以下、本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお、以下に説明する本実施形態は、特許請求の範囲に記載された本発明の内容を不当に限定するものではなく、本実施形態で説明される構成の全てが本発明の解決手段として必須であるとは限らない。
1.第1の実施形態
まず、本発明のレンズユニットの第1の実施形態の構成について説明する。図1(A)、図1(B)、図1(C)に本発明の第1の実施形態のレンズユニットの構成例を示す。図1(A)は、本実施形態のレンズユニットの外観斜視図であり、図1(B)は、本実施形態のレンズユニットの平面図であり、図1(C)は、図1(B)のA−A断面図である。
本実施形態のレンズユニット100では、図1(C)に示すように、第1のレンズ102を含む第1の光学素子104と、第2のレンズ106を含む第2の光学素子108とが、スペーサ112を介して、光軸方向D1、D3に積層されている。第1の光学素子104は、図1(B)に示すように、第1のレンズ102と、第1のレンズ102の外周に沿って略円形に形成された縁枠部101とを含む。第2の光学素子108は、第1の光学素子104と略同一の形状であり、第2のレンズ106と、第2のレンズ106の外周に沿って略円形に形成された縁枠部105とを含む。本実施形態では、第1の光学素子104は、基板に複数の第1のレンズ102が形成されたレンズ基板から、第1のレンズ102を囲む周縁部のうち、第1のレンズ102の外周に沿った縁枠部101を残して、残りの周縁部を切除することによって形成される。第2の光学素子108は、第1の光学素子104と同様にして、基板に複数の第2のレンズ106が形成されたレンズ基板から、第2のレンズ106を囲む周縁部のうち、第2のレンズ106の外周に沿った縁枠部105を残して、残りの周縁部を切除することによって形成される。なお、本実施形態のレンズユニットに含まれる光学素子を製造する際に、レンズ基板に設けられるレンズの周縁部と縁枠部との関係は、後述で図7を参照しながら詳細に説明する。
また、本実施形態では、図1(C)に示すように、光学素子104、108のレンズ102、106の縁枠部101、105には、光軸方向D1、D3に厚みを付加するスペーサ110、112、114が設けられている。このように光学素子104、108にスペーサ110、112、114を積層することによって、レンズユニット100の光軸方向D1、D3の厚みが確保される。このため、レンズユニット100が取り付けられるカメラモジュールの小型化に伴って光学素子104、108が薄くなっても、レンズユニット100に光軸方向D1、D3の厚みを持たせることができる。このようにレンズユニット100が光軸方向D1、D3に厚みを有することによって、レンズユニット100の設置箇所におけるレンズユニット100を支持する部分を、より大きく確保できるようになる。
さらに、本実施形態では、図1(A)、図1(C)に示すように、レンズユニット100の外周面116にねじ溝118が形成されている。ねじ溝118を形成することによって、レンズユニット100をレンズバレル122a(図3(B)参照)や、レンズホルダ(レンズユニット100又はレンズバレル122aを取り付ける相手部品)や、オートフォーカス用のアクチュエーター122(図2(B)参照)等に、直接取り付けることが可能になる。また、このようなレンズバレル122a等に直接取り付ける際に、レンズユニット100を設置箇所に直接ねじ込むように取り付けることによって、その焦点位置の調整も同時に実行できるようになり、レンズユニット100の用途の幅が広がる。
なお、図1(C)に示す例では、レンズユニット100は光軸方向D1、D3に2つの光学素子104、108を含む構成であるが、レンズが形成される光学素子の数は、2つに限定されず、例えば1つの光学素子を含むレンズユニットにも、3つ以上の光学素子を含むレンズユニットにも適用可能である。また、レンズ102、106の縁枠部101、105に積層されるスペーサの設置個数や設置箇所も図1(C)に示す構成例に限定されない。さらに、本実施形態では、レンズユニット100の外周面116にねじ溝118が形成されているが、ネジ溝118を形成しない場合でも、ネジ溝を所有するレンズバレル122aや、レンズホルダや、アクチュエーター122に直接レンズユニット100のかたまりを落とし込むようにして使用することも可能である。
