JP5461776B2 - マイコバクテリウムのエレクトロポレーションおよびマイコバクテリア中における抗原類の過剰発現 - Google Patents

マイコバクテリウムのエレクトロポレーションおよびマイコバクテリア中における抗原類の過剰発現 Download PDF

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Description

本発明は、結核ワクチン剤としての用途に対して改良されたワクチン性質を有するマイコバクテリウム株類を提供する。前記マイコバクテリウム株類は、好適には、強力な免疫原性を有することにより同定され、抗生物質耐性を示さず、グラム陰性菌に対して水平移行を示さない親株から選択される。本発明はまた、他の疾患に対して予防接種するための用途および癌治療における用途に対してワクチン性質を有するであろうトランスジーン類を運搬するために改良された性質を有するマイコバクテリウムを提供する。
マイコバクテリウム・チューバキュローシス(Mycobacterium tuberculosis)(M.tb)は世界人口の3分の1に感染し、800万人に激烈な疾患を引き起こしかつ毎年160万人−220万人を死亡させており、そのほとんどは、発展途上国に生活している。結核(TB)は、世界的にも流行しており、HIVの拡大と重なってさらにいっそう致命的になる。TBは、AIDS患者の最大の死亡原因となっている。
BCGは現在TBワクチンとして広く使用されており、80年以上前に開発され、試験によると肺結核に対する効果比が大きく変動し、インドで行った最近の大規模治験では全く効果がなかった(Fineほか、Vaccine、16(20):1923−1928;1998;Anonymous,Indian J Med Res.,Aug;110:56−69;1999)。にもかかわらず、世界保健機構(WHO)は現在、TBが高罹患率の国において(HIV疾患/AIDS症状を有するものを除き)全ての小児が出生時においてまたは最初に医療保健サービスに接触してきた際にBCGを勧めている。この方針は、BCGがTBの重篤な小児形態を防御するという知見に基づいている(Lanckrietほか、Int J Epidemiol,24(5):1042−1049;1995;Rodriguesほか、J Epidemiol Community Health 45(1):78−80;1991)。小児期を過ぎてまでTBをBCGにより防御することは論議を呼ぶ問題となっており、データは限られておりしかもさまざまな結果を示している。しかし、乳児期BCG予防接種が広く実施されている発展途上国において小児および成人でTBが高罹患率であることは、現在投与されているBCGが、ヒトがTBリスクにある長年にわたっては高い効果を有していないことを示している。したがって、BCGは、TB介入および制御のための公衆衛生手段としては適切でないと考えられている。
TB菌に暴露しかつ正常な免疫系を有するヒトの約70%が感染せず、感染したヒトのうちの約5%しか最初の2年以内に発病しない。感染したヒトの大半は感染を抑制し、このことは、M.tb抗原類に対する優れた細胞免疫応答の出現と関連している。さらにもう5%が、後日、免疫が低下すると再活性化される。一次および再活性化疾患の両者ともに、HIV/AIDS患者ではるかに頻度が高く、このことは、感染予防および制御において免疫の役割を強調している。
Fineほか、Vaccine、16(20):1923−1928;1998 Anonymous,Indian J Med Res.,Aug;110:56−69;1999 Lanckrietほか、Int J Epidemiol,24(5):1042−1049;1995 Rodriguesほか、J Epidemiol Community Health 45(1):78−80;1991
多くのヒトは、TBは制御できるので、適切な種類の長期持続免疫を導入することによって暴露後始めての感染を防御し、疾患への初期進行を予防し、潜伏状態からの再活性化を防御しかつ治療後の再燃を予防する有効なワクチン類を開発できるはずであると期待するだけの十分な理由がある。最終的に、ヒト病原体としてのM.tbを結果的に撲滅するであろう系統的ワクチン使用+化学療法介入の組み合わせとなる。
小児期BCGワクチンが急性TB予防に果たした重要な役割を考慮すれば、新しい候補TBワクチンが非常に優れた製品であるとの圧倒的証拠がなければこのTBワクチン類を評価するための治験においてBCGに取ってかわることは難しい。問題となっているのは、M.tbが元来ヒト特異的病原体であること、および動物モデルは宿主−病原体作用の一部を模倣するにすぎないことにある。したがって、新しいTBワクチンが改良された能力を有しているという明確な証拠は、ヒトでのコントロール治験からしか得られない。多くの研究者らはこうしたことを考慮して、改良TBワクチンを得るための重要なステップが、BCGの改良株類を開発すること、限界があるとはいえ動物モデルを開発することであると結論し、防御性抗原類を過剰発現する組み換えBCG類が、BCGに比較してより高い能力を有していると示唆している。
あるM.tb抗原類はワクチン性質を有しており、ワクチン製剤として動物に投与すると、BCG単独により活性化されたものと同様の防御を付与する(Anderson, Infect Immun 62(6)2536−2544;1994)。これらの候補類を推し進めるため、BCGにおけるこれらの抗原類の免疫原性を高める手段が開発された。したがって、選択したM.tb抗原類を過剰発現するBCG株類が開発され、これらの組み換えBCG(rBCG)株類は、rBCG株を誘導した親BCG株類に比較してより高い防御を誘発することが明らかになった(Horwitzほか、Infect Immun 72(4):1672−1679;2003)。ある研究では、抗原85B(本文では、“Ag85B”と称する)を発現したrBCG株が同一抗原を混合したBCGよりもより有効であることが証明された(Horwitzほか,同上、2003)。これらの知見に基づけば、このアプローチは非常に有力である。
ある環境において、抗原類を過剰発現するBCG株類を用いて、TBによる感染から防御する免疫応答を安全かつ効果的に惹起することもできる。
本発明は、結核に対するワクチン剤として使用するための改良されたワクチン性質を有する遺伝子工学で作製した(組み換え)マイコバクテリウム株類を提供する。それらはさまざまな特徴を有しており、それら特徴のそれぞれは、前記株類の免疫原性を増大させるように作用する。本発明の組み換えマイコバクテリウム株類は、それらの強力な免疫原性のゆえに意図的に選択した親株類から開発される。すなわち、(例えば、結核抗原を過剰発現させるため)遺伝子操作を受ける親株として選択したマイコバクテリウム株は、遺伝子操作の前にすでにワクチン投与した宿主において強力な免疫応答を惹起する能力を示すがゆえに、選択される。BCG Danish 1331株が、一例である。このような株類は、次に、問題の結核抗原を過剰発現するように好適に修飾される。好適には、インビボで活性化されるプロモータを前記遺伝子組み換えマイコバクテリウムにおいて用いる。さらに、本発明の組み換えマイコバクテリウム株類は、抗生物質耐性以外の基準に基づいて選択できるように遺伝子工学処理するか、または、それらが全く選択マーカーを必要としないように構築し、それらが、ヒト公衆におけるワクチン剤としての用途のために総合的に安全であるようにする。一例として、マイコバクテリウム複製に必要な遺伝子を除去して発現プラスミド中に入れる。さらに、本発明の組み換えマイコバクテリウム株類はグラム陰性菌への水平移動を受けないので、宿主生物体から“エスケープ(逃亡)”することができない。これによりまた、ヒト公衆におけるワクチン剤としての安全性が確保される。
別の例として、本発明は、プラスミド安定化因子としてのプラスミドによる抗原85bの使用を述べるが、それにより、それらの維持のための抗生物質選択の必要性がなくなる。それらの同定のため、PCR陽性選択を利用してAg85B+他の抗原類を発現する高濃度最小プラスミド類によりマイコバクテリウム株類を直接形質転換することによって、抗生物質または栄養素要求性選択がなくても、プラスミド安定性を有する抗原類過剰発現マイコバクテリウム株類を得る。さらに、本発明の組み換えマイコバクテリウム株類は、結核ワクチンとしての用途には優れた物質であるが、それらはまた遺伝子工学処理して、結核関連以外の抗原類を発現または過剰発現するようにすることもでき、従って、それらは、他の疾患に対するワクチン剤としても同様に有用である。さらに、TB抗原類または他の疾患で重要な抗原類を過剰発現するrBCGを、ブースターとしてのアジュバント類、組み換えウイルスベクター類またはDNAまたはRNAワクチン類とともに組み換えタンパク質類によるプライムブースト処方においても使用できる。
本発明は、形質転換菌またはその子孫を提供し、それは、形質転換菌(または子孫)中で複製し発現する外来性のヌクレオチド配列を取り込んでおり、一方、この外来性ヌクレオチド配列は、選択を可能とするマーカーに連結していない。一態様において、この外来性ヌクレオチド配列はプラスミド上にあり、他の態様では、プラスミドが生存に必要な遺伝子をコードし、この生存に必要な遺伝子は、前記形質転換菌のゲノムから欠失させてある。さらに別の態様では、プラスミドが、例えばpfoのようなエンドソームエスケープをコードする遺伝子を保有している。他の態様では、この外来性ヌクレオチド配列が、pfoのようなエンドソームエスケープをコードする。他の態様において、この外来性ヌクレオチド配列が、抗原85a、抗原85bまたは抗原85a/85bをコードする。さらに他の態様において、プラスミドは、プラスミドを維持しかつ/または安定化させるタンパク質類をコードする遺伝子を保有する。いくつかの態様において、タンパク質類をコードする遺伝子は、抗原85a、抗原85b、または抗原85a/85bをコードする。本発明の一態様においては、前記菌がマイコバクテリウムである。さらに別の態様においては、前記外来性ヌクレオチド配列が、アポトーシスをコードする。他の態様においては、プラスミドが、アポトーシスをコードする遺伝子を保有する。さらに本発明の別の態様においては、この外来性ヌクレオチド配列は、グラム陰性菌中で複製できない。いくつかの態様において、形質転換菌は、栄養素要求性である。さらに別の態様において、前記外来性ヌクレオチド配列は、少なくとも、ワンウェイシャトルベクターの一部である。
本発明はさらに、細菌を形質転換する方法を提供する。本方法は、細菌中で複製し発現する外来性ヌクレオチド配列を取り込む過程を含み、前記外来性ヌクレオチド配列は、選択を可能とするマーカーに連結していない。本発明の一態様においては、取り込み過程は、エレクトロポレーションによって行われる。さらに別の態様においては、前記外来性ヌクレオチド配列はプラスミド上にあり、前記のエレクトロポレーションは、下記の条件下で行われる:プラスミドDNAの菌体に対する割合は、1.25×10菌体に対してプラスミドDNAが1μgから5μgの範囲である。本発明の一態様においては、前記割合は、約1.25×10菌体に対してプラスミド約1.6μgである。本発明のいくつかの態様において、外来性ヌクレオチド配列は、グラム陰性菌で複製できない。他の態様においては、外来性ヌクレオチド配列は、少なくとも、ワンウェイシャトルベクターの一部である。さらに別の態様においては、前記外来性ヌクレオチド配列は、プラスミド上に配置され、前記菌の菌ゲノムから欠失させた生存に必要な遺伝子をコードする。
本発明はさらに、問題の遺伝子をコードする外来性ヌクレオチド配列を含む形質転換マイコバクテリウムまたはその子孫を提供し、ここで、ひとつ以上の下記条件が存在している:a)前記形質転換マイコバクテリウムは、グラム陰性菌で複製できないプラスミドを含むこと;b)前記形質転換マイコバクテリウムは、抗生物質耐性を示さないこと;c)前記形質転換マイコバクテリウムは、栄養素要求性であること;およびd)前記形質転換マイコバクテリウムは、ワンウェイシャトルベクターを保有していること。一つの態様においては、前記外来性ヌクレオチド配列は、プラスミドの一部である。別の態様においては、プラスミドは、選択を可能とするマーカーを欠損している。さらに本発明の別の態様において、前記外来性ヌクレオチド配列は、生存に必要な遺伝子をコードし、ここで、前記の生存に必要な遺伝子は、形質転換マイコバクテリウムの菌ゲノムから欠失させてある。いくつかの態様において、生存に必要な遺伝子は、leuDである。形質転換マイコバクテリウムまたは子孫はさらに、インビボで活性化されるプロモータ配列を含むことができる。前記形質転換マイコバクテリウムまたはその子孫は、弱毒化させることもできる。前記形質転換マイコバクテリウムまたはその子孫はBCGであることもでき、それは、例えば、BCG 1331、BCG Pasteur、BCG TokyoまたはBCG Copenhagenであることもできる。
