従来から、自動販売機等の内部には、投入硬貨の正偽を判別するとともに、正貨とみなされた投入硬貨を金種毎に選別収容し、さらに選別収容された硬貨を釣銭等の額に応じて払い出す硬貨処理装置が搭載されている。図31は、このような硬貨処理装置の概略図である。
この硬貨処理装置1は、大別すると、投入硬貨の正偽を判別するとともに投入硬貨を金種別に振り分けるための硬貨選別装置2と、硬貨選別装置2により振り分けられた投入硬貨を金種毎に収納してそこから釣銭等の額に応じた硬貨を選択して払い出すための硬貨払出装置3とから構成されている。そして、硬貨選別装置2は、投入硬貨の正偽を判別する硬貨識別部と、この硬貨識別部が真正硬貨とみなした硬貨を金種別に振り分ける硬貨振分部とを有している。また、硬貨払出装置3は、硬貨選別装置2により金種毎に振り分けられた硬貨をそれぞれ金種毎に収容する複数のコインチューブからなる硬貨収容部と、この硬貨収容部から釣銭等の額に応じた硬貨を選択して払い出す硬貨払出機構とを有している。この硬貨払出機構としては、コインチューブに収容された硬貨を、コインチューブの最下部に開口したスリット状の孔から、ペイアウトスライドと称されているスライド部材によって引き出すことにより硬貨を払い出すものが広く採用されている。また、硬貨払出装置3において、硬貨払出装置3内の硬貨を売上として回収する際に硬貨を取り出しやすくするために、その硬貨収容部は取り外し可能なカセットになっているのが通常である。
特許文献1(特開平07−262426号公報)において、従来の硬貨処理装置が備える硬貨払出装置が開示されている。
以下、図32ないし図34を参照しながら従来の硬貨払出装置の構造について説明する。
図32及び図33は、従来の硬貨払出装置の要部断面図であり、図34は、従来の硬貨払出装置の概念斜視図であって、コインチューブ及び装置の壁等が省略されたものである。図32(a)及び図34は、硬貨の払い出し前の状態(以下、「待機状態」という。)を示したものであり、図33は、硬貨の払い出し動作時の状態(以下、「払出状態」という。)を示したものであり、図32(b)は、硬貨収容部のカセットを取り外した状態を示したものである。
図32ないし図34に示す従来の硬貨払出装置3は、図示しない駆動手段と、この駆動手段の駆動力により一払出動作ごとに一方向(矢印A方向)へ一回転するペイアウトカム10と、このペイアウトカム10の下面に突設されたピン10aと係合する溝9aを有しこのペイアウトカム10が一回転すると図の初期位置から矢印Bの方向へ往復移動するペイアウトリンク9と、このペイアウトリンク9に対しピン9bを介して着脱可能に係合しこのペイアウトリンク9の往復運動に連動して矢印B方向へ往復移動するペイアウトスライド8とを有している。ここで、ペイアウトリンク9とペイアウトスライド8とが着脱可能となっているのは、ペイアウトスライド8が硬貨収容部とともに装置本体4から取り外し可能なカセット5に含まれるものであるためである。
また、前記ペイアウトスライド8には、硬貨収容部の複数のコインチューブ6に対応して、複数のコインチューブ6の各最下面に収容された硬貨を一枚だけ収容する複数の硬貨収容孔8aが形成されている。また、この硬貨収容孔8aの下方にはカセット5の底板7が配設されており図32(a)に示す待機状態において、この硬貨収容孔8aに収容された硬貨を支持している。
一方、前記ペイアウトリンク9には、先端がそのペイアウトスライド8の各硬貨収容孔8aの下方に望み、各硬貨収容孔8aに一枚ずつ収容された硬貨の払出しと非払出しとを切り替えるためのチェンジスライド11が、各硬貨収容孔8aに対応して出没自在に嵌挿している。このチェンジスライド11は、ペイアウトリンク9に連動して移動するものであるが、チェンジスライド11の移動が規制されるとペイアウトリンク9と連動しなくなる。
この各チェンジスライド11の後部には、それぞれ、駆動手段により上下に移動するチェンジレバー12が配設されている。このチェンジレバー12は、ソレノイド13のプランジャ先端に取り付けられており、このソレノイド13によりチェンジレバー12の駆動手段が構成されている。このチェンジレバー12は、ソレノイド13が駆動しない時は、チェンジスライド11の後端と係合してチェンジスライド11の移動を規制し、ソレノイド13が駆動した時は、上に移動し、その結果、チェンジスライド11の後端との係合が解除され、チェンジスライド11の移動を規制しなくなる。このチェンジスライド11、チェンジレバー12及びソレノイド13からなる機構は、各硬貨収容孔8aに一対一に対応して設けられており、それぞれ個別に動作する。
前記チェンジスライド11は、対応するチェンジレバー12と係合した状態においては、図33(b)に示すように、前記ペイアウトリンク9及びペイアウトスライド8の往復移動に連動せずに待機状態の位置を維持し、払出状態において、対応する硬貨収容孔8aの下方を閉鎖する。また、前記チェンジスライド11は、対応するチェンジレバー12との係合が解除された状態においては、図33(a)に示すように、前記ペイアウトリンク9及びペイアウトスライド8の往復移動に連動して往復移動し、払出状態において、対応する硬貨収容孔8aの下方を解放する。
ここで、例として、硬貨払出装置が一つの硬貨収容孔8aに対応するコインチューブ6からのみ硬貨を払い出す場合について説明する。
まず、払い出される硬貨の硬貨収容孔8aに対応するソレノイド13のみを駆動してそのチェンジレバー12を上に移動させる。これにより、そのチェンジレバー12とチェンジスライド11との係合が解除され、ペイアウトスライド8の往復移動に連動して払い出される硬貨の硬貨収容孔8aに対応するチェンジスライド11が往復移動することが可能となる。他方、払い出されない硬貨の硬貨収容孔に対応するソレノイド13は駆動しないため、そのチェンジレバー12とチェンジスライド11との係合は解除されず、払い出されない硬貨の硬貨収容孔8aに対応するチェンジスライド11の移動は規制される。
