JP5455219B2 - 軟骨細胞表現型の安定性の確認および軟骨生成に影響を及ぼす因子のスクリーニングにおける使用のためのマーカー遺伝子 - Google Patents

軟骨細胞表現型の安定性の確認および軟骨生成に影響を及ぼす因子のスクリーニングにおける使用のためのマーカー遺伝子 Download PDF

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Description

発明の分野
本発明は、軟骨細胞表現型の安定性を調べるための方法およびツール、ならびに軟骨欠損および軟骨関連疾患の処置に有用な化合物を特定するためのスクリーニングシステムに関する。
背景
軟骨欠損の修復は、主に、外科的方法(骨髄刺激術など)、または軟骨形成性細胞(軟骨細胞、その(軟骨)前駆細胞(progenitor)および一過性細胞(precursor)もしくは軟骨に発達する幹細胞)の移植によって行なわれる。これに鑑みると、インビボ軟骨形成に正に影響を及ぼし得る因子の特定は重要である。実際、欠損部内または欠損部近傍に存在する局所細胞によって媒介される軟骨形成に正に影響を及ぼし得る外科処置または治療法もしくは治療用化合物が特定されることが望ましい。また、細胞系療法剤は、拡大培養または継代培養された単離細胞集団がインビボで安定な軟骨を生成する能力に正に影響を及ぼし得る因子または処置が、インビトロで特定されるものであることが重要である。
軟骨形成に関与している遺伝子の発現を化合物のスクリーニングのパラメータとして使用する種々のアッセイが報告されている。US2002061514には、レポーター遺伝子が転写因子SOX9に応答性である方法が記載されている。SOX9は、軟骨細胞、軟骨前駆細胞および他の組織において発現される高移動度群(HMG)ドメイン転写因子であり、軟骨細胞の分化と軟骨形成に不可欠であることがわかっている。他に、軟骨代謝と骨軟骨欠損に関与している個々の遺伝子の発現レベルに基づいた方法がある[例えば、WO02081745の骨粗鬆症関連遺伝子]。
また、軟骨への細胞のインビトロ分化に基づいたスクリーニング方法が報告されている。しかしながら、かかるモデルの予測値は限定的であることがわかっており、このようなアッセイには大量の細胞が必要とされ、時間もかかる。
WO200466723には、ゼブラフィッシュでの骨および軟骨の形成に対する化合物の効果をインビボで評価したインビボモデルが示されている。細胞が安定な軟骨を形成する能力を評価するための最も信頼性のあるモデルの一例は、ヌードマウスに細胞を筋肉内移植した後、生成した移植組織の組織学的評価を行なうものである。本来時間がかかり、ハイスループットスクリーニングに非実用的であるこのヌードマウスモデルの使用は、WO0124833に開示された手法の使用により回避された。この特許出願には、軟骨形成のヌードマウスモデルに基づいて特定された分子マーカーを使用し、拡大培養または継代培養された移植目的の細胞の軟骨形成潜在能を評価することが記載されている。同様に、軟骨細胞表現型の安定性に関する適当なマーカーのセットが、US2003235813に記載されている。しかしながら、これらのマーカーの特定により、インビボで安定な硝子軟骨を生成し得る細胞集団を特定する基準は得られたが、依然として、さらなる改善の必要性が存在する。
発明の概要
本発明は、任意の所与の状況において、すなわち細胞にとって天然であれ誘発された状態であれ、軟骨形成を示す特異的マーカープロファイルを提供するという新規な概念に基づくものであり、これは、軟骨形成に影響を及ぼし得る因子の特定における標的プロファイルとみなされ得る。
したがって、本発明は、細胞集団の軟骨形成潜在能を予測するために、信頼性をもって使用され得るマーカーのセットを提供する。このようなマーカーの発現レベルを用いて、細胞集団(例えばインビトロまたはインビボ)が移植または刺激されたときにインビボで軟骨を生成し得るか否かが予測され得る。これは、細胞集団の治療的潜在能を判定するのに重要である。また、該マーカーのセットにより、移植前に、細胞集団の軟骨細胞表現型の安定性に対する所与の処置の影響を調べるための信頼性のあるツールが提供される。さらに、本発明は、関節の幹細胞または骨軟骨細胞を投与すること、および投与された細胞集団の軟骨形成潜在能に影響を及ぼす医薬を投与することを含む併用処置レジメン(regime)を提供する。
本発明によれば、インビトロでの細胞集団の表現型安定性を、インビトロおよび/またはインビボでの軟骨細胞表現型の安定性に影響を及ぼし得る因子の特定のためのスクリーニングアッセイで使用する。本発明は、軟骨細胞表現型の安定性を示すマーカーのセットを提供し、その発現を、細胞集団がインビボで軟骨を生成する能力に対する化合物および/または条件のインビトロまたはインビボでの効果を予測するために使用する。このようなマーカーをスクリーニングアッセイで使用することにより、時間と労力を要する動物実験を行なうことなく、軟骨細胞に対する多数の化合物および/または条件のスクリーニングが可能になる。
本発明の一態様では、細胞集団が安定な硝子軟骨を生成する能力を調べるための方法を提供する。より具体的には、細胞集団がインビボで安定な硝子軟骨を生成する能力をインビトロで調べるための方法を提供する。特定の実施形態では、細胞集団によるFRZBと、ALK1と、PEDF、COL11、COL2、FGFR3、OPN、BMP−2およびRASF−PLAからなる群より選択される1つ以上のマーカーとを含む少なくとも3つのマーカー遺伝子のセットの発現を調べることを含む方法を提供する。
本明細書において提供する方法の特定の実施形態では、細胞集団を化合物または条件と接触させる。
特定の実施形態では、細胞集団を化合物または条件と接触させる工程、および該細胞集団におけるFRZBと、ALK1と、PEDF、COL11、COL2、FGFR3、OPN、BMP−2およびRASF−PLAからなる群より選択される1つ以上のマーカー遺伝子とを含む少なくとも3つのマーカー遺伝子のセットの発現レベルを測定する工程を含む方法を提供する。この方法では、該少なくとも3つのマーカーの組の発現レベルにより、該細胞が、例えば患者に移植されたときにインビボで安定な硝子軟骨を生成する能力が示される。
本明細書に記載の方法のさらなる実施形態は、細胞集団を化合物または条件と接触させる工程の前に該細胞集団における該少なくとも3つのマーカー遺伝子のセットの発現レベルを測定する工程、および該接触させる工程の後に、該化合物または条件の存在が、該細胞集団における該少なくとも3つのマーカー遺伝子の組の中の1つ以上の発現に影響を及ぼすか否かを判定する工程を含むものである。より具体的には、該細胞集団における該少なくとも3つのマーカー遺伝子のセットの発現に対する該化合物または条件の存在の効果に基づいて、該細胞集団がインビボで安定な硝子軟骨を生成する能力に対する該化合物ま
たは条件の効果を判定することを含む方法を提供する。本明細書に記載の方法の特定の実施形態では、FRZB、COL11、COL2、FGFR3、OPN、BMP−2およびRASF−PLAからなる群より選択される1つ以上の陽性マーカー遺伝子の発現を増大させ得る化合物または条件は、軟骨形成に正に影響を及ぼすと特定され、PEDFおよび/またはALK−1のいずれかの発現を増大させ得る化合物は軟骨形成に負に影響を及ぼすと特定される(より具体的には、細胞がインビボで安定な硝子軟骨を生成する能力)。
本明細書に記載の方法のさらなる特定の実施形態では、該マーカーの組は、FRZBと、ALK1と、それぞれPEDF、COL11、COL2およびFGFR3からなる群より選択される2つ、3つおよび4つのマーカー遺伝子とを含む少なくとも4つ、5つまたは6つのマーカー遺伝子のセットである。本明細書に記載の方法のより特定的な実施形態は、マーカー遺伝子がFRZB、ALK1、PEDF、COL11、COL2およびFGFR3を含む少なくとも6つのマーカー遺伝子のセットである方法に関する。
本明細書に記載の方法の特定の実施形態では、化合物または条件が軟骨形成に影響を及ぼす能力が、該少なくとも3つのマーカー遺伝子のセットの発現に対する該化合物または条件の累加効果に基づいて測定される。より具体的には、FRZB、COL11、COL2、FGFR3、OPN、BMP−2およびRASF−PLAからなる群より選択される陽性マーカー遺伝子の発現に対する化合物または条件の累加効果と、陰性マーカー遺伝子PEDFおよび/またはALK−1の発現に対する該化合物または条件の累加効果によって、該化合物または条件が細胞集団の軟骨細胞表現型の安定性に影響を及ぼす能力が示される。
本明細書に記載の方法の特定の実施形態では、細胞集団は関節から採取されたものである。細胞集団は、健常ドナーまたは骨軟骨欠損を有する個体から採取されたものである。特定のアッセイでは、両方の型の細胞に対する化合物または条件の効果が想定される。本明細書に記載の方法の特定の実施形態では、該マーカーの1つ以上の発現レベルを、定量的方法を用いて測定する。
