JP5453748B2 - 開缶性が非常に良好なイージーオープンエンドおよびその製造方法 - Google Patents

開缶性が非常に良好なイージーオープンエンドおよびその製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、表面処理鋼板も含めた板厚0.400mm以下の薄手鋼板を使用して製造される金属容器蓋、特に、飲料缶あるいは一般食缶その他広い用途に使用され、人手により容易に開口できる易開缶性蓋(イージーオープンエンド/EOE)に関するものである。
飲料缶、一般食缶などに使用されるEOEは、蓋の一部に、蓋が破壊され内容物の取出し口を形成するための開口案内線を設けている。この開口案内線の形成方法としては、通常用いられている、基本形状に成形後平らな金型に乗せ、開口輪郭形状に凸部を有する金型を押圧する方法や、上下金型の肩部で押圧加工し、開口案内線を形成する方法が知られている。
開缶時には材料が破壊し断裂するため、素材として延性は低いほうが好ましい面はあるが、一方でEOEの開缶取っ手を取り付けるためにはリベットと呼ばれる微小で複雑な加工をする必要があり、さらには缶胴に巻き締めるためにも、材料には良好な加工性が要求される。ただ、この開缶性は単なる伸びとは異なる、材料的な特徴が重要である。開缶性を容易にするためには、開口案内線部の厚さ(残厚)が加工前板厚の1/2〜1/5程度までに達することが必要であるが、残厚が厚過ぎる場合には開缶性不良、また薄過ぎる場合には運搬時など外部からの小さな衝撃で開缶してしまうといった問題がある。この開缶時の開けやすさと運搬時の開き難さの両立は、EOEの素材に注目した場合、特に鋼板を素材としたもので難易度が高い。これは、鋼板の破壊挙動に起因したものであり、鋼板の
「ねばり」に起因した鋼板の引き延ばされ挙動が、蓋の開蓋性を低下させている。また、引き伸ばされた部位が開口部の周囲に残ると、人がこれを取り扱った場合に、開口部で切創を受けるなどの安全面でも問題となる。このような鋼の「ねばり」に起因する問題は、特に、析出物等の第二相をそれほど多く含有せず加工性が比較的良好な、C、N、S、O等の析出物形成元素の含有量が低い鋼材で問題となりやすい。
このため鋼板を素材とした場合には、開口案内線形成金型には形状などに高精度が要求され、開口案内線形成時の摩耗による金型形状劣化という問題も生じている。
鋼板をEOE素材として使用した場合のこれら問題を解決するため改善が行われており、下記特許文献1のように酸化物を利用した技術や、下記特許文献2のように2次冷延加工により加工硬化挙動(n値)を制御する技術が開示されている。また、下記特許文献3,4のように開口案内線の形成の仕方に工夫したものがある。もちろん、材料と加工法を適切に組み合わせた手法も検討されている。しかし、これらの技術による開缶性の向上は十分とは言えず、スチール製EOEの市場での競争力向上には至っていない。
特開平11−269604号 特開2002−146474号 特開2006−88209号 特開2000−302127号
本発明は、EOE素材として鋼板を使用する際に問題となる、意図した際の開けやすさと、不用意な開き難さの両立に対し、破断時の引き延ばし変形の発生を抑止することで解決を図るものである。材料の破断に伴う局部伸びの発生において、板厚の減少を極力抑止し、微小クラックの進展を促進し、加工性を維持したままで、最終破断時の局部延性を抑えることを目的としている。このための材料条件および開口案内線の加工条件を明確にし、それを適用したEOEおよびその製造方法を提供するものである。
本発明者らは、鋼板を硬質化するため鋼板中に様々な第二相を分散させる研究を行なった。これは、いわゆる析出強化や組織強化の範疇に属するもので、第二相を分散させれば材質は硬質化し、当然の結果として延性が劣化するものではあるが、実験を重ねるうち、特定の形態をもつ第二相を鋼板中に分散させた場合は、特に破断時の局部延性のみを抑制できることを知見した。
さらにこの材料のEOE用素材としての使用を検討する中で、開口案内線と材料の関係を詳細に検討するうち、EOEとして理想的な特徴を持たせることが可能であることを知見した。そしてさらにEOE用素材として一般的に用いられているアルミ板についても同様の検討
を行い、アルミ板中の第二相の分散状態、第二相を分散させた硬質層と開口案内線の関係において、鋼板の場合と同様に好ましい効果が得られることを知見した。
すなわち、素材中の第二相の形態、素材の板厚方向の特性変化、開口案内線の板厚方向での形状、について詳細に検討し、本発明に至ったものであり、下記の3点を特徴とするものである。
1)EOEを形成する素材の板厚方向特性を制御して素材の板厚方向に硬質層を形成させる。
2)開口案内線の残厚を上記1)との関係で制御する。
3)硬質層に異方性の強い針状の第二相を分散させる。
本発明の要旨は特許請求の範囲に記載した通りの下記内容である。
(1) EOEの素材として用いる鋼板素材の成分が、質量%で、
C:0.100%以下、
N:0.040%以下、
Si:1.2%以下、
Mn:2.2%以下、
P:0.049%以下、
S:0.050%以下、
Al:3.0%以下、
O:0.070%以下を含有し、その他Fe及び不可避的不純物からなり、素材の板厚方向に硬度差を有し、案内線未加工部において、ビッカース硬度の測定値で、全厚の硬度分布における最高硬度を(硬質層の硬度)、最低硬度を(未硬質層の硬度)とした場合、(硬質層の硬度)/(未硬質層の硬度)>1.1を満足し、加えて該案内線未加工部において硬質層の最高硬度と未硬質層での最低硬度の中央値となる位置を硬質層と未硬質層の境界と定めた硬質層範囲を規定し、案内線残厚部において、0.10<(硬質層の厚さ)/(開口案内線の残厚)<1.0を満足することを特徴とするEOE。
