JP5449904B2 - ガラス基板を有する電子装置の製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、ガラス基板を有する電子装置の製造方法に関し、典型的には、単一又は一対のガラス基板に、複数の表示セル領域を設けたフラットパネルディスプレイの製造方法に関する。
フラットパネルディスプレイ(本明細書ではFPDと称す)は、CRTディスプレイのブラウン管のように膨らみを持った表示装置と対比される用語であり、奥行きが少なく省スペースで、且つ、表示パネルに膨らみがない点に大きな特徴があり、液晶ディスプレイ、プラズマディスプレイ、有機ELディスプレイなどが実用化されている。FPDのうち、特に、液晶ディスプレイは、テレビ受像機だけでなく、携帯電話機やコンピュータ機器などの表示装置としても広く普及している。
ところで、液晶ディスプレイの軽量化と薄型化の要請に基づき、最近では、液晶ディスプレイを構成する貼合せガラス基板を極限まで化学研磨する方法が好適に採用されている。具体的には、複数の表示パネル領域を設けた第1と第2のガラス基板を貼り合せ、貼合せガラス基板の外周を封止した状態で、フッ酸を含んだ水溶液に浸漬させて化学研磨して薄型化している。なお、貼合せガラス基板は、第5世代では、例えば、縦1100mm×横1250mmであり、第6世代では、例えば、1500mm×1850mmである。
この化学研磨方法によれば、複数枚の表示パネルをまとめて製造できるだけでなく、機械研磨に比べて処理速度が速いので、生産性に優れるという利点がある。また、上記の化学研磨方法によれば、貼合せガラス基板を限界まで薄型化できるので表示パネルの薄型化と軽量化の更なる要請にも応えることができる。
このようにして、限界まで薄型化された貼合せガラス基板は、その後、物理的及び/又は化学的な方法で個々の表示パネル毎に分断される。好適な分断方法としては、ダイヤモンドや超硬合金製のホイールカッタなどを用いて形成したスクライブラインを、ガラス基板の化学研磨に合わせて深さ方向に研磨し、最後に、スクライブラインに沿ってガラス基板を割断する方法が知られている(例えば、特許文献1)。
この特許文献1に記載の発明によれば、貼合せガラス基板にエッチング液(化学研磨液)を接触させて、スクライブライン形成時に生じたガラスのクラックを除去しているので、切断分離後の貼合せガラス基板について、十分な強度を発揮させることができる。
特開2004−307318号公報 特開2008−162824号公報
しかし、上記の方法では、スクライブラインの形成時に、細心の注意が必要であるという問題があった。すなわち、ホイールカッタの接触圧が高すぎると、スクライブライン形成時に、目視不能なマイクロクラックが板厚方向に生じ、これがガラス基板のエッチング(化学研磨)と共に進行して、貼合せガラス基板の内部に研磨液が浸入してしまうことがあった。
一方、ホイールカッタの接触圧を抑制した結果、スクライブラインの深さが不十分であると、V字状に形成されたスクライブラインが、エッチングによって消滅して、その後の切断分離が不可能となるという問題が生じる。
ところで、カッタ刃を使用することに代えて、レーザ光を使用する切断分離方法(以下、レーザ分断法という)も知られている(例えば、特許文献2)。
しかし、レーザ分断法では、ガラス基板の切断面に、直角に近い角が生じるので、その後の分断作業時に、ガラス基板の角が、互いに接触してクラックを発生させてしまう可能性があり、この場合にはガラス強度が大幅に劣化する。本発明者の実験結果によれば、余ほど注意深く分断作業をしない限り、極端にガラス強度の低下したサンプルが所定頻度で発生する。なお、ガラス強度を大幅に低下させるクラックは、分断作業時に限らず、その後の製造工程においても生じ得る。
以上の問題点は、液晶ディスプレイに限定されるものではなく、単一のガラス基板上に複数の電子装置を配置するなど、いわゆる多数個採りの製造方法を採る場合には、ガラス基板の切断時やその後の作業時に同様の問題が生じる。
本発明は、上記の問題点に鑑みてなされたものであって、ケミカル分断法、及び、レーザ分断法の欠点を消して、薄板化しても強度の劣らないガラス基板を有する電子装置を提供することを目的とする。
