JP5463457B2 - 抗菌性耐熱ガラス容器の製造方法 - Google Patents

抗菌性耐熱ガラス容器の製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、抗菌性を付与した耐熱ガラス容器に関するものであり、特に、耐熱衝撃性や耐腐食性に優れる抗菌性耐熱ガラス容器を安価かつ大量に生産するのに適した製造方法に関するものである。本明細書で使用する「耐熱ガラス容器」とは、電子レンジで使用できたり、熱湯消毒が行える耐熱温度差を有していたりするものであり、具体的にはホウケイ酸ガラスやアルミノケイ酸ガラスが使用されたガラス製容器を意味するものである。
抗菌性を付与させた物品および、その製造方法に関する技術は多数開示されている。抗菌性を発現させる抗菌剤には、わさびをはじめとする天然抗菌剤、銅や銀をはじめとする金属系抗菌剤、および酸化チタンをはじめとする酸化物系抗菌剤が知られている。食品保存の用途では、抗菌力、安全面から銀が使用されている。
抗菌性を付与した物品のうち、ガラスに抗菌性能を付与するための方法は、大別すると三種類が知られている。第一の方法は、特許文献1,2に代表される、銀をガラス原料に混合させて溶融成型させる方法である。この方法の抗菌性能は、水やその他液体中に溶出した銀により発現するものであり、易溶出性のホウ酸塩ガラスやリン酸塩ガラスが用いられる。第二の方法は、銀を含むコーティング層をガラス物品表面に付与させる方法である。この方法は、第一の方法に比較して相対的に使用する銀量を少なくすることができ、第一の方法より経済的である。第三の方法は、特許文献3,4に代表される、銀を含む液体をガラス物品の表面に塗布し、加熱処理することにより銀をガラス物品表面から物品内部に拡散させる方法である。これは、第一および第二の方法の問題点を改善した方法であり、銀がガラス物品表面部に集中して分布し、しかも第二の方法に比べて磨耗などにより短期に抗菌性が消耗せず、物品の表面性質が著しく変化することがない。
容器への適用例として、例えば、特許文献5には、硝酸銀を含有する溶液に界面活性剤を混ぜ合わせた液を塗布後に焼成する方法が開示されている。また、特許文献6では、抗微生物剤を含む液が熱分解噴霧、真空スパッタリング、銀鏡反応として知られる金属抗微生物剤の対応する塩の還元による沈殿を含む方法により、無機抗菌剤を金属として基板に膜形成する方法が開示されている。
硬質のホウケイ酸ガラスに抗菌性能を付与した例として、特許文献7が知られている。
特開平11−60268号公報 特開平11−228171号公報 特開平10−15041号公報 特開2000−53451号公報 特開平11−278866号公報 特表2008−524097号公報 特表2007−507407号公報 特許3453515号
上記特許文献1,2に代表される第一の方法は、易溶出性のホウ酸塩ガラスやリン酸塩ガラスが用いられるが故に耐久性に劣るため、ガラス容器としての用途では使用できず、樹脂に練りこむことにより樹脂製品に抗菌性を付与するのに使用されている。また、ガラス表面に存在する銀が溶出することで、抗菌性を発現する役割をするので、ガラス内部の銀は抗菌性には何の効果も及ぼさない。その結果として、相対的にガラスに銀を非常に多く含有させる必要があり経済的でない問題がある。
上記第二の方法は、コーティング層の形成により物品の表面性質を著しく変えてしまう問題がある。また、洗浄による磨耗により抗菌性が著しく低下する問題がある。
上記特許文献3,4に代表される第三の方法は、食品を保存する抗菌性ガラス容器への適用を想定した場合、最も適していると考えられるが、容器は様々な大きさや形があり、大量生産が困難である。また、抗菌処理されるものはソーダライムガラスが主であったため、電子レンジ等に使用できない問題がある。さらに、ソーダライムガラスはアルカリによる腐食が起こるため、食器洗浄機で使用されるアルカリ洗剤による洗浄により抗菌性が劣化しやすい。特許文献8では、強化処理を行い表面に圧縮処理を行うことでこの問題を解決しているが、強化処理を行う必要があるため、工程が増え経済的でなく、熱処理条件によっては表面の圧縮応力が緩和される問題がある。
一方で硬質のホウケイ酸ガラスは一般的に耐腐食性が強く、抗菌性能を付与した場合の抗菌持続性が良いと考えられる。上記のように硬質のホウケイ酸ガラスに抗菌性能を付与した例として、特許文献6記載のものがあるが、抗菌性能が発現するのにガラス表面から0〜2μmに存在する銀量が0.6質量%以上必要である。これは、銀膜形成にムラが生じやすいためと考えられる。
上記特許文献5に開示された方法では、硝酸銀水溶液に界面活性剤を添加して濡れ性を良くして、均一に硝酸銀水溶液を塗布する方法が示されているが、乾燥時に銀化合物の堆積が起こるため容器のような形状の物品では乾燥の際にムラになりやすい。また、ブロアーによる強制乾燥は、抗菌剤入りの溶液が飛散してしまうため使用できず、乾燥に時間がかかる。