(2)前記鋼板素材の成分が、質量%で、
Ti:0.10%以下、
Nb:0.10%以下、
B:0.0100%以下の一種または二種以上を含有することを特徴とする(1)に記載のEOE。
(3)前記案内線残厚部において、(開口案内線加工側での前記硬質層の厚さ)/(開口案内線加工反対側での前記硬質層の厚さ)<1.0を満足することを特徴とする(1)または(2)に記載のEOE。
(4)前記硬質層中の長径と短径の平均が0.05μm以上であり、析出強化において強化物質として炭化物、窒化物、硫化物のいずれかを分散させる第二相について、長径/短径≧2.0であることを特徴とする(1)〜(3)のいずれか一項に記載のEOE。
(5)前記第二相が窒化を適用していることを特徴とする(4)に記載のEOE。
(6)前記硬質層中の長径と短径の平均が0.05μm以上、長径/短径≧2.0である前記第二相について、硬質層中に対する前記第二相の体積分率が0.05%以上であることを特徴とする(4)または(5)に記載のEOE。
(7)板厚0.400mm以下の鋼板を素材とすることを特徴とする(1)〜(6)のいずれか一項に記載のEOE。
(8)素材となる鋼板の製造工程において、冷延後、再結晶焼鈍と同時に、またはその後、550〜750℃の温度域で、{(窒化時間(秒))×(窒化温度(℃))}/{(窒化性ガス濃度(%))×(窒化処理での冷却速度(℃/秒))}≧5なる条件で窒化処理を行い、N量を0.0002%以上増加させることを特徴とする(7)に記載のEOEの製造方法。
本発明によれば、開缶のために加工した開口案内線の破断時の局部変形(カエリ、バリ)の発生を抑えた、意図的な開けやすさ、不用意な開け難さを両立したEOEを得ることができる。また、リベット加工や巻締め加工の成形性を顕著に向上させることができるなど、産業上有用な著しい効果を奏する。
以下、本発明を実施するための最良の形態について詳細に説明する。
なお以下は主として素材を「鋼板」とした場合について記述するが、素材は「鋼板」に限らず、「アルミ板」とした場合にも効果を発現することは言うまでもない。成分については特に「アルミ」についても記述したが、その他の項目については請求項に応じて適宜アルミ板にも適用されるものである。
まず、本願で最も重要な、EOEを形成する鋼板の板厚方向特性と開口案内線の関係について述べる。本願では開口案内線の残厚と、そこでの硬質層の厚さを制御することが重要である。
以下に述べる特徴は、EOEの全部分または開口案内線の全周がこのようになっている必要はないが、少なくとも、開口案内線の一部がこの特性を満たす必要がある。
EOEを形成する鋼板の板厚方向特性と開口案内線の幾何学的な位置関係を決定するのに必要な値の一つは開口案内線の残厚である。これを求める方法は特に限定されるものではないが、板断面の観察や板表面からの観察、またはポイントマイクロメーターなどで鋼板の板厚方向の位置を知ることは困難なことではない。開口案内線の底部の形状が平坦でない場合は、もっとも薄い位置での残厚を用いる。
もう一つ重要となるのは、硬質層の境界位置である。鋼板の製造法によってはこの境界には遷移領域が見られることが普通であると考えられる。従来開発されているクラッド鋼板の開発、または本願の好ましい一例として後述する浸炭や窒化などの方法ではこの遷移領域を少なからず生ずる。このような遷移領域を形成している場合は、その中央の状態である位置を境界とする。たとえば、硬度分布による場合は、硬質層の最高硬度と未硬質層での最低硬度の中央値となる位置を境界と定める。もちろん、測定値にはばらつきが生ずるため、十分な試験を行い、妥当と考えられる硬度分布を決定して判定するものとする。通常は、同一の板厚深さ位置について、5点測定し、その平均値を、その深さ位置での硬度とすれば良い。硬度の測定方法は特に限定される物ではなく、当業者であれば適当な方
法で実施することが可能である。鋼板の硬度にもよるが、本願のような薄い板の板厚方向の分布を求めるには圧痕は十分に小さいことが必要でもあり、ビッカース硬度であれば、50g以下の荷重が好ましい。一般にEOEで使用されるもの程度の硬度であれば10g程度が適当である。この境界部を決定すべき残厚部分は案内線形成時に大きな歪を受け硬質化するとともに、さらに案内線加工部内にも板厚方向での歪に分布が生ずるため加工前の厚さ方向分布とは異なるものになり、得られる硬度分布が本来意図して形成していたものか、単に歪分布により生じたものか不明瞭にもなりやすい。このことも踏まえて、境界は組織の変化、成分の変化によって決定することも可能である。例えば、硬質化の原因となっている何らかの元素の濃度変化により決定できる。また、析出強化の場合には、析出
物の量の変化やサイズ、密度の変化などでも、組織強化の場合には組織の変化を板厚方向に観察することで決定できる。ここで注意すべきは、案内線加工後には、本来硬質層であった部分は、もはや硬質ではなく、未硬質層が案内線加工により強加工された部位と、硬度的には差が小さくなっている場合もあることである。とは言え、本願では、案内線加工前に硬質化させていた領域を「硬質層」として記述する。そして、「硬質層」および「未硬質層」の状態については、断りのない限り、案内線加工後の残厚部で測定するものとする。