上記の目的を達成するため、本発明に係る電子装置の製造方法では、複数の電子装置の一部を構成するガラス基板の表面に、ガラス板厚Hの1/4未満で、且つ、その後の研磨量Wに対してW〜3Wの深さDで、略V字状の区画ラインを形成して、ガラス基板を個々の電子装置の領域毎に区画する区画処理と、区画されたガラス基板の表面に化学研磨液を接触させて、ガラス基板の表面を厚さW≦80μmだけ研磨する研磨処理と、薄型化されたガラス基板の区画ラインに沿ってレーザ光を走査して、前記区画ラインを、ガラス基板に対して貫通又はほぼ貫通させる走査処理と、を設けて、ガラス基板を個々の電子装置の領域毎に分離し、その後の処理を経て電子装置を完成させる。
本発明では、区画ラインを形成した後にガラス基板の表面を化学研磨するので、この研磨処理時に、V字状の区画ラインの基端側周縁(ガラス基板の表面側)は、円弧状に滑面化される。そのため、ガラス基板の分断時に、個々に区画されたガラス基板の周縁が互いに接触しても、円弧面同士の接触であるのでクラックを発生させない。
一方、本発明では、区画ラインの深さDは、その後の研磨量Wに対して、D=W〜3Wの深さに制限され、化学研磨量Wは、80μm以下に抑制されている。そのため、略V字状の区画ラインの先端(ガラス基板の板厚方向の最深部)が、その後の研磨処理においてU字状に滑面化されることはなく、レーザ光の走査処理において、区画ラインの先端を円滑に深化させることができる。
なお、本発明の区画ラインの深さDは、目視不能なマイクロクラックを含まない深さを意味するが、深さDを厳密に管理する必要はなく、区画ラインの長さ方向において、±50%程度のばらつきがあっても良い。
レーザは、特に限定されないが、好適には、大出力可能なCOレーザが使用される。COレーザを使用する場合には、レーザスポット光を区画ラインに沿って走査することで区画ラインを加熱する一方、冷却ガスを追随させて冷熱ストレスを与えることで、区画ラインの先端を板厚方向に深化させることができる。
何れにしても、区画ラインを設ける段階でのガラス基板の板厚Hは、区画処理の容易化や、その後の研磨処理の円滑化を考慮すると、好ましくは、0.25mm〜1.5mm程度、更に好ましくは、0.30〜1.2mm程度に設定するべきである。
本発明の製造方法を経たガラス基板は、その周縁が滑面化されているので、使用時にガラス基板が押圧されても、所望の機械的強度を発揮する。そのため、完成状態の電子装置では、ガラス基板を使用者に露出させることもできる。
本発明で製造される電子装置は、特に限定されないが、二枚のガラス基板を対向させて、その内側に電子素子を設けて構成されたFPDであるのが一典型例である。このような実施態様を採る場合、区画ラインは、一方のガラス基板だけに設けても良いが、機械的強度を高めるには、各ガラス基板の対応位置に各々区画ラインを形成するべきである。
一方、本発明のガラス基板は、その裏面側に電子素子を配置するか、或いは、裏面側に適宜な膜を成膜して構成されるのも一典型例である。このような実施態様としては、有機ELディスプレイなどのFPDの他に、タッチパネルや太陽電池などを例示することができる。ここで、タッチパネルとは、表示装置などの表面部分に、破損や汚れを防止するために配置されるガラス材を意味し、その裏面側には反射防止膜などが成膜されている。なお、反射防止膜は、例えば、二酸化ケイ素SiO層や酸化チタンTiO層などを積層して構成され、タッチパネルの使用時には表面側に位置する。
これらのガラス基板を構成要素とする電子装置では、研磨処理は、ガラス基板の裏面側を対面させて二枚のガラス基板を貼り合せた状態で実行される。区画処理は、ガラス基板を貼り合せる以前に実行しても良いし、貼り合せた状態で実行しても良い。また、各ガラス基板の対応位置に各々区画ラインを形成しても良いし、個々のガラス基板毎に最適な位置に形成しても良い。なお、ガラス基板を貼り合せた状態では、二枚のガラス基板の周縁は、厳密に封止するのが好ましい。このような場合には、貼り合せた一対のガラス基板を化学研磨液に浸漬することができる。
上記各発明において、区画処理で形成されるべき区画ラインは、レーザ光を走査して形成しても良いが、好ましくは、カッタ刃を使用して機械的に形成するべきである。
カッタ刃を使用する場合には、ガラス基板の板厚の平坦性に対する条件が、レーザ光を使用する場合ほど厳しく要求されない。また、区画ラインの形成とは別に、レーザ走査の開始傷を設ける余分の作業も不要となる。なお、区画ラインは好ましくは、直線状に形成されるが、曲線状の区画ラインが排除されるものではない。
上記した本発明によれば、ケミカル分断法やレーザ分断法の欠点を解消して、薄板化しても強度の劣らないガラス基板を有する電子装置を製造することができる。
