JP5444632B2 - 核酸増幅方法およびそれに用いる容器 - Google Patents

核酸増幅方法およびそれに用いる容器 Download PDF

Info

Publication number
JP5444632B2
JP5444632B2 JP2008112641A JP2008112641A JP5444632B2 JP 5444632 B2 JP5444632 B2 JP 5444632B2 JP 2008112641 A JP2008112641 A JP 2008112641A JP 2008112641 A JP2008112641 A JP 2008112641A JP 5444632 B2 JP5444632 B2 JP 5444632B2
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
nucleic acid
acid amplification
reaction
container
solution
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Active
Application number
JP2008112641A
Other languages
English (en)
Other versions
JP2008289473A5 (ja
JP2008289473A (ja
Inventor
楠本  正博
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Toyobo Co Ltd
Original Assignee
Toyobo Co Ltd
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Toyobo Co Ltd filed Critical Toyobo Co Ltd
Priority to JP2008112641A priority Critical patent/JP5444632B2/ja
Publication of JP2008289473A publication Critical patent/JP2008289473A/ja
Publication of JP2008289473A5 publication Critical patent/JP2008289473A5/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP5444632B2 publication Critical patent/JP5444632B2/ja
Active legal-status Critical Current
Anticipated expiration legal-status Critical

Links

Classifications

    • BPERFORMING OPERATIONS; TRANSPORTING
    • B01PHYSICAL OR CHEMICAL PROCESSES OR APPARATUS IN GENERAL
    • B01LCHEMICAL OR PHYSICAL LABORATORY APPARATUS FOR GENERAL USE
    • B01L3/00Containers or dishes for laboratory use, e.g. laboratory glassware; Droppers
    • B01L3/02Burettes; Pipettes
    • B01L3/0275Interchangeable or disposable dispensing tips
    • BPERFORMING OPERATIONS; TRANSPORTING
    • B01PHYSICAL OR CHEMICAL PROCESSES OR APPARATUS IN GENERAL
    • B01LCHEMICAL OR PHYSICAL LABORATORY APPARATUS FOR GENERAL USE
    • B01L3/00Containers or dishes for laboratory use, e.g. laboratory glassware; Droppers
    • B01L3/50Containers for the purpose of retaining a material to be analysed, e.g. test tubes
    • B01L3/508Containers for the purpose of retaining a material to be analysed, e.g. test tubes rigid containers not provided for above
    • B01L3/5085Containers for the purpose of retaining a material to be analysed, e.g. test tubes rigid containers not provided for above for multiple samples, e.g. microtitration plates
    • B01L3/50851Containers for the purpose of retaining a material to be analysed, e.g. test tubes rigid containers not provided for above for multiple samples, e.g. microtitration plates specially adapted for heating or cooling samples
    • BPERFORMING OPERATIONS; TRANSPORTING
    • B01PHYSICAL OR CHEMICAL PROCESSES OR APPARATUS IN GENERAL
    • B01LCHEMICAL OR PHYSICAL LABORATORY APPARATUS FOR GENERAL USE
    • B01L2300/00Additional constructional details
    • B01L2300/08Geometry, shape and general structure
    • B01L2300/0832Geometry, shape and general structure cylindrical, tube shaped
    • B01L2300/0838Capillaries
    • BPERFORMING OPERATIONS; TRANSPORTING
    • B01PHYSICAL OR CHEMICAL PROCESSES OR APPARATUS IN GENERAL
    • B01LCHEMICAL OR PHYSICAL LABORATORY APPARATUS FOR GENERAL USE
    • B01L2300/00Additional constructional details
    • B01L2300/08Geometry, shape and general structure
    • B01L2300/0848Specific forms of parts of containers
    • B01L2300/0851Bottom walls

Landscapes

  • Health & Medical Sciences (AREA)
  • Chemical & Material Sciences (AREA)
  • Clinical Laboratory Science (AREA)
  • Chemical Kinetics & Catalysis (AREA)
  • Analytical Chemistry (AREA)
  • General Health & Medical Sciences (AREA)
  • Hematology (AREA)
  • Apparatus Associated With Microorganisms And Enzymes (AREA)
  • Measuring Or Testing Involving Enzymes Or Micro-Organisms (AREA)