本発明のさらなる態様は、細胞、より具体的には軟骨細胞または軟骨細胞の一過性細胞がインビボで軟骨を生成する能力に影響を及ぼし得る化合物を特定するためのマーカーのセットの使用に関する。特定の実施形態では、該使用は、マーカーのセットがFRZBと、ALK1と、PEDF、COL11、COL2、FGFR3、OPN、BMP−2およびRASF−PLAからなる群より選択される1つ以上のマーカーとを含む少なくとも3つのマーカー遺伝子のセットを含むことを特徴とする。特定の実施形態では、該使用は、FRZB、ALK1、PEDF、COL11、COL2およびFGFR3を含む少なくとも6つのマーカー遺伝子のセットを伴う。
本発明のさらなる態様は、軟骨形成性細胞における遺伝子のセットの発現を検出するためのプローブを備えるキットであって、該遺伝子のセットが、FRZBと、ALK1と、PEDF、COL11、COL2、FGFR3、OPN、BMP−2およびRASF−PLAからなる群より選択される1つ以上のマーカーとを含む少なくとも3つのマーカー遺伝子のセットを含むキットを提供する。
特定の実施形態では、マーカー遺伝子のセットが、FRZB、ALK1、PEDF、COL11、COL2およびFGFR3を含む少なくとも6つのマーカー遺伝子のセットであるキットを提供する。
本明細書において提供するキットの特定の実施形態は、プローブがmRNAとハイブリダイズするオリゴヌクレオチドであるキット、プローブが抗体であるキットおよび/また
はプローブが試験対象のマーカーに特異的なPCRプライマーのセットであるキットである。種々の型のプローブを備えるキットも想定される。キットのさらなる特定の実施形態では、標識されたプローブが提供される。
本発明のまたさらなる態様は、細胞における、より具体的には、典型的に軟骨形成を行ない得る細胞における遺伝子のセットの発現を検出するためのデバイスを提供する。かかるデバイスの特定の実施形態には、下記の構成要素:マーカー遺伝子の発現を検出するためのユニット、ならびにFRZBと、ALK1と、PEDF、COL11、COL2、FGFR3、OPN、BMP−2およびRASF−PLAからなる群より選択される1つ以上のマーカーとを含む少なくとも3つのマーカー遺伝子のセットに対するプローブの1つ以上が提供される。本明細書に記載のデバイスの特定の実施形態は、細胞集団によるマーカー遺伝子のセットの発現を検出するのに特に適したデバイスであって、該マーカー遺伝子のセットがFRZB、ALK1、PEDF、COL11、COL2およびFGFR3を含む少なくとも6つのマーカー遺伝子のセットであるデバイスである。
図1は、軟骨形成潜在能スコアに対する組織学的検査スコアの散布図を示す(各点は、点同士が重なるのを回避するため、移動させてある(量と方向は無作為でわずか))。 図2は、P0からP3まで単層で培養されたヒト軟骨細胞において、リアルタイム定量的PCRで測定したときの累加マーカースコア(実施例1で測定したCCスコア)に対する化合物Aの効果を示す。結果を、コントロール(DMSO)と比べた平均累加マーカースコアで示す。は、DMSOコントロールと比較したときp<0.05(n=4)。 図3は、リアルタイム定量的PCRで測定したときの、単層で培養されたヒトP3軟骨細胞の軟骨形成潜在能と正に相関する分子マーカーCOL2(A)、COL11(B)、FRZB(C)およびFGFR3(D)の発現に対する化合物Aの効果を示す。結果を、DMSOコントロールと比べた標的遺伝子発現で示す(2−deltadeltaCTで測定)。は、DMSO対照と比較したときp<0.05(n=4)。 図4は、リアルタイム定量的PCRで測定したときの、単層で培養されたヒトP3軟骨細胞の軟骨形成潜在能と負に相関する分子マーカーPEDF(A)およびALK1(B)の発現に対する化合物Aの効果を示す。結果を、DMSOコントロールと比べた標的遺伝子発現で示す(2−deltadeltaCTで測定)。は、DMSOコントロールと比較したときp<0.05(n=4)。
発明の詳細な説明
定義
用語「軟骨形成性(の)」は、細胞または集団に適用される場合、該細胞または集団が適切な状況下で軟骨を生成するか、または軟骨成長を刺激する固有の能力をいう。
「軟骨形成性化合物」は、本明細書で用いる場合、安定な軟骨細胞表現型を誘導する化合物および/または軟骨形成を促進する化合物をいう。
用語「軟骨細胞表現型の安定性」または「軟骨形成潜在能」は、細胞集団に言及している場合、該細胞集団がインビボで軟骨を生成する能力をいう。この能力は、細胞集団の一部(少なくとも約1〜20×10細胞)を免疫不全マウスなどの哺乳動物(インビボ)に(異所)注射し、血管浸潤、鉱化作用または骨もしくは線維組織による置換の徴候なく、軟骨移植組織の発生を(約3週間の時間枠で)調べることにより試験され得る。あるいはまた、細胞集団の一部(少なくとも約1〜20×10細胞/cm)を、生体適合性
マトリックス上に播種するか、またはその内部に封入し、皮下に約6〜8週間皮下移植した後、血管浸潤または軟骨内性骨形成の徴候のない安定な軟骨移植組織の発生を調べてもよい。本発明によれば、インビボで安定な硝子軟骨を生成し得る細胞集団は、本明細書に記載の表現型安定性の特定のマーカーの組合せの存在を特徴とする。軟骨細胞表現型の安定性は、継代培養すると成熟軟骨細胞において徐々に失われる。
用語「新鮮単離細胞」(FI)は、本明細書で用いる場合、組織消化後の生検材料から得た細胞集団をいう。したがって、用語「新鮮単離軟骨細胞」は、本明細書で用いる場合、継代培養せずに、消化によって軟骨などの軟骨細胞含有組織から直接得た細胞集団をいう。
用語「拡大培養された」は、軟骨などの組織から得た細胞集団に言及している場合、該細胞集団が、増殖によって細胞数が増加する条件下に置かれていたことを示す。最も単純な形態では、拡大培養は、細胞集団を、適切な培養培地を入れた培養容器内に、任意選択でコンフルエンシーまで供給することにより行われる。新鮮単離細胞の拡大培養の結果得られた集団をP0と称する。
用語「継代培養された」は、拡大培養された細胞であって、拡大培養後、培養容器から酵素的、化学的および/または物理的方法を用いて回収され、より低密度で別の培養容器に入れられた細胞をいう。継代培養細胞は、その継代培養回数(P1、P2など)、その培養期間、あるいはまたその集団倍加(PD1、PD2など)によって呼称される。
用語「軟骨欠損」は、本明細書で用いる場合、軟骨または軟骨の任意の疾患部分の減損または損傷に起因する任意の状態をいう。
用語「マーカースコア」は、そのままで用いて、本発明によるマーカーの発現に帰属させ得る数値を示す。「累加マーカースコア」は、本発明のマーカーの組の種々のマーカーのマーカースコアの組合せをいう。これは、個々のマーカーの合計の結果であってもよい。あるいはまた、累加マーカースコアには、軟骨細胞表現型の安定性の予測能における各マーカーの寄与の違いが考慮され、したがって、より複雑な数式に基づくものである。
用語「組織学的検査スコア」は、組織学的解析(例えば、軟骨なし、線維軟骨、硝子軟骨)に基づいた軟骨に帰属させた定性値または半定性値をいう。
本出願書類の本文中で遺伝子に対して使用する略語は、
FRZB:Frizzled関連タンパク質1[OMIM 605083、Genbank U91903]
ALK1:アクチビンA受容体、II型様キナーゼ1[OMIM 601284、Genbank Z22533]
PEDF:色素上皮由来因子[OMIM 172860、Genbank M76979]
COL11:コラーゲン、XI型A1[OMIM 120280、Genbank J04177]
COL2:コラーゲン、II型、α1[OMIM 120140、Genbank L10347]
FGFR3:線維芽細胞増殖因子受容体3[OMIM 134934、Genbank
M58051]
BMP−2:骨形成タンパク質2[OMIM 112261、Genbank M22489]
RASF−PLA2:ホスホリパーゼA2、IIA群[OMIM 172411、Ge
nbank M22430]
OPN:オステオポンチン[OMIM 166490、Genbank X13694]
である。
本発明は、その発現が細胞のインビボでの軟骨形成能力を示すことがわかっている選択したマーカー遺伝子のセットの特定に基づく。より詳しくは、このようなマーカーの各々に値を帰属させることにより、累加マーカースコアで示され得る累加値が、細胞集団が表現型の安定な軟骨をインビボで生成する能力を反映することが測定された。
本発明において細胞集団が軟骨形成を確実に行なう能力の評価に有用であると特定されたマーカー遺伝子は、陽性マーカー遺伝子FRZB、COL11、COL2、FGFR3、BMP−2、RASF−PLA2およびOPNならびに陰性マーカー遺伝子ALK1およびPEDFを含む群から選択される。この組に、例えば、コントロールなどのさらなるマーカーを含めてもよい。
したがって、本発明により、陽性マーカーと陰性マーカーの両方を含む9個のマーカーのセットが特定された。陽性マーカーは、インビボで安定な硝子軟骨を生成し得る集団によって強く発現され、一方、陰性マーカーは、安定な硝子軟骨を生成し得る集団によって低いレベルで発現されるか、または該集団によって発現されない。本発明によれば、陰性マーカーの発現の非存在は、陽性マーカーとしての機能を果たし得る。しかしながら、本発明との関連において、本明細書では、その発現の非存在が軟骨細胞の表現型安定能を示すかかるマーカーを陰性マーカーと称する。