次に、図示しない駆動手段の駆動によりペイアウトカム10が矢印A方向に沿って一回転して、ペイアウトリンク9及びペイアウトスライド8は矢印B方向に沿って往復運動する。すると、ペイアウトスライド8の各硬貨収容孔8aに収容された各硬貨も、ペイアウトスライド8とともにスライドして、待機状態において硬貨収容孔8aに収容された硬貨を支持する底板7から外れた位置へ移動する。このとき、払い出される硬貨の硬貨収容孔8aに対応するチェンジスライド11はペイアウトリンク9及びペイアウトスライド8の移動に連動して後方へスライド移動しているため、その硬貨収容孔8aの下方が解放され、その硬貨収容孔8aに収容された硬貨が落下して払い出される。他方、払い出されない硬貨の硬貨収容孔8aに対応するチェンジスライド11はチェンジレバー12によりその移動が規制されているため、ペイアウトリンク9及びペイアウトスライド8が移動しても、待機状態の位置を維持する。そのため、ペイアウトリンク9及びペイアウトスライド8が移動したときに硬貨収容孔8aの下方にチェンジスライド11の先端が出没することになり、それにより硬貨収容孔8aに収容された硬貨が支持され、その硬貨は払い出されない。
また、図32(b)に示すように、硬貨払出装置3においては、硬貨払出装置3内の硬貨を売上として回収する際に硬貨を取り出しやすくするために、コインチューブ6を含む硬貨収容部が硬貨払出装置本体4から取り外し可能なカセット5になっているのが通常である。この取り外し可能なカセット5は、通常、コインチューブ6、底板7及びペイアウトスライド8を含んでいる。そして、このカセット5を硬貨払出装置本体4から取り外す際には、ペイアウトスライド8とペイアウトリンク9とのピン9aを介した係合が解かれる。逆に、このカセット5を硬貨払出装置本体4に取り付ける際には、カセット5に含まれるペイアウトスライド8と硬貨払出装置本体4に含まれるペイアウトリンク9とをピン9aを介して係合させる。
以上において説明した従来の硬貨払出装置は、硬貨収容部に収容された硬貨のおおよその枚数を検知あるいは測定する硬貨枚数検知用のセンサを備えているのが通常である。
この硬貨枚数検知用のセンサとしては、これまでに、レバー、ソナーセンサ、磁気センサ及びフォトセンサが用いられている。
レバーによる検知は、コインチューブの側面にレバーを設け、硬貨がそのレバーが設けられた高さまで積載されたときにそのレバーが押されることにより硬貨がその高さまで積載されていることを検知するものである。
磁気センサによる検知は、コインチューブの側面に配置された複数の磁気センサによって積載された硬貨の高さを検知するものである。この磁気センサを備えた硬貨払出装置では、磁気センサの配置された高さまで硬貨が収容されていることを検知すると、その磁気センサの配置高さに相当する硬貨が収容されていることを認識する。この磁気センサを備えた硬貨払出装置は、特許文献2(特開平11−232521号公報)において開示されている。
フォトセンサによる検知は、磁気センサによるものと同様に、コインチューブの側面に配置されたフォトセンサによって積載された硬貨の高さを検知するものである。フォトセンサによる検知には、発光素子と受光素子とをコインチューブを挟んで対抗するように配置して硬貨による光の遮断の有無を検知する方式と、発光素子と受光素子とを並べて配置し硬貨による光の反射の有無を検知する方式がある。このフォトセンサを備えた硬貨払出装置では、フォトセンサの配置された高さまで硬貨が収容されていることを検知すると、そのフォトセンサの配置高さに相当する硬貨が収容されていることを認識する。このフォトセンサを備えた硬貨払出装置は、特許文献3(特開2007−183760号公報)において開示されている。
ソナーセンサによる検知は、コインチューブの上方に配置されたソナーセンサにより硬貨の収容枚数を測定するものである。このソナーセンサを備えた硬貨払出装置は、ソナーセンサから発生した音が積載された硬貨に反射して帰ってくる時間を測定することでソナーセンサから積載された硬貨の上面までの距離を算出し、この距離から硬貨の積載枚数を算出するものである。このソナーセンサを備えた硬貨払出装置は、特許文献4(特表2003−518674号公報)において開示されている。
一方、硬貨払出装置に関係するものではないが、特許文献5(特開2007−58707号公報)において、複数の硬貨の重量を重量センサにより測定し、その重量から硬貨の枚数を算出する硬貨計数機が開示されている。
また、重量計の校正に関する先行技術文献として、特許文献6(特開昭60−13223号公報)、特許文献7(実開平3−30831号公報)及び特許文献8(特開平5−248931号公報)がある。
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
図1は、本発明の第1の実施形態の硬貨払出装置3の縦断面図であり、図2は、その分解斜視図であり、図3は、その硬貨収容部を含むカセット5部分の上面図である。また、図4は、第1の実施形態の(a)待機状態、(b)払出状態及び(c)カセット取り外し状態における要部断面図である。この第1の実施形態の硬貨払出装置3の構造は、重量センサ14及び積載台15が設けられるコインチューブ6の下方を除いて、前述した従来の硬貨払出装置の構造と同様である。よって、本実施形態における構成部材のうち前述の従来の硬貨払出装置における構成部材と同等の部材には同一の符号を付し、詳しい説明は省略する。これは、以下の実施形態においても同様である。
