JP5461813B2 - ガラスセラミックスの製造方法、光触媒機能性成形体、及び親水性成形体 - Google Patents

ガラスセラミックスの製造方法、光触媒機能性成形体、及び親水性成形体 Download PDF

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本発明は、ガラスセラミックスの製造方法、並びにこの製造方法で製造されるガラスセラミックスを含む光触媒機能性成形体及び親水性成形体に関する。
酸化チタン(TiO)をはじめとする無機チタン化合物は、光触媒として高い触媒活性を有することが知られている。つまり、無機チタン化合物は、バンドギャップエネルギー以上のエネルギーの光が照射されると、電子や正孔を生成するため、無機チタン化合物を含む成形体の表面近傍において、酸化還元反応が強く促進される。また、無機チタン化合物を含む成形体の表面は、水が濡れにくい超親水性を呈するため、雨等の水滴で洗浄される、いわゆるセルフクリーニング作用を有することが知られている。
ここで、無機チタン化合物を含む層を基材の表面に形成する技術として、基材の表面に無機チタン化合物を塗布し又はコーティングする技術、又は無機チタン化合物を基材中に含ませる技術が挙げられる。
このうち、基材の表面に無機チタン化合物層を形成するために用いられる塗布剤として、合成樹脂を分散相とする水性エマルジョンに高濃度の無機チタン化合物が含まれた光触媒性塗布剤が開示されている(例えば、特許文献1)。
一方、無機チタン化合物を基材中に含ませる技術としては、SiO、Al、CaO、MgO、B、ZrO、及びTiOの各成分を所定量含有する光触媒用ガラスが開示されている(例えば、特許文献2)。
特開2008−81712号公報 特開平9−315837号公報
しかしながら、基材の表面に無機チタン化合物を塗布し又はコーティングする場合には、塗布膜やコーティング層の耐久性が十分ではなく、塗布膜やコーティング層が基材から剥離するおそれがあった。例えば、特許文献1で開示される光触媒性塗布剤を用いて塗布膜を形成する場合、塗布膜に残留している樹脂や有機バインダが、紫外線等によって分解されたり、無機チタン化合物の触媒作用で酸化還元されたりする結果、塗布膜の耐久性が経時的に劣化しやすい。
また、特許文献2で開示される光触媒用ガラスでは、酸化チタンは結晶構造を有しておらず、アモルファスの形でガラス中に存在するため、その光触媒特性が不充分になりやすかった。
本発明は、以上の実情に鑑みてなされたものであり、耐久性に優れ且つ酸化チタンの結晶を高確率に有するガラスセラミックスの製造方法、及びこの製造方法で製造されるガラスセラミックスを含む光触媒機能性成形体及び親水性成形体を提供することを目的とする。
特に本発明は、P成分を含むガラスセラミックスであって、耐久性に優れ且つ酸化チタンの結晶を高確率に有するガラスセラミックスの製造方法、及びこの製造方法で製造されるガラスセラミックスを含む光触媒機能性成形体及び親水性成形体を提供することを目的とする。
本発明者らは、TiO成分及びP成分を所定量比で含有するガラス体が粉砕された粉砕ガラスを成形し、その成形体を焼結することで、耐久性に優れ且つ酸化チタンの結晶を高確率に有する所望形状のガラスセラミックスが得られることを見出し、本発明を完成するに至った。具体的には、本発明は以下のようなものを提供する。
(1) ガラスセラミックスの製造方法であって、
得られるガラス体が酸化物基準のモル%で、TiO成分を15.0〜90.0%、P成分を10.0〜85.0%含有するように調製された原料組成物を溶融しガラス化することで、ガラス体を作製するガラス化工程と、
前記ガラス体を粉砕して粉砕ガラスを作製する粉砕工程と、
前記粉砕ガラスを所望形状の成形体に成形する成形工程と、
前記成形体を加熱して焼結を行うことで、焼結体を作製する焼結工程と、を有する製造方法。
(2) 前記粉砕ガラスに結晶状態のTiOを混合して混合物を作製する工程を有する(1)記載の製造方法。
(3) 混合する結晶状態のTiOの量を、前記混合物に対する質量比で1.0〜95.0質量%にする(2)記載の製造方法。
(4) N成分、S成分、F成分、Cl成分、Br成分、及びC成分からなる群より選ばれる1種以上を含む添加物を、前記粉砕ガラス又は前記混合物に対する質量比で0〜20.0%混合する工程を有する(1)から(3)いずれか記載の製造方法。
(5) Cu、Ag、Au、Pd、及びPtからなる群より選ばれる1種以上からなる金属元素成分を、前記粉砕ガラス又は前記混合物に対する質量比で0〜10.0%混合する工程を有する(1)から(4)いずれか記載の製造方法。
(6) 前記粉砕ガラスを分散してスラリ状態にする工程を有する(1)から(5)いずれか記載の製造方法。
(7) 前記焼結を、前記ガラス体のガラス転移温度(Tg)以上であり且つTgより600℃高い温度以下の雰囲気温度で行う(1)から(6)いずれか記載の製造方法。
(8) 前記焼結を、10分〜24時間に亘り行う(1)から(7)いずれか記載の製造方法。
(9) 前記焼結体に、酸性もしくはアルカリ性の溶液への浸漬、又はエッチングを行う工程を更に有する(1)から(8)いずれか記載の製造方法。
(10) 前記原料組成物として、得られるガラス体が酸化物基準のモル%で、
SiO成分及び/又はGeO成分 0〜60.0%、及び/又は、
アルカリ金属酸化物成分及び/又はアルカリ土類金属酸化物成分 0〜50.0%、及び/又は、
(式中、Mは、W、Mo、Nb、及びTaからなる群より選ばれる1種以上である。a及びbは、a:b=2:(Mの価数)を満たす最小の自然数である。)成分 0〜50.0%、及び/又は、
(式中、Mは、Zr及びSnからなる群より選ばれる1種以上である。c及びdは、c:d=2:(Mの価数)を満たす最小の自然数である。)成分 0〜30.0%、及び/又は、
(式中、Mは、B、Al、Ga、及びInからなる群より選ばれる1種以上である。)成分 0〜50.0%、及び/又は、
Ln(式中、Lnは、Y、Ce、La、Nd、Gd、Dy、及びYbからなる群より選ばれる1種以上である。)成分 0〜30.0%、及び/又は、
(式中、Mは、V、Cr、Mn、Fe、Co、及びNiからなる群より選ばれる1種以上である。e及びfは、e:f=2:(Mの価数)を満たす最小の自然数である。) 0〜10.0%、及び/又は、
Bi成分+TeO成分 0〜20.0%、及び/又は、
As成分+Sb成分 0〜5.0%
の各成分を含有し、
前記ガラス体の酸化物換算組成の全質量に対する質量%で、
F成分、Cl成分、Br成分、S成分、N成分、及びC成分からなる群より選ばれる少なくとも1種以上の非金属元素成分を、10.0%以下、及び/又は、
Cu、Ag、Au、Pd、及びPtからなる群より選ばれる少なくとも1種の金属元素成分を、10.0%以下
であるように調製されたものを用いる請求項1から9いずれか記載の製造方法。
(11) (1)から(10)いずれか記載の製造方法で製造されるガラスセラミックスを含む光触媒機能性成形体。
(12) (1)から(10)いずれか記載の製造方法で製造されるガラスセラミックスを含む親水性成形体。
本発明によれば、TiO成分及びP成分を所定量比で含有するガラス体が粉砕された粉砕ガラスを成形し、その成形体を焼結することで、耐久性に優れ且つ酸化チタンの結晶を高確率に有するガラスセラミックスを製造できる。このガラスセラミックスは、所望の形状に設計できるため、種々の用途において有用である。
以下、本発明の一実施形態を説明するが、これに本発明が限定されるものではない。
<ガラスセラミックスの製造方法>
本発明に係るガラスセラミックスの製造方法は、ガラス化工程、粉砕工程、成形工程、及び焼結工程を有する。各工程の詳細を以下説明する。なお、本明細書におけるガラスセラミックスとは、ガラスを熱処理して結晶相を生成させることで得られる材料であり、具体的には非晶質固体及び結晶からなる。かかるガラスセラミックスは、酸化チタン結晶相を含有しており、その結晶相はガラスセラミックスの内部及び表面に均一に分散している。
[ガラス化工程]
