JP5457442B2 - 圧電素子の共振周波数の調整方法 - Google Patents

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Description

本発明は圧電素子の共振周波数を調整する方法に関する。
圧電素子は例えば特許文献1から公知である。
この種の圧電素子は様々な用途に用いられる。一つの代表的な用途はアクチュエータであり、その場合、制御電圧によって振動、例えば曲げ振動または伸縮振動が圧電素子に引き起こされる。圧電素子の固有の共振周波数は、加振入力に対する応答を特徴づける弾性特性に関連した素子の幾何学的寸法によって決まる。加振中の減衰を最小限に抑えるためには、圧電素子の固有の共振周波数が所望の加振周波数に一致するように圧電素子を構成するのが好適である。
米国特許公報 6,346,764B1
圧電素子、並びに圧電素子を有する振動可能な素子構成体の共振周波数を調整する必要がある。
この必要性は請求項1の主題によって満たされる。一実施態様に従って圧電素子の共振周波数の調整方法が提案される。
この目的のため、圧電素子は、三つの空間方向に延びる少なくとも一つのトランスデューサを含み、該トランスデューサの、従って圧電素子の共振周波数は、前記三つの空間方向のうちの少なくとも一つの方向の延在寸法、及び/または材料に依存する弾性特性に依存する。トランスデューサは少なくとも二つの第一電極と少なくとも一つの第二電極とを備えた層構造を含む。第二電極は前記少なくとも二つの第一電極の間に配置されている。こうして一実施態様では、トランスデューサは、交互に上下に積み重ねられた複数の電極を含む。
提案される原理によれば、前記少なくとも二つの第一電極及び少なくとも一つの第二電極のうちの少なくとも一つに直流電圧が印加される。これにより共振周波数の変化が引き起こされるが、これは、印加された直流電圧により、トランスデューサの前記三つの空間方向のうちの少なくとも一つの方向の延在寸法の変化、及び/または弾性特性の変化が引き起こされるからである。更に、変化した共振周波数と実質的に一致する加振周波数をもつ制御電圧が、振動を起こすために印加される。
従って圧電素子の共振周波数の修正もしくは調整は、直流電圧を印加することにより圧電素子の幾何学的寸法もしくは弾性特性の少なくとも一つの成分を変化させて行なわれる。
こうして、わずかに寸法の異なるトランスデューサを有する様々な圧電素子を、固有の共振周波数について相互に調整することができる。これは、各トランスデューサの二つの第一電極と少なくとも一つの第二電極とのうちの、1つに異なる直流電圧を印加することによって行われる。直流電圧の印加により、トランスデューサの幾何学的寸法もしくは弾性特性の一つまたは複数の成分が変化する。弾性特性及び少なくとも一つの空間方向の延在寸法に依存する共振周波数は、これにより変化する。従って適切な直流電圧を印加することによって、異なる圧電素子の共振周波数を相互に調整することができる。
弾性特性は弾性係数から導出されてもよく、かつ/または弾性係数の一つまたは複数の成分であってもよい。
第二のステップにて、一つの加振周波数をもつ制御電圧が複数の圧電素子の電極に印加されるが、その際該制御電圧の加振周波数は、前記の変化した共振周波数と実質的に一致する。制御電圧は基本的に交流電圧である。
この結果、素子の幾何学的特性、例えば外寸を機械的に変える必要なく、異なる圧電素子の共振周波数を相互に調整することができる。特に、幾何学的寸法に製造に関連したばらつきを有する複数の圧電素子の共振周波数を、機械加工なしに相互に調整する、もしくは可逆的に所定値に調整することができる。従って特に、適切な機械加工によって精確に共振周波数を調整するための製造費用を省くことができる。更に、制御できない外的パラメタによって引き起こされる、素子の共振周波数の変化を補償することができる。例えば、提案した方法を用いて圧電素子の共振周波数の温度補償を行うことができる。
