JP5453748B2 - 開缶性が非常に良好なイージーオープンエンドおよびその製造方法 - Google Patents
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Description
「ねばり」に起因した鋼板の引き延ばされ挙動が、蓋の開蓋性を低下させている。また、引き伸ばされた部位が開口部の周囲に残ると、人がこれを取り扱った場合に、開口部で切創を受けるなどの安全面でも問題となる。このような鋼の「ねばり」に起因する問題は、特に、析出物等の第二相をそれほど多く含有せず加工性が比較的良好な、C、N、S、O等の析出物形成元素の含有量が低い鋼材で問題となりやすい。
を行い、アルミ板中の第二相の分散状態、第二相を分散させた硬質層と開口案内線の関係において、鋼板の場合と同様に好ましい効果が得られることを知見した。
1)EOEを形成する素材の板厚方向特性を制御して素材の板厚方向に硬質層を形成させる。
2)開口案内線の残厚を上記1)との関係で制御する。
3)硬質層に異方性の強い針状の第二相を分散させる。
(1) EOEの素材として用いる鋼板素材の成分が、質量%で、
C:0.100%以下、
N:0.040%以下、
Si:1.2%以下、
Mn:2.2%以下、
P:0.049%以下、
S:0.050%以下、
Al:3.0%以下、
O:0.070%以下を含有し、その他Fe及び不可避的不純物からなり、素材の板厚方向に硬度差を有し、案内線未加工部において、ビッカース硬度の測定値で、全厚の硬度分布における最高硬度を(硬質層の硬度)、最低硬度を(未硬質層の硬度)とした場合、(硬質層の硬度)/(未硬質層の硬度)>1.1を満足し、加えて該案内線未加工部において硬質層の最高硬度と未硬質層での最低硬度の中央値となる位置を硬質層と未硬質層の境界と定めた硬質層範囲を規定し、案内線残厚部において、0.10<(硬質層の厚さ)/(開口案内線の残厚)<1.0を満足することを特徴とするEOE。
(2)前記鋼板素材の成分が、質量%で、
Ti:0.10%以下、
Nb:0.10%以下、
B:0.0100%以下の一種または二種以上を含有することを特徴とする(1)に記載のEOE。
(3)前記案内線残厚部において、(開口案内線加工側での前記硬質層の厚さ)/(開口案内線加工反対側での前記硬質層の厚さ)<1.0を満足することを特徴とする(1)または(2)に記載のEOE。
(4)前記硬質層中の長径と短径の平均が0.05μm以上であり、析出強化において強化物質として炭化物、窒化物、硫化物のいずれかを分散させる第二相について、長径/短径≧2.0であることを特徴とする(1)〜(3)のいずれか一項に記載のEOE。
(5)前記第二相が窒化を適用していることを特徴とする(4)に記載のEOE。
(6)前記硬質層中の長径と短径の平均が0.05μm以上、長径/短径≧2.0である前記第二相について、硬質層中に対する前記第二相の体積分率が0.05%以上であることを特徴とする(4)または(5)に記載のEOE。
(7)板厚0.400mm以下の鋼板を素材とすることを特徴とする(1)〜(6)のいずれか一項に記載のEOE。
(8)素材となる鋼板の製造工程において、冷延後、再結晶焼鈍と同時に、またはその後、550〜750℃の温度域で、{(窒化時間(秒))×(窒化温度(℃))}/{(窒化性ガス濃度(%))×(窒化処理での冷却速度(℃/秒))}≧5なる条件で窒化処理を行い、N量を0.0002%以上増加させることを特徴とする(7)に記載のEOEの製造方法。
なお以下は主として素材を「鋼板」とした場合について記述するが、素材は「鋼板」に限らず、「アルミ板」とした場合にも効果を発現することは言うまでもない。成分については特に「アルミ」についても記述したが、その他の項目については請求項に応じて適宜アルミ板にも適用されるものである。
法で実施することが可能である。鋼板の硬度にもよるが、本願のような薄い板の板厚方向の分布を求めるには圧痕は十分に小さいことが必要でもあり、ビッカース硬度であれば、50g以下の荷重が好ましい。一般にEOEで使用されるもの程度の硬度であれば10g程度が適当である。この境界部を決定すべき残厚部分は案内線形成時に大きな歪を受け硬質化するとともに、さらに案内線加工部内にも板厚方向での歪に分布が生ずるため加工前の厚さ方向分布とは異なるものになり、得られる硬度分布が本来意図して形成していたものか、単に歪分布により生じたものか不明瞭にもなりやすい。このことも踏まえて、境界は組織の変化、成分の変化によって決定することも可能である。例えば、硬質化の原因となっている何らかの元素の濃度変化により決定できる。また、析出強化の場合には、析出
物の量の変化やサイズ、密度の変化などでも、組織強化の場合には組織の変化を板厚方向に観察することで決定できる。ここで注意すべきは、案内線加工後には、本来硬質層であった部分は、もはや硬質ではなく、未硬質層が案内線加工により強加工された部位と、硬度的には差が小さくなっている場合もあることである。とは言え、本願では、案内線加工前に硬質化させていた領域を「硬質層」として記述する。そして、「硬質層」および「未硬質層」の状態については、断りのない限り、案内線加工後の残厚部で測定するものとする。
