JP5460263B2 - 浸炭処理方法 - Google Patents

浸炭処理方法 Download PDF

Info

Publication number
JP5460263B2
JP5460263B2 JP2009265429A JP2009265429A JP5460263B2 JP 5460263 B2 JP5460263 B2 JP 5460263B2 JP 2009265429 A JP2009265429 A JP 2009265429A JP 2009265429 A JP2009265429 A JP 2009265429A JP 5460263 B2 JP5460263 B2 JP 5460263B2
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
workpiece
heat
carbon
carburizing
processed
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Active
Application number
JP2009265429A
Other languages
English (en)
Other versions
JP2011106018A (ja
Inventor
孝 古吟
壮次郎 木村
周一郎 宮田
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Dai Ichi High Frequency Co Ltd
Original Assignee
Dai Ichi High Frequency Co Ltd
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Dai Ichi High Frequency Co Ltd filed Critical Dai Ichi High Frequency Co Ltd
Priority to JP2009265429A priority Critical patent/JP5460263B2/ja
Publication of JP2011106018A publication Critical patent/JP2011106018A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP5460263B2 publication Critical patent/JP5460263B2/ja
Active legal-status Critical Current
Anticipated expiration legal-status Critical

Links

Images

Description

本発明は浸炭処理方法に関し、更に詳しくは、炭素供給源として液状物質(液状の炭素含有化合物)を使用する浸炭処理方法に関する。
炭素供給源に液状物質を使用する浸炭処理方法として、容器に収容された当該液状物質中に、誘導加熱手段およびワーク(被処理物)を浸漬し、誘導加熱手段によってワークの表面を加熱し、この表面に接触する液状物質の気化・熱分解によって生じる活性炭素を、ワークの表面近傍組織に拡散させる方法(以下「液中浸炭法」という)が開示されている(例えば、下記特許文献1および特許文献2参照)。
この液中浸炭法は、ガス浸炭法と比較して浸炭速度、特に、短時間の処理での浸炭速度が高い点で有利である。
特表2002−509582号公報 特開昭61−3878号公報
しかしながら、液中浸炭法には、実用化の阻害要因となる下記のような問題がある。
(1)ワークの表面を液状物質中で加熱するために、ワーク表面の熱が液状物質によって奪われる。このため、ワークの表面近傍の温度を、浸炭が起こる温度にまで上昇させるためには過大な出力(エネルギーコスト)を必要とする。
また、液中浸炭法においては、加熱された液状物質の相当量が、ワークの表面近傍組織に活性炭素を拡散(浸炭)させることなく、蒸発して系外に放出されてしまう。従って、エネルギーのみでなく、炭素供給源としての液状物質についても効率的に利用することができない。
なお、液状物質の系外への放出を防ぐために、蒸気の冷却回収機構を設けることも考えられるが、その場合には、設備が大掛かりになり、運転コストも増加する。また、ワークの処理装置への設置後に処理浴の密封などの手間の掛かる作業が必要となり、極めて作業効率が悪くなるという問題が生じる。
(2)液中浸炭法においてワークの一部のみを浸炭(部分浸炭)させたい場合であっても、液状物質中に当該ワークを浸漬すると、液状物質と接触するワークの全部(全表面)が浸炭されてしまう。
