JP5457064B2 - 血中gip及び/又は血中インスリン上昇抑制剤 - Google Patents

血中gip及び/又は血中インスリン上昇抑制剤 Download PDF

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Description

本発明は、インスリンやGIP等の血中濃度を低減することができる血中GIP及び/又は血中インスリン上昇抑制剤等に関する。
Gastric inhibitory polypeptide(GIP)は、グルコース依存性インスリン分泌を増強する消化管ホルモンであり、摂食時、食餌中の脂質等によりその分泌が亢進されることが知られている。また、GIPは、胃酸分泌抑制作用や胃運動抑制作用を有することが知られている(非特許文献1〜3)ことから、血中GIPを低減する物質は、消化促進や胃もたれの改善に有用であると考えられる。そして、これまでの研究によって、GIPの機能を阻害する物質として、3−ブロモ−5−メチル−2−フェニルピラゾロ[1,5−a]ピリミジンー7−オール(BMPP)が知られ、血中GIP濃度を低減するものとして、グアガム等が知られている(特許文献1、非特許文献4〜9)。
しかしながら、BMPPは、in vivoにおけるGIP機能阻害効果が確認されておらず、またグアガムは脂質摂取時の血中GIP上昇抑制効果が検討されていないという問題があり、また、胃もたれ改善効果等の点で必ずしも十分なものとはいえない。
血糖が上昇すると膵臓の膵β細胞からインスリンが分泌され、脂肪・筋肉への糖の取り込みが促進され、脂肪組織・筋肉での脂肪合成の促進と、分解と燃焼の抑制が行われる。しかし、高血糖状態となり、インスリンの分泌が続くと、インスリンの標的臓器である骨格筋、肝臓、脂肪組織でのインスリンの感受性の低下(インスリン抵抗性)が生じ、さらに膵臓からインスリンがより多く分泌されるようになる。しかし、インスリン分泌が亢進しても、標的臓器はインスリン抵抗性を生じているため、高血糖状態が続く、という悪循環をたどる。
このようなインスリンの分泌が繰り返されると、最終的には膵臓が疲弊し、膵β細胞からのインスリンの分泌が低下するが、各標的臓器のインスリン抵抗性は増大したままの状態であり、高血糖状態となる。このようにインスリン作用機構がうまく機能しなくなると、結局、糖尿病等になりやすい体質になってしまうことや、糖尿病が悪化することが知られている。
一方、GIPの分泌が上昇すると、消化不良や胃もたれを引き起こすほか、インスリンの分泌を促進する要因にもなるため、やはりインスリン抵抗性や肥満等を引き起こすことが考えられる。
キチンには細胞免疫力賦活作用(非特許文献10)や、糞便中への脂質排泄促進(非特許文献11)、長期摂取による抗肥満作用(非特許文献11)が知られている。また、キチンの構造を変えることによって得られる効果としては、例えばキチンを分解して得られる低分子化キチンには抗肥満作用(特許文献2)、烏賊骨由来のβ―キチンを脱アセチル化したキトサンには血中コレステロール抑制作用や肥満改善作用が見出されている(特許文献3)。しかし、キチンによる血中GIPやインスリン等のホルモンの上昇抑制効果や、それに伴う糖尿病予防・改善効果は知られていない。
繊維幅がミクロン/ナノオーダーのキチンを食品として用いる例としては、ジオトリカム属菌から得られるキチン・キトサンがあげられる。この菌体から得られる繊維の繊維幅は平均5μm、長さ1,000μmである(特許文献4)。また、特表2002-536507では、セルロースやキチンなどのポリサッカライドから立体的/静電気的に微小繊維を誘導する方法と、それを用いたマヨネーズやドレッシングの組成物について言及しているが、誘導体化されたものであり、繊維幅に関する記載もない(特許文献5)。さらに、いずれも、GIPやインスリン、糖尿病に対する生理的作用は示されていない。