第1の実施形態の硬貨払出装置3では、カセット5の底板7における各コインチューブ6の下方に、硬貨を受ける積載台15と収容された硬貨の重量を検出するための重量センサ14とを有する硬貨枚数検知センサが配置されている。この積載台15は、底板7の孔7aに上下方向にスライド可能に設けられている。また、硬貨払出装置本体4におけるカセット5が配置されたときにコインチューブ6の下方となる位置には、前述の重量センサ14が配置されている。つまり、硬貨払出装置3の一部としての静止系部分に、重量センサ14が固定状態に取り付けられている。この重量センサ14は、重量を受ける部分が板状になっている。そして、カセット5が硬貨払出装置本体4に搭載されたときに、積載台15の下部が重量センサ14の板状の重量を受ける部分の上面に当接する。このように、重量センサ14を、外部からの衝撃にさらされる機会の多いカセット5の下部付近ではなく、硬貨払出装置本体4に設けることにより、重量センサ14の損傷を抑えることができるとともに、積載台15をカセット5に設けることにより、コインチューブ6の底部が塞がった状態になり、コインチューブ6内の汚染が防止される。このように構成された硬貨払出装置3は、コインチューブ6内に積載された硬貨の重量を、積載台15を介して、重量センサ14で測定する。
この重量センサ14はフォースセンサであり、重量センサ14の上部は、重量によって上下する。近年、750g重までの荷重を測定できるフォースセンサが複数社から販売されている。これらのフォースセンサは、搭載するICが重量に応じた電圧又は電流信号を外部へ送出するようになっており、その測定誤差は、通常、直線性誤差で±1〜3%程度である。
図5は、この第1の実施形態における積載台15の斜視図である。この積載台15上面にはテーパー18が設けられている。この積載台15上面は、ペイアウトスライド8がコインチューブ6に収容された硬貨を引き出す際にペイアウトスライド8と最初に当接する部分が、ペイアウトスライド8の引き出される方向に向かって順次高くなるテーパー形状となっている。なお、第1の実施形態では上面全体が緩やかなカーブとなるように構成されているが、本発明の効果を奏するためには、ペイアウトスライド8が引き出されたときに当接する部分にのみテーパーがあればよい。
図6は、この第1の実施形態におけるペイアウトスライド8が引き出される際のペイアウトスライド8と積載台15との動きを示した斜視図であり、(a)が待機状態を示し、(c)が払出状態を示し、(b)がその中間の状態を示している。この第1の実施形態の硬貨払出装置3は、ペイアウトスライド8がペイアウトリンク9によって引き出されると、ペイアウトスライド8における硬貨収容孔8aの内周縁の一部8a1と当接した積載台15がひっかかりなく摺動するペイアウトスライド8によってスムーズに徐々に押し下げられるので、積載台15がペイアウトスライド8の移動の障害にならずに硬貨を払い出すことができる。
以上のような構成とすることで、硬貨払出装置3に収容されている硬貨の重量を測定するための重量センサ14を硬貨払出装置3に搭載することが可能となる。そして、その重量センサ14でコインチューブ6に収容されている硬貨の重量を測定し、演算手段24によって、その重量を硬貨一枚の重量で割ることにより、そのコインチューブ6に収容されている硬貨の枚数を算出することができる。また、硬貨払出装置3に収容されている硬貨の枚数を正確に把握できることから、収容されている硬貨の全てを釣銭等に用いることが可能となる。そのため、この硬貨払出装置3を自動販売機等に搭載すれば、釣銭切れによる販売機会の喪失を最小限に抑えることが可能となる。
なお、硬貨枚数計測処理、硬貨の受入処理、硬貨の払出処理及び硬貨枚数計測手段25の校正などの動作については、各実施形態においてほぼ共通することから、後でまとめて説明することとする。
以下に本発明の第2から第6の実施形態を説明する。これらの実施形態において第1の実施形態と同等の部材には同一の符号を付して詳しい説明を省略する。
図7は、本発明の第2の実施形態の硬貨払出装置3の(a)待機状態、(b)払出状態及び(c)カセット取り外し状態における要部断面図であり、図8は、その硬貨収容部を含むカセット5部分の上面図である。この第2の実施形態の硬貨払出装置3は、以下で説明する点を除いて第1の実施形態と同様の構造である。
この第2の実施形態では、重量センサ14と積載台15とを両者ともにカセット5の底部に一体的に設けている。なお、重量センサ14と積載台15とを小さいスペースで一体的に形成するために、重量を受ける部分が球形状になっている重量センサ14を用いている。そして、重量センサ14は、カセット5に取り付けられたフレキシブル基盤16上に設けられている。また、カセット5の底部と硬貨払出装置本体4とに、フレキシブル基盤16と硬貨払出装置本体4の主制御とを接続するためのコネクタ17が設けられている。
このような構成としたことで、着脱自在なカセット5に重量センサ14を配置しても、カセット5を硬貨払出装置本体4から取り外すことが可能となる。また、重量センサ14をカセット5に設けることにより、カセット5を硬貨払出装置本体4から取り外した状態においても、簡単な計測用機器を用いるだけでカセット5に収容されている硬貨の枚数を計測することができる。
図9は、本発明の第3の実施形態の硬貨払出装置3の(a)待機状態、(b)払出状態及び(c)カセット取り外し状態における要部断面図である。また、図10は、その硬貨収容部を含むカセット5部分の上面図である。この第3の実施形態の硬貨払出装置3は、以下で説明する点を除いて第1の実施形態と同様の構造である。
この第3の実施形態では、硬貨払出装置本体4に重量センサ14と積載台15とを配置している。なお、重量センサ14は、その重量を受ける部分が球形状になっている。そして、カセット5を硬貨払出装置本体4に取り付けたときにカセット5のコインチューブ6の内部へ積載台15が出没するように、カセット5の底板7のコインチューブ6の下方部分に収容される硬貨よりも小径の孔21を設けている。コインチューブ6の下方の孔21が収容される硬貨よりも大きいと、カセット5を取り外したときに収容された硬貨が落下してしまうので、収容された硬貨を支えられるように、底板7の孔21は収容される硬貨よりも小径となっている。