ガラス化工程では、所定の原料組成物を溶融しガラス化することで、ガラス体を作製する。具体的には、白金又は耐火物からなる容器に原料組成物を投入し、原料組成物を高温に加熱することで溶融する。これにより得られる溶融ガラスを流出し、適宜冷却することで、ガラス化されたガラス体を形成する。溶融及びガラス化の条件は、特に限定されず、原料組成物の組成及び量等に応じて、適宜設定されてよい。また、ガラス体の形状は、特に限定されず、板状、粒状等であってよい。溶融する温度と時間は、ガラスの組成により異なるが、それぞれ1200〜1650℃、1〜24時間の範囲であることが好ましい。
(原料組成物)
原料組成物は、得られるガラス体が酸化物基準のモル%で、TiO成分を15.0〜90.0%、P成分を10.0〜85.0%含有するように調製されている。
以下、ガラス体を構成する各成分の組成範囲を以下に述べる。本明細書中において、各成分の含有率は特に断りがない場合は、全て酸化物換算組成のガラス体全物質量に対するモル%で表示されるものとする。ここで、「酸化物換算組成」とは、本発明のガラス構成成分の原料として使用される酸化物、複合塩、金属弗化物等が溶融時に全て分解され酸化物へ変化すると仮定した場合に、当該生成酸化物の総物質量を100モル%として、ガラス体中に含有される各成分を表記した組成である。
<必須成分、任意成分について>
TiO成分は、結晶化することにより、TiOの結晶相、又はリンとの化合物の結晶としてガラス体から生成し、光触媒特性をもたらすのに必須で欠かせない成分である。特に、TiO成分の含有量を15.0%以上にすることで、その後の焼結過程でTiO結晶相が生成し易くなり、ガラスセラミックス中におけるTiO結晶相の濃度が高められるため、所望の光触媒特性を確保することができる。一方、TiO成分の含有量が90.0%を超えると、ガラス化が非常に難しくなる。従って、酸化物換算組成のガラス体全物質量に対するTiO成分の含有量は、好ましくは15.0%、より好ましくは25.0%、最も好ましくは30.0%を下限とし、好ましくは90.0%、より好ましくは85.0%、最も好ましくは80.0%を上限とする。TiO成分は、原料として例えばTiO等を用いてガラス体内に含有することができる。
成分は、ガラスの網目構造を構成する成分である。ガラス体を、P成分が網目構造の主成分であるリン酸塩系ガラスにすることにより、より多くのTiO成分をガラスに取り込ませることができる。また、その後の焼結過程では焼結温度を低くしてもTiO結晶相を容易に生成することができるとともに、光触媒活性の高いアナターゼ型TiO結晶から光触媒活性の低いルチル型への相転位を低減することができる。特に、Pの含有量が10.0%より少ないとガラス化が困難であり、Pの含有量が85.0%を超えるとTiO結晶相が生成し難くなる。従って、酸化物換算組成のガラス体全物質量に対するP成分の含有量は、好ましくは10.0%、より好ましくは15.0%、最も好ましくは20.0%を下限とし、好ましくは85.0%、より好ましくは70.0%、最も好ましくは60.0%を上限とする。P成分は、原料として例えばAl(PO、Ca(PO、Ba(PO、Na(PO)、BPO、HPO等を用いてガラス体内に含有することができる。
SiO成分は、ガラスの網目構造を構成し、ガラスの安定性と化学的耐久性を高める成分であるとともに、Si4+イオンが生成したTiO結晶相の近傍に存在し、光触媒活性の向上に寄与する成分であり、任意に添加できる成分である。しかし、SiO成分の含有量が60.0%を超えると、ガラスの溶融性が悪くなり、TiO結晶相が生成し難くなる。従って、酸化物換算組成のガラス体全物質量に対するSiO成分の含有量は、好ましくは60.0%、より好ましくは45.0%、最も好ましくは30.0%を上限とする。SiO成分は、原料として例えばSiO、KSiF、NaSiF等を用いてガラス体内に含有することができる。
GeO成分は、上記のSiOと相似な働きを有する成分であり、ガラス体中に任意に添加できる成分である。特に、GeO成分の含有量を60.0%以下にすることで、高価なGeO成分の使用が抑えられるため、ガラスセラミックスの材料コストを低減することができる。従って、酸化物換算組成のガラス体全物質量に対するGeO成分の含有量は、好ましくは60.0%、より好ましくは45.0%、最も好ましくは30.0%を上限とする。GeO成分は、原料として例えばGeO等を用いてガラス体内に含有することができる。
本発明のガラスセラミックスに用いるガラス体は、SiO成分及びGeO成分から選ばれる少なくとも1種以上の成分を60.0%以下含有することが好ましい。特に、SiO成分及びGeO成分から選ばれる少なくとも1種以上の成分の質量和を60.0%以下にすることで、ガラスの溶融性、安定性及び化学耐久性が向上するとともに、ガラスセラミックスの光触媒特性も向上する。従って、酸化物換算組成のガラス体全物質量に対する質量和(SiO+GeO)は、好ましくは60.0%、より好ましくは45.0%、最も好ましくは30.0%を上限とする。なお、SiO成分及びGeO成分は含有しなくとも光触媒特性を有するガラスセラミックスを得ることは可能であるが、SiO成分及び/又はGeO成分を含有することにより、その特性が更に向上する。これらの成分の合計量が0.1%未満であると、効果が十分ではないので、0.1%以上の添加が好ましく、3.0%以上がより好ましく、5.0%以上が最も好ましい。
LiO成分は、ガラスの溶融性と安定性を向上する成分であるとともに、ガラス転移温度を下げ、その後の焼結過程における焼結温度をより低く抑え、アナターゼからルチルへの相転移を低減する成分であり、任意に添加できる成分である。しかし、LiO成分の含有量が40.0%を超えると、かえってガラスの安定性が悪くなり、TiO結晶相の生成も困難となる。従って、酸化物換算組成のガラス体全物質量に対するLiO成分の含有量は、好ましくは40.0%、より好ましくは30.0%、最も好ましくは15.0%を上限とする。LiO成分は、原料として例えばLiCO、LiNO、LiF等を用いてガラス体内に含有することができる。
NaO成分は、ガラスの溶融性と安定性を向上する成分であるとともに、ガラス転移温度を下げ、その後の焼結過程における焼結温度をより低く抑え、アナターゼからルチルへの相転移を低減する成分であり、任意に添加できる成分である。しかし、NaO成分の含有量が40.0%を超えると、かえってガラスの安定性が悪くなり、TiO結晶相の生成も困難となる。従って、酸化物換算組成のガラス体全物質量に対するNaO成分の含有量は、好ましくは40.0%、より好ましくは30.0%、最も好ましくは15.0%を上限とする。NaO成分は、原料として例えばNaO、NaCO、NaNO、NaF、NaS、NaSiF等を用いてガラス体内に含有することができる。
O成分は、ガラスの溶融性と安定性を向上する成分であるとともに、ガラス転移温度を下げ、その後の焼結過程における焼結温度をより低く抑え、アナターゼからルチルへの相転移を低減する成分であり、任意に添加できる成分である。しかし、KO成分の含有量が40.0%を超えると、かえってガラスの安定性が悪くなり、TiO結晶相の生成も困難となる。従って、酸化物換算組成のガラス体全物質量に対するKO成分の含有量は、好ましくは40.0%、より好ましくは30.0%、最も好ましくは15.0%を上限とする。KO成分は、原料として例えばKCO、KNO、KF、KHF、KSiF等を用いてガラス体内に含有することができる。
RbO成分は、ガラスの溶融性と安定性を向上する成分であるとともに、ガラス転移温度を下げ、その後の焼結過程における焼結温度をより低く抑え、アナターゼからルチルへの相転移を低減する成分であり、任意に添加できる成分である。しかし、RbO成分の含有量が10.0%を超えると、かえってガラスの安定性が悪くなり、TiO結晶相の生成も困難となる。従って、酸化物換算組成のガラス体全物質量に対するRbO成分の含有量は、好ましくは10.0%、より好ましくは8.0%、最も好ましくは5.0%を上限とする。RbO成分は、原料として例えばRbCO、RbNO等を用いてガラス体内に含有することができる。
