JP5448203B2 - 透光性遮音パネル - Google Patents

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本発明は、一対のガラス板で中間膜を挟み込んだ透光性遮音パネルに関する。
かかる透光性遮音パネルは、高速道路等の側部に設けられる。これにより、車両の騒音を遮音しつつ車両の運転者の視野を確保することができる。
ところで、高速道路の側方下方、例えば高速道路の北側下方等には、直射日光が到達しない日陰区域が形成される。このため、日陰区域に光を到達させる技術として、例えば、特開2010−65492号公報に開示された技術がある(特許文献1参照)。ここでは、透光性遮音パネルを構成する単板ガラスの表面に砂等の研磨材を吹き付けて凹凸部を形成し、ガラス板を通過する光を、凹凸部によって多方向に散乱させることで日陰区域まで到達させるようにしている。
特開2010−65492号公報
しかしながら、特許文献1の技術では、ガラス板に風等の外力が作用してガラス板の表面に曲げ応力が作用するような場合には、凹部に応力が集中してガラス板が破損し易くなる。また、研磨材の吹き付けによって凹凸部に多数のマイクロクラックが発生するため、これら多数のマイクロクラックが応力集中源となってガラス板が一層破損し易くなる。また、車両事故等によりガラス板が破損したときに、ガラス板が飛散するという問題もある。
本発明の目的は、強度を十分に確保しつつ、光の散乱効果に優れた透光性遮音パネルを提供する点にある。
本発明の第1特徴構成は、高架建造物の側部に立設された透光性遮音パネルであって、前記透光性遮音パネルは、一対のガラス板と、それらガラス板を接合する中間膜と、前記一対のガラス板の間に設けられ、前記一対のガラス板のうち一方から他方に光が透過する際に該光を拡散させるセラミック層と、を備えてある点にある。
本構成によれば、ガラス板の表面形状によるのではなく、一対のガラス板の間に設けたセラミック層によって光の拡散効果を発揮させることができる。ガラス板の表面には凹凸加工を施しておらず、ガラス板の表面は平坦であるため、ガラス板に大きな外力が作用しても応力が集中し難くなり、ガラス板が破損し難くなる。その結果、ガラス板の強度が向上する。
また、セラミック層が外部に露出しないため、風雨等の外部環境によってセラミック層が劣化したり剥離するおそれがない。その結果、セラミック層の耐久性が向上する。加えて、セラミック層が外部に露出しないため、風雨等に含まれる汚れがセラミック層に付着しない。
さらに、本願の透光性遮音パネルは、一対のガラス板で中間膜を挟み込んだ合わせガラスに構成してあるから、仮にガラス板が破損したとしても、ガラス板の飛散を抑制できる。
本発明の第2特徴構成は、前記セラミック層を、少なくとも前記ガラス板の下端縁部の全幅に亘る領域に形成してある点にある。
本構成のように、セラミック層を少なくともガラス板の下端縁部の全幅に亘る領域に形成してあれば、透光性遮音パネルのうち下端縁部を通過する光を散乱させることで日陰区域の側まで光を到達させることができる。
本発明の第3特徴構成は、前記セラミック層が、一方の前記ガラス板の内面にセラミック材料を印刷して構成してある点にある。
本構成のようにセラミック材料を印刷してセラミック層を形成することとすれば、例えば版の厚みを変更することでセラミック層の層厚を調整したり、版のパターンを変更することでセラミック層のデザインを変更できる。しかも、版を一度製造すれば、低コストで大量生産が可能となる。
本発明の第4特徴構成は、前記ガラス板の光透過面の面積に対し、前記セラミック層を形成する領域の面積の割合を25%以上に設定してある点にある。
本構成のように、セラミック層を形成する領域の面積の割合を25%以上に設定してあれば、一般的なサイズの透光性遮音パネルにおいて必要最小限の光が日陰区域の側まで到達する。