このような構成としたことで、着脱自在なカセット5の底部に硬貨払出装置本体4に設けられた積載台15が出没するようにしても、カセット5を硬貨払出装置本体4から取り外したときに収容された硬貨がカセット底部の孔から落下してしまうのを防ぐことができる。また、重量センサ14を、外部からの衝撃にさらされる機会の多いカセット5の下部付近ではなく硬貨払出装置本体4に設けることにより、重量センサ14の損傷を抑えることができる。
図11は、本発明の第4の実施形態の硬貨払出装置3の待機状態における要部断面図である。また、図12は、その硬貨収容部を含むカセット部分の上面図であり、図13は、その積載台15及び重量センサ14の斜視図である。なお、この第4の実施例では、重量を受ける部分が板状となっている重量センサ14を用い、この板状の重量を受ける部分を積載台15としている。
この第4の実施形態では、第1の実施形態のように積載台15にテーパーを設けるかわりに、ペイアウトスライド8にテーパー19を設けている。ここでは、ペイアウトスライド8は、コインチューブ6に収容された硬貨を引き出す際に積載台と最初に当接する部分が、ペイアウトスライド8の引き出される方向に向かって順次高くなるテーパー形状となっている。
図14は、この第4の実施形態におけるペイアウトスライド8が引き出される際のペイアウトスライド8と積載台15との動きを示した斜視図であり、(a)が待機状態を示し、(c)が払出状態を示し、(b)がその中間の状態を示している。この第4の実施形態の硬貨払出装置3は、ペイアウトスライド8がペイアウトリンク9によって引き出されると、ペイアウトスライド8と当接した積載台がペイアウトスライド8によって押し下げられるので、積載台がペイアウトスライド8の移動の障害にならずに硬貨を払い出すことができる。
図15は、本発明の第5の実施形態の硬貨払出装置3の(a)待機状態、(b)払出状態及び(c)カセット取り外し状態における要部断面図である。また、図16は、その硬貨収容部を含むカセット5部分の上面図であり、図17は、その積載台15の斜視図である。この積載台15は、軸15aと放射状の3本の腕15bを有するものとして構成している。また、重量センサ14は、その重量を受ける部分が球形状になっている。
この第5の実施形態では、硬貨を引き出す際にペイアウトスライド8が積載台15に当接しないように、ペイアウトスライド8に溝20が設けられている。
図18は、この第5の実施形態におけるペイアウトスライド8が引き出される際のペイアウトスライド8と積載台15との動きを示した斜視図であり、(a)が待機状態を示し、(c)が払出状態を示し、(b)がその中間の状態を示している。このように、この第5の実施形態の硬貨払出装置は、ペイアウトスライド8が引き出されても、ペイアウトスライド8が積載台15とぶつかることがないため、硬貨を払い出すことができる。
また、この第5の実施形態においては、積載台における3本の腕15bが硬貨表面の外周部付近を3点で支える構造となっているが、第1から第4までの実施形態における積載台のように積載台が硬貨中央部付近を支える構造であってもよい。図19は、硬貨中央部付近を支える積載台を用いた場合におけるペイアウトスライド8と積載台15との動きを示した斜視図である。
積載台15が硬貨表面の中央部付近のみで支える構造だと、硬貨の積載台中央からのずれにより、測定される重量に若干のばらつきが生じてしまうが、第5の実施形態のように硬貨の外周部付近の複数箇所を支える構造とすることにより、測定される硬貨の重量のばらつきを最小限に抑えることができる。この硬貨表面の外周部付近を支える構造の積載台15は、硬貨表面の外周部付近を4点以上で支えるものであってもよく、また、1点の面積を広くして2点で支えるものであってもよい。
図20は、本発明の第6の実施形態の硬貨払出装置3の待機状態における要部断面図である。また、図21は、その硬貨収容部を含むカセット5部分の上面図であり、図22は、その積載台15の斜視図である。また、重量センサ14は、その重量を受ける部分が球形状になっている。
この第6の実施形態では、その積載台15をコインチューブ6の直径とほぼ同じにしている。
このような構成にすると、ペイアウトスライド8を引き出す際の負荷が大きくなるというデメリットがある一方、積載台15が広い面積で硬貨を支えることになるため、測定される硬貨の重量のばらつきを抑えることができる。
次に、上述した本発明の各実施形態の硬貨払出装置3において行われる処理の流れについて説明する。以下の説明においては1つのコインチューブ6における処理について説明するが、実際には同様の処理をそれぞれのコインチューブ6において行っている。
図23は、本発明の各実施形態の硬貨払出装置3のブロック図である。本発明の各実施形態の硬貨払出装置3は、コインチューブ6とペイアウトスライド8などからなる硬貨払出機構とカセット着脱検知センサ22と重量センサ14とメモリ23と演算手段24とそれらを制御する主制御とを有している。そして、本発明の各実施形態における硬貨の枚数の計測は、主制御における制御の下、重量センサ14、メモリ23、演算手段24を用いることにより行われる。そのため、本発明の各実施形態の硬貨払出装置3の硬貨枚数計測手段25は、重量センサ14、メモリ23及び演算手段24を有している。また、メモリ23には、各コインチューブ6に収容されている硬貨の枚数が記憶されている他、以下におけるそれぞれの処理の説明において言及するように、各コインチューブ6に収容された硬貨の枚数の算出に用いるために、各コインチューブ6に収容される硬貨1枚の標準重量、重量センサに被測定物が載っていないときの出力電圧値、及び重量センサの単位重量に対応する電圧値などが記憶され、また、硬貨枚数計測手段25の校正に用いるために、硬貨の受入時又は硬貨の払出時に算出された硬貨1枚当たりの重量の履歴などが記憶されている。また、カセット着脱検知センサ22は、図24に示すような、カセット5の硬貨払出装置本体4への着脱の検知を行うスイッチ式のセンサであり、これにより、カセット5が硬貨払出装置本体4に装着されたこと及びカセット5が硬貨払出装置本体4から取り外されたことを検知できる。なお、このカセット着脱検知センサ22は、スイッチ式に限られず、電磁式又は光学式など他の適宜の方式のものでもよい。