上記特許文献6記載の方法において、高温で行う熱分解噴霧や真空スパッタにより容器に銀膜を形成するのは、設備費が高額となるし、深さのある容器では均一な膜形成が困難な問題がある。銀鏡反応での銀膜付けは、室温で行えること、また銀膜厚を変えられることから、熱拡散に必要な銀だけを付着させることができ経済的であるが、基板がNaなどのアルカリ金属を多く含有するソーダライムガラスであるため、ヤケが起こりやすく、大気中に保管することで容易に疎水性となりウォータースポットを形成しやすい問題がある。ここでいうウォータースポットとは、水道水中に含まれるミネラル分や大気中の塵が水滴に凝集したものが、乾燥後のガラス表面にしみ状に付着する現象である。
これらの問題のため、現在は、電子レンジで使用可能な抗菌性能を有する容器は抗菌成分を練りこんだ抗菌性耐熱樹脂製品が主流である。しかし、樹脂容器は洗浄によりキズが付きやすく、食品保存において、色、匂い移りが起こり易いため、抗菌性が付与されていても衛生面の不利がある。また、樹脂に練りこむ抗菌剤入りの材料は、抗菌剤が溶出しやすく設計されたガラスやゼオライトであるため、樹脂の表面に露出する抗菌成分は溶出しやすく抗菌持続性にも課題があった。
さらには、樹脂製品は疎水性であり乾燥時にウォータースポットが残りやすい。ウォータースポットが生じると乾燥する際に汚れが凝集しやすく衛生上好ましくない。
食品保存容器などのガラス容器の清浄さを追求した場合、色や匂い移りが少なく、耐熱衝撃性に優れ、電子レンジでの使用や熱湯消毒が問題なく行え、かつウォータースポットの残りにくい抗菌性耐熱ガラス容器が望まれている。本発明は、従来技術における、上記した制限や欠点を改善するためになされたものであり、電子レンジ使用や熱湯消毒が問題なく行え、かつ種種の大きさや形の容器に抗菌性能を付与した耐熱ガラス容器を効率的に製造する方法および耐熱ガラス容器を提供するものである。
本発明は、上記目的を達成するために、耐熱ガラス容器の少なくとも内表面を研磨剤を使用して洗浄処理するに際して、研磨剤が酸化セリウム、コロイダルシリカ、酸化ランタン、酸化鉄、酸化マンガン、酸化ジルコニウムから選択される少なくとも1種であり、研磨剤の粒度がJIS R 6001に記される#800より細かい研磨剤を使用し、JIS R 3257に規定された方法で測定したガラス清浄化処理後の表面接触角が30°以下となるように洗浄を行う清浄化処理する工程と、この清浄化処理した表面に銀を含有する溶液を塗布し銀膜を形成する工程と、銀膜が形成された容器を300℃〜550℃で加熱処理することにより、ガラス表面から内部に銀イオンを拡散させる工程と、ガラス内部に拡散させず表面に残留した銀を洗浄除去する工程とを有することを特徴とする。
前記銀膜を形成する工程が、銀を含有する溶液の還元による金属銀の沈殿を利用することを特徴とする。
前記表面に残留した銀を洗浄除去する工程が、HNO,FeCl,Fe(NO,HCl,HSO,Hのいずれかを含む溶液を使用することを特徴とする。
前記耐熱ガラス容器が、0〜300℃の範囲における熱膨張係数が30〜55×10−7/℃であるホウケイ酸ガラスからなることを特徴とする。
本発明によれば、銀膜形成工程の前にガラス表面を清浄化処理することにより、ムラのない銀膜を安定して形成することができ、結果として、色や匂い移りが少なく、電子レンジでの使用や熱湯消毒が問題なく行え、かつ日常使用における洗浄後の乾燥時間が短い抗菌性耐熱ガラス容器を提供することができる。また、本発明による耐熱ガラス容器は、乾燥が早く汚れが付着しにくいが故に日常的な洗浄で初期の抗菌性能を安定して維持できる効果がある。
本発明の実施例および比較例ガラスの水の接触角の経時変化を示した図である。 D−SIMS(Dynamic Secondary Ion Mass Spectrometry=二次イオン質量分析計)を用いて測定した本発明の実施例おける銀の拡散状態を示す図である。 D−SIMSを用いて測定した本発明の実施例ガラスにおける加熱処理条件の違いによる銀の拡散状態を示す図である。
以下に、本発明における抗菌性耐熱ガラス容器の製造方法を詳細に説明する。製造工程を具体的に記述すると以下のようになる。
(1)耐熱ガラス容器の銀を拡散させる面を清浄化することにより、ガラスの清浄な表面を形成する工程(清浄化工程)
(2)(1)の表面に、塩化第1スズまたは塩化パラジウムの活性化処理液を接触させる工程(活性化処理工程)
(3)銀を含有している銀塩の溶液(以下、銀液と称することがある)に還元液を作用させて、無電解メッキにより金属銀の膜を形成する工程(銀膜形成工程)
(4)加熱により銀をガラス中に拡散させる工程(加熱処理工程)
(5)余分な残留銀を除去する工程(残留銀除去工程)
(6)洗浄、乾燥する工程(洗浄乾燥工程)。
次に、本発明における抗菌性耐熱ガラス容器の製造方法の各工程について説明する。
まず、本発明は銀膜を形成する工程の前に耐熱ガラス容器の少なくとも内表面、すなわち銀イオンを拡散させる面を清浄化処理する工程(清浄化工程)を有する。耐熱ガラス容器を清浄化処理する工程は、ガラスに親水性を持たせてウォータースポットが残りにくくするとともに銀膜形成工程において銀膜を均一に形成させるために必要な工程である。内容物が接触する表面は抗菌処理を行うため、少なくとも内表面には清浄化処理が必要である。なお、親水性の付与を目的に外表面に清浄化処理を行ってもよい。また、抗菌処理する面を清浄化処理しておくことにより、乾燥が早く汚れが付着しにくいが故に初期の抗菌性能を安定して維持できる効果が付与される。