このような問題を回避するためには、浸炭させたい部分(ワークの一部)のみに液状物質が接触するように、ワークの(部分)形状に合わせた液状物質の収容容器を装着したり、浸炭させたくない部分(ワークの残部)を、液状物質と接触しないよう養生したりすることが考えられる。
しかし、前者の方法では、種々の形状を有するワークに対してシール性(液状物質の密封性)を確保しながら、液状物質の収容容器を装着することはきわめて困難である。
また、浸炭させたくない部分を、液状物質を接触させないように養生する後者の方法もきわめて煩雑である。
(3)液中浸炭法において、液状物質の収容容器内に配置することが不可能である大型のワークを浸炭処理する場合には、このワークの被処理面に対して、誘導加熱手段および液状物質の収容容器を相対的に移動させて、ワークの被処理面を順次加熱(移動加熱)する必要がある。
しかしながら、種々の形状を有するワークに対して、シール性(液状物質の密封性)を確保しながら、液状物質の収容容器を移動(摺動)させることはきわめて困難である。
(4)液中浸炭法による浸炭処理後に焼入れを行う場合において、液状物質中にワークが浸漬されているために、冷却速度の制御が困難で、所期の焼入れを行うことができない。
本発明は以上のような事情に基いてなされたものである。
本発明の第1の目的は、液中浸炭法と同等程度の浸炭速度が得られ、エネルギーコストが低く、炭素供給源として液状物質を効率的に利用することができ、簡素な設備で作業性良く実施可能な浸炭処理方法を提供することにある。
本発明の第2の目的は、ワークの一部であっても容易かつ確実に浸炭することができる浸炭処理方法を提供することにある。
本発明の第3の目的は、大型のワークであっても容易かつ確実に浸炭することができる浸炭処理方法を提供することにある。
(1)本発明の浸炭処理方法は、炭素含有化合物が含浸されている耐熱性部材をワークの被処理面に接触させた状態で、当該被処理面を加熱する工程を含むことを特徴とする。
(2)更に具体的には、繊維または多孔質材料から成形され、炭素含有化合物が含浸されている耐熱性部材をワークの被処理面に接触させた状態で、当該被処理面を加熱する工程を含むことを特徴とする。
炭素含有化合物が含浸された耐熱性部材が接触しているワークの被処理面上には、当該炭素含有化合物による層(液相)が形成され、被処理面の近傍の環境は、炭素含有化合物中にワークを浸漬したときと近似した状況となる。この状態で、ワークの被処理面を加熱すると、これに接触した炭素含有化合物の熱分解により発生した活性炭素が、当該被処理面の近傍組織に拡散し、ワークの浸炭がなされる。
ここに、ワークの被処理面の周囲には、分子密度の高い液体(耐熱性部材に含浸されている炭素含有化合物)が存在するので、液中浸炭法と同等程度の高い浸炭速度が得られる。
また、ワークの被処理面の周囲に存在している液体(耐熱性部材に含浸されている炭素含有化合物)の量は、液中浸炭法において被処理面の周囲に存在する液体(ワークを浸漬する液状物質)の量と比較して格段に少ない。従って、液中浸炭法と比較して十分に小さい出力で、同等程度の浸炭処理を行うことができる。
さらに、耐熱性部材に含浸されている炭素含有化合物は、蒸発によって系外に放出されにくいので、含浸させた炭素含有化合物の殆どを活性炭素の供給源として使用することができる。また、蒸発に伴う炭素含有化合物の損失がきわめて少ないので、例えば、耐熱性部材への炭素含有化合物の供給量を制御することにより、浸炭深さなどを調整することも可能となる。
(3)本発明の浸炭処理方法においては、繊維または多孔質材料から成形され、炭素含有化合物が含浸されている耐熱性部材によって被覆されているワークの被処理面を加熱する工程を含むことが好ましい。
炭素含有化合物が含浸されている耐熱性部材によってワークの被処理面を被覆することにより、当該被処理面上には、炭素含有化合物による層(液相)が形成され、当該被処理面の近傍の環境は、炭素含有化合物中にワークを浸漬したときと近似した状況となる。この状態で、ワークの被処理面を加熱すると、これに接触した炭素含有化合物の熱分解により発生した活性炭素が、当該被処理面の近傍組織に拡散し、ワークの浸炭がなされる。
(4)炭素含有化合物が含浸された耐熱性部材により被覆されているワークの被処理面を加熱する具体的方法としては、シート状の耐熱性部材によってワークの被処理面を被覆する工程と、ワークの被処理面を被覆した前記耐熱性部材に、液状の炭素含有化合物を含浸させるとともに、前記被処理面を加熱する工程とからなる方法を挙げることができる。
(5)前記耐熱性部材は、炭素繊維またはセラミック繊維から成形されていることが好ましい。
