JP5437149B2 - 擁壁土留構造体とその設置方法 - Google Patents
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Description
(1)特許文献1に開示された擁壁土留構造体では、支柱を兼ねた土留壁板を地中へ建て込み、つぎに平板を設置し、最後に引張材で連結するといったように、現場における土留構造体の設置に多くの時間と労力を要する。
土留構造体を撤去する場合も同様の問題がある
(2)さらに特許文献1に開示された擁壁土留構造体にあっては、盛土が土留壁板に直接触れるため土留壁板の土圧負担が大きいだけでなく、引張材を介した底板の荷重負担も大きくなる。
そのため、土留壁板の全体強度を高めるとともに、底板の剛性を高めて高強度に形成する必要がある。
(3)土留壁板の近くの盛土を転圧する際、引張材が転圧作業の邪魔となり、十分な締め固めができない。
無理に土留壁板の近くの不安定な盛土を転圧すると、転圧ローラの転落事故を引き起こす危険がある。
(4)特許文献2に開示された擁壁土留構造体は、支柱の建て込みを省略できるものの、盛土に埋設された水平梁材の載荷重が小さい。
そのため、壁面材に作用する土圧によって擁壁土留構造体が転倒したり横滑りしやすい。
(5)特許文献2に開示された土留構造体も特許文献1と同様に、壁面材の近くの盛土を十分に締め固めできず、転圧作業中に転圧ローラの転落事故を引き起こすおそれがある。
(1)擁壁土留構造体の設置と撤去が容易であること。
(2)薄壁材と支柱ユニットの土圧負担を低減できること。
(3)支柱ユニットの転倒と横滑りを効果的に防止すること。
(4)盛土の転圧を安全に行えること。
前記の擁壁土留構造体において、前記支柱ユニットは滑り止め手段を有し、該滑り止め手段を受圧敷桁の下部両側に水平に向けて突設した一対の係止腕と、受圧敷桁の両側に打設した支持杭とにより構成する。
前記した何れかの擁壁土留構造体において、土のうブロックの平面積が受圧敷桁の受圧面積より大きい立方体、直方体、又はこれらに近い形状を呈している。
前記した何れかの擁壁土留構造体において、複数の土のうブロックを列状に敷設するか、または複数の土のうブロックを上下に段積みするか平積みする。
(1)擁壁土留構造体をユニット化した複数の支柱ユニットと複数の土のうブロック等で構成するので、短期間に擁壁土留構造体の設置と撤去が容易に行える。
(2)土のうブロックで盛土の土圧を支持して、薄壁材と支柱ユニットの縦柱に対して盛土の土圧が伝わらないため、薄壁材と支柱ユニット壁材の土圧負担を著しく低減できる。
(3)支柱ユニットが滑り止め手段を有することで支柱ユニットの横滑りを防止できるとともに、土のうブロックを載置して支柱ユニットを重力式に構成できるので支柱ユニットの転倒を効果的に防止できる。
(4)盛土の側面を複数の土のうブロックで支持できるので、盛土の周縁部を転圧ローラが走行しても転落の心配がない。そのため、盛土の周縁部を十分に締め固めできる。
(5)従来と比べて壁面材である薄壁材と支柱ユニットの強度負担が小さくなるから、薄壁材および支柱ユニットの全体強度を低強度に設定できる。
(6)支柱ユニットの滑動力を低減できるから、支柱ユニットを構成する受圧敷桁の簡素化を図ることができる。
(7)既述した支柱ユニットの剛性低減効果に伴い、支柱ユニットを構成する部品点数の削減が図れるとともに、薄壁材および支柱ユニットに仮設リース材を使用すれば更なる経済化を図ることができる
図1に盛土10の土圧を支持しつつ盛土側面の崩壊を防止する擁壁土留構造体の一例を示し、図2に擁壁土留構造体の断面図を示す。
本発明では盛土10を土のうブロック40の背面側に構築し、盛土10の背面土圧を複数の土のうブロック40で支持する。
以下に擁壁土留構造体の主要な構成部材について説明する。
薄壁材20は、複数の土のうブロック40の周囲を覆う壁面材で、例えば金属、樹脂、コンクリート等の各種素材からなる公知の壁面パネルや板材が使用可能である。