直流電流を用いた調整も可能である理由は、所謂機械的キャパシタンス(機械インピーダンスの、電気インピーダンスのキャパシタンス成分に対応する成分)が、素子の共振周波数の決定にあずかるとともに、同時に電圧に依存するからである。エネルギーの観点から見ると、素子は電界が印加されると最も有利な、つまり低いエネルギー状態に達しようとする。印加直流電圧も、素子及び圧電材料に作用する電界ベクトルを生じる。この電界に応じて、素子は一つまたは複数の空間方向の幾何学的寸法、及び/または弾性係数の一つまたは複数の成分を変える。変化が電界の方向に依存することは言うまでもない。
好ましい一実施態様において、トランスデューサは、複数の電極が上下に配された多層構造を有する。これにより、同じ圧電層電界強度を達成するのにより低い電圧で済ませることができる。
一実施態様において、前記の少なくとも二つの第一電極は少なくとも一つの第三電極と一つの第四電極を含み、前記の少なくとも一つの第二電極は少なくとも一つの第五電極と一つの第六の電極を含む。第五電極は第三電極と第四電極との間に配置され、第二電極は第五電極と第六電極との間に配置されている。これらの電極は同じ電圧が第五電極と第六電極との間に印加されるように構成されている。
別な一実施態様において、直流電圧も制御電圧もそれぞれ同じ電極に印加される。この場合、前記少なくとも二つの第一電極は相互に結ばれていてもよい。材料、圧電層の数及び個々の圧電層の厚み、トランスデューサの横方向の寸法の適切な選択を含め、トランスデューサを適切に実現することにより、機械的振動を起こしたい場所での電気エネルギーの変換を好適に行うことができる。
圧電層には、任意の組成のPZTセラミックのみならず、損失角の小さいその他の好適な圧電性セラミックが考えられる。電極間の個々のセラミック層は同じ厚みを持ち相互に同じ間隔を有していてもよい。しかしながら所望の加振入力及び機械的振動を達成するために、異なる層厚間隔及び/または材料を用いることも可能である。
更に別な一実施態様では、トランスデューサの層構造は、第一部分層構造、または実質的に電界のない空間によって第一部分層構造から隔てられた第二部分層構造を含んでいる。これら二つの部分層構造は各々、互いに上下に配された複数の電極を含んでいる。これら二つ部分層構造は隣り合って、しかし互いに間隔を置いて配置されている。これら二つの部分層構造は、電圧がなく変形のない中立領域を間に導入することにより、機械的に相互に分離されている。この結果、これら二つ部分層構造、もしくはそれらの電極には異なる制御電圧を供給することができる。好ましくは、これら隣り合った二つ部分層構造は実質的に同じかまたは対称をなす構成を有し、特に実質的に同じ機械的キャパシタンスを有する。
前記の圧電素子は、比較的小さい空間に集中せしめられた高いエネルギー密度を特徴とする。圧電素子における静電容量の分布は、消費電流及び損失に大きく影響する。従って、圧電素子の振動時、供給される制御電圧の散逸損失を記録することによって、減衰、従って固有の共振周波数からの加振周波数のずれがどのようであるかがわかる。
この目的のため、本方法の一実施態様では、振動、好ましくは曲げ振動を引き起こすための加振周波数をもつ制御電圧が、前記少なくとも二つの第一電極と少なくとも一つの第二電極とのうちの、少なくとも一つに印加される。そして生成された振動に依存するパラメタが記録される。直流電圧によって素子の共振周波数が変わるので、更に同時に加振周波数をもつ制御電圧が印加されると、振動に依存するパラメタも変化する。このパラメタがまた記録され、前に記録されたパラメタと比較される。この比較に応じて印加される直流電圧が変更される。
このようにして直流電圧の適切な印加により素子の固有の共振周波数を、加振周波数に合うように調整することができる。これは数ステップによって行われるが、その際パラメタが記録されることによって、共振周波数を変化させるための直流電圧の印加により、減衰が抑制され、それとともに共振周波数が所望の共振周波数に向かって変化するかどうかがわかる。加振周波数と調整された共振周波数が一致すれば、減衰は大域的最小点に達している。
一実施態様では、生成された振動の振幅もしくはトランスデューサのたわみが評価される。直流電圧によって調整された共振周波数と制御信号の加振周波数とのずれが小さいほど、振幅は大きい。あるいは、生成される振動の減衰もしくは生成される振動の時間的経過が評価されてもよい。減衰が少ないほど、生成される振動の振幅の時間的減少は小さい。従って、更に別な実施態様にて振幅の時間的変化が記録され評価されてもよい。