図2(A)、図2(B)に本発明の第1の実施形態のレンズユニットを含むカメラモジュールの第1の構成例を示す。図2(A)は、本実施形態のレンズユニットを含むカメラモジュールの第1の構成例の平面図であり、図2(B)は、図2(A)のB−B断面図である。
第1の構成例のカメラモジュール130は、図2(B)に示すように、レンズユニット100、アクチュエーター122、撮像素子126、及びIRカットフィルタ128を含む。本構成例では、レンズユニット100がアクチュエーター122によって光軸方向D1、D3に移動可能であり、レンズモジュール120にて結像された光を撮像素子126で電気信号に変換する。
撮像素子126は、例えばCCDであり、受光した光に応じた信号を出力する。撮像素子126は、図2(B)に示すように、回路基板124に設けられ、撮像素子126とレンズユニット100との間には、赤外線をカットするためのIRカットフィルタ128が設けられている。
本構成例では、レンズモジュール120に含まれるレンズユニット100は、第1のレンズ102を含む第1の光学素子104と、第2のレンズ106を含む第2の光学素子108との間にスペーサ112が光軸方向D1、D3に設けられている。すなわち、レンズ102、106の縁枠部101、105が光軸方向D1、D3に厚くなるように、スペーサ112が設けられている。また、本構成例では、第1の光学素子104のD1方向側に、スペーサ110が積層され、第2の光学素子108のD3方向側に、スペーサ114が積層されて、レンズユニット100の光軸方向D1,D3の厚みを確保している。
このように、光学素子104、108にスペーサ110、112、114を光軸方向D1、D3に積層することによって、カメラモジュール130の小型化に伴って光学素子104、108が薄くなっても、レンズユニット100に光軸方向D1、D3の厚みを持たせることができる。このため、アクチュエーター122がレンズユニット100を支持する部分を、より大きく確保できるようになる。これにより、レンズユニット100をがたつかせることなく、また、レンズユニット100に含まれるレンズ102、106をこじらせることなく、より安定した状態でアクチュエーター122によりレンズユニット100を支持できるようになる。このため、レンズユニット100がアクチュエーター122によって光軸方向D1、D3に移動する際に、レンズユニット100が光軸方向に対してぶれることが抑制されるので、光軸方向D1、D3に対する偏芯の発生を防止できる。
また、本構成例では、前述したように、レンズユニット100の外周面116にねじ溝118が形成されているので、単焦点の場合にアクチュエーター122にレンズユニット100を直接ねじ込んで取り付ける際に、同時に焦点調整を実施することができる。このため、従来のカメラモジュールのように、レンズを保持するレンズバレルが不要となり、カメラモジュールの部品数の削減や、レンズユニットを含むカメラモジュールの小型化が実現されるようになる。
図3(A)、図3(B)に本発明の第1の実施形態のレンズユニットを含むカメラモジュールの第2の構成例を示す。図3(A)は、本構成例のカメラモジュールの平面図であり、図3(B)は、図3(A)のC−C断面図である。
第2の構成例のカメラモジュール132は、図3(B)に示すように、第1のレンズユニット100a、第2のレンズユニット100b、レンズバレル122a、オートフォーカス用アクチュエーター122b、撮像素子126、及びIRカットフィルタ128を含む。本構成例では、カメラモジュール132は、本体となるベース枠123に嵌合したレンズバレル122aに第1のレンズユニット100aがねじ込まれて設置された第1のレンズモジュール120aと、オートフォーカス用アクチュエーター122bに第2のレンズユニット100bがねじ込まれて設置された第2のレンズモジュール120bを含む。すなわち、レンズバレル122aの光軸方向D1、D3の移動により、第1のレンズユニット100aの焦点調整が可能になり、オートフォーカス用アクチュエーター122bを介して第2のレンズユニット100bを光軸方向D1、D3に移動可能な構成となっている。そして、第2のレンズモジュール120bにて結像された光を、撮像素子126で電気信号に変換する。
