JP5438770B2 - 急性腎臓損傷を検出またはモニターするための方法、装置およびキット - Google Patents
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Description
発明の概要
[0007]従って本発明は、急性腎臓損傷の検出、および、急性腎臓損傷の治療有効性のモニターのための方法、装置およびキットを提供する。
ること、および、(e)第一のサンプル由来のNGALとポリクローナルNGAL抗体との間に形成された第一の複合体の量を、第二のサンプル由来のNGALとポリクローナルNGAL抗体との間に形成された第二の複合体の量と比較することを含み、ここで第二の複合体の量が第一の複合体の量と比較して減少していることは、治療が有効であることを示す。
図面の簡単な説明
[0018]以下の図面を参照することにより、詳細な説明がよりよく理解されるものと予想される:
りよく理解されるものと予想される。
詳細な説明
[0030]NGALは、最初にヒト好中球から単離され、以前の研究によれば、血液中のNGALの測定が、細菌およびウイルスによって引き起こされる急性感染と区別する優れた手段であることが示された。近年、例えば尿のような体液サンプル中へのNGAL排出と、急性腎臓損傷との密接な関係が研究されている。驚くべきことに、NGAL測定と、モノクローナル−モノクローナル分析およびポリクローナル抗体を用いた分析との比較から、これらの分析の臨床能力における重要な違いが示された。この結果から、分析における抗体の選択が重要であり、特に、2種より多くのNGALタンパク質エピトープと反応する能力を有する抗体を使用すれば、高感度での分析が提供されることが証明され、従ってこれらの分析で、様々な条件下で排出された異なるNGAL変異体が同定されることが証明される。それゆえに本発明の方法、装置およびキットは、2種より多くのNGALタンパク質エピトープと反応する能力を有するNGAL抗体を用いる。これに関して、このようなNGAL抗体は、以下でさらに詳細に説明されているように、1種またはそれ以上のポリクローナルNGAL抗体、および/または、1種またはそれ以上のポリクローナルNGAL抗体と、1種またはそれ以上のモノクローナルNGAL抗体との組み合わせを含んでもよい。さらに、NGAL抗体または抗体群は、NGALタンパク質の捕獲のために用いられる場合もあるし、および/または、検出可能な標識と共に用いられる場合もある。
71:245−252(1994)(参照により本明細書に含める)によって開示されたポリクローナルNGAL抗体を用いる。例えばXu等によって説明されているように、NGAL(HNL)に対するポリクローナル抗体は、フロイント完全および不完全アジュバント中でホモジナイズした合計72μgの精製タンパク質を、ウサギの複数の部位に皮内注射することによって、ウサギで発生させる。抗体の特異性は、アガロース中での二重免疫拡散法(Devereux et al.,Nucleic Acid Research,12(1):387−394(1984))によって評価することができ、さらに、好中性顆粒の抽出物、および、以下の精製タンパク質:カテプシンG、エラスターゼ、ミエロペルオキシダーゼ、リゾチーム、ラクトフェリン、好酸球カチオン性タンパク質(ECP)、および、好酸球タンパク質X(EPX/EDN)に対して試験することができる。当然ながらその他のNGAL抗体を用いてもよい。
プル由来のNGALタンパク質と第一の分析装置中のNGAL抗体とで形成された複合体の量を決定すること、治療を行った後に得られた個体由来の第二の体液サンプルを第二の分析装置と説明したようにして接触させること、および、第二のサンプル由来のNGALと第二の分析装置中のNGAL抗体との間に形成された第二の複合体の量を決定すること、および、第一の複合体の量と第二の複合体の量とを比較することを含む。第二の複合体の量が、第一の複合体の量と比較して減少していることは、治療が有効であることを示す。
[0042]この実施例では、2種より多くのNGALタンパク質エピトープとの結合能力を有するNGAL抗体を用いたNGAL決定、および、モノクローナル抗体を2種だけ用いたNGAL決定との比較の研究を説明する。