本発明はさらに、問題の遺伝子をコードする外来性ヌクレオチド配列を含む形質転換マイコバクテリウムまたはその子孫を含むワクチンを提供し、ここで、ひとつ以上の下記条件が存在している:a)前記形質転換マイコバクテリウムが、グラム陰性菌で複製できないプラスミドを含むこと;b)前記形質転換マイコバクテリウムが、抗生物質耐性を示さないこと;c)前記形質転換マイコバクテリウムが、栄養素要求性であること;およびd)前記形質転換マイコバクテリウムが、ワンウェイシャトルベクターを保有していること。
結核ワクチン剤用として改良ワクチン性を備えるマイコバクテリウム株類を提供できる。
本発明は、結核に対するワクチン剤として使用するための改良されたワクチン性質を有する遺伝子工学で作製した(組み換え)マイコバクテリウム株類を提供する。それらはさまざまな特徴を有しており、それら特徴のそれぞれは、前記株類の免疫原性を増大させるように作用する。本発明の組み換えマイコバクテリウム株類は、その強力な免疫原性のゆえに意図的に選択した親株類から開発される。すなわち、(例えば、結核抗原を過剰発現させるため)遺伝子操作を受ける親株として選択したマイコバクテリウム株は、遺伝子操作の前にすでにワクチン投与した宿主において強力な免疫応答を惹起する能力を示すがゆえに、選択される。BCG Danish 1331株が、一例である。このような株類は、次に、問題の結核抗原を過剰発現するように、好適に修飾される。好適には、インビボで活性化されるプロモータを前記遺伝子組み換えマイコバクテリウムにおいて用いる。さらに、本発明の組み換えマイコバクテリウム株類は、抗生物質耐性以外の基準に基づいて選択できるように遺伝子工学処理され、それらが、ヒト公衆におけるワクチン剤としての用途に総合的に安全であるようにする。一例として、複製に必要な遺伝子を除去して発現プラスミド中に入れる。さらに、本発明の組み換えマイコバクテリウム株類は、グラム陰性菌に水平移動しないので、したがって、宿主生物体から“エスケープ(逃亡)”することができない(すなわち、それらは、“ワンウェイベクター”である)。これによりまた、ヒト公衆におけるワクチン剤としての安全性が確保される。さらに、本発明の組み換えマイコバクテリウム株類は結核ワクチンとしての用途に優れた物質であるが、それらは、また、遺伝子工学処理して、結核関連以外の抗原類を発現または過剰発現するようにすることもでき、従って、それらは、他の疾患に対するワクチン剤としても同様に有用である。
さらに、本発明の好適な態様において、マイコバクテリウム株類は、例えばBCGのような弱毒化株類である。しかし、当業者は容易に理解するであろうが、他の弱毒化または非弱毒化マイコバクテリウム株類もまた利用できる。他のマイコバクテリウムタイプ例には、マイコバクテリウム・ミクロティ(Mycobacterium microti)、マイコバクテリウムH37Ra(Mycobacterium H37Ra)、マイコバクテリウム・バカエ(Mycobacterium vaccae)等が含まれるが、それらに限定されない。
BCG株選択
先行技術から、BCGが均質な株ではなく、それどころか、明確な遺伝系統アレイを示すことが示唆されている(Oettingerほか、Tuber Lung Dis.79(4):243−250;1990)。最近になるまで、これらの差異がBCG族メンバーの免疫原性および能力を変化させるのかどうか、明らかではなかった。しかし、本明細書にも述べたように、現在、組み換えBCG(本明細書でrBCGと称する)を誘導するもととなったある特定の株がrBCGの免疫能力において実質的差異を生じることが発見されている。下記の実施例1は、BCG Danish 1331株(本明細書で“BCG1331”と称する)がBCGTiceと比較して優れたワクチンであることを示している。したがって、株rBCG30における抗原85Bの過剰発現は、rBCG30を誘導するもととなった親株BCGTiceの免疫原性を増大させたが、BCG tice株において抗原85Bを過剰発現するrBCG30は、BCG1331の能力を獲得しなかった。したがって、BCGにおける抗原過剰発現から得られた利点は、ワクチン構築プロセスの最初に強力な親BCG株を選択することによって、得ることもできる。この解決法は後知恵から見れば自明であるように思われるが、当技術に明るい者たちもこの埋め合わせ的工夫をしておらず(Horwitzほか、Proc Natl Acad Sci USA 97(25):13853−13858;2000)、これまでは、rBCGワクチン作成前に親BCG株が適切な能力を示すかどうか最初に決めることは一般的でも必須でもなかったことを明らかにしている。このような株類は、BCGおよびTB抗原類または外来性抗原類の過剰発現に非常に適している。
強力な親BCG株類は、BCG1331、BCG Pasteur、BCG TokyoおよびBCG Copenhagenを含む群から選択されるが、それらに限定されない。親BCG株は、下記実施例1に示したような低用量のエアゾールによるモルモットチャレンジモデルにおいてBCG Ticeよりも少なくとも0.4×1010だけ、生Mycobacterium tuberculosisチャレンジのレベルを低下させるはずである。
BCG免疫原性の増大
上にも述べたとおり、BCG免疫原性は、変動しないというものではない。さらに、実施例1は、BCG抗原類の免疫原性はBCGを遺伝子修飾することで増強できるが、組み換え変化を行った親BCG株がモルモットチャレンジモデルにおいて能力を欠いているならば、このような修飾が非現実的となることを示している。この規則から推定すれば、BCGの免疫原性をさらに増強する修飾はまた、このような親株類に由来する組み換え株類の免疫原性をさらに増強するであろう。
rBCGワクチン類およびワクチンベクター類を誘導する親として作用する適切なBCG株を選択するために上に詳細に述べたアプローチを適用し、前記株中に遺伝的修飾を導入して、所望のrBCGワクチン類およびワクチンベクター類を作成する。それぞれのrBCG株類の構築に用いた方法は本発明にとって重大というわけではなく、当業者に公知の方法のいずれかひとつまたはその組み合わせから選択できる(Horwitzほか,PNAS 97(25):13853−13858;2000:Hessほか、Proc Natl Acad Sci USA,95:5299−5304;1998)。
さらに、前記rBCGワクチン類は、感染後インビボで活性化されるプロモータを用いることにより恩恵を受ける。たとえば、抗原85B,抗原85A、Hsp60またはRv1908c(KatG)由来プロモータ類のような構造的に活性のプロモータを用いることで、前記抗原が免疫後インビボで構造的に発現できるようになる。したがって、確実な免疫応答が、感染過程のそれぞれの段階で感染に対して惹起される。Rv2032、Rv3127、Rv2031cまたはRv3030c等の遺伝子類に由来するプロモータ類のような潜伏段階活性プロモータ類を選択することで、rBCGワクチンが免疫後インビボにおいて潜伏段階に入った時に、選択した抗原類、特に潜伏期特異的抗原類をrBCGが発現できるようになる。
発現ベクター類
非抗生物質選択システムの開発
上にも述べたとおり、rBCG株類において防御性抗原類の過剰発現に現在利用されているプラスミド類は、維持のために抗生物質耐性遺伝子類に依存していること、および、これらのプラスミド類が広範囲の微生物宿主に水平移行できるというそれらに固有の能力により、環境生物に対して抗生物質耐性遺伝子類と抗原発現カセット類を伝播するかもしれないという恐れがあるので、受け入れられない。こうした重大な限界を克服するため、本発明は、rBCGのようなマイコバクテリウム宿主株類に発現ベクター類を導入し維持するための新規非抗生物質選択システムおよびワンウェイシャトルシステムを記載する。
プラスミド類の非抗生物質選択は、複製に必須の宿主遺伝子を選択的に欠失させ、その後発現プラスミド中に前記遺伝子の機能的コピーを取り込ませることでこの欠失させたものを補完することによって行う。したがって、細菌宿主は、生存のために発現プラスミドに依存しており、その結果、抗生物質選択のない場合にマイコバクテリウム宿主内部でプラスミドを維持するためのメカニズムができることになる。好適な方法では、遺伝子類の不活性化により栄養素要求性表現型を新たに作製することを含む。例えば、M.tbおよびBCGにおいて、leuD遺伝子(Genome Seq ID#Mb3011C)の不活性化は、ロイシン依存性表現型を新たに作製し、不活性化leuD遺伝子を有する株類は、生存のためにロイシン補充に依存している(Hondalusほか、Infect Immun.68(5):2888−98.2000)。さらに、マイコバクテリウム△leuD株類はインビボで複製できず(Hondalusほか、同上、2000)、従って、M.tbおよびrBCG△leuD変異体は、インビトロおよびインビボでleuDプラスミド類を維持するであろう。
栄養素要求性変異体を標的マイコバクテリウム株類に導入するための特定の方法は本発明にとって重要ではなく、当業者に周知のいかなる対立遺伝子交換方法類からも選択することができる(Parishほか、Microbiology、145:3497−3503;1999)。同様に、栄養素要求性変異の補完は、不活性化遺伝子(例 leuD)の機能的コピーを発現ベクターに導入することによって可能である。前記発現ベクターはまた、マイコバクテリウム複製開始点を必要とし(例 OriM;Labidiほか、Plasmid、27(2):130−140;1992)、標的M.tbおよびrBCG株中において複製できるようにする。ロイシンを培地から取り去ると、このようなプラスミドを保有するマイコバクテリウム株類は、生存のために、プラスミドがコードしたleuD遺伝子の発現に依存するようになるであろう。
新規ワンウェイシャトルベクターの開発
上記操作では、M.tbおよびrBCGにおける発現ベクターの維持のための選択システムを新たに作る手法を述べた。しかし、このベクターシステムは、マイコバクテリウム中に導入する前にプラスミド構造の効率的取り扱いを可能とするためには、大腸菌中で複製できなければならない。さらに、プラスミド構築時に利用できる強力な組み換え大腸菌宿主株類の種類を多くしてプラスミド構築を円滑にするために研究者らが大腸菌宿主を使用できるようにするため、発現ベクター中に抗生物質選択マーカー(例 カナマイシン耐性)および広範囲の複製開始点を含ませることが好適である(例 OriE;Halpernほか、Proc Natl Acad Sci,USA 76(12):6137−6141;1979;Mosigほか、New Biol 1(2):171−179;1989)。これらの要素類は、独自の制限酵素エンドヌクレアーゼ消化部位(例 NdeI)に隣接し、標的マイコバクテリウム株類にプラスミドを導入する前に抗生物質耐性マーカーおよびE.coli複製開始点を除去できるようにする。さらに、抗原発現カセットを導入できる独自の制限酵素エンドヌクレアーゼ部位(例 PacI)も含む。
大腸菌でいったんこのことが行われ所望のプラスミドが同定され特性解析されると、組み換えプラスミドDNAを単離し、抗生物質選択マーカーとOriEを放出する制限酵素エンドヌクレアーゼで消化する。消化したプラスミドDNAを次に、T4 DNAリガーゼを用いて連結する。生成したプラスミドは、従って、宿主マイコバクテリウムの栄養素要求性を補完するが抗生物質耐性を示さずグラム陰性菌で複製できない遺伝子を含むことになる。このプラスミドは抗原発現カセットも含むことができ、これを次に標的マイコバクテリウム栄養素要求性変異体中に標準的エレクトロポレーション操作を用いて導入する。このプラスミドを保有している組み換え株類は、増殖に必要な代謝物(例 ロイシン)を欠損している培地中で培養することによって、単離する。このシステム独自の利点は、最終発現プラスミドがもはや抗生物質耐性遺伝子を有していないということである。したがって、現在非常に一般的に使用されている発現プラスミド類のように環境中に抗生物質耐性遺伝子をばらまくということができない。さらに、本発明の発現プラスミドは、もはや、広範囲の宿主で複製することはできず、その理由は、このような複製を可能とする遺伝要素類が欠失しているからである。このようなベクター類は、従って、“ワンウェイ”シャトルベクター類と称される。