なお、本発明の各実施形態においては、硬貨払出処理、硬貨受入処理及び硬貨枚数計測手段などにおいて一時的に記憶する必要のある情報を記憶するため、1つの共通のメモリを用いているが、それにかえて、複数のメモリを用いて、それぞれの値を別々のメモリに記憶するようにしてもよい。また、本発明の各実施形態の硬貨払出装置3は、硬貨選別装置2と一体化したものであるため、その主制御及びメモリ23は硬貨選別装置2と共通となっているが、それにかえて、硬貨選別装置2と硬貨払出装置3とで別々の主制御の下で独立に制御するように構成してもよいし、さらには、硬貨払出装置3が備えられる外部機器の主制御の下で硬貨払出装置3が制御されるように構成してもよい。
一般に、重量センサ搭載の電子式重量計は、重量センサに被測定物が載っていないとき(0g時)の出力電圧値と単位重量に対応する電圧値とを記憶しており、重量センサに被測定物を載せたときの出力電圧値から0g時の出力電圧値を引いた値を単位重量に対応する電圧値で割ることにより被測定物の重量を算出している。
本発明の各実施形態の硬貨払出装置3の硬貨枚数計測手段25においても、それぞれの重量センサの0g時の出力電圧値、それぞれの重量センサの単位重量に対応する電圧値、及び金種毎の硬貨1枚の標準重量がメモリ23に記憶されている。そして、コインチューブ6に収容された硬貨の重量は、演算手段24において、重量センサの出力電圧値から0g時の出力電圧値を引いた値を単位重量分の電圧値で割ることにより算出される。このように算出されたコインチューブ6に収容された硬貨の重量を硬貨1枚の標準重量で割ることにより、コインチューブ6に収容された硬貨の枚数を算出する。
また、一般に、重量センサ搭載の電子式重量計は重量センサの経時変化によって測定値がずれてくるため、定期的に、0g校正及び質量校正を行うことが不可欠である。ここで、0g校正とは、重量の測定の前に被測定物を載せない状態での重量センサの出力電圧値を測定し、その値を用いて0g時の重量センサの出力値を更新することをいい、質量校正とは、予め重量の分かっている基準錘を載せて基準錘の重量に対応する電圧値を測定し、その値を用いて単位重量に対応する電圧値を更新することをいう。
本発明の各実施形態の硬貨払出装置3の硬貨枚数計測手段25においては、後述するような処理によって、0g時の出力電圧値及び硬貨1枚の標準重量を随時更新することにより、0g校正及び質量校正に相当する処理を行っている。
ここで、硬貨1枚の標準重量の更新が質量校正に相当するものであることを説明する。コインチューブ6に収容された硬貨の重量の測定時の重量センサの出力電圧値をV、0g時の出力電圧値をV0、単位重量に対応する電圧値をG、硬貨1枚の標準重量をAとすると、そのコインチューブ6に収容された硬貨の枚数(X)は、X=(V−V0)/(G×A)と算出される。そのため、コインチューブ6に収容された硬貨の枚数(X)の算出との関係でみれば、硬貨1枚の標準重量(A)を固定値として単位重量に対応する電圧値(G)を随時更新していくことにかえて、単位重量に対応する電圧値(G)を固定値として硬貨1枚の標準重量(A)を随時更新していくことにしても重量校正に相当する処理が可能である。同様に、硬貨1枚の標準重量に対応する電圧値(G×A)を随時更新していくこととしても重量校正に相当する処理が可能である。
図25は、本発明の各実施形態の硬貨払出装置3の基本動作を説明するフロー図である。まずは、基本動作について大まかに説明し、その後、硬貨の受入処理、硬貨の払出処理及び硬貨枚数計測手段25の校正処理について詳細に説明することとする。
まず、本発明の各実施形態の硬貨払出装置3は、電源を投入すると、初期の動作チェックを行い装置に異常がないか確認する(S101)。次に、カセット5が硬貨払出装置本体4に装着されたことがカセット着脱検知センサ22により確認されると(S102)、各コインチューブ6に収容された硬貨の重量(M)を測定して、その重量を硬貨1枚の標準重量(A)で割ることによりその硬貨収容枚数(X)を計測する(X=M/A、小数点以下は四捨五入)。そして、このように計測されたコインチューブ6の硬貨収容枚数(X)をメモリ23に記憶する。このとき、コインチューブ6の硬貨収容枚数(X)が0枚であった場合には、そのコインチューブ6の重量センサ14の出力電圧値(V)を取得し、その取得した出力電圧値(V)を新しい重量センサ14の0g時の出力電圧値(V0)とするように、メモリ23に記憶された重量センサ14の0g時の出力電圧値(V0)を更新する(S106)。その後、硬貨払出装置3は、待機状態となり、カセット取り外し、硬貨受入れ及び硬貨払出指令の有無を常時チェックする(S107、S108、S111)。この待機状態において、カセット5が硬貨払出装置本体4から取り外されたことをカセット着脱検知センサ22が検知すると初期状態に戻り(S107)、硬貨の受入れがあると硬貨の受入処理を行い(S109)、硬貨の払出し指令があると硬貨の払出処理(S112)を行う。また、オペレータが硬貨を直接コインチューブへ補充する場合があるので、一定時間が経過するごとにそのときのコインチューブ6の硬貨収容枚数を計測して、その計測値を新しい硬貨収容枚数(X)とするように、メモリに記憶されている硬貨収容枚数(X)の値を更新する(S114、S115)。