の磁気転写用マスター担体を用いて垂直磁気記録媒体へ磁気転写を行い、該磁気転写により記録された転写信号の品位を評価した。結果を表3に示す。
表3の結果から、300V/30A、入射角45°の場合、ミリング時間は2分間〜3分間が好ましいことがわかった。
本発明の磁気転写用マスター担体は、凸部における磁性層のせり出し、及び磁性層の丸みを適正化することにより、初期化側の不要な磁化反転を抑えることができ、転写信号品位に優れているので、特に垂直磁気記録媒体の磁気転写に好適である。
10 スレーブディスク(垂直磁気記録媒体)
20、20A マスターディスク(磁気転写用マスター担体)
30 原板
32 レジスト層
33 パターン
36 磁気転写用マスター担体作製用原盤
38 導電層
40 金属板
42 マスター基材
48 磁性層
52 サーボパターン
202、212 マスター基材
204、208、214 磁性層
206 凸部
207 凹部
12 基板
13 軟磁性層
14 非磁性層
16 磁性層
18 保護層
19 潤滑層
60 磁界印加手段
62 コア
63 コイル
64 ギャップ

Claims (5)

  1. マスター基材の表面に、該表面を基準として複数の凸部が配列されたことによって形成された凹凸パターンを有し、かつ少なくとも前記凸部表面が磁性層を有する磁気転写用マスター担体であって、
    前記凸部の高さHと、前記凸部の頂辺の角部の曲率半径Rとの比率〔(R/H)×100〕が、20%以下であることを特徴とする磁気転写用マスター担体。
  2. 磁性層の厚みが40nm以上である請求項1に記載の磁気転写用マスター担体。
  3. 請求項1から2のいずれかに記載の磁気転写用マスター担体の製造方法であって、
    凹凸パターンを有するマスター基材の少なくとも前記凸部表面に磁性層を形成する磁性層形成工程と、
    前記磁性層が形成されたマスター基材の凸部の形状を、前記凸部の高さHと、前記凸部の頂辺の角部の曲率半径Rとの比率〔(R/H)×100〕が、20%以下となるようにドライエッチングで成形する成形工程と、
    を含むことを特徴とする磁気転写用マスター担体の製造方法。
  4. ドライエッチングがイオンビームエッチングである請求項3に記載の磁気転写用マスター担体の製造方法。
  5. 磁性層が形成されたマスター基材表面に対し、イオンビームを入射角が30°〜60°になるように前記マスター基材に照射する請求項4に記載の磁気転写用マスター担体の製造方法。
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