TB抗原類の過剰発現
本発明において、ワンウェイシャトルベクター中の発現カセット中に取り込まれ次にrBCGに取り込まれた遺伝子は、M.tb免疫原をコードすることもできる。このM.tb免疫原は、例えば、天然の全長タンパク質、2種以上のM.tb免疫原類またはその模倣物類間でのキメラ融合体、またはMycobacterium tuberculosis由来のM.tb免疫原の断片または断片類であることもできる。
M.tb抗原類は、インビボにおけるマイコバクテリウム感染の少なくとも1段階で活性であるプロモータの制御下にワンウェイシャトルベクターによって発現される。特定のプロモータが本発明にとって重要というわけではなく、Antigen 85B,Hsp60、Antigen 85A、Rv1908c(KatG)プロモータのような構造的に活性のプロモータ類および/または遺伝子類Rv3130C(Florszykほか、Infect Immun 71(9):5332−5343;2003;Voskuilほか、J Exr Med 198(5);705−713;2003)、Rv2032、Rv3127、および/またはRv2031cに対するプロモータのような潜伏感染時に活性のプロモータ類から選択することもできる。抗原発現レベルを高めるため、マイコバクテリウムベクター株類のミニセル産生誘導体も使用できる。マイコバクテリウム種のミニセル産生株類は、FtsZ(Genome データベース#Mb2174c)を過剰発現させることによってまたはwhiB3の部位特異的不活性化により産生される。FtsZ発現レベルまたはwhiB3不活性化の修飾は、当業者に周知の標準的遺伝子方法を用いて行うことができる。たとえば、FtsZ過剰発現は、構造的に活性であるAntigen 85B,Antigen 85A,Hsp60、またはRv1908c(KatG)に対するプロモータ類および/または遺伝子類Rv2032、Rv3127、Rv2031cおよびRv3130Cに対する潜伏感染時に活性であるプロモータ類のような強力なプロモータの制御下にワンウェイシャトルベクター中にftsZ遺伝子を取り込ませることによって、行われる(Florczykほか、同上、2003;Voskuilほか、同上、2003)。部位特異的whiB3の不活性化は、下記に概略を示した操作を用いて対立遺伝子交換によって行われる。
組み換えマイコバクテリウムに挿入できる外来性抗原類の例
本発明において、マイコバクテリウムが保有するワンウェイシャトルベクター中発現カセットは、免疫原をコードでき、それは、ウイルス、細菌性または寄生病原体由来の外来性免疫原であるか、または、自己免疫抗原または癌抗原のような内因性免疫原のいずれかであるが、自己免疫抗原または癌抗原に限定されることはない。前記免疫原は、例えば、天然型全長タンパク質;外来性免疫原と内因性タンパク質または模倣体とのキメラ融合体;またはウイルス、細菌および寄生病原体から派生する免疫原の断片または断片類であり得る。
本文では、“外来性免疫原”とは、ウイルスタンパク質、細菌タンパク質、寄生タンパク質、サイトカイン類、ケモカイン類、免疫制御剤類または治療剤類のようなレシピエント動物細胞または組織に正常時には発現されないタンパク質またはその断片を意味するが、それらに限定されない。
“内因性免疫原”とは、内因性細胞タンパク質、免疫制御剤または治療剤のようなレシピエント動物細胞または組織に天然に存在するタンパク質またはその部分を意味するが、これらに限定されない。これとは別にまたはさらに、前記免疫原は、合成遺伝子によってコードすることもでき、当業者に公知の従来の組み換えDNA法を用いて構築することもできる。
外来性免疫原は、その動物宿主中に入る前または入るとき、そのコロニー化前またはその間、または複製の前またはその間において、あらゆるウイルス、細菌または寄生病原体により発現される全ての分子であり得る。rBCGは、ウイルス、細菌および寄生病原体から派生した免疫原またはその部分を発現できる。これらの病原体類は、ヒト、家禽または野生動物宿主中において感染性となることができる。
ウイルス抗原を誘導したウイルス病原体には、インフルエンザウイルス(Taxonomy ID:59771のようなオルソミキソウイルス類;RSV,HTLV−1(Taxonomy ID:39015)およびHTLV−2(Taxonomy ID:11909)のようなレトロウイルス類、EBV Taxonomy ID:10295)のようなヘルペスウイルス類;CMV(Taxonomy ID:10358)または単純ヘルペスウイルス(ATCC#:VR−1487);HIV−1(Taxonomy ID:12721)およびHIV−2 Taxonomy ID:11709)のようなレンチウイルス類;ラビーのようなラブドウイルス類;ポリオウイルス(Taxonomy ID:12080)のようなピコルノウイルス類;ワクシニア(Taxonomy ID:10245)のようなポックスウイルス類;ロタウイルス(Taxonomy ID:10912);およびアデノ関連ウイルス1(Taxonomy ID:85106)のようなパルボウイルス類を含むが、それらに限定されない。
ウイルス抗原の例は、ヒト免疫不全ウイルス抗原類Nef(National Institute of Allergy and Infectious Disease HIV Repository Cat.#183;GenBank accession #AF238278)、Gag,Env(National Institute of Allergy and Infectious Disease HIV Repository Cat.#2433;GenBank accession #U39362)、Tat(National Institute of Allergy and Infectious Disease HIV Repository Cat.#827;GenBank accession#M13137)、Tat−△31−45(Agwaleほか、Proc.Natl.Acad.Sci.印刷中、7月8日;2002)のようなTatの変異誘導体類、Rev(National Institute of Allergy and Infectious Disease HIV Repository Cat.#2088;GenBank accession #L14572)、およびPol(National Institute of Allergy and Infectious Disease HIV Repository Cat.#238;GenBank accession #AJ237568)、およびgp120のTおよびB細胞エピトープ類(HankeおよびMcMichael,AIDS Immunol Lett.66:177;1999;Hankeほか、Vaccine、17:589;1999;Palkerほか、J.Immunol.,142:3612−3619;1989)、限定するわけではないがgp120とCD4の融合体(Foutsほか、J.Virol.2000、74:11427−11436;2000)のようなHIV−1 Envとgp120との間のキメラ誘導体;限定するわけではないがgp140(Stamatosほか、J Virol、72:9656−9667;1998)のような短く切断したかまたは修飾したHIV−1 envの誘導体類、またはHIV−1 Envおよび/またはそのgp140の誘導体類(Binleyほか、J Virol、76:2606−2616;2002;Sandersほか、J.Virol、74:5091−5100;2000;Binleyほか、J Virol、74:627−643;2000)、B型肝炎表面抗原(GenBank accession #AF043578;Wuほか、Proc.Natl.Acad.Sci.USA,86:4726−4730;1989);VP4(GenBank accession #AJ293721;Mackowほか、Proc.Natl.Acad.Sci.,USA、87:518−522;1990)およびVP7(GenBank accession #AY003871;Greenほか、J.Virol.,62:1819−1823;1988)のようなロタウイルス抗原類、ヘマグルチニン(GenBank accession #AJ404627;PertmerおよびRobinson、Virology,257:406;1999)のようなインフルエンザウイルス抗原類、ヌクレオプロテイン(GenBank accession #AJ289872;Linほか、Proc.Natl.Acad.Sci.,97:9654−9658;2000)、チミジンキナーゼ(GenBank accession #AB047378;Whitleyほか、New Generation Vaccines,825−854ページ;2004)のような単純ヘルペスウイルス抗原類が含まれるが、それらに限定されない。
細菌性抗原類を誘導した細菌病原体類には、マイコバクテリウム種、ヘリコバクター・ピロリ(Helicobacter pyroli)、サルモネラ(Salmonella)種、シゲラ(Shigella)種、大腸菌、リケッチア(Rickettsia)種、リステリア(Listeria)種、レジオネラ・ニューモニアエ(Legionella pneumoniae)、シュードモナス(Pseudomonas)種、ビブリオ(Vibrio)種およびボレリア・バーグドルフェリ(Borellia burgdorferi)が含まれるが、それらに限定されない。
細菌性病原体の防御性抗原類の例には、CFA/I フィンブリアル抗原(Yamamotoほか、Infect.Immun.,50:925−928;1985)および熱に不安定な毒物の非毒性Bサブユニット(Klipsteinほか、Infect.Immun.,40:888−893;1983)のようなエンテロトキシン性大腸菌の全身抗原類;ボルデテラ・ペルツシス(Bordetella pertussis)のペルタクチン(Robertsほか、Vacc.,10:43−48;1992)、B.pertussisのアデニレートシクラーゼ−ヘモライシン(Guisoほか、Micro.Path.,11:423−431;1991)、クロストリジウム・テタニ(Clostridium tetani)の破傷風毒素断片C(Fairweatherほか、Infect.Immun.,58:1323−1326;1990)、Borellia burgdorferiのOspA(Sikandほか、Pediatrics,108:123−128;2001;Wallichほか,Infect Immun,69:2130−2136;2001)、リケッチア・プロワゼッキ(Rickettsia prowazekii)およびリケッチア・チフィ(Rickettsia typhi)の防御性パラクリスタリン−表面層(Carlほか、Proc Natl Acad Sci USA、87:8237−8241;1990)、リステリア・モノサイトゲネス(Listeria monocytogenes)のリステリオライシン(“Llo”および“Hly“としても公知)および/またはスーパーオキサイドディスムターゼ(“SOD”および“p60”としても公知)(Hess J.ほか,Infect.Immun.65:1286−92;1997;Hess J.ほか,Proc.Natl.Acad.Sci.93:1458−1463;1996;Bouwerほか、J.Exp.Med.175:1467−71;1992)、ヘリコバクター・ピロリ(Helicobacter pylori)のウレアーゼ(Gomez−Duarteほか、Vaccine 16、460−71;1998;Corthesy−Theulazほか、Infection&Immunity 66,581−6;1998)、および致死的毒素のレセプター結合ドメインおよび/またはバシラス・アンスラックス(Bacillus anthrax)の防御性抗原(Priceほか、Infect.Immun.69、4509−4515;2001)を含む。