CsO成分は、ガラスの溶融性と安定性を向上する成分であるとともに、ガラス転移温度を下げ、その後の焼結過程における焼結温度をより低く抑え、アナターゼからルチルへの相転移を低減する成分であり、任意に添加できる成分である。しかし、CsO成分の含有量が10.0%を超えると、かえってガラスの安定性が悪くなり、TiO結晶相の生成も困難となる。従って、酸化物換算組成のガラス体全物質量に対するCsO成分の含有量は、好ましくは10.0%、より好ましくは8.0%、最も好ましくは5.0%を上限とする。CsO成分は、原料として例えばCsCO、CsNO等を用いてガラス体内に含有することができる。
本発明のガラスセラミックスに用いられるガラス体は、RnO(式中、RnはLi、Na、K、Rb、Csからなる群より選択される1種以上)成分から選ばれる少なくとも1種以上の成分を40.0%以下含有することが好ましい。特に、RnO成分から選ばれる少なくとも1種以上の成分の質量和を40.0%以下にすることで、ガラスの溶融性と安定性が向上し、アナターゼ型のTiO結晶相が生成し易くなるため、ガラスセラミックスの高い触媒活性を確保することができる。従って、酸化物換算組成のガラス体全物質量に対する、RnO成分から選ばれる少なくとも1種以上の成分の質量和は、好ましくは40.0%、より好ましくは30.0%、最も好ましくは20.0%を上限とする。
MgO成分は、ガラスの溶融性と安定性を向上する成分であるとともに、ガラス転移温度を下げ、その後の焼結過程における焼結温度をより低く抑え、アナターゼからルチルへの相転移を低減する成分であり、任意に添加できる成分である。しかし、MgO成分の含有量が40.0%を超えると、かえってガラスの安定性が悪くなり、TiO結晶相の生成も困難となる。従って、酸化物換算組成のガラス体全物質量に対するMgO成分の含有量は、好ましくは40.0%、より好ましくは30.0%、最も好ましくは20.0%を上限とする。MgO成分は、原料として例えばMgCO、MgF等を用いてガラス体内に含有することができる。
CaO成分は、ガラスの溶融性と安定性を向上する成分であるとともに、ガラス転移温度を下げ、その後の焼結過程における焼結温度をより低く抑え、アナターゼからルチルへの相転移を低減する成分であり、任意に添加できる成分である。しかし、CaO成分の含有量が40.0%を超えると、かえってガラスの安定性が悪くなり、TiO結晶相の生成も困難となる。従って、酸化物換算組成のガラス体全物質量に対するCaO成分の含有量は、好ましくは40.0%、より好ましくは30.0%、最も好ましくは25.0%を上限とする。CaO成分は、原料として例えばCaCO、CaF等を用いてガラス体内に含有することができる。
SrO成分は、ガラスの溶融性と安定性を向上する成分であるとともに、ガラス転移温度を下げ、その後の焼結過程における焼結温度をより低く抑え、アナターゼからルチルへの相転移を低減する成分であり、任意に添加できる成分である。しかし、SrO成分の含有量が40.0%を超えると、かえってガラスの安定性が悪くなり、TiO結晶相の生成も困難となる。従って、酸化物換算組成のガラス体全物質量に対するSrO成分の含有量は、好ましくは40.0%、より好ましくは30.0%、最も好ましくは20.0%を上限とする。SrO成分は、原料として例えばSr(NO、SrF等を用いてガラス体内に含有することができる。
BaO成分は、ガラスの溶融性と安定性を向上する成分であるとともに、ガラス転移温度を下げ、その後の焼結過程における焼結温度をより低く抑え、アナターゼからルチルへの相転移を低減する成分であり、任意に添加できる成分である。しかし、BaO成分の含有量が40.0%を超えると、かえってガラスの安定性が悪くなり、TiO結晶相の生成も困難となる。従って、酸化物換算組成のガラス体全物質量に対するBaO成分の含有量は、好ましくは40.0%、より好ましくは30.0%、最も好ましくは20.0%を上限とする。BaO成分は、原料として例えばBaCO、Ba(NO等を用いてガラス体内に含有することができる。
ZnO成分は、ガラスの溶融性と安定性を向上する成分であるとともに、ガラス転移温度を下げ、その後の焼結過程における焼結温度をより低く抑え、アナターゼからルチルへの相転移を低減する成分であり、任意に添加できる成分である。しかし、ZnO成分の含有量が50.0%を超えると、かえってガラスの安定性が悪くなり、TiO結晶相の生成も困難となる。従って、酸化物換算組成のガラス体全物質量に対するZnO成分の含有量は、好ましくは50.0%、より好ましくは40.0%、最も好ましくは30.0%を上限とする。ZnO成分は、原料として例えばZnO、ZnF等を用いてガラス体内に含有することができる。
本発明のガラスセラミックスに用いられるガラス体は、RO(式中、RはMg、Ca、Sr、Ba、Znからなる群より選択される1種以上)成分から選ばれる少なくとも1種以上の成分を50.0%以下含有することが好ましい。特に、RO成分から選ばれる少なくとも1種以上の成分の質量和を50.0%以下にすることで、ガラスの溶融性と安定性が向上し、アナターゼ型のTiO結晶相が生成し易くなるため、ガラスセラミックスの高い触媒活性を確保することができる。従って、酸化物換算組成のガラス体全物質量に対する、RO成分から選ばれる少なくとも1種以上の成分の質量和は、好ましくは50.0%、より好ましくは40.0%、最も好ましくは30.0%を上限とする。
また、本発明のガラスセラミックスに用いられるガラス体は、RO(式中、RはMg、Ca、Sr、Ba、Znからなる群より選択される1種以上)成分及びRnO(式中、RnはLi、Na、K、Rb、Csからなる群より選択される1種以上)成分から選ばれる少なくとも1種以上の成分を50.0%以下含有することが好ましい。特に、RO成分及びRnO成分から選ばれる少なくとも1種以上の成分の質量和を50.0%以下にすることで、ガラスの溶融性と安定性が向上し、ガラス転移温度(Tg)が下がり、より低い温度での焼結が可能になり、アナターゼからルチルへの相転移が低減され、より多くのアナダーゼ型のTiO結晶相が生成される。このため、ガラスセラミックスの高い光触媒特性を確保することができる。従って、酸化物換算組成のガラス体全物質量に対する質量和(RO+RnO)は、好ましくは50.0%、より好ましくは40.0%、最も好ましくは30.0%を上限とする。なお、RO成分及びRnO成分は含有しなくとも光触媒特性を有するガラスセラミックスを得ることは可能であるが、RO成分及びRnO成分から選ばれる少なくとも1種以上の成分の質量和を0.1%以上にすることで、TiO結晶相がより生成し易くなるため、光触媒特性が更に向上する。従って、酸化物換算組成のガラス体全物質量に対する質量和(RO+RnO)は、好ましくは0.1%、より好ましくは0.5%、最も好ましくは1.0%を下限とする。
ここで、本発明のガラスセラミックスに用いられるガラス体は、RO(式中、RはMg、Ca、Sr、Ba、Znからなる群より選択される1種以上)成分及びRnO(式中、RnはLi、Na、K、Rb、Csからなる群より選択される1種以上)成分から選ばれる成分のうち2種類以上を含有することが好ましい。これにより、ガラスの安定性が大幅に向上し、焼成後のガラスセラミックスの機械強度がより高くなり、TiO結晶相がより生成し易くなる。従って、本発明のガラスセラミックスに用いられるガラス体は、RO成分及びRnO成分から選ばれる成分のうち2種類以上を含有することが好ましく、3種類以上を含有することがより好ましい。
成分は、ガラスの網目構造を構成し、ガラスの安定性を高める成分であり、任意に添加できる成分である。しかし、その含有量が40.0%を超えると、TiO結晶相が生成しくい傾向が強くなる。従って、酸化物換算組成のガラス体全物質量に対するB成分の含有量は、好ましくは40.0%、より好ましくは30.0%、最も好ましくは20.0%を上限とする。B成分は、原料として例えばHBO、Na、Na・10HO、BPO等を用いてガラス体内に含有することができる。