これらの繊維材料から成形された耐熱性部材は、浸炭処理温度(被処理面の加熱温度)に対して十分な耐熱性を有し、かつ、液状の炭素含有化合物を確実に含浸することができる。
(6)ワークの被処理面の加熱は、電磁誘導によって行うことが好ましい。
電磁誘導加熱によれば、当該被処理面を迅速に昇温することができるとともに、局所的な加熱を行うことができる。
(7)電磁誘導によって加熱する場合において、ワークの被処理面に対して誘導加熱手段を相対的に移動して加熱(移動加熱)することが好ましい。本発明の浸炭処理方法では、炭素含有化合物が耐熱性部材によって含浸保持されるので、液中浸炭法のように炭素含有化合物のシール性を考慮する必要がなく移動加熱を行うことができ、これにより、大型のワークであっても、容易かつ確実に浸炭することができる。
本発明の浸炭処理方法によれば、液中浸炭法と同等程度の浸炭速度が得られ、エネルギーコストが低く、炭素供給源として液状物質(炭素含有化合物)を効率的に利用することができる。本発明の浸炭処理方法は、簡素な設備で作業性良く実施することができる。
また、ワークの一部であっても容易かつ確実に浸炭(部分浸炭)することができる。
また、ワークの被処理面に対して加熱手段を相対的に移動させて加熱することにより、大型のワークであっても容易かつ確実に浸炭することができる。
本発明の一の実施形態(棒状ワークの周面浸炭処理)を模式に示す説明図である。 本発明の他の実施形態(棒状ワークの周面浸炭処理)を模式に示す説明図である。 本発明の他の実施形態(管状ワークの内周面浸炭処理)を模式に示す説明図である。 本発明の他の実施形態(管状ワークの内周面浸炭処理)を模式に示す説明図である。 本発明の他の実施形態(冷却工程を含む応用例)を模式に示す説明図である。 実施例で使用した浸炭処理装置の概略を示す説明図である。 参考例で使用した浸炭処理装置の概略を示す説明図である。 実施例1〜2および参考例1において、30分間処理したワークについての深さと硬さの関係曲線を示す説明図である。 実施例3〜4および参考例2において、60秒間処理したワークについての深さと硬さの関係曲線を示す説明図である。
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明の浸炭処理方法は、炭素含有化合物が含浸されている耐熱性部材を、ワークの被処理面に接触させた状態で、当該被処理面を加熱する工程を含む。
本発明の方法によって処理される「ワーク」としては、従来公知の方法により浸炭処理されている低炭素鋼などの金属を挙げることができる。
ワークの「被処理面」は、ワークのすべての表面であってもよいが、本発明の浸炭処理方法は、ワークの一部を浸炭(部分浸炭)する場合に特に好適である。
本発明の浸炭処理方法では、炭素供給源として液状の炭素含有化合物を使用する。
本発明で使用可能な「炭素含有化合物」としては、分子中に炭素原子を含み、使用温度(例えば0〜50℃、特に10〜40℃)で液体であれば特に限定されるものではなく、炭素、水素、酸素原子などからなる液状の有機化合物を使用することができる。
炭素含有化合物の具体例としては、容易に入手できることなどの観点から、メタノール、エタノール、イソプロパノールなどのアルコール、ガソリン、軽油、重油などの原油精製品、ベンゼン、トルエン、キシレン、シクロヘキサンなどの石油化学製品などを例示することができる。
本発明の浸炭処理方法で使用する「耐熱性部材」は、浸炭処理温度で使用可能な耐熱性(例えば、耐熱温度が700℃以上)を有し、液体を含浸して保持することができる繊維または多孔質材料の成形品から構成される。
耐熱性部材を構成する「繊維材料」としては、炭素繊維、セラミック繊維、アラミド繊維などを挙げることができ、これらの繊維から成形された不織布(フェルト)が好ましい。
耐熱性部材を構成する「多孔質材料」としては、炭素多孔質体およびセラミック多孔質体などを挙げることができる。
耐熱性部材の形状は特に限定されるものではないが、ワークの被処理面を被覆するような場合にはシート状であることが好ましい。
耐熱性部材として好適な市販材料としては、「カーボンフェルト」〔トラスコ中山(株)製の耐炎糸不織布〕、「イソウール(登録商標)」〔イソライト工業(株)製のセラミック繊維から成形されたブランケット〕を挙げることができる。
本発明の浸炭処理方法では、炭素含有化合物が含浸されている耐熱性部材をワークの被処理面に接触させた状態で、当該被処理面を加熱する。
耐熱性部材をワークの被処理面に接触させる好適な態様としては、当該耐熱性部材によって被処理面を被覆する態様を挙げることができる。
