JP5435099B2 - 上限臨界溶液温度を有する高分子の水溶液、この高分子で修飾された粒子の水分散体 - Google Patents

上限臨界溶液温度を有する高分子の水溶液、この高分子で修飾された粒子の水分散体 Download PDF

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Description

本発明は、上限臨界溶液温度を有する高分子の水溶液、この高分子で修飾された粒子の水分散体、及びそれらの保存方法に関する。
温度によって応答性を示す高分子組成物としては、水溶液の状態で下限臨界溶液温度(以下「LCST」と記述する。)を示すポリイソプロピルアクリルアミドを、粒径が100〜200nm程度の磁性粒子に固定化した刺激応答性磁性粒子が知られている(例えば、非特許文献1及び2参照。)。
前記刺激応答性磁性粒子は、その粒径が100〜200nm程度と微小であることから水によく分散する。前記刺激応答性磁性粒子の水溶液を加熱して、その温度をLCST以上とした場合には、刺激応答性磁性粒子が凝集する。この凝集物は磁力で容易に回収可能であることから、刺激応答性磁性粒子に抗体や抗原を固定化した刺激応答性磁性粒子を用い、種々の生体分子や微生物の分離を行う試みがなされている。
しかしながら、前述の方法で生体分子等の分離を行う場合、その目的物質と刺激応答性磁性粒子とを含有する溶液との両方の温度をLCST以上にする必要がある。用いる刺激応答性磁性粒子のLCST、さらには目的物質の熱安定性によっては、目的物質である生体分子等を損傷又は失活させてしまう場合がある。
同じく、温度によって応答性を示す高分子組成物としては、水溶液の状態で上限臨界溶液温度(以下「UCST」とも記述する。)を示す高分子及びこの高分子を担体粒子に固定化した温度応答性微粒子が知られている(例えば、特許文献1〜3参照。)。UCSTを示す高分子を固定化した温度応答性微粒子を、生体分子等の分離に用いた場合には、その目的物質である生体分子等を、加温によって損傷又は失活させることなく分離、回収することが可能である。
前記温度応答性微粒子を生体試料の分離に用いる場合では、温度応答性微粒子は、種々の生体分子や微生物の分離を行うために抗体や抗原等をリガンドとして固定化してあることが多く、これらリガンドの損傷や失活を防ぐために、通常0℃から10℃の低温で保存される。しかし、温度応答性微粒子の種類にもよるが、多くの場合0℃から10℃の低温にUCSTを示す高分子を用いるため、低温保存時は高分子が凝集状態で保持されることになる。長期間(例えば一か月間)前記高分子が凝集した状態を保つと、UCST以上の温度に昇温しても、温度応答性微粒子が分散せず、又は分散に時間がかかる場合がある。
アプライドマイクロバイオロジーアンドバイオテクノロジー(Appl.Microbiol.Biotechnol.)1994年、41巻、99〜105頁 ジャーナルオブファーメンテーションアンドバイオテクノロジー(Journal of fermentation and Bioengineering)1997年、84巻、337〜341頁
特開2000−086729号公報 国際公開第02/016454号 特開2005−082538号公報
本発明は、抗体や抗原等のリガンドが温度によって失活しない温度で長期保存しても溶解状態及び分散状態が損なわれない、UCSTを示す温度応答性高分子の水溶液及び温度応答性粒子の水分散体及び保存方法を提供することを課題とする。
本発明者らは、上記の課題を解決するために鋭意検討した。その結果、UCSTを示す高分子を水溶液状態で保存する場合において、特定の塩又は水溶性の有機溶媒を所定量添加してUCSTを保存温度以下にせしめて溶解した状態で保存すると、長期保存しても高分子の分散状態が損なわれないこと、及びUCSTを示す高分子で修飾された粒子を水中で保存する場合において、該高分子と同様にUCSTを保存温度以下にせしめた状態で保存すると、長期保存しても抗体や抗原等のリガンドが失活せずに前記粒子の分散状態が損なわれないことを見出し、これらをもとに本発明を完成させた。
すなわち、本発明は以下の通りである。
[1] 温度応答性高分子を含有する温度応答性高分子の水溶液を、この水溶液の組成で
該温度応答性高分子が有する上限臨界溶液温度以下の保存温度で保存する方法であって、該水溶液に、上限臨界溶液温度を下げる上限臨界溶液温度降下剤を、上限臨界溶液温度を該保存温度以下に下げる含有量で含有させて、上限臨界溶液温度を該保存温度以下に下げることを特徴とする、水溶液の状態での温度応答性高分子の保存方法。
[2] 担体粒子及びこの担体粒子に担持される温度応答性高分子を有する温度応答性粒
子を含有する温度応答性粒子の水分散体を、この水分散体の組成で温度応答性高分子により温度応答性粒子が有する上限臨界溶液温度以下の該保存温度で保存する方法であって、水分散体に、上限臨界溶液温度を下げる上限臨界溶液温度降下剤を、上限臨界溶液温度を保存温度以下に下げる含有量で含有させて、上限臨界溶液温度を保存温度以下に下げることを特徴とする、水分散体の状態での温度応答性粒子の保存方法。