このように決定される両者の関係を、適切な範囲に規定することで本願の効果を得ることが可能となる。本願では、0.10<(硬質層の厚さ)/(開口案内線の残厚)<1.0 とする。本願では硬質層の形成は必須であり、硬質層の厚さがあまりに薄いと開口時の破断挙動は未硬化の素材に大きな影響を受けるようになり、わざわざ本願のように硬質層を形成した意味が消失する。硬質層の効果を十分に得るには好ましくは0.15以上、さらに好ましくは0.20以上、さらに好ましくは0.25以上とする。一方、この比が1であるということは素材が全て硬質層であったことになり本願の意味を失う。また1.0ではなくとも、この値が1.0に近いと案内線加工部が硬質層にまで食い込むことになる。このような状況になると、案内線底部に生ずる微小なクラックが不用意な開口を誘発
してしまう。不用意な開口を回避するには好ましくは、0.9以下、さらに好ましくは0.8以下、さらに好ましくは0.7以下である。最適範囲は0.4〜0.5近傍に存在し、0.3以上、0.6以下の範囲で非常に好ましい効果を得ることができる。
案内線の形成や、硬質層の形成については様々な状況が考えられる。例えば板厚の中心部を硬質化した上で開口案内線を板の両方の面から加工し、元の板の板厚中心部を残厚として残すことも可能である。表層を硬化させた板において開口案内線を板の一方の面からの加工により形成する例を想定し、図1(a)〜(e)で硬質層と残厚との関係を説明する。
まず、(a)は板厚方向特性が、比較的広い面について制御されている場合を示す。開口案内線を加工する以前から、案内線の加工面の表層が硬化しており、これに案内線を形成したものである。この場合は、大きな変形を受けた案内線底部の先端の加工面側表面硬質層に微細なクラックが入り、開口を容易にするというメリットがある。反面、硬質な面を加工する必要があるため、案内線加工金型の磨耗が大きくなるなどの不具合も生ずる可能性があるので注意を要する。この場合、案内線加工面側の表層硬質層は変形によりその状態が大きく変化するが、案内線の底部と反対側の表面硬質層の距離を本願では重要な因子として制御する。
(b)は案内線加工面側においては、案内線加工部のみを未硬質層としたものである。このようにすることで案内線加工金型の磨耗を大幅に低減できる。図では案内線加工面側で加工部以外の領域を硬化するようにしている。このようにすることで、EOE全体のパネルとしての強度を確保することが可能となる。もちろん、案内線加工反対面の硬質層でもこの効果を十分に得ることは可能であり、(c)のように案内線加工面側を全面にわたり未硬質層とすることもできる。
(d)および(e)は案内線加工反対面の硬質層を部分的に形成したものである。案内線加工部の反対側を(d)のように硬質層とすることでも、(e)のように未硬質層とすることでも本願の効果を得ることが可能である。これらの場合には、硬質層と未硬質層の境界部に応力が集中し、開口を容易にする効果を得ることができる。ただし、破断時に未硬質層側に局部での引張伸びによりバリを生じることがあるので、特に安全性などで厳格な用途には注意が必要である。
ここで示した例はあくまでもひとつの例であって、本願の効果はここで示したものに限定されるものではない。
ただし、図1で示したような、表層を硬化させた板において開口案内線を板の一方の面からの加工により形成したEOEは工業的な製法上で有利であることに加え、特に、残厚の案内線加工側が未硬質層であり、残厚の案内線加工反対側が硬質層となっている場合(図1(c)〜(e))は、特性的にも好ましく、これを本願の特徴の一つとして規定する。すなわち、開口案内線の残厚部において、(開口案内線加工側での硬質層の厚さ)/(開口案内線加工反対側での硬質層の厚さ)<1.0 とする。この値は好ましくは、0.5以下、さらに好ましくは0.1以下、さらに好ましくは0である。開口案内線加工部をこのようにすることで、上述の開口に関する特性が向上するが、素材の全面を、特にリベット加工や巻締め加工を行う部位をこのようにすることで、上述の開口に関する特性のみ
ならず、リベット加工や巻締め加工という、EOEでは不可避的な加工特性が向上する。リベット加工とは、EOEを開口させるのに必要なタブをEOEそのものに固定して形成するために必要な、局部的な張り出し加工である。巻締め加工は、EOEを缶胴と結合し、容器を密閉するために行われるもので、局部的な曲げ加工である。EOE素材は、ある意味では破断しやすい素材である必要があるが、一方で、上述のような局部的には非常に厳しい加工に耐える必要があり、素材には延性も求められる。一般にEOEは缶蓋としての缶外側から案内線の加工がなされる。これは、案内線を加工することによる耐食性の劣化により内容物の変質を防ぐことが理由の一つである。また、開口用のタブは当然、缶外側に取り付けられるため、リベット加工は、缶外側に向かっての張り出し成形となる。ま
た、巻締めは、缶胴部は缶端部が缶外側に開かれ、蓋であるEOEは端部が缶内側に向かって曲げられる。すなわち、EOEの端部は、缶外側が曲げの外側になった加工を受ける。(開口案内線加工側での硬質層の厚さ)/(開口案内線加工反対側での硬質層の厚さ)<1.0、すなわち、案内線加工側が、案内線加工反対側より軟質である場合、缶外側が軟質であり、上記のリベット張り出しや巻締めでの曲げ加工で、より歪が高い面の延性が良好となる。一方、缶内側は、硬質ではあるが、リベット加工では張り出し工具との強い接触により、巻締めでも缶胴フランジとの強い接触により破断が抑制される。このように、EOEを製造する際の加工性という点で非常に好ましい硬度分布と言える。