本構成例では、第1のレンズユニット100aには、先端側レンズ102aを含む先端側光学素子104aと、後端側レンズ106aを含む後端側光学素子108aとの間に、スペーサ112aが光軸方向D1、D3に設けられている。すなわち、光学素子104a、108aに含まれるレンズ102a、106aの縁枠部101a、105aの光軸方向D1、D3での厚さが厚くなるように、スペーサ112aが光軸方向D1、D3に積層されている。また、本構成例では、第1の光学素子104aのD1方向側には、スペーサ110aが積層され、第2の光学素子108のD3方向側には、スペーサ114aが積層されており、第1のレンズユニット100aの光軸方向D1,D3の厚みを確保している。そして、第1のレンズユニット100aは、レンズバレル122aに対して外周面116aに形成されたねじ溝118aを介して光軸方向D1、D3に移動可能に嵌合されている。すなわち、第1のレンズユニット100aの外周面116aにねじ溝118aが形成されているので、レンズバレル122aにひと固まりとなっているレンズユニット100aを落とし込むだけで第1のレンズモジュール120aが形成されるので、組立てが容易となる。
第2のレンズユニット100bには、第1のレンズユニット100aと同様に、先端側レンズ102bを含む先端側光学素子104bと後端側レンズ106bを含む後端側光学素子108bとの間に、スペーサ112bが光軸方向D1、D3に設けられている。すなわち、光学素子104b、108bに含まれるレンズ102b、106bの縁枠部101b、105bの光軸方向D1、D3での厚さが厚くなるように、スペーサ112bが光軸方向D1、D3に積層されている。また、本構成例では、第1の光学素子104bのD1方向側には、スペーサ110bが積層され、第2の光学素子108のD3方向側には、スペーサ114bが積層されており、第2のレンズユニット100bの光軸方向D1,D3の厚みを確保している。そして、第2のレンズユニット100bは、オートフォーカス用アクチュエーター122bに対して外周面116bに形成されたねじ溝118bを介して嵌合されている。すなわち、第2のレンズユニット100bの外周面116bにねじ溝118bが形成されているので、オートフォーカス用アクチュエーター122bにひと固まりとなっているレンズユニット100bを落とし込むだけで第2のレンズモジュール120bが形成されるので、組立てが容易となる。
また、本構成例では、前述したように、光学素子104a、108a、104b、108bにスペーサ110a、112a、114a、110b、112b、114bを光軸方向D1、D3に積層している。このため、カメラモジュール132の小型化に伴って光学素子104a、108a、104b、108bが薄くなっても、レンズユニット100a、100bに光軸方向D1、D3の厚みを持たせることができる。従って、レンズユニット100a、100bを支持するレンズバレル122aやオートフォーカス用アクチュエーター122bが支持する部分を、より大きく確保できるようになる。これにより、レンズユニット100a、100bを光軸方向D1、D3に移動させる際にがたつかせることなく、またレンズユニット100a、100bに含まれるレンズ102a、106a、102b、106bをこじらせることなく、より安定した状態でレンズユニット100a、100bを支持できるようになる。このため、レンズユニット100a、100bがレンズバレル122aやアクチュエーター122bによって光軸方向D1、D3に移動する際に、レンズユニット100a、100bが光軸方向D1、D3に対してぶれることが抑制されるので、光軸方向D1、D3に対する偏芯の発生を防止できる。
なお、上述したように、第1及び第2の構成例のカメラモジュールについて説明したが、第1の実施形態のレンズユニットが適用されるカメラモジュールは、これらの構成例のカメラモジュールに限定されない。
例えば、単焦点のカメラモジュールに適用した場合、本体となるベース枠に本実施形態のレンズユニットを直接ねじ込み、そのねじ溝に沿った移動により焦点調整を実施可能な構成としてもよい。また、本実施形態のレンズユニットを複数組み合わせてオートフォーカス用アクチュエーター等を含むズームユニットを構成することも可能である。