ここで言う清浄化処理は、代表的には研磨剤を使用してガラス表面を洗浄する処理である。ガラス清浄化処理後の表面接触角がJIS R 3257に規定された方法で測定して0°以上30°以下、好ましくは20°以下、もっとも好ましくは10°以下となるように洗浄する。研磨剤は例えば、酸化セリウム、コロイダルシリカ、酸化ランタン、酸化鉄、酸化マンガン、酸化ジルコニウムから選択され、粒度がJIS R 6001に記される♯800より細かい研磨剤を使用することが好ましい。また、これら研磨剤を含有するスポンジやブラシも使用できる。
使用できる研磨剤は、前記に列挙したものに限らず一般的にガラスの研磨に使用可能なものであれば使用できる。中でも、ガラスに不要なダメージを与えず、所望とする清浄化効果が得られるものとして、前記した酸化セリウム、コロイダルシリカ、酸化ランタン、酸化鉄、酸化マンガン、酸化ジルコニウムから選択される少なくとも1種を用いることが好ましい。
研磨剤の粒度は、JIS R 6001に記される♯800より粗いものでは、目に見えるキズがガラスに形成されるので外観上好ましくないだけでなく、後の銀膜形成工程でのムラの原因になり、また本発明の特徴であるガラス表面の親水性を損なう原因になる。それより粒度の細かい研磨剤であれば、軽い研磨でもガラス表面が清浄化され、かつ目に見えるキズがつきにくい。♯800よりも粒度の細かい研磨剤であれば使用できるが、目に見えるキズを少なくするためには粒度はより細かい方が望ましい。好ましくは♯1500以上、より好ましくは♯3000以上がよい。♯10000でも清浄化効果は確認できる。
研磨剤の濃度は、溶媒(通常は純水)に対して0.1質量%でも、容量1Lの冷水筒の内面1本あたりスポンジを用いた60秒程度の洗浄で水の接触角が20°以下になることを確認している。好ましくは、0.1質量%以上10質量%以下である。10質量%より過剰の研磨剤を使用しても効果に変化はなく、かえってその後の水洗を含めた洗浄効率を下げ、廃液処理の負担を増すので好ましくない。
ガラスは製造してから時間が経つと雰囲気中からの有機系物質の吸着によりその表面特性が大きく変化する。特に、Naなどのアルカリ金属を多く含有するソーダライムガラスでは、ガラス内部からマイグレートしたNa,Ca2+イオンが空気中の炭酸ガスと反応し、NaCO、CaCO塩を形成する。こうした変質層を有するガラスは一般的に疎水性を示す。変質した表面のまま、銀鏡反応すると部分的に活性化処理液や銀液が濡れない部分があるために、銀膜を形成させたときにムラやヌケがでてしまう。
変質したガラス表面は研磨することで、それが数秒の非常に軽い研磨であっても、目視で、または適切な場合には走査型電子顕微鏡でさえ見えないほど、清浄なガラス表面となる。これは結果として水の接触角が30°以下の親水性を示す場合に確認できる。ただし、処理されるガラス表面に研磨剤を添加した溶液に曝すあるいは研磨液を流すだけでは、その清浄化効果が不確実なため、スポンジや布または柔らかく密度の濃いブラシなどを用いて表面に物理的な力を作用させることが好ましく、特に面で接触する手段を選択することが好ましい。
清浄化処理はJIS R 3257の方法で測定した表面接触角が30°以下となるように洗浄を行うが、表面接触角を30°以下とした理由は、濡れ性が良く、水玉になりにくいためであり、好ましくは20°以下で水膜が薄く伸びる状態である。接触角の下限を特に限定しない理由は、上記清浄化によっては、ガラスが非常に親水性の良いガラスとなり、水の接触角が5°以下になることで、機器による測定が不能であるためである。表面接触角が30°以下では、実質的にムラやヌケなく銀膜の形成が行え、20°以下では水膜が薄く伸びる。10°以下では超親水性と呼ばれ、少量の液でも基板上に一様に伸び、均一な銀膜形成を効率的に行うことができる。
次いで、清浄化処理した表面に塩化第1スズまたは塩化パラジウムを含有する活性化処理液を接触させ、第1スズイオンまたはパラジウムイオンを触媒として担持させる(活性化処理工程)。これによって銀鏡反応による銀をガラス表面に安定して沈殿凝着させることができる。
その後、活性化処理された表面に銀を含有する溶液を塗布し銀膜を形成する。銀は抗菌性能が高いことが知られているが、食品保存用途においては安全性が高いことも重要であり、本発明では安全面でも優れている銀を選択した。
銀膜を形成する工程(銀膜形成工程)は、銀液の還元による金属銀の沈殿を利用した方法であることが好ましい。この方法は鏡の製造にも利用されている、いわゆる銀鏡反応である。食品保存容器などの耐熱ガラス容器は形状が様々であり、例えば、スパッタ法では形状が異なる容器に銀膜を均一に塗布することは難しい。銀鏡反応では容器内に反応液を入れ、容器を揺動させたり、回転させることで、複雑な形状であっても内表面に均一に銀膜を形成できるメリットがある。銀鏡反応を用いずに、銀を含有する溶液を塗布することも可能であるが、安定した抗菌性能を発現させるためには、塗布液の銀濃度を比較的高くする必要があり、少ない銀使用量で確実な銀膜形成ができる銀鏡反応を利用した方法に利点がある。