[0044]本研究に、ウプサラ大学病院(Uppsala University Hospital)で心臓外科手術を受けた合計59人の成人患者を採用した。患者の年齢は27〜85歳の範囲(平均63歳)であり、患者の42人が男性で、17人が女性であった。この心臓外科手術には、23例の冠状動脈バイパス移植術、15例の大動脈弁置換術、4例の僧帽弁修復、3例の複合術、83例の左心室補助装置の埋め込み術、および、63例のその他の手法が含まれる。
rpm、4℃で15分間で遠心分離した。3,000rpm、4℃で15分間血液を遠心分離することによって、EDTA−血漿を得た。全てのサンプルの上清をアリコートにして即座に−20℃で保存した。加えて、健康な社員および生徒から追加の101種の尿サンプルを回収し、正常なコントロールとして利用した。
[0047]NGALレベルを3回の異なる分析で測定した。第一の分析技術では、全般的に上記のXu等の教示に従って、ポリクローナルベースのRIAが用いられた。第二の分析技術では、ポリクローナル−モノクローナルベースのELISAが用いられた。第三の分析技術では、モノクローナル−モノクローナルベースの分析が用いられた。従って、最初の2つの技術は本発明に従って行われたが、第三の技術は比較目的で用いられた。
[0053]ウェスタンブロッティングは、Towbin et al,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,76:4350−4(1979)によってこれまでに述べられた通りに行われた。簡単に言えば、20μLの尿サンプルを、Nu−PAGE(R)4〜12%ビストリスゲル(インビトロジェン社,米国)に適用した。SDS−PAGEの後に、Nu−PAGE(R)トランスファーバッファー(インビトロジェン社,米国)を25Vで1時間用いることによってタンパク質をPVDFメンブレン上に移した。PVDFメンブレンの追加の結合部位を、ブロッキング溶液(GEヘルスケア,英国)で1時間ブロックした。ブロットを、マウス抗NGALモノクローナル抗体と1時間インキュベートし、続いてペルオキシダーゼ標識二次抗体(GEヘルスケア,英国)と45分間インキュベートした。免疫ブロットを、製造元(アマシャムECL(Amersham ECLTM)ウェスタンブロッティングシステム,GEヘルスケア,英国)の説明書に従って強化された化学発光を用いて検出した。
[0055]クレアチニンおよびシスタチンCの血漿濃度を、ウプサラ大学病院臨床化学科で慣例的な手法を用いて測定した。
[0057]対応のない(unpaired)、および、対応のある(paired)比較のためのマン‐ホイットニーおよびウィルコクソンのノンパラメトリック検定、線形回帰分析、一元配置の分散分析(ANOVA)を、メディカルク9.5(Medcalc 9.5)(メディカルク・ソフトウェア(MedCalc Software),マリアケルク(Mariakerke),ベルギー)、および、スタティスティカ8.0(STATISTICA
8.0)(スタットソフト社(StatSoft,Inc.),タルサ,米国)によって行った。統計的有意性は、p<0.05に設定した。
[0059]図1に、手術前および手術後の78時間までの血漿クレアチニン濃度を示し、これは、期間の間に差がないことを示す。臨床転帰から、3つの被検体は急性腎臓損傷の徴候を示し、手術後の血漿クレアチニンが50%より多く上昇していたことが示された。
[0061]健康な被検体および心臓外科手術を受けた患者から得られた尿中のNGAL濃度を、3つの上述した技術を用いて測定した。図2Aおよび2Bに、RIAおよびモノ−モノ技術それぞれを用いて決定された結果を示す。手術前のレベルは、正常なコントロールと類似していた。手術の2時間後、レベルは有意に増加し(p<0.0001)、約半分の患者が、正常値上限を超えるレベルを示した。中央値の増加倍率は、RIAで測定した場合は18.7であり、ELISAおよびモノ−モノ分析で測定した場合はそれぞれ、15.6および11.4倍の増加であった。24時間後、このレベルは再度減少したが、それでもなお手術前のレベルよりも高かった。このレベルは、手術後の期間中ずっとより有意に高い状態を維持した(p<0.0001)。72時間で、増加倍率は、RIA、ELISAおよびモノ−モノ分析でそれぞれ6.8、8.5および5.9であった。3つ