耐熱性部材が接触しているワークの被処理面を加熱する方法としては、特に限定されるものではないが、局所的な加熱が可能で昇温速度が高いことから、電磁誘導によって行うことが好ましい。
被処理面の加熱温度としては、通常700〜1100℃とされ、好ましくは800〜1100℃、更に好ましくは900〜1100℃とされる。
本発明の好ましい浸炭処理方法として、シート状の耐熱性部材によりワークの被処理面を被覆する工程と、ワークの被処理面を被覆した前記耐熱性部材に、液状の炭素含有化合物を含浸させるとともに、前記被処理面を加熱する工程とからなる方法を挙げることができる。
炭素含有化合物を耐熱性部材に含浸させる方法としては、定量ポンプを用いて炭素含有化合物を滴下したり、スプレー塗布したりする方法を挙げることができる。
本発明の浸炭処理方法により大型のワークを浸炭処理する場合などにおいて、ワークの被処理面に対して誘導加熱手段を相対的に移動させることにより、面積の広い被処理面を連続的に加熱すること(移動加熱)が好ましい。移動加熱を行うことにより、出力の小さい電源で処理することができる。
耐熱性部材によって炭素含有化合物を含浸保持する本発明の浸炭処理方法では、液中浸炭法のように炭素含有化合物のシール性(収容容器の液密性)を考慮する必要がなく移動加熱を行うことができ、これにより、大型のワークであっても、容易かつ確実に浸炭することができる。
以下、本発明の浸炭処理方法の移動加熱による実施形態について図面を用いて説明する。
<第1の実施形態>
図1(1)〜(3)は、棒状ワークの周面を移動加熱により浸炭処理する一形態を模式的に示している。同図において、Wはワーク(被処理物)、Sは被処理面、11は、電磁誘導加熱装置を構成し、被処理面Sを局所的に加熱するリング状のコイル、21は、シート状の耐熱性部材(炭素繊維またはセラミック繊維から成形された不織布)、31は、耐熱性部材21に炭素含有化合物を供給するためのノズルである。
この実施形態では、先ず、ワークWの被処理面S(浸炭させたい領域)を耐熱性部材21で被覆する。
次いで、図1(1)に示すように、ワークWの被処理面Sを被覆している耐熱性部材21に対して、ノズル31から炭素含有化合物をスプレー塗布する。これにより、耐熱性部材21(コイル11に囲まれている部分)に炭素含有化合物が含浸され、この状態で、被処理面S(コイル11に囲まれている領域)を電磁誘導により加熱する。
ノズル31からの炭素含有化合物の塗布量としては、耐熱性部材21の含浸容量、浸炭に伴う炭素含有化合物の消費量などに応じて適宜調整することができる。
図1(1)〜(3)に示すように、この実施形態では、コイル11およびノズル31に対してワークWが下方に移動する。これにより、ワークWの被処理面Sを被覆している耐熱性部材21は、下側から上側に向かって、順次、炭素含有化合物を含浸し、この耐熱性部材21に被覆されているワークWの被処理面Sは、下側から上側に向かって、順次誘導加熱されることになる。
なお、加熱時において、耐熱性部材21に含浸された炭素含有化合物は、被処理面Sに到達せずに、耐熱性部材21の外表面側に遍在していてもよい。
この実施形態において、炭素含有化合物が含浸された耐熱性部材21が接触しているワークWの被処理面S上には、当該炭素含有化合物による層(液相)が形成され、被処理面Sの近傍の環境は、液中浸炭法において炭素含有化合物中にワークを浸漬したときと近似した状況となっている。この状態で、ワークWの被処理面Sを誘導加熱すると、この被処理面Sに接触した炭素含有化合物(液体または気体)の熱分解により発生した活性炭素が、被処理面Sの近傍組織に拡散し、ワークWの浸炭がなされる。
ここに、ワークWの被処理面Sの周囲には、分子密度の高い液体(炭素含有化合物)が存在するので、液中浸炭法と同等程度の高い浸炭速度が得られる。すなわち、処理時間が同じであれば、液中浸炭法と同等程度の浸炭状態(深さ−硬さの関係曲線)が得られる。 しかも、ワークWの被処理面Sの周囲に存在している液体(耐熱性部材に含浸保持されている炭素含有化合物)の量は、液中浸炭法において被処理面の周囲に存在する液体(ワークが浸漬される液状物質)の量と比較して格段に少ない。従って、この実施形態の浸炭処理方法によれば、液中浸炭法と比較して十分に小さい出力で、液中浸炭法と同等程度の浸炭処理を行うことができる。
さらに、耐熱性部材21に含浸保持されている炭素含有化合物は、蒸発によって系外に放出されにくいので、含浸させた炭素含有化合物の殆どを活性炭素の供給源として効率的に使用することができる。
また、蒸発に伴う炭素含有化合物の損失がきわめて少ないことから、例えば、耐熱性部材への炭素含有化合物の供給量(ノズル31からの塗布量)を制御することにより、浸炭深さなどを調整することも可能となる。
<第2の実施形態>