寄生抗原類を誘導する寄生病原体類には、プラスモジウム・ファルシパルム(Plasmodium falsiparum)(ATCC#30145)のようなプラスモジウム種;トリパノソム・クルジ(Trypanosoma cruzi)(ATCC#50797)のようなトリパノソム種;ジアルジア・インテスチナリス(Giardia intestinalis)(ATCC#30888D)のようなジアルジア種;ブウフィラス(Boophilus)種、バベシア・ミクロティ(Babesia microti)(ATCC#30221)のようなバベシア(Babesia)種;エンタモエバ・ヒストリティカ(Entamoeba histolytica)(ATCC#30015)のようなエンタモエバ種;エイメリア・マクシマ(Eimeria maxima)(ATCC#40357)のようなエイメリア種;リューシュマニア種(Taxonomy ID:38568);シストソム(Schistosome)種、ブルギア(Brugia)種、ファスシダ(Fascida)種、ディロフィラリア(Dirofilaria)種、ウチェレリア(Wuchereria)種およびオンコセレア(Onchocerea)種が含まれるが、それらに限定されない。
寄生病原体の防御性抗原類の例には、P.ベルゲリ(P.bergerii)のサーカムスポロゾイテ抗原またはP.falciparumのサーカムスポロゾイテ抗原のようなプラスモジウム種のサーカムスポロゾイテ抗原類(Sadoffほか、Science、240:336−337;1988);プラスモジウム種のメロゾイテ表面抗原(Spetzlerほか、Int.J.Pept.Prot.Res.,43:351−358;1994);Entamoeba histolyticaのガラクトース特異的レクチン(Mannほか、Proc.Natl.Acad.Sci.,USA、88:3248−3252;1991)、リューシュマニア(Leishmania)のgp63(Russellほか、J.Immunol.,140:1274−1278;1988;XuおよびLiew、Immunol.,84:173−176;1995)、リューシュマニア・メジャー(Leishmania major)のgp46(Handmanほか、Vaccine,18:3011−3017;2000)、ブルジア・マライ(Brugia malayi)のパラミオシン(Liほか、Mol.Biochem.Parasitol.,49:315−323;1991)、シストソマ・マンソニ(Schistosoma mansoni)のトリオース−ホスフェートイソメラーゼ(Shoemakerほか、Proc.Natl.Acad.Sci.,USA、89:1842−1846;1992);トリコストロンガイラス・コルブリホルミス(Trichostrongylus colubriformis)の分泌グロビン様タンパク質(Frenkelほか、Mol.Biochem.Parasitol.,50:27−36;1992);フラスシオラ・ヘパチカ(Frasciola hepatica)(Hillyerほか、Exp.Parasitol.,75:176−186;1992)、シストソマ・ボビス(Schistosoma bovis)およびS・ジャポニクム(S.japonicum)(Bashirほか、Trop.Geog.Med.,46:255−258;1994)のグルタチオン−S−トランスフェラーゼ;およびSchistosoma bovisおよびS.japonicumのKLH(Bashirほか、同上、1994)を含む。
先にも述べたように、rBCGワクチン類は内因性免疫原をコードでき、それらは、腫瘍、移植および自己免疫原類、または腫瘍、移植および自己免疫性免疫原類の断片類および誘導体類を含むいかなる細胞性タンパク質、免疫制御剤または治療剤、またはそれらの部分類であってもよく、それらに限定されないレシピエントの細胞で発現できる。したがって、本発明において、rBCG類は、腫瘍、移植および自己免疫性免疫原類、またはその部分または誘導体類をコードできる。これとは別に、前記rBCGは、(上に述べたような)合成遺伝子類をコードでき、それらは、腫瘍特異的、移植および自己免疫抗原類またはその部分類をコードする。
腫瘍特異的抗原類の例には、前立腺特異的抗原(Gattusoほか、Human Pathol.,26:123−126;1995)、TAG−72およびCEA(Guadagniほか、Int.J.Biol.Markers、9:53−60;1994)、MAGE−1およびチロシナーゼ(Coulieほか、J.Immunothera.,14:104−109;1993)が含まれる。最近になって、腫瘍抗原を発現する非悪性細胞による免疫によりワクチン効果が得られ、それが、同一抗原を示す悪性腫瘍細胞を一掃する免疫応答を動物が得るのを補助することが、マウスにおいて明らかになった(Koeppenほか、Anal.N.Y.Acad.Sci.,690:244−255;1993)。
移植抗原類の例には、T細胞上のCD3分子(Alegreほか、Digest.Dic.Sci.,40:58−64;1995)が含まれる。CD3受容体に対する抗体で処置すると、循環しているT細胞および逆細胞媒介移植拒絶を急激に一掃することが明らかになった(Alegreほか、同上、1995)。
自己免疫抗原類の例には、IAS βチェーン(Tophamほか、Proc.Natl.Acad.Sci.,USA、91:8005−8009;1994)が含まれる。IAS βチェーン由来のアミノ酸18個のペプチドでマウスにワクチン接種すると、実験的自己免疫脳脊髄炎マウスに対して防御と治療ができることが明らかになった(Tophamほか、同上、1994)。
アジュバントを発現するrBCGの開発
rBCGは、免疫原およびアジュバントをコードするように構築でき、rBCGに対する宿主応答を増大させるために用いることができる。これとは別に、rBCGはアジュバントをコードするように構築でき、他のrBCGと混合してパートナーrBCGによってコードされた免疫原類に対する宿主応答を増大させることができる。
rBCGがコードした特定アジュバントは本発明にとって重要ではなく、いかなる従来のビブリオ・コレラエ(Vibrio cholerae)(例 V.cholerae株395、ATCC#39541)またはE1 Tor V.cholerae(例 V.cholerae株2125、ATCC#39050)由来のコレラトキシンのサブユニットA(すなわち、CtxA;GenBank アクセス番号X00171、AF175708、D30053、D30052)、またはその部分類および/または変異誘導体類(例 CtxのサブユニットAのA1ドメイン(すなわち、CtxA1;GenBankアクセス番号K02679))であることもできる。これとは別に、細菌性アデノシンジホスフェートリボシル化エクソトキシン類族のメンバーであるいかなる細菌性トキシン(KruegerおよびBarbier、Clin.Microbiol.Rev.,8:34;1995)も、CtxAの代わりに用いることができ、例えば、腸毒性大腸菌(GenBankアクセス番号#M35581)の熱不安定トキシンのサブユニットA(EltAと本文で称する)、百日咳トキシンS1サブユニット(例 ptxS1,GenBankアクセス番号 #AJ007364、AJ007363、AJ006159、AJ006157等)であることができる;さらにこれとは別に、前記アジュバントは、Bordetella pertussis(ATCC#8467)、ボルデテラ・ブロンキセプチカ(Bordetella bronchiseptica)(ATCC#7773)またはボルデテラ・パラペルツシス(Bordetella parapertussis)(ATCC#15237)のアデニレートシクラーゼ−ヘモライシン類のひとつであることもでき、例えば、B.pertussisのcyaA遺伝子(GenBankアクセス番号X14199)、B.parapertussisのcyaA遺伝子(GenBankアクセス番号AJ249835)またはB.bronchisepticaのcyaA遺伝子(GenBankアクセス番号Z37112)等である。
免疫制御剤を発現するrBCGの開発
rBCGは、免疫原およびサイトカインをコードするように構築でき、これを用いて、rBCGに対する宿主応答を増大させることができる。これとは別に、rBCGは前記サイトカインのみをコードするように構築することもでき、他のrBCGと混合して、パートナーrBCGによってコードされた免疫原類に対する宿主応答を増大させることができる。
rBCGによってコードされた特定のサイトカインは本発明にとって重大というわけではなく、インタロイキン−4(本文で“IL−4”と称する;GenBankアクセス番号AF352783(マウスIL−4)またはNM_000589(ヒトIL―4))、IL−5(GenBankアクセス番号NM_010558(マウスIL−5)またはNM_000879(ヒトIL−5))、IL−6(GenBankアクセス番号M20572(マウスIL−6)またはM29150(ヒトIL−6))、IL−10(GenBankアクセス番号NM_010548(マウスIL−10)またはAF418271(ヒトIL−10))、IL−12p40(GenBankアクセス番号NM_008352(マウスIL−12 p40)またはAY008847(ヒトIL−12 p40))、IL−12p70(GenBankアクセス番号NM_008351/NM_008352(マウスIL−12 p35/40)またはAF093065/AY008847(ヒトIL−12 p35/40))、TGFβ(GenBankアクセス番号NM_011577(マウスTGFβ1)またはM60316(ヒトTGFβ1))、およびTNFα GenBankアクセス番号X02611(マウスTNFα)またはM26331(ヒトTNFα))を含むが、それらに限定されない。
アポトーシスはプログラムされた細胞死であり、その誘導と結果という観点からして壊死性細胞死とは大きく異なる。外来性抗原類を含む細胞のアポトーシスは、このような抗原類に対する細胞性免疫の公知の強力な刺激物である。抗原含有細胞のアポトーシスが細胞性免疫につながるプロセスは、クロスプライミングと称されることもある。(Heath,W.R.,G.T.Belz、G.M.Behrens、C.M.Smith、S.P.Forehan,I.A.,Parish,G.M.Davey、N.S.Wilson,F.R.CarboneおよびJ.A.Villandangos.2004。Cross−presentation, dentritic cell subsets, and the generation of immunity to cellular antigens. (クロスプレゼンテーション、樹状細胞サブセット類、および細胞性抗原類に対する免疫の発生。)Immunol.Rev 199:9;Gallucci,S.,M.Lolkema、およびP.Matzinger.1999.Natural Adjuvants(ナチュラルアジュバント類):Endogenous activators of dendritic cells.(樹状細胞の内因性活性化剤類。)Nature Biotechnology.5:1249;Albert,M.L.,B.SauterおよびN.Bhadrdwaj.1998.Dendritic cells acquire antigen from apoptotic cells and induce class I−restricted CTLs.(樹状細胞は、アポトーシス細胞から抗原を獲得し、クラスI制限CTLsを誘発する。)Nature 392:86.)抗原特異的細胞媒介免疫増強を起こすアポトーシス誘導メカニズムにはいくつかある。カスパーゼ8媒介アポトーシスは、抗原特異的細胞性免疫防御につながる。rBCG発現外来性抗原という文脈でのカスパーゼ8のrBCGによる産生と真核細胞の細胞質中におけるrBCGによる分泌は、BCGおよびrBCGにより過剰発現した他の結核抗原類に対しておよびBCGそれ自体の抗原類に対して、高レベルの抗原特異的細胞性免疫につながるであろう。TRAIL−R2(TRAILレセプタ2)としても公知のデスレセプター−5(DR−5)またはTNF−SF−10B(腫瘍壊死因子−スーパーファミリメンバー10B)もまた、カスパーゼ8媒介アポトーシスを媒介する(Sheridan、J.P.,S.A.Marsters、R.M.Pitti,A.Gruney、M.Skutbatch、D.Baldwin、L.Ramakrishnan,C.L.Gray、K.Baker、W.I.Wood,A.D.Goddard,P.Godowski、およびA.Ashkenazi.1997.Control of Trail induced apoptosis by a family of signaling and decoy receptors.(シグナルファミリおよびデコイレセプター類によるTrail誘発アポトーシスの制御。)Science 277:818.) レオウイルス誘発アポトーシスは、TRAIL−DR5により媒介され、このウイルスがその後クリアランスされることになる(Clarke、P.S.,M.Meintzer,S.Gibson,C.Widmann,T.P.Garrington,G.L.Johnson,およびK.L.Tyler。2000.Reovirus−induced apoptosis is mediated by TRAIL.(レオウイルス誘発アポトーシスは、TRAILにより媒介される。)J.Virol.74:8135)。組み換えBCGによるDR−5発現は、rBCG発現抗原類に対する抗原特異的細胞性免疫の誘導に対して強力なアジュバント効果を付与する。抗原発現細胞はまた、抗原特異的細胞性免疫応答の誘導に強力な刺激物であるFas連結を介してアポトーシスを受けるように誘導することができる(Chattergoon、M.A.,J.J.Kim,J.S.Yang、T.M.Robinson,D.J.Lee,T.Dentchev,D.M.Wilson,V.Ayyavoo,およびD.B.Weiner.2000.Targeted antigen delivery to anigen−presenting cells including dentritic cells by engineered Fas−mediated apoptosis.(工学的に作製したFas媒介アポトーシスによる樹状細胞を含む抗原提示細胞類に対する標的抗原運搬。)Nat.Biotechnology 18:974)。FasまたはFas細胞質ドメイン/CD4エクトドメイン融合タンパク質を発現する組み換えBCGは、アポトーシスおよび抗原特異的細胞性免疫応答を誘発するであろう。