Description

本発明は、核酸増幅容器に関するものである。より詳しくは、破損しにくく取り扱いが簡便であり、さらに簡易な構造で安価に大量生産することが可能な核酸増幅容器に関するものである。
本発明はまた、コンタミネーションの原因となる廃棄物を減らすことが可能な反応容器に関するものである。
また、本発明は、核酸増幅方法に関するものである。より詳しくは、自動化が容易であり、さらにコンタミネーションの原因となる廃棄物を減らすことが可能な核酸増幅方法に関するものである。
例えば医薬品や医薬品原料など有用物質は、一般に、化合物の酸化、還元、修飾など様々な化学反応を組み合わせることにより生産され、また、例えば健康診断などの際には、酸化、還元、呈色など様々な化学反応を用いて試薬などの性状を変化させ、尿や血液などの生体物質を分析するなど、バイオテクノロジーにおける様々な分野で化学反応が利用されている。
中でも、近年特に、PCR(Polymerase Chain Reaction)などの核酸増幅反応はバイオテクノロジーにおける様々な分野で応用されている。
例えば、医学分野では、特定臓器で発現または機能するタンパク質の核酸分子レベルでの解析や、神経、脳あるいは免疫系での情報伝達におけるタンパク質の発現制御の研究などにおいて重要であるのみならず、遺伝的疾患の変異遺伝子の検出、癌の診断、ウイルス関連遺伝子の検出など遺伝子診断においても極めて重要である。特に、遺伝子診断などでは核酸増幅反応が確定診断として用いられるため誤りが許されず、また患者から採取できる検体の量が限られているため失敗が許されず、さらに迅速性も要求されるために、迅速性を保ちながら高い精度を有していなければならない。
(1)
PCRは、一般に、二本鎖DNAを一本鎖DNAに解離する反応(以下、「変性反応」と表記する)、解離して生じた一本鎖DNAとプライマーとのアニーリング反応(以下、「アニーリング反応」と表記する)、アニーリングした一本鎖DNAを鋳型とするプライマーの伸長反応(以下、「伸長反応」と表記する)を繰り返すことにより行なう。具体的には、従来、PCR反応液を個々のマイクロチューブに入れて、昇温または冷却を繰り返すことで、上記各反応に必要な反応温度に調整する方法が主に用いられてきた。しかし、PCRを行なうためには、この温度の調整の繰り返しや、微量のサンプルを扱うことなどにより、煩雑な作業や多大な時間を要し、上記温度の調整の繰り返しを行なうために、約2〜3時間を要する。そこで、近年、より簡便かつ短時間のうちにPCRを行なうための技術が提案されている(特許文献1〜6)。
特許文献1および2には、空気などの気体を熱媒とすることで、変性反応などのための温度調整を行なう装置が開示されている。具体的には、ヒーターで加熱した空気をPCR反応液の周囲に送り込むことで、それぞれの反応温度に調整している。これにより、ヒートブロック等を用いるより迅速に温度調整が可能になるとされている。核酸増幅容器としては、キャピラリーサンプルチューブが用いられている。キャピラリーサンプルチューブは、PCR反応液の貯留部位が極めて細く形成されているため、温度調整の時間を短縮することができる。また、当該装置では、キャピラリーサンプルチューブなどに含まれるPCR反応液の蛍光を検出する手段も備えている。つまり、核酸の増幅に応じて発する蛍光が変化するPCR試料を用いれば、リアルタイムにPCRの結果を確認することができる。
特許文献1および2に開示の装置のように、核酸増幅容器としてキャピラリチューブを用いる場合は、別途、遠心機によって試料などを充填する工程が必要となる。つまり、キャピラリチューブは液溜部が細いため、試料などを当該液溜部すなわち核酸増幅反応を行なうための反応部に充填するためには、注入口すなわち試料などを受け入れるための導入部に注いだ上で遠心機にかける工程が必要になり、当該工程を行なった上で、装置に搭載する必要がある。このとき、特許文献1および2に開示の核酸増幅容器では反応部の材質としてガラスを使用しているため、当該導入部に注いだ試料などを当該反応部に充填するための遠心の際に生じる遠心力によって核酸増幅容器が破損する可能性がある。遠心時の他にも、持ち運びなど通常の実験操作においても核酸増幅容器が破損する可能性がある。当該充填操作の際に核酸増幅容器が破損すると試料などを失うことになるため、例えば、患者から採取できる検体の量が限られている遺伝子診断の場合には、診断結果を得ることができない。また、特許文献1および2に開示の核酸増幅容器は、プラスチック製の導入部とガラス製の反応部を組み合わせた複雑な構造であるため、大量生産することが困難であり安価に供給することができない。
特許文献3および4には、PCRによって得られる二本鎖核酸に結合して蛍光を発する蛍光染料を用いて、当該蛍光を検出することで、迅速にPCRの結果を確認する技術が開示されている。
特許文献5には、PCRによって得られる二本鎖核酸に結合する化合物と、当該化合物が当該二本鎖核酸に結合したときに発する蛍光が変化する反応分子で標識したプライマーとを用いるIFP法が開示されている。当該蛍光の変化を検出することで、PCRの結果を簡便に確認することができるとされている。
特許文献6には、3’末端にC(シトシン)を有し、C(シトシン)とG(グアニン)とが水素結合したときに蛍光が消える蛍光色素で標識したプライマーを用いてPCRを行なうQ−Probe法が開示されている。これにより、当該蛍光の変化を確認することで、PCRの結果を簡便に確認することができるとされている。
特許文献3〜6に開示の技術は、核酸増幅反応の結果を簡便に確認するための技術であり、核酸増幅容器としては光学的に透明であれば良く、破損しにくく取り扱いが簡便な核酸増幅容器を安価に供給するために資する技術ではない。
特表2000−511435号公報 特表2000−512138号公報 特開平5−184397号公報 特開平10−210464号公報 特表2003−500001号公報 特開2001−286300号公報
(2)
PCRは、一般に、二本鎖DNAを一本鎖DNAに解離する反応(以下、「変性反応」と表記する)、解離して生じた一本鎖DNAとプライマーとのアニーリング反応(以下、「アニーリング反応」と表記する)、アニーリングした一本鎖DNAを鋳型とするプライマーの伸長反応(以下、「伸長反応」と表記する)を繰り返すことにより、任意のDNA断片を指数関数的に増幅させる方法である。この1サイクルにより、1本の二本鎖DNAが2本の二本鎖DNAに増幅される。したがって、このサイクルをn回繰り返せば、理論上、増幅の対象となるDNA断片が2のn乗倍に増幅される。増幅されたDNA断片は大量に存在するため、電気泳動など従来公知の方法により容易に検出できる。このように、PCRによれば、従来では検出不可能であった、極めて微量(1分子でも可)の核酸をも検出することが可能である(非特許文献1)。
このように、PCRに代表される核酸増幅技術を用いれば、増幅の対象となるDNA断片を非常に高感度に検出できる。一方で、高感度であるがゆえに非特異的な増幅反応、すなわち増幅の対象となるDNAの有無とは無関係な増幅が起こりやすいことが、本技術の大きな問題である。例えば、核酸増幅反応が確定診断として用いられる遺伝子診断において、本来増幅の対象となる核酸が存在しない、すなわち陰性と判断されるべき検体で、非特異的な増幅反応が起こった場合は、当該検体は陽性と診断されることになる。このような偽陽性は、例えば、増幅の対象がウイルス由来の核酸の場合には、健常者を誤って感染患者として扱う原因となり、無意味な治療行為により健常者の健康を害する危険があるだけでなく、入院や隔離などの行動制限や風評被害などの社会的な問題を引き起こす可能性もあり、非常に大きな問題に発展する。
核酸増幅においては、核酸増幅反応液へ鋳型核酸が混入することによる汚染、すなわちコンタミネーションが、上述のような偽陽性の主要な原因となり得る。混入する鋳型核酸としては、例えば、他の患者などに由来する検体や、一旦増幅させた同種の核酸、すなわち増幅核酸断片などが挙げられる。特に、上述のように核酸増幅反応では、少量の核酸から大量の増幅核酸断片が生じるために、例えば、増幅核酸断片が、目に見える飛沫のような形態だけでなく、目には見えないエアゾールのような形態で核酸増幅反応液へ混入しただけでも、偽陽性の原因となり得るため、増幅反応後の反応液の取り扱いには細心の注意を要する。
PCRは、具体的には、従来、PCR反応液を個々のマイクロチューブに入れて、昇温または冷却を繰り返すことで、上記各反応に必要な反応温度に調整する方法が主に用いられてきた。しかし、PCRを行なうためには、この温度の調整の繰り返しや、微量のサンプルを扱うことなどにより、煩雑な作業や多大な時間を要し、上記温度の調整の繰り返しを行なうために、約2〜3時間を要する。そこで、近年、より簡便かつ短時間のうちにPCRを行なうための技術が提案されている。
特許文献1および2には、空気などの気体を熱媒とすることで、変性反応などのための温度調整を行なう装置が開示されている。具体的には、ヒーターで加熱した空気をPCR反応液の周囲に送り込むことで、それぞれの反応温度に調整している。これにより、ヒートブロック等を用いるより迅速に温度調整が可能になるとされている。
特許文献1および2には、核酸増幅容器としてキャピラリチューブを用いて、PCRに必要な温度サイクルを行なう手段と、サンプルチューブに含まれるPCR反応液の蛍光を検出する手段とを備えた装置が開示されている。核酸増幅容器としては、キャピラリーサンプルチューブが用いられている。キャピラリーサンプルチューブは、PCR反応液の貯留部位が極めて細く形成されているため、温度調整の時間を短縮することができる。また、当該装置では、キャピラリーサンプルチューブなどに含まれるPCR反応液の蛍光を検出する手段も備えている。つまり、当該装置では、核酸の増幅に応じて発する蛍光が変化するPCR試料を用いれば、リアルタイムにPCRの結果を確認することができ、反応後にサンプルチューブの蓋を開けることによる核酸増幅反応液の飛散を防ぎ、コンタミネーションの危険を低減させることができる。
特許文献1および2に開示の装置のように、核酸増幅容器としてキャピラリチューブを用いる場合は、別途、遠心機によって試料などを充填する工程が必要となる。つまり、キャピラリチューブは液溜部が細いため、試料などを当該液溜部すなわち核酸増幅反応を行なうための反応部に充填するためには、注入口すなわち試料などを受け入れるための導入部に注いだ上で遠心機にかける工程が必要になり、当該工程を行なった上で、装置に搭載する必要がある。このとき、特許文献1および2に開示の核酸増幅容器では反応部の材質としてガラスを使用しているため、当該導入部に注いだ試料などを当該反応部に充填するための遠心の際に生じる遠心力によって核酸増幅容器が破損する可能性がある。遠心時の他にも、持ち運びなど通常の実験操作においても核酸増幅容器が破損する可能性がある。当該充填操作の際に核酸増幅容器が破損すると試料などを失うことになるため、例えば、患者から採取できる検体の量が限られている遺伝子診断の場合には、診断結果を得ることができない。また、特許文献1および2に開示の核酸増幅容器は、プラスチック製の導入部とガラス製の反応部を組み合わせた複雑な構造であるため、大量生産することが困難であり安価に供給することができない。
特許文献1および2に開示の装置では、核酸増幅反応の前に、別途、核酸増幅容器であるキャピラリチューブにキャップを装着する必要がある。これは、一旦増幅させた同種の核酸、すなわち増幅核酸断片のコンタミネーションを防止するために、従来、一般的に行なわれている対策であるが、それぞれのキャピラリチューブへのキャップの装着は、特にPCRを行なうサンプルの数が多い場合には、大変煩雑な作業となる。また、特許文献1および2に開示の装置では、他の患者などに由来する検体のコンタミネーションを防止するための対策は開示されていない、すなわち、核酸増幅反応のための溶液を核酸増幅容器に充填する際に、上記検体中に含まれる核酸が飛散する問題が解決されていない。さらに、特許文献1および2に開示の核酸増幅容器では、反応部の材質としてガラスを使用しているため、キャップを装着する際に核酸増幅容器が破損する可能性がある。当該操作の際に核酸増幅容器が破損すると試料などを失うことになるため、例えば、患者から採取できる検体の量が限られている遺伝子診断の場合には、診断結果を得ることができない。
特許文献7には、蓋が一体的に設けられた検出容器に、試薬と、標的核酸を含むことが疑われる試料とを分注する分注手段と、検出容器への試薬および試料の分注が終了した後に、検出容器の蓋を閉める蓋閉手段と、蓋が閉められた検出容器内の標的核酸を増幅する増幅手段と、蓋が閉められた検出容器内の標的核酸の存在を検出する検出手段とを備えた装置が開示されている。つまり、当該装置では、自動的に、核酸増幅容器へ蓋を装着することができる。
特許文献7に開示の装置では、核酸増幅容器へ蓋を装着する作業を自動的に行なうための手段として、当該装置に、検出容器の蓋を蓋閉位置まで移動させる回動部材と、回動部材を上方向から下方向に押圧することにより蓋に上方向からの押圧力を加えて蓋の蓋閉動作を完了させる押圧部材とを含んでおり、押圧部材による上方向からの押圧力による蓋閉め動作により、検出容器の蓋閉め動作を行う。これは、コンタミネーションを防止するために、従来、一般的に行なわれている対策を自動化したものであるが、装置が大型化、複雑化するという問題を有する。また、特許文献7に開示の装置においても、特許文献1および2に開示の装置と同様に、他の患者などに由来する検体のコンタミネーションを防止するための対策は開示されていない、すなわち、核酸増幅反応のための溶液を核酸増幅容器に充填する際に、上記検体中に含まれる核酸が飛散する問題が解決されていない。
特開2005−95134号公報 Sambrookら、Molecular Cloning, A Laboratory Manual, Third Edition、第8章、第8.1〜8.126頁、2001年
核酸増幅容器としてキャピラリーサンプルチューブを用い、また核酸の増幅に応じて発する蛍光が変化するPCR試料を用い、さらに核酸増幅装置がキャピラリーサンプルチューブなどに含まれるPCR反応液の蛍光を検出する手段を備えていれば、短時間のうちにPCRを行ない、その結果を確認することができる。しかしながら、上記従来の構成では、キャピラリーサンプルチューブなど極めて細く形成された核酸増幅容器を使用するため、PCR反応液の調製および当該容器への充填に細心の注意が必要であり、その作業に長時間を要するという問題を有する。また、上記従来の構成では、キャピラリーサンプルチューブなど核酸増幅容器が破損しやすいため、特に失敗が許されない遺伝子診断などに用いることは困難であるという問題をも有する。
さらに、上記従来の構成、すなわち、核酸の増幅に応じて発する蛍光が変化するPCR試料を用い、さらに核酸増幅装置がキャピラリチューブなどに含まれるPCR反応液の蛍光を検出する手段を備えていれば、反応後にサンプルチューブの蓋を開けることによる核酸増幅反応液の飛散を防ぎ、コンタミネーションの危険を低減させることができる。
また、核酸増幅装置が、核酸増幅容器へ蓋を装着する作業を自動的に行なうための手段を備えていれば、蓋の装着という煩雑な作業を省略することができる。
しかしながら、上記従来の構成では、装置が大型化、複雑化するという問題を有する。また、上記従来の構成では、核酸増幅反応のための溶液を核酸増幅容器に充填する際に、上記検体中に含まれる核酸が飛散し、他の患者などに由来する検体のコンタミネーションが起こるという問題をも有する。
本発明は、上記の問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、破損しにくく取り扱いが簡便であり、また簡易な構造で安価に大量生産することができ、さらにコンタミネーションの原因となる廃棄物を減らすことが可能な反応容器(核酸増幅容器)を提供することにある。
また、本発明は、上記の問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、自動化が容易であり、装置が大型化、複雑化することなくコンタミネーションを予防することができ、さらにコンタミネーションの原因となる廃棄物を減らすことが可能な核酸増幅方法を提供することにある。
本発明者らは、上記課題を解決するために、鋭意検討を重ねた結果、核酸増幅容器の材質と形状を工夫することによって、破損を抑え、安価に大量生産できることを見出し、本発明に至った。
また、本発明者らは、上記課題を解決するために、鋭意検討を重ねた結果、化学反応のための溶液を反応容器に充填する方法(核酸増幅反応のための溶液を核酸増幅容器に充填する方法)を工夫し、さらに反応容器の材質と形状を工夫することによって、破損を抑え、安価に大量生産でき、簡易な操作で確実に反応液の飛散を防ぐことができ、さらにコンタミネーションの原因となる廃棄物を減らすことができることを見出し、本発明に至った。
すなわち、本発明は以下のような構成からなる。
1A.試料中の核酸を増幅するための容器であって、
少なくとも、高分子材料からなり前記核酸の増幅反応を行なうための反応部と、該反応部と同一の材料からなり前記試料を受け入れるための導入部とを有し、
前記反応部は、
少なくとも2つの角を有する形状の底面と、該底面を構成する直線または曲線をそれぞれ一辺とする平面状または曲面状の側面とを有し、
前記反応部の容積に対する表面積の比は4mm−1以上であり、該容積は0.1ml以下であり、
前記導入部は、
前記反応部と流動性連通を有し、
前記導入部の容積に対する表面積の比は4mm−1未満であり、該容積は前記反応部の容積より大きいことを特徴とする容器。
2A.核酸の増幅反応を行なうための反応部と試料を受け入れるための導入部とが一体的に形成されてなることを特徴とする1Aの容器。
3A.反応部の側面における平面状または曲面状の側面の部分の肉厚が0.5mm以下であることを特徴とする1Aまたは2Aの容器。
4A.反応部の底面の形状が三角形であることを特徴とする1Aから3Aのいずれかの容器。
5A.反応部の底面の形状が四角形であることを特徴とする1Aから3Aのいずれかの容器。
6A.反応部の底面の形状が長方形であり、該長方形を構成する辺において、長辺の長さが短辺の長さの2倍以上であることを特徴とする5Aの容器。
7A.高分子材料が熱可塑性樹脂であることを特徴とする1A〜6Aのいずれかの容器。
8A.熱可塑性樹脂が、ポリプロピレン、ポリオレフィン、ポリメチルペンテン、環状ポリオレフィン、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリアセタール、ポリアミド、ポリイミド、ポリアミドイミド、液晶ポリマー、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルサルホン、ポリエチレンテレフタレート、ポリフェニレンエーテル、ポリサルフォン、ポリフェニレンサルファイド、ポリブチレンテレフタレート、メタクリル樹脂、ABS樹脂及びポリ塩化ビニルからなる群より選ばれた1種の樹脂又は2種以上のポリマーアロイまたは2種以上のポリマーブレンドであることを特徴とする7Aの容器。
9A.熱可塑性樹脂が、ポリプロピレンであることを特徴とする7Aの容器。
10A.核酸の増幅反応を行なうための反応部の少なくとも一部が、光学的に透明であることを特徴とする1A〜9Aのいずれかの容器。
11A.さらに複数の容器が連結されてなることを特徴とする1A〜10Aのいずれかの容器。
12A.複数の容器の連結が、試料を受け入れるための導入部を連結することによってなることを特徴とする11Aの容器。
1B’.ピペットチップの少なくとも吸入吐出口部位を収納できる収納部を含むことを特徴とする1Aの容器。
2B’.化学反応が、核酸増幅反応であることを特徴とする1B’の容器。
3B’.前記反応部の容積が、0.1ml以下であることを特徴とする1B’または2B’の容器。
4B’.前記反応部の容積に対する表面積の比が、4mm−1以上であることを特徴とする3B’の容器。
5B’.前記反応部の側面の部分の肉厚が0.5mm以下であることを特徴とする1B’〜4B’のいずれかの容器。
6B’.前記反応部の底面の形状が三角形であることを特徴とする1B’〜5B’のいずれかの容器。
7B’.前記反応部の底面の形状が四角形であることを特徴とする1B’〜5B’のいずれかの容器。
8B’.前記反応部の底面の形状が長方形であり、該長方形を構成する辺において、長辺の長さが短辺の長さの2倍以上であることを特徴とする7B’の容器。
9B’.容器が熱可塑性樹脂からなることを特徴とする1B’〜8B’のいずれかの容器。
10B’.熱可塑性樹脂が、ポリプロピレン、ポリオレフィン、ポリメチルペンテン、環状ポリオレフィン、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリアセタール、ポリアミド、ポリイミド、ポリアミドイミド、液晶ポリマー、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルサルホン、ポリエチレンテレフタレート、ポリフェニレンエーテル、ポリサルフォン、ポリフェニレンサルファイド、ポリブチレンテレフタレート、メタクリル樹脂、ABS樹脂及びポリ塩化ビニルからなる群より選ばれた1種の樹脂又は2種以上のポリマーアロイ又は2種以上のポリマーブレンドであることを特徴とする9B’の容器。
11B’.熱可塑性樹脂が、ポリプロピレンであることを特徴とする9B’の容器。
12B’.化学反応を行なうための反応部の少なくとも一部が、光学的に透明であることを特徴とする1B’〜11B’のいずれかの容器。
13B’.さらに複数の容器が連結されてなることを特徴とする1B’〜12B’のいずれかの容器。
14B’.複数の容器の連結が、収納部を連結することによってなることを特徴とする13B’の容器。
15B’.ピペットチップがフィルター付きピペットチップであることを特徴とする1B’〜14B’のいずれかの容器。
16B’.フィルターが疎水性フィルターであることを特徴とする15B’の容器。
13A.試料中の核酸を増幅するための方法であって、容器として、
少なくとも、高分子材料からなり前記核酸の増幅反応を行なうための反応部と、該反応部と同一の材料からなり前記試料を受け入れるための導入部とを有し、
前記反応部は、
少なくとも2つの角を有する形状の底面と、該底面を構成する直線または曲線をそれぞれ一辺とする平面状または曲面状の側面とを有し、
前記反応部の容積に対する表面積の比は4mm−1以上であり、該容積は0.1ml以下であり、
前記導入部は、
前記反応部と流動性連通を有し、
前記導入部の容積に対する表面積の比は4mm−1未満であり、該容積は前記反応部の容積より大きい容器を使用することを特徴とする核酸増幅方法。
1C’.少なくとも下記(a)および(b)の工程を含むことを特徴とする13Aの核酸増幅方法。
(a)着脱可能なチップに、核酸増幅反応のための溶液を保持させる
(b)前記溶液を保持したチップを核酸増幅容器に装着する
2C’.(a)の工程において、着脱可能なチップへの溶液の保持が、該チップを介して溶液を吸引および吐出することが可能な分注機構を用いて、該チップに該溶液を吸引することにより行なわれることを特徴とする1C’の核酸増幅方法。
3C’.(b)の工程において、溶液を保持したチップの核酸増幅容器への装着が、該チップを分注機構から取り外すことなく行なわれることを特徴とする2C’の核酸増幅方法。
4C’.チップがフィルターを内蔵してなり、該フィルターは、該チップにおいて溶液を保持する部分と、分注機構に装着される際に該分注機構に接する部分との間に位置することを特徴とする1C’から3C’のいずれかの核酸増幅方法。