国際公開第01/87341号パンフレット 特許第2605300号公報 特許第3807464号公報 特開2007-159569号公報 特開2002-536507号公報
J.C.Brownら、Canadian J Physiol Pharmacol 47 : 113-114, 1969 J. M. Falkoら、J Clin Endocrinol Metab 41(2) : 260-265, 1975 織田敏次ら、消化管 機能と病態、1981年、中外医学社、P205−216 Gagenby S Jら、Diabet Med. 1996 Apr; 13(4):358-64 Ellis PRら、Br J Nutr. 1995 Oct;74(4):539-56 Simoes Nunes Cら、Reprod Nutr Dev. 1992;32(1):11-20 Morgan LMら、Br J Nutr. 1990 Jul;64(1):103-10 Requejo Fら、Diabet Med. 1990 Jul;7(6):515-20 Morganら、Br J Nutr. 1985 May;53(3):467-75 井上國世ら、機能性糖質素材の開発と食品への応用、2005年、シーエムシー出版、P387-393 Han, L.-Kら、International Journal of Obesity. 1999 ;23 (2):174-179 原ら、I綜合臨牀. 2008.7 ;57 (7):1094-1097
本発明は、インスリンやGIP等の血中濃度を低減できる血中GIP及び/又は血中インスリン上昇抑制剤を提供することを1つの課題とする。
本発明は、血糖を悪化させることなく血中インスリンを低減できる糖尿病予防・改善剤を提供することを他の課題とする。
本発明は、β−キチンナノファイバーを含む、経口投与剤、血中GIP(Gastric inhibitory polypeptide)上昇抑制剤、血中インスリン上昇抑制剤、糖尿病予防・改善剤を提供する。
本発明のβ−キチンナノファイバーを含む血中GIP及び/又は血中インスリン上昇抑制剤は、インスリンやGIP等の血中濃度を低減することができる。
本発明のβ−キチンナノファイバーを含む糖尿病予防・改善剤は、血糖を悪化させることなく血中インスリンを低減することができる。
実施例1におけるβ−キチンナノファイバーの血糖値への影響を説明するための図である。
<β−キチンナノファイバーの製造>
本発明で用いるβ−キチンナノファイバーは、β−キチンをpH5以下の酸性液体に浸漬する工程と、酸性液体に浸漬された状態で前記β−キチンを解繊処理する工程を有する製造方法により得ることができる。
まず、β−キチンをpH5以下の酸性液体に浸漬する工程について説明する。原料となるβ−キチンは、結晶化度が90%以下の精製β−キチンが好ましく、結晶化度が60〜85%のβ−キチンがより好ましい。この場合の結晶化度はX線回折パターンの20°のピーク強度をIaとし、15°の非晶部分のピーク強度をIbとして、(Ia-Ib)/Ia×100で表した結晶化度である。
前記精製β−キチンは、イカ由来のものであることが好ましく、特にイカの腱から得られるものが好ましい。
前記精製β−キチンとしては、下記のアルカリを用いて精製したアルカリ精製品又はアルカリ精製後にさらに酸精製をしたアルカリ精製−酸精製品を用いることができる。
アルカリ精製品は、β−キチンの粉砕品を0.1〜8mol/Lのアルカリ(例えば、水酸化ナトリウム)水溶液中に1〜100時間浸漬した後、メッシュ上で濾過し、メッシュ上のβ−キチンをイオン交換水で洗浄して得る。前記洗浄の目安は、洗浄液の導電率が0.5m/s以下になるまでが好ましい。