なお、本発明で重要な表面硬質層の厚さについては、上述の開口案内線の残厚との関係を考慮すれば必要な厚さは類推することが可能であるため、あえて限定しない。つまり、開口案内線の残厚は一般的に、板厚の1/2〜1/5程度、大体、1/3〜1/4程度である。これは、元板厚や用途などにより使用者が適宜決定するものである。本願の対象鋼板の板厚はせいぜい0.4mm程度、薄いものでは0.1mmに達するものも想定されるが、通常0.2mm前後である。よって、開口案内線の残厚は、20〜100μm程度であるため、硬質層はこの1/4〜1/1程度の5〜100μm程度、最適な領域として残厚の1/2を考えれば、10〜50μmである。これは、元板厚0.2mmの1/20〜1/4となる。ただし、案内線加工による残厚部での板厚方向の歪の不均一性については
考慮しておらず、厳密には歪の不均一性のため、加工前と後で、各層の厚さの比は少なからず変化する。次に、「硬質化」について記述する。
硬化する手段は特に限定されるものではない。一般的に知られているように、成分が異なる鋼材を爆着や圧着などにより結合した、いわゆる複層鋼板を使用することは可能である。強化機構としては、固溶強化、析出強化、組織強化などが適用可能である。ただし、転位が主たる強化機構となる加工強化や結晶粒微細化による強化は本願の効果にとっては好ましい物ではない。また、浸炭や窒化などにより表層のみを硬質化することも可能であり、特に後述するように、窒化時に針状の窒化物を形成させることは好ましい方法の一つである。これら、爆着や圧着、さらには浸炭や窒化などにおいて、板面内で硬度を変化させることは、例えば爆着や圧着では接合させる元の部材の組み方を考えればよく、浸炭や窒化では
、一般に知られているような浸炭または窒化反応抑止材を素材表面に塗布することや、浸炭または窒化反応時の板温度を板面内で変化させることなどで達成が可能である。
本願では硬化量を案内線未加工部において(硬質層の硬度)/(未硬質層の硬度)>1.1 とすることで効果を十分に得ることができる。ここで(硬質層の硬度)は全厚の硬度分布における最高硬度、(未硬質層の硬度)は最低硬度とする。この値は、好ましくは1.2以上、さらに好ましくは1.4以上、さらに好ましくは1.6以上、さらに好ましくは1.8以上、さらに好ましくは2.0以上とする。この値は本願の特性が案内線加工部での開口性であるため、より厳密には案内線残厚部で測定すべきものとも言えるが、残厚部は大きな加工硬化により、本願に効果のある、硬質化の程度を硬度で正確に評価するのは困難な場合が生ずる。このため、ここでの硬度の比については、案内線未加工部で評価するものとする。案内線加工部では大きな加工硬化により硬度としての差は検知しにく
くなるものの、本願の特徴である硬質層の効果は残存し、未加工部の硬度で評価することが可能である。ただし、評価する案内線未加工部は、案内線加工部と同様の硬度分布を有している未加工部で評価すべきであることは言うまでもない。
本願では、硬質層を固溶強化、析出強化、組織強化で強化することが好ましいことはすでに述べたが、この中でも、特に析出強化および組織強化において好ましい効果を得ることができる。この中でも上述のような効果を得るために素材を十分に硬化させるには、炭素と窒素の活用が製造法も容易であり好ましい。炭素であれば、様々な熱処理を駆使して生成される、パーライト、ベイナイト、マルテンサイトなどの組織制御が可能である。もちろんこのような特定の組織でなくとも、セメンタイトによる析出強化によって十分な効果を得ることが可能である。
析出強化において強化物質として分散させる第二相としては、炭化物、窒化物、硫化物などが考えられるが、強化物質である第二相を異方性の強い針状のもの、すなわち 長径/短径≧2.0 とすることで本願の効果はさらに顕著になる。長径/短径は、好ましくは3.0以上、さらに好ましくは5.0以上、さらに好ましくは8.0以上である。
このような第二相の観察方法は特に限定されるものではない。形態は電子顕微鏡などのミクロ領域を観測可能な物理測定機器での直接観測が可能である。比較的大きなものであれば高倍率の光学顕微鏡でも観測は可能である。光学顕微鏡や、走査型電子顕微鏡(SEM)であれば、鋼板断面を研磨したもの、さらにそれをエッチングしたものを適用できるし、透過型電子顕微鏡(TEM)であれば、薄膜でもよいしSPEED法によって得られた抽出レプリカ等を観察することも可能である。さらに、電解抽出により母相を溶解した残渣を観察してもよい。また、観察された第二相の同定はEDXや電子線回折パターンなどで行なうことが可能であるが、これらの手法に限定されるものではなく、現在性能向上が著しいどのような分析機器を使用しても構わない。要は第二相の形状、サイズ、必要に応じてその種類が、妥当と認められる方法により決定できればよい。種類によっては、様々な相の複合的なものとなっており、完全な判別が困難な場合もあると考えられるが、本発明の効果は、その種類によらず第二相を特定の形態で分散させれば得られるものであるから、種類が決定できないものも本発明に含まれる。第二相の形態を示す値は、より高度な分析機器を使用し、より微細なものまで観測値として考慮すればその値は変化するが、通常レベルの物理機器を用いて、長径と短径の平均が0.05μm以上の大きさのものを対象とすれば本発明の効果を判別することが可能である。
またこのような第二相は体積分率で、0.05%以上含有することが好ましい。さらに好ましくは0.1%以上、さらに好ましくは0.3%以上、さらに好ましくは1.0%以上、さらに好ましくは2.0%以上である。ただし、あまりに第二相の量が多いと、不用意な破断を発生させる場合があることや、表面疵の原因ともなるので、20%以下とすることが好ましい。さらに好ましくは10%以下である。