図2(1)〜(2)は、棒状ワークの周面を移動加熱により浸炭処理する他の形態を模式的に示している。同図において、12は、電磁誘導加熱装置を構成するリング状のコイル、22はリング状の耐熱性部材(炭素繊維またはセラミック繊維から成形された不織布)、32は、耐熱性部材22に炭素含有化合物を供給するノズルである。
図2(1)において、コイル12の内周面には、耐熱性部材22の外周面が固着されている。また、耐熱性部材22の内周面は、ワークWの被処理面Sに当接している。
図2(1)〜(2)に示すように、この実施形態では、被処理面Sを局所的に加熱するためのコイル12と、コイル12の内周に固着されている耐熱性部材22と、耐熱性部材22に炭素含有化合物を供給するためのノズル32とが、ワークW(被処理面S)に対して一体的に下方に移動する。
これにより、ワークWの被処理面Sは、上側から下側に向かって、耐熱性部材が接触されている状態で誘導加熱され、この結果、上側から下側に向かって、順次、浸炭処理がなされる。
<第3の実施形態>
図3(1)〜(2)は、管状ワークの内周面を移動加熱により浸炭処理する一形態を模式的に示している。同図において、13は、電磁誘導加熱装置を構成し、被処理面Sを局所的に加熱するコイル、23は、シート状の耐熱性部材(炭素繊維またはセラミック繊維から成形された不織布)、33は、耐熱性部材23に炭素含有化合物を供給するためのノズルである。
この実施形態では、先ず、ワークWの被処理面S(浸炭させたい内周面の領域)を耐熱性部材23で覆う。
次いで、図3(1)に示すように、ワークWの被処理面Sを被覆している耐熱性部材23に対して、ノズル33から炭素含有化合物をスプレー塗布する。これにより、耐熱性部材23(コイル13の周囲にある部分)に炭素含有化合物が含浸され、この状態で、被処理面S(コイル13の周囲にある領域)を電磁誘導により加熱する。
図3(1)〜(2)に示すように、この実施形態では、被処理面Sを局所的に加熱するためのコイル13と、コイル13の周囲における耐熱性部材23に炭素含有化合物を供給するためのノズル33とが、ワークW(被処理面S)に対して一体的に下方に移動する。 これにより、ワークWの被処理面Sを被覆している耐熱性部材23は、上側から下側に向かって、順次、炭素含有化合物を含浸し、この耐熱性部材23に被覆されているワークWの被処理面Sは、上側から下側に向かって、順次、誘導加熱されて浸炭処理がなされることになる。
<第4の実施形態>
図4(1)〜(2)は、管状ワークの内周面を移動加熱により浸炭処理する他の形態を模式的に示している。同図において、14は、電磁誘導加熱装置を構成し、被処理面Sを局所的に加熱するコイル、24はリング状の耐熱性部材(炭素繊維またはセラミック繊維から成形された不織布)、34は、耐熱性部材24に炭素含有化合物を供給するノズルである。
図4(1)〜(2)に示すように、この実施形態では、被処理面Sを局所的に加熱するためのコイル14と、コイル14の外周面に固着されている耐熱性部材24と、耐熱性部材24に炭素含有化合物を供給するためのノズル34とが、ワークW(被処理面S)に対して一体的に下方に移動する。
これにより、ワークWの被処理面Sは、上側から下側に向かって、耐熱性部材が接触されている状態で誘導加熱され、この結果、上側から下側に向かって、順次、浸炭処理がなされる。
<第5の実施形態>
図5は、棒状ワークの周面を移動加熱により浸炭処理した後に冷却処理する形態を模式的に示している。同図において、41は、ワークWを被覆している耐熱性部材21を剥離するために用いるスクレーパ、42は、浸炭処理後の被処理面Sを冷却(焼入)するために冷水を塗布する冷却ノズルである。なお、同図において、第1の実施形態と同一の構成要素には、同一の符号を用いている。
この実施形態では、第1の実施形態と同様に、コイル11およびノズル31に対して、ワークWが下方に移動するので、耐熱性部材21に被覆されているワークWの被処理面Sは、下側から上側に向かって、順次、浸炭処理がなされる。
そして、ワークWが下方に移動することに伴い、浸炭処理された被処理面Sにおいては、これを被覆していた耐熱性部材21がスクレーパ41によって順次剥離された後、冷却ノズル42から冷水が吹き付けられて順次冷却(焼入)される。
この実施形態によれば、浸炭処理後の被処理面Sを直ちに冷却することができるので、冷却速度の制御が容易で、所期の焼入れを確実に行うことができる。
以下、本発明の実施例を説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
<実施例1>