[3] 前記温度応答性高分子は、N−アクリロイルグリシンアミド及びN−アクリロイ
ルアスパラギンアミドの一方又は両方を主成分とするモノマーを重合又は共重合させてなる高分子であることを特徴とする[1]又は[2]に記載の保存方法。
[4] 前記温度応答性高分子は、N−アクリロイルグリシンアミド及びN−アクリロイ
ルアスパラギンアミドの一方又は両方を合わせて90モル%以上含むモノマーを重合又は共重合させてなる高分子であることを特徴とする[3]に記載の保存方法。
[5] 前記保存温度は2〜6℃であることを特徴とする[1]〜[4]のいずれか一項
に記載の保存方法。
[6] 前記上限臨界溶液温度降下剤は、塩化ナトリウム、硝酸ナトリウム、硫酸マグネ
シウム、塩化リチウム、又はジメチルスルホキシドを含むことを特徴とする[5]に記載の保存方法。
[7] 前記上限臨界溶液温度降下剤は、塩化ナトリウム、硝酸ナトリウム、硫酸マグネ
シウム、又は塩化リチウムであり、水溶液又は水分散体に、1,000mM以上の濃度で上限臨界溶液温度降下剤を含有させることを特徴とする[6]に記載の保存方法。
[8] 前記上限臨界溶液温度降下剤は、塩化ナトリウム、硝酸ナトリウム、又は硫酸マ
グネシウムであり、水溶液又は水分散体に、450mM以上の濃度で上限臨界溶液温度降下剤を含有させることを特徴とする[6]に記載の保存方法。
[9] 前記上限臨界溶液温度降下剤はジメチルスルホキシドであり、水溶液又は水分散
体に、60体積%以上の濃度で上限臨界溶液温度降下剤を含有させることを特徴とする[6]に記載の保存方法。
[10] 前記担体粒子は磁性粒子であることを特徴とする[2]に記載の保存方法。
[11] 前記温度応答性粒子の粒径が50〜200nmであることを特徴とする[10
]に記載の保存方法。
[12] 前記温度応答性粒子は、温度応答性高分子に担持されるリガンドをさらに有す
ることを特徴とする[10]又は[11]に記載の保存方法。
[13] N−アクリロイルグリシンアミド及びN−アクリロイルアスパラギンアミドの
一方又は両方を合わせて90モル%以上含むモノマーを重合又は共重合させてなる高分子と;水と;450mM以上の塩化ナトリウム、450mM以上の硝酸ナトリウム、450mM以上の硫酸マグネシウム、1,000mM以上の塩化リチウム、又は60体積%以上のジメチルスルホキシドと;を含有する温度応答性高分子の保存用の水溶液。
[14] 塩化ナトリウム、硝酸ナトリウム、硫酸マグネシウム、又は塩化リチウムの濃
度が5M以下であることを特徴とする[13]に記載の水溶液。
[15] 担体粒子及びこの担体粒子に担持されるN−アクリロイルグリシンアミド及び
N−アクリロイルアスパラギンアミドの一方又は両方を合わせて90モル%以上含むモノマーを重合又は共重合させてなる高分子を有する温度応答性粒子と;水と;450mM以上の塩化ナトリウム、450mM以上の硝酸ナトリウム、450mM以上の硫酸マグネシウム、1,000mM以上の塩化リチウム、又は60体積%以上のジメチルスルホキシドと;を含有する温度応答性粒子の保存用の水分散体。
[16] 前記担体粒子は磁性粒子であることを特徴とする[15]に記載の水分散体。
[17] 前記温度応答性粒子の粒径が50〜200nmであることを特徴とする[16
]に記載の水分散体。
[18] 前記温度応答性粒子は、N−アクリロイルグリシンアミド及びN−アクリロイ
ルアスパラギンアミドの一方又は両方を合わせて90モル%以上含むモノマーを重合又は共重合させてなる高分子に担持されるリガンドをさらに有することを特徴とする[16]又は[17]に記載の水分散体。
[19] 塩化ナトリウム、硝酸ナトリウム、硫酸マグネシウム、又は塩化リチウムの濃
度が5M以下であることを特徴とする[15]〜[18]のいずれかに記載の水分散体。
本発明における温度応答性高分子の上限臨界溶液温度(UCST)とは、温度応答性高分子を含有する温度応答性高分子の水溶液を所望の組成に調製し、必要に応じて加温して
清澄な(溶解した)状態(水溶液)とし、次いで温度応答性高分子の水溶液の温度を1分間で1℃の割合で降下させていき、温度応答性高分子の水溶液の可視光の透過率が、清澄な状態時の1/2の値(温度応答性高分子が凝集した状態)になったときの温度である。
本発明における温度応答性高分子とは、水溶液の状態でUCSTを示す高分子のことである。温度応答性高分子はUCST以下では水溶液中から凝集し、UCSTより高い温度で溶解するが、溶解する温度とUCSTの差は小さいほどよく、UCSTから+10℃までの温度で水に溶解する高分子が好ましく、さらにUCSTから+5℃までの温度で水に溶解する高分子がより好ましい。
本発明における温度応答性高分子の水溶液の組成とは、温度応答性高分子及び水を含む、水溶液中に含まれる全成分及びその成分比をいう。これは、水溶液中に含まれる共存物質の影響で、UCSTの値が変化するためである。前記所望の組成とは、前記水溶液の用途や共存物質の組成によって異なるが、例えば水溶液中の温度応答性高分子の濃度は、0.001〜10重量%の範囲から適宜決めることができる。