rBCGによる細胞性免疫の増強は、上に述べたようなアポトーシス増強剤を産生し、BCG抗原類またはrBCGによる過剰発現のために特異的にコードされた抗原類に限定されず、上記のrBCGが侵入できる真核細胞中のすべての抗原を含む。もしこのようなrBCGが、アポトーシスが誘導された腫瘍細胞に運搬されるならば、例として、重要な腫瘍抗原類に対する細胞性免疫が、腫瘍および/または転移の除去、減少または防御とともに誘導されるであろう。この抗腫瘍効果は、膀胱癌症例の場合のように局所投与されるとBCGがもたらす一般的抗腫瘍効果に追加されるであろう。
本発明の他の態様において、アポトーシスの特異的メディエータ産生により増強されたrBCGは、腫瘍内またはrBCGがまた強力な細胞性免疫応答が起こすであろう外来性抗原を産生する他の細胞内に運搬されると、これらの外来性抗原類を含む細胞類に対して強力な細胞性応答の産生を誘発するであろう。これらの細胞性応答は、免疫媒介腫瘍細胞破壊、さらに、クロスプライミングおよび腫瘍または他の重要抗原類に対する細胞性免疫の誘導を起こし、その後腫瘍および/または転移の除去、減少または防御を起こすであろう。このような外来性抗原の例は、宿主細胞HLAとは異なるHLA抗原であり、それらに対して強力な非相同細胞性応答が起こるだろう。
特異的腫瘍抗原類を同様に発現するアポトーシスの特異的メディエータの発現によりアポトーシス誘導性が増強されるrBCGは、これらの腫瘍抗原類に対して強力な抗原特異的細胞性応答を誘発し、これらの抗原類に対しての寛容性の破壊を含み、それにより、rBCGを腫瘍自体に直接運搬する必要もなく、腫瘍および/または転移を除去、減少または防御することになるであろう。
DNA破壊後のアポトーシスまたはカスパーゼ9は、ある抗原類に対して寛容性を誘発する(Hugues,S.,E.Mougneau,W.Ferlin、D.Jeske、P.Hofman、D.Homann,L.Beaudoin,D.Schrike,M.Von Herrath,A.Lehuen,およびN.Glaichenenhaus.2002)。Tolerance to islet antigens and prevention from diabetes induced by limited apoptosis of pancreatic beta cells.(ランゲルハンス島抗原類に対する寛容性および膵臓β細胞の限定アポトーシスにより誘発された糖尿病の予防。)Immunity 16:169)。寛容性誘導は、糖尿病、関節リューマチ、クローン病、炎症性腸疾患および多発性強皮症のような自己免疫疾患の制御または予防において重要であるが、これらに限定されない。B膵細胞、結腸直腸および神経細胞のような細胞中においてカスパーゼ9または他のアポトーシス媒介寛容性誘発タンパク質類がrBCGにより産生されることは、限定アポトーシスをもたらすであろうが、それは、これらの細胞中において自己免疫の抗原標的に対しての寛容性を誘発し、それにより、自己免疫疾患状態を治療または予防するであろう。上記細胞の例は、限定するものではない。自己免疫反応に関与する特異的抗原類の同定は、これらの抗原類とカスパーゼ9またはアポトーシス媒介寛容性誘導可能な他の分子類の両者のrBCG産生を介して、これらの自己免疫標的抗原類に対する寛容性誘導を可能とするであろう。このようなrBCGは、これらの自己免疫疾患を治療および/または予防するであろう。
機能的発現カセット類の誘導により真核細胞または組織において免疫制御剤を発現可能なrBCGを産生させるための組み換えDNAおよびRNA操作について、下記で説明する。
下記の実施例は、本発明のさまざまな面を例示するものとして考えるべきであり、本発明の実施に関して限定することを意図していない。当業者は、本発明の全般的範囲から逸脱することなく、別の材料類、条件類、および操作の採用が可能であることを理解するであろう。
(実施例)
方法類
マイコバクテリウム株類の培養
選択したBCG株類を、ミドルブルック(Middlebrook)7H9またはソールトンシンセティック培地(Saulton Synthetic Medium)のような液体培地中で好適には37℃で培養する。前記株類は、静止または攪拌培養物として維持できる。さらに、BCGの増殖率は、オレイン酸(0.06%v/v;Research Diagnostics,Cat.No.01257)およびタイレキサポル(Tyloxapol)(0.05%v/v;Research Diagnostics Cat.No.70400)のような界面活性剤類を添加することで、高めることができる。BCG培養物の純度は、Middlebrook 7H10のような固体培地25−30mlを含む3.5インチのプレート上に、リン酸緩衝生理食塩水(本文でPBSと称する)で系列希釈(例 無希釈から10倍ずつ10−8まで)したBCG培養物アリコットを100μlずつ均等に広げて、評価できる。さらに、前記培養物の純度は、チグリケート培地(Science Lab,カタログ番号#1891)および大豆カシン培地(BD、カタログ番号#211768)のような市販のキット類を用いて、評価できる。
BCG種ロットは、密度0.1−2×10cfu/mlで‐80℃で保存する。この液体培養物を通常、(600nmにおいて)無菌コントロールに対して光学密度0.2−4.0で採取する;この培養物を適当な大きさの遠心管に入れ、菌を8,000×gで5−10分間、遠心する。上清を捨て、菌をもう一度、10−30%(v/v)グリセロールを含むMiddlebrook 7H9で構成した保存溶液中に密度0.1−2×10cfu/mlで懸濁させる。これらの懸濁物を、アリコット1mlとして無菌の1.5ml容量のホウケイ酸塩フリーザーバイアルに入れ、その後、‐80℃とする。
通常の分子生物学手法
制限酵素エンドヌクレアーゼ(本明細書で、“REs”と表記;New England Biolab,Beverly、MA)、T4 DNAリガーゼ(New England Biolab,Beverly、MA)およびTaqポリメラーゼ(Life Technologies,Gaithersburg,MD)を、製造業者のプロトコールに従って用いる;プラスミドDNAは、小型(Qiagen Miniprepキット、Santa Clarita,CA)または大型(Qiagen Maxiprepキット、Santa Clarita,CA)プラスミドDNA精製キットを、製造業者のプロトコール(Qiagen、Santa Clarita,CA)に従い用い、調製する;ヌクレアーゼを含まない分子生物学等級のmilli−Q水、Tris−HCl(pH7.5)、EDTA pH8.0、1M MgCl、100%(v/v)エタノール、超純粋アガロース、およびアガロースゲル電気泳動緩衝液は、Life Technologies、Gaithersburg、MDから購入する。RE消化、PCRs、DNA連結反応およびアガロースゲル電気泳動は、周知の操作(Sambrookほか、Molecular Cloning:A Laboratory Manual.1,2,3;1989);Strausほか、Proc Natl Acad Sci USA.Mar;87(5)1889−93;1990)に従い行う。下記の章で述べる各組み換えプラスミドのDNA配列を明らかにするためのヌクレオチド配列決定は、Applied Biosystems自動シークエンサーモデル373Aを用いて、従来の自動DNA配列決定法により、実施できた。
PCRプライマー類は、Sigma(St.Louis,MO)のような市販業者から購入し、Applied Biosystems DNAシンセサイザー(モデル373A)を用いて合成する。PCRプライマー類は、濃度150−250μMで使用し、PCR反応のためのアニーリング温度は、Cloneマネージャーソフトウェアバージョン4.1(Scientific and Educational Software Inc.,Durham,NC)を用いて、決める。PCRは、ストラタジーンロボサイクラー(Strategene Robocycler)モデル400880(Strategene、La Jolla、CA)中で行う。増幅用PCRプライマー類は、Clone Manager(登録商標)ソフトウェアバージョン4.1(Scientific and Educational Software Inc.,Durham,NC)を用いて、設計する。このソフトウェアにより、PCRプライマー設計ができ、操作する特定DNA断片と両立するRE部位を識別する。PCRは、Strategene Robocyclerモデル400880(Strategene)のようなサーモサイクラー機器中で行い、PCRにおけるプライマーアニーリング、伸長および変性時間は、標準的操作(Strausほか、同上、1990)により設定する。RE消化およびPCRは、その後、アガロースゲル電気泳動によって標準的操作(Strausほか、同上1990;Sambrookほか、同上、1989)を用いて、分析する。陽性クローンは、適切なREパターンおよび/またはPCRパターンを示すものとして定義する。この操作で同定したプラスミド類は、さらに、標準的DNA配列決定操作を用いて上記に述べたように評価できる。
DH5αおよびSable2のような大腸菌株類は、Life Technologies(Gaithersburg,MD)から購入し、下記の実施例に述べた組み換えプラスミド類の最初の宿主として作用させる。組み換えプラスミド類は、ジーンパルサー(Gene Pulser)(BioRad Laboratories,Hercules,CA)のような高電圧電気パルス装置を記載されているように(Strausほか、同上、1990)、100−200Ω、15−25μFおよび1.0−2.5kVに設定し、これを用いるエレクトロポレーションすなわち電気穿孔法により大腸菌株類中に導入する。最適エレクトロポレーション条件は、最大形質転換速度/DNA mcg/菌をもたらす設定を定めることによって、同定する。
菌株類は、トリプチックソーイ寒天(Difco,Detroit,MI)またはトリプチックソーイ培地(Difco,Detroit,MI)で増殖させ、製造業者の指示に従い、調製する。特に断りがなければ、全ての菌は、静かに攪拌しながら5%CO(v/v)中37℃で増殖させる。適している場合には、前記培地に抗生物質類(Sigma,St.Louis,MO)を添加する。菌株類は、30%(v/v)グリセロール(Sigma,St.Louis,MO)含有(Difco)中におよそ10コロニー形成単位(本文で“cfu”と称する)/mlで懸濁させ、‐80℃で保存する。
BCGにおける対立遺伝子交換