直径22mm、長さ20mmのクロムモリブデン鋼(SCM415)の表面をベルトサンダー(♯60)で研削したものをワークとして用い、図6に示すように、このワークWの全表面を、厚さ2.8mmの耐炎糸不織布「カーボンフェルト28CF」〔トラスコ中山(株)製〕からなる耐熱性部材26で被覆し、定量ポンプ36により、エタノールを滴下しながら(滴下量:10mL/min)、リング状のコイル16を用いた電磁誘導により30分間加熱する浸炭処理を実施した。加熱温度は、ワークの上面(図6のPで示す位置)にK熱電対を取り付け、この位置での温度が1050℃を維持するように制御した。この実施例の浸炭処理において、消費電力は3.5kWであった。30分間の加熱後、耐熱性部材26を取り去り、ワークWを水中に浸漬することによって焼入処理した。焼入処理後、ワークWを、上下面が半円状になるよう長さ方向に切断し、K熱電対を取り付けた位置Pにおいて、深さ(上面からの距離)と硬さ(マイクロビッカース硬度)との関係を測定した。結果を下記表1および図8に示す。
<実施例2>
耐熱性部材として、セラミック繊維を成形してなる厚さ6mmのブランケット「イソウール(登録商標)1400ブランケット」〔イソライト工業(株)製〕を使用したこと以外は実施例1と同様にして加熱(浸炭処理)および焼入処理を行った。この実施例の浸炭処理において、消費電力は3.5kWであった。焼入処理後、ワークWを半円状に切断し、K熱電対を取り付けた位置において、深さ(上面からの距離)と硬さとの関係を測定した。結果を下記表1および図8に示す。
<参考例1>
直径22mm、長さ20mmのクロムモリブデン鋼(SCM415)の表面をベルトサンダー(♯60)で研削したものをワークとして用い、図7に示すように、このワークWおよびリング状のコイル17を、ガラス容器27内に収容されているエタノールL(1リットル)中に浸漬し、コイル17を用いた電磁誘導により30分間加熱する浸炭処理を実施した。加熱温度は、図7に示すシース熱電対Qで測定される温度が1050℃を維持するように制御した。
なお、発生するエタノール蒸気は、図示は省略している収集・冷却機構にて液化回収し、ガラス容器27内に戻した。
この参考例の浸炭処理において、消費電力は7.2kWであった。30分間の加熱後、エタノール中にワークWを浸漬したままの状態で30℃まで冷却後、ワークWを取り出し、別途用意した誘導加熱装置により加熱し、1050℃で60秒間維持した後、水中に浸漬することによって焼入処理した。焼入処理後、ワークWを、上下面が半円状になるよう長さ方向に切断し、深さ(上面からの距離)と硬さとの関係を測定した。結果を下記表1および図8に示す。
Figure 0005460263
<実施例3>
1050℃での加熱(浸炭処理)時間を60秒間に変更したこと以外は実施例1と同様にして加熱(浸炭処理)および焼入処理を行った。この実施例の浸炭処理において、消費電力は3.5kWであった。焼入処理後、ワークWを半円状に切断し、K熱電対を取り付けた位置において、深さ(上面からの距離)と硬さとの関係を測定した。結果を下記表2および図9に示す。
<実施例4>
1050℃での加熱(浸炭処理)時間を60秒間に変更したこと以外は実施例2と同様にして加熱(浸炭処理)および焼入処理を行った。この実施例の浸炭処理において、消費電力は3.5kWであった。焼入処理後、ワークWを半円状に切断し、K熱電対を取り付けた位置において、深さ(上面からの距離)と硬さとの関係を測定した。結果を下記表2および図9に示す。
<参考例2>
1050℃での加熱(浸炭処理)時間を60秒間に変更したこと以外は参考例1と同様にして加熱(浸炭処理)および冷却を行った。この参考例の浸炭処理において、消費電力は7.2kWであった。冷却後、ワークWを半円状に切断し、K熱電対を取り付けた位置において、深さ(上面からの距離)と硬さとの関係を測定した。結果を下記表2および図9に示す。
Figure 0005460263
図8(表1)および図9(表2)に示したように、本発明の方法により浸炭処理されたワーク(実施例1〜2/実施例3〜4)についての深さと硬さとの関係曲線は、液中浸炭法で同じ時間(30分間/60秒間)浸炭処理されたワーク(参考例1/参考例2)についての関係曲線ときわめて近似している。従って、本発明の浸炭処理方法によれば、液中浸炭法と同等程度の浸炭速度(同じ処理時間であれば同等程度の浸炭状態)が得られる。 また、実施例1〜4における消費電力は3.5kWと、参考例1〜2における消費電力(7.2kW)の半分以下であった。
11、12、13、14、16 コイル
21、22、23、24、26 耐熱性部材
31、32、33、34 ノズル
36 定量ポンプ
41 スクレーパ
42 冷却ノズル
W ワーク
S 被処理面