Al成分は、ガラスの安定性及びガラスセラミックスの化学的耐久性を高め、ガラスからのTiO結晶相の生成を促進し、且つAl3+イオンがTiO結晶相に固溶して光触媒特性の向上に寄与する成分であり、任意に添加できる成分である。しかし、その含有量が30.0%を超えると、溶解温度が著しく上昇し、ガラス化し難くなる。従って、酸化物換算組成のガラス体全物質量に対するAl成分の含有量は、好ましくは30.0%、より好ましくは20.0%、最も好ましくは10.0%を上限とする。Al成分は、原料として例えばAl、Al(OH)、AlF等を用いてガラス体内に含有することができる。
Ga成分は、ガラスの安定性を高め、ガラスからのTiO結晶相の生成を促進し、且つGa3+イオンがTiO結晶相に固溶して光触媒特性の向上に寄与する成分であり、任意に添加できる成分である。しかし、その含有量が30.0%を超えると、溶解温度が著しく上昇し、ガラス化し難くなる。従って、酸化物換算組成のガラス体全物質量に対するGa成分の含有量は、好ましくは30.0%、より好ましくは20.0%、最も好ましくは10.0%を上限とする。Ga成分は、原料として例えばGa、GaF等を用いてガラス体内に含有することができる。
In成分は、上記のAl及びGaと相似な効果がある成分であり、任意に添加できる成分である。しかし、In成分は高価なため、その含有量を10.0%以下にすることが好ましく、8.0%以下にすることがより好ましく、5.0%以下にすることが最も好ましい。In成分は、原料として例えばIn、InF等を用いてガラス体内に含有することができる。
本発明のガラスセラミックスに用いられるガラス体は、B成分、Al成分、Ga成分、及びIn成分から選ばれる少なくとも1種以上の成分を50.0%以下含有することが好ましい。特に、これらの成分から選ばれる少なくとも1種以上の成分の質量和を50.0%以下にすることで、ガラスの安定性が向上し、TiO結晶相がより生成し易くなるため、ガラスセラミックスの光触媒特性のさらなる向上に寄与することができる。従って、酸化物換算組成のガラス体全物質量に対する質量和(B+Al+Ga+In)は、好ましくは50.0%、より好ましくは40.0%、最も好ましくは30.0%を上限とする。なお、B成分、Al成分、Ga成分、及びIn成分はいずれも含有しなくとも光触媒特性を持たせることは可能であるが、これらの成分から選ばれる少なくとも1種以上の成分の質量和を0.1%以上にすることで、TiO結晶相の生成がさらに促進されるため、ガラスセラミックスの光触媒特性のさらなる向上に寄与することができる。従って、酸化物換算組成のガラス体全物質量に対する質量和(B+Al+Ga+In)は、好ましくは0.1%、より好ましくは0.5%、最も好ましくは1.0%を下限とする。
ZrO成分は、化学的耐久性を高め、TiO結晶の生成を促進し、且つZr4+イオンがTiO結晶相に固溶して光触媒特性の向上に寄与する成分であり、任意に添加できる成分である。しかし、ZrO成分の含有量が20.0%を超えると、ガラス化し難くなる。従って、酸化物換算組成のガラス体全物質量に対するZrO成分の含有量は、好ましくは20.0%、より好ましくは15.0%、最も好ましくは10.0%を上限とする。ZrO成分は、原料として例えばZrO、ZrF等を用いてガラス体内に含有することができる。
SnO成分は、TiO結晶の析出を促進し、Ti4+の還元を抑制してTiO結晶相を得易くし、且つTiO結晶相に固溶して光触媒特性の向上に効果がある成分であり、また、光触媒活性を高める作用のある後述のAgやAuやPtイオンと一緒に添加する場合は還元剤の役割を果たし、間接的に光触媒の活性の向上に寄与する成分であり、任意に添加できる成分である。しかし、これらの成分の含有量が10.0%を超えると、ガラスの安定性が悪くなり、光触媒特性も低下し易くなる。従って、酸化物換算組成のガラス体全物質量に対するSnO成分の含有量は、好ましくは10.0%、より好ましくは8.0%、最も好ましくは5.0%を上限とする。SnO成分は、原料として例えばSnO、SnO、SnO等を用いてガラス体内に含有することができる。
本発明のガラスセラミックスに用いられるガラス体は、ZrO成分及びSnO成分から選ばれる少なくとも1種以上の成分を20.0%以下含有することが好ましい。特に、これらの成分から選ばれる少なくとも1種以上の成分の質量和を20.0%以下にすることで、TiO結晶相の生成が促進されるため、高い光触媒特性を得ることができる。従って、酸化物換算組成のガラス体全物質量に対する質量和(ZrO+SnO)は、好ましくは20.0%、より好ましくは15.0%、最も好ましくは10.0%を上限とする。なお、ZrO成分及びSnO成分はいずれも含有しなくとも光触媒特性を持たせることは可能であるが、これらの成分から選ばれる少なくとも1種以上の成分の質量和を0.1%以上にすることで、ガラスセラミックスの光触媒特性をさらに向上することができる。従って、酸化物換算組成のガラス体全物質量に対する質量和(ZrO+SnO)は、好ましくは0.1%、より好ましくは0.2%、最も好ましくは0.5%を下限とする。
Nb成分は、ガラスの溶融性と安定性を高める成分であり、且つTiO結晶相に固溶し、又はその近傍に存在することで、光触媒特性が向上する成分であり、任意に添加できる成分である。しかし、Nb成分の含有量が50.0%を超えると、ガラスの安定性が著しく悪くなる。従って、酸化物換算組成のガラス体全物質量に対するNb成分の含有量は、好ましくは50.0%、より好ましくは30.0%、最も好ましくは20.0%を上限とする。Nb成分は、原料として例えばNb等を用いてガラス体内に含有することができる。
Ta成分は、ガラスの安定性を高める成分であり、且つTiO結晶相に固溶し、又はその近傍に存在することで、光触媒特性が向上する成分であり、任意に添加できる成分である。しかし、Ta成分の含有量が50.0%を超えると、ガラスの安定性が著しく悪くなる。従って、酸化物換算組成のガラス体全物質量に対するTa成分の含有量は、好ましくは50.0%、より好ましくは30.0%、最も好ましくは20.0%を上限とする。Ta成分は、原料として例えばTa等を用いてガラス体内に含有することができる。
WO成分は、ガラスの溶融性と安定性を高める成分であり、且つTiO結晶相に固溶し、又はその近傍に存在することで、光触媒特性が向上する成分であり、任意に添加できる成分である。しかし、WO成分の含有量が50.0%を超えると、ガラスの安定性が著しく悪くなる。従って、酸化物換算組成のガラス体全物質量に対するWO成分の含有量は、好ましくは50.0%、より好ましくは30.0%、最も好ましくは20.0%を上限とする。WO成分は、原料として例えばWO等を用いてガラス体内に含有することができる。
MoO成分は、ガラスの溶融性と安定性を高める成分であり、且つTiO結晶相に固溶し、又はその近傍に存在することで、光触媒特性が向上する成分であり、任意に添加できる成分である。しかし、MoO成分の含有量が50.0%を超えると、ガラスの安定性が著しく悪くなる。従って、酸化物換算組成のガラス体全物質量に対するMoO成分の含有量は、好ましくは50.0%、より好ましくは30.0%、最も好ましくは20.0%を上限とする。MoO成分は、原料として例えばMoO等を用いてガラス体内に含有することができる。
本発明のガラスセラミックスに用いられるガラス体は、Nb成分、Ta成分、WO成分、及びMoO成分から選ばれる少なくとも1種以上の成分を50.0%以下含有することが好ましい。特に、これらの成分から選ばれる少なくとも1種以上の成分の質量和を50.0%以下にすることで、ガラスセラミックスの安定性が確保されるため、良好なガラスセラミックスを形成することができる。従って、酸化物換算組成のガラス体全物質量に対する質量和(Nb+Ta+WO+MoO)は、好ましくは50.0%、より好ましくは30.0%、最も好ましくは20.0%を上限とする。なお、Nb成分、Ta成分、WO成分、及びMoO成分はいずれも含有しなくとも光触媒特性を持たせることは可能であるが、これらの成分から選ばれる少なくとも1種以上の成分の質量和を0.1%以上にすることで、ガラスセラミックスの光触媒特性をさらに向上することができる。従って、酸化物換算組成のガラス体全物質量に対する質量和(Nb+Ta+WO+MoO)は、好ましくは0.1%、より好ましくは0.5%、最も好ましくは1.0%を下限とする。