このように、本実施形態では、略円筒形状のレンズユニットの外周面に直接ねじ溝を形成することによって、所望のカメラモジュールの設置部位にレンズユニットを直接ねじ込むように取り付けることができる。このため、レンズユニットを取り付ける際に、焦点位置調整も同時に行うことができ、レンズユニットの用途の幅が広がる。また、本実施形態によって形成された数種類のレンズユニットを製造すれば、レンズユニットの構成の組み合わせバリエーションにより、単焦点タイプだけでなく、ズームユニットを構成することが可能となる。
図4は、第1の実施形態に係るレンズユニットの製造方法を示すフローチャートである。本実施形態に係るレンズユニットの製造方法は、主にウェハレベルのカメラモジュールに含まれるレンズモジュールの製造に使用され、図4に示すように、レンズ基板形成工程S11、積層工程S12、周縁部切除工程S13、ねじ部形成工程S14、及び切断工程S15を含む。
図5(A)は、レンズ基板形成工程S11の概略的な説明図であり、図5(B)は、図5(A)のD−D断面図である。レンズ基板形成工程S11では、図5(A)、(B)に示すように、レンズ用硝材、例えば、ガラスや透明な樹脂、あるいはその複合材等からなる光学ウェハである基板150に複数(例えば数千個)のレンズ152を形成する。本実施形態では、レンズ基板150は、例えば半導体製造で一般的なリソグラフィ技術、エッチング技術等を使用して形成する。
図6(A)は、積層工程S12の概略的な説明図であり、図6(B)は、図6(A)のE−E断面図である。積層工程S12では、図6(A)、図6(B)に示すように、複数のレンズ基板150、160を光軸方向D1、D3に積層する。本実施形態では、レンズ基板150、160とスペーサ170、180、190(切断前)とを積層している。このとき、レンズ基板150、160とスペーサ170、180、190との当接する部位に接着材等を塗布して、レンズ基板150、160と切断前のスペーサ170、180、190を接着固定する接着工程を含んでもよい。このようにして、複数のレンズユニットを同時に形成するためのレンズアレイ140が形成される。
スペーサ170、180、190は、シリコンウェハ等の半導体基板やエポキシ系の樹脂等で形成されており、図6(A)、図6(B)に示すように、レンズ基板150、160と略同一の大きさであり、レンズ基板150、160に所定の厚さを有し、かつレンズ152、162と当接する部分に開口部172、182、192が形成されている。このように本実施形態の積層工程S12では、図6(B)に示すように、レンズ基板150、160とスペーサ170、180、190とを積層することによって、レンズ152、162の周縁部153、163に厚みを付加する厚み付加工程を含む。なお、ここで説明する周縁部153、163とは、レンズ基板150、160のうち、レンズ152、162の周縁の部分の全体を指すものとする。
このように本実施形態では、レンズユニットの光軸方向D1、D3に厚みを持たせるために、図6(A)に示すように、積層工程S12で、レンズ基板150、160と、切断前のスペーサ170、180、190とを積層させる。なお、積層工程S12で積層されるスペーサの枚数は、光軸方向D1、D3に厚さが確保されていれば何枚でもよく、例えば、スペーサを設けなくても光軸方向D1、D3に厚さが確保されていれば、0枚でもよい。
積層工程S12が完了すると、周縁部切除工程S13が開始される。ここで、周縁部切除工程S13の具体例について、図面を用いながら説明する。図7は、周縁部切除工程後のレンズ基板150、160の状態を示す説明図である。なお、図7では、周縁部切除工程S13の具体例を説明する便宜上、レンズアレイ140に含まれるレンズ基板150、160及びスペーサ170、180、190のうち、レンズ基板150を取り出して説明する。また、図7及び図7を用いた説明では、レンズ基板160の構成要素でレンズ基板150の構成要素に対応する部分は、括弧内にその符号を記載する。