全ての分析で、長期にわたり類似のパターンが観察された。
[0063]RIA技術(r2=0.30、p<0.0001)、および、ELISA技術(r2=0.16、p=0.006)で尿で測定した際に、ECC時間と手術後2時間で得られたNGALレベルとの有意な正相関が見出された。しかしながらこれらの相関はモノ−モノ技術では見出されなかった。90分間より長い、または、それより短いECC時間でさらに分けたところ、RIAの結果は手術後2時間のサンプルで12.6倍増加した(p=0.006)。図3A〜3Cで示されるように、ELISAの結果は6.5倍増加し(p=0.027)、モノ−モノの結果は5.2倍増加した(p=0.07)。
[0065]腎臓機能の指標としてクレアチニンおよびシスタチンCの血漿濃度を測定した。上記で示したように、ほとんどの被検体においてクレアチニン濃度は変わらないままであり、手術後に急性腎臓損傷の徴候(50%を超える増加で定義される)を示したのは3人の被検体だけであった。シスタチンC濃度を用いて、糸球体ろ過率(GFR)を計算した。単変量解析において、図4Aおよび4Bで示されるように、GFRは、NGAL(RIA)(r2=0.28、p<0.001)、および、NGAL(モノ−モノ)(r2=0.25、p<0.001)に関連していた。また尿中のNGALと血漿クレアチニンとの関係も解析した。手術後72時間の間、基準と比較して血漿クレアチニンが増加したパーセンテージ(<120%、または、>119%)に従って、被検体を2つのグループに分類した。手術後2時間でのNGALレベル(RIA)は、クレアチニン濃度が119%(p=0.03)より多く上昇したグループでより有意に上昇したが、それに対してNGALレベル(モノ−モノ)は有意に上昇しなかった(結果は示さず)。
[0067]NGAL(RIA)とNGAL(モノ−モノ)との全体的な相関を、図5(r2=0.86、p<0.0001、n=331)にに示す。表1に異なるタイムポイントにおける相関を示したところ、r2との極めて優れた相関が0.952〜0.996の範囲で示された(ただし手術後2時間で得られた結果を除く)。この段階では、r2は0.680であり、その他よりも有意に低かった(p<0.0001)。外見的に健康な被検体の同齢集団におけるNGAL(RIA)とNGAL(モノ−モノ)との関係はr2=0.887であり、これもまた2時間での結果とは有意に異なっていた(p=0.001)。331の全ての結果のパッシング−バブロック(Passing−Bablok)の回帰分析によれば、HNL(RIA)=0.6553±0.5358×NGAL(モノ−モノ)の方程式が線形性からの有意な逸脱(p<0.01)と共に示され、またこれは、NGAL(モノ−モノ)分析とNGAL(ELISA)分析とを比較した場合、NGAL(ELISA)=0.0370±0.1135×NGAL(モノ−モノ)であった。しかしながら、NGAL(RIA)分析とNGAL(ELISA)分析との比較から、方程式NGAL(ELISA)=−0.002192±0.2002×NGAL(RIA)が得られ、線形性からの逸脱もなかった。
[0069]心臓外科手術後前および手術後の尿中に見出されたNGALの主要な形態の見かけの分子量は、それぞれ25(単量体)、45(ホモ二量体)、および、90〜130kDa(MMP−9との複合体)であった。これらの異なる形態の存在は外科手術の前後で変動した。ウェスタンブロットによるスキャンに基づくホモ二量体と単量体との比率を試験した。相対的なホモ二量体の存在量は、手術後24時間までに(p=0.02)増加し、その後、比率は減少傾向を示したことが示された。
[0071]本明細書で示した結果によれば、様々な条件下で尿中に排出された多くの様々なNGAL変異体を同定するために、NGAL分析における抗体の選択が重要であることが示される。特に、2種より多くのNGALタンパク質エピトープと反応する能力を有するNGAL抗体を用いる分析は、改善された感度を提供する。
[0074]この実施例は、NGALタンパク質の由来を決定することにおいて、NGALが単量体、二量体およびヘテロ二量体の形態のいずれであるかを決定する実験を説明する。