本発明のマーカー遺伝子の発現は、典型的にはおよそ0.2×10〜1.0×10細胞からなる細胞集団に特徴的な特徴である。
種々の遺伝子発現測定方法が当該技術分野で知られている。最も典型的には、本発明によれば、RNAを細胞集団の一部(典型的には、0.2×10〜1.0×10細胞、好ましくは0.2×10〜1×10)から単離し、逆PCRを用いて増幅する。かかる増幅は、半定量的様式にて、増幅断片の電気泳動およびハウスキーピング遺伝子(β−アクチンなど)と比較したその相対強度の測定によって行われ得る。しかしながら、より少ない量の細胞、さらには個々の細胞で、ヌクレオチド増幅手法を使用し、細胞の発現について解析を行なってもよい。さらにあるいは代替的に、DNAの量が、定量的様式にて、例えばTaqman手法を用いて測定される。本出願書類に記載のマーカーに適したプライマーは、該マーカー遺伝子の既知配列に基づき、当業者によって容易に特定され得る。
代替的にまたはさらに、該マーカーの発現をタンパク質レベルで測定する。タンパク質レベルは、ウエスタンブロットまたはELISAなどの免疫学的方法によって測定され得る。
本発明の特定の実施形態では、マーカーの発現は、マイクロアレイ手法または1Dもしくは2Dタンパク質電気泳動後の解析などにより、コントロール集団と実験集団においてマーカーの発現を比較することによって評価される。この場合、マーカータンパク質は、そのMr(1D)や等電点(IEP)(2D)に従ってゲル内を泳動する。タンパク質レベルでの発現の差異は、そのMrおよび/またはIEPに対応する位置に存在するタンパク質の量を検出することにより測定され得る。タンパク質は、クマシーブリリアントブルーでの染色もしくは同等の染色後に定量され得るか、または放射性代謝性標識(例えば、35Sメチオニン)を組み込むことにより定量され得る。
使用する手法に応じて、抗体、オリゴヌクレオチドプローブまたはタンパク質プローブ(抗体など)が、例えば、発色性または磁性または放射性標識により、発現の検出が可能となるように標識され得る。
特定の実施形態では、種々のマーカーを異なる手法で検出することが想定される。例えば、いくつかのマーカーをELISAによって検出し、他をPCRによって検出する。
本発明のさらなる態様は、本発明のマーカーの検出に適したデバイスを提供する。特定の実施形態では、かかるデバイスは、本発明のマーカーを(DNA、RNAまたはタンパク質レベルで)直接または間接的に検出するためのユニットを備えている。該ユニットは、RNA、DNAのハイブリダイゼーションに基づいたもの、または免疫学的検出に基づいたものであり得る。かかるユニットは、(定量的)PCR装置、免疫学的アッセイを行なうためのデバイス、またはタンパク質を測定するためのデバイス(例えば、HPLC、質量分析計、電気泳動装置)であり得るが、(使い捨て)マイクロアレイデバイスまたはチップであってもよい。かかるユニットは、適用可能な場合は、本発明のマーカー遺伝子またはタンパク質を検出するためのプローブまたは抗体を備えている。任意選択で、かかるデバイスはさらに、2種類以上の細胞集団を同一または異なる条件(例えば、密度、継代培養回数、培地組成)下で培養することができる細胞培養ユニットを備えていてもよい。さらに、本発明のデバイスは、1種類以上の試験化合物を細胞培養ユニットに送達するためのユニットを備えていてもよい(該送達は、量または時間プロファイルが個々に異なってもよい)。最後に、該デバイスは、細胞を収集して細胞内物質(DNA、RNA、タンパク質)を単離するためのユニットを備えていてもよい。
また、本明細書に記載のマーカーに対するプローブまたは特異的試薬を備えた使い捨てカートリッジも想定され、これは、細胞集団の状態の迅速かつ効率的な測定のために測定するために、このようなマーカーの発現を、使用され得る。したがって、本発明では自動化されたデバイスが想定され、これは任意選択で使い捨てカートリッジと併用され、これにより、インビボまたはインビトロ用途に用いられる細胞の効率的な品質管理が可能になる。
本発明の特定の実施形態によれば、特定されたマーカー遺伝子のサブセットが提供され、これにより、細胞集団の軟骨細胞表現型の安定性の信頼性のある評価、および化合物または条件が細胞集団によるインビボでの軟骨形成に影響を及ぼす能力の信頼性のある評価が可能になる。最も具体的には、適当なマーカー遺伝子の組は、少なくとも3つ、より具体的には少なくとも4つ、さらにより具体的には少なくとも5つ、最も具体的には少なくとも6つの該特定されたマーカー遺伝子を含む。一実施形態によれば、適当なマーカー遺伝子のセットは、少なくとも1つの陽性マーカー遺伝子と1つの陰性マーカー遺伝子を含む。
一般に、考慮されるマーカー遺伝子の数が少ないほど、測定誤差と特定の1つのマーカーの異常な発現の可能性の両方に対する影響が大きくなる。また、異なるマーカーは、異なるプロセス(例えば、同化プロセス、異化プロセスなど)ならびに軟骨細胞代謝に関与する異なる経路(シグナル伝達経路、受容体およびリガンド、マトリックス成分、プロセシング酵素など)を反映し、このようなプロセスの各々が個々に、軟骨細胞表現型の安定性に対して影響を及ぼし得る。したがって、考慮されるマーカー遺伝子が多いほど、そのアッセイは、安定な軟骨形成が確実となる完全な環境を表示する。他方において、測定されるマーカー遺伝子が多いほど、そのアッセイは技術的に複雑となり、ハイスループットスクリーニングにおける使用の容易さが損なわれる。また、各マーカー遺伝子の評価全体に対する寄与の関与度を維持するため、マーカー遺伝子の数は10種未満に保つのがよい
。実際には、多数のマーカー遺伝子のセットの中の1つのマーカー遺伝子の発現の変化は、該多数のマーカー遺伝子の発現スコア全体に対してほとんど影響がない。このような論拠および特定された種々のマーカーの観察された相対寄与に基づき、3〜9個の任意の数のマーカーが、細胞集団の軟骨細胞表現型の安定性の測定、または細胞集団の軟骨細胞表現型の安定性に対する化合物または条件の影響の評価に好適であると決定された。一実施形態によれば、5つ、6つまたは7つのマーカーのセットが、かかるマーカーの組から得られるスコアの正確さと、ハイスループットスクリーニングにおけるこのアッセイの実用的な実現可能性とを最適に両立させる。
したがって、本発明の一態様は、陽性マーカー遺伝子FRZB、COL11、COL2、FGFR3、BMP−2、RASF−PLA2およびOPNならびに陰性マーカー遺伝子ALK1およびPEDFからなる群より選択される、軟骨形成を表示する少なくとも3つのマーカーのセットを提供する。
本発明の特定の実施形態によれば、軟骨形成潜在能マーカーを構成する、すなわち軟骨形成を表示する該少なくとも3つのマーカーのセットには、FRZBと、ALK1と、PEDF、COL11、COL2、FGFR3、BMP−2、RASF−PLA2およびOPNからなる群より選択されるマーカー遺伝子とが含まれる。より具体的には、軟骨形成を表示する該少なくとも3つのマーカーのセットには、FRZBと、ALK1と、PEDF、COL11、COL2およびFGFR3からなる群より選択されるマーカー遺伝子が含まれる。本発明のさらなる実施形態は、FRZBと、ALK1と、それぞれPEDF、COL11、COL2、FGFR3、BMP−2、RASF−PLA2およびOPNからなる群より選択される2つ、3つおよび4つのマーカーとを含む少なくとも4つ、5つまたは6つのマーカー遺伝子のセットに関する。より特別には、該少なくとも4つ、5つまたは6つのマーカー遺伝子のセットは、FRZBと、ALK1と、それぞれPEDF、COL11、COL2およびFGFR3からなる群より選択される2つ、3つおよび4つのマーカーとを含む。特定の実施形態によれば、6つのマーカー遺伝子のセットを用いてインビボでの安定な軟骨生成能を評価し、このセットは、FRZB、ALK1、PEDF、COL11、COL2およびFGFR3からなる。このマーカー遺伝子のセットの累加的なスコア(実施例1に記載)を本明細書では、「ChondroCelect(商標)マーカー」(CCマーカー)と称し、また、「ChondroCelect(商標)スコア」とも称する。あるいはまた、該マーカーのセットには、マーカーPEDF、COL11、COL2およびFGFR3の1つがRASF−PLA2、OPNおよびBMP−2の群から選択される1つのマーカーで置き換えられたこの軟骨形成潜在能マーカーのセットのバリエーションが含まれる。より具体的には、該マーカーのセットには、陽性マーカーCOL11、COL2の一方がRASF−PLA、OPNまたはBMP−2のいずれかで置き換えられた上記の軟骨形成潜在能マーカーのバリエーションが含まれる。本明細書の実施例のセクションでは、軟骨形成性細胞集団による本明細書に開示したマーカーのセットの発現に基づくマーカースコアによって、該細胞集団により生成される軟骨の性質が信頼性をもって予測される(組織学的解析により測定)ことが示されている。