アルカリ精製−酸精製品は、上記方法で得られたアルカリ精製品を0.01〜5mol/Lの酸(例えば、塩酸)水溶液中に1〜100時間浸漬した後、メッシュ上で濾過し、メッシュ上のβ−キチンをイオン交換水で洗浄して得る。前記洗浄の目安は、洗浄液の導電率が0.5m/s以下になるまでが好ましい。
アルカリ精製−酸精製品に用いる酸は、特に制限はない。有機酸としてはギ酸、酢酸、クエン酸等を用いることができ、無機酸としては塩酸、硫酸、硝酸等を用いることができる。これらの酸は単独で用いても、混合して用いてもよい。
β-キチンをpH5以下の酸性液体に浸漬する工程に用いる酸性溶液は、有機酸、無機酸から選ばれる水溶液であるが、有機酸としてはギ酸、酢酸、クエン酸等を用いることができ、無機酸としては塩酸、硫酸、硝酸等を用いることができる。pH5以下の酸性液体であれば制限はなく、単独で用いても、混合して用いてもよい。本工程に用いる酸性液体としては、特に酢酸、塩酸が好ましい。
前記β−キチンを解繊処理する際の酸性溶液のpHは5以下であればよいが、pHは2〜4の範囲が好ましい。
β−キチンと酸性溶液の量比は特に制限されないが、酸性溶液中にβ−キチンが完全に浸漬された状態にすることが好ましく、後工程の解繊処理のしやすさも考慮して調整する。
酸性溶液の温度は特に制限されず、通常は室温(20〜25℃)でよいが、必要に応じて加温又は冷却してもよい。
次に、酸性溶液中に浸漬された状態で、前記β−キチンを解繊処理する工程について説明する。
解繊処理は、β−キチンに物理的な力を加えることにより、繊維を解くことができる方法であればよく、例えば、離解機、叩解機、低圧ホモジナイザー、高圧ホモジナイザー、グラインダー、カッターミル、ボールミル、ジェットミル、短軸押出機、2軸押出機、超音波攪拌機、家庭用ジューサーミキサー等を用いることができる。
解繊処理は、例えば、酸性溶液100g中に精製β−キチン0.5gを浸漬した状態にて、製造例1のホモジナイザーであれば、5000〜20000r/mで1〜30分間撹拌する程度よい。
この解繊処理により、幅2〜100nm、長さが500nm以上(好ましくは700nm以上)のβ−キチンナノファーバーを得ることができる。
上記の2つの工程を含む製造方法を適用した場合、次の理由により、β−キチンナノファーバーを得ることができるものと考えられる。
β−キチンをpH5以下の酸性液体に浸漬する工程により、β−キチンを構成するキチンナノフィブリルの表面に存在すると考えられるグルコサミンにプラスの電荷が付与され、これにより、キチンナノフィブリル間に荷電反発を生じさせる。そして、続く解繊工程においてβ−キチンを解繊することにより、容易にキチンナノフィブリル間の結合が解け、β−キチンナノファーバーが得られるものである。
このような製造方法で得られたβ−キチンナノファーバーは、元々キチン中に存在しているグルコサミンユニット部分が荷電されただけで、化学変性しておらず、医学的にも安全であると考えられる。
<β−キチンナノファイバーを含む血中GIP及び/又は血中インスリン上昇抑制剤と、β−キチンナノファイバーを含む糖尿病予防・改善剤>
以下、本発明の血中GIP及び/又は血中インスリン上昇抑制剤と糖尿病予防・改善剤について説明するが、以下においては、これらを総称して「本発明の薬剤」とすることがある。
本発明の薬剤は、有効成分として上記製造方法で得られたβ−キチンナノファイバーを含むものである。