[0076]手術前、ならびに心臓外科手術後2時間および24時間で、合計で33種の尿サンプルを回収した。これらの尿サンプルを即座に、4℃、3,000rpmで15分間遠心分離し、アリコートにして−20℃で保存した。手術後2時間における1つの尿サンプルのゲルろ過は、FPLC−システムを用いたスーパーデックスTM75HR10/30プレ充填カラム(アマシャム・ファルマシア・バイオテク社(Amersham Pharmacia Biotech AB),ウプサラ,スウェーデン)で行われた。2
50Lの分画を回収し、−20℃で保存した。溶出緩衝液はPBSであった。分画中のNGALを、以下で説明されているように、RIAおよびELISAを用いて決定した。
[0078]NGALの定量化のための異なる抗体をベースとした6種のELISAを用いた:すなわち、1)Mab697−ポリクローナル(実施例1で説明されているようなモノクローナル−ポリクローナルELISA)、2)Mab764−Mab765、3)Mab764−ポリクローナル、4)ポリクローナル−Mab765、5)ポリクローナル−ポリクローナル、および、Mab−697−Mab765である。これら5種のELISAの基本的なプロトコールは、実施例1で説明したものと同じであるが、分析では特異的な抗体が用いられた。簡単に言えば、96−ウェルのマイクロタイタープレート(ヌンク・マックスソープ,アゴジェント(Agogent),デンマーク)を、ヒトNGAL%に対するウサギポリクローナルまたはマウスモノクローナル抗体(Mab697およびMab764)でコーティングした。(ダイアグノスティクス・デベロップメント(Diagnostics Development),ウプサラ,スウェーデン)。サンプルおよび標準(0.039〜5μg/Lの範囲)(100μL/ウェル)を、60分間(尿サンプルおよびゲルろ過分画)または90分間(細胞培養上清)、室温(RT)でインキュベートした。その後、100μL/ウェルのヒトNGALに対する希釈したビオチン化ウサギポリクローナル抗体、または、マウスモノクローナル抗体(Mab765)を添加し、室温で60分間インキュベートし、続いて100μL/ウェルの希釈したストレプトアビジン結合ホースラディッシュペルオキシダーゼ(GEヘルスケア,英国)(室温で30分間)を添加した。全ての工程の間に、マイクロプレート洗浄機(アントス・フルイド,ザルツブルク,オーストリア)を用いて洗浄緩衝液(0.05%トゥイーン−20を含むPBS)でプレートを4回洗浄した。酵素反応を、基質として3,3’,5,5’−テトラメチルベンジジン溶液(100μL/ウェル)(シグマ−アルドリッチ,シュタインハイム,ドイツ)を室温で15分間用いて可視化し、1MのH2SO4(100μL/ウェル)を添加することによって反応を止めた。吸光度を分光光度計(スペクトラマックス250,GMI社,米国)を用いて450nmで読んだ。
[0080]RIAを上述のようにして行った。簡単に言えば、50μLのサンプルまたは標準のいずれか(2μg/L〜128μg/L)を、50μLのI125で標識されたNGALおよび50μLの特異的な抗体と混合した。この混合物を室温で3時間インキュベートした。その後、500μLの固相の第二抗体でコーティングしたセルロースの懸濁液(AA−SAC1,IDSLTD,英国)を添加し、4℃で1時間インキュベートした。抗ウサギIgG抗体でコーティングしたセルロースに結合したNGAL−抗体複合体を遠心分離でペレット化した。デカンテーション後に、放射活性を測定した。
[0082]HK−2(ヒト腎臓2,CRL−2190)を、アメリカン・タイプ・カルチャー・コレクション(American Type Culture Collection;ATCC)から購入した。これは、正常な腎臓から誘導されたヒト腎近位尿細管の上皮細胞系である。この細胞をヒトパピローマウイルス16(HPV−16)E6/E7遺伝子の導入によって不死化した。この細胞を、5%CO2を含む湿気のある雰囲気中、37℃で、完全増殖培地(0.05mg/mlウシ脳下垂体抽出物(BPE)、および、5ng/mlヒト組換え上皮増殖因子(EGF)が添加されたケラチノサイト無血清培地(K−SFM)(インビトロジェン−ギブコ(Invitrogen−Gibco(R)),英国))、または、不完全な増殖培地のいずれかで培養した。加えて、この細胞を、サイトカイン(IL−1βまたはTNF−α)(シグマ−アルドリッチ,シュタインハイム,ドイツ)、および、LPS(インビトロジェン−ギブコ(R),英国)などの特異的な刺激因子と共に培養した。ウェルあたり0.5×105個の細胞および1mlの完全増殖培地を24ウェルプレート(ファルコン(FALCON(R)),米国)にシーディングした。48時で継代培養した後、完全増殖培地を除去し、単分子層(約90%の密集