別の態様によれば、本発明は、細胞集団の軟骨細胞表現型の安定性を調べる方法を提供する。より具体的には、本発明は、細胞集団の軟骨細胞表現型の安定性の評価におけるツールとしての本明細書に開示したマーカー遺伝子のセットの使用を提供する。これは、例えば、軟骨欠損の処置の状況において細胞移植に使用される細胞集団の品質管理において重要である。このような方法は、該細胞集団による本明細書に記載のマーカー遺伝子のセットの発現を調べる工程を含むことを特徴とする。より具体的には、本発明によるマーカー遺伝子のセットの発現(任意選択で、累加マーカースコア、より特別には軟骨形成潜在能スコアで示される)が、移植目的のための細胞集団の品質表示として使用される。典型的には、細胞集団の品質評価は、実験室内で、本明細書に記載のものなどの標準的な手法
を用いて行われ、評価の結果は、報告書に記載されるか、または品質管理シートにまとめられる。細胞集団は、ヒトまたは動物組織から採取されたP0または該細胞集団の任意の継代培養物であり得る。一実施形態によれば、細胞集団は、ヒト軟骨生検材料から採取したP2〜P6の集団である。あるいはまた、集団倍加数が考慮され得る。本発明との関連において考慮されるほとんどの細胞集団では、継代培養ごとに2〜3の集団倍加を伴う。したがって、本発明との関連において、細胞集団は1または2の集団倍加(P0)後に評価される。任意選択で、細胞集団は、1種または種々の生検材料由来の細胞の種々の継代培養物の組合せ(任意選択で、P0を含む)である。細胞の自己移植が意図される場合、特定の患者の1種類以上の生検材料から採取された細胞を、任意選択で合わせ、(合わせる前および/または後に)軟骨細胞表現型の安定性について確認する。典型的には、品質評価は、特定の時点で、すなわち、移植(骨格またはマトリックス内の細胞または2Dもしくは3D組織として)の前、保存(例えば、凍結)の前、および/または保存からの回復時、細胞集団を特定の処理および/または条件に供する前および/または供した後に行われる。
実際、本発明の一態様の目的は、直接移植、または生体適合性のマトリックス上への播種もしくは該マトリックス内への封入およびその後の移植のいずれかの前に、細胞集団がインビボで安定な硝子軟骨を生成する能力を調べることである。マーカースコアにより、該細胞集団または細胞が血管浸潤または軟骨内性骨形成の徴候なく軟骨移植を確実に行なう能力が示される。
典型的には、本発明によるマーカースコアを決定するためのマーカーの発現は、細胞集団全体において行われ、この場合、代表的な試料を用いて、本明細書に記載のものなどの方法によって、該マーカーが調査対象の細胞集団によって発現されているか否かを調べる。あるいはまた、当該技術分野で知られた細胞特異的な方法を用いて、個々の細胞を特定の遺伝子の発現について確認してもよい。
別の態様によれば、本発明は、軟骨形成性細胞がインビボで安定な硝子軟骨を生成する能力に対する化合物または条件の効果を調べるための方法を提供し、該方法は、スクリーニングツールとして有用である。このような方法は、軟骨形成性細胞集団を化合物または条件と接触させる工程、および該細胞集団による本発明によるマーカー遺伝子のセットの発現を調べる工程を含む。
したがって、本発明は、細胞集団の軟骨形成能に影響を及ぼす化合物または条件を特定するための方法およびアッセイを提供する。一実施形態によれば、該方法は、軟骨欠損の処置の状況における移植用の細胞集団を培養、保存および/または投与するのに充分な条件を特定するために使用される。かかる方法では、軟骨形成性細胞集団を、特定の条件に供し、マーカー遺伝子の発現を調べる。典型的な条件は、特定の培養培地、培養温度、培養期間、培養密度など、ならびに他の細胞型との組合せである。さらにあるいは代替的に、該方法およびアッセイは、軟骨形成性細胞の軟骨細胞表現型の安定性に影響を及ぼし得る分子因子の特定に使用される。かかる因子としては、増殖因子、マイトジェン、添加剤、化学的小分子などが挙げられ得る。スクリーニングの目的は、軟骨欠損の処置の状況における移植用の細胞集団の培養、保存または投与に有用な因子を特定することであり得る。典型的には、目的の因子は、細胞集団の軟骨細胞表現型の安定性に正に影響を及ぼし得る因子、および/または該細胞集団の軟骨細胞表現型の安定性に負に影響を及ぼすことなく、該細胞の他の特徴(例えば、細胞の数、安定性など)および/または培養条件のパラメータ(例えば、使用され得る保存期間、継代培養回数など)に正に影響を及ぼす因子である。
さらにあるいは代替的に、本発明のアッセイおよび方法は、軟骨形成性細胞による軟骨
形成に対するインビボ潜在効果を有する化合物のスクリーニングおよび特定に有用である。本発明のスクリーニング方法の用途としては、処置対象の患者の体内の局所細胞による軟骨形成および/または細胞移植の状況における細胞による軟骨形成に影響を及ぼす化合物の特定が想定される。該スクリーニング方法を用いて、病的状況に存在する因子または条件を妨げ得る化合物が特定および/または評価され得る。例えば、細胞を例えばIL−1で刺激した後(炎症状態を刺激するため、異化経路を増強するため、および同化プロセスを下方調節するため)、この効果を妨げる潜在能を有する化合物が添加され得る。
また、本発明の範囲において、軟骨形成性細胞がインビボで軟骨を生成する能力に対する治療用化合物(軟骨修復の状況以外で使用されるものを含む)の副作用の可能性を評価するためのマーカー遺伝子の使用が想定される。本発明の方法により、インビボで直接試験したとき、長期間でしか認められ得ない骨形成に対する化合物の効果を、直接確認することが可能になる可能性がある。
化合物のスクリーニングに関する本発明の方法は、典型的には、軟骨形成性細胞集団を1種類以上の対象の化合物と接触させる工程、および軟骨形成性細胞集団による本明細書に記載のマーカー遺伝子のセットの発現を測定する工程を含む。本発明の方法により、例えば、化学物質の化合物ライブラリー、ペプチドライブラリー、発現ライブラリーなどのハイスループットスクリーニングが可能になる。
一実施形態によれば、本発明の方法は、1種類以上の化合物が添加された/特定の条件に供された細胞集団において、本発明によるマーカー遺伝子のセットの発現を、同じまたは種々の細胞集団における該化合物または条件の非存在下での該マーカー遺伝子のセットの発現と比較する工程を含む。典型的な実施形態では、同じ細胞集団に由来する異なる一部(1つまたは複数)を、互いに比較するため、および/または陽性および/または陰性コントロールとの比較のために種々の条件および/または化合物に供する。陰性コントロールは、ブランクまたは軟骨細胞表現型の安定性に影響を及ぼさないことがわかっている化合物であり得る。陽性コントロールは、(正または負に)細胞集団の表現型安定性に影響を及ぼすことがわかっている化合物または条件であり得る。
本発明のスクリーニング方法では、種々のパラメータが評価され得る。細胞は、個々の容器またはマルチウェルプレートに種々の密度で播種され得る。細胞は、種々の期間でインキュベートした後、化合物/因子の添加もしくは条件の適用またはその両方が行われ得る。種々のレジメンならびに化合物および培養条件の組合せが併用され得る。化合物/因子は、種々の濃度で添加され得、種々の期間にわたって細胞と接触させたままにする。同じことが培養条件にもあてはまる。
本発明は、細胞集団が移植後にインビボで硝子軟骨を生成する能力が、移植前に、該細胞集団によるインビトロでの特定の遺伝子(マーカー遺伝子)の発現に基づいて予測され得るという観察結果に基づく。したがって、マーカー遺伝子の発現を用いて、移植前の細胞の軟骨形成性の「特質」と、それに対する化合物および条件の効果がモニターされる。以下に詳述するように、該遺伝子の発現はマーカースコアとして表示され得、この場合、種々のマーカー遺伝子の(相対)発現レベルを加算して値を得、これが、最適値(すなわち、考慮される全陽性マーカーの高発現、全陰性マーカーの低発現)と比較され得る。さらにあるいは代替的に、スクリーニングでは、該化合物または条件が、この遺伝子のセットの任意の1つのマーカーに影響を及ぼし得る能力が考慮され得る。
本発明のマーカー遺伝子の発現は、絶対値または相対値に基づいて評価され得る。典型的には、ハウスキーピング遺伝子と比較したマーカー遺伝子の発現が使用される。これを、本明細書ではアクチンを用いて例示する。ハウスキーピング遺伝子が異なると発現レベ
ルは異なり得るため、当業者には、選択したハウスキーピング遺伝子と比較したマーカー遺伝子の相対発現は、事前に、使用する各ハウスキーピング遺伝子について、軟骨細胞表現型の安定性を有する集団において確立されている必要があることが理解されよう。本発明によれば、選択したマーカーの発現に関する情報の併合により、該細胞がインビボで軟骨形成し得るか否かが示される。