透光性遮音パネルを示す平面図である。 透光性遮音パネルを示す断面図である。 高速道路に透光性遮音パネルを設置した状態を示す断面図である。 第2実施形態における透光性遮音パネルを示す平面図である。 第3実施形態における透光性遮音パネルを示す平面図である。 透明板ガラスを設置したときにおける光の到達領域を示す図である。 透光性遮音パネルを設置したときにおける光の到達領域を示す図である。 床の位置と光量との関係を示す光量プロットである。
〔第1実施形態〕
以下、本発明に係る透光性遮音パネルについて説明する。
図1〜図3に示すように、この透光性遮音パネルPは、高架建造物の一例である高速道路Hの側部に立設され、一対のガラス板1と、それらガラス板1を接合する中間膜2と、を備えてある。一方のガラス板1aの内面には、一方のガラス板1aから他方のガラス板1bに光が透過する際に該光を拡散させるセラミック層3が設けられている。
ガラス板1としては、ソーダ石灰ガラス、硼珪酸ガラス等を用いることができる。このガラス板1は、一般的なフロート板ガラスでもよいが、磨き板ガラス、型板ガラス、網や線入りガラスであってもよい。
中間膜2は、外側のポリビニルアセタール層2aと中間側のポリビニルアセタール層2bとを積層した3層構造の遮音膜に構成してある。中間側のポリビニルアセタール層2bを粘弾性を有する材料で構成することによって、音を熱エネルギーに変換でき、ガラスの遮音性を高めることができる。尚、中間膜2は1層や2層、あるいは4層以上であってもよく、層の数は特に限定されない。
透光性遮音パネルの製造手順としては、先ず、セラミックインクを用いてガラス板1に所定のパターンを印刷する。その後、セラミックインクを乾燥・焼成する。これにより、ガラス板1の一方面にセラミック層3が形成される。セラミックインクを印刷することにより、例えば版の厚みを変更することでセラミック層3の層厚を調整したり、版のパターンを変更することでセラミック層3のデザインを変更できる。しかも、一度版を製造すれば、低コストで大量生産が可能となる。
尚、セラミックインクの印刷方法としては、スクリーン印刷、凸版印刷、凹版印刷等を用いることができる。
セラミックインクは、水または有機溶剤に顔料およびガラスフリットを分散させて構成してある。顔料としては、例えば酸化チタン、酸化亜鉛、酸化スズ、酸化ジルコニウム等のセラミックが挙げられる。
顔料の屈折率がガラスの屈折率よりも十分高ければ、セラミック顔料の表面で光の進路が大きく変更したり、光が全反射し易くなる。その結果、光の散乱範囲が拡大し、多くの散乱光を日陰区域DRの側に到達させることができる。酸化チタン(アナターゼ型の屈折率2.5、ルチル型の屈折率2.7)や酸化ジルコニウム(屈折率2.4)は、ガラス(屈折率1.5〜1.6)よりも屈折率が高いため、光を散乱させるのに好適である。
セラミック層3のパターンは、例えば図1に示すように、横向きのライン3aを上下方向に並べた横ストライプ状に構成する。複数のライン3aのうち最下層のライン3aはガラス板1の下端縁部の全幅に亘る領域に形成してある。視認性を最小限確保するためには、ライン3aの間隔は約20mm以上であることが好ましい。また、散乱光の光量を最小限確保するためには、セラミック層3を形成する領域の面積の割合が約25%以上であることが好ましい。尚、セラミック層3のパターンとしては、横ストライプ状の他、縦ストライプ状、ドット状、チェック状等が挙げられる。
次に、セラミック層3を形成したガラス板1aとセラミック層3を形成しないガラス板1bとを対向させ、それらガラス板1a,1b間に中間膜2を配置する。一方のガラス板1aのセラミック層3は中間膜2の側に対向させておく。その後、ガラス板1a,1bと中間膜2とを圧着する。このようにして、透光性遮音パネルPを製造する。