5C’.フィルターが疎水性フィルターであることを特徴とする4C’の核酸増幅方法。
6C’.チップと核酸増幅容器が、装着により互いに密着することを特徴とする1C’から5C’のいずれかの核酸増幅方法。
7C’.さらに、下記(c)および(d)の工程を含むことを特徴とする1C’から6C’のいずれかの核酸増幅方法。
(c)前記チップを分注機構から取り外す
(d)前記チップに保持した溶液を核酸増幅容器の底部に移動させる
8C’.(d)の工程において、溶液の移動が、チップを装着した核酸増幅容器を遠心することにより行なわれることを特徴とする7C’の核酸増幅方法。
9C’.(d)の工程において、溶液の移動が、チップに保持された溶液に空気圧を与えることにより行なわれることを特徴とする7C’の核酸増幅方法。
10.(c)の工程において、チップの取り外しが、分注機構から空気を吐出しながら行なわれることを特徴とする7C’から9C’のいずれかの核酸増幅方法。
11.さらに、下記(c)および(d)の工程を含むことを特徴とする1C’から6C’のいずれかの核酸増幅方法。
(c)前記チップに保持された溶液に空気圧を与え、核酸増幅反応のための溶液を該核酸増幅容器の底部に移動させる
(d)前記チップを分注機構から取り外す
14A.核酸の増幅反応を行なうための反応部と試料を受け入れるための導入部とが一体的に形成されてなることを特徴とする13Aの核酸増幅方法。
15A.反応部の側面における平面状または曲面状の側面の部分の肉厚が0.5mm以下であることを特徴とする13Aまたは14Aの核酸増幅方法。
16A.反応部の底面の形状が三角形であることを特徴とする13Aから15Aのいずれかの核酸増幅方法。
17A.反応部の底面の形状が四角形であることを特徴とする13Aから15Aのいずれかの核酸増幅方法。
18A.反応部の底面の形状が長方形であり、該長方形を構成する辺において、長辺の長さが短辺の長さの2倍以上であることを特徴とする17Aの核酸増幅方法。
19A.高分子材料が熱可塑性樹脂であることを特徴とする13A〜18Aのいずれかの核酸増幅方法。
20A.熱可塑性樹脂が、ポリプロピレン、ポリオレフィン、ポリメチルペンテン、環状ポリオレフィン、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリアセタール、ポリアミド、ポリイミド、ポリアミドイミド、液晶ポリマー、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルサルホン、ポリエチレンテレフタレート、ポリフェニレンエーテル、ポリサルフォン、ポリフェニレンサルファイド、ポリブチレンテレフタレート、メタクリル樹脂、ABS樹脂及びポリ塩化ビニルからなる群より選ばれた1種の樹脂又は2種以上のポリマーアロイ又は2種以上のポリマーブレンドであることを特徴とする19Aの核酸増幅方法。
21A.熱可塑性樹脂が、ポリプロピレンであることを特徴とする19Aの核酸増幅方法。
22A.核酸の増幅反応を行なうための反応部の少なくとも一部が、光学的に透明であることを特徴とする13A〜21Aのいずれかの核酸増幅方法。
23A.試料が蛍光体または発光体を含有することを特徴とする13Aから22Aのいずれかの核酸増幅方法。
24A.さらに試料から発せられる光を検出することを特徴とする13Aから23Aのいずれかの核酸増幅方法。
25A.試料から発せられる光の検出が核酸増幅反応と同時に行なわれることを特徴とする24Aの核酸増幅方法。
26A.試料から発せられる光の検出が核酸増幅反応の後に行なわれることを特徴とする24Aの核酸増幅方法。
1B.ピペットチップの少なくとも吸入吐出口部位を収納できる収納部と、化学反応を行なう反応部を含むことを特徴とする容器。
2B.化学反応が、核酸増幅反応であることを特徴とする請求項32に記載の容器。
3B.前記反応部の容積が、0.1ml以下であることを特徴とする1Bまたは2Bの容器。
4B.前記反応部の容積に対する表面積の比が、4mm−1以上であることを特徴とする3Bの容器。
5B.前記反応部の側面の部分の肉厚が0.5mm以下であることを特徴とする1B〜4Bのいずれかの容器。
6B.前記反応部の底面の形状が三角形であることを特徴とする1B〜5Bのいずれかの容器。
7B.前記反応部の底面の形状が四角形であることを特徴とする1B〜5Bのいずれかの容器。
8B.前記反応部の底面の形状が長方形であり、該長方形を構成する辺において、長辺の長さが短辺の長さの2倍以上であることを特徴とする7Bの容器。
9B.容器が熱可塑性樹脂からなることを特徴とする1B〜8Bのいずれかの容器。
10B.熱可塑性樹脂が、ポリプロピレン、ポリオレフィン、ポリメチルペンテン、環状ポリオレフィン、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリアセタール、ポリアミド、ポリイミド、ポリアミドイミド、液晶ポリマー、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルサルホン、ポリエチレンテレフタレート、ポリフェニレンエーテル、ポリサルフォン、ポリフェニレンサルファイド、ポリブチレンテレフタレート、メタクリル樹脂、ABS樹脂及びポリ塩化ビニルからなる群より選ばれた1種の樹脂又は2種以上のポリマーアロイ又は2種以上のポリマーブレンドであることを特徴とする9Bの容器。
11B.熱可塑性樹脂が、ポリプロピレンであることを特徴とする9Bの容器。
12B.化学反応を行なうための反応部の少なくとも一部が、光学的に透明であることを特徴とする1B〜11Bのいずれかの容器。
13B.さらに複数の容器が連結されてなることを特徴とする1B〜12Bのいずれかの容器。
14B.複数の容器の連結が、収納部を連結することによってなることを特徴とする13Bの容器。
15B.ピペットチップがフィルター付きピペットチップであることを特徴とする1B〜14Bのいずれかの容器。
16B.フィルターが疎水性フィルターであることを特徴とする15Bの容器。
1C.少なくとも下記(a)および(b)の工程を含むことを特徴とする核酸増幅方法。
(a)着脱可能なチップに、核酸増幅反応のための溶液を保持させる
(b)前記溶液を保持したチップを核酸増幅容器に装着する
2C.(a)の工程において、着脱可能なチップへの溶液の保持が、該チップを介して溶液を吸引および吐出することが可能な分注機構を用いて、該チップに該溶液を吸引することにより行なわれることを特徴とする1Cの核酸増幅方法。
3C.(b)の工程において、溶液を保持したチップの核酸増幅容器への装着が、該チップを分注機構から取り外すことなく行なわれることを特徴とする2Cの核酸増幅方法。
4C.チップがフィルターを内蔵してなり、該フィルターは、該チップにおいて溶液を保持する部分と、分注機構に装着される際に該分注機構に接する部分との間に位置することを特徴とする1Cから3Cのいずれかの核酸増幅方法。
5C.フィルターが疎水性フィルターであることを特徴とする4Cの核酸増幅方法。
6C.チップと核酸増幅容器が、装着により互いに密着することを特徴とする1Cから5Cのいずれかの核酸増幅方法。
7C.さらに、下記(c)および(d)の工程を含むことを特徴とする1Cから6Cのいずれかの核酸増幅方法。
(c)前記チップを分注機構から取り外す
(d)前記チップに保持した溶液を核酸増幅容器の底部に移動させる
8C.(d)の工程において、溶液の移動が、チップを装着した核酸増幅容器を遠心することにより行なわれることを特徴とする7Cの核酸増幅方法。
9C.(d)の工程において、溶液の移動が、チップに保持された溶液に空気圧を与えることにより行なわれることを特徴とする7Cの核酸増幅方法。
10C.(c)の工程において、チップの取り外しが、分注機構から空気を吐出しながら行なわれることを特徴とする7Cから9Cのいずれかの核酸増幅方法。
11C.さらに、下記(c)および(d)の工程を含むことを特徴とする1Cから6Cのいずれかの核酸増幅方法。
(c)前記チップに保持された溶液に空気圧を与え、核酸増幅反応のための溶液を該核酸増幅容器の底部に移動させる
(d)前記チップを分注機構から取り外す
本発明により、破損しにくく取り扱いが簡便であり、さらに簡易な構造で安価に大量生産することが可能な核酸増幅容器、ならびに当該核酸増幅容器を用いた迅速かつ簡便な核酸増幅検出方法が提供される。本発明の核酸増幅容器は、特に、これまでの核酸増幅容器とは異なり破損する可能性が極めて低いため、例えば、遺伝子検査のように、患者から採取できる検体の量が限られているため失敗が許されず、さらに迅速性も要求される場合にも、効果的に使用することができる。
本発明により、破損しにくく取り扱いが簡便であり、簡易な構造で安価に大量生産することが可能な反応容器が提供される。また、本発明により、簡易な操作で確実に核酸増幅反応液の飛散を防ぐことができるため、自動化が容易であり、簡易な構造の核酸増幅装置でコンタミネーションを予防することが可能な核酸増幅方法が提供される。
さらに、本発明の反応容器(核酸増幅容器)・核酸増幅方法を用いれば、特に、これまでの反応容器(核酸増幅容器)・核酸増幅方法とは異なり、コンタミネーションの原因となる物質の、廃棄物からの飛散または漏出を減らすことができるため、例えば、遺伝子検査のように、患者から採取できる検体の量が限られているため失敗が許されず、さらに感染性の検体を取り扱う可能性がある場合にも、効果的に使用することができる。
以下、本発明の一実施形態について詳細に説明する。
(A)
本発明において、増幅の対象となる核酸としては、標的核酸配列すなわち解析の対象となる核酸配列を含む染色体又はその断片に相補的な配列を有する核酸、増幅した核酸またはその断片に相補的な配列を有する核酸、などが挙げられる。
上記染色体又はその断片に相補的な配列を有する核酸は、例えば、バクテリア、動物または植物組織、個体細胞由来の溶解物などのあらゆる材料から調製することができる。該染色体又はその断片に相補的な配列を有する核酸の調製法は特に限定されないが、例えば、患者の血液、組織から、既知の方法により調製してもよい。代表的なものとして、フェノール/クロロホルム抽出法(Biochimica et Biophysica Acta 第72巻、第619〜629頁、1963年)、アルカリSDS法(Nucleic Acids Research 第7巻、第1513〜1523頁、1979年)等の液相で行なう方法がある。また、核酸の単離に核酸結合用担体を用いる系としては、ガラス粒子とヨウ化ナトリウム溶液を使用する方法(Proc. Natl. Acad. Sci. USA 第76−2巻、第615〜619頁、1979年)、ハイドロキシアパタイトを用いる方法(特開昭63−263093号公報)等がある。その他の方法としてはシリカ粒子とカオトロピックイオンを用いた方法(Journal of Clinical Microbiology 第28−3巻、第495〜503頁、1990年、特開平2−289596号公報)が挙げられる。なお、例えば、バクテリア、動物、植物などに由来する細胞を含む溶液を、当該細胞を破壊することなく試料として用いたり、あるいはバクテリア、動物、植物などに由来する細胞を直接、核酸増幅反応を行なうための反応液に添加して、上記のような方法による核酸の調製を省略し、核酸増幅反応を行なうこともできる。
本発明において、核酸の増幅方法としては、上記PCRの他に、NASBA(Nucleic acid sequence−basedamplification method;Nature 第350巻、第91頁(1991年))、LCR(国際公開89/12696号公報、特開平2−2934号公報)、SDA(Strand Displacement Amplification:Nucleic acid research 第20巻、第1691頁(1992年))、RCA(国際公開90/1069号公報)、TMA(Transcription mediated amplification method;J.Clin.Microbiol. 第31巻、第3270頁(1993年))、LAMP(loop−mediated isothermal amplification method:J Clin Microbiol. 第42巻:第1,956頁(2004年))、ICAN(isothermal and chimeric primer−initiated amplification of nucleic acids:Kekkaku. 第78巻、第533頁(2003年))など既知の核酸増幅方法が挙げられる。本発明において、核酸増幅方法はPCRに限定されるものではないが、以下、説明の簡便化のため、核酸の増幅方法をPCRに代表させ、核酸増幅(核酸増幅反応)を行なうための反応液を「PCR反応液」と称することがある。
本発明の核酸増幅容器は、材料として高分子材料を用いることにより、核酸増幅容器が破損する可能性を極めて低くすることができる。高分子材料としては、破損しにくい性質を有していれば特に限定されないが、成型が容易であるという観点から熱可塑性樹脂であることがより好ましい。例えば、ポリプロピレン(PP)、ポリオレフィン(PO)、ポリメチルペンテン(TPX)、環状ポリオレフィン(COC)、ポリエチレン(PE)、ポリスチレン(PS)、ポリカーボネート(PC)、ポリアセタール(POM)、ポリアミド(PA)、ポリイミド(PI)、ポリアミドイミド(PAI)、液晶ポリマー(LCP)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリエーテルサルホン(PES)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリフェニレンエーテル(PPE)、ポリサルフォン(PSF)、ポリフェニレンサルファイド(PPS)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、メタクリル樹脂(PMMA)、ABS樹脂(ABS)、ポリ塩化ビニル(PVC)などを使用することができる。またはこれら2種以上のポリマーアロイを使用することができる。好ましくはポリプロピレン(PP)、環状ポリオレフィン(COC)、ポリカーボネート(PC)、またはこれら2種以上のポリマーアロイ又は2種以上のポリマーブレンドであり、より好ましくはポリプロピレン(PP)である。
また、本発明の核酸増幅容器において、核酸の増幅反応を行なうための反応部の少なくとも一部が、光学的に透明であることにより、核酸の増幅に応じて発する蛍光が変化するPCR試料を用い、さらに核酸増幅装置がPCR反応液の蛍光を検出する手段を備えている場合に、短時間のうちにPCRを行ない、その結果を確認することができる。一般に、物体に入射した光は、一部は物体表面で反射され、他の一部は物体内で吸収され、残りが透過光となるため、光学的な透明度は、入射光に対する透過光の比率として表すことができる。当該反応部の少なくとも一部の透明度としては、核酸の増幅に応じて発する蛍光が検出できれば特に限定されない。1mm厚の成形板にしたときの可視光線透過率が、50%以上であることが好ましく、より好ましくは80%以上、さらに好ましくは90%以上であればよい。
高分子材料は、従来公知のキャピラリーサンプルチューブの材質として知られるガラスに比べて割れにくい、すなわち破損しにくいメリットを有する一方で、熱などの影響により変形しやすいデメリットを有する材料である。特に、PCR反応液の蛍光を検出することにより短時間のうちにPCRの結果を確認する検出方法を用いる場合、核酸増幅容器が変形すると、PCR反応液から発せられた蛍光が核酸増幅装置の検出器に届かないことが大きな問題となる。
前述のように、PCRにおいては核酸増幅容器を介してPCR反応液の昇温または冷却を繰り返し、それぞれ変性反応、アニーリング反応、伸長反応に適した温度に調整することにより、試料中の核酸が増幅する。一般に、PCRの変性反応に用いられる温度は95℃程度であるため、当該温度において高分子材料からなる核酸増幅容器が変形しないようにするためには、該核酸増幅容器の肉厚を厚くする必要がある。しかしながら、肉厚を厚くすると核酸増幅容器を介した熱エネルギーの伝達が遅くなるため、PCR反応液の昇温または冷却に時間がかかり、核酸増幅を迅速に行なうことができない。したがって、従来公知のキャピラリーサンプルチューブの材質を単純に高分子材料と置き換えるだけでは、迅速性を犠牲にすることなく、破損しにくい核酸増幅容器を提供することはできない。すなわち、本発明では、様々な材質および形状を検討し、破損しにくい性質と変形しにくい性質を両立できる核酸増幅容器を確立したものである。
本発明の核酸増幅容器は、底面と、該底面を構成する直線または曲線をそれぞれ一辺とする平面状または曲面状の側面とを有する。該底面の形状としては、核酸増幅容器の強度を確保するために、少なくとも2つの角を有していれば特に限定されないが、例えば、図1の(A)〜(O)に示すような形状が挙げられる。(A)〜(E)に示すような正多角形、(F)のような長方形、(G)のような平行四辺形、(H)のような十字型、(I)または(J)のような星型など、直線のみで構成される形状の他に、(K)〜(N)のように直線と曲線とを組み合わせた形状、(O)のように曲線のみで構成される形状など、適宜選択することができる。
核酸増幅容器の強度を確保し、かつPCR反応液から発せられる蛍光を容易に検出するという観点からは、該底面の形状は(A)のような三角形、または(B)、(F)、(G)のような四角形が好ましい。一般に、蛍光検出においては、光源すなわちPCR反応液と検出器とを結ぶ直線に平行な軸線上にある蛍光分子の量が、測定されるシグナルの強度に反映されるため、該底面の形状は(F)のような長方形であることがより好ましく、該長方形を構成する辺において、長辺の長さが短辺の長さの2倍以上であることがさらに好ましい。
核酸増幅容器の成型方法としては、従来公知の方法を使用することができるが、短い時間で同じ品質の成型品を大量に生産できる、原料の投入から成型品の取り出しまでを全自動で行うことができる、高い寸法精度と複雑な構造の成型品を作ることができる、などの観点から、射出成型法がより好適に使用し得る。
蛍光検出において、当該PCR反応液へ入射した励起光が核酸増幅容器により反射される現象が蛍光測定の障害となる場合は、例えば、(K)〜(N)のように直線と曲線を組み合わせた形状、または(O)のように曲線のみで構成される形状を選択することで、反射光の影響を低減させることができる。この場合、上述したように、光源すなわちPCR反応液と検出器とを結ぶ直線に平行な軸線上にある蛍光分子の量が、測定されるシグナルの強度に反映されることから、(K)のような形状であることがより好ましい。
本発明の核酸増幅容器は、上記のような形状の底面を構成する直線または曲線をそれぞれ一辺とする平面状または曲面状の側面とを有する。すなわち核酸増幅容器において、核酸の増幅反応を行なうための反応部は、上記のような形状の底面を、該底面に垂直な軸線方向に掃引したような外観を有する。当該核酸増幅容器を側面から見た場合の形状は特に限定されず、該反応部を、該底面に平行な平面で切断した場合の切り口の大きさは、該底面からの距離によらず一定の形状(すなわち、柱状)でも良いし、該底面からの距離が離れるほど大きくなる形状(すなわち、底面に向かって細くなる形状)でも良い。本発明の実施形態の一例として、図2に、底面の形状を正方形、側面の形状を柱状(すなわち、該底面に平行な平面で切断した場合の切り口の大きさが該底面からの距離によらず一定)とした場合の核酸増幅容器の外観を示す。
一般に、柱状または底面に向かって細くなる形状の構造物の変形に対する抵抗性、すなわち強度は、該構造物の断面形状が三角形や四角形などの多角形の方が、円形より強いことが知られている。したがって、本発明の核酸増幅容器の外観は、三角形や四角形など多角形の断面形状を有する柱状または底面に向かって細くなる形状が好ましく、三角形または四角形の断面形状を有することがより好ましい。
本発明では、核酸増幅容器の反応部、すなわちPCR反応液の貯留部位を極めて細く形成することにより、該PCR反応液の容積に対する表面積が大きくなる、すなわち該PCR溶液と核酸増幅装置の間での熱エネルギーの伝達速度が向上し、PCRにおいて繰り返される変性反応、アニーリング反応、伸長反応の各工程間での温度調整の時間を短縮することができる。該反応部において、容積に対する表面積の比は4mm−1以上であることが好ましく、6mm−1以上であることがより好ましく、8mm−1以上であることがさらに好ましい。
また、PCRにおいて繰り返される変性反応、アニーリング反応、伸長反応の各工程間での温度調整の時間を短縮するためには、PCR反応液の容積を小さくすることも効果的である。迅速にPCRを行なうためには、該PCR反応液の容積は0.1ml以下であることが好ましく、0.02ml以下であることがより好ましい。しかしながら、PCR反応液の容積が小さすぎると、該PCR反応液の蛍光を検出することにより短時間のうちにPCRの結果を確認する検出方法を用いる場合に、検出可能な蛍光分子の量が不足し、シグナルとして測定できない可能性があるため、該PCR反応液の容積は0.005ml以上であることが好ましく、0.01ml以上であることがより好ましい。
さらに、上述のように、核酸増幅容器の肉厚を厚くすると、該核酸増幅容器を介した熱エネルギーの伝達が遅くなるため、PCR反応液の昇温または冷却に時間がかかり、核酸増幅を迅速に行なうことができない。核酸増幅容器の反応部の側面における平面状または曲面状の部分の肉厚は0.5mm以下であることが好ましく、0.4mm以下であることがより好ましく、0.3mm以下であることがさらに好ましい。しかしながら、当該反応部の側面における平面状または曲面状の部分の肉厚が薄すぎると、例え、核酸増幅容器の形状について前述のような工夫を施していたとしても、強度不足によりPCR中に該核酸増幅容器の反応部が変形する可能性があるため、該肉厚は0.1mm以上であることが好ましく、0.2mm以上であることがより好ましい。
上述のように、本発明の核酸増幅容器において、反応部、すなわちPCR反応液の貯留部位を極めて細く形成することが好ましい。しかしながら、極めて細い反応部に試料またはPCR反応液などを充填するためには、導入部、すなわち試料などを受け入れるための注入口に注いだ上で遠心機にかける工程が必要になる。核酸増幅容器の導入部へ試料またはPCR反応液などを注入する際には、例えば、マイクロピペットなど手動式の分注器または自動式の分注装置を使用するため、該導入部は当該分注器または分注装置により容易に試料またはPCR反応液などを注入し得る形状であることが好ましい。具体的には、該導入部の容積に対する表面積の比が4mm−1未満であり、該容積は前記反応部の容積より大きいことが好ましい。さらには、該導入部の容積に対する表面積の比が2mm−1未満であり、該容積は前記反応部の容積より大きいことがより好ましい。
また、試料またはPCR反応液などを核酸増幅容器の導入部に注入し、遠心により該核酸増幅容器の反応部に充填するためには、該反応部と該導入部は流動性連通を有していることが好ましい。「流動性連通」とは、該導入部に注入した溶液が遠心力、圧力、重力などの外力により該反応部へ移動できることを指し、該溶液が約1000xg以上の遠心力により該反応部へ移動できることが好ましい。さらに、該反応部と該導入部とが同一の材料からなり、一体的に形成されていれば、従来公知の高分子材料の成型技術を用いて、当該核酸増幅容器を安価に大量生産することが可能となるため、より好ましい。