Bi成分は、ガラスの溶融性と安定性を高める成分であるとともに、ガラス転移温度(Tg)を下げることで熱処理温度が下がるため、アナターゼ型からルチルへの転移を抑制できる成分であり、任意に添加できる成分である。しかし、Bi成分の含有量が20.0%を超えると、ガラスの安定性が悪くなり、TiOの生成が難しくなる。従って、酸化物換算組成のガラス体全物質量に対するBi成分の含有量は、好ましくは20.0%、より好ましくは15.0%、最も好ましくは10.0%を上限とする。Bi成分は、原料として例えばBi等を用いてガラス体内に含有することができる。
TeO成分は、ガラスの溶融性と安定性を高める成分であるとともに、ガラス転移温度(Tg)を下げることで熱処理温度が下がるため、アナターゼ型からルチルへの転移を抑制できる成分であり、任意に添加できる成分である。しかし、TeO成分の含有量が20.0%を超えると、ガラスの安定性が悪くなり、TiOの生成が難しくなる。従って、酸化物換算組成のガラス体全物質量に対するTeO成分の含有量は、好ましくは20.0%、より好ましくは15.0%、最も好ましくは10.0%を上限とする。TeO成分は、原料として例えばTeO等を用いてガラス体内に含有することができる。
Ln成分(式中、LnはLa、Gd、Y、Ce、Nd、Dy、Yb及びLuからなる群より選択される1種以上、Ceを除く各成分についてはa=2且つb=3、Ceについてはa=1且つb=2)は、ガラスセラミックスの化学的耐久性を高める成分であり、且つTiO結晶相に固溶し、又はその近傍に存在することで、光触媒特性が向上する成分であり、任意に添加できる成分である。しかし、Ln成分の含有量の合計が30.0%を超えると、ガラスの安定性が著しく悪くなる。従って、酸化物換算組成のガラス体全物質量に対する、Ln成分から選ばれる少なくとも1種以上の成分の質量和は、好ましくは30.0%、より好ましくは20.0%、最も好ましくは10.0%を上限とする。Ln成分は、原料として例えばLa、La(NO・XHO(Xは任意の整数)、Gd、GdF、Y、YF、CeO、Nd、Dy、Yb、Lu等を用いてガラス体内に含有することができる。
成分(式中、MはV、Cr、Mn、Fe、Co、Niからなる群より選択される1種以上とし、x及びyはそれぞれx:y=2:(Mの価数)を満たす最小の自然数とする)は、TiO結晶相に固溶するか、またはその近傍に存在することで、光触媒特性の向上に寄与し、且つ一部の波長の可視光を吸収してガラスセラミックスに外観色を付与する成分であり、本発明のガラスセラミックス中の任意成分である。特に、M成分から選ばれる少なくとも1種以上の成分の質量和を10.0%以下にすることで、ガラスセラミックスの安定性を高め、ガラスセラミックスの外観の色を容易に調節することができる。従って、酸化物換算組成のガラスセラミックス全物質量に対する、M成分から選ばれる少なくとも1種以上の成分の質量和は、好ましくは10.0%、より好ましくは8.0%、最も好ましくは5.0%を上限とする。
本発明のガラスセラミックスに用いられるガラス体には、F成分、Cl成分、Br成分、S成分、N成分、及びC成分からなる群より選ばれる少なくとも1種以上の非金属元素成分が含まれていてもよい。これらの成分は、TiO結晶相に固溶し、又はその近傍に存在することで、光触媒特性が向上する成分であり、任意に添加できる成分である。しかし、これらの成分の含有量が合計で10.0%を超えると、ガラスの安定性が著しく悪くなり、光触媒特性も低下し易くなる。従って、良好な特性を確保するために、酸化物換算組成のガラス体全質量に対する非金属元素成分の含有量の合計は、好ましくは10.0%、より好ましくは5.0%、最も好ましくは3.0%を上限とする。これらの非金属元素成分は、アルカリ金属又はアルカリ土類金属のフッ化物、塩化物、臭化物、硫化物、窒化物、炭化物等の形でガラス体中に導入するのが好ましい。なお、本明細書における非金属元素成分の含有量は、ガラス体を構成するカチオン成分全てが電荷の釣り合うだけの酸素と結合した酸化物でできていると仮定し、それら酸化物でできたガラス体全体の質量を100%として、非金属元素成分の質量を質量%で表したもの(酸化物基準の質量に対する外割り質量%)である。非金属元素成分の原料は特に限定されないが、N成分の原料としてAlN、SiN等、S成分の原料としてNaS,Fe,CaS等、F成分の原料としてZrF、AlF、NaF、CaF等、Cl成分の原料としてNaCl、AgCl等、Br成分の原料としてNaBr等、C成分の原料としてTiC、SiC又はZrC等を用いることで、ガラス体内に含有することができる。なお、これらの原料は、一体的に添加してもよいし、独立に添加してもよい。
本発明のガラスセラミックスに用いられるガラス体には、Cu、Ag、Au、Pd、Ptから選ばれる少なくとも1種の金属元素成分が含まれていてもよい。これらの金属元素成分は、TiO結晶相の近傍に存在することで、光触媒活性が向上するため、任意に添加できる。しかし、これらの金属元素成分の含有量の合計が10.0%を超えるとガラスの安定性が著しく悪くなり、光触媒特性がかえって低下し易くなる。従って、酸化物換算組成のガラス体全質量に対する金属元素成分の含有量の合計は、好ましくは10.0%、より好ましくは5.0%、最も好ましくは1.0%を上限とする。これらの金属元素成分は、原料として例えばCuO、AgO、AuCl、PtCl等を用いてガラス体内に含有することができる。なお、本明細書における金属元素成分の含有量は、ガラス体を構成するカチオン成分の全てが電荷の釣り合うだけの酸素と結合した酸化物でできていると仮定し、それら酸化物でできたガラス体全体の質量を100%として、金属元素成分の質量を質量%で表したもの(酸化物基準の質量に対する外割り質量%)である。
As成分及びSb成分は、ガラス体を清澄し脱泡する成分であり、また、前述のように光触媒活性を高める作用のあるAgやAuやPtイオンと一緒に添加する場合は、還元剤の役割を果たすので、間接的に光触媒の活性の向上に寄与する成分であり、任意に添加できる成分である。しかし、これらの成分の含有量が合計で5.0%を超えると、ガラスの安定性が悪くなり、光触媒特性も低下し易くなる。従って、酸化物換算組成のガラス体全物質量に対するAs成分及び/又はSb成分の含有量の合計は、好ましくは5.0%、より好ましくは3.0%、最も好ましくは1.0%を上限とする。As成分及びSb成分は、原料として例えばAs、As、Sb、Sb、NaSb・5HO等を用いてガラス体内に含有することができる。
なお、ガラス体を清澄し脱泡する成分は、上記のSb成分に限定されるものではなく、例えばCeO成分やTeO成分等のような、ガラス製造の分野における公知の清澄剤や脱泡剤、或いはそれらの組み合わせを用いることができる。
<含有すべきでない成分について>
次に、ガラス体に含有すべきでない成分、及び含有することが好ましくない成分について説明する。
ガラス体には、他の成分をガラスセラミックスの特性を損なわない範囲で必要に応じ、添加することができる。
但し、PbO等の鉛化合物、Th、Cd、Tl、Os、Be、Se、Hgの各成分は、近年有害な化学物資として使用を控える傾向にあり、ガラスセラミックスの製造工程のみならず、加工工程、及び製品化後の処分に至るまで環境対策上の措置が必要とされる。従って、環境上の影響を重視する場合には、不可避な混入を除き、これらを実質的に含有しないことが好ましい。これにより、ガラス体に環境を汚染する物質が実質的に含まれなくなる。そのため、特別な環境対策上の措置を講じなくとも、このガラスセラミックスを製造し、加工し、及び廃棄することができる。
原料組成物は、得られるガラス体が酸化物基準のモル%で、
SiO成分及び/又はGeO成分 0〜60.0%、及び/又は、
アルカリ金属酸化物成分及び/又はアルカリ土類金属酸化物成分 0〜50.0%、及び/又は、
(式中、Mは、W、Mo、Nb、及びTaからなる群より選ばれる1種以上である。a及びbは、a:b=2:(Mの価数)を満たす最小の自然数である。)成分 0〜50.0%、及び/又は、