硬貨の受入れ及び硬貨の払出しが行われた場合には、その都度、そのときに測定された硬貨1枚の重量(An)をメモリ23に順次記憶する。そして、硬貨の受入れ又は硬貨の払出しが所定回数なされるごとに、その所定回数の間に順次記憶された硬貨1枚の重量(An)の平均値(A’)を算出し、その算出した平均値(A’)を新しい硬貨1枚の標準重量(A)とするように、硬貨収容枚数(X)の算出に用いる硬貨1枚の標準重量(A)の値を更新する(S110、S113)。また、硬貨の払出しが行われた後において硬貨収容枚数(X)が0枚になった場合は、そのコインチューブ6の重量センサ14の出力電圧値(V)を取得し、その取得した出力値(V)を新しい重量センサ14の0g時の出力電圧値(V0)とするように、メモリ23に記憶されたその重量センサの0g時の出力電圧値(V0)を更新する。
本発明の第3及び第5の実施形態のように重量センサ14及び積載台15がともに硬貨払出装置本体4に設けられている場合には、電源投入後の初期状態においてカセット5が取り外されている場合には(S102)、一定時間が経過するごとに(S103)、コインチューブ6の重量センサ14の出力電圧値(V)を取得し、その取得した出力値(V)を新しい重量センサ14の0g時の出力電圧値(V0)とするように、メモリ23に記憶された重量センサ14の0g時の出力電圧値(V0)を更新する(S104、S105)。また、待機状態において、カセット5が硬貨払出装置本体4からの取り外されたことをカセット着脱検知センサ22が検知すると、コインチューブ6の重量センサ14の出力電圧値(V)を取得し、その取得した出力値(V)を新しい重量センサ14の0g時の出力電圧値(V0)とするように、メモリ23に記憶された重量センサ14の0g時の出力電圧値(V0)を更新する(S104、S105)。
以下、硬貨の受入処理、硬貨の払出処理及び硬貨枚数計測手段25校正処理について個別に説明する。
図26は、本発明の各実施形態の硬貨払出装置3の硬貨受入時の処理を説明するフロー図である。本発明の各実施形態の硬貨払出装置3は、通常、硬貨選別装置2とセットで自動販売機等の外部機器に搭載されることになる。そして、硬貨選別装置2が正貨として受け入れた硬貨は、各コインチューブ6へと金種別に収納される。このとき、硬貨選別装置2が正貨として受け入れた硬貨の枚数(X2)をカウントしてメモリ23に記憶する(S201)。その後、受け入れた硬貨の受け入れが終了した後にコインチューブ6に収容されている硬貨の重量(M2)を測定する(S202)。そして、コインチューブ6に収納された硬貨の枚数(X)を、受入後の重量(M2)から受入前の重量(M)を引いた値を硬貨1枚の標準重量(A)で割ることによって算出し(X=(M2−M)/A、小数点以下は四捨五入)、その算出された枚数と先に記憶された硬貨選別装置2が正貨として受け入れた硬貨の枚数(X2)とを比較する(S203)。
この比較は、硬貨受入前の硬貨収容枚数(X)に受入硬貨枚数(X2)を加えた値(X+X2)と、硬貨受入後のコインチューブ6に収容されている硬貨の重量(M2)を硬貨1枚の標準重量(A)で割った値(M2/A)との比較により行うこともできる。
算出された枚数とその記憶された枚数とが異なる場合には、受入異常を検出する(S205)。そして、算出された枚数とその記憶された枚数とが同じ場合には、硬貨の収容が正常になされたとして、硬貨受入後の硬貨収容枚数(X)を、硬貨受入後の重量(M2)を硬貨1枚の標準重量(A)で割ることによって算出し(X=M2/A、小数点以下は四捨五入)、その算出された値を新しい硬貨収容枚数(X)とするように、メモリ23に記憶された硬貨収容枚数(X)を更新する(S204)。
なお、この硬貨受入後の硬貨収容枚数の算出は、受入前の硬貨収容枚数(X)に受入硬貨枚数(X2)を加えることによって行うこともできる(X+X2)。
メモリ23に記憶された硬貨収容枚数の更新の後、更新後の硬貨収容枚数(X)とコインチューブ6が満杯となる枚数(X3)とを比較し(S206)、更新後の硬貨収容枚数(X)が、コインチューブ6が満杯となる枚数(X3)より小さい場合は、そのまま硬貨の受入処理を終了し、コインチューブ6が満杯となる枚数(X3)以上の場合は、コインチューブ6の満杯を主制御部へ通知した上で(S207)硬貨の受入処理を終了する。
図27は、本発明の各実施形態の硬貨払出装置3の硬貨払出時の処理を説明するフロー図である。硬貨払出装置3は、コインチューブ6に収容されている硬貨の重量(M)とコインチューブ6の硬貨収容枚数(X)とをメモリ23に記憶している。ここで、硬貨払出装置3が、硬貨払出装置3が搭載されている外部機器(例えば、自動販売機等の主制御)から硬貨払出の指令を受けると、指令された硬貨払出枚数(X1)をメモリ23に記憶して(S301)、硬貨払出しを実行する(S302)。硬貨払出しの完了後、払い出された硬貨が収容されていたコインチューブ6に収容されている硬貨の重量(M1)を測定する(S303)。そして、硬貨払出し前の重量(M)から硬貨払出後の重量(M1)を引いた値を硬貨1の標準重量(A)で割ることによって払い出された硬貨の枚数を算出する(X1’=(M−M1)/A、小数点以下は四捨五入)(S304)。この算出された払い出された硬貨の枚数(X1’)と指令された硬貨払出枚数(X1)とを比較することにより、硬貨が正しく払い出されたか否かを確認する(S305)。算出された払い出された硬貨の枚数(X1’)と指令された払出枚数(X1)が等しい場合には、硬貨の払出しが正常になされたものとして、メモリ23に記憶された硬貨収容枚数(X)を更新して(S306)、硬貨の払出処理を終了する。算出された払い出された硬貨の枚数(X1’)が指令された硬貨払出枚数(X1)より多かった場合には、硬貨払出装置3に異常が発生したとみなし、過払い金種と過払い枚数とをメモリ23へ記憶したうえで、硬貨の払出処理を終了する(S308)。また、算出された払い出された硬貨の枚数(X1’)が指令された硬貨払出枚数(X1)より少なかった場合には、硬貨払出装置3に異常が発生したとみなし、未払い金種と未払い枚数とをメモリ23に記憶したうえで、硬貨の払出処理を終了する(S309)。