「ナノファイバー」の直径(幅)は、サブミクロンオーダー(100〜10000nm)やそれ以上の直径(幅)を有する繊維のこともナノファイバーと呼んでいる例がある(谷岡明彦、繊維と工業、P129-130、59(4) 2003)が、本発明で用いるβ−キチンナノファイバーは、0.1質量%懸濁液に調製して、目開き16μmのガラスフィルター(25G P16,SHIBATA社製)で吸引ろ過したとき、前記懸濁液中に含まれているβ−キチンナノファイバーの1質量%以上がろ過されるものである。β−キチンナノファイバー同士が凝集している場合にはろ過され難くなるため、後述する実施例に記載した比較製造例1、2で得られたものは前記要件を満たさない。
本発明の薬剤に含まれるβ−キチンナノファイバーは、平均繊維幅が100nm以下のものが好ましく、より好ましくは2〜80nmのものであり、さらに好ましくは3〜60nmのものである。
本発明の薬剤に含まれるβ−キチンナノファイバーは、平均繊維長さが40000nm以下のものが好ましく、より好ましくは500〜30000nmのものであり、さらに好ましくは700〜20000nmのものである。
本発明の薬剤は、使用形態に応じて、錠剤状、顆粒状、粉末状、液状(懸濁液状)、ゲル状等の所望形態にすることができる。
錠剤状、顆粒状、粉末状等の固体状にする場合には、β−キチンナノファーバー単独でもよいし、食品や医薬品に使用できる賦形剤、結合剤、崩壊剤、滑沢剤、着色剤、矯味剤、矯臭剤等を配合し、所望の成形機(打錠機、顆粒製造機、噴霧乾燥機等)を用いて成形することができる。
液状(懸濁液状)にするときには、水のみを使用したものでもよいし、水と共に、食品に使用できる他の有機溶媒(例えば、エタノール)、界面活性剤水溶液、酸水溶液、塩基水溶液等との混合溶媒を使用したものでもよい。ゲル状にするときは、増粘剤等を添加配合することができる。
本発明のGIP及び/又はインスリン上昇抑制剤は、食事の前に、又は、食事と共に又は食後に摂取することが望ましく、β−キチンナノファーバーとしての摂取量は、体重1kg当たり、約0.002〜2g/日が好ましい。
本発明の糖尿病予防・改善剤は、食事の前に、又は、食事と共に又は食後に摂取することが望ましく、β−キチンナノファーバーとしての摂取量は、体重1kg当たり、約0.002〜2g/日が好ましい。
本発明の薬剤は、ヒト及び動物に投与することができる他、各種飲食品、医薬品、医薬部外品、ペットフード等に配合して摂取することができる。食品としては、ホルモン分泌抑制効果又は、糖尿病予防・改善効果をコンセプトとし、必要に応じてその旨を表示した機能性飲食品、病者用飲食品、特定保健用食品に応用できる。飲料の形態は特に限定されないが、例えば、果汁飲料、炭酸飲料、茶系飲料、乳飲料、アルコール飲料、清涼飲料等のあらゆる飲料に配合し、製造のために使用することが可能である。また、ゼリー状食品や各種スナック類、焼き菓子、ケーキ類、チョコレート、ガム、飴、タブレット、カプセル、スープ類等のあらゆる食品形態で配合し、製造のために使用することが可能である。
本発明の薬剤は、医薬品として錠剤及び粉末のような固形投薬形態、あるいはエリキシロール、シロップ及び懸濁液のような液体投薬形態で経口投与される。なお、経口用固形製剤を調剤する場合には、本発明の薬剤に、賦形剤、必要に応じて結合剤、崩壊剤、滑沢剤、着色剤、矯味剤、矯臭剤等を加えた後、常法により、錠剤、被覆錠剤、顆粒剤、散剤、カプセル剤等を製造することができる。また、経口用液体製剤を調製する場合には、矯味剤、緩衝剤、安定化剤等を加えて、常法により製造することができる。
また、本発明の薬剤は、適当量の栄養補給が困難な高齢者やベッドレスト状態の病者においては、経腸栄養剤等の栄養組成物の形態で投与される。
製造例1(β−キチンナノファイバーの製造)
(I)原料、精製剤
β−キチン:β−キチン粉砕品(製造会社:大日精化(株))
水酸化ナトリウム(1mol/l):市販品(製造会社:和光純薬工業(株)
塩酸(0.1mol/l):市販品(製造会社:関東化学(株))。
(II)製造手順