本発明では、所与の細胞集団の特質の評価、および細胞が移植後にインビボで軟骨を生成する能力に対する因子/条件の影響の評価の両方の状況での本明細書に記載のマーカーの組合せの使用が想定される。該マーカーのセットを用いて細胞集団がインビボで硝子軟骨を生成する能力に対する化合物、細胞または条件の効果を調べる場合、この効果は、コントロールと比べたとき、または該細胞集団を該化合物または条件と接触させる前の発現レベルと比べたときに測定される本発明のマーカー遺伝子の発現の「増大」または「減少」に基づくものであり得る。これに関連して、本発明による1つ以上の陽性マーカー遺伝子の発現を増大させる、および/または1つ以上の陰性マーカー遺伝子の発現を減少させる化合物、細胞または条件は、軟骨形成に正に影響を及ぼし得るとみなされ得る。本発明による1つ以上の陽性マーカー遺伝子の発現を減少させる、および/または1つ以上の陰性マーカー遺伝子の発現を増大させる化合物、細胞または条件は、軟骨形成に負に影響を及ぼし得るとみなされ得る。
本発明の一態様によれば、細胞集団による該マーカーのセットの種々のマーカー遺伝子の発現は、「累加マーカースコア」で示され、これは、該細胞集団の軟骨細胞表現型の安定性と相関し、該表現型安定性を示す。累加マーカースコアは、本発明の方法およびアッセイの結果の定性的および/または定量的解釈に使用される。
種々の型のマーカースコアが、本発明との関連において想定される。マーカーのセットの発現レベルは、該マーカーのセットの各遺伝子産物の絶対発現レベルの合計である/該合計に相当する数値で示され得る。かかる計算方法は、マーカー遺伝子の発現の定量的検出が、例えば定量的PCRまたはELISAによって行われる場合に使用され得る。
あるいはまた、該マーカーのセットの各遺伝子の発現レベルは比率で示され得る。すなわち、遺伝子の発現レベルを、細胞の処理にかかわらず等しい発現レベルを有するとみなされるか、または細胞が安定な硝子軟骨を生成する能力にかかわらずその発現が比較的安定であるとみなされる別の遺伝子(ハウスキーピング遺伝子など)のものと比較する。これにより、より比較可能(ほとんどの場合、0.001〜10の範囲)である種々のマーカーの発現レベルの値が得られる。したがって、累加マーカースコアは、各マーカー遺伝子の比率の合計であり得る。
しかしながら、本発明の特定の実施形態によれば、累加マーカースコアは、各マーカー遺伝子の発現の絶対値または相対値に基づくものではなく、この発現の定性的評価に基づくものである。
本発明の特定の実施形態によれば、マーカー遺伝子の定性的評価は、自由裁量で数値、例えば「1」が割り当てられる。より具体的には、本発明によれば、陽性マーカーの発現の増大/高発現に値「1」が割り当てられ、また、陰性マーカーの発現の非存在にも値「1」が割り当てられる。最も具体的には、本発明によれば、発現レベル(または発現の比)の範囲は、軟骨細胞表現型の安定性の陽性マーカー遺伝子の発現レベルと陰性マーカーの発現レベルの両方に対して規定され、この場合、所定の範囲内に含まれる発現レベルを、ある値に帰属させる。また、さらなる実施形態によれば、陽性および/または陰性マーカー遺伝子の発現の所定の範囲外である発現値(例えば、陽性マーカー遺伝子の非常に低い発現、または陰性マーカー遺伝子の非常に高い発現が観察される場合)を、ある値に帰
属させる。
累加マーカースコアにおける各マーカー遺伝子の相対的な影響を測定する場合、各遺伝子の発現が同じウェイトを有する場合があり得る。あるいはまた、1つ以上の遺伝子の発現レベルが他の遺伝子よりも軟骨細胞表現型の安定性に対して強い影響を有するとみなされる場合もあり得、これは、累加マーカースコアの計算に対する該マーカー遺伝子の相対的な影響に組み込まれ得る。本発明の特定の実施形態によれば、種々のマーカーの相対的な影響が同じであり、発現(または発現の比)の所定の範囲内に含まれる場合は値「1」に帰属させ、所定の範囲外である(陽性マーカーおよび陰性マーカーが、それぞれ所定の範囲より低いか高い)場合は値「−1」に帰属させる。任意選択で、一定の範囲内の発現レベルは値「0」に対応するとみなされ得、これは、細胞における軟骨細胞表現型の安定性に正にも負にも影響を及ぼさない陽性または陰性マーカー遺伝子の発現レベルに相当する。
本明細書に記載の実施例のセクションには、本発明のさらなる特定の実施形態を記載している。安定な軟骨表現型を示す累加マーカースコアは、各々が等しい重要度で帰属される再大6つのマーカーのセットによって決定される。各マーカーの発現を定量し、マーカー遺伝子に対する発現に基づくスコアリングアプローチが適用される。この特定の実施形態では、このようなマーカーから計算されるスコアを「軟骨形成潜在能スコア」(すなわち、軟骨表現型安定性の規定の6つのマーカーのセットの発現全体を反映する累加マーカースコア)と称する。本発明のこの実施形態によれば、各遺伝子の発現レベルは半定量的方法によって測定され、得られた値を参照遺伝子(例えば、βアクチン)との比較によって標準化する。したがって、発現レベル1は、アクチンと同じレベルの発現を示し、発現レベル1未満は、アクチンより低いレベルの発現を示し(0.1は、β−アクチンより10倍低い発現レベルに相当する)、1より大きい発現レベルは、アクチンより高い発現レベルを示す。
本発明のこの特定の実施形態において、各マーカー遺伝子の発現レベルは、可能な3つのスコアの1つに対応する。陽性マーカー(FRZ、COL11、COL2、FGFR3)の場合は、非常に低い発現レベル(0〜0.1)をスコア−1で示し、低発現レベル(0.1〜1)をスコア0で示し、高発現(>1)をスコア+1で示す。逆に、陰性マーカー(ALK1、PEDF)では、非常に低い発現レベル(0〜0.1)をスコア+1で示し、低発現レベル(0.1〜1)をスコア0で示し、高発現レベル(>1)をスコア−1で示す。これらの個々のスコアすべての合計は、マーカーのセット全体としての発現レベルを示す。したがって、6つのマーカーのセットでは、スコアは、−6(すべての陽性マーカーが参照より低いレベルで発現され、すべての陰性マーカーが参照遺伝子より高いレベルで発現される)〜+6(すべての陽性マーカーが参照遺伝子より高いレベルで発現され、すべての陰性マーカーが参照遺伝子より低いレベルで発現される)の範囲であり得る。このスコアが、細胞集団によるマーカーFRZB、COL11、COL2、FGFR3、ALK1およびPEDFの発現に基づくものである場合、本明細書では、このスコアをChondrocelect(商標)スコアと称する。
本発明の実施例に示すように、マーカーのセットの発現レベルならびに該レベルから得られる累加マーカースコアを、軟骨細胞の細胞集団の軟骨細胞表現型の安定性と相関させることが可能である。したがって、規定のマーカーのセットの発現レベルの評価、またはある種の化合物を投与したときの軟骨形成性細胞集団の(累加)マーカースコアの評価を用いて、該化合物が細胞の軟骨細胞表現型の安定性に影響を及ぼす能力および/または細胞がインビボで軟骨を生成する能力が評価され得る。より具体的には、特定の化合物を拡大培養された軟骨細胞の細胞集団に添加することにより、この細胞集団の軟骨形成潜在能スコアおよび表現型が改善されることが示される。陰性コントロール(例えば、骨形成を
促進する化合物の添加)は、軟骨形成潜在能スコアを減少させる。
したがって、本発明は累加マーカースコアを提供し、これは、軟骨形成性集団が安定な軟骨を生成する能力に対する任意の因子または条件の影響を評価するための細胞系スクリーニングアッセイにおいて使用され得る。インビトロで確認される細胞集団の軟骨表現型安定性が該細胞のインビボでの活性を示すことに鑑みると、該アッセイは、軟骨欠損部に投与すると局所の軟骨形成性細胞による軟骨形成に影響を及ぼし得る化合物を特定するために信頼性をもって使用され得る。重要なことは、本発明で開示したアッセイおよびマーカー解析では、結果を確認するために後で、または並行して行われるインビトロまたはインビボ軟骨形成アッセイが必要とされず、これにより、化合物の大規模スクリーニングが劇的に短縮および簡素化される。
本発明によれば、累加マーカースコアの使用は、細胞集団の軟骨細胞表現型の安定性を評価するため、および/または軟骨形成性細胞の軟骨細胞表現型の安定性に対する条件または化合物の効果を評価するための信頼性のある効率的なツールである。スコアの信頼性は、一方において陽性スコアとインビボで表現型が安定な軟骨を生成する能力との相関関係、および陰性スコアと細胞がインビボで表現型が安定な軟骨を生成できないこととの相関関係によって決定される。信頼性のある累加マーカースコアのさらなる望ましい要件は、その効率、すなわちインビボで表現型が安定な軟骨を生成し得る集団と、生成できない集団とを効率的に識別できる能力である。例えば、マーカーの数が6つであり、スコアリングシステムが上記のように+6〜−6の間で変化する場合、典型的には「グレイゾーン」(+6〜−6の間に存在する範囲の累加マーカースコアを特徴とする集団)が存在し、その累加マーカースコアは明確ではなく、試験した場合、安定な硝子軟骨を形成し得る集団と形成できない集団の両方を含むことが認められることがあり得る。理想的には、マーカースコアは、該グレイゾーンの集団の数を最小限とするが、集団を「陽性」または「陰性」のいずれかに最大限に効率的に分類することを可能にするものである。