本例では薄壁材20に横矢板を使用し、支柱ユニット30を構成する縦柱31の背面側、又は前面フランジ間に横矢板を横架する場合について説明する。
支柱ユニット30は薄壁材20を取付けるためのL字形を呈する重力式の支柱で、縦柱31と受圧敷桁32と補強材33とを具備する。
縦柱31、受圧敷桁32および補強材33は例えばH鋼等の鋼材からなり、縦柱31および受圧敷桁32を構成する鋼材をL字形に付き合せ、その接合部を螺着、溶接、又はブルマン等の締結治具による連結により固着するとともに、接合部の内側角部に補強材33を構成する鋼材を同様の方法で固着して支柱ユニット30を形成する。
本例の滑り止め手段は、受圧敷桁32の下部両側に水平に向けて突設した一対の係止腕34,34と、受圧敷桁32の両側に打設した支持杭35とにより構成する。
支持杭35を支柱ユニット30と一体の係止腕34,34に当接させることで、支柱ユニット30の滑動を防止する。
土のうブロック40は支柱ユニット30に重量を付与して支柱ユニット30の転倒を防止する機能と、盛土10の土圧を支持して薄壁材20と支柱ユニット30へ盛土10へ作用する背面土圧を遮断する機能を併有するもので、土砂等の中詰材42を袋体41に封入して構成する。
土のうブロック40はその平面積が支柱ユニット30の受圧敷桁32の受圧面積よりも大きく、その全体形状は敷設したときに間に隙間を生じにくい立方体、直方体、又はこれらに近い形状を呈している。
土のうブロック40容積とその重量は設置現場の状況と使用目的等を考慮して適宜選択する。
中詰材42は土砂や砂が最適であるが、土砂以外に骨材や各種の産業廃棄物を粒状にした固形物を使用してもよい。
図2〜図5に基づき上記した擁壁土留構造体の施工方法について説明する。
図3は支柱ユニット30の設置工程を示す説明図で、受圧敷桁32が現地地盤に接地し、縦柱31が直立するように、現地地盤に間隔を隔ててL字形の支柱ユニット30を配置する。
つぎに受圧敷桁32の両側に支持杭35を打設して、支柱ユニット30を位置決めする。この際、支持杭35を係止腕34に当接させて支柱ユニット30の滑動を阻止する。
隣り合う各支柱ユニット30の縦桁31の背面間に薄壁材20を横架して取付けて、隣り合う各支柱ユニット30の縦桁31と縦桁31の空間を封鎖する。
図4は土のうブロック40の敷設工程を示す説明図で、位置決めを完了した各支柱ユニット30の受圧敷桁32に順次載置しながら、土のうブロック40を敷設して薄壁材20の背面側に連続した堤体を形成する。
土のうブロック40の敷設にあたり、土のうブロック40相互間が隙間なく密着するように、支柱ユニット30の配置間隔と土のうブロック40の寸法が関係付けられている。
したがって、薄壁材20に対して土のうブロック40の側圧(土圧)はほとんど作用しない。
また、土のうブロック40の下部中央は、その自重により受圧敷桁32を抱かかえるように変形するが、下部のその他の部位は現地地盤に接地する。
図2,5に示すように擁壁土留構造体を構成する複数の土のうブロック40の背面側に土のうブロック40の全高まで土砂を投入して盛土10を構築する。
盛土10の構築方法は従来と同様であり、土砂の巻き出し作業と転圧作業を40〜50cmの層厚の単位で繰り返して行う。
盛土10の転圧時に発生する横向きの土圧は、複数の土のうブロック40の重量により支持されて薄壁材20へは伝わらない。
このようにして構築した盛土10は永久構造物、或いは仮設構造物として利用する。
図示を省略するが、薄壁材20の背面に直接土砂を投入して盛土10を構築すると、縦柱31と薄壁材20に大きな土圧が直接作用する。
そのため、薄壁材20や支柱ユニット30を高強度に設計する必要があるだけでなく、支柱ユニット30が前方へ転倒する危険がある。
複数の土のうブロック40に対して盛土10の主働土圧PA1が働き、土のうブロック40は盛土10に対して受働土圧PP1が働く。
したがって、盛土10の背面土圧を土のうブロック40により支持できるから、盛土の10の背面土圧が薄壁材20と縦柱31へは伝わらない。
図2に基づいて、裏込材12の側圧(土圧)の支持方法について説明する。