まず、上記のβ−キチン粉砕品30gを500gの1mol/lの水酸化ナトリウム中に24時間浸漬後、メッシュでろ過し、メッシュの上に残ったβ−キチン粉砕品を、イオン交換水を用いて、そのろ液の導電率が0.5ms/s以下になるまで十分洗浄し、β−キチンのアルカリ精製品を得た。
次に、β−キチンのアルカリ精製品0.5gとイオン交換水100gの懸濁液のpHを塩酸にて3.0に調整後、ホモジナイザー(エクセルオートホモジナイザー、(株)日本精機製作所)にて、5分間攪拌することにより、粉砕品の微細化処理を行い、β−キチンナノファイバーの半透明な懸濁液を得た。そして、最後に懸濁液のpHを6.5に調整した。得られたβ−キチンナノファイバーの平均繊維幅は54.5nm、平均繊維長さは19.1μm、懸濁液中のβ−キチンナノファイバー含有率は11.8%であった。
製造例2(β−キチンナノファイバーの製造)
製造例1で得られたβ−キチンのアルカリ精製品30gを500gの0.1mol/lの塩酸中に24時間浸漬後、メッシュでろ過し、メッシュの上に残ったβ−キチンアルカリ精製品を、イオン交換水を用いて、そのろ液の導電率が0.5ms/s以下になるまで十分洗浄し、β−キチンのアルカリ精製−酸精製品を得た。
次に、β−キチンのアルカリ精製−酸精製品0.5gとイオン交換水100gの懸濁液のpHを塩酸にて3.0に調整後、ホモジナイザー(エクセルオートホモジナイザー、(株)日本精機製作所)にて、5分間攪拌することにより、粉砕品の微細化処理を行い、β−キチンナノファイバーの半透明な懸濁液を得た。そして、最後に懸濁液のpHを6.5に調整した。得られたβ−キチンナノファイバーの平均繊維幅は51.9nm、平均繊維長さは14.8μm、懸濁液中のβ−キチンナノファイバー含有率は25%であった。
比較製造例1(β−キチン非ナノファイバーの製造)
製造例1で得られたβ−キチンナノファイバーの懸濁液を常温で約2ヶ月間保存し、経時凝集させた。得られたファイバーの平均繊維幅は160nm、平均繊維長さは54.2μmであり、製造例1のものの3倍程度あったことから、製造例1との対比からβ−キチン非ナノファイバーとした。懸濁液中のナノファイバー含有率は0%であった。
比較製造例2(β−キチン非ナノファイバーの製造)
製造例2で得られたβ−キチンナノファイバーの懸濁液を常温で約2ヶ月間保存し、経時凝集させた。得られたファイバーの平均繊維幅は152nm、平均繊維長さは49.5μmであり、製造例2のものの3倍程度あったことから、製造例2との対比からβ−キチン非ナノファイバーとした。懸濁液中のナノファイバー含有率は0%であった。
β−キチンナノファイバー及びβ−キチン非ナノファイバーの各物性の測定方法は以下の通りである。
(1)懸濁液の性質〔β−キチン懸濁液中のナノファイバーの質量分率(β−キチンナノファイバー含有率)(%)〕
β−キチン懸濁液を0.1質量%に調製して、その固形分濃度を精密測定した。続いて、そのβ−キチン懸濁液を目開き16μmのガラスフィルター(25G P16,SHIBATA社製)で吸引ろ過した後、ろ液の固形分濃度を精密測定した。ろ液の固形分濃度(C1)をろ過前の懸濁液の固形分濃度(C2)で除した(C1/C2)値をナノファイバー含有率(%)として算出した。
(2)ファイバーの形状
(2-1)平均繊維幅
β−キチンナノファイバーの平均繊維幅は、0.0001質量%に希釈した懸濁液をマイカ上に滴下して乾燥したものを観察試料として、原子間力顕微鏡(Nanoscope III Tapping mode AFM、Digital instrument社製,プローブはナノセンサーズ社製Point Probe(NCH)使用)で繊維高さを測定した。β−キチン繊維が確認できる画像において、5本以上抽出し、その繊維高さから平均繊維幅を求めた。
(2-2)平均繊維長さ