度)をPBS(インビトロジェン−ギブコ(R),英国)で2回洗浄した。この細胞を調整培地で72時間培養した。NGAL定量化のために、培地の上清を2時間、12時間、24時間、48時間および72時間それぞれの時点で回収した。
[0084]トータルRNAの単離のために、正常な培養したHK−2細胞、および、1ng/mLのIL−1βで誘導されたHK−2細胞を2時間、4時間、6時間、8時間、12時間および24時間で回収した。RNイージー(RNeasy(R))ミニキット(Mini Kit)(キアゲン(QIAGEN),英国)を製造元のプロトコールに従って用いて、RNAを抽出した。スーパースクリプトIII(Superscript III)逆転写酵素(インビトロジェン(Invitrogen),英国)を200ngのトータルRNAと共に用いて第一のcDNA鎖を合成した。DNAエンジン(DNA Engine)PCR装置(PTC−200)(バイオ・ラッド(Bio−Rad),米国)でTaqDNAポリメラーゼ(インビトロジェン,英国)を用いることによってポリメラーゼ連鎖反応(PCR)を行った。NGAL(5’−TCACCTCCGTCCTGTTTAGC−3’、および、5’−CGAAGTCAGCTCCTTGGTTC−3’)、および、β−アクチン(5’−TTCTACAATGAGCTGCGTGTGG−3’、および、5’−GTGTTGAAGGTCTCAAACATGAT−3’)に関する特異的なオリゴヌクレオチドプライマーの配列を文献に従って選択し、サーモ・サイエンティフィック(Thermo SCIENTIFIC)(ドイツ)が合成した。最初の変性条件は、94℃で2分間である。PCR増幅は、94℃で30秒の変性工程、続いて60℃(NGALの場合)または59℃(β−アクチンの場合)で30秒のアニーリング工程、および、72℃で30秒の伸長を用いて行われた。両方の遺伝子で合計30サイクルを行い、続いて最終的な伸長を72℃で10分間行った。2%アガロースゲル電気泳動でPCR産物を分離し、エチジウムブロマイド染色で検出した。50bpのDNAラダー(ダイレクトロード(DirectLoadTM)DNAマーカー)(シグマ−アルドリッチ,シュタインハイム,ドイツ)を参照することによって、PCR産物の期待されるサイズ(NGALおよびβ−アクチンそれぞれについて、242bpおよび119bp)を検証した。
[0086]好中球顆粒放出産物を、説明されているようにして得た。72時間の時点でのHK−2調整培地上清を回収し、0.1mMのPMSF(シグマ−アルドリッチ,シュタインハイム,ドイツ)、および、コンプリート(CompleteTM)プロテアーゼ阻害剤カクテル錠剤(ロシュ(Roche),マンハイム,ドイツ)を添加した。アミコン(Amicon(R))・ウルトラ−4(Ultra−4)遠心ろ過装置(10,000MW)(ミリポア(Millipore),米国)を用いて上清を濃縮した。SDS−PAGEおよびウェスタンブロッティングを製造元の説明書に従って行った。簡単に言えば、25μLの尿または濃縮した上清のいずれか、または、好中球放出産物を、非還元条件下でNu−PAGE(R)4〜12%ビストリスゲル(インビトロジェン,米国)に適用した。Nu−PAGE(R)トランスファーバッファー(インビトロジェン,米国)を25Vで1時間用いることによってタンパク質をハイボーン−P(Hybone−P)PVDFメンブレン(GEヘルスケア,英国)上に移した。PVDFメンブレンの追加の結合部位を、ブロッキング溶液(GEヘルスケア,英国)で1時間ブロックした。このブロットを、ヒトNGALに対するウサギポリクローナル抗体もしくはマウスモノクローナル抗体(Mab697、Mab699、Mab763、Mab764またはMab765)、または、モノクローナル抗体の混合物のいずれかと共に室温で一晩インキュベートし、続いてペルオキシダーゼ標識二次抗体(GEヘルスケア,英国)と共に1時間インキュベートした。免疫ブロットを、製造元の説明書(アマシャム(Amersham)ECLTMウェスタンブロッティングシステム,GEヘルスケア,英国)に従って強化された化学発光を用いて検出した。