周縁部切除工程S13では、図7に示すように、各レンズ152(162)の縁枠部151(161)を残すように、図7の破線で示す周縁部153(163)を、エッチング等により切除する。このようにして、レンズ152(162)の縁枠部151(161)を円形状に形成する。このとき、エッチングで周縁部153(163)を除去したレンズ152(162)を含む光学素子がエッチング液中に散らばらないようにするために、各レンズ152(162)の縁枠部151(161)を互いに接続する部分を架橋部155(165)として残す。なお、ここで説明する縁枠部151(161)とは、レンズ基板150(160)に形成された各レンズ152(162)の周縁部153(163)のうち、少なくとも各レンズ152(162)の縁枠に沿って残された部分である。
図8(A)は、周縁部切除工程S13の概略的な説明図であり、図8(B)は、図8(A)のF−F断面図である。周縁部切除工程S13では、積層工程S12で形成されたレンズアレイ140のうち、レンズ基板150、160は、縁枠部151、161を残すように、周縁部153、163が切除される。同様にして、スペーサ170、180、190は、図8(A)、図8(B)に示すように、開口部172、182、192の縁枠部を残すように、その周縁部が切除される。
このとき、周縁部切除工程S13で縁枠部151、161及びスペーサ170、180、190の外周を円形状に形成する際に、図7に示すように、各レンズ152、162の縁枠部151、161を互いに接続する部分を架橋部155、165として残す。同様にして、図8(A)に示すように、周縁部が切除されたスペーサ170、180、190を互いに接続する部分を、架橋部175、185、195として残す。すなわち、周縁部切除工程S13では、レンズ基板150、160の縁枠部151、161、当該縁枠部151、161に積層されるスペーサ170、180、190、及び架橋部155、165、175、185、195を残すように、レンズ基板150、160及びスペーサ170、180、190を切除する。
このように、周縁部切除工程S13でエッチングする際に、隣り合った光学系との架橋部155、165、175、185、195を残すことによって、エッチングで分離される前の互いに隣り合うレンズユニットがつながった状態となる。このため、エッチングで分離された光学素子がエッチング液中に散らばることを防止できる。なお、周縁部切除工程S13では、各レンズ152、162の周縁部153、163の切除に、エッチング工法が使用されているが、エッチング工法の代わりに、レーザーカット等でのカット工法も可能である。しかしながら、レーザーカット等でのカット工法では、カット処理後のカット屑等の後処理が問題となるため、エッチング工法での周縁部切除が好ましい。
図9(A)は、ねじ部形成工程S14の概略的な説明図であり、図9(B)は、図9(A)のG−G断面図である。ねじ部形成工程S14では、図9(A)、図9(B)に示すように、レンズアレイに形成された各レンズユニットの外周面116にエッチング等によりねじ溝118を形成する。すなわち、各レンズ152、162がつながった状態で個片化する前に、エッチング工法により、略円筒形状のレンズユニット100の側面部となる外周面116にねじ溝118を形成する。なお、エッチング等によるねじ溝118の形成は、レンズ基板150、160を積層する前でも、積層した後でもよい。また、本実施形態では、レンズユニット100の外周面116にねじ溝118が形成されているが、外周面116にネジ溝118を形成しない場合は、ねじ部形成工程S14を省略して次の切断工程S15を実行してもよい。
ねじ部形成工程S14が完了すると、レンズユニットごとにダイシングして別個に切り離す(切断工程S15)。本実施形態では、周縁部切除工程S14では、図8(A)に示すように、縁枠部151、161を接続する架橋部155、165、及び周縁部切除後のスペーサ170、180、190を接続する架橋部175、185、195を残すことによって、ダイシング前の互いに隣り合うレンズユニットがつながっている。このため、切断工程S15では、当該架橋部155、165、175、185、195を切断することによって、各レンズ152、162を含むレンズユニットの各々に切り分ける。このようにして、本実施形態では、小径化したレンズユニットを効率よく大量生産できるようになる。