平均繊維長さは、β−キチンナノファイバーを水で希釈した希薄懸濁液(0.005〜0.04質量%)の粘度から算出した。粘度の測定には、レオメーター(MCR300、DG42(二重円筒)、PHYSICA社製)を用いて、20℃で測定した。β−キチンナノファイバーの質量濃度とβ−キチンナノファイバー懸濁液の水に対する比粘度の関係から、次式でβ−キチンナノファイバーのアスペクト比を逆算し、β−キチンナノファイバーの平均繊維長さとした。
Figure 0005457064
(The Theory of Polymer Dynamics, M.DOI and D.F.EDWARDS, CLARENDON PRESS・OXFORD,1986,P312に記載の剛直棒状分子の粘度式(8.138)を利用した(ここでは、剛直棒状分子=β−キチンナノファイバーとした)。(8.138)式と Lb2×ρ0=M/NAの関係から数式1が導出される。ここで、ηspは比粘度、πは円周率、lnは自然対数、Pはアスペクト比(L/b)、γ=0.8、ρsは分散媒の密度(kg/m3)、ρ0はβ−キチンナノファイバー結晶の密度(kg/m3)を1.5とし、Cはβ−キチンナノファイバーの質量濃度(C=ρ/ρs)、Lは繊維長、bは繊維幅(β−キチンナノファイバー断面は正方形とする)、ρはβ−キチンナノファイバーの濃度(kg/m3)、Mは分子量、NAはアボガドロ数を表す)。
実施例1 β−キチンナノファイバーの血中インスリン、血中GIP、血糖値への影響
β−キチンナノファイバーを血中GIP及び/又は後血中インスリン上昇抑制剤として提供した場合のGIPとインスリンの上昇抑制効果を試験した。
1-1 試験試料
試験試料として、製造例1及び製造例2のβ−キチンナノファイバーを用いた。
1-2 試験動物
7週齢の雄性マウスC57BL/6J Jcl(日本クレア)を用いた。各群N=4とした。
1-3 投与サンプルの調製と投与量
グルコース(関東化学製)とトリオレイン(Glyceryl trioleate:Sigma製)をレシチン(卵製)(和光純薬製)とアルブミン(ウシ血清由来)(Sigma製)を用いて乳化し、乳液を調製した。この乳液をコントロールとし、本発明のβ−キチンナノファイバーを添加し、胃内投与サンプルを調製した。動物に対する投与量は表1のとおりである。
Figure 0005457064
1-4 胃内投与試験(血糖、血中インスリン、血中GIP測定)
16時間絶食させたマウスをエ−テル麻酔下、眼窩静脈よりヘパリン処理ヘマトクリット毛細管(VITREX製)を用い、初期採血を行った。その後、試験試料を経口ゾンデ針にて経口的に胃内投与し、10分、30分、1時間、2時間後にエーテル麻酔下、眼窩静脈より採血を行った。
採血後、血液の一部を用いてすみやかに血糖簡易測定器(グルコースデヒドロゲナーゼ/電位差測定法、ロシュ・ダイアノグスティック社製)を用いて血糖値を測定した。ヘパリン処理ヘマトクリット毛細管で採取した血液は、血漿分離まで氷冷下で保存後、11000rpmにて5分間遠心分離し、血漿を得た。得られた血漿から、GIP、インスリンを測定した。
血中GIP濃度の測定は、Rat/Mouse GIP(Total)ELISA キット(Linco Research/Millipore co.製、ELISA法)、血中インスリン濃度の測定はインスリン測定キット(森永生化学研究所製、ELISA法)を用いて測定した。
1-5 結果
サンプル投与後の最大血中GIP値及び最大血中インスリン値(血中GIP、血中インスリンともに最大値は10分値)と初期値より、その差(Δ10分値)を算出し、表2、表3に示した。群間の統計学的有意差については、コントロール投与群に対するt検定(両側検定)を行い、有意水準10%未満の場合にはP値、10%以上の場合にはN.S.(Non-Significant)を表記した。