銀鏡用メッキは、銀液にアンモニア水を加えた溶液(以下、銀調合液と称することがある)にホルマリン、グルコース、グリオキザール、ヒドラジン等の還元液を反応させることで銀をガラス表面に析出、堆積させることにより行う。銀塩としては、通常、硝酸銀を用いるが、硫化銀、塩化銀などの銀塩でも銀鏡反応は起きるので、使用は可能である。
まず、銀調合液を、ディップ、スプレーなどの方法でガラス表面に塗布し、その後前記の他アセトアルデヒド等などの還元液を作用させることにより、銀をガラス表面に沈殿凝着させることができる。銀調合液と還元液は混合してから噴霧または塗布しても、緻密な金属銀膜を形成できる。この工程は、室温で行うことが可能である。また、この混合液の噴霧または塗布の際、上記活性化処理を行うことで、沈殿させた銀が反射を伴う形態としてガラス表面に化学的に付着するため、銀膜形成後は、容器を傾けたり、回転させたりしても問題ない。なお、余剰の銀調合液と還元液との混合液は、容器外に排出することが好ましい。
銀鏡反応による銀膜形成は、ガラス表面に金属銀を化学的に膜付けすることで容易に剥離せず、銀膜形成後は容器を反転させたり、回転させたり、またブロワーや加熱による乾燥が行えるメリットがある。これにより、銀膜形成、乾燥、焼成を連続的に行うことができ、大量生産に適する。特に、加熱による水分の蒸発を行う際は、熱衝撃性に優れるホウケイ酸ガラスであれば、ヒートショックで割れる危険が少なく、銀膜付けから連続的に加熱された電気炉に投入することもできる。
銀膜を形成した面は純水で余剰の液を洗い流してもよく、これにより、残液によるムラの発生を防止し、また次の加熱処理時に不要な異物等がガラス表面に焼きつくことを防止することができる。
形成する銀膜を、鏡のように可視光を透過させずに完全に反射するように厚くすると、焼成後に金属銀がガラス表面に残る。銀はイオンとして拡散する、つまり酸化銀となりガラス中に拡散すると考えられるので、金属銀が残る部分は銀の拡散が起こるガラス界面に酸素の供給が不足して、銀が十分に拡散しないことが予測される。このため、銀調合液の濃度は、鏡を形成する場合に用いられるように濃い濃度、例えば5g/L以上の銀は必要なく、1g/L程度の比較的薄い濃度の銀調合液でもよい。ガラス表面に0.2mg/cm以上の銀を付着させると、可視光が透過せず完全に反射する。このままで、焼成すると焼成後も金属銀がガラス表面に残る。0.1mg/cm以下では、可視光が完全に反射するには至らず、波長330nm付近で10%以上の透過率が確保され、焼成後の表面は鏡のような反射を伴わず、残留した酸化銀は容易に除去される。また、焼成時に拡散する銀量を確保するために、0.01mg/cm以上の銀膜を形成することが好ましい。銀膜厚は、銀調合液や還元液の濃度、温度、量、混合比、反応時間により調整でき、付着する銀量は、銀膜形成後の質量増、透過率、反射率、色度によって算出できる。
次いで、銀膜が形成された容器を300℃〜550℃に加熱処理することで、ガラス表面から内部に銀イオンを拡散させる(加熱処理工程)。加熱処理が300℃未満では銀の拡散が不十分となり、十分な抗菌性能を安定して得ることができない。300℃未満でも、銀は拡散するものの、拡散速度が遅いため所望の抗菌特性を得るためには処理時間が長くなりすぎる。300℃以上では銀が十分な持続性を示す程度に拡散する。拡散時間短縮のためには350℃以上での焼成が好ましい。ガラス転移点以上では、銀のコロイドが形成し着色を伴うため、内容物の色を確認したい用途においては好ましくない。また、ガラス転移点以上で焼成した場合は、再徐冷しなければガラスに歪が残ってしまうので工程上好ましくない。550℃以下であれば、硬質のホウケイ酸ガラスのガラス転移点より低く再徐冷の手間がない。
熱処理時間は、温度によって拡散するAg量が支配的に決まるため、ホウケイ酸ガラスでは2時間以上の熱処理は必要なく、例えば、300℃で30分以上、550℃で10分以上あれば十分であり、生産効率を考慮すれば、長くとも1時間以内とすることが好ましい。同一条件で比較した場合、ソーダライムガラスよりもホウケイ酸ガラスの方がガラス中への銀イオン拡散速度が速いため、熱処理時間を短縮できる利点がある。
以上の加熱処理によりガラス内部には銀イオンが拡散し、特に、表面近傍に存在する銀が抗菌性能に大きく寄与することがわかっている。食品保存容器の家庭での使用を考えた場合、洗浄による表面の摩耗を考慮する必要があり、銀イオンの拡散深さは0.5μm以上にすることが好ましい。0.5μm以上あれば、家庭での長期にわたる使用で抗菌性能が失われる可能性を極めて低くできる。