このように製造された透光性遮音パネルPは、一対のガラス板1の間に設けたセラミック層3によって光拡散効果を発揮させることができる。このため、特許文献1のように、ガラス板1の表面に凹凸加工を施す必要がない。よって、ガラス板1に大きな外力が作用しても、応力が集中し難くなり、透光性遮音パネルPが破損し難くなる。
また、セラミック層3が外部に露出しないため、風雨等の外部環境によってセラミック層3が劣化したり剥離するおそれがない。その結果、セラミック層3の耐久性が向上する。加えて、セラミック層3が外部に露出しないため、風雨等に含まれる汚れがセラミック層3に付着しない。
さらに、透光性遮音パネルPを合わせガラスに構成してあるので、仮にガラス板1が破損したとしても、ガラス板1の飛散を抑制できる。その他、特許文献1のように、ガラス板1の表面に凹凸加工を施すときに、ガラス板1の研磨カス等の塵芥が発生することがなく、清掃の手間が省ける。
次に、本願の透光性遮音パネルの光拡散効果について説明する。
図3は、透光性遮音パネルPを立設した高速道路Hの側方下方に直射日光Lが到達しない日陰区域DRが形成される例を示す。図3(a)は、セラミック層3を形成しないガラス板1を用いた場合に日向区域LRと日陰区域DRとが形成される様子を示す。一方、図3(b)は、セラミック層3を形成したガラス板1を用いた場合に日陰区域DRの側に光が拡散する様子を示す。
図3(b)に示すように、透光性遮音パネルPの下端縁部近傍を通過する光Lが多方向に散乱され、下方に散乱された散乱光L1が境界部Bから日陰区域DRの側まで到達する。特に、最下層のライン3aをガラス板1の下端縁部の全幅に亘る領域に形成しておけば、境界部B付近に明暗が連続的に変化するグラデーション区域GRを形成することができ、この領域を日陰区域DRの側に最も広く形成することができる。
〔第2実施形態〕
散乱光の散乱角度は限られているため、透光性遮音パネルPの上側を通過する散乱光はそれほど日陰区域DRの側に到達しない。よって、図4に示すように、パターン形成領域PRを透光性遮音パネルPの下半分のみに形成することとしてもよい。本構成であれば、透光性遮音パネルPの下半分では日陰区域DRの側に到達する散乱光の光量を確保しつつ視認性を最低限確保することができ、透光性遮音パネルPの上半分では視認性を最大限確保することができる。
〔第3実施形態〕
図5に示すように、パターン形成領域PRを上下方向に間隔Nを隔てて形成し、パターン形成領域PRの上下幅を上側ほど幅狭に構成することもできる。透光性遮音パネルPの下側ほどパターン形成領域PRの割合を増加させることにより、散乱光の光量の確保と視認性の確保を両立させることができる。
透光性遮音パネルおよび透明板ガラスに光を入射させて光の拡散効果を調べる対照実験を行なった。具体的には、図6,図7に示すように、縦壁に横幅が200cmで縦幅が40cmの窓を左右に並べて設置した。隣り合う窓の間隔を6cmに設定し、窓の高さは床から100cm上に設定した。これら窓に対して入射角度を30度で光を入射して床に投影された透過光を撮影した。
図6は、窓に透明板ガラスが取り付けられた場合における床に投影された透過光の広がりを示している。図7は、窓に透光性遮音パネルが取り付けられた場合における床に投影された散乱光の広がりを示している。この透光性遮音パネルでは、パネル全面にセラミックプリントが施されている。図6では、ガラス板の下端縁部を通過する光が地面に到達する部分(図6の一点鎖線)、つまり、光が到達する日向区域と直射日光が到達しない日陰区域との境界部が明確である。これに対し、図7では、散乱光が境界部(図7の一点鎖線)から日陰区域の側に光が到達していることが判る。