実施例に係る貼合せガラス基板の製造方法を説明する工程フロー図である。 図1の各工程を説明するための図である。 別の実施例を説明する図面である。
以下、本発明の一実施例であるFPD用ガラス基板の製造方法を説明する。図1(a)は、第1実施例の製造方法を示す工程フロー図である。ここでは、第1ガラス基板Glと第2ガラス基板G2の間に、複数の表示セル領域(電子素子領域)を設けた貼合せガラス基板1を、目的厚Tまで化学研磨して薄型化した後、個々の表示パネル用のガラス基板の形状に分断するまでの手順を記載している。
この製造方法では、第1ガラス基板Glと第2ガラス基板G2の表面に、切断予備線たるスクライブライン5a,5bを形成する区画処理(STl)と、板厚T+2Wの貼合せガラス基板1をエッチング液に浸漬して板厚Tまで薄型化する研磨処理(ST2)と、第1ガラス基板Glのスクライブライン5aに沿ってレーザ光を走査させてスクライブラインをほぼ貫通させる貫通処理(ST3)と、切断線たるスクライブライン5a,5bに沿って個々の表示パネル毎に分断する分断処理(ST4)とを有して構成されている。
以下、図2(a)〜図2(e)を参照しつつ説明する。図2(a)に示すように、区画処理STlでは、最終の板厚Tよりやや厚い2H=T+2Wの貼合せガラス基板1について、第1ガラス基板Glと第2ガラス基板G2の表面に、スクライブライン5a、5bを縦横に、互いに対面させて形成する。なお、各スクライブライン5a,5bは、ダイヤモンドや超硬合金製であって周面が尖突状の円板状ホールカッタ4によって形成される。
スクライブラインの深さDは、(a)如何なる場合にも、研磨処理によってスクライブラインがガラス基板を貫通しないこと、及び、(b)如何なる場合にも、研磨処理によってスクライブラインの先端形状がV字状に維持されること、を満足する値に設定されている。
何れの条件も、ガラス研磨量Wによって左右されるが、この実施例では、ガラス研磨量Wが片面30μmに設定され、スクライブラインの深さDが70μmに設定されている。なお、最終板厚Tが各ガラス基板G1,G2とも0.5mmであり、各ガラス基板G1,G2の板厚Hは、各々、0.53mmである。
ライスクライブラインの深さD(=70μm)は、ガラス基板の板厚H(530μm)の50%未満に設定する必要があるが、ここでは、ライスクライブラインの深さDが、ガラス基板の板厚Hの13%程度であるので、その後の研磨処理時にスクライブラインがガラス基板を貫通するおそれはない。したがって、特に注意深くスクライブラインを形成する必要はなく、通常の作業として、区画処理を実行したので足りる。
また、化学研磨量W(=30μm)に対して、スクライブラインの深さD(=70μm)は、2.3倍程度に設定されており、スクライブラインの先端形状は、略V字状の鋭角状態を確実に維持する。なお、研磨量が30μm程度であれば、スクライブラインの先端は深化されない。
なお、第1ガラス基板Glにおける、第2ガラス基板G2との対向面には、薄膜トランジスタ及び透明電極が形成され、更に配向膜が積層されている。一方、第2ガラス基板G2における、第1ガラス基板Glとの対向面には、カラーフィルターがブラックマトリックスに区分けされて形成され、オーバーコート、透明電極及び配向膜が順次積層されている。これらガラス基板Gl,G2の貼り合せは、両ガラス基板Gl,G2の間に、スペーサ、並びに区画樹脂3および外周樹脂を介在させて行なわれている。
表示セル領域は、各々区画樹脂3によって区画されているので、スクライブライン5aは、隣接する区画樹脂3,3のほぼ中央位置に形成される。なお、貼合せガラス基板1の外表面には、本実施例の分断処理(ST4)の後に偏光板が貼り付けられる。
スクライブライン5a,5bが形成された貼合せガラス基板1は、化学研磨液に浸漬されて、貼合せガラス基板1が薄型化されると共に、スクライブライン5a,5bの基端側が円弧状に滑面化されする(ST2)。化学研磨液は、特に限定されないが、フッ酸10重量%未満のフッ酸を含有する研磨液が好適である。
先に説明した通り、本実施例では、初期板厚2H(=1.06mm)の貼合せガラス基板1を、最終板厚T(=1.00mm)まで薄型化するので、各ガラス基板Gl,G2の研磨量aは、各々30μmであり、迅速に研磨処理を終えることができる。