あるいは、供給される制御電圧からの電力損失を評価してもよい。電力損失は、素子の固有の共振周波数が制御電圧の加振周波数と一致し、それに伴い所望の共振周波数と一致すると最小となる。
トランスデューサの電極面間の複数の間隔、つまり本体の異なる横方向領域を成す複数の圧電層の厚みが異なるように選択するのが好適な場合もある。このようにしてできるだけ大きな曲げ振動を達成することできる。電極間隔を小さいと、任意の同じ電圧で、各圧電層にて電界強度が増大する。従って、大きな曲げ振動を達成するために本体の最大のたわみが求められる圧電素子ないしトランスデューサの領域にて、圧電層の厚みを減らしてもよい。
各圧電層は極性軸によって特徴づけられる。圧電層は好ましくは正負の極性方向が上下に交互になるように配される。極性をもつ分極領域(domain)の優先極性方向を設定するため、本体の圧電層を予備分極してもよい。分極のための電界は例えば1kV/mm乃至3kV/mmであってもよい。その場合、作動中、層当たり200V/mmまでの電界を達成できる。
圧電素子の第一の実施形態である。 圧電素子の第二の実施形態である。 図2Aに記載の圧電素子の上面図である。 図2Aに記載の圧電素子の別な上面図である。 別な実施形態による圧電素子の断面図である。 図3Aに記載の圧電素子の上面図である。 圧電素子の更に別な実施形態の断面図である。 図4Aに記載の圧電素子の上面図である。 二つの圧電素子が互いに垂直に配置されたアクチュエータの概略図である。 二つの圧電素子を持つアクチュエータの別な構成の断面図である。 共振周波数の調整方法の実施形態である。 共振周波数の印加制御電圧に対する依存性を表すグラフである。
以下本発明を様々な実施形態を用いて図面に基づいて詳細に説明する。
以下で説明され、添付の図面に表された実施形態の個々の要素は、原寸に比例して描かれてはいない。特に、わかりやすいように個々の要素を拡大したり縮小したりして示す場合があり得る。特定の実施形態でのみ言及する個別的特徴、例えば層厚、間隔、または材料は、他の実施形態にも容易に移すことができる。「弾性特性」という語は以下で、材料に依存した弾性パラメタと解される。かかる弾性特性は、弾性係数または圧縮係数の一つまたは複数の成分であってもよく、外部から印加される電界に対する圧電材料の応答を表す。逆に言えば、弾性係数という語は、外部から印加される電界に対する機械的応答を説明する弾性特性と解される。弾性特性はテンソル、ベクトルまたはスカラーによって表わされ得る。効果及び機能の上で等価な構成要素には同じ参照番号が与えられている。
図1に記載の圧電素子1は、複数の圧電層10と電極面を持つトランスデューサを含む。これらの圧電層と電子面とは交互に上下に積み重ねて配置されている。この実施形態の圧電層10は予備分極されたセラミック材料を含んでいる。圧電素子1は複数の、第一電極22と第二電極21とを有している。第一、第二電極は各々一つの圧電層10によって離されて、交互に上下に配置されている。第一電極22は導電面52により相互に結ばれている。対応して、導電面51はトランスデューサの第二電極21同士を結んでいる。
圧電素子1の固有の共振周波数fresはとりわけ素子の有効質量meffに依存し、有効質量は、素子の幾何学的寸法と密度ρ、及び材料に依存する弾性係数Sによって決まる。弾性係数はテンソルであり、一定の電界強度Eに対する圧電材料の応答を特徴づける。一般に、圧電クロス効果もしくは横効果、いわゆるd31効果の場合の共振周波数は、第一次近似において長さに間接的に比例する。図1に表された多層構造を有する、方向1の方向の延在寸法を有する素子に、次式があてはまる。
Figure 0005457442
ここで、Lmは機械的インダクタンス(機械インピーダンスの、電気インピーダンスのインダクタンス成分に対応する成分)、Cmは機械的キャパシタンスを表す。これらの量は素子の寸法と材料に依存するので、第一次近似にて更に次式が当てはまる。
Figure 0005457442
ここで、lは圧電素子の有効長、ρは圧電素子の密度、S11は弾性係数Sの対応する成分である。変数dは素子の厚みを与え、b及びbisoは有効幅と絶縁層の幅とをそれぞれ特定する。