多数の反応を同時に行なう場合などにおいては、複数の核酸増幅容器を連結することで取り扱いを簡便にすることができる。核酸増幅容器の連結方法としては、生産する際に、複数の核酸増幅容器をあらかじめ連結した構造で成型しても良いし、使用する際に、単体の核酸増幅容器を当業者により用意に想到し得る冶具などを用いて連結しても良い。前述のように、PCRにおいて繰り返される変性反応、アニーリング反応、伸長反応の各工程間での温度調整の時間を短縮するためには、核酸増幅容器の反応部を介した熱エネルギーの伝達を速くすることが効果的であるから、上記複数の核酸増幅容器の連結は、該核酸増幅容器の導入部を連結することによってなることが好ましい。本発明の実施形態の一例として、図3に、底面の形状を正方形、側面の形状を柱状とした核酸増幅容器を、8個連結した場合の外観を示す。
本発明の核酸増幅容器は、核酸を増幅および/または検出するための容器として、例えば、核酸の増幅のみの場合、核酸の増幅と同時に検出する場合、核酸の増幅後に検出する場合、核酸の検出のみの場合などの用途で適宜使用することができる。
(B)
本発明の反応容器を、バイオテクノロジーにおける様々な分野で応用されている化学反応である核酸増幅反応に適用する場合、増幅の対象となる核酸としては、標的核酸配列すなわち解析の対象となる核酸配列を含む染色体又はその断片に相補的な配列を有する核酸、増幅した核酸またはその断片に相補的な配列を有する核酸、などが挙げられる。
本発明は、簡易な操作で確実に反応液の飛散を防ぐことができ、コンタミネーションを予防することが可能な反応容器を提供することを目的の一つとする。
したがって、本発明において、核酸増幅方法とは、前述のような、核酸の増幅に応じて発する蛍光が変化するPCR試料を用い、さらに核酸増幅装置がキャピラリチューブなどに含まれるPCR反応液の蛍光を検出する手段を備えていることによって、核酸の増幅と同時に、あるいは核酸の増幅後に連続して、増幅した核酸を検出する方法をも包含する。
本発明の反応容器は、化学反応のための溶液を保持させたピペットチップの少なくとも吸入吐出口部位を収納することにより、例えば、遺伝子検査においては、従来のピペット操作など核酸増幅反応のための溶液を核酸増幅容器に充填する際に、検体中に含まれる核
酸が飛散し、他の患者などに由来する検体のコンタミネーションが起こる可能性を極めて低くすることができる。
ピペットチップとしては、化学反応のための溶液を保持させることが可能な性質を有していれば特に限定されないが、入手が容易であるという観点から、ピペットチップを介して溶液を吸引および吐出することが可能な分注機構を有する手動分注器または自動分注装置に使用するために、市販されているピペットチップであることが好ましい。例えば、レイニン・インスツルメント社、ギルソン社、エッペンドルフ社、イナ・オプティカ社などから市販されているマイクロピペット用のチップを使用することができる。また、従来公知の成型技術を用いれば、任意の形状のピペットチップを設計および作製することができ、上記ピペットチップとして使用することができる。
ピペットチップが吸引することができる溶液の量は、ピペットチップに化学反応のための溶液を保持させることができれば特に限定されないが、例えば、核酸増幅反応では、0.5マイクロリットル以上100マイクロリットル以下であることが好ましく、1マイクロリットル以上50マイクロリットル以下であることがより好ましく、5マイクロリットル以上20マイクロリットル以下であることがさらに好ましい。また、溶液の量は、ピペットチップが反応容器に収納された際に、当該ピペットチップの先端、すなわち吸入吐出口部位に溶液が接触しない量であることが好ましい。
ピペットチップに、化学反応のための溶液を保持させるための手段も特に制限されないが、ピペットチップを介して溶液を吸引および吐出することが可能な分注機構を用いて、ピペットチップに化学反応のための溶液を吸引することにより、行なうことができる。例えば、ピペットチップを手動式または電動式のマイクロピペット装着して、化学反応のための溶液を吸引し、プランジャーを停止することにより、ピペットチップに溶液を保持させることができる。このとき、マイクロピペットの吸引量を、化学反応のための溶液より多く設定しておけば、チップの先端、すなわち吸引吐出口部位より奥の位置で溶液を保持させることもできる。例えば、自動分注装置の使用は、これら一連の操作をより簡便に行なうことができるため好ましい。また、例えば、核酸増幅機構と分注機構とを有する装置の使用は、さらに好ましい。
ピペットチップを反応容器に収納する手段は、収納後にピペットチップと反応容器を一体的に取り扱うことができる形態であれば特に制限されないが、ピペットチップと反応容器が嵌合する形態であることが好ましく、ピペットチップが反応容器に嵌入する形態であることがより好ましい。このような形態でピペットチップを反応容器に収納することにより、反応後、ピペットチップおよび反応容器を廃棄する際においても、ピペットチップと反応容器が分離することなく一体的に廃棄することができる。一例として、核酸増幅反応において、ピペットチップと核酸増幅容器が分離することなく一体的に廃棄することができることにより、廃棄の際に、ピペットチップに付着した核酸が飛散する可能性を極めて低くし、さらに、核酸増幅容器から増幅核酸断片が漏出する可能性を極めて低くすることで、コンタミネーションの可能性をさらに低減させることができる。
ピペットチップの反応容器への収納は、ピペットチップを上記分注機構から取り外すことなく行なわれても良いし、ピペットチップを上記分注機構から取り外した後に行なわれても良い。手動で装着する場合の操作、あるいは自動で装着する場合の動作を、ともに簡易にするためには、チップを上記分注機構から取り外すことなく、反応容器へ収納することがより好ましい。
本発明の反応容器は、反応液の飛散を厳密に防ぐため、ピペットチップがフィルターを内蔵してなる、フィルター付きピペットチップであることが好ましい。化学反応中および
化学反応後の反応液の飛散を防ぐ観点から、フィルターは、ピペットチップにおいて溶液を保持する部分と、上記分注機構に装着される際に分注機構に接する部分との間に位置することが好ましい。また、フィルターは疎水性フィルターであることが好ましく、飛沫だけでなく、エアゾールの通過をも阻止し得る疎水性フィルターであることがより好ましい。このようなフィルターはとしては、従来公知の方法にて作製することが可能であるが、例えば、ポリエチレン製の基材からなる、フィルター孔の大きさが平均約20ミクロンのフィルターを用いれば、エアゾールの通過によるコンタミネーションを好適に防止し得る。
フィルター付きピペットチップとしては、例えば、レイニン・インスツルメント社、ギルソン社、エッペンドルフ社、イナ・オプティカ社などから市販されているマイクロピペット用のフィルターチップあるいはエアゾール耐性チップを使用することができる。このような市販品の使用は、入手が容易であるという観点から好ましい。
チップを反応容器に装着する際には、反応液の飛散を厳密に防ぐため、ピペットチップと反応容器が密着していることが好ましい。このような形状のピペットチップおよび反応容器の組み合わせを市販品より選抜して用いることが好ましいが、ピペットチップと反応容器の形状が合わず、反応容器にピペットチップを装着した際に隙間が生じる場合には、例えば、ピペットチップとして市販のフィルターチップあるいはエアゾール耐性チップを使用し、当該ピペットチップの形状に合わせて反応容器を作製すればよい。また、反応容器にピペットチップを装着した際に生じた隙間をシール材などを充填することにより塞ぐ、あるいは、反応容器とピペットチップの間に装着するアダプターなどを作製する、などによりピペットチップと反応容器を密着させればよい。
本発明の重要な開示について、核酸増幅反応をその一例として、ピペットチップにフィルター付きピペットチップを用い、反応容器に核酸増幅容器であるキャピラリチューブを用いる場合について、図7を用いて、より詳しく説明する。図7において、まず、(A)に示すような、フィルター付きピペットチップに、手動分注器または自動分注装置を用いて、(B)に示すように、核酸増幅反応のための溶液を吸引し、溶液を保持する。当該ピペットチップを、手動または自動にて、(C)に示すように、核酸増幅容器まで移動させ、(D)に示すように、ピペットチップを核酸増幅容器に収納する。次に、ピペットチップを手動分注器または自動分注装置から取り外す。このとき、手動分注器または自動分注装置の分注機構から空気を吐出しながら、当該ピペットチップを取り外す動作を行なうことにより、当該動作の際に生じる圧力によってピペットチップに保持された溶液の位置が変化する現象を回避することもできる。
続いて、ピペットチップを装着した核酸増幅容器を遠心することにより、(E)に示すように、核酸増幅反応のための溶液を核酸増幅容器の底部に移動させる。このとき、遠心の代わりに空気圧を用いることにより、当該溶液を移動させることもできる。空気圧を用いる場合には、例えば、手動分注器または自動分注装置の分注機構を再度ピペットチップに装着し、空気を吐出することにより、ピペットチップに保持された溶液を押し出すことができる。
次に、(E)の状態のままで核酸増幅反応および増幅核酸断片の検出を行い、(E)の状態のままでピペットチップおよび核酸増幅容器を廃棄する。
また、本発明の別の重要な開示について、核酸増幅反応をその一例として、ピペットチップにフィルター付きピペットチップを用い、反応容器に核酸増幅容器であるキャピラリチューブを用いる場合について、図7を用いて説明する。図7において、まず、(A)に示すような、フィルター付きピペットチップに、手動分注器または自動分注装置を用いて、(B)に示すように、核酸増幅反応のための溶液を吸引し、溶液を保持する。当該ピペットチップを、手動または自動にて、(C)に示すように、核酸増幅容器まで移動させ、(D)に示すように、ピペットチップを核酸増幅容器に収納する。
次に、手動分注器または自動分注装置の分注機構から空気を吐出することにより、ピペットチップに保持された溶液に空気圧を与え、(E)に示すように、当該溶液を核酸増幅容器の底部に移動させる。
続いて、(E)の状態のままで核酸増幅反応および増幅核酸断片の検出を行い、(E)の状態のままでピペットチップおよび核酸増幅容器を廃棄する。
本発明の反応容器は、材料として熱可塑性樹脂を用いることにより、成型が容易であるとともに、核酸増幅容器が破損する可能性を極めて低くすることができる。熱可塑性樹脂としては、破損しにくい性質を有していれば特に限定されないが、例えば、ポリプロピレン(PP)、ポリオレフィン(PO)、ポリメチルペンテン(TPX)、環状ポリオレフィン(COC)、ポリエチレン(PE)、ポリスチレン(PS)、ポリカーボネート(PC)、ポリアセタール(POM)、ポリアミド(PA)、ポリイミド(PI)、ポリアミドイミド(PAI)、液晶ポリマー(LCP)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリエーテルサルホン(PES)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリフェニレンエーテル(PPE)、ポリサルフォン(PSF)、ポリフェニレンサルファイド(PPS)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、メタクリル樹脂(PMMA)、ABS樹脂(ABS)、ポリ塩化ビニル(PVC)などを使用することができる。またはこれら2種以上のポリマーアロイを使用することができる。好ましくはポリプロピレン(PP)、環状ポリオレフィン(COC)、ポリカーボネート(PC)、またはこれら2種以上のポリマーアロイ又は2種以上のポリマーブレンドであり、より好ましくはポリプロピレン(PP)である。
また、本発明の反応容器において、化学反応を行なうための反応部の少なくとも一部が、光学的に透明であることにより、化学反応中あるいは化学反応後に、当該反応の結果を確認することができる。一例として、核酸増幅反応においては、核酸の増幅に応じて発する蛍光が変化するPCR試料を用い、さらに核酸増幅装置がPCR反応液の蛍光を検出する手段を備えている場合に、短時間のうちにPCRを行ない、その結果を確認することができる。一般に、物体に入射した光は、一部は物体表面で反射され、他の一部は物体内で吸収され、残りが透過光となるため、光学的な透明度は、入射光に対する透過光の比率として表すことができる。当該反応部の少なくとも一部の透明度としては、核酸の増幅に応じて発する蛍光が検出できれば特に限定されない。1mm厚の成形板にしたときの可視光線透過率が、50%以上であることが好ましく、より好ましくは80%以上、さらに好ましくは90%以上であればよい。
熱可塑性樹脂は、従来公知のキャピラリーサンプルチューブの材質として知られるガラスに比べて割れにくい、すなわち破損しにくいメリットを有する一方で、熱などの影響により変形しやすいデメリットを有する材料である。例えば、核酸増幅反応において、PCR反応液の蛍光を検出することにより短時間のうちにPCRの結果を確認する検出方法を用いる場合、核酸増幅容器が変形すると、PCR反応液から発せられた蛍光が核酸増幅装置の検出器に届かないことが大きな問題となる。
前述のように、PCRにおいては核酸増幅容器を介してPCR反応液の昇温または冷却を繰り返し、それぞれ変性反応、アニーリング反応、伸長反応に適した温度に調整することにより、試料中の核酸が増幅する。一般に、PCRの変性反応に用いられる温度は95℃程度であるため、当該温度において高分子材料からなる核酸増幅容器が変形しないようにするためには、該核酸増幅容器の肉厚を厚くする必要がある。しかしながら、肉厚を厚くすると核酸増幅容器を介した熱エネルギーの伝達が遅くなるため、PCR反応液の昇温または冷却に時間がかかり、核酸増幅を迅速に行なうことができない。したがって、従来公知のキャピラリーサンプルチューブの材質を単純に高分子材料と置き換えるだけでは、迅速性を犠牲にすることなく、破損しにくい核酸増幅容器を提供することはできない。すなわち、本発明では、様々な材質および形状を検討し、破損しにくい性質と変形しにくい性質を両立できる反応容器を確立したものである。
本発明の反応容器は、底面と、該底面を構成する直線または曲線をそれぞれ一辺とする平面状または曲面状の側面とを有する。該底面の形状としては、反応容器の強度を確保するために、少なくとも2つの角を有していれば特に限定されないが、例えば、図8の(A)〜(O)に示すような形状が挙げられる。(A)〜(E)に示すような正多角形、(F)のような長方形、(G)のような平行四辺形、(H)のような十字型、(I)または(J)のような星型など、直線のみで構成される形状の他に、(K)〜(N)のように直線と曲線とを組み合わせた形状、(O)のように曲線のみで構成される形状など、適宜選択することができる。
反応容器の強度を確保し、かつ反応液から発せられる蛍光などの光学的な信号を容易に検出するという観点からは、該底面の形状は(A)のような三角形、または(B)、(F)、(G)のような四角形が好ましい。一般に、蛍光検出においては、光源すなわちPCR反応液と検出器とを結ぶ直線に平行な軸線上にある蛍光分子の量が、測定されるシグナルの強度に反映されるため、該底面の形状は(F)のような長方形であることがより好ましく、該長方形を構成する辺において、長辺の長さが短辺の長さの2倍以上であることがさらに好ましい。
本発明において、ピペットチップの少なくとも吸入吐出口部位を収納できる収納部と、化学反応を行なう反応部とが、同一の材料からなり、一体的に形成されていれば、従来公知の高分子材料の成型技術を用いて、当該核酸増幅容器を安価に大量生産することが可能となるため、より好ましい。
反応容器の成型方法としては、従来公知の方法を使用することができるが、短い時間で同じ品質の成型品を大量に生産できる、原料の投入から成型品の取り出しまでを全自動で行うことができる、高い寸法精度と複雑な構造の成型品を作ることができる、などの観点から、射出成型法がより好適に使用し得る。
蛍光検出において、当該反応液へ入射した励起光が反応容器により反射される現象が蛍光測定の障害となる場合は、例えば、(K)〜(N)のように直線と曲線を組み合わせた形状、または(O)のように曲線のみで構成される形状を選択することで、反射光の影響を低減させることができる。この場合、上述したように、光源すなわちPCR反応液と検出器とを結ぶ直線に平行な軸線上にある蛍光分子の量が、測定されるシグナルの強度に反映されることから、(K)のような形状であることがより好ましい。
本発明の反応容器は、上記のような形状の底面を構成する直線または曲線をそれぞれ一辺とする平面状または曲面状の側面とを有する。すなわち反応容器において、化学反応を行なうための反応部は、上記のような形状の底面を、該底面に垂直な軸線方向に掃引したような外観を有する。当該反応容器を側面から見た場合の形状は特に限定されず、該反応部を、該底面に平行な平面で切断した場合の切り口の大きさは、該底面からの距離によらず一定の形状(すなわち、柱状)でも良いし、該底面からの距離が離れるほど大きくなる形状(すなわち、底面に向かって細くなる形状)でも良い。本発明の実施形態の一例として、図9に、底面の形状を正方形、側面の形状を柱状(すなわち、該底面に平行な平面で
切断した場合の切り口の大きさが該底面からの距離によらず一定)とした場合の反応容器の外観を示す。
一般に、柱状または底面に向かって細くなる形状の構造物の変形に対する抵抗性、すなわち強度は、該構造物の断面形状が三角形や四角形などの多角形の方が、円形より強いことが知られている。したがって、本発明の反応容器の外観は、三角形や四角形など多角形の断面形状を有する柱状または底面に向かって細くなる形状が好ましく、三角形または四角形の断面形状を有することがより好ましい。
本発明では、反応容器の反応部、すなわち反応液の貯留部位を極めて細く形成することにより、該反応液の容積に対する表面積が大きくなる、すなわち、反応液と反応装置の間での熱エネルギーの伝達速度が向上し、特に温度変化を伴う化学反応において、反応時間を短縮することができる。一例として、PCRを用いた核酸増幅反応においては、PCR溶液と核酸増幅装置の間での熱エネルギーの伝達速度が向上し、PCRにおいて繰り返される変性反応、アニーリング反応、伸長反応の各工程間での温度調整の時間を短縮することができる。該反応部において、容積に対する表面積の比は4mm−1以上であることが好ましく、6mm−1以上であることがより好ましく、8mm−1以上であることがさらに好ましい。
また、特に温度変化を伴う化学反応において、反応時間を短縮するためには、反応液の容積を小さくすることも効果的である。一例として、PCRにおいて繰り返される変性反応、アニーリング反応、伸長反応の各工程間での温度調整の時間を短縮するためには、PCR反応液の容積を小さくすることも効果的である。迅速にPCRを行なうためには、該PCR反応液の容積は0.1ml以下であることが好ましく、0.02ml以下であることがより好ましい。しかしながら、PCR反応液の容積が小さすぎると、該PCR反応液の蛍光を検出することにより短時間のうちにPCRの結果を確認する検出方法を用いる場合に、検出可能な蛍光分子の量が不足し、シグナルとして測定できない可能性があるため、該PCR反応液の容積は0.005ml以上であることが好ましく、0.01ml以上であることがより好ましい。
さらに、上述のように、反応容器の肉厚を厚くすると、該反応容器を介した熱エネルギーの伝達が遅くなるため、反応液の昇温または冷却に時間がかかり、温度変化を伴う化学反応を迅速に行なうことができない。例えば、核酸増幅反応において、核酸増幅容器の反応部の側面における平面状または曲面状の部分の肉厚は0.5mm以下であることが好ましく、0.4mm以下であることがより好ましく、0.3mm以下であることがさらに好ましい。しかしながら、当該反応部の側面における平面状または曲面状の部分の肉厚が薄すぎると、例え、核酸増幅容器の形状について前述のような工夫を施していたとしても、強度不足によりPCR中に該核酸増幅容器の反応部が変形する可能性があるため、該肉厚は0.1mm以上であることが好ましく、0.2mm以上であることがより好ましい。
多数の反応を同時に行なう場合などにおいては、複数の反応容器を連結することで取り扱いを簡便にすることができる。反応容器の連結方法としては、生産する際に、複数の反応容器をあらかじめ連結した構造で成型しても良いし、使用する際に、単体の反応容器を当業者により用意に想到し得る冶具などを用いて連結しても良い。例えば、核酸増幅反応においては、前述のように、PCRにおいて繰り返される変性反応、アニーリング反応、伸長反応の各工程間での温度調整の時間を短縮するためには、核酸増幅容器の反応部を介した熱エネルギーの伝達を速くすることが効果的であるから、上記複数の核酸増幅容器の連結は、該核酸増幅容器の収納部を連結することによってなることが好ましい。本発明の実施形態の一例として、図10に、底面の形状を正方形、側面の形状を柱状とした反応容器を、8個連結した場合の外観を示す。
本発明の反応容器を核酸増幅反応に用いる場合は、核酸を増幅および/または検出するための容器として、例えば、核酸の増幅のみの場合、核酸の増幅と同時に検出する場合、核酸の増幅後に検出する場合、核酸の検出のみの場合などの用途で適宜使用することができる。
本発明において、化学反応としては、加水分解、脱水反応、付加重合、縮合重合、酸化反応、還元反応、中和反応など、原子間の結合または切断によって異なる物質を生成する反応の他に、抗原−抗体反応、リガンド結合反応、蛍光エネルギー転移反応など、分子間の相互作用に由来する反応をも包含する。
本発明の反応容器はこれらの化学反応に用いることもできる。
(c)
本発明は、簡易な操作で確実に核酸増幅反応液の飛散を防ぐことができ、自動化が容易であり、簡易な構造の核酸増幅装置でコンタミネーションを予防することが可能な核酸増幅方法を提供することを目的の一つとする。したがって、本発明において、核酸増幅方法とは、前述のような、核酸の増幅に応じて発する蛍光が変化するPCR試料を用い、さらに核酸増幅装置がキャピラリチューブなどに含まれるPCR反応液の蛍光を検出する手段を備えていることによって、核酸の増幅と同時に、あるいは核酸の増幅後に連続して、増幅した核酸を検出する方法をも包含する。
本発明の核酸増幅方法は、核酸増幅反応のための溶液を保持させた着脱可能なチップを核酸増幅容器に装着することにより、例えば、従来のピペット操作など核酸増幅反応のための溶液を核酸増幅容器に充填する際に、検体中に含まれる核酸が飛散し、他の患者などに由来する検体のコンタミネーションが起こる可能性を極めて低くすることができる。
着脱可能なチップとしては、核酸増幅反応のための溶液を保持させることが可能な性質を有していれば特に限定されないが、入手が容易であるという観点から、チップを介して溶液を吸引および吐出することが可能な分注機構を有する手動分注器または自動分注装置に使用するために、市販されているチップであることが好ましい。例えば、レイニン・インスツルメント社、ギルソン社、エッペンドルフ社、イナ・オプティカ社などから市販されているマイクロピペット用のチップを使用することができる。また、従来公知の成型技術を用いれば、任意の形状のチップを設計および作製することができ、上記着脱可能なチップとして使用することができる。
着脱可能なチップが吸引することができる溶液の量は、チップに核酸増幅反応のための溶液を保持させることができれば特に限定されないが、0.5マイクロリットル以上100マイクロリットル以下であることが好ましく、1マイクロリットル以上50マイクロリットル以下であることがより好ましく、5マイクロリットル以上20マイクロリットル以下であることがさらに好ましい。