このように、本発明の各実施形態の硬貨払出装置3によれば、実際にコインチューブ6に収容されている硬貨の枚数を正確に把握することができるため、硬貨受入時の硬貨振り分けの異常及び硬貨払出時の硬貨払出しの異常を検知することができる。
次に、上述した本発明の各実施形態の硬貨払出装置3における硬貨枚数計測手段25の校正の処理について説明する。
基本的に、本発明の各実施形態の硬貨払出装置3において、重量センサ14の0g時の出力電圧値(V0)の更新(0g校正)は、各コインチューブ6の硬貨収容枚数の計測の結果が0枚となったときに行われ、硬貨1枚の標準重量(A)の値の更新(質量校正)は、各コインチューブ6における硬貨の受入処理及び硬貨の払出処理が所定回数なされるごとに行われる。
図28は、本発明の各実施形態の硬貨払出装置3の重量センサ14の0g時の出力電圧値(V0)の自動更新の処理を説明するフロー図である。この重量センサ14の0g時の出力電圧値(V0)の自動更新の処理は、カセット5の硬貨払出装置本体4への装着が確認された直後に、又は待機状態において一定時間ごとに行われる。
硬貨払出装置3の電源投入後に、カセット5が硬貨払出装置本体4に装着されたことをカセット着脱検知センサ22が検知すると、硬貨払出装置3は、コインチューブ6に収容されている硬貨の重量(M)を計測し(S401)、その重量をメモリ23に記憶する(S402)。その後、収容されている硬貨の重量(M)を硬貨1枚の標準重量(A)で割ることにより、硬貨収容枚数を算出し(M/A)(S403)、その算出した値を新しい硬貨収容枚数(X)とするように、メモリ23に記憶されたコインチューブ6の硬貨収容枚数(X)を更新する(S404)。その後、その硬貨収容枚数(X)が0枚か否かを判断し(S405)、0枚でない場合にはそのまま処理を終了し、0枚であった場合には、そのときのコインチューブ6の重量センサ14の出力電圧値(V)を取得して(S406)、その取得した出力電圧値(V)を新しい重量センサ14の0g時の出力電圧値(V0)とするように、メモリ23に記憶された重量センサ14の0g時の出力電圧値(V0)を更新する(S407)。また、オペレータが硬貨を直接コインチューブ6に補充する場合があるので、待機状態において一定時間が経過するごとに、同様の処理が行われる(図25、S115)。
また、本発明の第3及び第5の実施形態のように重量センサ14及び積載台15がともに硬貨払出装置本体4に備えられている硬貨払出装置3の場合、カセット5が硬貨払出装置本体から取り外されたことをカセット着脱検知センサ22が検知すると、コインチューブ6に配置された重量センサ14の出力電圧値(V)を取得して、その取得した出力電圧値(V)を新しい重量センサ14の0g時の出力電圧値(V0)とするように、メモリ23に記憶された0g時の出力電圧値(V0)を更新するようにしてもよい。図29は、この場合の処理を説明するフロー図である。この場合においては、最初に重量センサの出力電圧値(V)を取得し(S501)、その後、その出力電圧値(V)が異常な数値になっていないかチェックするために、その出力電圧値(V)が閾値以下であるか否かの判断を行う(S502)。そして、その出力電圧値(V)が閾値以下であれば、その取得した出力電圧値(V)を新しい重量センサ14の0g時の出力電圧値(V0)とするように、メモリ23に記憶された0g時の出力電圧値(V0)を更新して(S504)、メモリに記憶された硬貨収容枚数をリセットしてその処理を終了し(S504)、その値が閾値より大きい場合には、主制御に異常を通知して処理を停止する(S505)。
図30は、硬貨の受入処理及び硬貨の払出処理の後に行われる硬貨枚数計測手段25の校正のための自動更新の処理を説明するフロー図である。
硬貨の受入処理の後の場合は、演算手段24において、硬貨受入後のコインチューブ6に収容された硬貨の重量(M2)から硬貨受入前のコインチューブ6に収容された硬貨の重量(M)を引いた値を受入硬貨の枚数(X2)で割ることにより、受け入れた硬貨1枚の重量(An)を算出する(S602)。硬貨の払出処理の後の場合は、まずは、コインチューブ6の硬貨収容枚数(X)が0枚か否かを判断し(S603)、0枚であった場合には、コインチューブ6の重量センサ14の出力電圧値(V)を取得し(S604)、その取得した出力電圧値(V)を新しい重量センサ14の0g時の出力電圧値(V0)とするように、メモリ23に記憶されたその重量センサ14の0g時の出力電圧値(V0)を更新する(S605)。そして、演算手段24において、硬貨払出前のコインチューブ6に収容された硬貨の重量(M)から硬貨払出後のコインチューブ6に収容された硬貨の重量(M1)を引いた値を払出硬貨の枚数(X1)で割ることにより、払い出した硬貨1枚の重量(An)を算出する(S606)。
次に、この算出された硬貨1枚の重量(An)が閾値以内か否かを判断する(S607)。これは、この算出された硬貨1枚の重量(An)が異常な数値になっていないかチェックするための処理である。そして、算出された硬貨1枚の重量(An)が閾値以内の場合は、この算出された硬貨1枚の重量(An)の値をメモリ23に順次記憶し(S608)、閾値から外れる場合には、その値をメモリに記憶せず処理を終了する。例えば、500円硬貨の場合、7gが基準重量の時、算出された硬貨1枚の重量(An)が6.9g以上7.1g以下であれば正常な数値とし、それから外れると異常な数値とすることが考えられる。