このように、本実施形態では、レンズが形成されたレンズ基板を積層した後に、各層を接着固定して積層したレンズアレイを固定した状態でエッチング工法を用いて光学素子の外周を円形状にしてから、個別化するためにダイシングして各レンズユニットを形成する。このため、本実施形態のレンズユニットの製造方法で製造されたレンズユニットが略円筒形状となり、レンズユニットに含まれるレンズの縁枠部を略円形にすることができる。
図10に、本実施形態のレンズユニットの比較例となるレンズユニットの外観斜視図を示し、図11(A)、図11(B)に、本実施形態のレンズユニットと比較例レンズユニットの概略的な説明図を示す。通常のWLP(Wafer Level Package)では、積層したレンズ基板をダイシングカットするため、図10に示すように、レンズユニット100eは、通常では、そのレンズのレンズ枠(縁枠部)193が四角形状となる。レンズ162の形状は、丸型形状のため、カットされた四角形状のレンズ枠193の四隅が無駄なスペースとなってしまう。例えば、カメラモジュールが単焦点の場合、一般的な焦点調整をねじ嵌合で行う場合が多いが、その際にレンズユニットは、ねじ嵌合をしてねじ調整をする際に、回転体である必要がある。このため、レンズ枠193の四隅のスペース分の一般的なねじ調整を想定すると、図11(A)に示すように、四角形状のレンズ枠193の対角線の長さRaを回転体の半径とすることになり、レンズ枠193の回転に要する面積が大きくなってしまう。同様に、ズーム系光学系を考えた場合、直進系の鏡枠は、回転運動をカムに伝達することにより、沈胴状態から繰り出して撮影状態にすることが可能となる。ズーム系光学系も単焦点と同様にレンズユニットが回転体である必要があり、四隅のスペース分一般的なカム機構を想定するとレンズ枠が大きくなってしまう。
これに対して、本実施形態のレンズユニットの製造方法によって製造されるレンズユニットは、前述したように略円筒形状となるので、そのレンズ枠(縁枠部)161が略円形となる。このため、図11(B)に示すように、一般的なねじ調整を想定した場合に、ねじ調整する際の回転体の半径をRbとすると、当該回転体の半径Rbがレンズ枠161の半径と同一となり、同じレンズの大きさに対して、四角形状のレンズ枠193の対角線の長さRaよりも小さくすることができる。従って、光学素子に形成されるレンズのサイズが同一の場合でも、レンズユニットの口径を縮小することができる。すなわち、本実施形態のレンズユニットの製造方法で製造するレンズユニットを円筒形状にすることによって、同じ大きさのレンズとした場合に、通常のWLPで形成されるレンズ枠が方形状とする場合よりも、レンズ枠を小さくできる。このように、通常のWLPで製造された四角形状のレンズ枠のレンズユニットに対して、本実施形態のレンズユニットの製造方法によって製造されるレンズユニットは、前述したように略円筒形状となるので、特に回転するワクを多数有する直進系鏡枠で無駄なスペースの発生を抑制するので、有効である。
なお、本実施形態のレンズユニットのレンズ枠(縁枠部)は円形状に限定されず、レンズ枠(縁枠部)の少なくとも一部が円弧状となっていればよい。以下、本実施形態のレンズユニットの変形例を、図面を用いて説明する。図12(A)は本実施形態のレンズユニットの変形例の外観斜視図、図12(B)は同変形例のレンズユニットの平面図、図12(C)は図12(B)のH−H断面図である。図12(A)、図12(B)に示すような略小判型形状のレンズ枠(縁枠部)103cのレンズユニット100cの製造にもエッチング工法を用いれば容易に対応できる。このように、レンズユニットのレンズ枠の形状を略小判型形状とすることによって、例えば、レンズユニット100cを折り曲げ系のズームユニットに使用した場合、図12(B)に示すように、ユニット幅Wを抑制するのに有効である。
以上説明したように、本実施形態のレンズユニットの製造方法では、レンズが形成された光学素子に切り分ける前のレンズ基板を光軸方向に積層させて接着固定してレンズバレルを形成してから、ダイシングにより各レンズユニットに切り分けられる。このため、本実施形態のレンズユニットの製法で製造されたレンズユニットを使用して、例えば、単焦点レンズユニットに使用した場合に、積層レンズ群の各レンズ単体の偏心精度が高いため、群内の偏心調整が不要となり、組立て工数も削減できる。