してしまう。不用意な開口を回避するには好ましくは、0.9以下、さらに好ましくは0.8以下、さらに好ましくは0.7以下である。最適範囲は0.4〜0.5近傍に存在し、0.3以上、0.6以下の範囲で非常に好ましい効果を得ることができる。
ならず、リベット加工や巻締め加工という、EOEでは不可避的な加工特性が向上する。リベット加工とは、EOEを開口させるのに必要なタブをEOEそのものに固定して形成するために必要な、局部的な張り出し加工である。巻締め加工は、EOEを缶胴と結合し、容器を密閉するために行われるもので、局部的な曲げ加工である。EOE素材は、ある意味では破断しやすい素材である必要があるが、一方で、上述のような局部的には非常に厳しい加工に耐える必要があり、素材には延性も求められる。一般にEOEは缶蓋としての缶外側から案内線の加工がなされる。これは、案内線を加工することによる耐食性の劣化により内容物の変質を防ぐことが理由の一つである。また、開口用のタブは当然、缶外側に取り付けられるため、リベット加工は、缶外側に向かっての張り出し成形となる。ま
た、巻締めは、缶胴部は缶端部が缶外側に開かれ、蓋であるEOEは端部が缶内側に向かって曲げられる。すなわち、EOEの端部は、缶外側が曲げの外側になった加工を受ける。(開口案内線加工側での硬質層の厚さ)/(開口案内線加工反対側での硬質層の厚さ)<1.0、すなわち、案内線加工側が、案内線加工反対側より軟質である場合、缶外側が軟質であり、上記のリベット張り出しや巻締めでの曲げ加工で、より歪が高い面の延性が良好となる。一方、缶内側は、硬質ではあるが、リベット加工では張り出し工具との強い接触により、巻締めでも缶胴フランジとの強い接触により破断が抑制される。このように、EOEを製造する際の加工性という点で非常に好ましい硬度分布と言える。
考慮しておらず、厳密には歪の不均一性のため、加工前と後で、各層の厚さの比は少なからず変化する。次に、「硬質化」について記述する。
、一般に知られているような浸炭または窒化反応抑止材を素材表面に塗布することや、浸炭または窒化反応時の板温度を板面内で変化させることなどで達成が可能である。
くなるものの、本願の特徴である硬質層の効果は残存し、未加工部の硬度で評価することが可能である。ただし、評価する案内線未加工部は、案内線加工部と同様の硬度分布を有している未加工部で評価すべきであることは言うまでもない。
析出強化において強化物質として分散させる第二相としては、炭化物、窒化物、硫化物などが考えられるが、強化物質である第二相を異方性の強い針状のもの、すなわち 長径/短径≧2.0 とすることで本願の効果はさらに顕著になる。長径/短径は、好ましくは3.0以上、さらに好ましくは5.0以上、さらに好ましくは8.0以上である。
があることは先にも述べた通りである。この様な要求を単一の材質で満足することは様々な制約が大きくなることは容易に想像できる。例えば、案内線の形状や、残厚の精密な制御が必要になり、これらは製造上の障害ともなっている。本願では、これを複合材料として解決できたものと思われる。すなわち、未硬質層での「ねばり」と、一旦破断を開始した後の「硬質層」での脆性的な破断とがメカニズムとして働いていると考えられる。案内線の底部では、微小なクラックが発生し、外力によりこれが進展し破断が開始するが、これが容易に進展しては「不用意な開口」が起きてしまう。この破断極初期を未硬質層の「ねばり」で維持し、クラックが硬質層に達すれば直ちに硬質層に変形が集中し、「ねばることなく」破断する。この際に、局部での引張伸びは発生せず、「意図的な開けやすさ
」が満足される。この効果が、(硬質層の厚さ)/(開口案内線の残厚)が0.5近傍で発現するということは、破断材料の1/2程度が切れにくく、1/2は切れやすい部分であることが好ましいということに相当する。
以下、さらに好ましくは0.0049%以下であり、0.0029%以下とすれば、通常の加工であれば悪影響はほとんどなく、0.0019%以下とすれば厳しい加工でも問題なく、0.0014%以下であれば酸化物を起点としたクラックの進展は考慮する必要はなく、0.0009%以下であればリベット成形などの局部的な延性も格段に向上し、さらに、0.0004%以下であれば数ppmレベルで管理される実製造での欠陥についてもほぼゼロとすることが可能である。
ましくは0.0041%以上である。
Mnは下限を0.00001%、好ましくは0.1%とする。上限は4.0%、好ましくは1.5%である。コストと必要とする特性の観点から限定される。Oは下限を0.00001%、好ましくは0.0001%とする。上限は0.10%、好ましくは0.01%である。コストと必要とする特性の観点から限定される。
その他、Ti、Cu、Mg、Zn、Cr、Feが、不可避的または一般的に知られている範囲で目的に応じて含有される。これらの元素は合計で下限を0.00001%、好ましくは0.0001%とする。上限は20.0%、好ましくは10.0%である。コストと必要とする特性の観点から限定される。