本発明における温度応答性粒子の上限臨界溶液温度(UCST)とは、温度応答性粒子を含有する温度応答性粒子の水分散体を所望の組成に調製し、必要に応じて加温して清澄な(分散した)状態とし、次いで水分散体の温度を1分間で1℃の割合で降下させていき、水分散体の可視光の透過率が、清澄な状態時の1/2の値(温度応答性粒子が凝集した状態)になったときの温度である。
本発明における温度応答性粒子とは、前記水分散体の状態でUCSTを示す粒子のことである。温度応答性粒子は、水分散体がUCST以下では水分散体から凝集し、UCSTより高い温度で分散するが、分散する温度とUCSTの差は小さいほどよく、UCSTから+10℃までの温度で水分散体において分散する粒子が好ましく、さらにUCSTから+5℃までの温度で水分散体において分散する粒子がより好ましい。
本発明における温度応答性粒子の水分散体の組成とは、温度応答性粒子及び水を含む、水分散体中に含まれる全成分及びその成分比をいう。これは、水分散体中に含まれる共存物質の影響で、UCSTの値が変化するためである。前記所望の組成とは、前記水分散体の用途や共存物質の組成によって異なるが、例えば水分散体中の温度応答性粒子の濃度は、0.001〜10重量%の範囲から適宜決めることができる。
なお、本発明においては、温度応答性高分子の水溶液と温度応答性粒子の水分散体とにおいて、水溶液中の温度応答性高分子の含有率と水分散体中の温度応答性粒子の含有率とが同じであり、さらに共存物質等の他の成分の組成が同じである場合では、温度応答性粒子の水分散体の前記組成におけるUCSTは、温度応答性高分子の水溶液における前記組成のUCSTに比べて、概ね+5℃以内に入る。本発明では、このことを利用して、温度応答性粒子の水分散体のある組成におけるUCST及び温度応答性高分子の水溶液における同様の組成のUCSTの一方のUCSTから他方のUCSTを概算値として求めてもよい。
本発明によれば、抗体や抗原等のリガンドが温度によって失活しない温度で長期保存しても分散状態が損なわれない、UCSTを示す高分子の水溶液及び温度応答性粒子の水分散体を得ることができる。
また、本発明の手法によれば、水溶液の状態で所定のUCSTを示す高分子及びこの高分子で修飾された温度応答性粒子をUCST以下の温度で長期保存しても、UCSTを示
す高分子を水溶液の状態で、またこの高分子で修飾された温度応答性粒子を水分散体の状態で長期に保存することができる。特に温度応答性粒子がリガンドを有する場合では、抗体や抗原等のリガンドが失活せずに前記温度応答性粒子を水分散体中に良好に分散させることができる。
温度応答性重合体1を0.1重量%で塩化ナトリウム水溶液に溶解した水溶液において塩化ナトリウムの濃度を代えたときの水溶液のUCSTと塩化ナトリウムの濃度との関係を示す図である。 各水分散体3〜7から回収されたタンパク質からSDS−PAGEによって得られたバンドの写真である。
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明では、温度応答性高分子を含有する温度応答性高分子の水溶液を、この水溶液を使用する条件で温度応答性高分子が有するUCST以下の保存温度で保存する。本発明では、水溶液に、UCSTを下げる上限臨界溶液温度降下剤(UCST降下剤)を、UCSTを保存温度以下に下げる含有量で含有させて、UCSTを保存温度以下に下げ、水溶液の状態での温度応答性高分子を保存する。
また本発明では、担体粒子及びこの担体粒子に担持される温度応答性高分子を有する温度応答性粒子を含有する温度応答性粒子の水分散体を、この水分散体を使用する条件で温度応答性高分子による温度応答性粒子が有する上限臨界溶液温度以下の保存温度で保存する。本発明では、水分散体に、UCSTを下げるUCST降下剤を、UCSTを保存温度以下に下げる含有量で含有させて、UCSTを保存温度以下に下げ、水分散体の状態での温度応答性粒子を保存する。
前記温度応答性高分子には、温度応答性高分子の水溶液の組成でUCSTを示す高分子を用いることができる。前記温度応答性高分子は一種の高分子であってもよいし二種以上の高分子であってもよい。
さらに前記温度応答性高分子には、温度応答性高分子が凝集した状態でその含有水を長期間(例えば一か月間)保存したときには、上限臨界溶液温度を超えた温度でも水に溶解しきらない高分子が存在するが、本発明ではこのような温度応答性高分子も、水中において長期安定した良好な状態で保存することができる。
前記温度応答性高分子としては、アクリロイルグリシンアミド、アクリロイルニペコタミド、及びアクリロイルアスパラギンアミドからなる群から選ばれる少なくとも1種のモノマーからなるポリマーが利用できる。また、これらの少なくとも2種のモノマーからなるコポリマーであってもよい。これらのモノマーと好適に共重合できるモノマーとしては、アクリルアミド、アセチルアクリルアミド、ビオチノールアクリレート、N−ビオチニル−N’−メタクリロイルトリメチレンアミド、アクリロイルザルコシンアミド、メタクリルザルコシンアミド、アクリロイルメチルウラシル、及びアクリロイルグルタミンアミド等が挙げられる。温度応答性高分子を共重合体とすると、共重合するモノマーの種類、割合を変えることでUCSTを制御できるため、使用温度に合わせたポリマー設計が可能である。