銀イオンを拡散させるために加熱処理を行った後、ガラス表面に余分な銀が残留するため、残留銀を除去する(残留銀除去工程)。この残留銀の除去には、HNO,FeCl,Fe(NO,HCl,HSO,Hのいずれかを含む溶液が使用できる。表面に銀化合物が残ると、ガラス表面が親水性を示さなくなるため、残留銀は上記溶液による洗浄により完全に除去する必要がある。前記条件で薄く銀膜を形成し、焼成後にガラス表面の銀が金属銀でなく酸化銀として存在した場合、スポンジで軽くこすることで残留銀を取り除くことができるが、保存容器の形状が複雑になると、部分的に残留銀の除去が困難になることがある。特に金属銀として残留した場合は、ガラスに焼き付いており、スポンジでの除去が難しい。HNO,FeCl,Fe(NOを含む溶液が、かかる洗浄工程のために好適であり、実質的に金属銀が溶解する濃度(例えば、1mol/LのHNO)であればよい。硬質のホウケイ酸ガラスは、耐腐食性に優れるため、濃い酸を用いた洗浄でもガラス中に拡散したAgには影響せず、表面の残留銀のみを効果的に除去できる。濃硝酸を用いた場合では、接触させるだけでも容易に除去することができる。
さらに、その後純水で洗浄、乾燥して抗菌性耐熱ガラス容器を得る(洗浄乾燥工程)。
本発明における耐熱ガラス容器は、0〜300℃の範囲における熱膨張係数が30〜55×10−7/℃のホウケイ酸ガラスを使用する。抗菌性能が求められる容器は、食品保存での使用が一般的であり、電子レンジで使用することができるPYREX(登録商標)(コーニング社)に代表される、耐熱衝撃性に優れた硬質のホウケイ酸ガラスが望ましい。ただし、熱膨張係数が30×10−7/℃未満のガラスは溶融性が悪いため、均質なガラスを得ることが難しく、複雑な形状に成形しづらい。一方、熱膨張係数が55×10−7/℃超では、耐熱衝撃性に劣り、熱湯を注いだ際に割れやすく、また電子レンジでの使用に適さない。
以上の工程を経ることにより、0〜300℃の範囲における熱膨張係数が30〜55×10−7/℃であるホウケイ酸ガラスからなる耐熱ガラス容器の少なくとも内表面に0.5μm以上の深さの銀イオン拡散層を有し、少なくとも銀イオン拡散層を有する表面が清浄化処理された表面であって、JIS R 3257に規定された方法で測定した同表面の水の接触角が30°以下である抗菌性耐熱ガラス容器が得られる。
また、本発明の耐熱ガラス容器においては、銀イオン拡散層の表面から0.5μmの深さにおける銀濃度が0.1質量%以上2質量%以下であることを特徴とする。0.1%質量%以上であれば、抗菌性が発現されるが、好ましくは0.2質量%以上である。2質量%を超える銀を拡散させると銀コロイドによる着色が起こるため、好ましくない。より好ましくは1.5質量%以下さらに好ましくは1質量%以下であり、最も好ましくは0.6質量%以下である。測定地点を表面から0.5μmとしたのは、表面極近傍は、測定誤差が多く、0.5μmでは拡散した銀量が測定できるためである。
上記工程を行うこと、つまり、清浄化処理されたガラス表面に銀膜を形成し、銀イオンをガラス内部に加熱拡散させ、余剰な銀化合物が除去された清浄なガラス表面が達成されることで、濡れ性が良い、すなわち家庭での洗浄で水が薄く伸びるために、実質的に抗菌処理を施す前に比べて水の乾きが速い抗菌性耐熱ガラス容器が得られる。
以下、本発明を実施例により詳述する。上記実施形態に記載の方法によって抗菌性耐熱ガラス容器を製造した。実施例の耐熱ガラス容器は、表1に示す組成の耐熱ガラス容器それぞれに対し、表中に示す研磨剤を純水に分散させた溶液をスポンジに含浸させ、このスポンジを使用して耐熱ガラス容器内面を満遍なく擦って洗浄した(たとえば、容量1Lの冷水筒1本あたり30〜60秒程度)。この際、強い力を加える必要はなく、日常の洗浄と同程度かあるいはそれより軽い力でもガラス表面を無垢で清浄な表面とすることができる。洗浄が終わったら、容器内の研磨液を排出し、容器内に研磨剤が残留しないよう純水で濯いだ。
次に、活性化処理剤として塩化第1スズ水溶液(例えば、蒸留水1000mlに塩化第1スズ1gを入れて溶解させたもの)を耐熱ガラス容器内面に噴霧または掛け流して接触させ、すぐに排出して純水で洗浄した。続いて、硝酸銀を純水に溶かした溶液にアンモニア水と水酸化カリウムを加えて調整した銀調合液に還元剤としてグルコースを添加した溶液(たとえば、容量1Lの冷水筒1本あたり20ml程度)を耐熱ガラス容器内に注ぎ入れ、容器側壁面がほぼその全高に亘って注入した溶液に触れるよう容器を傾けた状態で3回転させ、耐熱ガラス容器内表面に銀調合液を塗布し、沈殿した銀により容器表面に銀鏡を形成した。なお、ここで水酸化カリウムを加えているのは、酸性である硝酸銀溶液をアルカリ性側に調整し、還元液の酸化を促進するためである。アルカリ性溶液になるものであれば、水酸化カリウムに限定されない。アンモニア水のみの添加でも同様の効果はあるが、工程でのアンモニア臭を緩和するため水酸化カリウムを併用している。
次いで、銀調合液と還元液の混合液を排出し純水で濯いで、乾燥させた後、電気炉で350℃に昇温し60分間加熱処理した。
耐熱ガラス容器内面に付着して残った銀は、容器の全内面に少量の硝酸(例えば、2mol/L)を掛け流した後、スポンジで満遍なく擦って完全に除去し、純水で洗浄、乾燥して抗菌性耐熱ガラス容器を得た。
また、後述する試験・評価を容易にするため、表1に示した各ガラスを50×50ミリ厚さ3mmのガラス板に加工したサンプルを作製した。表1に示した研磨時間は、このガラス板サンプルに対する処理時間を示す。