上述の第二相は、一般的に鉄鋼材料中で観察される化合物であり、特殊なものである必要はないが、特殊な化合物を発明範囲内の形態で形成させることも可能である。その種類は上記のものに限ったものではなく、あくまでも代表的な元素を挙げたにすぎない。また、鋼中に存在する第二相は一種に限ったものではなく、二種以上が存在している場合も本発明に含まれる。これらは独立に存在していてもよく、複合化合物を形成していても構わない。さらには、形態的に本発明に包含されない相が同時に存在していても構わない。要は、第二相の形態的な特徴が重要である。
本願の効果は第二相の鋼板内での方位関係、主相の方位関係によっても挙動に差が見られることを確認しており、これらの方位制御も重要な要件となり得る。
非常に粗い考えではあるが、本発明の効果が発現するメカニズムは以下のように考えられる。開口案内線での破断は、「意図的な開けやすさ」と「不用意な開け難さ」を両立する必要
があることは先にも述べた通りである。この様な要求を単一の材質で満足することは様々な制約が大きくなることは容易に想像できる。例えば、案内線の形状や、残厚の精密な制御が必要になり、これらは製造上の障害ともなっている。本願では、これを複合材料として解決できたものと思われる。すなわち、未硬質層での「ねばり」と、一旦破断を開始した後の「硬質層」での脆性的な破断とがメカニズムとして働いていると考えられる。案内線の底部では、微小なクラックが発生し、外力によりこれが進展し破断が開始するが、これが容易に進展しては「不用意な開口」が起きてしまう。この破断極初期を未硬質層の「ねばり」で維持し、クラックが硬質層に達すれば直ちに硬質層に変形が集中し、「ねばることなく」破断する。この際に、局部での引張伸びは発生せず、「意図的な開けやすさ
」が満足される。この効果が、(硬質層の厚さ)/(開口案内線の残厚)が0.5近傍で発現するということは、破断材料の1/2程度が切れにくく、1/2は切れやすい部分であることが好ましいということに相当する。
次に、使用する鋼板の成分について説明する。本願は本願の効果を得る上において、鋼板の成分には全く制限されるものではない。とは言え、用途も考えた上での製造コストや製造難易度も考慮し好ましい鋼板成分の範囲を示す。また、硬質層と未硬質層で成分が異なる場合もあるが、特に記述のない限り、その両方について満足するものとする。成分はすべて質量%である。
C量は、鋼板全体の加工性の観点から、C:0.100%以下とする。好ましくは0.080%以下、さらに好ましくは0.060%以下である。Cで硬化させる場合、硬質層の濃度は1.000%以下とする。これ以上になると、不用意な開口がおき易くなる。好ましくは0.800%以下、さらに好ましくは0.400%以下である。N量もCと同様、鋼板全体の加工性の観点から、N:0.040%以下とする。好ましくは0.030%以下、さらに好ましくは0.020%以下である。Nで硬化させる場合、硬質層の濃度は2.200%以下とする。これ以上になると、不用意な開口がおき易くなる。好ましくは1.200%以下、さらに好ましくは0.600%以下である。
Siは多すぎると加工性が劣化するため1.2%以下とする。Siで硬化させる場合、硬質層の濃度は3.2%以下とする。これ以上になると、不用意な開口がおき易くなる。好ましくは2.2%以下、さらに好ましくは1.5%以下である。また表層においてはメッキ性が厳格な用途では1.0%以下とする。
Mnは多すぎると加工性が劣化するため2.2%以下とする。好ましくは0.60%以下である。Mnで硬化させる場合、硬質層の濃度は3.2%以下とする。これ以上になると、不用意な開口がおき易くなる。好ましくは2.2%以下、さらに好ましくは1.5%以下である。また表層においてはメッキ性が厳格な用途では1.0%以下とする。
Pは多すぎると加工性が劣化するため0.049%以下とする。好ましくは0.039%以下、さらには0.029%以下、さらには0.024%以下とする。Pで硬化させる場合、硬質層の濃度は0.089%以下とする。これ以上になると、不用意な開口がおき易くなる。好ましくは0.069%以下、さらに好ましくは0.049%以下である。また表層においてはメッキ性が厳格な用途では0.079%以下とする。Sは熱間延性を劣化させ、鋳造や熱間圧延の阻害要因となるので0.050%以下とする。0.039%以下とすることが好ましい。さらに好ましくは0.029%以下、さらには0.024%以下とする。
Alは高いと鋳造が困難となる、表面の疵が増加するなどの害があるため3.0%以下とする。好ましくは1.2%以下、さらに好ましくは0.6%以下である。また表層においてはメッキ性が厳格な用途では0.3%以下とする。
Oは鋼中で粗大な酸化物を生成することで本願の目的であるEOE開口時の微小クラックの進展を促進し最終破断時の局部延性を抑止するには好ましい元素である。とは言え、高すぎると製造時に鋳造工程での不具合を生じるため上限を0.070%とする。また、硬質層におけるOの濃度の上限は0.100%とする。一方で、リベット加工や巻締め成形など、厳しい加工により不用意な破断の起点にもなるため、これらの加工性を重視する場合には低く抑えるべきである。本発明の主たる技術構成として、硬質層軟質層の制御によりEOE開口時の局部延性を抑止したものであるため、この目的での酸化物は不要とも言える。このため、本願ではOは極力低く抑制することが好ましい。好ましくは0.040%以下、さらに好ましくは0.019%以下、さらに好ましくは0.0089%