Claims (7)

  1. 炭素含有化合物が含浸されている耐熱性部材をワークの被処理面に接触させた状態で、当該被処理面を加熱する工程を含むことを特徴とする浸炭処理方法。
  2. 繊維または多孔質材料から成形され、炭素含有化合物が含浸されている耐熱性部材をワークの被処理面に接触させた状態で、当該被処理面を加熱する工程を含むことを特徴とする浸炭処理方法。
  3. 繊維または多孔質材料から成形され、炭素含有化合物が含浸されている耐熱性部材によって被覆されているワークの被処理面を加熱する工程を含むことを特徴とする請求項2に記載の浸炭処理方法。
  4. 繊維または多孔質材料から成形されたシート状の耐熱性部材によってワークの被処理面を被覆する工程と、
    ワークの被処理面を被覆した前記耐熱性部材に、液状の炭素含有化合物を含浸させるとともに、前記被処理面を加熱する工程とを含むことを特徴とする請求項3に記載の浸炭処理方法。
  5. 前記耐熱性部材は、炭素繊維またはセラミック繊維から成形されていることを特徴とする請求項1乃至請求項4の何れかに記載の浸炭処理方法。
  6. ワークの被処理面を電磁誘導により加熱することを特徴とする請求項1乃至請求項5の何れかに記載の浸炭処理方法。
  7. ワークの被処理面に対して誘導加熱手段を相対的に移動して加熱することを特徴とする請求項6に記載の浸炭処理方法。
JP2009265429A 2009-11-20 2009-11-20 浸炭処理方法 Active JP5460263B2 (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2009265429A JP5460263B2 (ja) 2009-11-20 2009-11-20 浸炭処理方法