薄壁材20に対しては、図5に示した裏込材12の側圧(土圧)のみが作用する。
本発明では、支持杭35の受働土圧PP2が裏込材12の主働土圧PA2に卓越するように、支持杭35の本数と打設深さを設定してある。
さらに、従来と比べて壁面材である薄壁材20と支柱ユニット30の強度負担が小さくなるから、薄壁材20および支柱ユニット30の低強度に設定できる。
図示を省略するが、土のうブロック40に代わって薄壁材20の背面に直接土砂を投入して盛土10を構築した場合には、縦柱31と薄壁材20に作用する盛土の背面土圧に対し、受圧敷桁32の真上に位置する土砂の重量だけでは支えきれずに支柱ユニット30が転倒する危険がある。
そのため、支柱ユニット30を構成する鋼材の断面を小さくしたり、受圧敷桁32の全長を短くできて経済的である。
仮設構造物として利用した擁壁土留構造体は、構築作業と逆に盛土10を掘削して撤去した後、土のうブロック40、薄壁材20、および支柱ユニット30の順序で撤去する。
このように、本発明では擁壁土留構造体を効率よく構築できるだけでなく、撤去する場合も短期間で効率よく撤去することができる。
以降に変形例について説明するが、その説明に際し、前記した実施例と同一の部位は同一の符号を付してその詳しい説明を省略する。
引張材43は鋼棒やロープケーブル等の引張体力に優れた素材からなり、その一端(左端)を支柱ユニット30の縦柱31に固定し、他端を支圧板44に貫通して固定する。
引張材43は隣接する土のうブロック40の間を這わすか、土のうブロック40を貫通して配置する。
引張材43の固定にあたり、引張材43を緊張して定着すると土のうブロック40の安定性が増す。
図7に支柱ユニット30の変形例を示す。
本例に係る支柱ユニット30は、L字形に接合した縦柱31と受圧敷桁32の角部の間に鋼材を加工して製作した補強材33を配置し、各鋼材の間をボルト止めして連結したものである。
本例の支柱ユニット30も滑り止め手段を有することは先の実施例1と同様である。
補強材33についても同様に公知の断面形の鋼材を使用できる。
11・・・覆工層
20・・・薄壁材
30・・・支柱ユニット
31・・・縦柱
32・・・受圧敷桁
40・・・土のうブロック
41・・・袋体
42・・・中詰材
Claims (6)
- 盛土の土圧を支持しつつ盛土側面の崩壊を防止する擁壁土留構造体であって、
少なくとも板状の薄壁材と、
間隔を隔てて配置し、縦柱と受圧敷桁とよりなるL字形を呈する複数の支柱ユニットと、
前記受圧敷桁の受圧面積よりも大きい平面積を有する複数の土のうブロックとを具備し、
隣り合う受圧敷桁に土のうブロックの一部を載置して起立させた縦柱の間に前記薄壁材を取り付け、
土のうブロックの背面側に構築した盛土の土圧を、現地地盤に接地させた前記複数の土のうブロックで支持するようにしたことを特徴とする、
擁壁土留構造体。 - 請求項1において、前記支柱ユニットは滑り止め手段を有し、該滑り止め手段を受圧敷桁の下部両側に水平に向けて突設した一対の係止腕と、受圧敷桁の両側に打設した支持杭とにより構成することを特徴とする、擁壁土留構造体。
- 請求項1または請求項2において、土のうブロックの平面積が受圧敷桁の受圧面積より大きい立方体、直方体、又はこれらに近い形状を呈していることを特徴とする、擁壁土留構造体。
- 請求項3において、複数の土のうブロックを列状に敷設したことを特徴とする、擁壁土留構造体。
- 請求項3において、複数の土のうブロックを上下に段積みしたことを特徴とする、擁壁土留構造体。
- 請求項1乃至請求項5の何れかに記載の擁壁土留構造体の施工方法であって、
間隔を隔てて複数の支柱ユニットを設置し、
前記支柱ユニットの受圧敷桁に土のうブロックの一部を載置して起立させた縦柱の間に薄壁材を取り付け、
盛土の土圧を現地地盤に接地させた土のうブロックで支持するように土のうブロックの背面側に盛土を構築することを特徴とする、
擁壁土留構造体の施工方法。
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