着脱可能なチップに、核酸増幅反応のための溶液を保持させるための手段も特に制限されないが、チップを介して溶液を吸引および吐出することが可能な分注機構を用いて、チップに核酸増幅反応のための溶液を吸引することにより、行なうことができる。例えば、チップを手動式または電動式のマイクロピペット装着して、核酸増幅反応のための溶液を吸引し、プランジャーを停止することにより、チップに溶液を保持させることができる。このとき、マイクロピペットの吸引量を、核酸増幅反応のための溶液より多く設定しておけば、チップの先端開口部より奥の位置で溶液を保持させることもできる。例えば、自動分注装置の使用は、これら一連の操作をより簡便に行なうことができるため好ましい。また、例えば、核酸増幅機構と分注機構とを有する装置の使用は、さらに好ましい。
チップを核酸増幅容器に装着する手段は、装着後にチップと核酸増幅容器を一体的に取り扱うことができる形態であれば特に制限されないが、チップと核酸増幅容器が嵌合する形態であることが好ましく、チップが核酸増幅容器に嵌入する形態であることがより好ましい。このような形態でチップを核酸増幅容器に装着することにより、核酸増幅反応後、チップおよび核酸増幅容器を廃棄する際においても、チップと核酸増幅容器が分離することなく一体的に廃棄することができる。つまり、廃棄の際に、チップに付着した核酸が飛散する可能性を極めて低くし、さらに、核酸増幅容器から増幅核酸断片が漏出する可能性を極めて低くすることで、コンタミネーションの可能性をさらに低減させることができる。
溶液を保持したチップの核酸増幅容器への装着は、チップを上記分注機構から取り外すことなく行なわれても良いし、チップを上記分注機構から取り外した後に行なわれても良い。手動で装着する場合の操作、あるいは自動で装着する場合の動作を、ともに簡易にするためには、チップを上記分注機構から取り外すことなく、核酸増幅容器へ装着することがより好ましい。
本発明の核酸増幅方法は、検体中に含まれる核酸または増幅核酸断片の飛散を厳密に防ぐため、チップがフィルターを内蔵してなることが好ましい。核酸増幅反応中および核酸増幅反応後の当該核酸断片の飛散を防ぐ観点から、フィルターは、フィルターは、チップにおいて溶液を保持する部分と、上記分注機構に装着される際に分注機構に接する部分との間に位置することが好ましい。また、フィルターは疎水性フィルターであることが好ましく、飛沫だけでなく、エアゾールの通過をも阻止し得る疎水性フィルターであることがより好ましい。このようなフィルターはとしては、従来公知の方法にて作製することが可能であるが、例えば、ポリエチレン製の基材からなる、フィルター孔の大きさが平均約20ミクロンのフィルターを用いれば、エアゾールの通過によるコンタミネーションを好適に防止し得る。
フィルターを内臓したチップとしては、例えば、レイニン・インスツルメント社、ギルソン社、エッペンドルフ社、イナ・オプティカ社などから市販されているマイクロピペット用のフィルターチップあるいはエアゾール耐性チップを使用することができる。このような市販品の使用は、入手が容易であるという観点から好ましい。
チップを核酸増幅容器に装着する際には、検体中に含まれる核酸または増幅核酸断片の飛散を厳密に防ぐため、チップと核酸増幅容器が密着していることが好ましい。このような形状のチップおよび核酸増幅容器の組み合わせを市販品より選抜して用いることが好ましいが、チップと核酸増幅容器の形状が合わず、核酸増幅容器にチップを装着した際に隙間が生じる場合には、例えば、チップとして市販のフィルターチップあるいはエアゾール耐性チップを使用し、当該チップの形状に合わせて核酸増幅容器を作製することも、当業者により容易に想到し得る。また、核酸増幅容器にチップを装着した際に生じた隙間をシール材などを充填することにより塞ぐ、あるいは、核酸増幅容器とチップの間に装着するアダプターなどを作製する、などによりチップと核酸増幅容器を密着させることも、当業者により容易に想到し得る。
本発明の重要な開示について、チップにフィルター内臓チップを用い、核酸増幅容器にキャピラリチューブを用いる場合を例として、図15を用いて、より詳しく説明する。図15において、まず、(A)に示すような、フィルターを内蔵したチップに、手動分注器または自動分注装置を用いて、(B)に示すように、核酸増幅反応のための溶液を吸引し、溶液を保持する。当該チップを、手動または自動にて、(C)に示すように、核酸増幅容器まで移動させ、(D)に示すように、チップを核酸増幅容器に装着する。次に、チップを手動分注器または自動分注装置から取り外す。このとき、手動分注器または自動分注装置の分注機構から空気を吐出しながら、当該チップを取り外す動作を行なうことにより、当該動作の際に生じる圧力によってチップに保持された溶液の位置が変化する現象を回避することもできる。
続いて、チップを装着した核酸増幅容器を遠心することにより、(E)に示すように、核酸増幅反応のための溶液を核酸増幅容器の底部に移動させる。このとき、遠心の代わりに空気圧を用いることにより、当該溶液を移動させることもできる。空気圧を用いる場合には、例えば、手動分注器または自動分注装置の分注機構を再度チップに装着し、空気を吐出することにより、チップに保持された溶液を押し出すことができる。
次に、(E)の状態のままで核酸増幅反応および増幅核酸断片の検出を行い、(E)の状態のままでチップおよび核酸増幅容器を廃棄する。
また、本発明の別の重要な開示について、チップにフィルター内臓チップを用い、核酸増幅容器にキャピラリチューブを用いる場合を例として、図15を用いて説明する。図15において、まず、(A)に示すような、フィルターを内蔵したチップに、手動分注器または自動分注装置を用いて、(B)に示すように、核酸増幅反応のための溶液を吸引し、溶液を保持する。当該チップを、手動または自動にて、(C)に示すように、核酸増幅容器まで移動させ、(D)に示すように、チップを核酸増幅容器に装着する。
次に、手動分注器または自動分注装置の分注機構から空気を吐出することにより、チップに保持された溶液に空気圧を与え、(E)に示すように、当該溶液を核酸増幅容器の底部に移動させる。
続いて、(E)の状態のままで核酸増幅反応および増幅核酸断片の検出を行い、(E)の状態のままでチップおよび核酸増幅容器を廃棄する。
以下、実施例に基づき本発明をより具体的に説明する。もっとも、本発明は下記実施例に限定されるものではない。
(実施例1−3に用いた核酸増幅容器の作製)
図4は実施例1−3で用いた核酸増幅容器の一例を示している。図4(A)は核酸増幅容器を側面から見た図、図4(B)は核酸増幅容器を導入部の上方より見た図、図4(C)は核酸増幅容器を反応部の底から見た図である。反応部の内部の形状は四角柱をしており、その四角柱の底面の形状は正方形である。この内部の四角柱の長さをL、底面の正方形の一辺の長さをaとする。また反応部の外側の形状も四角柱の形状をなし、その外側の四角柱の底面の形状も正方形である。この外側の四角柱の底面の一辺の長さをbとする。これらにより容積(V)、表面積(S)、容積に対する表面積の比(S/V)、肉厚を求めることができる。例えば、L=20.00mm、a=1.00mm、b=1.8mmであれば、下記のように算出される。
容積(V)=a×a×L=20.00mm3
表面積(S)=a×a+a×L×4=81.00mm2
容積に対する表面積の比(S/V)=S/V=81.00/20.00=4.05mm−1
肉厚=(b−a)/2=(1.8−1.00)/2=0.40mm
表1に示すように、高分子材料としてポリプロピレン(PP)を用いて、容器1〜19の様々な容器の金型を作製し、射出成形を行った。なお、ここで用いたポリプロピレン(PP)は、1mm厚の成形板にしたときの可視光線透過率が75%であった。
〔実施例1:PCR反応容器内の溶液温度変化の測定〕
(温度データの測定)
PCR反応容器には、上記実施の形態で説明した核酸増幅容器(以下、「本発明の核酸増幅容器」と表記する)と、比較のため、従来品であるガラス製キャピラリー(ロシュ・ダイアグノスティクス社製、品番11909339001)を用いた。なお、本発明の核酸増幅容器については、容器16を用いた。
まず、本発明の核酸増幅容器の導入部およびガラス製キャピラリーの注入口に、水10μlをそれぞれ注入した。次に、3000rpmで5秒間遠心することで、水を本発明の核酸増幅容器の反応部およびガラス製キャピラリーの底にそれぞれ移動させた。
水が充填された反応容器をそれぞれ核酸増幅装置RapidCycler2(アイダホ・テクノロジーズ社製)に装着し、温度測定記録装置(東亜電波工業株式会社製、INR−9000インテリジェントレコーダ)に接続された温度センサーの先端部を、反応容器内の水にそれぞれ浸漬した。
PCRの温度条件は、94℃で2分間静置した後、94℃で0秒、65℃で0秒を35サイクル行なう設定とし、PCRサイクル中の温度変化を、温度測定記録装置によりリアルタイムに記録した。また、比較のため、上記核酸増幅装置の熱媒(空気)のPCRサイクル中の温度変化も同時に記録した。
(温度データの解析)
記録した温度変化のデータを、温度測定記録装置専用の解析ソフトウェア(東亜電波工業株式会社製、JULILOG2)を用いて解析した。その結果を図5に示す。図5は本実施例におけるPCRサイクル中の温度変化を示す図であり、(A)は本発明の核酸増幅容器内の溶液温度の測定結果を示し、(B)はガラス製キャピラリー内の溶液温度の測定結果を示し、(C)は核酸増幅装置の熱媒(空気)温度の測定結果を示す。
図5(A)に示すように、本発明の核酸増幅容器内の溶液温度は、おおよそ650秒の間に約98℃から約60℃にわたる温度変化が35回繰り返されており、図5(B)に示すように、ガラス製キャピラリー内の溶液温度は、おおよそ650秒の間に約94℃から約65℃にわたる温度変化が35回繰り返されている。また、図5(C)に示すように、核酸増幅装置の熱媒(空気)温度は、おおよそ650秒の間に約99℃から約56℃にわたる温度変化が35回繰り返されている。つまり、PCRの温度下降工程においては、核酸増幅装置の熱媒温度が約56℃まで下降したときに、本発明の核酸増幅容器内の溶液温度は約60℃まで下降し、ガラス製キャピラリー内の溶液温度は約65℃まで下降したことを示し、また、PCRの温度上昇工程においては、核酸増幅装置の熱媒温度が約99℃まで上昇したときに、本発明の核酸増幅容器内の溶液温度は約98℃まで上昇し、ガラス製キャピラリー内の溶液温度は約94℃まで上昇した。これは、本発明の一実施形態である核酸増幅容器を用いた核酸増幅方法では、従来品のガラス製キャピラリーを用いた場合に比べて、核酸増幅装置の熱媒の温度変化に対する溶液温度の追随性が優れ、より迅速に核酸増幅を行なうことができることを示している。
〔実施例2:Cytochrome P450 2C19(CYP2C19)遺伝子の
検出〕
(CYP2C19遺伝子を検出するプライマーの合成)
まず、正鎖プライマー及び逆鎖プライマーを合成した
正鎖プライマー及び逆鎖プライマーは、DNAシンセサイザー(パーキンエルマー社製;392型)を用いて、添付のマニュアルに従い、ホスホアミダイト法により合成した。合成した正鎖プライマー及び逆鎖プライマーを、アンモニア水に溶解して、55℃の環境下で、一晩静置することによって脱保護した。その後、OPCカラム(パーキンエルマー社製)にて精製した。なお、プライマーの合成は、DNA合成受託会社((株)日本バイオサービス、シグマアルドリッチジャパン(株)、オペロンバイオテクノロジー(株)等)に依頼してもよい。
(PCRによるCYP2C19遺伝子の解析)
PCRに供するサンプルとして、ヒト白血球からフェノール・クロロフォルム法によって得たDNA溶液(以下、「サンプル」と表記する)を用いた。
次に、PCR反応液を調製した。PCR反応液は、全量を25μlとして、正鎖プライマー 20pmol、逆鎖プライマー 20pmol、KOD plus DNAポリメラーゼ(東洋紡社製、品番KOD−201)、KOD plus DNAポリメラーゼに添付の×10緩衝液 2.5μl、2mM dNTP 2.5μl、25mM MgCl22μl、5mg/ml ウシ血清アルブミン(BSA) 0.5μl及びサンプルを、溶解しているDNAが100ng、10ng又は1ngとなるように混合し、残部は水とした。
PCRを行なう反応容器には、本発明の核酸増幅容器と、比較のため、従来品であるガラス製キャピラリー(ロシュ・ダイアグノスティクス社製、品番11909339001)を用いた。なお、本発明の核酸増幅容器については、容器16を用いた。
まず、本発明の核酸増幅容器の導入部およびガラス製キャピラリーの注入口に、調製したPCR反応液のうち10μlをそれぞれ注入した。次に、3000rpmで5秒間遠心することで、PCR反応液を本発明の核酸増幅容器の反応部およびガラス製キャピラリーの底にそれぞれ移動させた。
核酸増幅装置には、RapidCycler2(アイダホ・テクノロジーズ社製)を用いた。PCRの温度条件は、94℃で2分間静置した後、94℃で0秒、65℃で0秒を35サイクル行なった。
(アガロースゲル電気泳動による核酸増幅の確認)
PCR反応後、それぞれの反応容器からPCR反応液5μlを回収した。次に、回収したPCR反応液を、3%アガロースゲルによる電気泳動に供した。電気泳動では、100Vの電圧を印加して、60分間行なった。その結果を図6に示す。図6は本実施例における電気泳動の結果を示す図であり、レーン1〜4は本発明の核酸増幅容器を用いたPCRの結果を示し、レーン5〜8はガラス製キャピラリーを用いたPCRの結果を示す。また、レーン1及び5は、調製したPCR反応液25μl当たりのDNAの溶解量が100ngとしたPCR反応液を用いた結果を示し、レーン2及び6は、調製したPCR反応液25μl当たりのDNAの溶解量が10ngとしたPCR反応液を用いた結果を示し、レーン3及び7は、調製したPCR反応液25μl当たりのDNAの溶解量が1ngとしたPCR反応液を用いた結果を示す。また、レーン4及び8は比較のためサンプルの代わりに水を混合したPCR反応液を用いた結果を示す。
図6に示すように、本発明の核酸増幅容器を用いたPCRでは従来品のガラス製キャピラリーを用いたPCRより、高感度にCYP2C19遺伝子を検出することができた。これは、本発明の一実施形態である核酸増幅容器を用いれば、従来品のガラス製キャピラリーとは異なり破損する可能性が極めて低いため、採取できる量が限られている患者検体に対して特に効果的でありながら、該ガラス製キャピラリーを用いたPCR以上の感度でPCRを行なうことができたことを示している。
容器16を除く他の容器についても、実施例1〜2を行った。その結果を下記の評価基準を用いて検討したところ、容器1〜19の全てにおいて、◎又は○の評価であった。
◎ : ガラス製キャピラリーより非常に良好
○ : ガラス製キャピラリーより良好
△ : ガラス製キャピラリーと同等の性能
× : ガラス製キャピラリーより不良
〔実施例3:核酸増幅容器の強度の比較〕
容器には、上記実施の形態で説明した核酸増幅容器(以下、「本発明の核酸増幅容器」と表記する)と、比較のため、従来品であるガラス製キャピラリー(ロシュ・ダイアグノスティクス社製、品番11909339001)を用いた。なお、本発明の核酸増幅容器については、容器16を用いた。
まず、本発明の核酸増幅容器およびガラス製キャピラリーを水平な木製台の上に置き、それぞれの上に、重さが1kgであり各辺の長さが10cmの立方体を静かに乗せた。本発明の核酸増幅容器およびガラス製キャピラリーのそれぞれ10本について上記の操作を行い、破損の有無を目視で判定した。表2は本発明の核酸増幅容器およびガラス製キャピラリーの強度を比較した結果を示す。
表2に示すように、本発明の核酸増幅容器では10本すべてが破損しなかったが、ガラス製キャピラリーでは10本すべてが破損した。これは、本発明の核酸増幅容器では、従来品であるガラス製キャピラリーに比べて強度が優れていることを示しており、実験操作において核酸増幅容器が破損する危険性が極めて低いことを示している。
(実施例4−7に用いた反応容器の作製)
図11は実施例4−7で用いた反応容器の一例を示している。図11(AI)は反応容器を側面から見た図、図11(AII)は反応容器にピペットチップを収納したところを側面から見た図、図11(B)は反応容器を収納部の上方より見た図、図11(C)は反応容器を反応部の底から見た図である。収納部の開口部の形状は、実施例4−7でフィルター付きピペットチップとして用いたLTSエアゾール耐性チップ(レイニン・インスツルメント社製、品番RT−L10F)の形状に合わせ、開口部の内径c=5.6mmとした。また、反応部の内部の形状は四角柱をしており、その四角柱の底面の形状は正方形である。この内部の四角柱において、反応容器にピペットチップが収納され、溶液が充填された場合に、反応の前後あるいは反応中に、当該ピペットチップに溶液が接触しないような、最高位の液面位置から上記底面までの長さをLとする。また、内部の四角柱において、底面の正方形の一辺の長さをaとする。また反応部の外側の形状も四角柱の形状をなし、その外側の四角柱の底面の形状も正方形である。この外側の四角柱の底面の一辺の長さをbとする。これらにより、溶液をピペットチップに接触しない状態で充填可能な最大の溶液量、すなわち容積(V)、表面積(S)、容積に対する表面積の比(S/V)、肉厚を求めることができる。例えば、L=20.00mm、a=1.00mm、b=1.8mmであれば、下記のように算出される。
容積(V)=a×a×L=20.00mm3
表面積(S)=a×a+a×L×4=81.00mm2
容積に対する表面積の比(S/V)=S/V=81.00/20.00=4.05mm−1
肉厚=(b−a)/2=(1.8−1.00)/2=0.40mm
なお、液面とピペットチップ間の距離は、前述のように接触しなければいいので特に限定はしないが、1mm以上であればよく、好ましくは2mm以上であり、特に好ましくは3mm以上である。液面とピペットチップ間の距離の上限については、ピペットチップに溶液が接触しなければいいので、特に上限を設ける必要はなく、下限の説明だけで十分である。
表3に示すように、熱可塑性樹脂としてポリプロピレン(PP)を用いて、容器1〜19の様々な容器の金型を作製し、射出成形を行った。なお、ここで用いたポリプロピレン(PP)は、1mm厚の成形板にしたときの可視光線透過率が75%であった。
〔実施例4:反応容器内の溶液温度変化の測定〕
(温度データの測定)
反応容器には、上記実施の形態で説明した反応容器(以下、「本発明の反応容器」と表記する)と、比較のため、従来品であるガラス製キャピラリー(ロシュ・ダイアグノスティクス社製、品番11909339001)を用いた。なお、本発明の反応容器については、容器16を用いた。
まず、本発明の反応容器の導入部およびガラス製キャピラリーの注入口に、水10μlをそれぞれ注入した。次に、3000rpmで5秒間遠心することで、水を本発明の反応容器の反応部およびガラス製キャピラリーの底にそれぞれ移動させた。
水が充填された反応容器をそれぞれ核酸増幅装置RapidCycler2(アイダホ・テクノロジーズ社製)に装着し、温度測定記録装置(東亜電波工業株式会社製、INR−9000インテリジェントレコーダ)に接続された温度センサーの先端部を、反応容器内の水にそれぞれ浸漬した。
温度条件は、94℃で2分間静置した後、94℃で0秒、65℃で0秒を35サイクル行なう設定とし、当該サイクル中の温度変化を、温度測定記録装置によりリアルタイムに記録した。また、比較のため、上記核酸増幅装置の熱媒(空気)の当該サイクル中の温度変化も同時に記録した。
(温度データの解析)
記録した温度変化のデータを、温度測定記録装置専用の解析ソフトウェア(東亜電波工業株式会社製、JULILOG2)を用いて解析した。その結果を図12に示す。図12は本実施例における当該サイクル中の温度変化を示す図であり、(A)は本発明の反応容器内の溶液温度の測定結果を示し、(B)はガラス製キャピラリー内の溶液温度の測定結果を示し、(C)は核酸増幅装置の熱媒(空気)温度の測定結果を示す。
図12(A)に示すように、本発明の反応容器内の溶液温度は、おおよそ650秒の間に約98℃から約60℃にわたる温度変化が35回繰り返されており、図12(B)に示すように、ガラス製キャピラリー内の溶液温度は、おおよそ650秒の間に約94℃から約65℃にわたる温度変化が35回繰り返されている。また、図12(C)に示すように、核酸増幅装置の熱媒(空気)温度は、おおよそ650秒の間に約99℃から約56℃にわたる温度変化が35回繰り返されている。つまり、温度下降工程においては、核酸増幅装置の熱媒温度が約56℃まで下降したときに、本発明の反応容器内の溶液温度は約60℃まで下降し、ガラス製キャピラリー内の溶液温度は約65℃まで下降したことを示し、また、温度上昇工程においては、核酸増幅装置の熱媒温度が約99℃まで上昇したときに、本発明の反応容器内の溶液温度は約98℃まで上昇し、ガラス製キャピラリー内の溶液温度は約94℃まで上昇した。これは、本発明の一実施形態である反応容器では、従来品のガラス製キャピラリーを用いた場合に比べて、核酸増幅装置の熱媒の温度変化に対する溶液温度の追随性が優れ、より迅速に化学反応を行なうことができることを示している。
〔実施例5:Cytochrome P450 2C19(CYP2C19)遺伝子の
検出〕
(CYP2C19遺伝子を検出するプライマーの合成)
まず、正鎖プライマー及び逆鎖プライマーを合成した
正鎖プライマー及び逆鎖プライマーは、DNAシンセサイザー(パーキンエルマー社製;392型)を用いて、添付のマニュアルに従い、ホスホアミダイト法により合成した。合成した正鎖プライマー及び逆鎖プライマーを、アンモニア水に溶解して、55℃の環境下で、一晩静置することによって脱保護した。その後、OPCカラム(パーキンエルマー社製)にて精製した。なお、プライマーの合成は、DNA合成受託会社((株)日本バイオサービス、シグマアルドリッチジャパン(株)、オペロンバイオテクノロジー(株)等)に依頼してもよい。
(PCRによるCYP2C19遺伝子の解析)
PCRに供するサンプルとして、ヒト白血球からフェノール・クロロフォルム法によって得たDNA溶液(以下、「サンプル」と表記する)を用いた。
次に、PCR反応液を調製した。PCR反応液は、全量を25μlとして、正鎖プライマー 20pmol、逆鎖プライマー 20pmol、KOD plus DNAポリメラーゼ(東洋紡社製、品番KOD−201)、KOD plus DNAポリメラーゼに添付の×10緩衝液 2.5μl、2mM dNTP 2.5μl、25mM MgCl2 2μl、5mg/ml ウシ血清アルブミン(BSA) 0.5μl及びサンプルを、溶解しているDNAが100ng、10ng又は1ngとなるように混合し、残部は水とした。
PCRを行なう反応容器には、本発明の核酸増幅容器と、比較のため、従来品であるガラス製キャピラリー(ロシュ・ダイアグノスティクス社製、品番11909339001)を用いた。なお、本発明の反応容器については、容器16を用いた。
ピペットチップには、LTSエアゾール耐性チップ(レイニン・インスツルメント社製、品番RT−L10F)を用いた。また、ピペットチップを介して溶液を吸引および吐出することが可能な分注機構を有する手動分注器として、Pipet−Lite(TM)(レイニン・インスツルメント社製、品番L−20)を用いた。