直流電流が電極22もしくは21に印加されると、これらの電極の間に電界が生じ、圧電横効果により素子の長さが変化する。これはゼロでない成分S11に起因する。更に、圧電素子の成分S11も直流電圧にある程度依存し得る。こうして圧電素子の延在寸法もしくは弾性係数が、印加された直流電圧により変化する。この結果、圧電素子の固有の共振周波数fresもシフトする。第一次近似において、等式(2)は共振周波数fresが印加電圧Vの平方根に比例依存することを示している。
図1に記載の圧電素子1を調整するため、数十ボルトの範囲、好ましくは−40Vから+50Vの範囲の直流電圧が電極21,22に印加され得る。これにより有効長が変わり、それに伴って素子の共振周波数が変わる。こうして、印加直流電圧を適切に選択することにより、共振周波数を所望のように変化させ、やはり電極に加えられる制御電圧の加振周波数に合うよう調整することができる。
図2Aは二つの部分領域11,12を有するトランスデューサを備えた圧電素子の別な実施形態を示す。二つの部分領域は、図2の断面図にて、トランスデューサの長手軸に垂直な方向(鉛直方向)に延びる中立領域13によって離されている。トランスデューサは、第一部分領域11にある、第一導電面51’によって相互に結ばれた複数の第一電極21’を含む。トランスデューサは、第二部分領域12にある、面52’によって相互に結ばれた第二電極22’を含む。コンタクト要素31’,32’が各面上の電気接触部にそれぞれ接続されている。
第三電極23が、第一部分領域の第一電極21’間かつ第二部分領域の第二電極22’間に配置されている。第一部分領域の第一電極21’及び第二部分領域の第二電極22’はそれぞれ第三電極23から直流的に切り離されている。第三電極は中立領域13を通過しており、従って二つの部分領域11及び12を結んでいる。この実施形態では第三電極23は電気的浮遊状態で配置されており、素子の表面に接続されていない。
図2Bはこの実施形態に関して圧電素子1の上面を示す。ここにトランスデューサの第一,第二部分領域11,12の第一電極21’,第二電極22’の表面を見ることができる。第一電極21’は共通面51’によりコンタクト要素31’と結ばれている。対応して面52’は第二部分領域の電極22’に接触している。二つの電極21’,22’間の中立領域13に圧電層10を見ることができる。本実施形態に関して、図2Cは圧電素子の別な上面図を示しているが、これは第三電極23が延びている平面での圧電素子の上面図である。浮くように設計されたこの第三電極は、両端に配置された横方向面51’,52’から、従って第一、第二電極から直流的に切り離されている。
この構成のものの動作において、圧電素子は制御電圧により、加振周波数で振動するように加振される。これは、圧電素子の長手軸に垂直な方向の曲げ振動としても生じ得る。好ましくは同じ制御信号、特に同じ加振周波数をもつ制御信号が、第一部分領域11の第一電極21’及び第二部分領域12の第二電極22’に供給される。加振周波数が圧電素子の固有の共振周波数に一致しないと、多かれ少なかれここで減衰が生じる。これにより電力損失が増大し、素子の効率が下がる。固有の共振周波数を所望の加振周波数に調整するために、一実施形態では更に直流電圧が、二つの部分領域11,12の第一,第二電極に印加される。これにより圧電素子の幾何学的寸法、例えば長さが変化し、場合によっては弾性係数の成分が変化する。従って共振周波数もシフトする。
個々の電極21,22間の間隔及び圧電層10の厚みが小さいため、直流電圧から生じる電界の強度は非常に大きく、従って数十ボルトの範囲の低い直流電圧でも、空間的延在寸法もしくは弾性係数を大きく変えるのに十分なほど高い電界強度を達成できる。これにより低い直流電圧でも調整が可能である。
図8は、供給される直流電圧と共振周波数の変化との関係を明らかにするグラフを示す。この例で、測定対象の二つの圧電素子B1,B2は、300から316kHzまでの範囲の共振周波数を示している。図に示されているように、異なる圧電素子B1,B2の幾何学的寸法のわずかなばらつきが、異なる固有の共振周波数を生んでいる。例えば、素子B1,B2の固有の共振周波数は、直流電圧を印加しない状態で、307kHZから309kHの間でばらつく。