以下、さらに好ましくは0.0049%以下であり、0.0029%以下とすれば、通常の加工であれば悪影響はほとんどなく、0.0019%以下とすれば厳しい加工でも問題なく、0.0014%以下であれば酸化物を起点としたクラックの進展は考慮する必要はなく、0.0009%以下であればリベット成形などの局部的な延性も格段に向上し、さらに、0.0004%以下であれば数ppmレベルで管理される実製造での欠陥についてもほぼゼロとすることが可能である。
次に必要に応じて添加できる元素について説明する。
Tiは鋼板の再結晶温度を上げ、本発明が対象とする極薄鋼板の焼鈍通板性を著しく劣化させる。このため0.10%以下とする。本発明で有用となる第二相としてTi化合物を利用しない場合は、Tiを添加する必要はなく、0.019%以下、さらに好ましくは0.009%以下とする。一方で、Tiの炭化物、窒化物、硫化物は本発明で特徴となる第二相として利用でき、化合物を形成する元素の種類と量にもよるが、0.041%以上とするとその効果が十分に発揮される。さらに好ましくは0.061%以上である。
NbもTiと同様の影響を有し、再結晶温度を上げ、本発明が対象とする極薄鋼板の焼鈍通板性を著しく劣化させる。このため0.10%以下とする。本発明で有用となる第二相としてNb化合物を利用しない場合は、Nbを添加する必要はなく、0.019%以下、さらに好ましくは0.009%以下とする。一方で、Nbの炭化物、窒化物、硫化物は本発明で特徴となる第二相として利用でき、化合物を形成する元素の種類と量にもよるが、0.041%以上とするとその効果が十分に発揮される。さらに好ましくは0.061%以上である。
BもTi、Nbと同様の効果を有する。ただし、添加量にもよるがTiやNbと比較すると炭窒化物の形成能が小さく、第二相として炭化物や窒化物を形成させる目的で、これらの元素と同時に添加した場合、鋼板の再結晶温度を上げ、本発明が対象とする極薄鋼板の焼鈍通板性を著しく劣化させる。このためTi,Nbの含有量が少ない場合に有用となる。しかし過剰な添加は鋳造時の鋳片の割れが顕著になるため上限を0.0100%とする。本発明で特徴となる第二相としてB化合物を利用しない場合は、Bを添加する必要はなく、0.0019%以下、さらに好ましくは0.0009%以下とする。一方で、Bの炭化物、窒化物は本発明で特徴となる第二相として利用でき、化合物を形成する元素の種類と量にもよるが、0.0021%以上とするとその効果が十分に発揮される。さらに好
ましくは0.0041%以上である。
上記以外の元素についての含有量は特に限定しないが、本発明で規定していない特性を付与するためにCu、Ni、Cr、Ca、Sn,Sb,Mo,Ta,V,W、REMを添加することが可能である。つまり、ステンレス鋼や各種の特殊鋼などについても本発明の効果を付与することが可能である。さらにこれらの元素に限らず、鉄鉱石、石炭、スクラップなどの原材料、溶解炉、圧延機、焼鈍炉との接触も含む製造工程雰囲気などから、意識せず不可避的に混入する元素も本発明の効果に特に悪影響を及ぼすものではない。また、これらの元素は、本願の特徴である第二相に含有されることもある。例えば、Cu、REMは硫化物に、Cr、Mo、Vは炭化物に、Cr,Vは窒化物に含有される。これらは通常知られているように鋼中での元素分配に従うものであり、従来技術として知られている範囲で第二相中への分配を制御することは本願の効果を損なうものではない。分配する元素により本願発明の効果が多少増減することは当然である。
EOE素材を「アルミ板」とする場合については、成分を以下のように限定する。以下で限定しない部分については、残部アルミおよび不可避的不純物である。Siは下限を0.00001%、好ましくは0.1%とする。上限は2.0%、好ましくは1.0%である。コストと必要とする特性の観点から限定される。
Mnは下限を0.00001%、好ましくは0.1%とする。上限は4.0%、好ましくは1.5%である。コストと必要とする特性の観点から限定される。Oは下限を0.00001%、好ましくは0.0001%とする。上限は0.10%、好ましくは0.01%である。コストと必要とする特性の観点から限定される。
その他、Ti、Cu、Mg、Zn、Cr、Feが、不可避的または一般的に知られている範囲で目的に応じて含有される。これらの元素は合計で下限を0.00001%、好ましくは0.0001%とする。上限は20.0%、好ましくは10.0%である。コストと必要とする特性の観点から限定される。
次に本発明が対象とする鋼板の特性等について記す。
まず、本発明は板厚が0.400mm以下の鋼板に適用されることと限定する。これより板厚が厚い鋼板では原因は不明であるものの、第二相の特徴的な分散による局部的な引き延ばし変形の抑止効果が見られなくなる。本技術はより好ましくは0.250mm以下、さらに好ましくは0.200mm以下、さらに好ましくは0.150mm以下の極薄鋼板でその有用性が発揮されるものである。
以下に、本発明鋼の第二相の形態制御に好ましい製造法を示す。
第二相を異方性の強い針状のものとしながら、本願で好ましい形態である表層のみを硬化するには、窒化を適用し、針状の窒化物を活用することが好ましい。