(式中、Mは、Zr及びSnからなる群より選ばれる1種以上である。c及びdは、c:d=2:(Mの価数)を満たす最小の自然数である。)成分 0〜30.0%、及び/又は、
(式中、Mは、B、Al、Ga、及びInからなる群より選ばれる1種以上である。)成分 0〜50.0%、及び/又は、
Ln(式中、Lnは、Y、Ce、La、Nd、Gd、Dy、及びYbからなる群より選ばれる1種以上である。)成分 0〜30.0%、及び/又は、
(式中、Mは、V、Cr、Mn、Fe、Co、Niからなる群より選ばれる1種以上である。e及びfは、e:f=2:(Mの価数)を満たす最小の自然数である。) 0〜10.0%、及び/又は、
Bi成分+TeO成分 0〜20.0%、及び/又は、
As成分+Sb成分 0〜5.0%
の各成分を含有し、
前記ガラス体の酸化物換算組成の全質量に対する質量%で、
F成分、Cl成分、Br成分、S成分、N成分、及びC成分からなる群より選ばれる少なくとも1種以上の非金属元素成分を、10.0%以下、及び/又は、
Cu、Ag、Au、Pd、及びPtからなる群より選ばれる少なくとも1種の金属元素成分を、10.0%以下
であるように調製されたものであることが好ましい。
この条件を満たす限りにおいて、原料組成物は、ガラス形成酸化物等を含む非ガラス原料(通常、粉体であり、バッチと称される)であっても、非ガラス体がガラス化されたガラス原料(通常、破砕物であり、カレットと称される)であってもよい。
[粉砕工程]
粉砕工程では、ガラス体を粉砕して粉砕ガラスを作製する。粉砕ガラスの粒子径や形状は、成形工程、成形体の形状及び寸法の必要とされる精度に応じて適宜設定されてよい。
具体的には、後の工程で粉砕ガラスを堆積したものに対して焼結を行う場合、粉砕ガラスの平均粒子径は数十mmの単位でもよいが、ガラスセラミックスを所望の形状にする場合は、平均粒子径が大きすぎると所望形状の成形体を成形するのが困難になるので、平均粒子径は出来るだけ小さい方がよい。そこで、粉砕ガラスの平均粒子径の上限は、好ましくは100μm、より好ましくは50μm、最も好ましくは10μmである。
なお、ガラス体の粉砕は、特に限定されないが、例えばボールミル、ジェットミル等を用いて行うことができる。
(TiOの添加)
本発明に係る製造方法は、粉砕ガラスに結晶状態のTiOを混合して混合物を作製する工程を有してもよい。結晶状態のTiOを混合しなくても、ガラス体からTiO結晶相を生成することができるが、既に結晶状態のTiOを添加することで、より多くのTiOの結晶相を有するガラスセラミックスをより確実に製造できる。
結晶状態のTiOの混合量は、ガラス体の組成、製造工程における温度等に応じ、所望の量のTiO結晶相がガラスセラミックスに生成するよう、適宜設定されてよい。具体的に、混合する結晶状態のTiOの量は、過小であると、ガラスセラミックス中のTiO結晶相の量が不充分になりやすく、過剰であると、焼結が困難になる等の障害が生じやすい。そこで、混合する結晶状態のTiOの量の下限は、混合物に対する質量比で1.0%であることが好ましく、より好ましくは5.0%、最も好ましくは10.0%である。他方、混合する結晶状態のTiOの量の上限は、混合物に対する質量比で95.0%であることが好ましく、より好ましくは80.0%、最も好ましくは60.0%である。
一般に、TiOの結晶型には、アナターゼ、ルチル、ブルッカイトの3種類がある。このうち、本工程で用いる結晶状態のTiOは、これら3種類のうち1種又は2種以上であってよいが、光触媒機能に優れる点で、アナターゼとブルッカイトとの組み合わせであることがより好ましい。
上記のTiO結晶の原料粒子サイズは、光触媒活性を高める観点からは出来るだけ小さい方がよいが、原料粒子サイズが小さ過ぎると、焼結の際にガラスと反応し、結晶状態を保たずに消失するおそれがある。また、原料粒子が細かすぎると、製造工程における取り扱いが難しくなる問題もある。一方で、原料粒子サイズが大きすぎると、原料粒子の形態で最終製品に残り易くなるため、所望の光触媒特性を得にくい傾向が強くなる。従って、原料粒子のサイズは11〜500nmの範囲が好ましく、21〜200nmの範囲がより好ましく、31〜100nmの範囲が最も好ましい。
(他成分の添加)
本発明に係る製造方法は、N成分、S成分、F成分、Cl成分、Br成分、及びC成分からなる群より選ばれる1種以上を含む添加物を、前述の粉砕ガラス又は混合物に混合する工程を有してもよい。これらの成分は、前述したようにガラス体を作製する前のバッチの段階でガラス体の成分としてガラス体に導入することも可能であるが、ガラス体を作製してからこれらの添加物をガラス体の粉末に混合して導入する方がより効果的であり、より高い光触媒特性を持つガラスセラミックス製品を容易に得ることが可能になる。
添加物の混合量は、ガラス体の組成等に応じ、適宜設定されてよい。上記の添加物の混合量は、ガラスセラミックスの光触媒機能を充分に向上できる点で、粉砕したガラス体又はその混合物に対する質量比で好ましくは0.01%以上であり、より好ましくは0.05%以上であり、最も好ましくは0.1%以上である。他方、過剰に添加すると光触媒特性が低下し易くなることから、添加量の混合量は、粉砕したガラス又はその混合物に対する質量比で好ましくは20.0%以下であり、より好ましくは10.0%以下であり、最も好ましくは5.0%以下である。
特に限定されないが、N成分はAlN、SiN等、S成分はNaS,Fe,CaS等、F成分はZrF、AlF、NaF、CaF等、Cl成分はNaCl、AgCl等、Br成分はNaBr等、C成分はTiC、SiC又はZrC等を用いることで、添加することができる。なお、添加剤の構成物は、一体的に添加してもよいし、独立に添加してもよい。
(金属元素成分の添加)
本発明に係る製造方法は、Cu、Ag、Au、Pd、及びPtからなる群より選ばれる1種以上からなる金属元素成分を粉砕ガラス又は混合物に混合する工程を有してもよい。これらの成分は、前述したようにガラス体を作製する前のバッチの段階でガラス体の成分としてガラス体に導入することも可能であるが、ガラス体を作製してから金属元素成分をガラス体に混合して導入するとより効果的であり、より高い光触媒特性を持つガラスセラミックス製品を容易に得ることが可能になる。
金属元素成分の混合量は、ガラス体の組成等に応じ、適宜設定されてよい。上記の金属元素成分の混合量は、ガラスセラミックスの光触媒機能を充分に向上できる点で、粉砕したガラス体又はその混合物に対する質量比で好ましくは0.001%以上であり、より好ましくは0.005%以上であり、最も好ましくは0.01%以上である。他方、過剰に添加すると光触媒特性が低下し易くなることから、金属元素成分の混合量は、粉砕したガラス又はその混合物に対する質量比で好ましくは10.0%以下であり、より好ましくは5.0%以下であり、最も好ましくは3.0%以下である。なお、金属元素成分は、原料として例えばCuO、AgO、AuCl、PtCl等を用いてもよい。
金属元素成分の粒子径や形状は、ガラス体の組成、TiOの量、結晶型等に応じ、適宜設定されてよいが、ガラスセラミックスの光触媒機能を最大に発揮するには、金属元素成分の平均粒子径は、できるだけ小さい方がよい。従って、金属元素成分の平均粒子径の上限は、好ましくは5.0μmであり、より好ましくは1.0μmであり、最も好ましくは0.1μmである。
(スラリ化)
本発明の製造方法は、粉砕ガラスを分散してスラリ状態にする工程を有してもよい。これにより、次の成形工程における成形を容易化できる。具体的には、粉砕ガラスに、有機バインダ、及び好ましくは溶剤を添加する。なお、ここで言う破砕ガラスは、前述の混合物を包含する概念である。
有機バインダとしては、プレス成形やラバープレス、押出成形、射出成形用の成形助剤として汎用されている市販のバインダが使用できる。具体的には、アクリル樹脂、エチルセルロース、ポリビニルブチラール、メタクリル樹脂、ウレタン樹脂、ブチルメタアクリレート、ビニル系の共重合物等が挙げられる。スラリに対する有機バインダの含有率の下限値は、成形を充分に容易化できる点で、40質量%であることが好ましく、より好ましくは30質量%、最も好ましくは20質量%である。