研磨処理(ST2)が終われば、貼合せガラス基板1を洗浄して乾燥させた後、スクライブライン5aに沿って、COレーザによるレーザ光を走査させて、スクライブラインを深化させる(ST3)。この実施例では、スクライブラインが縦横に形成されているので、表示セル領域に対応して切断ラインを一気に形成することができる。
第1ガラス基板Glの表面についてのレーザ照射処理が終われば、その貼合せガラス基板1を表裏反転させて、スクライブライン5bに沿ってレーザ光を走査させることでガラス基板を分断する(ST4)。なお、この実施例では、研磨量D(=30μm)が少なく設定されているので、スクライブラインの先端は、確実にV字形状を維持している。したがって、レーザ照射に代えて、機械的な加圧によってガラスを割断することもできる。
何れにしても、分断処理時におけるガラス基板の分断面は、円弧状に滑面化されているので(図2(d)参照)、分断処理時やその後に、隣接する分断面同士が接触しても、クラックが発生するおそれはない。
以上、液晶ディスプレイの製造方法について説明したが、本発明の適用は、必ずしも、貼合せガラス基板を構成要素とする電子装置に限定されるものではなく、多数個採りの製造方法を採る限り、その他の電子装置の製造にも好適に適用できる。
図3は、半完成状態の有機ELディスプレイである有機EL素子UN・・・UNを、複数個配置したガラス基板Glを示している。なお、有機EL素子UNには、透明電極層、並びに正孔輸送層、発光層及び電子輸送層等の有機層、並びに電極層のうち一種又は二種以上が形成されて電子素子を構成している。
このようなガラス基板Gl,Glを二枚用意し、電子素子領域を対面させた状態で、ガラス基板を貼り合せ、その周縁を封止すれば、図1と同様の手順で、各ガラス基板Glを纏めて薄型化した上で、個々の有機EL素子を切り出すことができる。
なお、以上の製造方法は、タッチパネルや太陽電池などにも、そのまま適用することができる。例えば、タッチパネルにおいては、反射防止膜を対面させた状態でガラス基板を貼り合せ、その後、区画処理→研磨処理→走査処理→分断処理を実行することで、個々のガラス基板を切り出すことができる。
もっとも、本発明では、スクライブラインの深さDが、ガラス板厚Hの1/4未満に制限されているので、個々のガラス基板毎に区画処理を実行し、その後に二枚のガラス基板を貼り合せて、研磨処理を実行することもできる。
Gl ガラス基板Gl
5a 区画ライン
STl 区画処理
ST2 研磨処理
ST3 走査処理

Claims (9)

  1. 複数の電子装置の一部を構成するガラス基板の表面に、ガラス板厚Hの1/4未満で、且つ、その後の研磨量Wに対してW〜3Wの深さDで、略V字状の区画ラインを形成して、ガラス基板を個々の電子装置の領域毎に区画する区画処理と、
    区画されたガラス基板の表面に化学研磨液を接触させて、ガラス基板の表面を厚さW≦80μmだけ研磨する研磨処理と、
    薄型化されたガラス基板の区画ラインに沿ってレーザ光を走査して、前記区画ラインを深化させる走査処理と、を設けて、
    さらにレーザ光を照射するか、または機械的な加圧をすることによって、ガラス基板を個々の電子装置の領域毎に分離し、その後の処理を経て電子装置を完成させる電子装置の製造方法。
  2. 完成状態の電子装置では、前記ガラス基板が使用者に露出する請求項1に記載の製造方法。
  3. 前記電子装置は、二枚のガラス基板を対向させて、その内側に電子素子を設けて構成されたフラットパネルディスプレイである請求項1に記載の製造方法。
  4. 前記区画処理では、各ガラス基板の対応位置に各々区画ラインが形成される請求項3に記載の製造方法。
  5. 前記ガラス基板は、その裏面側に電子素子を配置するか、或いは、裏面側に適宜な膜を成膜して構成されている請求項1に記載の製造方法。
  6. 前記研磨処理は、前記単一のガラス基板の裏面側を対面させて二枚のガラス基板を貼り合せた状態で実行される請求項5に記載の製造方法。
  7. 前記区画処理では、カッタ刃を使用して機械的に前記区画ラインが形成される請求項1〜6の何れかに記載の製造方法。
  8. ガラス基板を個々の電子装置の領域毎に分離する分離処理時には、前記区画ラインに沿って、レーザ光が走査される請求項1〜7の何れかに記載の製造方法。
  9. ガラス基板を個々の電子装置の領域毎に分離する分離処理時には、前記区画ラインに沿って、荷重が加えられる請求項1〜7の何れかに記載の製造方法。
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