なかでも、N−アクリロイルグリシンアミド及びN−アクリロイルアスパラギンアミドの一方又は両方を主成分とするモノマーを重合又は共重合させてなる高分子は、共重合の
割合を変えることで約0℃から約30℃の間でUCSTの制御が可能であるため、前記温度応答性高分子を固定化した本発明における温度応答性粒子に好適に用いることができ、好ましく、N−アクリロイルグリシンアミド及びN−アクリロイルアスパラギンアミドの一方又は両方を合わせて90モル%以上含むモノマーを重合又は共重合させてなる高分子であることがより好ましい。
温度応答性高分子は、その分子量は特に限定されないが、重量平均分子量が1,000〜1,000,000であることが好ましく、5,000〜500,000であることがより好ましい。質量平均分子量は、ゲル浸透クロマトグラフィー(Gel Permea
tion Chromatography)によって測定することができる。
前記温度応答性高分子は、上記モノマーを有機溶媒又は水に溶解し、不活性ガスで系中を置換したのち重合温度まで昇温し、有機溶媒中であればアゾビスイソブチロニトリル等のアゾ系開始剤、過酸化ベンゾイル等の過酸化物、水系であれば過硫酸アンモニウム、過硫酸カリウム、2,2’−アゾビス(2−アミジノプロパン)二塩酸塩、4,4’−アゾビス(4−シアノ吉草酸)等の重合開始剤を添加し、攪拌下加熱を続けることにより得ることができる。その後、貧溶媒中で再沈殿を行い、凝集したポリマーをろ取したり、得られた反応液をUCST以下の温度に冷却することで生成した温度応答性高分子を凝集させ、遠心により分離する等の手法で、製造した温度応答性高分子を精製することもできる。
前記温度応答性粒子は、担体粒子と、この担体粒子に担持される温度応答性高分子とを有する。担体粒子には、高分子によって被覆できる粒子状の担体を用いることができる。担体粒子には、用いる媒体、つまり水や有機溶媒に不溶であるものがよく、ガラスビーズ、シリカゲル、シリコーン等の無機高分子化合物、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、スチレン−ジビニルベンゼン共重合体、スチレン−無水マレイン酸共重合体、ナイロン、ポリビニルアルコール、ポリアクリルアミド、ポリアクリロニトリル、ポリプロピレン、ポリメチレンメタクリレート等の合成有機高分子化合物、セルロース、アガロース、デキストリン等の多糖類からなる有機化合物、さらにはこれらの組み合わせによって得られる有機−有機、有機−無機等の複合体等が挙げられる。これらはアミノ基、アミノアルキル基、カルボキシル基、アシル基、水酸基等の官能基を導入したものであってもよい。
前記担体粒子が磁性粒子であると、温度応答性粒子の水分散体の温度をUCST以下にして温度応答性粒子を凝集させた後に磁力によって容易に捕集することが可能となり、水分散体中の目的物質の容易な回収、精製に利用することができるため、好ましい。さらに担体粒子が磁性粒子である場合では、温度応答性粒子の粒径が50〜200nmであると、水分散体において凝集している温度応答性粒子のみを磁力によって捕集できることから好ましい。
このような磁性粒子は、例えば特表2002−517085号公報等に開示された方法によって製造することができる。すなわち、鉄(II)化合物、又は鉄(II)化合物及び金属(II)化合物を含有する水溶液を、磁性酸化物の形成のために必要な酸化状態下に置き、溶液のpHを7以上に維持して、酸化鉄又はフェライト磁性体ナノ粒子を形成する方法である。また、前記磁性粒子は、金属(II)化合物含有の水溶液と鉄(III)含有の水溶
液をアルカリ性条件下で混合することによっても製造することができる。
あるいは前記磁性粒子は、磁性粒子とこれを被覆する有機化合物とから構成されていてもよい。このような磁性粒子における有機化合物には、例えば多価アルコールを用いることができ、このような磁性粒子は例えば多価アルコールとマグネタイトから製造することもできる。この多価アルコールは、構成単位に水酸基を少なくとも2個有し、鉄イオンと結合可能なアルコール構造体であれば、特に制限なく使用することができる。前記多価ア
ルコールには、例えば、デキストラン、ポリビニルアルコール、マンニトール、ソルビトール、シクロデキストリン等が挙げられる。このような多価アルコール等の有機化合物で被覆された形態の磁性粒子は、例えば、特許文献3に開示されているような、デキストランを用いた磁性粒子の製造方法によって得ることができる。また、グリシジルメタクリレート重合体のようにエポキシ基を有し、開環後多価アルコール構造体を形成する化合物も、有機化合物で被覆された形態の磁性粒子を製造する際の原料として使用できる。
このような多価アルコールを用いて調製された磁性粒子は、良好な分散性を有するように、その平均粒径が、0.9nm以上1,000nm未満であることが好ましく、特に、磁性粒子表面にリガンドをさらに有する場合では、リガンドと目的物質との反応速度を高めるためには、平均粒径が200nm以下であることが好ましく、磁力による捕集の速度を速めるためには50nm以上が好ましい。