固有振動周波数の調整もしくは変更のため、追加の直流電圧が圧電素子の一方または両方に印加される。これによって共振周波数は、図8の線形近似が表すように、実質的に比例的に変化する。従って、幾何学的寸法のために所望の加振周波数とわずかに異なる共振周波数を持つ圧電素子を、直流電圧を印加することによって所望の加振周波数に調整することができる。更に、僅かに異なる共振周波数を持つ異なる圧電素子を、それぞれ適切な直流電圧を印加することにより、共通の共振周波数に調整することできる。
たとえば素子B1,B2を308kHzの共振周波数に調整しようとする場合、B1に直流電圧−5Vが、B2に直流電圧+5Vが印加される。
既に説明した圧電素子と並んで、圧電素子の更に別な多層構造も調整に適している。この関連で、図3A,3B及び図4A,4Bは可能な構成を示す。
図3Aにて、三つの異なる電極が代わる代わる上下に、数μmの範囲の厚みを持つ圧電層10によって相互に離されて、配置されている。第一電極21’は共通面51’によって相互に電気的に結ばれ、間にある電極22’,23’からは直流的に切り離されている。第二電極22’は第二導電面52’によって相互に結ばれている。第三電極23’は、図3Bの上面図に示されているように、圧電素子の長手面に沿って配置された共通面53’に連結されている。この構成により、所望の曲げ振動を達成し、かつ圧電素子をしかるべく調整するために、適切な直流もしくは制御電圧を異なる電極に印加することができる。例えば直流電位または直流電圧を面51’に印加し、交流電位または交流電圧を面52’に印加することもできる。電極23’は結合面53’により接地電位に接続され、接地されている。この素子も、別々に制御可能な部分領域に区分されていてもよいことは言うまでもない。
図4Aは主に電極の対称的配置を特徴とする更に別の実施形態を示す。この実施例では、四つの異なる電極21’至24’が代わる代わる上下に配置されている。第一電極21’は素子の一端に装着された面51’に、第二電極22’は他端に装着された面52’に連結されている。第三電極23’は面53’に、第四電極24’は面54’に連結されている。これら二つの追加の面53’、54’は、図4Bに示されているように、素子の長手方向に沿って配置されている。交流電圧及び直流電圧を、対応する面51’乃至54’経由で異なる電極に印加することができる。例えば加振周波数を有する制御電圧を面51’もしくは52’に印加し、同時に直流電圧を面53’及び54’経由で素子に供給することもできる。こうして交流電圧と直流電圧との分離が可能である。
更に、電極21’乃至24’間の異なる圧電層10の厚みは、異なるように選択されてもよい。これにより、制御電圧を印加して曲げ振動において高度なたわみを実現しつつ、低い直流電圧の印加で最大限の調整範囲を実現することができる。
提案した原理による圧電素子は複数の用途に用いられ、例えばアクチュエータとして用いられる。加振周波数を有する制御電圧を印加することにより圧電素子を振動させ、それを適切な機械的連結により伝達することができる。圧電モータ、圧電ポンプ、圧電トランス、または圧電膜をこのようにして実現することができる。
図5はアクチュエータとしての用途例を概略的に表している。この実施例では、二つの圧電素子61,62が、加振されるべき本体60に互いに90°をなして配置されている。90°ずらしたこの配置により、二つの空間方向の加振が可能である。更に各素子は二つのコンタクト要素63,66または65,67を有し、これらのコンタクト要素にて交流もしくは直流電圧を印加することが可能である。本体60への力の伝達は、例えば接着剤による二つの圧電素子61,62の固定的機械的連結を通じて行われる。この場合、直流電圧印加によるゆがみが、互いに打ち消されその結果本体60に生じないよう構成されており好ましい。これに対し、制御電圧印加によって引き起こされる曲げ振動は伝達される。