より具体的には、移植に使用される細胞集団の軟骨細胞表現型の安定性を調べる状況において、該細胞集団の運命の直接的かつ正確な測定を可能にするためには、累加マーカースコアの信頼性と効率の両方が重要であり得る。実際、移植が意図される細胞集団を特性評価するのに比較的低い予測値の累加マーカースコアを使用することは、移植の可否を決定することができないため、価値が限定的である。かかる適用用途には、高い信頼性と効率に鑑みて、本発明の軟骨形成潜在能スコアをスコアリングツールとして使用することが特に適切であると考えられる。しかしながら、スクリーニングにおける使用では、予測値の効率があまり重要でない場合があり得ることが想定される。上記のように、本発明のスクリーニングアッセイの潜在目的は、細胞集団の軟骨細胞表現型の安定性に影響を及ぼす、より具体的には軟骨細胞表現型の安定性を改善する医薬化合物を特定することである。したがって、かかるスクリーニング方法では、化合物が完璧な軟骨細胞表現型の安定性を誘導または維持する能力ではなく、軟骨細胞表現型の安定性の相対的な改善が重要な要件であることが想定され得る。例えば、スクリーニングアッセイの実施の際、低品質の細胞(移植後軟骨なし)を中間品質の軟骨(移植後の結果を明確に予測するためには使用され得ないスコアを有する細胞)に変換し得る化合物も、目的物とみなされることが想定される。
本発明の方法およびアッセイに使用される細胞集団には、軟骨を生成し得ると考えられるか、または軟骨生成細胞に発達し得る任意の細胞が包含される。典型的には、該細胞は、骨軟骨細胞、例えば、関節軟骨、半月または滑液から採取された軟骨細胞およびその一過性細胞または前駆細胞などである。一実施形態によれば、本発明との関連において使用される細胞は、WO01/25402に記載の一過性細胞である。一部の実施形態では、該細胞集団は、他の組織(血液、骨髄もしくは脂肪など)に由来する一過性細胞または幹
細胞、骨軟骨細胞系統に誘導され得る一過性細胞または幹細胞である。本発明のアッセイは、この細胞が骨軟骨細胞系統になるように拘束されたものであるか否かを判定するために使用され得る。
本発明のスクリーニング方法およびアッセイに使用される細胞は、新鮮単離、拡大培養または1回以上継代培養されたものであり得る。細胞は、培養フラスコ内にあるか、またはマトリックスもしくは骨格上に存在するかのいずれかで細胞培養物として存在するものであってもよい。マトリックス上の細胞によるマーカーのセットの発現は、マトリックスを溶解し、該細胞による発現を調べることにより測定され得る。細胞は、ヒトまたは動物由来のものであり得る。軟骨の試験に使用されている動物の例としては、ツメガエル、ゼブラフィッシュ、ニワトリ、マウス、ラット、ウサギ、ヒツジおよびヤギが挙げられる。
本発明の方法およびアッセイは、由来および/または培養条件の結果、安定な軟骨細胞表現型を有する細胞を用いて行われ得る。かかる細胞は、所与の化合物、処置または条件の有害な影響をアッセイするのに特に有用である。
代替的な実施形態によれば、本発明の方法およびアッセイは、由来および/または培養条件の結果、安定な軟骨細胞表現型をもたないか、または軟骨細胞の安定な表現型を失った細胞を用いて行われる。その例は、何度も継代培養が行われた軟骨細胞および幹細胞である。また、骨軟骨欠損(変形性関節症または関節リウマチ(に起因するもの)など)を有する個体由来、または遺伝子構成に基づいて骨軟骨の障害を獲得する素因のある個体由来の軟骨細胞も好適である。また、軟骨腫瘍細胞または軟骨肉腫細胞も好適である。
軟骨細胞表現型の安定性をもたない細胞は、細胞の安定な軟骨表現型を改善もしくは回復させる化合物もしくは条件、または、特定の細胞集団(幹細胞など)を安定な軟骨表現型を有する細胞に変換させ得る化合物もしくは条件をスクリーニングする本発明の方法において特に有用である。
本発明では、本発明の方法およびアッセイをさまざまな異なる適用用途に使用することが想定される。先に詳述したように、本発明の方法およびアッセイによって、ACTにおける使用が意図される細胞の培養条件、(細胞密度、継代培養回数、培地組成、2次元または3次元の基材内または該基材上での培養、酸素濃度、圧力、剪断応力など)を試験することが可能になる。特に、該アッセイにより、軟骨細胞表現型の安定性に対する培地組成の影響の試験が可能になる。軟骨細胞表現型の安定性に影響を与える可能性がある培地中の因子としては、限定されないが、血清の型およびバッチ、合成無血清培地の種々の配合、ならびにさまざまなホルモン、増殖因子、ビタミン類、タンパク質および軟骨細胞表現型の安定性に影響する疑いのある有機化合物が挙げられる。
本発明の方法およびアッセイの適用用途の一例は、一過性細胞または幹細胞を骨軟骨系統に、より具体的には軟骨形成性系統に分化させる化合物または条件のスクリーニングである。別の適用用途は、充分な数の細胞が採取されるように、それぞれ、多数回継代培養された健常細胞、または多数回の継代培養を経ている健常細胞の軟骨細胞表現型の安定性を回復または維持させ得る化合物または条件のスクリーニングである。また別の適用用途は、骨軟骨欠損を有する、またはその素因のある個体から採取された細胞において軟骨細胞表現型の安定性を誘導し得る化合物または条件のスクリーニングである。
別の適用用途では、該アッセイは、細胞移植術でよく使用されるマトリックス、骨格、ゲルまたはその構成成分の影響を評価するために使用される。
また、本発明の方法およびアッセイは、ペプチドライブラリー、アンチセンスライブラ
リーまたは化合物ライブラリーの古典的なスクリーニングにも適している。このようなライブラリーを構成する化合物としては、限定されないが、合成により作製されるか、または天然供給源から得られる生物製剤および有機または無機化合物が挙げられる。使用され得るその例は、化合物のライブラリー、例えば、抗体断片ライブラリー、ペプチドファージディスプレイライブラリー、ペプチドライブラリー(例えば、LOPAP#、Sigma Aldrich)、脂質ライブラリー(BioMol)、合成化合物ライブラリー(例えば、LOPAC@、Sigma Aldrich)または天然化合物ライブラリー(Specs、TimTec)などである。
本明細書に記載のスクリーニング方法およびアッセイは、骨軟骨障害の処置用の医薬のリード化合物の特定に特に有用である。本発明のスクリーニング方法の状況で対象として想定される骨軟骨欠損としては、限定されないが、関節(限定されないが、膝、肘、踝など)に生じた欠損(一般に関節軟骨欠損と称される)が挙げられる。また、軟骨欠損は近位骨にちなんで命名される(大腿骨の顆、上腕骨の顆の欠損など)。軟骨細胞表現型の安定性に影響を及ぼし得る化合物のスクリーニングが想定される対象の頻繁に起こる軟骨障害は、変形性関節症、関節リウマチ、関節軟骨損傷、軟骨軟化症、脊椎関節症である。
実施例
以下の実施例は本発明を説明することが意図され、なんら本発明を本明細書に記載の特定の実施形態に限定することを示唆するものではない。これらの実施例は、添付の図面に図示される。
方法論
軟骨細胞の培養
Dell’Accioら(2001),Arthritis Rheum.44、1608−1619)に記載の標準的な条件を用いて成人ヒト関節軟骨由来の軟骨細胞を単離し、インビトロで拡大培養した。
インビボアッセイ
本発明のマーカーを、別々の人から採取した48例の軟骨細胞試料の組を用いて検証し、新鮮単離したもの、または1回から5回まで継代培養されたものとした。軟骨細胞の一部をマーカー解析(実施例3参照)に使用し、一方で、別の一部を各試料の軟骨形成能を検証するためのインビボアッセイに使用した。雌NMRI nu/nuマウス(大腿部の尾側部分)に、約500万個のヒト細胞を筋肉内注射した。移植組織を2週間後に収集した[Lipmanら(1983)Calcif.Tissue Int.35,767−772;Ostrowskiら(1975)Somatic Cell Genet.1,391−395]。軟骨移植組織を筋肉から解離し、ヘマトキシリン−エオシン、トルイジンブルーおよびサフラニンO染色を用いて組織学的検査を行なった。染色後の移植組織に1〜3の範囲の組織学的検査スコアを帰属させる。組織学的検査スコア3は、高度に硫酸化されたプロテオグリカンを有する硝子様軟骨、トルイジンブルーおよびサフラニンOによる強い染色を示す。組織学的検査スコア2は、充分分化した硝子様軟骨、トルイジンブルーによる強い染色、サフラニンOによる弱い染色を示す。組織学的検査スコア1は、未分化線維性組織である「線維軟骨」、トルイジンブルーによる染色なしまたは弱い染色を示す。組織学的検査スコア0は、移植組織が回収されなかった実験を示す。組織学的検査スコア2または3の軟骨は成功裡の移植を示す。組織学的検査スコア0または1の軟骨は非成功裡の移植を示す。
実施例1:マーカーの解析
注射された細胞の一部を遺伝子発現解析に使用した。RNAの単離、逆転写およびPC
Rは、WO0124832に記載の方法を用いて行なった。これらのマーカーに対するPCRプライマーを表1に示す。