前記温度応答性粒子における前記担体粒子と前記温度応答性高分子との結合は、反応性の官能基を介して結合する方法や、磁性粒子中の多価アルコール上の活性水素又は多価アルコールに重合性不飽和結合を導入し、温度応答性高分子を磁性粒子にグラフト重合する方法等の当技術分野で周知の(例えば、ADV.Polym.Sci.,Vol.4、p111、1965やJ.Polymer Sci.,Part−A,3,p1031,1
965に記載されている)方法で得られる。このようにして前記温度応答性粒子を得ることができる。
前記温度応答性粒子は、温度応答性高分子に担持されるリガンドをさらに有していてもよい。前記リガンドは、タンパク質等の種々の生体分子や微生物と相互に特異的に吸着する物質であり、リガンドには、ビオチン、アビジン、グルタチオン、レクチン、及び抗体等が挙げられ、温度応答性高分子によるリガンドの担持は、例えば特許文献3に記載されている方法及び通常行われている方法によって行うことができる。
前記温度応答性高分子の水溶液、又は前記温度応答性粒子の水分散体の保存温度は、UCST以下の温度であればよい。保存温度は、温度応答性高分子及び温度応答性粒子の用途や、温度応答性粒子が有するリガンドの種類等の条件に応じて決めることができる。例えば前記用途が生体試料からの生体分子又は微生物の分離、精製である場合や、温度応答性粒子がリガンドを有する場合では、これらの目的物質やリガンドに対する温度による変質を防止する観点から2〜6℃であることが好ましい。
本発明では、前記水溶液又は前記水分散体に、UCSTを下げるUCST降下剤を、UCSTを保存温度以下に下げる含有量で含有させて、UCSTを保存温度以下に下げる。UCST降下剤には、水溶性の塩や水溶性の有機溶媒を用いることができる。USCT降下剤は、UCSTを低下させることができる塩又は有機溶媒であればよく、UCST降下剤の種類やその含有量は、温度応答性高分子の種類、及び保存温度等の条件によって決められる。
例えば、前記温度応答性高分子がN−アクリロイルグリシンアミド及びN−アクリロイルアスパラギンアミドの一方又は両方を主成分とするモノマーを重合又は共重合させてなる高分子である場合では、上限臨界溶液温度降下剤には、塩化ナトリウム、硝酸ナトリウム、硫酸マグネシウム、塩化リチウム、及びジメチルスルホキシド等が挙げられる。
なかでも塩化ナトリウム、硝酸ナトリウム、硫酸マグネシウム、及び塩化リチウムは、UCSTを大きく低下させることができるため好ましく用いることができる。これら塩の溶液は酸やアルカリ等により中和して用いても良く、緩衝液等に溶解して用いてもよい。
前記UCST降下剤の含有量は、水溶液又は水分散体のUCSTを保存温度以下に下げることができる量であればよく、温度応答性高分子の種類、保存温度、及びUCST降下剤の種類等の条件によって決められる。
例えば塩濃度としては、概ね300mM以上5M以下が好ましく、UCSTを保存温度より大きく低下又は消失させて温度応答性高分子の凝集又は温度応答性粒子の凝集をより押さえるためには450mM以上が好ましく、タンパク質等のリガンドの安定性の観点からでは2M以下が好ましい。
例えば、前記温度応答性高分子がN−アクリロイルグリシンアミド及びN−アクリロイルアスパラギンアミドの一方又は両方を主成分とするモノマーを重合又は共重合させてなる高分子であり、前記保存温度が2〜6℃であり、前記上限臨界溶液温度降下剤が、塩化ナトリウム、硝酸ナトリウム、硫酸マグネシウム、又は塩化リチウムである場合では、USCTの含有量は、水溶液又は水分散体に対して1,000mM以上の濃度であることが好ましく、さらには上限臨界溶液温度降下剤が塩化ナトリウム、硝酸ナトリウム、又は硫酸マグネシウムである場合では、UCST降下剤の含有量は、水溶液又は水分散体に対して450mM以上の濃度であることが好ましい。
また例えば、前記温度応答性高分子がN−アクリロイルグリシンアミド及びN−アクリロイルアスパラギンアミドの一方又は両方を主成分とするモノマーを重合又は共重合させてなる高分子であり、前記保存温度が2〜6℃であり、前記上限臨界溶液温度降下剤がジメチルスルホキシドである場合では、USCTの含有量は、水溶液又は水分散体に対して60体積%以上の濃度であることが好ましく、タンパク質等のリガンドの安定性の観点からでは90体積%以下が好ましい。
本発明における温度応答性高分子の水溶液には、より具体的には、N−アクリロイルグリシンアミド及びN−アクリロイルアスパラギンアミドの一方又は両方を合わせて90モル%以上含むモノマーを重合又は共重合させてなる高分子と;水と;450mM以上の塩化ナトリウム、450mM以上の硝酸ナトリウム、450mM以上の硫酸マグネシウム、1,000mM以上の塩化リチウム、又は60体積%以上のジメチルスルホキシドと;を含有する温度応答性高分子の水溶液が挙げられる。
また本発明における温度応答性高分子の水分散体には、より具体的には、担体粒子及びこの担体粒子に担持されるN−アクリロイルグリシンアミド及びN−アクリロイルアスパラギンアミドの一方又は両方を合わせて90モル%以上含むモノマーを重合又は共重合させてなる高分子を有する温度応答性粒子と;水と;450mM以上の塩化ナトリウム、450mM以上の硝酸ナトリウム、450mM以上の硫酸マグネシウム、1,000mM以上の塩化リチウム、又は60体積%以上のジメチルスルホキシドと;を含有する温度応答性粒子の水分散体が挙げられる。