二つの圧電素子61,62は可能な限り等しい共振周波数を有する。しかしながら幾何学的寸法の僅かな許容誤差により、二つの圧電素子の固有の共振周波数は完全に同じではない。このため、共通の加振周波数で加振した場合、二つの素子の一方に強い減衰が生じ、この構成の全体としての効率が低下する。二つの圧電素子61,62の共振周波数を相互に一致させるために、適切な直流電圧が接触部63,66及び65,67に印加される。直流電圧は、一定だが可逆的でもある変形を圧電素子に引き起こして、圧電素子の共振周波数を僅かに変える。
図6は更に別な実施形態を示す。この実施形態では、膜4が二つの同一構成の圧電素子の間に配置されている。素子1及び1’は膜4の異なる側に取り付けられ、同じような幾何学特性を有する。しかしながら、素子の許容誤差のために幾何学的寸法に僅かなずれがあり、そのために二つの圧電素子1,1’もしくはトランスデューサの共振周波数は互いに僅かにずれている。
圧電素子1’は素子1と同様に構成されている。素子1は上下に配置された二つの導電トランスデューサ要素C1,C3を有する第一部分領域11を含む。第二部分領域12は、同様に、上下に配され相互に連結された二つの導電トランスデューサ要素C2,C4を含む。二つの部分領域のトランスデューサ要素C1,C2の領域の圧電層の厚みはD1である。トランスデューサ要素C3,C4は、トランスデューサ要素C1,C2に比べて小さい厚みD2の圧電層を有する。この実施形態では、トランスデューサ要素C1、C2は膜4に面している。
本体1の、膜4から離れた領域の、異なる極性の電極間の距離D2が小さいほど、部分領域11,12の圧電材料のより大きな振動振幅を達成できる。二つの部分領域11,12のトランスデューサ要素C3,C4の電極間の距離を、トランスデューサ要素C1,C2とは変えることにより、特に効率的な電気機械的トランスデューサを達成できる。二つの外表面51,52は適切な接触導体31,32によって外部と結ばれている。更に、二つのトランスデューサ要素C3,C4の共通電極23は、図中破線で示されている面53まで延ばされ、接触体33と導電的に結ばれている。トランスデューサの、二つの部分領域11,12の要素C1,C2の第四電極24は、面54と結ばれている。
作動時は、例えば、一つの加振周波数を持つ第一制御信号Vが、接触面54経由で共通電極24に印加されて、トランスデューサ要素C1及びC2に印加される。これと同じかまたは異なる加振周波数を持つ重畳のための第二制御信号Vが、接触体33経由でトランスデューサ要素C3,C4の共通電極23に印加される。直流成分を持つ更に別な制御信号が、好ましくは、互いに上下に配されたトランスデューサ要素の共通電極に供給可能である。詳細には、第三制御信号Vが、トランスデューサ要素C1,C3の第一電極21に印加され、第四制御信号Vが、二つのトランスデューサ要素C2,C4の第二電極22に印加される。本実施形態では、制御信号V,Vが直流電圧信号を表し、制御信号V,Vが加振周波数を持つ制御信号を含むが、別な実施形態では、それぞれの制御信号は、種々の形態に応じて、基準電位、直流電圧、制御電圧または重畳信号、もしくはこれらの組み合わせであってもよい。
二つの圧電素子1,1’を調整するために、対応して供給される直流電圧V,Vは、直流電圧の印加によって引き起こされる幾何学的変化により二つの素子の共振周波数が揃うように選択される。こうして、二つの圧電素子の固有の共振周波数が互いに合わせられる。減衰及び損失を極力抑えるため、制御電圧供給による加振は、調整された共振周波数に一致する加振周波数で起こることが好ましい。
図7は圧電素子の共振周波数を調整するための簡素な方法の概略図である。ここで多層構造のトランスデューサを有する圧電素子は、幾何学的パラメタと弾性係数に依存する固有の共振周波数で曲げ振動する。しかしながらここで、素子に依存する許容誤差のために、固有の共振周波数は所望の加振周波数とわずかに異なるため、加振を改善して減衰を抑えるために固有周波数を調整するのが好適である。
ステップS1にて圧電素子が用意され、次いでステップS2で、素子が調整されるべき周波数の加振周波数を持つ制御電圧が、素子に印加される。制御電圧は時間的に変化する電界を生じる。このため、素子は機械的に振動し始める。振動自体は、電界の方向、幾何学的特性、弾性係数に依存するが、電界に垂直に生じる長さの変化によって引き起こされる曲げ振動であることが好ましい。これは圧電横効果としても知られる。固有の共振周波数からの加振周波数fのずれにより、程度の差はあれ、減衰が生じる。これは例えば、振幅の減少や減衰の増大として現れるが、供給エネルギーの電力損失の増大によってもわかる。