溶剤としては、PVA、IPA、ブタノール等の公知の材料が使用でき、環境負荷を軽減できる点でアルコール又は水が好ましい。また、より均質な成形体を得るために、適量の分散剤を併用してもよく、乾燥する際の泡抜き効率を向上するために、適量の界面活性剤を併用してもよい。分散剤としては、特に限定されないが、例えば、トルエン、キシレン、ベンゼン、ヘキサン、シクロヘキサン等の炭化水素類、セロソルブ、カルビトール、テトラヒドロフラン(THF)、ジオキソラン等のエーテル類、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸−n−ブチル、酢酸アミル等のエステル類等が挙げられ、これらは単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
[成形工程]
成形工程は、粉砕ガラスを耐火物の上に堆積するか所望形状の成形体に成形する工程である。所望の形状にする場合は、破砕ガラスを型に入れて加圧するプレス成形を用いるのが好ましい。なお、ここで言う破砕ガラスは、前述の混合物を包含する概念である。
[焼結工程]
焼結工程では、成形体を加熱して焼結を行うことで、焼結体を作製する。これにより、原料がガラス体単体のみの場合は、ガラス体の粒子同士が結合すると同時にTiO結晶相が生成し、ガラスセラミックスが形成される。原料がガラス体とアナターゼ型TiO等との混合物の場合は、上述の現象が起きると同時に、ガラス相がアナターゼ型TiOの表面に被覆することで、アナターゼ型TiOの光触媒活性の低いルチルへの転移が抑制され、より多くのアナターゼ型TiOがガラスセラミックスに生成される。そのため、より高い光触媒活性を得ることができる。ここで、焼結工程の具体的な工程は特に限定されないが、成形体に予熱を加える工程、成形体を設定温度へと徐々に昇温させる工程、成形体を設定温度に一定時間保持する工程、成形体を室温へと徐々に冷却する工程を含んでよい。
焼結の条件は、原料がガラス体単体の場合は、ガラス体の組成に応じて適宜設定されてよいが、結晶状態のTiO等と混合する場合は、TiOの量、サイズ及び結晶型等を考慮する必要がある。また、本発明における焼結工程は、原料となるガラス粉末から結晶が生成するプロセスであり、熱処理温度において、原料ガラスの結晶化条件に符合する必要がある。しかし、いずれの場合も、焼結温度が低すぎると所望の焼結体が得られないため、少なくともガラス体のガラス転移温度(Tg)より高い温度での焼結が必要となる。具体的に、焼結温度の下限は、ガラス体のガラス転移温度(Tg)以上であり、好ましくはTg+50℃以上であり、より好ましくはTg+100℃以上であり、最も好ましくはTg+150℃以上である。他方、焼結温度は、高すぎると、アナターゼ結晶相がルチルへ相転移するか他の結晶相に変わる等して大幅に減少する傾向が強くなる。従って、焼結温度の上限は、好ましくはガラス体のTg+600℃以下であり、より好ましくはTg+500℃以下であり、最も好ましくはTg+400℃以下である。
また、焼結時間の下限は、焼結温度に応じて設定する必要があるが、高い温度の場合は短く、低い温度の場合は、長く設定するのが好ましい。具体的に、焼結を充分に行うことができる点で、好ましくは10分、より好ましくは20分、最も好ましくは30分を下限とする。一方、焼結時間が20時間を越えると、成形体中のTiO結晶とガラスとの反応が進み、結晶粒径が小さくなり過ぎて、ガラスセラミックス中に光触媒機能を発揮するために十分な大きさのTiO結晶が得られないおそれがある。従って、焼結時間の上限は、好ましくは20時間、より好ましくは19時間、最も好ましくは18時間とする。なお、ここで言う焼結時間とは、焼結工程のうち雰囲気温度が一定(例えば、上記設定温度)以上に保持されている時間の長さを指す。
(脱脂)
本発明の製造方法では、成形体が有機バインダを含むときには、焼結工程の前に、成形体を350℃以上の温度に加熱することが好ましい。これにより、成形体に含まれていた有機バインダ等が分解され、ガス化して排出されるため、成形体から有機物を除去することができる。加熱温度の下限は、有機物を充分に除去できる点で、350℃であることが好ましく、より好ましくは380℃、最も好ましくは400℃である。
これらの脱脂及び焼結の工程は、ガス炉、マイクロ波炉、電気炉等の中で、空気交換しつつ行うことが好ましい。ただし、これに限られず、上記の工程を、不活性ガス雰囲気、還元ガス雰囲気、酸化ガス雰囲気にて行ってもよい。
(表面処理)
本発明の製造方法は、焼結体に、酸性もしくはアルカリ性の溶液への浸漬、又はエッチングを行う工程を更に有してもよい。酸性もしくはアルカリ性の溶液への浸漬によれば、ガラス相が溶けて焼結体の表面を凹凸状態にしたり多孔質の状態にしたりすることができ、TiO結晶相の露出面積が増加するため、より高い光触媒特性を得ることができる。
浸漬に使用される酸性もしくはアルカリ性の溶液は、焼結体のTiO結晶相以外のガラス相等を腐蝕可能であれば特に限定されず、例えばフッ素又は塩素を含む酸(フッ化水素酸、塩酸)であってよい。また、エッチングは、フッ化水素ガス、塩化水素ガス、フッ化水素酸、塩酸等を、焼結体の表面に吹き付けることで行ってよい。
<成形体>
以上の製造方法で製造されるガラスセラミックスを含む光触媒機能性成形体は、外界に曝され有機物等が付着することで汚染したり、菌類が浮遊しやすい雰囲気等で使用されたりする機械、装置、器具等において有用である。例えば、タイル、窓枠、ランプ、建材等は、本発明の光触媒機能性成形体を含んでいることが好ましい。
また、本発明の製造方法で製造されるガラスセラミックスを含む親水性成形体も、本発明に包含される。かかる親水性成形体は、セルフクリーニング作用を有するため、建築用パネル、タイル及び窓等として有用である。
表1及び2に、本発明の実施例(No.1〜No.9)及び比較例(No.1)のガラス体の組成、これらのガラス体を用いてガラスセラミックス成形体を作製する際の条件及び結晶相を示す。このうち、実施例(No.9)は、本発明の参考例として示した。なお、以下の実施例はあくまで例示の目的であり、これらの実施例にのみ限定されるものではない。
本発明の実施例(No.1〜No.9)及び比較例(No.1)のガラスセラミックス成形体は、いずれも各成分の原料として各々相当する酸化物、水酸化物、炭酸塩、硝酸塩、フッ化物、水酸化物、メタリン酸化合物等の通常のガラスに使用される高純度の原料を選定し、各実施例及び比較例の組成の割合になるように秤量して均一に混合した後、白金坩堝又は石英坩堝に投入し、ガラス組成の熔融難易度に応じて電気炉で1350〜1500℃の温度範囲で2〜6時間溶解し、攪拌均質化してからガラス融液を流水中に滴下することで、粒状又はフレーク状のガラス体を得た。このガラス体をジェットミルで粉砕することで、粒子サイズが10μm以下の粉末ガラスを得た。この粉末ガラスを金型に充填し、一軸加圧したのち、冷間静水圧プレスを行い、ペレット状態にした。その後、電気炉に入れて、表1に示すような所定の温度と時間で焼成を行った。
また、表3には、実施例(No.10〜No.20)において、粉砕したガラス体A(5%SiO−24%P−65%TiO−3%NaO−1%WO−2%ZrO、Tg=640℃)と混合する他の物質、その配合量、並びに焼成条件及び生成される結晶相を示す。具体的に粒子サイズが10μm以下のガラスAの粉末と添加物と混合物を更に均一に混合してから金型に充填し、一軸加圧した上で冷間静水圧プレスを行い、ペレットの状態にした。その後、電気炉に入れて、表3に示すような所定の温度と時間で焼成を行い、ガラスセラミックス成形体を作製した。
ここで、実施例(No.1〜No.20)及び比較例(No.1)のガラスセラミックス成形体に生成した結晶相の種類は、X線回折装置(フィリップス社製、商品名:X’Pert−MPD)で同定した。この結果を表2及び3に示す。