ベルから見れば非常に優れた特性と言える。2点目はポップ値と呼ばれる、EOEを開口する際の初期の必要荷重である。この値は低いほど開口しやすいものであるが、あまりに低いと容器の流通過程の取扱いなどで不用意に開口してしまうため、本実施例条件においては0.5kgfが実用的に必要な最低荷重である。一方で値が高すぎると開口に大きな力が必要となり、実用上、女性や子供などで開口できないという問題を生ずる。さらにあまりに高いとプルタブを使用して開口動作を行なった際に、プルタブが折れ曲がってしまうなど、開口不可能ともなってしまう。このため2.0kgf未満にする必要がある。好ましくは1.0〜1.5kgf程度に制御されるべきものである。3点目はティア値と呼ばれる、EOEの開口部を引き裂く過程での最大荷重である。これもポップ値と同様に開
口のしやすさに関わる値であり、あまりに高いとプルタブを使用して開口動作を行なった際に、プルタブがリベット部から千切れるなど、開口不可能ともなってしまう。本実施条件においては2.0〜5.0kgfとする必要があり、好ましくは3.0〜4.0kgfである。4点目は蓋としての耐圧強度である。これが低いと、EOEの開口時に蓋そのものが変形して破断しにくくなるばかりか、内容物充填後の容器の取扱い時に内圧の変化や落下など外力により蓋が変形してしまう。缶に内圧を加え、蓋が膨らむ時点での圧力で評価した。耐圧強度は基本的には高すぎて問題になることはないが、一般的には加工性などとの兼合いから、あまりに高い強度を付与することは加工性の点で問題を生ずる。また素材自体があまりに硬いと製造上の問題も生ずる。必要な最低強度は内容物にもよるが、本
実施条件では、炭酸などのガスを含まない飲料では、6.5kgf、ビールなど炭酸ガス圧が高い飲料では7.5kgfは必要な特性である。8.0kgfであればほとんど全ての用途に使用可能で、9.0kgfは現状の実用材料でも一般的には到達できていないレベルである。これはこれらを総合的に勘案し、本発明の効果を評価した。
「評価」は、通常レベル:D、効果が見られる:C、優れる:B、著しく優れる:A とし、A、B、Cを発明とする。板厚や残厚などにも特性値が影響されるが、これらも含めて、本発明による好ましい範囲が明確になり、本発明の効果が確認された。
Claims (8)
- EOEの素材として用いる鋼板素材の成分が、質量%で、
C:0.100%以下、
N:0.040%以下、
Si:1.2%以下、
Mn:2.2%以下、
P:0.049%以下、
S:0.050%以下、
Al:3.0%以下、
O:0.070%以下を含有し、その他Fe及び不可避的不純物からなり、素材の板厚方向に硬度差を有し、案内線未加工部において、ビッカース硬度の測定値で、全厚の硬度分布における最高硬度を(硬質層の硬度)、最低硬度を(未硬質層の硬度)とした場合、(硬質層の硬度)/(未硬質層の硬度)>1.1を満足し、加えて該案内線未加工部において硬質層の最高硬度と未硬質層での最低硬度の中央値となる位置を硬質層と未硬質層の境界と定めた硬質層範囲を規定し、案内線残厚部において、0.10<(硬質層の厚さ)/(開口案内線の残厚)<1.0を満足することを特徴とするEOE。 - 前記鋼板素材の成分が、質量%で、
Ti:0.10%以下、
Nb:0.10%以下、
B:0.0100%以下の一種または二種以上を含有することを特徴とする請求項1に記載のEOE。 - 前記案内線残厚部において、(開口案内線加工側での前記硬質層の厚さ)/(開口案内線加工反対側での前記硬質層の厚さ)<1.0を満足することを特徴とする請求項1または2に記載のEOE。
- 前記硬質層中の長径と短径の平均が0.05μm以上であり、析出強化において強化物質として炭化物、窒化物、硫化物のいずれかを分散させる第二相について、長径/短径≧2.0であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載のEOE。
- 前記第二相が窒化を適用していることを特徴とする請求項4に記載のEOE。
- 前記硬質層中の長径と短径の平均が0.05μm以上、長径/短径≧2.0である前記第二相について、硬質層中に対する前記第二相の体積分率が0.05%以上であることを特徴とする請求項4または5に記載のEOE。
- 板厚0.400mm以下の鋼板を素材とすることを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に記載のEOE。
- 素材となる鋼板の製造工程において、冷延後、再結晶焼鈍と同時に、またはその後、550〜750℃の温度域で、{(窒化時間(秒))×(窒化温度(℃))}/{(窒化性ガス濃度(%))×(窒化処理での冷却速度(℃/秒))}≧5なる条件で窒化処理を行い、N量を0.0002%以上増加させることを特徴とする請求項7に記載のEOEの製造方法。
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