まず、Pipet−Lite(TM)にLTSエアゾール耐性チップを装着し、調製したPCR反応液のうち10μlを吸引し、溶液を保持した。この状態で、LTSエアゾール耐性チップの先端を、本発明の反応容器の収納部に押し付け、当該ピペットチップを本発明の反応容器に装着した。次に、Pipet−Lite(TM)に装備されているチップ・イジェクターを用いて、本発明の反応容器に収納されたチップを取り外し、当該収納物を3000rpmで5秒間遠心することで、PCR反応液を本発明の反応容器の底に移動させた。
比較のため、従来の方法、すなわち、ガラス製キャピラリー(ロシュ・ダイアグノスティクス社製、品番11909339001)に添付のキャップを蓋として使用するPCRを行なった。具体的には、ガラス製キャピラリーの注入口に、調製したPCR反応液のうち10μlをそれぞれ注入し、ガラス製キャピラリーに添付のキャップを装着した。次に、3000rpmで5秒間遠心することで、PCR反応液をガラス製キャピラリーの底にそれぞれ移動させた。
核酸増幅装置には、RapidCycler2(アイダホ・テクノロジーズ社製)を用いた。PCRの温度条件は、94℃で2分間静置した後、94℃で0秒、65℃で0秒を35サイクル行なった。
(アガロースゲル電気泳動による核酸増幅の確認)
PCR反応後、それぞれの反応容器からPCR反応液5μlを回収した。次に、回収したPCR反応液を、3%アガロースゲルによる電気泳動に供した。電気泳動では、100Vの電圧を印加して、60分間行なった。その結果を図13に示す。図13は本実施例における電気泳動の結果を示す図であり、レーン1〜4は本発明の核酸増幅容器を用いたPCRの結果を示し、レーン5〜8はガラス製キャピラリーを用いたPCRの結果を示す。また、レーン1及び5は、調製したPCR反応液25μl当たりのDNAの溶解量が100ngとしたPCR反応液を用いた結果を示し、レーン2及び6は、調製したPCR反応液25μl当たりのDNAの溶解量が10ngとしたPCR反応液を用いた結果を示し、レーン3及び7は、調製したPCR反応液25μl当たりのDNAの溶解量が1ngとしたPCR反応液を用いた結果を示す。また、レーン4及び8は比較のためサンプルの代わりに水を混合したPCR反応液を用いた結果を示す。
図13に示すように、本発明の反応容器を用いたPCRでは従来品のガラス製キャピラリーを用いたPCRより、高感度にCYP2C19遺伝子を検出することができた。これは、本発明の一実施形態である反応容器を用いれば、従来品のガラス製キャピラリーとは異なり破損する可能性が極めて低いため、採取できる量が限られている患者検体に対して特に効果的でありながら、該ガラス製キャピラリーを用いたPCR以上の感度でPCRを行なうことができたことを示している。
容器16を除く他の容器についても、実施例4〜5を行った。その結果を下記の評価基準を用いて検討したところ、容器1〜19の全てにおいて、◎又は○の評価であった。
◎ : ガラス製キャピラリーより非常に良好
○ : ガラス製キャピラリーより良好
△ : ガラス製キャピラリーと同等の性能
× : ガラス製キャピラリーより不良
〔実施例6:反応容器の強度の比較〕
容器には、上記実施の形態で説明した反応容器(以下、「本発明の反応容器」と表記する)と、比較のため、従来品であるガラス製キャピラリー(ロシュ・ダイアグノスティクス社製、品番11909339001)を用いた。なお、本発明の反応容器については、容器16を用いた。
まず、本発明の反応容器およびガラス製キャピラリーを水平な木製台の上に置き、それぞれの上に、重さが1kgであり各辺の長さが10cmの立方体を静かに乗せた。本発明の反応容器およびガラス製キャピラリーのそれぞれ10本について上記の操作を行い、破損の有無を目視で判定した。表4は本発明の反応容器およびガラス製キャピラリーの強度を比較した結果を示す。
表4に示すように、本発明の反応容器では10本すべてが破損しなかったが、ガラス製キャピラリーでは10本すべてが破損した。これは、本発明の反応容器では、従来品であるガラス製キャピラリーに比べて強度が優れていることを示しており、実験操作において反応容器が破損する危険性が極めて低いことを示している。
〔実施例7:核酸増幅反応、および、増幅核酸断片が容器外に放出される可能性の検討〕
本発明における化学反応の一例として、CYP2C19遺伝子を対象とするPCRにおいて、核酸増幅反応が十分に行われた場合に、核酸増幅反応中または核酸増幅反応後に、増幅核酸断片がピペットチップに内蔵されたフィルターを通過して容器外に放出され、コンタミネーションの原因となる可能性があるかを検討した。
(CYP2C19遺伝子を検出するプライマーの合成)
実施例5に記載のプライマーを使用した。
(PCRによるCYP2C19遺伝子の増幅)
PCRに供するサンプルとして、ヒト白血球からフェノール・クロロフォルム法によって得たDNA溶液を用いた。ヒト白血球として、4種類の個体から得たものを用い、DNA溶液を4種類調製した(以下、「サンプルA」、「サンプルB」、「サンプルC」、「サンプルD」と表記する)。
次に、PCR反応液を調製した。PCR反応液は、全量を25μlとして、正鎖プライマー 20pmol、逆鎖プライマー 20pmol、KOD plus DNAポリメラーゼ(東洋紡社製、品番KOD−201)、KOD plus DNAポリメラーゼに添付の×10緩衝液 2.5μl、2mM dNTP 2.5μl、25mM MgCl2 2μl、5mg/ml ウシ血清アルブミン(BSA) 0.5μlおよびサンプルA、B、C、またはDを、溶解しているDNAが100ngとなるように混合し、残部は水とした。
ピペットチップには、LTSエアゾール耐性チップ(レイニン・インスツルメント社製、品番RT−L10F)を用いた。また、ピペットチップを介して溶液を吸引および吐出することが可能な分注機構を有する手動分注器として、Pipet−Lite(TM)(レイニン・インスツルメント社製、品番L−20)を用いた。
PCRを行なう核酸増幅容器には、本発明の反応容器、容器16を用いた。
まず、Pipet−Lite(TM)にLTSエアゾール耐性チップを装着し、調製したPCR反応液のうち10μlを吸引し、溶液を保持した。この状態で、LTSエアゾール耐性チップの先端を、本発明の反応容器の収納部に押し付け、当該ピペットチップを本発明の反応容器に装着した。次に、Pipet−Lite(TM)に装備されているチップ・イジェクターを用いて、本発明の反応容器に収納されたチップを取り外し、当該装着物を3000rpmで5秒間遠心することで、PCR反応液を本発明の反応容器の底に移動させた。
さらに、本発明の反応容器に装着されたLTSエアゾール耐性チップに内蔵されたフィルターの上部、すなわち、Pipet−Lite(TM)が装着されていた面の上側に、水25μlを置き、核酸増幅装置にセットした。
核酸増幅装置には、RapidCycler2(アイダホ・テクノロジーズ社製)を用
いた。PCRの温度条件は、94℃で2分間静置した後、94℃で0秒、65℃で0秒を50サイクル行なった。
(PCRによるフィルターを通過した増幅核酸断片の確認)
RapidCycler2による増幅反応の終了後、上記フィルターの上部に置いた水の全量を採取し、それぞれサンプルとして、PCRを行なった。PCR反応液は、全量を50μlとして、正鎖プライマー 10pmol、逆鎖プライマー 10pmol、KOD plus DNAポリメラーゼ(東洋紡社製、品番KOD−201)、KOD plus DNAポリメラーゼに添付の×10緩衝液 5μl、2mM dNTP 5μl、25mM MgCl2 2μlおよび各サンプルを混合し、残部は水とした。
核酸増幅装置には、GeneAmp9700(アプライドバイオシステムズ社製)を用いた。PCRの温度条件は、94℃で2分間静置した後、94℃で15秒、60℃で30秒、68℃で30秒を50サイクル行なった。
(アガロースゲル電気泳動による核酸増幅の確認)
PCR反応後、それぞれの反応容器からPCR反応液5μlを回収した。次に、回収したPCR反応液を、3%アガロースゲルによる電気泳動に供した。電気泳動では、100Vの電圧を印加して、60分間行なった。その結果を図14に示す。図14は本実施例における電気泳動の結果を示す図であり、レーン1、3、5、7はRapidCycler2を用いた増幅、すなわちガラス製キャピラリーの内部で増幅したPCRの結果を示し、レーン2、4、6、8はGeneAmp9700を用いた増幅、すなわちRapidCycler2を用いた増幅の際にフィルターの上部に置いた水をサンプルとしたPCRの結果を示す。また、レーン1および2はサンプルAを用いたPCRの結果を示し、レーン3および4はサンプルBを用いたPCRの結果を示し、レーン5および6はサンプルCを用いたPCRの結果を示し、レーン7および8はサンプルDを用いたPCRの結果を示す。
図14に示すように、本発明の反応容器の内部では大量の増幅核酸断片が生成しているが、フィルターの上部に置いた水からは増幅核酸断片が検出できなかった。これは、本発明の一実施形態である反応容器を用いれば、核酸増幅反応が十分に行われ、大量の増幅核酸断片が生成した場合でも、核酸増幅反応中または核酸増幅反応後に、増幅核酸断片がチップに内蔵されたフィルターを通過して容器外に放出されることはないことを示している。すなわち、本発明の一実施形態である反応容器を用いれば、簡易な構造のため核酸増幅装置の自動化が容易である長所を有していながら、確実にコンタミネーションを予防することができることを示している。
〔実施例8:Cytochrome P450 2C19(CYP2C19)遺伝子の
検出〕
(CYP2C19遺伝子を検出するプライマーの合成)
まず、正鎖プライマー及び逆鎖プライマーを合成した
正鎖プライマー及び逆鎖プライマーは、DNAシンセサイザー(パーキンエルマー社製;392型)を用いて、添付のマニュアルに従い、ホスホアミダイト法により合成した。合成した正鎖プライマー及び逆鎖プライマーを、アンモニア水に溶解して、55℃の環境下で、一晩静置することによって脱保護した。その後、OPCカラム(パーキンエルマー社製)にて精製した。なお、プライマーの合成は、DNA合成受託会社((株)日本バイオサービス、シグマアルドリッチジャパン(株)、オペロンバイオテクノロジー(株)等)に依頼してもよい。
(PCRによるCYP2C19遺伝子の解析)
PCRに供するサンプルとして、ヒト白血球からフェノール・クロロフォルム法によって得たDNA溶液(以下、「サンプル」と表記する)を用いた。
次に、PCR反応液を調製した。PCR反応液は、全量を25μlとして、正鎖プライマー 20pmol、逆鎖プライマー 20pmol、KOD plus DNAポリメラーゼ(東洋紡社製、品番KOD−201)、KOD plus DNAポリメラーゼに添付の×10緩衝液 2.5μl、2mM dNTP 2.5μl、25mM MgCl2 2μl、5mg/ml ウシ血清アルブミン(BSA) 0.5μl及びサンプルを、溶解しているDNAが100ng、10ng又は1ngとなるように混合し、残部は水とした。
チップには、LTSエアゾール耐性チップ(レイニン・インスツルメント社製、品番RT−L10F)を用いた。また、チップを介して溶液を吸引および吐出することが可能な分注機構を有する手動分注器として、Pipet−Lite(TM)(レイニン・インスツルメント社製、品番L−20)を用いた。
PCRを行なう核酸増幅容器には、ガラス製キャピラリー(ロシュ・ダイアグノスティクス社製、品番11909339001)を用いた。
まず、Pipet−Lite(TM)にLTSエアゾール耐性チップを装着し、調製したPCR反応液のうち10μlを吸引し、溶液を保持した。この状態で、LTSエアゾール耐性チップの先端を、ガラス製キャピラリーの注入口に押し付け、当該チップをガラス製キャピラリーに装着した。次に、Pipet−Lite(TM)に装備されているチップ・イジェクターを用いて、ガラス製キャピラリーに装着されたチップを取り外し、当該
装着物を3000rpmで5秒間遠心することで、PCR反応液をガラス製キャピラリーの底に移動させた。
比較のため、従来の方法、すなわち、上記ガラス製キャピラリーに添付のキャップを蓋として使用するPCRを行なった。具体的には、ガラス製キャピラリーの注入口に、調製したPCR反応液のうち10μlをそれぞれ注入し、ガラス製キャピラリーに添付のキャップを装着した。次に、3000rpmで5秒間遠心することで、PCR反応液を本発明の核酸増幅容器の反応部およびガラス製キャピラリーの底にそれぞれ移動させた。
核酸増幅装置には、RapidCycler2(アイダホ・テクノロジーズ社製)を用いた。PCRの温度条件は、94℃で2分間静置した後、94℃で0秒、65℃で0秒を35サイクル行なった。
(アガロースゲル電気泳動による核酸増幅の確認)
PCR反応後、それぞれの反応容器からPCR反応液5μlを回収した。次に、回収したPCR反応液を、3%アガロースゲルによる電気泳動に供した。電気泳動では、100Vの電圧を印加して、60分間行なった。その結果を図16に示す。図16は本実施例における電気泳動の結果を示す図であり、レーン1〜4は本発明の核酸増幅方法の結果を示し、レーン5〜8はガラス製キャピラリーに添付のキャップを用いたPCRの結果を示す。また、レーン1及び5は、調製したPCR反応液25μl当たりのDNAの溶解量が100ngとしたPCR反応液を用いた結果を示し、レーン2及び6は、調製したPCR反応液25μl当たりのDNAの溶解量が10ngとしたPCR反応液を用いた結果を示し、レーン3及び7は、調製したPCR反応液25μl当たりのDNAの溶解量が1ngとしたPCR反応液を用いた結果を示す。また、レーン4及び8は比較のためサンプルの代わりに水を混合したPCR反応液を用いた結果を示す。
図16に示すように、本発明の核酸増幅方法では、従来の核酸増幅方法、すなわちガラス製キャピラリーに添付のキャップを用いたPCRと同等の感度でCYP2C19遺伝子を検出することができた。これは、本発明の一実施形態である核酸増幅方法を用いれば、核酸増幅反応のための溶液を保持させた着脱可能なチップを核酸増幅容器に装着することにより、例えば、従来のピペット操作など核酸増幅反応のための溶液を核酸増幅容器に充填する際に、検体中に含まれる核酸が飛散し、他の患者などに由来する検体のコンタミネーションが起こる可能性を極めて低くすることができる効果がありながら、従来の方法と同等の感度でPCRを行なうことができたことを示している。さらに、本発明の一実施形態である核酸増幅方法を用いれば、チップを核酸増幅容器に装着することにより、核酸増幅反応後、チップおよび核酸増幅容器を廃棄する際においても、チップと核酸増幅容器が分離することなく一体的に廃棄することができるため、コンタミネーションの原因となる核酸が廃棄物から飛散または漏出する可能性を極めて低くすることができる効果がありながら、従来の方法と同等の感度でPCRを行なうことができたことをも示している。
〔実施例9:核酸増幅反応、および、増幅核酸断片が容器外に放出される可能性の検討〕
CYP2C19遺伝子を対象とするPCRを例として、本発明において核酸増幅反応が十分に行われた場合に、核酸増幅反応中または核酸増幅反応後に、増幅核酸断片がチップに内蔵されたフィルターを通過して容器外に放出され、コンタミネーションの原因となる可能性があるかを検討した。
(CYP2C19遺伝子を検出するプライマーの合成)
実施例8に記載のプライマーを使用した。
(PCRによるCYP2C19遺伝子の増幅)
PCRに供するサンプルとして、ヒト白血球からフェノール・クロロフォルム法によって得たDNA溶液を用いた。ヒト白血球として、2種類の個体から得たものを用い、DNA溶液を4種類調製した(以下、「サンプルA」、「サンプルB」、「サンプルC」、「サンプルD」と表記する)。
次に、PCR反応液を調製した。PCR反応液は、全量を25μlとして、正鎖プライマー 20pmol、逆鎖プライマー 20pmol、KOD plus DNAポリメラーゼ(東洋紡社製、品番KOD−201)、KOD plus DNAポリメラーゼに添付の×10緩衝液 2.5μl、2mM dNTP 2.5μl、25mM MgCl2 2μl、5mg/ml ウシ血清アルブミン(BSA) 0.5μlおよびサンプルA、B、C、またはDを、溶解しているDNAが100ngとなるように混合し、残部は水とした。
チップには、LTSエアゾール耐性チップ(レイニン・インスツルメント社製、品番RT−L10F)を用いた。また、チップを介して溶液を吸引および吐出することが可能な分注機構を有する手動分注器として、Pipet−Lite(TM)(レイニン・インスツルメント社製、品番L−20)を用いた。
PCRを行なう核酸増幅容器には、ガラス製キャピラリー(ロシュ・ダイアグノスティクス社製、品番11909339001)を用いた。
まず、Pipet−Lite(TM)にLTSエアゾール耐性チップを装着し、調製したPCR反応液のうち10μlを吸引し、溶液を保持した。この状態で、LTSエアゾール耐性チップの先端を、ガラス製キャピラリーの注入口に押し付け、当該チップをガラス製キャピラリーに装着した。次に、Pipet−Lite(TM)に装備されているチップ・イジェクターを用いて、ガラス製キャピラリーに装着されたチップを取り外し、当該装着物を3000rpmで5秒間遠心することで、PCR反応液をガラス製キャピラリーの底に移動させた。
さらに、ガラス製キャピラリーに装着されたLTSエアゾール耐性チップに内蔵されたフィルターの上部、すなわち、Pipet−Lite(TM)が装着されていた面の上側に、水25μlを置き、核酸増幅装置にセットした。
核酸増幅装置には、RapidCycler2(アイダホ・テクノロジーズ社製)を用いた。PCRの温度条件は、94℃で2分間静置した後、94℃で0秒、65℃で0秒を50サイクル行なった。
(PCRによるフィルターを通過した増幅核酸断片の確認)
RapidCycler2による増幅反応の終了後、上記フィルターの上部に置いた水の全量を採取し、それぞれサンプルとして、PCRを行なった。PCR反応液は、全量を50μlとして、正鎖プライマー 10pmol、逆鎖プライマー 10pmol、KOD plus DNAポリメラーゼ(東洋紡社製、品番KOD−201)、KOD plus DNAポリメラーゼに添付の×10緩衝液 5μl、2mM dNTP 5μl、25mM MgCl2 2μlおよび各サンプルを混合し、残部は水とした。
核酸増幅装置には、GeneAmp9700(アプライドバイオシステムズ社製)を用いた。PCRの温度条件は、94℃で2分間静置した後、94℃で15秒、60℃で30秒、68℃で30秒を50サイクル行なった。
(アガロースゲル電気泳動による核酸増幅の確認)
PCR反応後、それぞれの反応容器からPCR反応液5μlを回収した。次に、回収したPCR反応液を、3%アガロースゲルによる電気泳動に供した。電気泳動では、100Vの電圧を印加して、60分間行なった。その結果を図17に示す。図17は本実施例における電気泳動の結果を示す図であり、レーン1、3、5、7はRapidCycler2を用いた増幅、すなわちガラス製キャピラリーの内部で増幅したPCRの結果を示し、レーン2、4、6、8はGeneAmp9700を用いた増幅、すなわちRapidCycler2を用いた増幅の際にフィルターの上部に置いた水をサンプルとしたPCRの結果を示す。また、レーン1および2はサンプルAを用いたPCRの結果を示し、レーン3および4はサンプルBを用いたPCRの結果を示し、レーン5および6はサンプルCを用いたPCRの結果を示し、レーン7および8はサンプルDを用いたPCRの結果を示す。
図17に示すように、ガラス製キャピラリーの内部では大量の増幅核酸断片が生成しているが、フィルターの上部に置いた水からは増幅核酸断片が検出できなかった。これは、本発明の一実施形態である核酸増幅方法において、核酸増幅反応が十分に行われ、大量の増幅核酸断片が生成した場合でも、核酸増幅反応中または核酸増幅反応後に、増幅核酸断片がチップに内蔵されたフィルターを通過して容器外に放出されることはないことを示している。すなわち、本発明の一実施形態である核酸増幅方法は、簡易な構造のため核酸増幅装置の自動化が容易である長所を有していながら、確実にコンタミネーションを予防することができることを示している。
本発明に係る核酸増幅容器は、破損する可能性が極めて低く、また極めて迅速かつ簡便に核酸増幅反応を行なうことができる。遺伝子解析や、遺伝子をモニタリングすることにより行なわれるバイオアッセイなど、PCR等の核酸増幅反応を用いるあらゆる産業で利用可能である。特に、核酸増幅反応が確定診断として用いられるため誤りが許されず、また患者から採取できる検体の量が限られているため失敗が許されず、さらに迅速性も要求されるために、迅速性を保ちながら高い精度を有していなければならない遺伝子診断において極めて有用である。
本発明に係る反応容器は、破損する可能性が極めて低く、また極めて迅速かつ簡便に化学反応を行なうことができる。また、本発明に係る反応容器を用いれば、あるいは、本発明に係る核酸増幅方法を行えば、簡易な操作で確実に反応液(核酸増幅反応液)の飛散を防ぐことができるため、自動化が容易であり、簡易な構造の反応装置でコンタミネーションを予防することができる。特に、本発明に係る反応容器を核酸増幅反応に用いれば、あるいは、本発明に係る核酸増幅方法を行えば、これまでの核酸増幅方法とは異なり、コンタミネーションの原因となる核酸の、廃棄物からの飛散または漏出を減らすことができるため、例えば、患者から採取できる検体の量が限られているため失敗が許されず、感染性の検体を取り扱う可能性があり、さらに迅速性も要求されるために、迅速性を保ちながら高い精度を有していなければならない遺伝子診断において極めて有用である。
本発明は上述した実施形態および実施例のそれぞれに限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態および実施例にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。また、本明細書中に記載された特許文献の全てが、本明細書中において参考として援用される。
本発明の実施形態に係る核酸増幅容器の底面の形状を示す模式図である。 本発明の実施形態に係る核酸増幅容器の外観を示す模式図である。 本発明の実施形態に係る核酸増幅容器を8個連結した外観を示す模式図である。 本発明の実施形態の一例を説明する図である。 本発明の実施例1における溶液温度測定の結果を示す図である。 本発明の実施例2における電気泳動の結果を示す図である。 本発明の実施形態の一例を説明する図である。 本発明の実施形態に係る反応容器の底面の形状を示す模式図である。 本発明の実施形態に係る反応容器の外観を示す模式図である。 本発明の実施形態に係る反応容器を8個連結した外観を示す模式図である。 本発明の実施形態の一例を説明する図である。 本発明の実施例4における溶液温度測定の結果を示す図である。 本発明の実施例5における電気泳動の結果を示す図である。 本発明の実施例7における電気泳動の結果を示す図である。 本発明の実施形態に係る核酸増幅方法を示す模式図である。 本発明の実施例8における電気泳動の結果を示す図である。 本発明の実施例9における電気泳動の結果を示す図である。
符号の説明
100 図4においては「核酸増幅容器」、図11においては「反応容器」
101 図2および図4においては「導入部」、図9および図11においては「収納部」
102 図2および図4においては「反応部」、図9および図11においては「反応部」
103 図2および図4においては「反応部底面」、図9および図11においては「反応部底面」
200 図11において「ピペットチップ」
201 図11において「フィルター」