また、レンズを積層した後、各層を接着固定し、積層したレンズアレイを固定した状態で、エッチング工法を用いてレンズ外形を円形状にして、その外周面にねじ溝を形成するので、例えば、単焦点の場合、ベース枠にレンズ群を直接ねじ込み、焦点調整をそのねじ込み動作により実施することができる。また、オートフォーカス機能を有するカメラモジュールに適用する場合にも、例えばVCMのキャリアに直接レンズ群をねじ込むことができ、ねじ形状を利用することで、焦点位置調整も実施することができる。すなわち、本実施形態のレンズユニットをカメラモジュールの所望の設置箇所に直接ねじ込むことによって設置できるので、レンズユニットの着脱が容易となり、カメラモジュールの組立てが容易となる。
さらに、本実施形態のレンズユニットを使用する場合の利点としては、通常のカメラモジュールでは、レンズを保持するレンズバレル等が必要であるが、上記の場合はレンズ群に直接ねじを形成するため、レンズバレル等が不要となる。また、上記製法によって、形成された数種類のレンズ群を製作すれば、レンズ群の構成のバリエーションの組み合わせにより、単焦点タイプだけでなく、ズームユニットを構成することが可能である。
2.第2の実施形態
図13(A)、図13(B)、図13(C)に本発明の第2の実施形態のレンズユニットの構成例を示す。図13(A)は、本実施形態のレンズユニットの外観斜視図であり、図13(B)は、本実施形態のレンズユニットの平面図であり、図13(C)は、図13(B)のI−I断面図である。
レンズユニット200は、図13(C)に示すように、第1のレンズ202を含む第1の光学素子204と、第2のレンズ206を含む第2の光学素子208とが、光軸方向D1、D3に積層されている。本実施形態では、光学素子204、208は、基板に複数のレンズが形成されたレンズ基板から、レンズ202の周縁部の一部を残して、互いに積層されたレンズ202及び206を切り分けることで形成されている。これをレンズ202側から見た図13(B)で説明すると、レンズ202を囲む周縁部のうち、レンズ202の外周に沿った部分を縁枠部203として残して、残りのレンズ基板の周縁部をリソグラフィ技術やエッチング技術、又はナノインプリント技術等により切除してレンズ202と略同一の形状となる略円形の縁枠部203とする。
また、本実施形態では、図13(C)に示すように、光学素子204、208のレンズ202、206の縁枠部203、207には、光軸方向D1、D3に厚みを付加するための凸部205、209が形成されている。このように光学素子204、208に凸部205、209を形成することによって、レンズユニット200の光軸方向D1、D3の厚みが確保されるようになる。このため、レンズユニット200が取り付けられるカメラモジュールの小型化に伴って光学素子204、208が薄くなっても、レンズユニット200を凸部205、207によって光軸方向D1、D3に厚みを持たせることができる。このようにレンズユニット200が光軸方向D1、D3に厚みを有することによって、レンズユニット200の設置箇所におけるレンズユニット200を支持する部分を、より大きく確保できるようになる。
さらに、本実施形態では、図13(A)、図13(C)に示すように、レンズユニット200の外周面216にねじ溝218が形成されている。このように、レンズユニット200の外周面216にねじ溝218を形成することによって、レンズユニット200をレンズバレルやオートフォーカス用のアクチュエーター等に直接取り付けることが可能になる。また、このようなレンズバレル等に直接設置する際に、レンズユニット200を直接ねじ込むように取り付けることによって、その焦点位置調整も同時に実行できるようになり、レンズユニット200の用途の幅が広がる。
なお、図13(C)に示す例では、レンズユニット200は光軸方向D1、D3に2つの光学素子202、206を含む構成であるが、レンズユニットに含まれる光学素子の数は、2つに限定されず、例えば1つの光学素子を含むレンズユニットにも、3つ以上の光学素子を含むレンズユニットにも適用可能である。また、本実施形態では、レンズユニット200の外周面216にねじ溝218が形成されているが、ネジ溝218を形成しない場合でも、ネジ溝があるレンズバレル等に直接レンズユニット200のかたまりを落とし込むようにして使用することも可能である。