窒化によれば、前述のように、鋼板の表面のみに特徴的な第二相を分散させることが可能で、N濃度が徐々に高まっていくため優先的な方位に成長した異方的な形態を持つ窒化物を形成させやすい。その条件としては冷延後、再結晶焼鈍と同時に、またはその後、550〜750℃の温度域で、{(窒化時間(秒))×(窒化温度(℃))}/{(窒化性ガス濃度(%))×(窒化処理での冷却速度(℃/秒))}≧5 なる条件で窒化処理を行い、N量を0.0002%以上増加させることを特徴とする。ここで「窒化処理での冷却速度」とは、窒化処理での最高到達温度から、550℃に達するまでの平均冷却速度とする。温度がこの範囲を外れると、低温側では窒化効率が低下し、逆に高すぎると窒化物の形態が等方的なものになりやすくなる。{(窒化時間(秒))×(窒化温度(℃))}/{(窒化性ガス濃度(%))×(窒化処理での冷却速度(℃/秒))}が5以上の場合には第二相の好ましい形態が達成される。好ましくは10以上、さらに好ましくは15以上である。基本的には低N濃度で窒化物の析出核の生成を抑制しながら、高温、長時間および緩冷却の処理で窒化物を十分に成長させることで、異方性を有する第二相の発達が顕著になる。ただし、高温かつ長時間の窒化を行うと、硬質層が厚くなり本願の効果が得られなくなる。{(窒化時間(秒))×(窒化温度(℃))}/{(窒化性ガス濃度(%))×(窒化処理での冷却速度(℃/秒))}で300以下に制御することが好ましい。さらに好ましくは200以下、さらに好ましくは150以下である。窒化性ガスの種類を含めた雰囲気の条件は一般的に知られている条件を用いればよい。また、窒化方法はここに示したガス窒化に限定されるものではなく、一般的に知られている窒化方法を適用することが可能である。また、Nの増加量、0.0002%以上は増加量としては非常に小さく見えるが、極薄材における鋼板表層での増加量を考えると発明の効果の発現には十分な量である。好ましくは0.0010%以上、さらに好ましくは0.0050%以上、さらに好ましくは0.0100%以上、さらに好ましくは0.0200%以上とする。
上述の処理によって得られる窒化物を異方性の強い針状のものとする観点からはFeを主体とするものであることが好ましい。このため、Ti、Nb、Al、Bを窒化物形成の意図をもって添加する必要はない。
薄手鋼板の製造においては、硬度調整や板厚調整のために再結晶焼鈍の後に再冷延を行なう場合がある。この圧下率は形状調整のために行なわれるスキンパスに近い数%程度から、冷延と同様の50%以上までが実用化されている。本発明に再冷延法を適用する場合、本発明の効果は何ら損なわれるものではない。少し考えると、本願のように硬質層軟質層を層状に有する鋼板を圧延すると、軟質層のみが優先的に硬化し、意図を持って形成していた硬質層の効果が小さくなるとも思えるが、事実はこれとは異なる。硬質層の拘束により、硬質層軟質層はほぼ同様に硬化し、その硬度差は失われること無く維持される。条件によっては、むしろ硬度差が拡大することもある。
本発明の効果は成分調整以降、焼鈍前の熱履歴、製造履歴によらない。熱延を行う場合のスラブはインゴット法、連続鋳造法などの製造法には限定されず、また熱延に至るまでの熱履歴にもよらないため、スラブ再加熱法、鋳造したスラブを再加熱することなく直接熱延するCC−DR法、さらには粗圧延などを省略した薄スラブ鋳造によっても本発明の効果を得ることができる。また熱延条件にもよらず、仕上げ温度をα+γの二相域とする二相域圧延や、粗バーを接合して圧延する連続熱延によっても本発明の効果を得られる。
本発明鋼板は何らかの表面処理を行って使用される場合も含むものとする。本発明の範囲内であれば、適用により表面処理により損なわれるものではない。表面処理としては、金属めっきについては通常適用されている、錫、クロム(ティンフリー)、Ni、亜鉛、アルミなどが施される。また、近年使用されるようになっている有機皮膜を被覆したラミネート鋼板用の原板に関しても、本発明の効果を得ることが可能となる。用途としては金属蓋全般に使用可能であり、これ以外の分野でも何らかの用途において上述と同様の課題がある場合には適用が可能であることは言うまでもない。容器の蓋が一部のみ開口するパーシャルEOE、全面が開口するフルオープンEOEなど、EOEのデザインにもよらず適用可能である。
表1に示す各成分の鋼について、熱間圧延、冷間圧延、再結晶焼鈍、再冷延を行い各種鋼板を製造し、各種の評価試験を行った。第二相の形態、分散状態は、SEMおよびTEMを用いて鋼板の断面、鋼板薄膜、抽出レプリカおよび電解抽出残渣により、硬質層について観察した。また、EDXを用いた第二相に含まれる元素分析結果から第二相を定性的に同定した。本願の効果の指標でもある、EOEとしての特性は、次の4点で評価した。まず1点目はリベット加工における最大成形高さである。4mmφの張り出し形状における最大成形高さを求めた。この高さは高いほどリベット成形性が良いことを示し、本実施条件においては、4mmの成形高さが確保できなければ、リベット加工が不可能となり、5mm程度であれば実用的にも優秀な特性であり、6mmまで加工できれば現状の技術レ
ベルから見れば非常に優れた特性と言える。2点目はポップ値と呼ばれる、EOEを開口する際の初期の必要荷重である。この値は低いほど開口しやすいものであるが、あまりに低いと容器の流通過程の取扱いなどで不用意に開口してしまうため、本実施例条件においては0.5kgfが実用的に必要な最低荷重である。一方で値が高すぎると開口に大きな力が必要となり、実用上、女性や子供などで開口できないという問題を生ずる。さらにあまりに高いとプルタブを使用して開口動作を行なった際に、プルタブが折れ曲がってしまうなど、開口不可能ともなってしまう。このため2.0kgf未満にする必要がある。好ましくは1.0〜1.5kgf程度に制御されるべきものである。3点目はティア値と呼ばれる、EOEの開口部を引き裂く過程での最大荷重である。これもポップ値と同様に開