マーカーの発現レベルは、電気泳動後のPCR産物の強度を測定することにより測定される。次いで、すべての値をDNAマーカーの600bpのバンドと比較し、値を得る。個々のマーカーの濃度を数値で示す。陽性マーカー(COL11、COL2、FGFR3)の場合、非常に低い発現(0〜0.1)を−1で示し、低発現(0.1〜1)を0で示し、高発現を+1で示す。これに対して、陰性マーカー(ALK1、PEDF)の場合は、非常に低い発現(0〜0.1)を+1で示し、低発現(0.1〜1)を0で示し、高発現を−1で示す。これらの個々のマーカーすべての合計(軟骨形成潜在能スコアと定義)は、マーカーのセット全体の発現レベルを示す。この数は、−6〜+6の範囲であり得る。
各マーカー個々のデータ、その軟骨形成潜在能スコアおよび組織学的検査スコアを表2にまとめる。
実施例2:データ解析
実施例1で測定した軟骨形成潜在能スコアと組織学的検査スコアとの相関関係を表3および図1に示す。軟骨形成潜在能スコアと組織学的検査スコアとの相関係数は0.78であり、統計学的に有意である(p<0.0001)。
軟骨形成潜在能スコア−3以下の試料では、常に線維軟骨が生じるか、または軟骨が全
く生じない。軟骨形成潜在能スコア2以上の試料では、常に硝子軟骨が生じる。軟骨形成潜在能スコア1の試料では、6例中1例に硝子軟骨が生じる。
判断基準として、軟骨形成潜在能スコア0以上の試料を移植に適するとみなす。本データセットに基づくと、移植の結果は、77%(37/48)で高い確実性で予測することが可能であり、64%でエラーなく予測することが可能である。このデータセットに基づき、軟骨細胞培養物は、軟骨形成潜在能スコアが0以上の場合、ACI処置における使用に承認される。
まとめると、安定な硝子様軟骨は、軟骨形成潜在能スコア0以上を有する細胞でのみ得られ得る。軟骨を全く形成しない細胞は負のスコアを有した。個々の遺伝子のさらなる解析により、このモデルの精密化がさらに補助されよう。
a)軟骨形成潜在能スコアと組織学的検査スコアとの関係
軟骨形成潜在能スコアと組織学的検査スコアとの関係を図1および表3に示す。
度数分布表に加え、表3には、軟骨形成潜在能スコアの各値での平均組織学的検査スコアも示す。この平均値は、軟骨形成潜在能スコア−1から0の間で有意に増加する(1.0から2.7に)。これは、軟骨形成潜在能スコア0以上を有する試料がACIに適することを示唆する。
b)分類尺度を用いたデータ解析
「順序分類尺度(ordered categorical scale)」は、単にカテゴリーに番号付けして、その順位を示す尺度である。割り当てられた実際の数値は他の情報を示さない。例えば、ここでは、組織学的検査の尺度は0、1、2、3の値をとる。これを順序分類尺度と解釈するということは、1は0よりも良好であることを示すが、どれだけ良好であるかは言及していない。しかしながら、間隔尺度は、実際の数値が意味を持つとみなされ、例えば1が0よりも良好である量は2が1よりも良好である量と同じである。表3の場合の平均値の計算では、組織学的検査スコアは間隔尺度として有効に処理され得るという暗黙の想定がなされる。
尺度が多くの点を有するほど、かかる尺度が間隔尺度であることがより許容される。したがって、13のデータポイントで示される軟骨形成潜在能スコアは、間隔スコアとして処理される。
組織学的検査スコアを順序分類尺度として処理したさらなる解析を表3の最後の欄に示す。本明細書では、このスコアを0または1(線維軟骨がないか、もしくは少ない)と、2または3(硝子軟骨)の2つのカテゴリーにまとめており、このデータは、組織学的検査スコア2または3が観察される確率を示す。
表3の最後の2つの欄のうち、見出しが「観測値」の欄は、各軟骨形成潜在能スコアに対するこのカテゴリー(およびパーセンテージ)内の試料の実際の数値を示す。この値はまた、軟骨形成潜在能スコア−1〜0の間で増加し、これは、閾値排除点を示す。この解析では、軟骨形成潜在能スコアを順序分類尺度とみなす。
c)間隔尺度を用いたデータ解析
軟骨形成潜在能スコアを間隔尺度として処理する場合、観察された応答は、ロジスティック解析を用いてスムージング処理され得る。この方法により、所望のカテゴリー(2または3)である確率が予測される。フィット値は妥当な範囲(0〜100%)を超えない。このようなフィット値を表3の最後の欄に示し、スムージングの効果を示す。このようなフィット推定値は、任意の所与の軟骨形成潜在能スコアで2または3の組織学的検査スコアが得られる可能性に関して、他の方法よりも信頼性のある予測をもたらすと考えられる。特に軟骨形成潜在能スコア−1では、フィットモデルによって、2または3が得られる可能性が41.5%で予測されている結果、スコア−1は許容されるべきか否かという問題が生じることに注意されたい。
実施例3.個々のマーカーの影響
個々のマーカーの影響は、実施例1の軟骨形成潜在能スコアを決定したマーカーのセットの6つのマーカーの代わりに5つのマーカーの発現プロフィールを再計算することにより評価される。同じスコアリングシステムを適用したが、この場合、スコアは−5〜+5の範囲であり得る。
データを表4〜9に示す。
以下の表10のパートAは、上記の表4〜9に示した各データセットに関して、マーカースコアの閾値に関して、どれだけ多くの試料が低品質(表10の「−」に相当する組織学的検査スコア0または1)を示す、または高品質軟骨(表10の「+」で示される組織学的検査スコア2または3)を示すと明確に分類され得るかを示す。マーカースコアと組織学的検査スコア間に相関関係がない試料は「?」試料に分類する。このデータは、COL11、COL2またはCOL11を除いた5つのマーカーのセットを使用した場合、同様またはさらに良好な結果が得られる(すなわち、「?」で表示される試料が少ない)ことを示す。
表10のパートBでは、排除値の限定性が低い。表示した範囲内のあるマーカースコアについて、6つの試料のうち少なくとも5つがマーカースコアと軟骨の品質間に相関関係を示す場合、そのマーカースコアの範囲は予測性をもつと考えられる。このアプローチを用いると、COL11の除外によって改善された結果がもたらされるが、他のいずれかのマーカーの除外では、より悪い結果がもたらされる(特に、Col2またはFGFR3を
実施例1のマーカーのセットから除外した場合)。
本データセットおよびその解釈に基づくと、軟骨のインビボ生成に関するマーカーのセットの発現プロフィールの予測力は、任意選択で、該解釈にかかわらずCOL11なしでも得られ得ると考えられる。他方、ALK1またはFRZBのいずれかの除外により、本データセットの解釈にかかわらず該マーカーの予測力の低下がもたらされる。
実施例4.スクリーニングアッセイにおけるマーカースコアの使用
累加マーカースコアを用いた軟骨細胞表現型の安定性の評価を、細胞がインビボで安定な軟骨を生成する能力に影響を及ぼし得る化合物を特定するため、および該細胞に対するかかる化合物の効果の性質を調べるためのスクリーニングアッセイにおいて試験した。
スクリーニングアッセイは、軟骨生検材料から採取した10000〜100000個の軟骨細胞を播種した96ウェルプレートにおいて行なった(継代培養物0〜P5から新鮮単離)。試験化合物を種々の濃度で種々の期間で添加した。インキュベーション後、軟骨細胞を収集し、RNAを単離し、逆転写酵素で処理した。定量的PCRをTaqMan手順の使用説明書に従って行ない、細胞の軟骨形成潜在能スコアを実施例1に記載のようにして決定した(CCスコア)。
1.単層培養状態の軟骨細胞の脱分化を妨げる分子の試験
化合物Aは、軟骨保護効果を有すること、および軟骨細胞表現型に対する推定安定化効果を有することが予測される候補化合物であった。累加マーカースコア、より具体的には実施例1の軟骨形成潜在能スコアの決定を用いて、軟骨細胞単層培養物の軟骨細胞表現型の安定性に対するこの化合物の効果を調べた。
a)軟骨細胞単層培養物
軟骨細胞を単層培養にて、T25フラスコ内で4×10細胞/mlで培養した。化合物Aを、平板培養直後の細胞に添加した。最終総容量5mlの完全培地(DMEM+10%FBS)を添加した。各条件(1μMまたは10μMの化合物A、DMSO対照)に対して3つのフラスコを使用した。培地と化合物を1週間に1回交換した。コンフルエントになったら、継代培養0の軟骨細胞(P0)をトリプシン処理し、計数し、2×10細胞を再度平板培養してP1培養物とした。残りの細胞を溶解培地に入れ、RNA抽出を行なった。同じ手順を、P1、P2およびP3軟骨細胞培養物に対して行なった。TaqMan RT−PCRを用いて軟骨形成マーカーの発現を調べた。
b)RNAの単離、cDNAの作製
単層培養により得た軟骨細胞をPBSで洗浄し、1%のメルカプトエタノールを含有するRLTバッファー(Qiagen)を用いて溶解させた。溶解細胞は、使用するまで−80℃で保存した。mRNAは、RNeasyマイクロキット(Qiagen)を製造業者の使用説明書に従って用いて精製した。cDNAは、ランダムヘキサマーを用いて製造業者の使用説明書(Invitrogen)に従って合成した。
c)TaqManリアルタイムポリメラーゼ連鎖反応(RT−PCR)