先行技術では、マイコバクテリウム株類に改変対立遺伝子類を導入する方法を教示しており、当業者は、このような方法を理解しかつ実行できるであろう(Parishほか、Microbiology 146:1969−1975;2000)。対立遺伝子交換プラスミドを調製するための新しい方法では、合成DNAを用いることを含む。この手法の利点は、調製プラスミドが極めて明らかな調製の経緯を有しており政府規制に沿ってコンプライアンスを有していることであろう。一方これまでに用いられてきた方法は、効果的ではあるが、ラボでの培養記録記載が満足のいくものではなくしたがってコンプライアンスを有しているとはいえないであろう。上記規制へのコンプライアンスは、もしヒトでの使用のために製品のライセンスを米国および欧州政府当局から取得しようとするならば、必須である。
マイコバクテリウムにおける対立遺伝子交換のための自殺ベクターは、大腸菌で置き換わる能力を有しているがM.tbのようなMycobaterium種およびBCGにおいて複製できないプラスミドである。本発明における対立遺伝子交換操作における用途のための特異的自殺ベクターは、学界(Parishほか、同上、2000)および市販業者から取得できるものから、選択できる。対立遺伝子交換のための自殺プラスミドの好適な設計を、図1に示した。このプラスミドは、下記のDNAセグメントから構成されている:大腸菌中での複製のためのプラスミド用oriE配列(GenBankアクセス番号#L09137)、大腸菌およびマイコバクテリウム両者における選択のためのカナマイシン耐性配列(GenBankアクセス番号 #AAM97345)、および追加の抗生物質選択マーカー(例 マイコバクテリウムプロモータ(例 hsp60プロモータ)の制御下にあるであろうゼオシン耐性遺伝子(GenBankアクセス番号#AAU06610))。第二の抗生物質選択マーカーは、必須というわけではないが、対立遺伝子交換プロセスにおいて自然発生カナマイシン耐性単離物の過剰増殖を防止するための二重選択を可能とするために、含ませる(Garbeほか、Microbiology 140:133−138;1994)。
このような自殺ベクター類の構築は、本明細書に述べたような標準的組み換えDNA手法を用いて、行うことができる。しかし、現在の規制基準では、BSE感染物を含むウシ製品に暴露したものから得たプリオン粒子を導入してしまうという恐ろしい問題が生じている。したがって、起源が不明の物質(例 DNA配列類)を標的株に導入してしまうのを避けるため、自殺ベクター中の全てのDNAが市販業者(例 Picoscript社)により合成されることが望ましい。したがって、自殺ベクターを構築するための好適な方法は、DNAソフトウェア(例 Clone Manager)を用いてDNA配列計画を立て、その後、サービスの都度随時費用が発生する方式でこのようなサービスを行う商業的業者(例 Picoscript社)によりDNAを合成してもらうことである。この方法を用いて、自殺ベクターpAF100(示さず)を作製し、それを次に、この特定適用のために修飾した(pAF103、図1に概略を示し、さらに表1に示した)。
Figure 0005461776
このような自殺ベクターは、2種の抗生物質選択マーカー類を含み従って1種の抗生物質に耐性を示す自然発生変異体選択を最小とするなどの利点を有している。こうした選択は、1世代あたり約1/10で起こる。2種の抗生物質に対する自然発生的耐性は、非常にまれで、1世代あたり約1/1016でしか起こらない。したがって、対立遺伝子交換操作実施に用いた培養物中に現れる二重耐性株の確率は、1/10未満である。
対立遺伝子交換プロセス時における陰性選択のため、ショ糖感受性表現型を付与するsacB遺伝子(ゲノム配列番号(Genome Seq ID)#NT01BS4354)を含ませ、最終DNA組み換え段階を受けた株類の培養物を濃厚にし、対立遺伝子交換を完了した。
処方およびワクチン戦略
ワクチン処方の戦略は、製造プロセス全てにおいて、最大の生存度と安定性を求めるための研究に基づいて、作成する。これには、マイコバクテリウム菌の培養のために一般的に用いられるさまざまな培地を利用した培養時において、最大菌生存度(生きているか死んでいるか)を調べることが含まれ、培養には、グリセロール、糖類、アミノ酸類、および界面活性剤類または塩類の添加を含む。遠心分離または接線フローろ過により培養細胞を採取した後、凍結または凍結乾燥プロセスにおいて細胞を保護できる安定化培地に再懸濁する。一般的に用いられる安定化剤には、グルタミン酸ナトリウム、またはアミノ酸またはアミノ酸誘導体類、グリセロール、糖類または一般的に使用される塩類が挙げられる。最終処方は、十分に高い生存度の菌体を提供し、それらは、筋肉内、経皮注入、潅流または経口投与により運搬され、維持のための十分な安定性と市販および使用のための適切な保存期間を有しているであろう。
TBワクチン類の前臨床評価
一般的安全性試験
1群6匹のBALB/cマウスを、問題のrBCG株(類)および同族の親株類2×10CFUで腹腔内感染させる。前記動物を全身健康と体重について感染後14日間、モニタリングする。BCGおよびrBCG株類を投与した動物は健康のままであり、観察期間中体重減少を起こすこともなく、あるいは病気の明らかな症状も示さない。
免疫能力を有するマウスにおける新規rBCG株類の毒性
BALB/cマウス15匹を1群とし、これらに静注でそれぞれrBCGおよびBCG親株 2×10CFUを感染させる。感染第1日において、各群のマウス3匹を屠殺し、脾臓、肺および肝臓におけるCFUを分析し、各動物が同等の感染量であるようにする。感染後第4、8、12および16週において、各群のマウス3匹を屠殺し、脾臓、肝臓および肺におけるCFUを得て、親BCG株と比較してrBCG株類のインビボ増殖を評価する。rBCG株類は、親BCGと同等の毒性を示すと考えられる。
免疫妥協マウスにおける厳密な安全試験
各群10匹としてSCID(重症複合免疫不全症)を有する免疫妥協マウスに、静注でそれぞれrBCGおよびBCG親株 2×10cfuを感染させる。感染後第1日において、各群のマウス3匹を屠殺し、脾臓、肝臓および肺におけるcfuを分析し、接種用量を確認する。各群7匹の残りのマウスは、全身状態および体重をモニタリングする。これらのマウスの生存を追跡し、全観察期間において親株感染動物よりもrBCG感染マウスの生存が悪くないときに良好な結果が得られる。
モルモット安全試験
rBCG株類の安全性をまた、親BCGワクチンと比較しモルモットモデルで評価すると、ヒトにおける十分に確立された安全性を有している。最初に、動物の全般健康状態に及ぼすワクチンの効果を検討するが、それには、体重も含める。モルモットは、組み換えおよび親株類を10(ワクチン用量の100倍)cfu筋肉注射で免疫し、6週間、全般健康状態と体重をモニタリングする。この6週間という期間の前に死亡した動物については、死後検査も行う。感染後6週間の期間が終わった時点で、動物は全て屠殺し、総合病理検査を行う。体重減少および異常行動は全くなく、この6週時剖検において全ての臓器は正常のように見える。rBCG−Pfoワクチンについて、全く健康に対する悪影響が見られずしかも親株を接種した動物に比較して正常速度で動物が体重を増やす時、試験成功が示唆される。
同時に、動物臓器における細菌レベルをモニタリングする。親または組み換えワクチンのいずれかで免疫したモルモットを、接種後さまざまな時点で安楽死させ、その後、肺、脾臓および局所(鼠径部)リンパ節について、BCGまたはrBCGのcfuをアッセイする。
毒性試験:
rBCG株類の毒性を評価するため、各群12匹のモルモットを、それぞれ、ヒト用rBCG株類、BCG親株または生理食塩水の単回投与量よりも4倍の1回投与量または4分の1の1回投与量で、筋肉内投与によりワクチン接種する。ワクチン後第3日において、動物6匹を屠殺し、これらの動物に及ぼすワクチンの急性効果を評価する。ワクチン後第28日において、残りの動物6匹を屠殺し、動物に及ぼす慢性効果を評価する。両方の時点で各動物の体重を調べ、全般病理状態と注射部位の様子を調べる。血液を採取し、血液検査を行い、内臓および注射部位の組織病理を調べる。
防御決定のための試験:
マウス防御研究
1群13匹としたC57Bl/6マウス(雌性、5−6週齢)を、皮下からrBCG、親BCGまたは生理食塩水10cfuで免疫するであろう。別のマウス群は、健常対照として使用する。免疫後8週時点で、マウスに対して、M.tb Erdman株(または、H37Rv Kan耐性株)を総計10CFU含む10mlの単細胞懸濁液から作製したエアゾールとして、このチャレンジ株によりチャレンジするが、この量は、先にも述べたように各動物の肺に100個の生きている菌を伝播する。チャレンジしていない動物とともに、実験動物の生存をモニタリングする。チャレンジ後、体重減少と全般健康状態についても動物をモニタリングする。チャレンジ後第1日において、各群3匹のマウスを屠殺し、肺におけるcfuを調べ、チャレンジ用量を確認し、動物1匹は、脾臓および肺の組織病理検査のために屠殺する。その後、チャレンジ後第5週において、各群の動物9匹を屠殺し、動物の組織病理検査と顕微鏡検査を行う。マウス6匹の肺と脾臓組織を、cfu計測のために評価する(選択サプリメントを有するプレートを用いて、チャレンジ株からワクチン株を識別する)。もしH37Rv−kan耐性株でチャレンジするならば、KanまたはTCHを用いてワクチン株からチャレンジ株を識別する。もしM.tb Erdman株をチャレンジに使用するならば、TCHを用いてチャレンジ株からワクチン株を識別する(BCGは感受性であるが、M.tbは本来耐性である)。
皮膚遅延型過敏症(DTH)の誘導
SPFモルモットを、rBCGまたは親BCG株10により筋肉注射で免疫するであろう。免疫後9週で、動物背部の毛を剃り、リン酸緩衝生理食塩水100μl中のPPD10μgを筋肉内注射する。24時間後、硬い硬変部の直径を測定する。rBCG株は、親BCG株類で誘導した硬変と同じかそれよりも大きいDTHを誘発する。
モルモットチャレンジ研究
M.tbチャレンジに対してのrBCGワクチン類の有効性を調べるため、各群12匹のモルモット(若い成熟SPFハートレイ(Hartley)、250−300グラム、雄性)を、rBCG、親BCG株または生理食塩水で免疫する。ワクチン類および対照は、10cfuを筋肉注射で投与する。免疫後10週時点で、rBCG免疫動物、BCG免疫動物および偽免疫動物に対して、M.tbを総計10cfu含む10mlの単細胞懸濁液から作製したエアゾールでチャレンジする;この操作では、先にも述べたように各動物の肺に約100個の生きている菌を伝播する(Brodinほか、J Infect Dis.190(1)、2004)。チャレンジ後、ワクチン接種していない未チャレンジの健常群とともに、動物の生存をモニタリングする。チャレンジ後、体重減少と全般健康状態についても動物をモニタリングする。各群から6匹のマウスをチャレンジ後第10週で屠殺し、各群中残りの6匹は、チャレンジ後第70週で屠殺したが、それは、長期評価のためである。両方の時点において、動物の組織病理検査と顕微鏡検査を行うであろう。肺および脾臓組織を、組織病理検査とcfu計測のために評価する(選択サプリメントを有するプレートを用いて、チャレンジ株からワクチン株を識別する)。もしH37Rv−kan耐性株でチャレンジするならば、KanまたはTCHを用いてワクチン株からチャレンジ株を識別する。もしM.tb Erdman株をチャレンジに使用するならば、TCH(BCGは感受性であるが、M.tbは本来耐性である)を用いてチャレンジ株からワクチン株を識別する。チャレンジ後偽免疫動物が最も早く死亡し、一方、rBCG免疫動物がBCG親株免疫動物よりも長く生存すれば、成功が示唆される。
霊長類安全性とチャレンジ研究:
さらに最近になってカニクイザルを用いてM.tbに対するワクチン接種の評価が行われた。ヒトと非ヒト霊長類の進化上の関係とこれらの種における結核の臨床および病理的表れ方が似ていることにより、TBとワクチン効果についての実験的研究にとってこの非ヒト霊長類モデルが魅力的となっている。
このモデルは肺空洞形成が進行することを特徴とし、ヒトTBに適用できるように思われる。感染と疾病の過程を、X線および体重減少、ならびに赤沈速度(ESR)、末梢血単核球(PBML)増殖およびサイトカイン産生、細胞毒性Tリンパ球(CTL)活性、および抗体応答を含むさまざまな血液検査により追跡する。感染後、カニクイザルは特徴的病巣を有する肺病理を示し、急性呼吸器感染による死が、チャレンジ用量に応じて、感染後4乃至6ヶ月以内に起こる。低感染用量では、ヒトと非常によく似て慢性感染を起こすが、病状はでない。