図14は、本実施形態に係るレンズユニットの製造方法を示すフローチャートである。本実施形態では、レンズユニットの製造方法は、主にウェハレベルのカメラモジュールに含まれるレンズモジュールの製造に使用され、図13に示すように、レンズ基板形成工程S21、積層工程S22、周縁部切除工程S23、ねじ部形成工程S24、及び切断工程S25を含む。
レンズ基板形成工程S21では、レンズ用硝材、例えば、ガラスや透明な樹脂、あるいはその複合材等からなる光学ウェハである基板に複数(例えば数千個)のレンズを形成する。本実施形態では、レンズ基板は、例えば半導体製造で一般的なリソグラフィ技術、エッチング技術等を使用して形成する。本実施形態では、レンズ基板形成工程S21にレンズ基板に形成された各レンズの周縁部の光軸方向D1、D3での厚さが厚くなるように、周縁部に厚みを付加する厚み形成工程を含む。具体的には、レンズ基板の各レンズの周縁部のうち、レンズ202、206の外周に沿った縁枠部203、207には、光軸方向D1、D3に厚みを付加するための凸部が形成されている(図13(C)の符号205、209)。すなわち、各レンズの縁枠部203、207を光軸方向D1、D3に厚くするための厚みを付加するために、第1の実施形態におけるスペーサを設ける代わりに、レンズの縁枠部203、207に凸部を光学素子204、208に切り分ける前のレンズ基板と一体に形成する。
次に、積層工程S22で複数のレンズ基板を光軸方向に積層する。本実施形態では、図13(C)に示すように、光学素子204、208を切り分ける前のレンズ基板のレンズ202、206の縁枠部203、207に光軸方向D1,D3に厚みを持たせるための凸部205、209がレンズ基板形成工程S21で事前に形成されている。このため、当該凸部205、209が形成されたレンズ基板を積層することによって、レンズユニットの光軸方向D1、D3の厚さを確保できる。本実施形態では、積層する際に互いに当接する凸部205、209間に接着材等を塗布して、接着固定する接着工程を含んでもよい。このようにして、複数のレンズが形成されたレンズ基板を光軸方向D1、D3に接着しながら積層することによって、複数のレンズユニットが同時に形成するためのレンズアレイが形成される。
その後は、第1の実施形態と同様に、周縁部切除工程S23、ねじ部形成工程S24、及び切断工程S25が実行され、レンズ基板の積層後に各層を接着固定して形成したレンズアレイを固定した状態で、エッチング等によりレンズ外径を円形状にしてから、ねじ溝を形成して、ダイシングして各レンズユニットに切り分ける。なお、本実施形態では、レンズユニット200の外周面216にねじ溝218が形成されているが、外周面216にネジ溝218を形成しない場合は、ねじ部形成工程S24を省略して次の切断工程S25を実行してもよい。
本実施形態では、レンズユニットを構成する光学素子間にスペーサを設けず、第1の実施形態に比べて部品点数を少なくすることができるため、組立精度がよくなる他、生産コストの低減も見込まれる。
また、図15は、第1又は第2の実施形態のレンズユニットを含むカメラモジュールが搭載された電子機器の一例である携帯電話機の斜視図である。本実施形態のカメラモジュール16は、携帯電話機10の操作部や表示画面が設けられる表面12の裏側となる背面14に設けられている。なお、カメラモジュール16が設けられる部位は、携帯電話機10の背面側に限定されず、他の部位に設置しても良い。また、本実施形態のカメラモジュールを搭載する電子機器は、携帯電話機に限定されず、例えば携帯型コンピュータ等の携帯型電子機器やその他の電子機器等にも適用可能である。
なお、上記のように本実施形態について詳細に説明したが、本発明の新規事項および効果から実体的に逸脱しない多くの変形が可能であることは、当業者には、容易に理解できるであろう。従って、このような変形例は、全て本発明の範囲に含まれるものとする。
例えば、明細書または図面において、少なくとも一度、より広義または同義な異なる用語と共に記載された用語は、明細書または図面のいかなる箇所においても、その異なる用語に置き換えることができる。また、レンズモジュール、カメラモジュール、及び電子機器の構成、動作も本実施形態で説明したものに限定されず、種々の変形実施が可能である。