リアルタイム定量的PCR(RT−PCR)は、ABI prism 7700配列検出装置システムを用いて行なった。RT−PCRにはMastermix qPCRキット(Eurogentec)を、製造業者の使用説明書に従って使用した。TaqMan解析に使用するプライマーおよびプローブは、Applied BiosystemsまたはEurogentecにオーダーした。リアルタイムPCRのデータは、2−deltadeltaCT(2DDCT)法を用いて計算した。これは、内因性参照(β−アクチン)に対して標準化し、標準物質(この場合は、コントロール条件(DMSO)下での選択した遺伝子の発現レベル)と比較した標的遺伝子の量と定義される。
d)結果
化合物Aは、軟骨形成能、表現型安定性および軟骨細胞の恒常性を示すいくつかの分子マーカーの発現に対して効果を有し、単層培養での軟骨細胞の拡大培養中、軟骨形成潜在能スコアの減少を妨げる能力を有した(図2参照)。したがって、1μMおよび10μMの両方の濃度で、P0およびP3の軟骨細胞の軟骨形成潜在能スコアは、該化合物の非存在下で培養された軟骨細胞と比較すると、同等であったか、または上昇している場合さえあった。後者の場合、P0軟骨細胞に対してP3軟骨細胞では累加マーカースコアの低下が観察された。
化合物Aは、軟骨細胞の細胞外マトリックス成分のいくつかの遺伝子発現に対して正の効果を有した。化合物Aは、低(1μM)濃度では、Col2とCol11両方の遺伝子転写物の発現を誘導したが、高(10μM)濃度では誘導しなかった(図3)。また、該化合物は、FGFR3マーカーの発現を増大させるが、この増大は統計学的に有意ではなかった。さらに、化合物Aは試験した両方の濃度で、PDEFの発現を強く阻害した(図4)。また、10μMでは、該化合物の添加によりALK1の発現の低下がもたらされた(図4)。どちらのマーカーも、上方調節されると細胞の軟骨形成能と負に相関し、これは、化合物Aが軟骨細胞の軟骨形成潜在能に対して正の刺激効果を有し、したがって、軟骨形成に対して正の刺激効果を有することを示す。
2.3D培養状態の脱分化軟骨細胞の再分化を媒介する能力に関する分子のスクリーニング
14種類の化合物を、アルジネート培養物の脱分化軟骨細胞の再分化を増強する能力についてスクリーニングした。該化合物が3D培養状態での軟骨形成性表現型の細胞の収集に影響を及ぼす能力を評価するため、種々の分子マーカー発現に対する該分子の効果、および累加マーカースコア(実施例1で測定した軟骨形成潜在能スコア)に対する該分子の効果を調べた。
a)アルジネート培養物の軟骨細胞の再分化
完全培地中での単層培養における拡大培養後、5例のOA患者(50〜65歳)から採取した3回継代培養のヒト軟骨細胞(P3)をトリプシン処理によって解離させ、計数し、トリパン排除試験によってバイアビリティを試験した。軟骨細胞を2%アルジネートに懸濁させ、等量のHBSSを添加した。細胞懸濁液を10ml容シリンジニードル内に吸引し、24ゲージ針で1滴ずつ塩化カルシウム溶液中に移した(5粒/ウェル、細胞総数
250000/ウェル)。この粒をNaClで洗浄し、新たな完全培地(DMEM+10%FBS)を添加した。4日間の培養後、上清みを除去し、新たな培地を、10μMの濃度の該化合物とともに添加した。化合物添加の4日後、上清みを除去し、細胞を粒から遊離させ、溶解させた。mRNAおよびcDNAを作製し、TaqMan RT−PCRを用いて実施例1に記載のようにして、COL2、COL11、FGR3、FRZB、ALK1、PEDFの発現を測定した。
b)結果
アルジネート中で培養された軟骨細胞におけるマーカー遺伝子発現のアップレギュレートまたはダウンレギュレートに対する化合物の相対効果を表11にまとめる。効果は、分子の非存在(但しビヒクルDMSOの存在下)で培養された軟骨細胞と比較したものである。結果をコントロール(軟骨細胞+DMSO)と比べた平均発現(5例のOA患者の平均)で示す。NS=有意でない;−=阻害;+=増強;#=p<0.05(コントロールDMSOと比較したとき有意)。化合物は10μMで使用した。
いくつかの分子は、種々のマーカー遺伝子の発現に正または負に影響を及ぼす能力を有した。2つの化合物だけ(化合物8と化合物14)は、累加マーカースコア(CCスコア)に対して正の効果を有し、これは、これらの化合物が軟骨細胞の再分化を増強/媒介し得たことを示す。しかしながら、化合物14だけは、個々の各マーカーに対して所望の効果を有したが、BMP2またはALK1遺伝子の発現には効果がなかった。この化合物は、再移植前の軟骨細胞のエキソビボ脱分化の刺激に有用であり得、したがって、インビボでの関節の硝子軟骨形成に対する情勢が変わり得る。
実施例5.軟骨保護化合物のインビボ効果の試験
軟骨形成潜在能スコアに有意に影響を及ぼす実施例4の化合物について、細胞の軟骨細胞表現型の安定性に対する該化合物の効果もまたインビボで試験される。この目的のため、細胞集団を試験化合物またはバッファーのいずれかと接触させ、インキュベーション後、ヌードマウスモデル(上記参照)に注射する。各細胞集団が安定な硝子軟骨を生成する能力を評価する。軟骨形成潜在能スコアに対する化合物の効果は、該細胞集団の軟骨形成
潜在能に対する効果と相関することが確立される。

Claims (11)

  1. 細胞集団がインビボで安定な硝子軟骨を生成する能力を調べるためのインビトロ方法であって
    a)前記集団によるマーカーFRZB(Frizzled関連タンパク質)と、マーカーALK1(アクチビンA受容体、II型様キナーゼ1)と、PEDF(色素上皮由来因子)、COL11(コラーゲン、XI型A1)、COL2(コラーゲン、II型、α1)、FGFR3(線維芽細胞増殖因子受容体3)、OPN(オステオポンチン)、BMP−2(骨形成タンパク質2)およびRASF−PLA(ホスホリパーゼA2、IIA群)からなる群より選択される1つ以上のマーカーとを含む少なくとも3つのマーカー遺伝子のセットの発現を調べる工程と、
    b)数値によりそれぞれの個々のマーカーの発現レベルを表す工程と、
    c)累加スコアに個々のマーカーについての数値を結びつける工程と、
    d)インビボで、安定な硝子軟骨を生成するために、関節から採取された細胞集団の能力を、累加スコアに基づき、予測し、それにより累加スコアの値が安定な軟骨を生成する能力を示す、工程とを含む、方法。
  2. 細胞集団がインビボで安定な硝子軟骨を生成する能力を調べる前に、該細胞集団が、インビトロで軟骨生成を生じる細胞の能力に影響を及ぼし得る化合物または条件と接触させられる、請求項1に記載の方法。
  3. さらに、
    − 前記接触させる工程の前に、前記細胞集団による前記少なくとも3つのマーカー遺伝子のセットの発現レベルを測定する工程、ならびに
    − 前記接触させる工程の後に、該化合物または条件が、前記少なくとも3つのマーカー遺伝子のセットの中の1つ以上の発現に影響を及ぼし得るものであるか否かを判定する工程
    を含む、請求項2に記載の方法。
  4. 該少なくとも3つのマーカーのセットが、FRZBと、ALK1と、それぞれPEDF、COL11、COL2およびFGFR3からなる群より選択される2つ、3つおよび4つのマーカー遺伝子とを含む少なくとも4つ、5つまたは6つのマーカー遺伝子のセットである、請求項1に記載の方法。
  5. 該少なくとも3つのマーカー遺伝子のセットが、FRZB、ALK1、PEDF、COL11、COL2およびFGFR3を含む少なくとも6つのマーカー遺伝子のセットである、請求項1に記載の方法。
  6. さらに、該少なくとも3つのマーカー遺伝子のセットの発現に対する該化合物の存在の効果に基づいて、該化合物が、インビボで安定な硝子軟骨を生成する細胞集団の能力に影響を及ぼす能力を測定することを含む、請求項1に記載の方法。
  7. FRZB、COL11、COL2、FGFR3、OPN、BMP−2およびRASF−PLAからなる群より選択される1つ以上の陽性マーカー遺伝子の発現を増大させ得る化合物が軟骨形成に正に影響を及ぼすと特定され、PEDFおよび/またはALK−1のいずれかの発現を増大させ得る化合物が軟骨形成に負に影響を及ぼすと特定される、請求項6に記載の方法。
  8. 化合物または条件が軟骨形成に影響を及ぼす能力が、FRZB、COL11、COL2、FGFR3、OPN、BMP−2、RASF−PLAからなる群より選択される陽性マーカー遺伝子と、陰性マーカー遺伝子PEDFおよび/またはALK−1の発現に対する該化合物または条件の累加効果に基づいて測定される、請求項7に記載の方法。
  9. 細胞集団が関節から採取されたものである、請求項1に記載の方法。
  10. 軟骨形成性細胞における遺伝子のセットの発現を検出するためのプローブを備えるキットであって、該遺伝子のセットが、FRZB、ALK1、PEDF、COL11、COL2およびFGFR3からなる、キット。
  11. 軟骨形成性細胞における遺伝子のセットの発現を検出するためのデバイスであって、下記の
    − マーカー遺伝子の発現を検出するためのユニット、および
    − FRZBと、ALK1と、PEDFと、COL11と、COL2と、FGFR3と、OPNと、BMP−2と、RASF−PLAからなるマーカー遺伝子のセットに対するプローブ
    の1つ以上を備える、デバイス。
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