研究計画
本研究では、組み換えBCG単独投与またはrBCG構築物中に過剰発現される配列類を含むワクチンをその後2回追加接種する投与を、さまざまな用量のBCG親株投与と直接比較するであろう。後者は、適当なアジュバント処方に基づく組み換えタンパク質、DNAまたはAd35構築物類のいずれかとして運搬できた。
最初の研究では、ブースターを行わず親BCG対rBCG構築物類の防御効果を評価する。本研究では、下記のように作製した3群(各群10匹)を含む:群1は、それぞれBCG,rBCGおよび生理食塩水を含む。各群中2匹は、rBCG構築物類中における過剰発現抗原により皮膚試験を行い、さらに、対照として標準的PPDと生理食塩水で皮膚試験する。BCGに比較してrBCG群における陽性でかつ大きな硬変部は、インビボにおけるワクチン摂取と免疫応答惹起を示唆する。各群中残りの8匹について、低用量M.tb Erdman株でエアゾールチャレンジし、防御を、チャレンジ後16週において菌負荷の減少または終点における生存により、測定した。
追跡BCGプライムプロトコールは、上記と必然的に同一であるが、ただし、動物を最初にBCG,rBCGおよび生理食塩水でワクチンし、その後、過剰発現抗原で2回、追加接種する。
非ヒト霊長類モデルにおける免疫原性および防御研究では、rBCG構築物についての有効性を研究するためのアカゲザルにおいて、結核の免疫生物学的側面および免疫病理側面を調べることを目的とするであろう。この動物は、実験開始前に十分に体調を調整し平均体重2乃至3kgの閉じ込めて育てた若年アカゲザルから若いが大人のアカゲザルである。接種前研究では、通常の血液検査と赤沈速度ならびにリンパ球増殖アッセイを含む標準血液検査で構成する。皮膚試験はPPDで行い、ツベルクリンに対する感受性がないことを確認し、胸部X線を感染前プロフィールの一部として得る。免疫期間は総計21週間とし、0週におけるBCGまたはrBCGによる最初のワクチン接種、第12週および第16週における抗原追加接種を含むであろう。抗原特異的免疫性は、リンパ球刺激試験において増殖およびインタフェロンγ(IFNγ)分泌を測定することによって評価する。IFNγ産生リンパ球の出現頻度は、酵素結合イムノソルベントアッセイ(ELISPOT)または蛍光活性化セルソーター(FACS)により求める。この目的のため、血液サンプルを最初のワクチン接種後第0、4、8、12、16および20週で採取する。
最終免疫後第4乃至6週において、同日に同一処方でM.tuberculosis Erdmanを3ml(1,000cfu)、気管内留置によりチャレンジさせるであろう。感染過程は、体重減少、発熱、ESR上昇、PPD対DTH、PPD刺激PBMCのインビトロ増殖性応答、およびrBCG中に過剰発現した抗原類について評価し、その後、IFN−g産生レベルを測定する。胸部X線は、肺TBと一致する異常を検出するために行い、剖検は、チャレンジ後第12−16週に行うであろう。
TBベクターとワクチン類の臨床評価
安全性と毒性試験:
規制ガイドラインにより規制されている前臨床安全性および毒性試験を、上記のような前臨床毒性および安全性試験として行う。これらを調べた後、ヒト安全性試験を行う。これらの研究は、健常クアンティフェロン(Quantiferon)陰性成人で当初行い、その後、小児および新生児に年齢を移行して行う。
免疫原性研究:
マウスおよび霊長類における免疫原性研究では、INFγのような細胞免疫評価のための標準的手法類、ELISPOTおよび/またはフローサイトメトリを短期および長期抗原またはペプチド刺激とともに用いるが、これらに限定されない。同様の方法論は、ヒト応答を評価するために利用する。テトラマー研究を、ヒトワクチン後のCD4およびCD8応答を評価するために用いる。
プライム−ブースト戦略の最適化:
rBCGは、TBまたは関連トランスジーン類を発現するように工学的に作製した他の疾患に対する単独ワクチンとしても、同様に作用する。本文では、“トランスジーン”は、マイコバクテリウムプロモータに機能的に連結して問題のタンパク質を発現するDNAセグメントである。本文でTBに対するワクチンとしてまたは他の疾患に対する防御のためのトランスジーンを発現するワクチンとして述べたrBCGは、また、アジュバントまたはウイルスまたは細菌ベクター抗原類と混合した組み換えタンパク質類による追加免疫のための免疫系を用意するためにも、非常によく作用する。動物前臨床研究およびヒト前臨床研究の両者において、BCGプライムとその後の組み換えタンパク質/アジュバントまたはベクターブーストを、投与法および用量の観点から最適化する。これらのプライムブースト戦略は、ヒトにおいて免疫を誘発するための最も強力な手段であり、その理由は、特に本発明の態様にあるBCGのプライム能力とその後組み換えタンパク質またはベクターが免疫系のブースター応答を集束させ増強させることにある。
動物における暴露後治療ワクチン研究
C57Bl/6マウスを用いて、潜伏感染を確立し;低用量感染によって無視可能なM.tb特異的免疫性が誘発された時点およびM.tb特異的免疫性がメモリT細胞で低下され圧倒される別の時点で、治療用ワクチンをマウスに投与するであろう。ワクチン類の治療上の利点は、その後、最終処置用ワクチン投与後2ヶ月および5ヶ月にマウスで、各マウスの肺および脾臓におけるcfuを計数することにより、評価されるであろう。このcfu計数値を、マウス群で標準的統計方法により分析し、その結果を用いて治療的ワクチン接種がマウスにおいて潜伏M.tb感染を有意に低下させるかどうかを分析し;同様の方法論を用いて、必要に応じて他の動物の応答評価のために利用する。
BCGベクターの臨床評価:rBCGワクチンの経口投与
本発明のrBCGによる標的動物の経口ワクチン投与はまた、先に記載した方法類を用いて行うことができる(Millerほか、Can Med Assoc J 121(1):45−54;1979)。経口投与したrBCG量は、対象の種により、また治療しようとしている疾患または状態に応じて、変わるであろう。一般的に、使用した投与量は、生きている菌体約10乃至1011個であり、好適には生きている菌体約10乃至10個であろう。
rBCGは一般的に、薬学的に許容できる担体または希釈剤とともに投与する。使用した特定の薬学的に許容できる担体または希釈剤は、本発明にとって重要ではない。希釈剤類の例には、リン酸緩衝生理食塩水、ショ糖を含むクエン酸緩衝液(pH7.0)、重炭酸緩衝液(pH7.0)単独(Levineほか、J.Clin.Invest,79:888−902;1987;およびBlackほか、J.Infect.Dis.,155:1260−1265;1987)またはアスコルビン酸、ラクトースおよび適宜アスパルテームを含む重炭酸緩衝液(pH7.0)(Levineほか、Lancet、II:467−470;1988)のような胃内胃酸に対して緩衝するための緩衝液が含まれる。担体の例には、スキムミルク中にあるようなタンパク質類、ショ糖のような糖類、またはポリビニルピロリドンが含まれる。これらの担体類は、典型的には、濃度約0.1−90%(w/v)で使用するが、好適には範囲1−10%(w/v)である。
(実施例)
モルモット中における親BCG株類の能力:rBCG30によるモルモット防御研究
既存のrBCG30ワクチンで行った研究の例として、モルモットでの大規模研究を行い、その目的は、親BCG Tice株および市販され世界中で広くヒトで使用されているもうひとつのBCGワクチン(SSI−1331)と2種のロットのrBCG30の防御効果を比較することであった。この2種のrBCG30ロットは、ヒトでの用途のために実験室条件で作製されたか(rBCG30−UCLA)またはGMP条件下で製造されたもの(rBCG30−KIT)である。
モルモット(各群動物10匹)を、各BCGワクチンの単回投与量10cfuによる皮下経路で免疫した。陰性対照群(生理食塩水免疫)も、本研究に含めた。ワクチン接種後8週において、動物に対して、エアゾール経路で強力なErdman株をチャレンジさせたが、Middlebrook空気感染装置のネブライザーコンパートメントを、肺に約10−15個の菌を伝播するようにキャリブレーションし、行った。動物は、チャレンジ後10週で屠殺した。剖検時、肺と脾臓を動物から摘出し、生きている菌の数は、肺葉および脾臓ホモジネートの10倍系列希釈物を栄養Middlebrook 7H11に接種することにより、求めた。菌コロニー形成は、5%(v/v)CO存在下37℃で21日間インキュベーション後、計測した。データは、回収した菌の数平均のlog10として表した。
結果(図2)は、陰性、生理食塩水対照に比較してM.tbチャレンジに対して全てのワクチン類が防御性であったが、ワクチン類間の差異が2種のグループに分けられる傾向があることを示している:
1)rBCG30(UCLA)およびBCG Danish 1331はより防御性が高い;および
2)BCG(親Tice株)およびrBCG30(KIT)は防御性が低い。
したがって、実験室条件で作製しGMP等級ではないrBCG30(UCLA)はせいぜい、親Tice株よりも高い防御性を誘発するようではあるものの、その防御効果は市販のBCG SSIに匹敵するに過ぎないと結論することは、妥当である。したがって、BCG Danish 1331株の改良が、当然、新しいrBCGワクチン産生の目的となるはずである。
抗生物質耐性マーカーを有していない発現ベクター類の担体として作用する宿主の構築
BCG Danish 1331株におけるleuD遺伝子ノックアウトプラスミド構築体:
leuD遺伝子の左側および右側にある1kbの隣接領域を、DNA合成により(DNA2.0、CA)組み立て、両端にpacI部位を有する2kbのDNAセグメントを作製した。PacI制限酵素消化とその後の連結を用いて、上記対立遺伝子交換プラスミド中にこのDNA断片をクローニングし、leuDノックアウトプラスミドを作製した。
leuD遺伝子の対立遺伝子交換不活性化:
leuD遺伝子の不活性化を上記のように行うが、ただし、leuD遺伝子ノックアウト株については、培地にロイシン50μg/mlを添加するであろう。この操作の主要段階のフローチャートを図4に示す。
LeuDノックアウトの証明:
表現型試験:
得られた株について、増殖にロイシン添加が必要かどうかを試験する。具体的に述べると、菌をロイシン50μg/ml存在下または非存在下において10%OADCおよび0.05%(v/v)タイロキサポル(Tyloxapol)を添加した7H9培地中で培養し、菌増殖を、OD600値を測定することによって、モニタリングする。
ゲノム局所配列分析:
構築した株のゲノムDNAを、先に述べたようにして調製する。標的遺伝子の左側および右側両方の1kb隣接領域に相補性のプライマー対をPCR増幅に用い、染色体から約2kbの断片を得る。このPCR産物の配列を決定し、この領域にleuD遺伝子がないことを確認する。
rBCG株におけるM.tb抗原類の過剰発現
DNA操作:
M.tb抗原類TB10.4(Rv0288)、Ag85B(Rv1886c)およびAg85A(Rv3804c)は、Ag85B+Rv3130から得たプロモータを用いて、この順序でポリシストロンとして発現させる(Florczykほか、同上、2003)。配列KDELを有するペプチドをコードするDNA配列類を、小胞体保持シグナルとして各抗原の末端に置き、各抗原について抗原提示性を向上させる。さらに、5´ループ構造および3´転写終止配列を置き、転写ポリシストロンmRNAの安定性を確保する。最後に、制限酵素PacI配列を用いて両端に隣接させ、発現カセットが容易に発現ベクター中にクローニングされるようにする。発現カセット中の全てのDNAは、遺伝子合成により作製する(Picoscript社、TX)。発現カセットを、PacI部位を利用して発現ベクター中にクローニングする。大腸菌中で増幅させた後、プラスミドをNdeIで消化し、oriEとカナマイシン耐性遺伝子を除去し、その後消化して、ワンウェイシャトルシステムを新たに作製し、それを次に、標準的エレクトロポレーション操作を用いてマイコバクテリウムleuD栄養素要求性変異体に導入する(Parishほか、Microbiology,145:3497−3503;1999)。図3は、非抗生物質発現ベクターの例を概略、図示している。
非抗生物質選択システムを用いたM.tb抗原の発現:
非抗生物質選択システムの宿主として用いるロイシン栄養素要求性BCG Danish 1331を、10%OADC(オレイン酸−アルブミン−デキストロース−カタラーゼ)、0.05%(v/v)Tyloxapolおよびロイシン50μg/mlを添加した7H9培地中で培養する。エレクトロポレーション後、抗原発現プラスミドを保有する組み換え株類を、ロイシンを含まない7H10プレート(BD Difco)に接種することによって単離する。菌の生存は、プラスミドによるleuD遺伝子の抗原発現に依存性で、それは、細胞中にプラスミドを保持するメカニズムとして次に作用する。生成したそれぞれのコロニーを単離し、上記の7H9培地で培養するが、ただし、ロイシン添加は行わなかった。
発現の証明:
各抗原の発現は、ウェスタンブロット分析により検出する。具体的には、培養上清を採取し、先に記載したとおり処理する(Harthほか、Infect Immun 65(6):2321−2328;1997)。その後、発現した抗原をSDS−PAGEゲルで分離し、抗原85A,85Bおよび10.4に対する抗体でブロッティングする。各抗原の発現レベルは、発現プラスミド陰性宿主菌が産生したものと比較して各特異的バンドの強度を定量的に測定することによって、評価する。
抗生物質選択を行わないで、マイコバクテリア中で選択した抗原類を発現させること
材料および方法:
エレクトロポレーション用プラスミドおよびマイコバクテリウム調製:
組み換えプラスミドDNAを単離し、制限エンドヌクレアーゼNdeI(New England Biolabs)で消化し、抗生物質選択マーカー(例 カナマイシン耐性)および大腸菌の複製開始点(OriE)を放出させる。その後、消化したプラスミドDNA断片を、T4 DNAリガーゼ(New England Biolabs)を用い製造業者の指示に従い環状にした。生成したプラスミドは、マイコバクテリウムの複製開始点と選択抗原類を含むが抗生物質耐性遺伝子を有さずグラム陰性菌で複製できず、それを、選択したマイコバクテリウムに導入した。エレクトロポレーション用マイコバクテリウムを調製するため、BCG Danish 1331を、10%OADCを添加したMiddlebrook 7H9培地(BD Biosciences)中37℃で対数増殖相になるまで培養した。Tyloxapol(0.05%v/v、Research Diagnostics Cat.No.70400)を用いて菌を分散させた。その後細胞を10%グリセロール+0.05%Tyloxanolで3回、洗浄し、エレクトロポレーション前に培地を除去した。各エレクトロポレーションのため、菌体1.25×10についてプラスミド1.6μgを用いた。エレクトロポレーションは、2.2kV,容量25μFおよび抵抗1.0kΩで行った。エレクトロポレーション後、細胞をすぐに10倍希釈物としてMiddlebrook 7H10寒天(BD Biosciences)プレート上に置き、37℃でインキュベーションした。
発現プラスミドを保有する菌コロニーのPCRスクリーニング:
組み換え株類は、最初に、フォーワードプライマーGTTAAGCGACTCGGCTATCG(配列番号1)およびリバースプライマーATGCCACCACAAGCACTACA(配列番号2)を用いてPCRによりスクリーニングし、発現プラスミド中においてoriM領域のDNA配列を増幅させる。PCRパラメータは下記のようであった:段階1:95℃で4分間を1サイクル;段階2:95℃で1分間、60℃で1分間、およびその後72℃で1分間を総計30サイクル;段階3:72℃で10分間を1サイクル。段階4:4℃で保存。生成したPCR生成物は、アガロースゲル電気泳動で分析し、細胞中において前記プラスミド類の存在を証明した。
結果
プラスミドの複製領域(oriM)を増幅するために設計したPCRを行い、生成したコロニーについて過剰発現プラスミドを保有しているか、スクリーニングした。この領域は菌染色体に存在していないので、細胞中にこの領域が存在することは、プラスミドが細胞中に導入されたことを強く示唆している。スクリーニングしたrBCGコロニー中、いくつかのコロニーがPCR産物を産生し、その産物は、大きさがプラスミド陽性対照反応のものと類似しており、そのことは、ゲル電気泳動で分析した。対照的に、親BCG菌は図5に示したように、全くPCR産物を産生しなかった。この実験は、このプラスミドがマイコバクテリウム中にうまく取り込まれたことおよびこのプラスミドを保有する菌クローンが、抗生物質選択を用いることなく単離されたことを明らかに証明している。
考察
組み換えマイコバテクリウム株類用従来のプラスミド類は、組み換えDNA実験で用途を有する必須プラスミド要素としての複製領域と選択マーカーを含む(通常、カナマイシン耐性遺伝子のような抗生物質耐性遺伝子または例えばleuDまたはasdのような代謝欠陥を補完する遺伝子(Galanほか、Gene,94:29;1990))。通常は、抗生物質類を用いて組み換えプラスミド類を保有するクローン類を選択する。しかし、これにより、抗生物質耐性遺伝的修飾生物体を実験室内部に限定した以外の用途に使用しようとする場合、抗生物質耐性遺伝子類が意図に反して広がってしまうリスクがでてくる。
上記の研究において、我々は抗原を発現できる組み換えプラスミドを導入したが、それは、oriE領域も抗生物質選択マーカーも菌中に含まず、我々は、選択を行わないでも前記プラスミド保有クローン類単離に成功した。この実験では、プラスミド複製領域としてoriMを用いたが、他のプラスミド複製領域も置換物として作用するであろうと考えており、例えばpMF1の複製領域である(Bachrachほか、Microbiol.,146:297;2000)。このシステム独自の利点は、この組み換えプラスミドがもはや抗生物質耐性遺伝子を有していないことである。したがって、一般的に使用する発現プラスミド類では起こることであるかもしれないが、意図せずに抗生物質耐性を環境にばら撒くということは、ありえない。さらに、本発明のワンウェイシャトルベクター発現プラスミドはもはや広範囲の宿主複製ができず、その理由は、このような複製を可能とする遺伝的要素が欠失しているからである。こうした制約がさらに、組み換えプラスミドにもうひとつの封じ込めレベルを付与し、従って、遺伝的修飾(GMO)生物を環境中に放出することに関連したリスクを実質的に低下させる。
この結果は、選択しないでも減弱マイコバクテリウム株類に組み換えプラスミド類を導入できることを明らかにしているが、他の要因も、選択マーカーを含まないプラスミドのマイコバクテリウム中における安定性になんらかの作用をしているのかも知れない。したがって、複製領域は、プラスミド複製を促進しプラスミドの同胞細胞への分離を媒介する遺伝子類を含み、それによって、選択を行わないでもこのプラスミドを保有するクローンを識別できるという能力に貢献している。
選択を行わないでも前記プラスミドを保有するクローン類の単離ができる要因として、おそらく、この手法において細胞に対するプラスミド比が高いことがある。細胞に対して高比率のプラスミドを使用することで、細胞がプラスミドを取り込む確率を高め、プラスミドのない細胞の数を減少させる。本研究では、細胞に対するプラスミドの比が選択システムを用いる従来手法で通常利用するよりも約10倍高かった。理論上、細胞に対するプラスミド比がこれよりもはるかに高いと、プラスミド保有クローンがはるかに多くなり、プラスミド飽和点に到達し、そうなると、エレクトロポレーションを行った細胞によるプラスミドDNAの取り込みを阻害するであろう。本発明の好適な態様において、菌に対するプラスミドの比率は、約1.25×10菌体に対して約0.5μg乃至約10μgのプラスミドDNAの範囲にあり、好適には、約1.25×10菌体に対して約1μg乃至約5μgのプラスミドDNAの範囲にある。
さらに、プラスミドpAF105により過剰発現したTB抗原類は、プラスミド安定化に重要な役割を果たすこともできる。このプラスミドは抗原85複合体(Ag85A(Rv3804c)およびAg85B(Rv1886c))中の2種のタンパク質を過剰発現するが、その両者ともに、細胞壁一体性を保持するために必須の主要構造であるトレハロースジマコレートの生合成に必要なマイコリルトランスフェラーゼ活性を有する。したがって、もしプラスミド保有細胞において増殖上の利点を与えることによって、これらの抗原類の少なくともひとつの過剰発現が、選択物を有さないプラスミドの安定性に寄与でき、従って、選択を行わないでも前記プラスミドを保有するクローン類が同定できるようになる。
ワクチン性質を改良した結核ワクチン剤の製造に有用である。
自殺ベクターpAF103のためのマップ。各DNAセグメントの意味は、下記のとおりである:L−flankおよびR−flankは、それぞれleuD遺伝子の左側および右側の隣接領域である;aphは、アミノグリコシドホスホトランスフェラーゼ遺伝子(gene bankアクセス番号:X06402)であり、プラスミドにカナマイシン耐性を付与する;oriEは、pUC複製開始点である(gene bankアクセス番号AY234331);bleは、プラスミドに対してゼオシン(Zeocin)耐性を付与する遺伝子(Genbankアクセス番号L36850)である;sacBは、レバンシュークラーゼをコードする遺伝子であり(Genbankアクセス番号Y489048)、ショ糖に対する感受性を前記菌に付与する;Phsp60は、熱ショックタンパク質遺伝子(すなわち、Rv0440)のプロモータ配列である;MCSは、示した制限酵素類の複数クローニング部位である;2個のPacI部位間のカセットが、適用可能な際には他のエンドソーム溶解性の酵素類遺伝子で置き換えることができることに注意。 現在ある異なるワクチン株について、チャレンジ後の肺CFU量によって測定した防御レベル。 組み換えマイコバクテリウムすなわちrBCGへの発現ベクター類導入のための非抗生物質発現ベクターの概略を示した。rBCGで発現する遺伝子は、pacI部位を介してプラスミド中にクローニングする。rBCG中にエレクトロポレーションする前に、示した制限酵素類でプラスミドを消化し、oriEおよびKan領域を除去し、ワンウェイシャトルベクターを新たに作製する。DNAセグメントそれぞれの意味は下記のとおりである:PRv3130は、抗原Rv3130cのプロモータ配列である;PAg85Bは、抗原85B(すなわち、Rv1886c)のプロモータ配列である;抗原Yは、マイコバクテリウム抗原TB10.4(すなわち、Rv0288)である;Ag85Bは抗原85BをコードするDNA配列である(すなわち、Rv1886c);Ag85Aは、抗原85Aをコードする遺伝子である(すなわち、Rv3804c);aphは、アミノグリコシドホスホトランスフェラーゼ遺伝子(gene bankアクセス番号:X06402)であり、それは、前記プラスミドにカナマイシン耐性を付与する;oriEは、pUC複製開始点である(Gene Bankアクセス番号:AY234331);leuDは、3−イソプロピルマレートデハイドラターゼをコードする遺伝子である(すなわち、Rv2987c);oriMは、マイコバクテリウム中の複製開始点である(Genbankアクセス番号:M23557)。 対立遺伝子交換の主要段階のフローチャート。 発現プラスミドの存在について選択したコロニーのPCR分析。PCRは、材料および方法に述べたように実施した。PCR産物は、1.0%アガロースゲル中ゲル電気泳動で分析した。レーン1:DNAラダー(Invitrogen)を、1Kb+DNA標準として用いた;レーン2:PCRテンプレート陰性対照;レーン3:BCG Danish 1331株のPCR;レーン4から7:それぞれ59、61、69および84と番号を付したコロニーのPCR;レーン8:ブランクを入れたウェル;レーン9:オリジナルプラスミドのPCR。

Claims (2)

  1. 問題のタンパク質の遺伝子をコードする外来性ヌクレオチド配列を含む形質転換マイコバクテリウムまたはその子孫であって、前記形質転換マイコバクテリウムがグラム陰性菌で複製できないプラスミドを含むことと、抗生物質耐性を示さないこと、および栄養素要求性であることと、前記外来性ヌクレオチド配列が前記プラスミドの一部であり、前記プラスミドが選択可能なマーカーを欠いており、前記タンパク質が生存に必要なタンパク質であって前記形質転換マイコバクテリウムの菌ゲノムから欠失させたヌクレオチド配列でコードした生存タンパク質に対応するタンパク質であることとを特徴とする形質転換マイコバクテリウムまたはその子孫。
  2. 前記タンパク質がleuDである請求項記載の形質転換マイコバクテリウムまたはその子孫。
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