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2009265429A JP5460263B2 (ja) 2009-11-20 2009-11-20 浸炭処理方法

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JP2011106018A JP2011106018A (ja) 2011-06-02
JP5460263B2 true JP5460263B2 (ja) 2014-04-02

Family

ID=44229820

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2009265429A Active JP5460263B2 (ja) 2009-11-20 2009-11-20 浸炭処理方法

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP5460263B2 (ja)

Families Citing this family (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP5798463B2 (ja) * 2011-11-30 2015-10-21 高周波熱錬株式会社 浸炭処理方法及び浸炭処理装置
JP2015108164A (ja) * 2013-12-03 2015-06-11 公益財団法人応用科学研究所 高周波浸炭処理方法

Family Cites Families (3)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JPS5232619B2 (ja) * 1972-10-27 1977-08-23
JP2000212722A (ja) * 1999-01-21 2000-08-02 Kawasaki Steel Corp 金属の表面硬化剤および金属の表面硬化方法
JP2008266762A (ja) * 2007-04-25 2008-11-06 Aisin Seiki Co Ltd 浸炭処理工程を備える金属材の製造方法

Also Published As

Publication number Publication date
JP2011106018A (ja) 2011-06-02

Similar Documents

Publication Publication Date Title
US7161124B2 (en) Thermal and high magnetic field treatment of materials and associated apparatus
JPH09504263A (ja) コントロールした表面温度における多孔質基材への物質の蒸気相化学浸透方法
JP5460263B2 (ja) 浸炭処理方法
TWI264473B (en) Vacuum deposition device and vacuum deposition method
CN105200201B (zh) 一种用于螺丝的碳氮共渗热处理的方法
JPH09506583A (ja) 多孔質基板の高密度化方法
EP1716267A2 (en) Method for carburizing steel components
KR20100063131A (ko) 증착원, 유기 el 소자의 제조 장치
JP3107571B2 (ja) 温度勾配を形成した多孔質基材内に熱分解炭素マトリックスを浸透させるcvi方法
JP5669979B1 (ja) 鉄鋼部材の表面硬化処理方法及び表面硬化処理装置
JP5572251B1 (ja) 鉄鋼部材の表面硬化処理法及び表面硬化処理装置
Galiotto et al. Characterization of different surface layers produced by solid boron-nitro-carburizing thermochemical treatment on AISI 1020
JP2004513053A (ja) 多孔性構造体の膜沸騰による高密度化の改良
RU2686162C2 (ru) Способ обработки поверхности и устройство для обработки поверхности
Haruman et al. An investigation on low-temperature thermochemical treatments of austenitic stainless steel in fluidized bed furnace
JP6477532B2 (ja) 浸窒処理方法
JPH01268817A (ja) 熱プラズマ火炎中での金属又は合金の熱処理方法
Sola et al. A novel duplex treatment of C20 steel combining low-pressure carburizing and laser quenching
JP4923258B2 (ja) 過熱水蒸気発生装置及び過熱水蒸気発生方法
WO2018155421A1 (ja) 樹脂膜の形成方法および樹脂膜の成膜装置
Palkanov et al. Influence of induction chemical-thermal treatment in a gaseous medium on the formation of a wear-resistant gradient nitride layer on tool steel
JP5495427B2 (ja) 被膜形成方法
KR102501313B1 (ko) 탄탈륨 단편 또는 탄탈륨 합금 단편의 처리 방법
Toscano et al. A Novel Concept of Hybrid Treatment for High‐Hardenability Steels: Concomitant Hardening and Paraequilibrium Thermochemical Treatment to Produce Interstitially Hardened/Stabilized Austenite Surfaces
WO2014174949A1 (ja) 合金鋼製部品の表面改質装置、合金鋼製部品の表面改質方法および合金鋼製部品の製造方法

Legal Events

Date Code Title Description
A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20120821

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20140114

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20140114

R150 Certificate of patent or registration of utility model

Ref document number: 5460263

Country of ref document: JP

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250