その後、純水でよく濯ぎ、乾燥させた後、各ガラス板についてJIS R 3257規定の方法で水の接触角を測定した。その結果、清浄化処理をしたガラス板では、いずれも接触角が20°以下となり、親水性表面となっていることを確認した。次いで、各ガラス板に上記容器の製造と同様の工程を施して抗菌処理した。その後、あらためてJIS R 3257規定の方法で水の接触角を測定した結果を表1に示す。
また、上記のようにして作成した実施例のガラス板および比較例に関し、抗菌性、耐熱性、洗浄後のウォータースポットについて評価した結果を表1に示す。表1において、試料No.1−7はホウケイ酸ガラスの実施例であり、No.8−10は比較例である。No.8は、銀膜形成前に清浄化処理をしていない以外実施例と同様に処理したホウケイ酸ガラスであり、No.9は基板をソーダライムガラスとして実施例と同様の工程を経たもの、No.10は市販されている抗菌樹脂である。なお、表中のガラス組成は質量%で示してある。
表中に示した項目について説明すると、熱膨張係数(表中αと表示)はJIS法により0〜300℃における平均線膨張係数を測定した値を示した。ガラス転移点(表中Tgと表示)は、ガラスを直径4mm、長さ20mmの円柱に加工したサンプルを用い熱機械分析装置(TMA)で測定した。
抗菌性は、JIS Z 2801により分析を行った。抗菌活性は、規格条件で24時間後の無加工ポリエチレンフィルムに確認される菌数に対しての、滅菌数をlogで示したものであり、log1レベルはガラスの表面上に接種された細菌の90%が規格条件で24時間内に殺されたことを示し、log2は細菌の99%が殺されたことを示し、log3は細菌の99.9%が殺されたことを示す。Log2以上が抗菌効果ありとされる。表1には抗菌活性がlog2以上の場合「○」、それ未満では「×」とした。なお、言うまでもないが、抗菌加工を施したサンプルについては、抗菌加工された側の面に菌を接種した。試験は、各サンプルとも大腸菌および黄色ぶどう球菌について実施したが、滅菌数をlogで示した場合の菌種による結果に差がなかったため、表1では単に抗菌性として1行に表示した。
耐熱性試験は、厚み1mmのガラスを120℃の恒温器中に30分間保持し、ガラス部分が均一な温度に保持されたところで取り出し、直ちに冷水中に1分間浸して亀裂を確認できるか否かを調査した。亀裂が確認できないものは「○」、亀裂が入ったものは「×」とした。
銀の拡散深さは、D−SIMS(二次イオン質量分析計)を用いて測定し、Ag濃度が0.1質量%となった深さを拡散深さとした。ガラス中のAg濃度が0.1質量%未満では、実質的に抗菌効果が確認されないため、0.1質量%以上を銀の拡散深さとした。図2に実施例No.1(350℃)、実施例No.2(500℃)、実施例No.3(550℃)のプロファイルを示す。
ガラス表面のAg濃度は、D−SIMS(二次イオン質量分析計)にて定量した銀イオン拡散側の表面から0.5μmでの値を示した。
ウォータースポット試験は、ガラス板のサンプル片を垂直に置き、霧吹きで純水を吹き付け、直後の表面状態を観察して水滴の有無を確認した。水膜が瞬時に薄く伸びて、水滴が確認できない場合を「○」、水滴が確認できる場合を「×」とした。なお、本来ウォータースポットとは、水滴が乾燥した後にできるしみ状の付着物を指すが、水滴が残らなければウォータースポットは形成されないので、ここではウォータースポット試験と称している。
Figure 0005463457
表1に示すように、本発明の実施例、比較例とも24時間の抗菌試験においては抗菌性能を示した。一方、本発明の実施例No.1〜7は水の接触角が20°以下となっており、親水性を示したのに対し、抗菌処理前に表面の清浄化処理(研磨)を行っていない比較例No.8では水の接触角が42°であり、疎水性であった。また、ウォータースポット試験においても本発明の実施例No.1〜7は水滴が確認できなかったのに対し、比較例No.8ではガラス表面に多数の水滴付着が確認された。
また、耐熱性試験の結果、本発明の実施例はいずれも変化がなかったのに対し、比較例No.9のソーダライムガラスはガラスが割れ、熱湯消毒等耐熱衝撃性が求められる使用法・用途に適さないことが再確認された。
なお、上記試験に先立って、熱処理温度と時間によるガラスへの銀イオン拡散状態への影響を評価した。その結果を表2に示す。上記表1記載の実施例No.1のガラス板を用い、上記実施例と同様に清浄化工程、活性化処理工程、銀膜形成工程を経た後、加熱処理温度を350℃、500℃、600℃、加熱処理時間を60分、240分とし、表面上に残った銀は、硝酸を用いて完全に除去したサンプルを作成した。なお、600℃で加熱処理したサンプルは、60分でガラスに着色が認められたため、240分の試験は実施していない。これらサンプルについてD−SIMS(二次イオン質量分析計)を用いて銀の拡散状態を計測した結果を図3に示した。なお、図3中の曲線に付した符号は表2の実施例に対応している。図3に示すように、加熱処理温度が同じであれば、加熱処理時間60分と240分での拡散状態は同等であり、銀の拡散状態は温度に依存して決まることを確認した。この結果に基づき、上記表1記載の実施例においては、加熱処理時間を60分に固定して実施している。
Figure 0005463457