[0088]スチューデントのt検定および一元配置の分散分析(ANOVA)を、スタティスティカ8.0(スタットソフト社,タルサ,米国)、および、メディカルク(Medcalc)9.5(メディカルク(Medcalc)ソフトウェア,マリアケルク(Mariakerke),ベルギー)によって行った。値は、平均±標準偏差、および、四分位数間範囲と共に中央値として示した。p<0.05を有意とみなした。
[0090]ウェスタンブロッティングによる尿中のNGAL分子の形態の検出
[0091]NGALに対する1種のウサギポリクローナル、および、5種のマウスモノクローナル抗体を用いて、心臓外科手術を受けた患者から得られた尿中に存在するNGAL分子の形態を同定した。ビアコア(BIAcore)の実験により、5種のモノクローナル抗体は、異なるエピトープと反応することが示された。2つの代表的な尿サンプル(U1およびU2)を示した図6からわかるように、抗体間の性能に顕著な差があることが見出された。ポリクローナル抗体によって3つの主要なバンドが定期的に同定され、NGALの単量体および二量体の形態、ならびにNGALの複合体化したヘテロ二量体の形態として同定された。またこれらの3つの形態は、Mabs764および765によっても検出された。しかしながら、追加のバンドもいずれかの抗体で観察された。しかしながら、ポリクローナル抗体は、二量体に対して、2種のモノクローナル抗体よりも強い親和性を有し、ヘテロ二量体に対して、それよりも弱い親和性を有するようである。Mabs764および765は、3種全ての分子形態の検出において極めて類似した性能を有していた。Mab764およびMab765のNGALに対する親和性は、高いほうから低いほうに言えば、それぞれ単量体、ヘテロ二量体および二量体の形態であった。また、Mab763、699および697は、ヘテロ二量体の形態に強い親和性を有するが、それに対して二量体および単量体の形態への親和性は弱いことも示された。しかしながら、刺激された好中球顆粒球の上清中の単量体および二量体の形態を検出することにおけるポリクローナル抗体、ならびにMabs765および697の能力は、極めて類似しているようである。
[0093]表1に、RIAおよび5種のELISAの性能特性を示す:
[0096]ウェスタンブロッティングの結果に基づいて、以下の2セットの実験を行い、NGALの異なる形態の検出における分析の性能を調査した。手術後2時間における1つの尿サンプルのゲルろ過を、スーパーデックスTM75HRカラムで行った。分画中のNGALレベルをRIAおよび5種のELISAで測定し、図7に示した。5種のELISAでは、それぞれ単量体および二量体の形態の溶出量に相当する2つのピークが得られたが、RIAでは1つのピークしか得られなかった。後者は恐らく、RIAの感度が不十分であることによるものである。RIAでは、ピーク2においてNGALの最高レベルが得られ、ELISA1(Mab697−ポリクローナルベースのELISA)では最も低いレベルが得られた。ELISA1以外の全てのELISA分析では、ピーク1で、すなわち二量体のNGALの同様のレベルが測定された(図2の挿入図)。ELISA1では、二量体のNGALのより高レベルが測定された。