次いでステップS3にて、該ずれの大きさを測るためのパラメタが記録される。このパラメタは例えば減衰、振動の振幅、時間的経過、または特定の振動振幅を達成するための供給エネルギーでもよい。
次いでステップS4にて、幾何学的変化または弾性係数の変化に通じる直流電圧が印加される。この結果、素子の内的な機械的キャパシタンスが変わり、その結果、共振周波数が変化する。
ステップS5にて、印加直流電圧に、ステップS2で既に印加されたと同じ制御電圧が重畳される。素子は新たに加振周波数で振動し始める。直流電圧の印加による共振周波数のシフトに依存して、変化せしめられる固有の共振周波数の加振周波数からのずれも変化する。ずれが小さくなれば、減衰も対応する程度抑えられ、つまり圧電素子の振動の振幅は対応して増大する。ずれを表すパラメタはステップS6で再び記録され、ステップS3で既に記録されている値と比較される。
ステップE1の比較の過程で、直流電圧の変更が改善、つまり変化せしめられる固有の共振周波数の加振周波数からのずれの縮小につながるという結果になれば、ステップS4で印加された直流電圧がステップS7で一時的に記憶される。次いで印加直流電圧が再び変更される。この変更は、更なる改善を達成すべく、印加直流電圧の極性を変えずに、同じ方向で行われる。ステップE1での比較がもはや改善をもたらさなくなるまで、方法ステップS4,S5,S6が必要なだけ繰り返される。
ステップE1での比較がもはや改善をもたらさなくなった場合、ステップS4乃至S6のループが既に数回実行されたかどうかが確認されなければならない。これはステップE3で確認される。
ループが既に数回実行されていれば、ステップS8で、これまでで最高の調整が達成された、つまり変化せしめられる固有の共振周波数の加振周波数からのずれが最小となった印加直流電圧の値が突き止められる。本方法はここで終了されてよい。
一方、ステップE1の比較により、直流電圧が最初にステップS4で印加された時点で既に、変化せしめられる固有の共振周波数の加振周波数からのずれが増大したことがわかると、比較ステップE3に従ってステップS8は飛ばされ、本方法は比較ステップE2に進む。このステップは、直流電圧印加に際して既に分極の変化が起きたかどうかを確認する。もし既に分極の変化が起きていれば、加振周波数と固有の共振周波数との間の最高の調整が既に達成されたと想定される。その場合本方法はステップS9にて終了する。これに対し、比較ステップE2で、今までに分極の変化は起きていないという結果であれば、印加直流電圧の極性が変更され、本方法は再びステップS4をもって続行される。
図7に提示された方法は、圧電素子の固有の共振周波数を所望の加振周波数に調整されるための簡素な実施形態を示している。この方法では、機械的キャパシタンスCが直流電圧の印加のために変わり、その結果圧電素子の固有の共振周波数も変わる。こうして、共振周波数は、多層構造の圧電素子の機械加工により、複雑な機械加工を必要とせずに粗調整させればよい。個々の素子の固有の共振周波数の微調整は、直流電圧を印加することによって行われる。これにより、共振周波数がわずかに異なる圧電素子の任意の構成を、互いに調整することができる。保障更に、圧電素子に対する外部パラメタの影響、例えば温度の影響を補償することができる。本方法は、複数の電極が薄い圧電層を用いて上下に配置された多層構造の圧電素子において特に有効である。これらの圧電層は、低い直流電圧もしくは制御電圧でも大きなずれを生じる数μmの範囲であってよい。これにより低い作動電圧と同時に高い共通効率をもつ、極めて小さいモータ、トランス、ラウドスピーカの配列を製造することが可能になる。
1 圧電素子
10 圧電層
11,12 部分領域
21,22,21’,22’ 電極
23,23’,24,24’ 電極
51,52 金属面
53,54 金属面
31,32,33,34 接触部
51,51’,52,52’ 金属面
53,54,53’,54’ 金属面
C1,C2,C3,C4 トランスデューサ要素
l 長さ

Claims (10)