Claims (13)

  1. 核酸の増幅に応じて発する蛍光が変化するPCR試料を用い、該試料中の核酸を増幅し、かつ、増幅反応液の蛍光を検出するための容器であって、
    少なくとも、(A)高分子材料からなり前記核酸の増幅反応を行なうための反応部と、(B)該反応部と同一の材料からなり前記試料を受け入れるための導入部と、(C)ピペットチップの吸入吐出口部位を嵌合する形態で収納できる収納部とを有し、該(A)(B)および(C)が一体的に形成されており、
    前記反応部は、
    底面の形状が正方形であり、
    前記反応部の容積に対する表面積の比は4mm−1以上であり、該容積は0.1ml以下であり、
    前記反応部の側面における平面状または曲面状の側面の部分の肉厚が0.5mm以下であり、
    前記導入部は、
    前記反応部と流動性連通を有し、
    前記導入部の容積に対する表面積の比は4mm−1未満であり、該容積は前記反応部の容積より大きいことを特徴とする容器。
  2. 分子材料が熱可塑性樹脂であることを特徴とする請求項に記載の容器。
  3. ペットチップがフィルター付きピペットチップであることを特徴とする請求項1または2に記載の容器。
  4. ィルターが疎水性フィルターであることを特徴とする請求項に記載の容器。
  5. 核酸の増幅に応じて発する蛍光が変化するPCR試料を用い、該試料中の核酸を増幅し、かつ、増幅反応液の蛍光を検出するための方法であって、容器として、
    少なくとも、(A)高分子材料からなり前記核酸の増幅反応を行なうための反応部と、(B)該反応部と同一の材料からなり前記試料を受け入れるための導入部と、(C)ピペットチップの吸入吐出口部位を嵌合する形態で収納できる収納部とを有し、該(A)(B)および(C)が一体的に形成されており、
    前記反応部は、
    底面の形状が正方形であり、
    前記反応部の容積に対する表面積の比は4mm−1以上であり、該容積は0.1ml以下であり、
    前記反応部の側面における平面状または曲面状の側面の部分の肉厚が0.5mm以下であり、
    前記導入部は、
    前記反応部と流動性連通を有し、
    前記導入部の容積に対する表面積の比は4mm−1未満であり、該容積は前記反応部の容積より大きい容器を使用することを特徴とする核酸増幅方法。
  6. なくとも下記(a)および(b)の工程を含むことを特徴とする請求項に記載の核酸増幅方法。
    (a)着脱可能なチップに、核酸増幅反応のための溶液を保持させる
    (b)前記溶液を保持したチップを核酸増幅容器に装着する
  7. a)の工程において、着脱可能なチップへの溶液の保持が、該チップを介して溶液を吸引および吐出することが可能な分注機構を用いて、該チップに該溶液を吸引することにより行なわれることを特徴とする請求項に記載の核酸増幅方法。
  8. b)の工程において、溶液を保持したチップの核酸増幅容器への装着が、該チップを分注機構から取り外すことなく行なわれることを特徴とする請求項に記載の核酸増幅方法。
  9. ップがフィルターを内蔵してなり、該フィルターは、該チップにおいて溶液を保持する部分と、分注機構に装着される際に該分注機構に接する部分との間に位置することを特徴とする請求項6から8のいずれかに記載の核酸増幅方法。
  10. らに、下記(c)および(d)の工程を含むことを特徴とする請求項6から9のいずれかに記載の核酸増幅方法。
    (c)前記チップを分注機構から取り外す
    (d)前記チップに保持した溶液を核酸増幅容器の底部に移動させる
  11. らに、下記(c)および(d)の工程を含むことを特徴とする請求項6から10のいずれかに記載の核酸増幅方法。
    (c)前記チップに保持された溶液に空気圧を与え、核酸増幅反応のための溶液を該核酸増幅容器の底部に移動させる
    (d)前記チップを分注機構から取り外す
  12. 料が蛍光体または発光体を含有することを特徴とする請求項5から11のいずれかに記載の核酸増幅方法。
  13. らに試料から発せられる光を検出することを特徴とする請求項5から12のいずれかに記載の核酸増幅方法。
JP2008112641A 2007-04-26 2008-04-23 核酸増幅方法およびそれに用いる容器 Active JP5444632B2 (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2008112641A JP5444632B2 (ja) 2007-04-26 2008-04-23 核酸増幅方法およびそれに用いる容器