口のしやすさに関わる値であり、あまりに高いとプルタブを使用して開口動作を行なった際に、プルタブがリベット部から千切れるなど、開口不可能ともなってしまう。本実施条件においては2.0〜5.0kgfとする必要があり、好ましくは3.0〜4.0kgfである。4点目は蓋としての耐圧強度である。これが低いと、EOEの開口時に蓋そのものが変形して破断しにくくなるばかりか、内容物充填後の容器の取扱い時に内圧の変化や落下など外力により蓋が変形してしまう。缶に内圧を加え、蓋が膨らむ時点での圧力で評価した。耐圧強度は基本的には高すぎて問題になることはないが、一般的には加工性などとの兼合いから、あまりに高い強度を付与することは加工性の点で問題を生ずる。また素材自体があまりに硬いと製造上の問題も生ずる。必要な最低強度は内容物にもよるが、本
実施条件では、炭酸などのガスを含まない飲料では、6.5kgf、ビールなど炭酸ガス圧が高い飲料では7.5kgfは必要な特性である。8.0kgfであればほとんど全ての用途に使用可能で、9.0kgfは現状の実用材料でも一般的には到達できていないレベルである。これはこれらを総合的に勘案し、本発明の効果を評価した。
測定結果および評価を表2に示す。
実施例No.1〜18は成分が異なる二種の素材で複合材料を製造した場合の結果であり、No.1,4,7,10,13,16は、二種の素材を圧着により複層化することにより発明の効果を得たものである。それ以外は、それぞれの材料を単層材として評価した比較例である。
実施例No.19〜39において、No.20〜22、24〜29、31、32、34、35、37、39は単層の鋼板を焼鈍後の窒化により表層のみを硬質化したものである。窒化をしていないものは比較の単層材である。一部のものは、片面に窒化抑止剤を塗布することで窒化の程度を制御し、表と裏の硬質化の程度を変えたものを作成した。
このように作成された硬質化部の詳細は、「複層状況」欄に記載した。「硬質化部表層厚割合」、「硬質化部裏層厚割合」と区別しているが、表と裏に特別な意味はなく、案内線が形成された面が表層側になるようにしている。「複層のパターン」は図1の(a)〜(e)に準じたものである。
なお、実施鋼中には成分や熱処理により様々な第二相が観察される場合があるが、表中の「主たる第二相」は本願効果の根源となっている、本発明の特徴を示す第二相についてのみ示した。
また「含有元素」についても、本発明の特徴を示す第二相から検出された元素の主なものについてのみ示した。
「評価」は、通常レベル:D、効果が見られる:C、優れる:B、著しく優れる:A とし、A、B、Cを発明とする。板厚や残厚などにも特性値が影響されるが、これらも含めて、本発明による好ましい範囲が明確になり、本発明の効果が確認された。
Figure 0005453748
Figure 0005453748
本発明のEOEの実施形態を例示する断面図である。 本発明のEOEの実施形態を例示する断面図である。 本発明のEOEの実施形態を例示する断面図である。 本発明のEOEの実施形態を例示する断面図である。 本発明のEOEの実施形態を例示する断面図である。

Claims (8)

  1. EOEの素材として用いる鋼板素の成分が、質量%で、
    C:0.100%以下、
    N:0.040%以下、
    Si:1.2%以下、
    Mn:2.2%以下、
    P:0.049%以下、
    S:0.050%以下、
    Al:3.0%以下、
    O:0.070%以下を含有し、その他Fe及び不可避的不純物からなり、素材の板厚方向に硬度差を有し、案内線未加工部において、ビッカース硬度の測定値で、全厚の硬度分布における最高硬度を(硬質層の硬度)、最低硬度を(未硬質層の硬度)とした場合、(硬質層の硬度)/(未硬質層の硬度)>1.1を満足し、加えて該案内線未加工部において硬質層の最高硬度と未硬質層での最低硬度の中央値となる位置を硬質層と未硬質層の境界と定めた硬質層範囲を規定し、案内線残厚部において、0.10<(硬質層の厚さ)/(開口案内線の残厚)<1.0を満足することを特徴とするEOE。
  2. 前記鋼板素材の成分が、質量%で、
    Ti:0.10%以下、
    Nb:0.10%以下、
    B:0.0100%以下の一種または二種以上を含有することを特徴とする請求項1に記載のEOE。
  3. 前記案内線残厚部において、(開口案内線加工側での前記硬質層の厚さ)/(開口案内線加工反対側での前記硬質層の厚さ)<1.0を満足することを特徴とする請求項1または2に記載のEOE。
  4. 前記硬質層中の長径と短径の平均が0.05μm以上であり、析出強化において強化物質として炭化物、窒化物、硫化物のいずれかを分散させる第二相について、長径/短径≧2.0であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載のEOE。
  5. 前記第二相が窒化を適用していることを特徴とする請求項に記載のEOE。
  6. 前記硬質層中の長径と短径の平均が0.05μm以上、長径/短径≧2.0である前記第二相について、硬質層中に対する前記第二相の体積分率が0.05%以上であることを特徴とする請求項またはに記載のEOE。
  7. 板厚0.400mm以下の鋼板を素材とすることを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に記載のEOE。
  8. 素材となる鋼板の製造工程において、冷延後、再結晶焼鈍と同時に、またはその後、550〜750℃の温度域で、{(窒化時間(秒))×(窒化温度(℃))}/{(窒化性ガス濃度(%))×(窒化処理での冷却速度(℃/秒))}≧5なる条件で窒化処理を行い、N量を0.0002%以上増加させることを特徴とする請求項に記載のEOEの製造方法。
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