  1. 三つの空間方向に延びるトランスデューサを含み、前記三つの空間方向のうちの少なくとも一つの方向の延在寸法、及び/または、材料に依存する弾性係数に依存する共振周波数を有する圧電素子(1)であって、該トランスデューサは、電気的に相互に結ばれた少なくとも二つの第一電極(21,21’,22’)と、該第一電極(21,22)の間に配置された少なくとも一つの第二電極(22,23,23’,24)とを備えた層構造を有する、圧電素子の共振周波数の調整方法であって、
    前記少なくとも二つの第一電極と少なくとも一つの第二電極(21,21’,22,22’,23,23’,24)とのうちの、少なくとも一つに、直流電圧(V3, V4)を印加して、前記三つの空間方向のうちの少なくとも一つの方向の延在寸法及び弾性係数の変化によって共振周波数を変化させる工程、及び
    前記少なくとも二つの第一電極と少なくとも一つの第二電極(21,21’,22,22’,23,23’,24)とのうちの、少なくとも一つに、前記変化した共振周波数と実質的に一致する加振周波数をもつ制御電圧(V1, V2)を印加して、振動を生成する工程
    を含み、
    前記少なくとも二つの第一電極は(21’,22’)は少なくとも一つの第三電極(21’)と一つの第四電極(22’)とを含み、前記の少なくとも一つの第二電極(23’,24’)は少なくとも一つの第五電極(23’)と一つの第六電極(24’)とを含み、第五電極(23’)は第三電極(21’)と第四電極(22’)との間に配置され、第四電極(22’)は第五電極(23’)と第六電極(24’)との間に配置され、
    前記制御電圧は第三及び第四電極(21’,22’)間に印加され、前記直流電圧は第五及び第六電極(23’,24’)間に印加されることを特徴とする方法
  2. 前記の印加される直流電圧によって生じる電界は、該電界によって引き起こされる前記三つの空間方向のうちの少なくとも一つの方向の延在寸法の変化に対して実質的に垂直であることを特徴とする請求項1に記載の方法。
  3. 前記層構造の隣接する二つの電極の相互の間隔が同じであることを特徴とする請求項1または2に記載の方法。
  4. 前記トランスデューサの前記層構造が、実質的に電界のない空間(13)によって隔てられた第一部分層構造(11)と第二部分層構造(12)とを含むことを特徴とする請求項1乃至のいずれかに記載の方法。
  5. 前記第一部分層構造(11)の電極と前記第二部分層構造(12)の電極が同一平面に配置されていることを特徴とする請求項に記載の方法。
  6. 前記トランスデューサが、電極(21,22,22’)の間に配置された、圧電特性を有するセラミックを含む圧電層(10)を含むことを特徴とする請求項1乃至のいずれかに記載の方法。
  7. 直流電圧を印加する工程が、
    前記少なくとも二つの第一電極及び少なくとも一つの第二電極のうちの少なくとも一つに、一つの加振周波数をもつ制御電圧を印加して振動を生成し、
    生成された振動に依存するパラメタを記録し、
    直流電圧を印加して共振周波数を変化させ、
    前記の加振周波数を有する前記制御電圧を印加し、
    前記の振動に依存するパラメタを再度記録し、
    前記記録されたパラメタ同士の比較に応じて前記印加される直流電圧を変更する
    ことを含むことを特徴とする請求項1乃至のいずれかに記載の方法。
  8. 前記パラメタが、
    生成される振動の振幅、
    トランスデューサのたわみ
    生成される振動の減衰、
    生成される振動の時間的経過、
    振幅の時間的変化
    供給される制御電圧から導出される電力損失
    のうちの少なくとも一つを含むことを特徴とする請求項に記載の方法。
  9. 直流電圧印加後、変化した共振周波数が記録され、該変化した共振周波数が、前記印加される制御電圧の加振周波数として用いられることを特徴とする請求項1乃至のいずれかに記載の方法。
  10. 生成される振動が、前記トランスデューサの長手方向に垂直な前記トランスデューサのたわみを伴う曲げ振動であることを特徴とする請求項1乃至のいずれかに記載の方法。
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