次に、抗菌性能の持続性を評価するため、上記実施例における実施例No.1と比較例No.10のサンプルをpH2.5の酢酸80℃中に30分保持した後の抗菌性能をJIS Z 2801により評価した。この結果を表3に示す。表中の抗菌性についての表示は上記表1と同じ基準である。実施例No.1のものは良好な抗菌性を維持していたが、市販の抗菌樹脂である比較例No.10は抗菌性を示さなかった。
Figure 0005463457
さらに、実施例No.1のサンプルについては、日常生活での使用条件等を想定した以下に示す条件負荷後に再度JIS Z 2801に基づく抗菌性能評価を行った。試験は、上記実施例で作成したガラス板を以下の溶液中に下記の期間浸漬した後、純水で洗浄・乾燥したサンプルを用いた加速試験である。その結果を表4に示す。表中の抗菌性についての表示は上記表1と同じ基準である。
(1)80℃純水 10日間 ・・・(ティーポット等での熱湯繰り返し使用を想定)
(2)4%酢酸 常温 10日間 ・・・(酸性飲料等の保存を想定)
(3)3% NaCO液 95℃ 16時間 ・・・(食器洗浄器でのアルカリ洗剤による繰り返し洗浄を想定)
(4)7mol/L 硝酸 30秒 ・・・(製造工程における硝酸による残留銀除去を想定)
Figure 0005463457
表4から明らかなように、純水80℃および常温の4%酢酸中に浸漬したサンプルでは、10日間浸漬させても、良好な抗菌性を維持した。硬質のホウケイ酸ガラスであるために、表面に拡散された銀が溶出しにくく抗菌性が持続する。また、食器洗浄器のアルカリ洗剤での洗浄加速を想定した3%NaCO液95℃に16時間浸漬させたものでも良好な抗菌性能が得られた。この条件では、アルカリによりガラス表面が1〜3μmほど侵食されていたにもかかわらず、抗菌性が持続することが確認された。
次に、本発明による抗菌処理を施した耐熱ガラス容器と、一般に市販されているものと同等の抗菌処理を施していない耐熱ガラス容器との違いを確認するため、上記実施例No.1の冷水筒と、同一ガラス組成からなり本発明に係る一連の処理プロセスを施す前の冷水筒(未加工品)を比較例として以下の試験を行った。すなわち、両容器を水道水ですすいだ後に、一般的な水切りトレイの上に容器開口部を下向きに置いて(室温28℃、湿度60%の)室内に放置し、目視で水滴が完全に消えるまでの時間を測定した。
その結果、実施例No.1の抗菌処理した耐熱ガラス容器は、1時間で完全に乾燥したのに対し、抗菌処理なしの比較例容器は水滴がなくなるのに4時間を要した。これらの容器各3検体について、容器底部内面のガラスの水の接触角を上記実施例と同様にして測定した結果を表5に示す。比較例ガラスの水の接触角が30〜40°であるのに対して、実施例では10〜20°であり優れた親水性と速乾性を示すことが確認された。なお、本発明による耐熱ガラス容器は、水洗後容器内の水を排出した段階で、その親水性により一旦容器内表面に均一な水膜ができた後、重力に負けて数条の流れとなって一気に流れ落ち、ほとんど水滴が残らない。これに対し、未加工品では、洗浄水を排出した段階で、容器内表面の水は膜状とならず多数の水滴となって残る。前記試験結果は、この違いが、乾燥時間の差となって表れたものと考えられる。
また、水道水による洗浄・乾燥を数回繰り返すと、乾燥後の未加工品の表面には水道水中に含まれるミネラル分が凝集したと思われるしみが観察されるが、実施例容器の抗菌加工面では、上記のように水滴が残らないため、しみ状の痕跡はほとんど確認されなかった。
Figure 0005463457
前記比較例の冷水筒内面に上記実施例同様に酸化セリウムを用いて清浄化処理を施すことで、処理された表面は親水性となり、清浄化処理後すぐのものでは、実施例と同様に水洗後1時間で乾燥することが確認された。しかし、日常生活での使用を想定し、乾燥したものを食器棚に15日間放置した後に同じ試験を行うと、実施例の容器はやはり1時間で乾燥したのに対し、酸化セリウムを用いて洗浄したのみの冷水筒は乾燥まで3時間を要した。
このため、上記実施例で各種試験評価用に作成したガラス板サンプルを使用して大気雰囲気中に保管した場合の水の接触角の経時変化を測定した。用意したサンプルは、上記実施例No.1のガラス板、未処理のガラス基板、またそれを実施例No.1と同様に酸化セリウムで研磨し銀イオンを拡散していないガラス板の3種類である。これらのサンプルを大気雰囲気中(通常の室内)に保管した場合の水の接触角経時変化を図1に示す。未処理のもの(曲線1)は、約40°の接触角であり、経時的な変化はほとんどないが、それを酸化セリウム研磨したもの(曲線2)は、研磨直後の接触角は10°未満となるものの、2週間後には約40°となりその後もほぼ一定の水の接触角となる。これは、ガラス表面の性質が保管中に親水性から疎水性に変化していることを示している。一方、実施例No.1のサンプル(曲線3)は30日後でも約20°の接触角を示し、親水性に優れた状態を維持していた。
以上の結果から、本発明による抗菌性耐熱ガラス容器は、親水性・速乾性の維持にも効果があることがわかる。