前記担体粒子は磁性粒子であることが好ましく、温度応答性粒子の粒径が50〜200nmであることがより好ましく、温度応答性粒子が、前記N−アクリロイルグリシンアミド及びN−アクリロイルアスパラギンアミドの一方又は両方を合わせて90モル%以上含むモノマーを重合又は共重合させてなる高分子に担持されるリガンドをさらに有することがさらに好ましい。
また前記温度応答性高分子の水溶液及び前記温度応答性粒子の水分散体は、塩化ナトリウム、硝酸ナトリウム、硫酸マグネシウム、又は塩化リチウムの濃度が5M以下であることが好ましい。
前述の温度応答性高分子の水溶液及び温度応答性粒子の水分散体では、UCST以下の保存温度において、温度応答性高分子が溶解した状態で、又は温度応答性粒子が分散した状態で保存される。このため、水溶液の状態で温度応答性高分子を、又は水分散体の状態で温度応答性粒子を保存温度において長期にわたって保存したときに、この水溶液又は水分散体を上限臨界溶液温度に加温しても、温度応答性高分子が溶解しきらない、又は温度応答性粒子が分散しきらない、等の長期保存に係る溶解性又は分散性の悪化を防止することができる。
本発明において、前記温度応答性高分子の水溶液又は前記温度応答性粒子の水分散体には、UCST降下剤によるUCSTの降下、及び温度応答性高分子の溶解性又は温度応答性粒子の分散性に悪影響を及ぼさない範囲で、添加剤をさらに含有させることができる。このような添加剤は、温度応答性高分子や温度応答性粒子の用途に応じて決めることができ、例えば生体試料の分離、精製の用途であれば、添加剤には、酸、アルカリ、pH緩衝液、水溶性の有機溶剤等が挙げられる。
なお、保存温度で保存した本発明における温度応答性高分子の水溶液又は温度応答性粒子の水分散体は、そのまま利用してもよいし、UCSTより高い温度に加温した後に利用してもよいし、UCST降下剤の濃度を下げて保存温度よりも高いUCSTに戻すために精製水等の水で希釈して用いてもよい。担体粒子として磁性粒子を有する温度応答性粒子の水分散体を水で希釈した場合では、希釈した前記水溶液又は水分散体を再びUCST以下に冷却し、水分散体から温度応答性粒子を凝集させ、凝集した温度応答性粒子を磁石等の磁力発生手段を用いて捕集し、残存した塩や溶媒を除去し、必要な緩衝溶液等で置換することもできる。
本発明では、保存時にUCSTを有する高分子溶液及びUCSTを有する高分子で修飾された粒子分散体のUCSTを保存温度以下にすること、又はUCSTを消失させることが特徴である。UCSTは水溶液中で測定するが、UCSTは、水溶液が液体状態を示す凝固点以上沸点以下の温度で測定が可能である。従ってUCSTが水溶液の凝固点以下又は水溶液の沸点以上の場合は、見かけ上UCSTが消失する。本発明ではこのようなUCSTが消失する条件も好適に用いることができる。
以下実施例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
実施例1
窒素ガス導入装置、温度計、及び攪拌装置を付した200mLの三口フラスコに、N−アクリロイルグリシンアミド4g、N−アクリロイルアスパラギンアミド2g及び100mLのミリQ水(ミリポア社製Direct−Qで精製された超純水)を入れ、窒素を30分間バブリングし、溶存酸素を除いた。ここにペルオキソ二硫酸アンモニウム0.6g及びN,N’−メチレンビスアクリルアミド0.4mLを投入し、室温で5時間反応させた。反応終了後、分画分子量1,000の透析膜を用い精製を行った。得られた精製物を凍結乾燥させ、N−アクリロイルグリシンアミド−N−アクリロイルアスパラギンアミド共重合体(以下、「温度応答性重合体1」と言う)を得た。収量3.5g。
上記温度応答性重合体1を0.1重量%で塩化ナトリウム水溶液に溶解し、塩化ナトリウムの濃度を代えた各種水溶液を作製し、これらの水溶液のUCSTを測定した。測定結果を図1に示す。図1に示すように、水溶液中の塩化ナトリウムの濃度が上昇するに従いUCSTは低下し、塩化ナトリウム濃度が350mMを超えるとUCSTは4℃以下になることがわかった。つまり温度応答性重合体1の水溶液を4℃で保存する場合、塩化ナト
リウム濃度を350mM以上にすることで、温度応答性重合体1を水溶液中で凝集させずに、透明な状態で保存できることがわかった。
温度応答性重合体1を用いて、温度応答性重合体1を0.1重量%で600mM塩化ナトリウム水溶液に溶解した水溶液を常温で調製した。調製時における水溶液の外観は透明であった。この水溶液を4℃の冷蔵庫で1か月間保存したが、水溶液は透明なままであった。この水溶液を精製水で4倍に希釈して塩化ナトリウムの濃度を150mMとし、氷水で冷却すると温度応答性重合体1が凝集し、10℃以上に加温すると、再び透明な水溶液になった。
比較例1