Applications Claiming Priority (7)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2007116815 2007-04-26
JP2007116815 2007-04-26
JP2007116814 2007-04-26
JP2007116814 2007-04-26
JP2007116813 2007-04-26
JP2007116813 2007-04-26
JP2008112641A JP5444632B2 (ja) 2007-04-26 2008-04-23 核酸増幅方法およびそれに用いる容器

Publications (3)

Publication Number Publication Date
JP2008289473A JP2008289473A (ja) 2008-12-04
JP2008289473A5 JP2008289473A5 (ja) 2009-02-26
JP5444632B2 true JP5444632B2 (ja) 2014-03-19

Family

ID=39943430

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2008112641A Active JP5444632B2 (ja) 2007-04-26 2008-04-23 核酸増幅方法およびそれに用いる容器

Country Status (2)

Country Link
JP (1) JP5444632B2 (ja)
WO (1) WO2008136318A1 (ja)

Families Citing this family (8)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
FR2941876B1 (fr) * 2009-02-06 2012-12-07 Bio Rad Pasteur Appareil de validation thermique, ensemble d'un dispositif de traitement d'echantillons biologiques et d'un tel appareil, et procede de fabrication d'un tel appareil.
JP5600880B2 (ja) * 2009-03-03 2014-10-08 東洋紡株式会社 改良された増幅試薬
JP5504797B2 (ja) * 2009-09-30 2014-05-28 東洋紡株式会社 核酸増幅器
DE102010031240A1 (de) * 2010-07-12 2012-01-12 Hamilton Bonaduz Ag Pipettierspitze mit hydrophober Oberflächenausbildung
GB201018624D0 (en) 2010-11-04 2010-12-22 Epistem Ltd Reaction vessel
JP2014176304A (ja) * 2013-03-13 2014-09-25 Seiko Epson Corp 核酸増幅反応用カートリッジ
JP2014176305A (ja) * 2013-03-13 2014-09-25 Seiko Epson Corp 核酸増幅反応用カートリッジ
JP6877412B2 (ja) * 2015-09-20 2021-05-26 ディーエイチ テクノロジーズ デベロップメント プライベート リミテッド 少量サンプル注入バイアル

Family Cites Families (3)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
ATE208658T1 (de) * 1993-07-28 2001-11-15 Pe Corp Ny Vorrichtung und verfahren zur nukleinsäurevervielfältigung
ES2304573T3 (es) * 1996-06-04 2008-10-16 University Of Utah Research Foundation Recipiente para llevar a cabo y controlar procesos biologicos.
BR9704709A (pt) * 1996-09-26 1998-12-29 Becton Dickinson Co Cavidade de amostra coberta para uso em ensaios de ácido nucleico e imunoensaios

Also Published As

Publication number Publication date
WO2008136318A1 (ja) 2008-11-13
JP2008289473A (ja) 2008-12-04

Similar Documents

Publication Publication Date Title
JP5444632B2 (ja) 核酸増幅方法およびそれに用いる容器
US10427162B2 (en) Systems and methods for molecular diagnostics
US8148115B2 (en) Device and method for extraction and analysis of nucleic acids from biological samples
EP3304031B1 (en) A component of a device, a device, and a method for purifying and testing biomolecules from biological samples
KR102168912B1 (ko) 통합형 전달 모듈을 구비한 테스트 카트리지
JP6449017B2 (ja) 直動型反応処理装置およびその方法
US8148071B2 (en) Methods and compositions for isolating nucleic acid
KR20170024827A (ko) 미세유로 필름 반응기, 핵산 추출 모듈 및 qPCR 반응조성물 모듈이 구비된 qPCR 카트리지 및 이를 이용한 고속 qPCR 시스템
KR20070011525A (ko) 샘플 조제 제어를 위한 방법 및 장치
CN113557090B (zh) 成分进入流体的精确递送
JP5600880B2 (ja) 改良された増幅試薬
JP3969091B2 (ja) 遠心分離機及びこれを用いる試料調製装置
TWI692377B (zh) 微量管上蓋、含有所述微量管上蓋的套組及其方法
NZ517565A (en) Direct aspiration-reaction and injection device and methods of use
US20230397856A1 (en) Automation compatible collection device for biological fluids
US20220049321A1 (en) Method, system and apparatus for blood processing unit
JP2020503026A (ja) 粒子状ターゲットの単離及び処理のための方法及び装置
JP2006242612A (ja) 生体サンプル判別用プレート
CA3229082A1 (en) Method of piercing seal for sample testing
KR20240056605A (ko) 분자진단 시스템의 샘플 처리 및 분석 방법

Legal Events

Date Code Title Description
A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20090109

A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20110411

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20130410

A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20130529

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20130806

A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20130819

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20131126

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20131209

R151 Written notification of patent or utility model registration

Ref document number: 5444632

Country of ref document: JP

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R151

S531 Written request for registration of change of domicile

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R313531

R350 Written notification of registration of transfer

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R350