Figure 0005457064
Figure 0005457064
表2、表3の結果から、本発明品のβ-キチンナノファイバー投与群は、コントロール投与群に比べて食後の最大GIP値(Δ10分値)及び最大インスリン値(Δ10分値)が低かった。この結果から、本発明品のβ-キチンナノファイバーは、血中GIPの上昇抑制、血中インスリンの上昇抑制効果を有することが分かった。
また、投与後血糖値の経時変化を図1に示した。製造例1、2のβ-キチンナノファイバー投与群は、いずれも、コントロール投与群に比べ、血糖値の顕著な上昇は認められなかった。
インスリンは血糖値を下げるホルモンであることから、血中インスリンを低減することは、血糖値が大幅に上がってしまうことが懸念される。しかしながら、図1に示すように、製造例1、2のβ-キチンナノファイバー投与群は、コントロール投与後とほぼ同程度の血糖値変化を示したことから、本発明品は血糖を悪化させることなく血中インスリンを低減できることが明らかとなった。
インスリン分泌亢進は、インスリン抵抗性(インスリン感受性低下)や、さらには膵臓のβ細胞(インスリン分泌細胞)の疲弊をまねき、糖尿病の進行の一因と考えられている。また、食後の高血糖は、糖尿病の合併症である血管系疾病のリスクを増大させることが、多くの疫学調査で明らかになっている(非特許文献12)。
本発明品は、食後の血糖を悪化させることなく、インスリン分泌を低減しており、糖尿病の予防・改善にも有効であると考えられる。
比較例1 β−キチン非ナノファイバーの血中インスリン、血中GIPへの影響
β−キチン非ナノファイバーを血中GIP及び/又は血中インスリン上昇抑制剤として提供した場合のGIPとインスリンの上昇抑制効果を試験した。
1-1 比較試験試料
比較製造例1及び比較製造例2のβ−キチン非ナノファイバーを用いた。
1-2 試験動物
8週齢の雄性マウスC57BL/6J Jcl(日本クレア)を用いた。各群N=4とした。
1-3 投与サンプルの調製と投与量
実施例1に示す調製方法と全く同様に、β−キチン非ナノファイバーの胃内投与サンプルを調製した。動物に対する投与量は実施例1の1-3(表1)と同様で、β−キチンナノファイバーをβ−キチン非ナノファイバーに置き換えた量とした。
1-4 胃内投与試験(血中インスリン、血中GIP測定)
実施例1の1-4に示す胃内投与試験方法と全く同様に、動物に比較試験試料を投与し、血中インスリン、血中GIP測定を測定した。
1-5 結果
結果の集計方法は、実施例1の1-5に示した手法と全く同じ手法で、集計及び統計解析を行った。
Figure 0005457064
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表4、表5の結果から、比較例1のβ-キチン非ナノファイバー投与群の食後の最大GIP値(Δ10分値)及び最大インスリン値(Δ10分値)は、コントロール投与群と差がなかった。この結果から、β-キチン非ナノファイバーには、血中GIP低減、血中インスリン上昇抑制効果はなく、本発明品のβ-キチンナノファイバーにのみ得られる効果であると考えられた。

Claims (3)

  1. 平均繊維幅が100nm以下であるβ−キチンナノファイバーを含む血中GIP(Gastric inhibitory polypeptide)上昇抑制剤。
  2. 平均繊維幅が100nm以下であるβ−キチンナノファイバーを含む血中インスリン上昇抑制剤。
  3. 平均繊維幅が100nm以下であるβ−キチンナノファイバーを含む糖尿病予防・改善剤。
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