実施例1で得た温度応答性重合体1を用いて、温度応答性重合体1を0.1重量%で150mM塩化ナトリウム水溶液に溶解した水溶液を常温で調製した。調製時における水溶液の外観は透明であった。この水溶液を4℃に冷却すると温度応答性重合体1が凝集した。さらに4℃の冷蔵庫で1か月間保存したが、温度応答性重合体1は凝集し、析出したままであった。この水溶液を150mM塩化ナトリウム水溶液で4倍に希釈して10℃以上に加温しても、温度応答性重合体1は完全には溶解せず、濁りが見られた。
以上より、600mM塩化ナトリウム水溶液中で4℃保存した温度応答性重合体1は、塩化ナトリウムの濃度を150mMに希釈しても水溶液中に良好に再溶解が可能であった。一方、150mM塩化ナトリウム水溶液中で4℃保存した温度応答性重合体1は、完全には溶解せず、水溶液の温度をUCST以上の温度に戻しても濁りが見られた。
実施例2
実施例1で得た温度応答性重合体1を用いて、表1及び表2に示すような各種塩濃度及び溶媒濃度の溶液を常温で作製し、実施例1と同様に、常温で作製した水溶液を4℃で一か月間保存し、塩濃度を150mM、又は溶媒濃度を20体積%に調整した後、10℃に加温して再分散させる方法でポリマーの安定性を調べた。なお、下記表1及び表2において、再分散性が「良好」とは、10℃に加温した水溶液の外観が透明であったことを示す。
Figure 0005435099
Figure 0005435099

表1及び表2に示すように、高濃度の塩又は溶媒を添加しUCSTを保存温度以下にせしめて透明な分散状態で保存することにより、長期低温保存後も、水溶液の外観が透明である、水溶液中での分散性の良好な状態での温度応答性重合体を得ることができた。
実施例3
N−アクリロイルグリシンアミド75mg、N−アクリロイルアスパラギンアミド36mg及びN−ビオチニル−N’−メタクロイルトリメチレンアミド0.7mgを用い、特許文献3に記載の手法により、マグネタイト−デキストラン複合体に修飾した、上限臨界
溶液温度を7℃に有する温度応答性磁性粒子1を調製した。より詳しくは、50mLの三口フラスコに、N−アクリロイルグリシンアミド75mg、N−アクリロイルアスパラギンアミド36mg及びN−ビオチニル−N’−メタクロイルトリメチレンアミド0.7mg、マグネタイト−デキストラン複合体(40nm)の2重量%水溶液1mLを入れ、蒸留水で20mLに調節した。この溶液を窒素置換した後、更に0.2M硝酸二アンモニウムセリウム(IV)硝酸溶液200μLを添加し、2時間攪拌し、反応を進行させることで、温度応答性磁性粒子1を得た。
前記マグネタイト−デキストラン複合体は以下の方法で行った。
100mL容のフラスコに、塩化第二鉄・六水和物(1.0mol)及び塩化第一鉄・四水和物(0.5mol)混合水溶液を3mL、多価アルコールであるデキストラン(和光純薬社製、分子量32,000〜40,000)の10重量%水溶液60mLを入れ、メカニカルスターラーで攪拌し、この混合溶液を50℃に昇温した後、これに25重量%アンモニア溶液5.0mLを滴下し、1時間程度攪拌した。この操作で、平均粒径が約40nmのデキストランが固定された磁性粒子が得られた。
得られた温度応答性磁性粒子1の平均粒径は、大塚電子株式会社製レーザーゼータ電位計ELS−8000で測定したところ、約110nmであった。
上記で得た温度応答性磁性粒子1を用いて、温度応答性磁性粒子1を1.6重量%で600mM塩化ナトリウム水溶液に分散させた水分散体1を常温で調製した。調製時における水分散体1の外観は透明な褐色の水溶液であった。この水分散体1を4℃の冷蔵庫で1か月間保存したが、水分散体1は透明なままであった。この水分散体1を精製水で4倍に希釈して水分散体1中の塩化ナトリウムの濃度を150mMとし、水分散体1を氷水で冷却すると温度応答性磁性粒子1が凝集し、水分散体1を10℃以上に加温すると、再び透明になった。
比較例2
実施例3で得た温度応答性磁性粒子1を用いて、温度応答性磁性粒子1を0.4重量%で150mM塩化ナトリウム水溶液に分散させた水分散体2を常温で調製した。調製時における水分散体2の外観は透明な褐色の水溶液であった。この水分散体2を4℃に冷却すると温度応答性磁性粒子1が凝集し、析出した。さらに4℃の冷蔵庫で1か月間保存したが、温度応答性磁性粒子1は凝集したままであった。この水分散体2を150mM塩化ナトリウム水溶液で4倍に希釈し10℃以上に加温しても、温度応答性磁性粒子1は完全には分散せず、水分散体2には濁りが見られた。
以上より、600mM塩化ナトリウム水溶液中で4℃で保存した温度応答性粒子は、その後に塩化ナトリウムの濃度を150mMに希釈した水分散体中でも良好に分散していた。一方、150mM塩化ナトリウム水溶液中で4℃で保存した温度応答性粒子は、完全には分散せず、水分散体の温度をUCST以上の温度に戻しても濁りが見られた。
実施例4
実施例3で得た温度応答性磁性粒子1に、特許文献3に記載の手法を用いて、アビジンを導入した温度応答性磁性粒子3を得た。より詳しくは、前記温度応答性磁性粒子1の0.1重量%水溶液50μLを1.5mLエッペンドルフチューブにとり、さらに1g/Lのアビジン溶液50μLをチューブに加え、40℃で20分間混合した。その後、チューブを氷水中で冷却し、生成した微粒子を凝集させ、磁石で回収し、上清部分と分離した。凝集部分にバッファー(20mM Tris−HCl(pH7.5)、150mM NaCl、0.05%TWEEN20)200μLを加え、生成した微粒子を加温して分散させ、再度冷却して凝集させ、凝集塊に混入した成分を洗浄し取り除いた。この操作を4回繰