また、実施例(No.1〜No.20)及び比較例(No.1)のガラスセラミックス成形体の光触媒特性を、光触媒製品技術協議会が策定した「光触媒性能評価法I」に準じて評価し、この結果を表2及び3に示す。すなわち、成形体試料の表面にメチレンブルーの溶液を滴下し、紫外線を照射した後の色を観察し、メチレンブルーの脱色の度合いによって光触媒の性能を評価した。評価の結果、光触媒特性が認められた試料は○印、光触媒特性が認められなかった試料は×印で示した。
また、実施例(No.1〜No.9)及び比較例(No.1)のガラスセラミックス成形体の親水性についてθ/2法によりサンプル表面と水滴との接触角を測定することにより評価した。この結果を表2に示す。すなわち、紫外線照射後のガラスセラミックスの表面に水を滴下し、ガラスセラミックス成形体の表面から水滴の頂点までの高さhと、水滴の試験片に接している面の半径rと、を協和界面科学社の接触角計(CA−X)を用いて測定し、θ=2tan−1(h/r)の関係式より、水との接触角θを求めた。
Figure 0005461813
Figure 0005461813
Figure 0005461813
表2に表されるように、実施例(No.1〜No.9)のガラスセラミックス成形体に生成した結晶相には、いずれも光触媒活性の高いアナターゼ型のTiO結晶が含まれていた。このことは、図1に示した実施例(No.1)のガラスセラミックス成形体についてのXRDパターンにおいて、入射角2θ=25.3°付近をはじめ、「●」で表される入射角にピークが生じていることからも明らかである。一方、比較例(No.1)の成形体に生成した結晶相には、アナターゼ型のTiO結晶は含まれていなかった。このため、本発明の実施例のガラスセラミックス成形体は、比較例の成形体に比べて、高い光触媒特性及び親水性を有することが推察された。
また、表3に表されるように、実施例(No.10〜No.20)のガラスセラミックス成形体に生成した結晶相にも、光触媒活性の高いアナターゼ型のTiO結晶が含まれていた。このことは、図2に示した実施例(No.10)の成形体についてのXRDパターンにおいて、入射角2θ=25.3°付近をはじめ、「●」で表される入射角にピークが生じていることからも明らかである。このため、本発明の実施例のガラスセラミックス成形体は、比較例1の成形体に比べて、表面に高い光触媒特性及び親水性を有することが推察された。
これらのうち、実施例(No.1〜No.9)のガラスセラミックス成形体の光触媒特性について上述したメチレンブルー脱色法で評価したところ、表2に示すように、いずれのガラスセラミックス成形体もメチレンブルーの脱色現象が起こったことから、光触媒特性を有することが確認された。一方、比較例については、メチレンブルーの脱色が認められなかった。
また、実施例(No.1〜No.9)のガラスセラミックス成形体について親水性を評価したところ、表2に示すように、紫外線の照射開始から2時間後には水との接触角が30°以下となることが確認された。一方、比較例については、紫外線の照射開始から2時間後における水との接触角が60°を越えていた。これにより、本発明の実施例のガラスセラミックス成形体は、比較例のガラスセラミックス成形体に比べて、高い親水性を有することが明らかになった。
なお、実施例(No.1〜No.20)のガラスセラミックス成形体の光触媒特性について評価したところ、表2と3に示されるように、いずれのガラスセラミックス成形体も光触媒特性を有していることが確認された。また、これらのガラスセラミックス成形体表面が剥離しにくく、光触媒反応による劣化もなく、高い耐久性を有することが明らかになった。
従って、本発明の実施例のガラスセラミックス成形体では、耐久性に優れ且つアナターゼ型をはじめとする酸化チタンの結晶が生成し易くなることが確認された。
以上、本発明を例示の目的で詳細に説明したが、本実施例はあくまで例示の目的のみであって、本発明の思想及び範囲を逸脱することなく多くの改変を当業者により成し得ることが理解されよう。
本発明の一実施例に係るガラスセラミックス成形体におけるTiO結晶相の存在を示すXRDパターンである。 本発明の別の実施例に係るガラスセラミックス成形体におけるTiO結晶相の存在を示すXRDパターンである。

Claims (12)

  1. ガラスセラミックスの製造方法であって、
    得られるガラス体が酸化物基準のモル%で、TiO成分を15.0〜85.0%、P成分を10.0〜70.0%、SiO成分を5.00〜30.0%含有するように調製された原料組成物を溶融しガラス化することで、ガラス体を作製するガラス化工程と、
    前記ガラス体を粉砕して粉砕ガラスを作製する粉砕工程と、
    前記粉砕ガラスを所望形状の成形体に成形する成形工程と、
    前記成形体を加熱して焼結を行うことで、焼結体を作製する焼結工程と、を有する製造方法。
  2. 前記粉砕ガラスに結晶状態のTiOを混合して混合物を作製する工程を有する請求項1記載の製造方法。
  3. 混合する結晶状態のTiOの量を、前記混合物に対する質量比で1.0〜95.0質量%にする請求項2記載の製造方法。
  4. N成分、S成分、F成分、Cl成分、Br成分、及びC成分からなる群より選ばれる1種以上を含む添加物を、前記粉砕ガラス又は前記混合物に対する質量比で0〜20.0%混合する工程を有する請求項1から3いずれか記載の製造方法。
  5. Cu、Ag、Au、Pd、及びPtからなる群より選ばれる1種以上からなる金属元素成分を、前記粉砕ガラス又は前記混合物に対する質量比で0〜10.0%混合する工程を有する請求項1から4いずれか記載の製造方法。
  6. 前記粉砕ガラスを分散してスラリ状態にする工程を有する請求項1から5いずれか記載の製造方法。
  7. 前記焼結を、前記ガラス体のガラス転移温度(Tg)以上であり且つTgより600℃高い温度以下の雰囲気温度で行う請求項1から6いずれか記載の製造方法。
  8. 前記焼結を、10分〜24時間に亘り行う請求項1から7いずれか記載の製造方法。
  9. 前記焼結体に、酸性もしくはアルカリ性の溶液への浸漬、又はエッチングを行う工程を更に有する請求項1から8いずれか記載の製造方法。
  10. 前記原料組成物として、得られるガラス体が酸化物基準のモル%で、
    eO成分 0〜60.0%
    アルカリ金属酸化物成分及び/又はアルカリ土類金属酸化物成分 0〜50.0%
    (式中、Mは、W、Mo、Nb、及びTaからなる群より選ばれる1種以上である。a及びbは、a:b=2:(Mの価数)を満たす最小の自然数である。)成分 0〜50.0%
    (式中、Mは、Zr及びSnからなる群より選ばれる1種以上である。c及びdは、c:d=2:(Mの価数)を満たす最小の自然数である。)成分 0〜30.0%
    (式中、Mは、B、Al、Ga、及びInからなる群より選ばれる1種以上である。)成分 0〜50.0%
    Ln(式中、Lnは、Y、Ce、La、Nd、Gd、Dy、及びYbからなる群より選ばれる1種以上である。)成分 0〜30.0%
    (式中、Mは、V、Cr、Mn、Fe、Co及びNiからなる群より選ばれる1種以上である。e及びfは、e:f=2:(Mの価数)を満たす最小の自然数である。) 0〜10.0%
    Bi成分+TeO成分 0〜20.0%、及
    As成分+Sb成分 0〜5.0%
    の各成分を含有し、
    前記ガラス体の酸化物換算組成の全質量に対する質量%で、
    F成分、Cl成分、Br成分、S成分、N成分、及びC成分からなる群より選ばれる少なくとも1種以上の非金属元素成分を、10.0%以下、及
    Cu、Ag、Au、Pd、及びPtからなる群より選ばれる少なくとも1種の金属元素成分を、10.0%以下
    であるように調製されたものを用いる請求項1から9いずれか記載の製造方法。
  11. 請求項1から10いずれか記載の製造方法で製造されるガラスセラミックスを含む光触媒機能性成形体。
  12. 請求項1から10いずれか記載の製造方法で製造されるガラスセラミックスを含む親水性成形体。
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