[0098]HK−2細胞を、異なる時間の長さで、ケラチノサイト無血清培地(K−SFM)、0.05mg/mLのウシ脳下垂体抽出物(BPE)、もしくは、5ng/mLのヒト組換え上皮増殖因子(EGF)のいずれかが添加されたK−SFM、または、ATCC推奨の完全増殖培地(0.05mg/mLのBPEおよび5ng/mLのEGFが添加されたK−SFM)で培養し、続いて標準条件下で48時間培養した。培養上清中のNGALレベルを、ELISA4によって、72時間にわたり、異なるタイムポイント(2時間、12時間、24時間、48時間および72時間)で決定した。培養の12時間〜72時間後に、K−SFM培養上清中のNGALレベルは、その他の3つの培養培地よりも高かった(図8)。完全増殖培地で増殖させた細胞に、最も低いレベルが見出された。また結果から、BPEが添加されたK−SFM中で増殖させた細胞の上清中のNGALレベルは、rEGFが添加されたK−SFM中で増殖させた細胞と比較してより高かったこともわかる。総合的に言えば、これらの結果から、細胞を必須の増殖因子を欠乏させた状態にしたストレスの多い条件下では、NGAL生産がアップレギュレーションされることが示された。
[0100]HK−2細胞を完全増殖培地で48時間増殖させ、その後にこの細胞を、IL−β(1ng/mL,ヒト)、LPS(125ng/mL,クレブシェラ肺炎杆菌(Klebsiella pneumonia))、または、TNF−α(20ng/mL,ヒト)のいずれかが添加された完全増殖培地の存在下で、様々なの長さの時間さらに増殖させた。図9Aに示したように、IL−βは、上清中でNGALレベルの非常に有意な上昇を誘導した(8.9〜41.9倍の増加)。またTNF−αおよびLPSとインキュベートすることによっても、上清中である程度のNGAL上昇(それぞれ2.2および1.6倍)を誘導したが、IL−βよりも有意に低かった(p<0.001)。またHK−2細胞を、IL−β、TNF−αまたはLPSが添加されたK−SFMでも培養した。IL−βではNGALの有意な上昇(1.3〜12.8倍の増加)が観察されたが、TNF−αまたはLPSでは観察されなかった(図9B)。しかしながら、完全増殖培地中で増殖させた細胞と比較すると、これらの上昇は、有意に低かった(p<0.001)。
[0102]HK−2細胞によって分泌されたNGALの分子の形態を、抗体を検出する際に、混合型のモノクローナル抗体(Mab697、Mab764およびMab765)を用いたウェスタンブロッティングによって決定した。図10(下のパネル)に示した結果によれば、完全培養培地、または、ストレスの多い条件下では、K−SFM、もしくは、サイトカイン(IL−β、または、TNF−α)またはLPSが添加された培地のいずれかで増殖させたHK−2細胞によって分泌されたNGALの主要な形態は、単量体の形態であることが示される。またIL−βで刺激した後はNGALのヘテロ二量体の形態も観察されたが、一方で、ヒト好中球の上清中に見出されたのとは対照的に、二量体の形態は見出されなかった(図6)。図10で、IL−βとインキュベートした後の、HK−2細胞中のNGALのmRNAレベルを示す。結果から発現が増加したことがわかり、これは、HK−2細胞によるNGALの活性な合成を示す。
[0104]元々NGALはヒト好中球から単離されたが、これまでに、血液中のNGALの測定は、細菌またはウイルスによって引き起こされる急性感染を区別する優れた手段であることが示されてきた。それに続く研究では、NGALはまた、所定の条件下で、腎臓、肝臓および上皮組織のようなその他の細胞でも発現される可能性があること、および、尿および血漿中のNGALの測定は、急性腎臓損傷のバイオマーカーとして役立つ可能性があることが見出された。実施例1によれば、NGAL分析の抗体の立体配置は、分析の臨床能力に強い影響を与えることが示される。AKIを有する患者の尿中で、数種のNGALの形態が同定された。さらにこの実施例によれば、尿細管上皮細胞によって生産された優勢な形態は、単量体の形態およびある程度のヘテロ二量体の形態であることが示さ
れる、それに対して、二量体の形態は、好中球に特有であると考えられる(図6を参照)。また単量体の形態も好中球によって生産される。本発明の研究における一つの興味深い発見は、好中球に由来する単量体および二量体の形態は、全てのモノクローナル抗体、加えてポリクローナル抗体によって同定されたことから、これらの異なる形態の用いられる抗体による認識に差があることである。これは、Mab697は、これらの尿中の形態をほぼ完全に認識することができないこととは対照的である。またMab765は好中球の上清中のこれらの形態に対しても強い反応を示したが、尿中の二量体の形態はわずかな認識しか示さなかった。理論に制限されることは望まないが、異なるNGAL形態のエピトープへの曝露における差、従って分子構造における差が原因であると考えられる。