このように、硬貨受入処理又は硬貨払出処理がなされる都度、そこで算出された硬貨1枚の重量(An)がメモリ23に順次記憶される。そして、硬貨受入処理又は硬貨払出処理及びそれに続く硬貨1枚の重量のメモリ23への記憶が所定の回数、例えば10回、なされるごとに(S609)、演算手段24において、その所定の回数における順次記憶された硬貨1枚の重量(An)の平均値(A’)を求める(S610)。その後、この平均値(A’)を新しい硬貨1枚の標準重量とするように、メモリ23に記憶された硬貨1枚の標準重量(A)を更新する(S611)。
ここで、硬貨受入又は硬貨払出処理後に算出された硬貨1枚の重量(An)のメモリ23への記憶が所定の回数なされるごとにその所定の回数における重量の平均値(A’)を新しい硬貨1枚の標準重量(A)とする更新を行うのではなく、それよりも過去の記憶を含めた平均値を求めて、その平均値を新しい硬貨1枚の標準重量(A)とする更新を行うようにしてもよい。例えば、硬貨受入処理後又は硬貨払出処理後に算出された硬貨1枚の重量(An)のメモリ23への記憶が10回なされるごとに、過去30回分のデータを利用して平均値を求めて、それを新しい硬貨1枚の標準重量(A)とする更新を行うようにしてもよい。このようにすると、硬貨1枚の標準重量(A)の算出に利用するデータ量が増えるのでより測定精度が高まる。
また、硬貨受入処理後又は硬貨払出処理後に算出された硬貨1枚の重量(An)のメモリ23への順次記憶がなされるごとに、過去何回かの重量の平均値を新しい硬貨1枚の標準重量(A)とする更新を行うようにしてもよい。このようにすると、硬貨1枚の標準重量(A)の更新頻度が増えるので測定精度がより高まる。
また、置き換える硬貨1枚の標準重量(A)を受入硬貨の枚数や払出硬貨の枚数の累積値から算出するようにしてもよい。例えば、1回目が受入硬貨5枚で1枚当たりの重量6.9g、2回目が払出硬貨2枚で1枚当たりの重量が6.8g、3回目が受入硬貨1枚で1枚当たりの重量が7.0g、4回目が・・・・となる場合、硬貨1枚の標準重量(A)はAn=(5×6.9+2×6.8+1×7.0+・・・)/(5+2+1+・・・)に更新される。このようにすると、算出式が複雑となり、またメモリ23の記憶情報も多くなるが、より高精度な補正が可能となる。
また、その他、硬貨受入処理後又は硬貨払出処理後に算出されて順次記憶された硬貨1枚の重量(An)から適宜の方法で算出される値を新しい硬貨1枚の標準重量(A)とする更新を行うようにしてもよい。
さらに、上述の構成に加えて、コインチューブ6の硬貨収容枚数を手入力するための入力手段を備えるようにして、硬貨の収容されたコインチューブ6を含むカセット5を硬貨払出装置本体4に装着するときに、コインチューブ6に収容された硬貨の枚数を入力手段から入力すると、コインチューブ6に収容された硬貨の重量を手入力された硬貨の枚数で割ることにより硬貨1枚の重量を算出して、このように算出された重量を新しい硬貨1枚の標準重量(A)とするように硬貨1枚の標準重量(A)の値を更新できるようにしてもよい。このようにすると、必要なときに手動で硬貨1枚の標準重量(A)の校正ができるようになる。また、この処理時に、硬貨受入処理後又は硬貨払出処理後に算出された硬貨1枚の重量が、一定の範囲から外れる場合には、異常を通知するようにすることができる。このようにすると、作業者が誤った枚数の硬貨を入れてしまった場合や誤った数値を入力してしまった場合に、すぐに気がつくことができる。
このように、本発明の各実施形態の硬貨払出装置3によれば硬貨枚数計測手段25の校正を自動で行うことができるので、長期にわたって硬貨枚数の計測精度の低下を抑えることができる。
これまで述べた本発明の各実施形態においては、硬貨受入処理、硬貨払出処理及び硬貨枚数計測手段25の校正のために硬貨1枚の標準重量をメモリ23に記憶しているが、それにかえて、硬貨1枚の標準重量(A)に対応する重量センサ14の電圧値(G×A)をメモリ23に記憶するようにしてもよい。この場合には、重量センサ14の出力電圧値(V)から0g時の出力電圧値(V0)を引いた値を硬貨1枚の標準重量(A)に対応する重量センサの電圧値(G×A)で割ることにより硬貨収容枚数を算出できる((V−V0)/(G×A))。また、前述のように、硬貨1枚の標準重量(A)に対応する重量センサの電圧値(G×A)を随時更新することにより質量校正に相当する処理を行うこともできる。このようにすることによって、硬貨1枚の標準重量(A)の値を用いるよりも演算の回数を一段階少なくできる。
また、コインチューブの硬貨収容枚数(X)を算出するために、硬貨1枚の標準重量(A)や硬貨1枚の標準重量(A)に対応する重量センサ14の電圧値(G×A)の他、適宜の定数を用いることができる。この場合の質量校正に相当する処理は、受入硬貨の枚数又は払出硬貨の枚数と重量センサ14の出力値とから算出される一定の数値をメモリ23に順次記憶し、硬貨の受入処理又は硬貨の払出処理及びそれに続くこの一定の数値のメモリ23への記憶が所定回数なされる度に、順次記憶された一定の数値から算出される数値を新しい定数とするように、硬貨の枚数を算出するために用いる前記定数を更新することにより行うことになる。
これまで述べた本発明の各実施形態においては、重量センサ14の出力が電圧値となるものであったが、重量センサ14は出力が電圧値のものに限定されず、出力が電流値のものであってもよい。また、メモリ23に記憶する値として電圧値や重量をあげているが、これらの値は、コンピュータにおける処理に適するように変換された適宜の数値であってもよい。また、重量センサ14は、1回の硬貨枚数の測定において複数回その出力値を測定し、その中間の複数の値の平均値を求め、この平均値を重量センサ14の出力値とするようにしてもよい。たとえば、5回測定して、中間の3つの値の平均値を算出するようにしてもよい。これにより、より高精度な計測が可能となる。