図8に示すように、床に投影された透過光の光量を測定して、床の位置と光量との関係を示す光量プロットを作成した。横軸は入射光の奥行き方向であり、縦軸は入射光の奥行き方向に直交する方向である。縦軸および横軸の目盛り幅はそれぞれ10cmと20cmである。光量線の目盛り幅は10ルクスである。横軸の左端は、入射角度が30度の光が到達する境界部を示している。横軸の左端から右側ほど光量が低下しており、日陰区域の側に光が拡散する様子を示している。左側の光量線は中央部付近で折れ曲がっているが、これは隣り合う窓の間の遮蔽に起因する。図8(a)は、窓に透明板ガラスが取り付けられた場合における光量プロットであり、図8(b)〜(d)は、窓に透光性遮音パネルが取り付けられた場合における光量プロットである。図8(b)では、パネルに横ストライプ状のセラミックプリントが施されている。ストライプのライン幅は、20mmであり、ライン間隔は20mmである。図8(c)では、パネルの全面にセラミックプリントが施されている。図8(d)では、パネルの下半分面にセラミックプリントが施されている。
図8(a)では、横軸の目盛りが1を超えると光量が約10ルクスに低下し、図8(b)〜図8(d)では、それぞれ目盛りが12〜13を超えると光量が約10ルクスに低下する。つまり、透明板ガラスの場合では日陰区域の側へ光がほとんど拡散しないのに対し、いずれの透光性遮音パネルの場合においても日陰区域の側へ光が拡散する。パネル全面にセラミックプリントが施される場合(図8(c)を参照)とパネル下半分面にセラミックプリントが施される場合(図8(d)を参照)とでは光の拡散効果に大きな違いはない。これは、パネル上半分面のセラミックプリントが境界部に対する光の拡散にそれほど寄与していないことを示している。
パネルに横ストライプ状のセラミックプリントが施される場合(図8(b)を参照)とパネル下半分面にセラミックプリントが施される場合(図8(d)を参照)とを比較すると、図8(b)では、目盛りが1付近で光量が40ルクスに低下し、目盛りが2付近で光量が30ルクスに低下し、目盛りが6付近で光量が20ルクスに低下し、目盛りが12付近で光量が10ルクスに低下する。図8(d)では、目盛りが3付近で光量が40ルクスに低下し、目盛りが5付近で光量が30ルクスに低下し、目盛りが8付近で光量が20ルクスに低下し、目盛りが12付近で光量が10ルクスに低下する。つまり、境界部に近接する領域(目盛りが0〜6の範囲)においては、図8(b)のほうが図8(d)よりも光量が減衰する割合が大きく、境界部から離間する領域(目盛りが6〜12の範囲)においては、図8(b)のほうが図8(d)よりも光量が減衰する割合が小さい。ただし、光量が10ルクスに低下する位置は図8(b),図8(d)のいずれにおいても目盛りが12付近であるから、図8(b)でも十分に光拡散効果が認められる。よって、主にパネルの下半分のセラミックプリントが境界部に対する光の拡散に寄与しているという結果を鑑みると、図8(b)の如く、パネルの下端縁部近傍にセラミックプリントが施される場合には、パネル下半分の50%、つまり、パネル全体の25%以上にセラミックプリントを施せばよいことが判る。
本発明の透光性遮音パネルは、高架の高速道路の他、高架の鉄道等に適用可能である。
1,1a,1b ガラス板
2 中間膜
3 セラミック層
H 高架建造物

Claims (4)

  1. 高架建造物の側部に立設された透光性遮音パネルであって、
    前記透光性遮音パネルは、一対のガラス板と、それらガラス板を接合する中間膜と、前記一対のガラス板の間に設けられ、前記一対のガラス板のうち一方から他方に光が透過する際に該光を拡散させるセラミック層と、を備えてある透光性遮音パネル。
  2. 前記セラミック層を、少なくとも前記ガラス板の下端縁部の全幅に亘る領域に形成してある請求項1に記載の透光性遮音パネル。
  3. 前記セラミック層が、一方の前記ガラス板の内面にセラミック材料を印刷して構成してある請求項1又は2に記載の透光性遮音パネル。
  4. 前記ガラス板の光透過面の面積に対し、前記セラミック層を形成する領域の面積の割合を25%以上に設定してある請求項1〜3のいずれか1項に記載の透光性遮音パネル。
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