Claims (14)
- 以下の工程を含む方法:
(a)個体由来のサンプル中における好中球ゼラチナーゼ関連リポカリン(NGAL)タンパク質の単量体、二量体およびヘテロ二量体の形態の相対量を決定すること、および、
(b)決定された量を比較すること、
であって、単量体および/またはヘテロ二量体のNGALタンパク質の量が、二量体のNGALタンパク質と比較して優勢であるならば、NGALタンパク質が個体の腎臓に由来することを示し、一方で、二量体のNGALタンパク質の量が、単量体またはヘテロ二量体のNGALタンパク質と比較して等しいかまたは優勢であるならば、NGALタンパク質が個体の好中球に由来することを示す、上記方法。 - 前記個体における急性腎臓損傷を検出するための請求項1に記載の方法であって、単量体および/またはヘテロ二量体のNGALタンパク質の量が二量体のNGALタンパク質と比較して優勢であるならば、NGALタンパク質が個体の腎臓に由来し、個体が急性腎臓損傷を有することを示し、一方で、二量体のNGALタンパク質の量が単量体またはヘテロ二量体のNGALタンパク質と比較して等しいかまたは優勢であるならば、NGALタンパク質が個体の好中球に由来し、個体が急性腎臓損傷を有さないことを示す、上記方法。
- 前記サンプル中のNGALタンパク質のそれぞれの量が、サンプルをNGAL抗体と接触させることによって決定される、請求項1または2に記載の方法。
- NGAL抗体がポリクローナルおよび/またはモノクローナルNGAL抗体を含む、請求項3に記載の方法。
- NGAL抗体が二種のポリクローナルNGAL抗体を含む、請求項4に記載の方法。
- NGAL抗体が二種の異なるモノクローナルNGAL抗体を含む、請求項4に記載の方法。
- NGALタンパク質の単量体、二量体およびヘテロ二量体の形態の相対量を決定する工程が、(i)個体由来の体液サンプルを、NGAL抗体および検出可能な標識と接触させ、サンプル中のNGALタンパク質をNGAL抗体と複合体化すること、および(ii)サンプル由来のNGALタンパク質の単量体、二量体およびヘテロ二量体の形態とNGAL抗体との間で形成された複合体の相対量を、検出可能な標識を用いて決定すること、を含む、請求項3−6のいずれかに記載の方法。
- サンプル中のNGALタンパク質とNGAL抗体との間で形成された複合体の量が、酵素結合免疫吸着検査法(ELISA)によって決定される、請求項7に記載の方法。
- 急性腎臓損傷の治療をモニターするための、請求項1−8のいずれかに記載の方法であって、治療計画の前およびその後に、または、その最中に採取された、個体由来の複数のサンプルを解析することを含む、前記方法。
- 前記サンプルが尿である、請求項1−9のいずれかに記載の方法。
- サンプル中の好中球ゼラチナーゼ関連リポカリン(NGAL)タンパク質の単量体、二量体およびヘテロ二量体の形態の相対量を決定するためのキットであって、体液サンプル中のNGALタンパク質と複合体化するのに適した第一のNGAL抗体、体液サンプル中のNGALタンパク質と第一のNGAL抗体の間で形成された複合体の量の決定に使用するのに適した第二のNGAL抗体、および、体液サンプル中のNGALと第一のNGAL抗体との間で形成された複合体の量の決定に使用するのに適した検出可能な標識を含む、上記キット。
- 第一および第二のNGAL抗体が、2種の異なるモノクローナルNGAL抗体;モノクローナルNGAL抗体とポリクローナルNGAL抗体;または2種のポリクローナルNGAL抗体を含む、請求項11に記載のキット。
- 前記第一および第二のNGAL抗体の一つがNGALの単量体、二量体およびヘテロ二量体の形態と複合体化するのに適しており、前記第一および第二のNGAL抗体のもう一つがNGALのヘテロ二量体の形態のみと複合体化するのに適している、請求項11または12に記載のキット。
- 請求項1−10のいずれかに記載の方法における、請求項11−13のいずれかに記載のキットの使用。
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