以上の実施例では、耐熱ガラス容器の内表面にのみ本発明に係る一連の抗菌処理工程を適用した例について説明したが、容器外表面にも同様の処理工程を適用することができる。その場合、銀膜形成工程は、銀調合液の掛け流し、刷毛等による塗布、噴霧あるいは銀調合液へのディッピングによって行うことができ、それ以外の工程は耐熱ガラス容器内表面加工と同様の工程が適用できる。
上記に、本発明による抗菌処理を施した耐熱ガラス容器と、一般に市販されているものと同等の抗菌処理を施していない耐熱ガラス容器とについて、水洗後の乾燥時間を比較したが、参考として、耐熱ガラス容器内表面にのみ本発明による抗菌処理を施した冷水筒と、耐熱ガラス容器内外両面に本発明による抗菌処理を施した冷水筒とで乾燥時間を比較した。比較対照は、上記実施例No.1の冷水筒とその外表面にも内表面と同様の処理をした冷水筒を用い、上記試験と同様に両容器を水道水ですすいだ後に、一般的な水切りトレイの上に容器開口部を下向きに置いて室内に放置し、目視で水滴が完全に消えるまでの時間を測定した。
その結果、いずれの冷水筒も1時間で完全に乾燥した。上記未加工品との比較結果と合わせて考えると、これは、容器外表面の水は表面の親水性・疎水性の違いによらず揮発しやすいのに対し、容器内表面の水分は揮発しにくいため、本発明による加工処理の結果生じた容器内表面の水切れのよさが乾燥時間短縮に貢献しているためと考えられる。
また、以上の実施例では、銀膜の形成に銀塩を含有する溶液の還元による金属銀の沈殿(いわゆる銀鏡反応)を利用する方法を主に説明しているが、銀を含有する溶液、たとえば硝酸銀の3〜20質量%水溶液をガラス表面に塗布する方法でも代用することが可能である。硝酸銀水溶液の濃度は、3質量%未満では抗菌性能が安定的に発現せず、20質量%を越えると加熱処理後の残留銀が多くなって、洗浄除去工程の負荷が大きく、原料の無駄が多い。好ましくは5〜15質量%である。なお、この場合、活性化処理工程は不要である。
この際の塗布方法は、前記銀調合液と同様の方法が使用できる。ただし、銀鏡反応による凝着と異なり、銀を含有する溶液を塗布しただけでは銀をガラス表面に均一に固定しにくいため、塗布する際、耐熱ガラス容器を100〜230℃、好ましくは150〜200℃に加熱しておくことで銀塩のガラス表面への結着性を向上させることが好ましく、加熱した容器への銀を含有する溶液の塗布方法は、取扱い上噴霧による方法が好ましい。本発明では耐熱ガラス容器を使用しているので、あらかじめ容器を加熱していても溶液の塗布によって割れることはないが、加熱温度が高い場合、特に噴霧以外の方法で溶液を塗布する場合には、ガラスの耐熱衝撃温度を超えないよう、銀を含有する溶液を加温しておくことが好ましい。
このように銀鏡反応を用いない銀膜形成工程であっても、その前の清浄化処理工程によってガラス表面が親水性となっているため、溶液がはじかれることなく均一に塗布でき、ムラのない抗菌性能が発現する。抗菌性能、親水性・速乾性、ウォータースポット試験の結果でも上記実施例と同等の効果が得られる。
本発明の抗菌性耐熱ガラス容器の製造方法は、すべての工程が容易に曲面形状へ適用可能であり、また、本発明の抗菌性耐熱ガラス容器は、優れた抗菌性能、速乾性能を有するので、ガラス製の冷水筒、食品保存容器、コーヒーメーカー、ティーポット、きゅうす、調味料容器、食器など幅広い形状・用途の耐熱ガラス容器に利用することができる。
1・・・未処理ガラスの水の接触角の経時変化曲線、
2・・・酸化セリウムで洗浄したのみのガラスの水の接触角の経時変化曲線、
3・・・実施例No.1のガラスの水の接触角の経時変化曲線

Claims (4)

  1. 耐熱ガラス容器の少なくとも内表面を研磨剤を使用して洗浄処理するに際して、研磨剤が酸化セリウム、コロイダルシリカ、酸化ランタン、酸化鉄、酸化マンガン、酸化ジルコニウムから選択される少なくとも1種であり、研磨剤の粒度がJIS R 6001に記される#800より細かい研磨剤を使用し、JIS R 3257に規定された方法で測定したガラス清浄化処理後の表面接触角が30°以下となるように洗浄を行う清浄化処理する工程と、この清浄化処理した表面に銀を含有する溶液を塗布し銀膜を形成する工程と、銀膜が形成された容器を300℃〜550℃で加熱処理することにより、ガラス表面から内部に銀イオンを拡散させる工程と、ガラス内部に拡散されず表面に残留した銀を洗浄除去する工程とを有することを特徴とする抗菌性耐熱ガラス容器の製造方法。
  2. 前記銀膜を形成する工程が、銀塩を含有する溶液の還元による金属銀の沈殿を利用することを特徴とする請求項1に記載の抗菌性耐熱ガラス容器の製造方法。
  3. 前記表面に残留した銀を洗浄除去する工程が、HNO,FeCl,Fe(NO,HCl,HSO,Hのいずれかを含む溶液を使用することを特徴とする請求項1または2に記載の抗菌性耐熱ガラス容器の製造方法。
  4. 前記耐熱ガラス容器が、0〜300℃の範囲における熱膨張係数が30〜55×10−7/℃であるホウケイ酸ガラスからなることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1項に記載の抗菌性耐熱ガラス容器の製造方法。
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