り返して温度応答性磁性粒子3を得た。得られた温度応答性磁性粒子3の粒径は、実施例3と同様に測定したところ、150nmであった。
上記で得た温度応答性磁性粒子3を用いて、温度応答性磁性粒子3を1.2重量%で450mM塩化ナトリウム水溶液に分散させた水分散体3、温度応答性磁性粒子3を1.6重量%で600mM塩化ナトリウム水溶液に分散させた水分散体4、及び温度応答性磁性粒子3を2.0重量%で750mM塩化ナトリウム水溶液に分散させた水分散体5をそれぞれ調製した。調製時におけるこれらの水分散体3〜5の外観は、それぞれ透明な褐色の水溶液であった。これらの水分散体3〜5を4℃の冷蔵庫で1か月間保存したが、水分散体3〜5は透明なままであった。保存後に、水分散体3を精製水で3倍に希釈し、水分散体4を精製水で4倍に希釈し、水分散体5を精製水で5倍に希釈して、それぞれ塩化ナトリウム濃度を150mMとし、氷水で冷却すると、各水分散体において温度応答性磁性粒子3が凝集し、10℃以上に加温すると、再び透明な溶液になった。
また、温度応答性磁性粒子3を1.2重量%で60体積%ジメチルスルホキシド水溶液に分散させた水分散体6、及び温度応答性磁性粒子3を1.8重量%で90体積%ジメチルスルホキシド水溶液に分散させた水分散体7をそれぞれ調整した。これらの水分散体6及び7を4℃の冷蔵庫で1か月間保存したが、水分散体6及び7は透明なままであった。保存後に、水分散体6を精製水で3倍に希釈し、水分散体7を精製水で4.5倍に希釈し、それぞれジメチルスルホキシドの濃度を20体積%とし、氷水で冷却すると、各水分散体において温度応答性磁性粒子3が析出し、10℃以上に加温すると、再び透明な溶液になった。
実施例5
4℃で1か月間保存後の水分散体3〜7を用いて、水分散体3〜7における温度応答性磁性粒子3の濃度を0.1重量%に調整し、特許文献3に記載の手法を用いてビオチン化抗IgGの回収実験を行った。また水分散体3と同じ条件で新たに水分散体を調整し、調製直後の水分散体としてこの回収実験に用いた。より詳しくは、この微粒子の0.1重量%水溶液5μLを1.5mLエッペンドルフチューブに取り、1g/Lビオチン化抗IgG(商品名:Anti-IgG (Fc), Rabbit, Goat-Poly, Biotin、ロックランド社製)10μL
を添加し、40℃で20分間混合後、4℃に冷却し、得られたビオチン化抗IgG結合−温度応答性磁性粒子3を凝集させ、磁石で回収し、不純物を除去した。その後、バッファー(20mM Tris−HCl(pH7.5)、150mM NaCl、0.05%TWEEN20)を添加し、同様に凝集、分散を繰り返し、前記粒子を洗浄してビオチン化抗IgGを回収した。
各水分散体から回収された温度応答性磁性粒子3に結合しているタンパク質の抽出液を用い、SDSポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS−PAGE)によってタンパク質を分離し、クーマシーブリリアントブルー染色液で染色、脱色した後のバンドを図2に示す。図2中、レーン1は水分散体3、レーン2は水分散体4、レーン3は水分散体5、レーン4は水分散体6、レーン5は水分散体7、レーン6は調製直後の水分散体のバンドを表し、「IgG(L)」は抗体の軽鎖を表し、「IgG(H)」は抗体の重鎖を表している。
また図2中、「Marker」は市販のビオチン化抗IgG(商品名:Anti-IgG (Fc), Rabbit, Goat-Poly, Biotin、ロックランド社製)を表し、Markerのレーンの数字
はMarkerの量(μg)を表している。Markerのレーンは、Markerの各使用量におけるSDS−PAGEによる前記のバンドを示している。さらに「BSA」は牛血清アルブミンを表している。
その結果から明らかなように、どの水分散体においても、アビジンの失活はみられず、調製直後の活性を維持していた。

Claims (7)

  1. N−アクリロイルグリシンアミド及びN−アクリロイルアスパラギンアミドの一方又は両方を合わせて90モル%以上含むモノマーを重合又は共重合させてなる高分子と;水と;450mM以上の塩化ナトリウム、450mM以上の硝酸ナトリウム、450mM以上の硫酸マグネシウム、1,000mM以上の塩化リチウム、又は60体積%以上のジメチルスルホキシドと;を含有する温度応答性高分子の保存用の水溶液。
  2. 塩化ナトリウム、硝酸ナトリウム、硫酸マグネシウム、又は塩化リチウムの濃度が5M以下であることを特徴とする請求項1に記載の水溶液。
  3. 担体粒子及びこの担体粒子に担持されるN−アクリロイルグリシンアミド及びN−アクリロイルアスパラギンアミドの一方又は両方を合わせて90モル%以上含むモノマーを重合又は共重合させてなる高分子を有する温度応答性粒子と;水と;450mM以上の塩化ナトリウム、450mM以上の硝酸ナトリウム、450mM以上の硫酸マグネシウム、1,000mM以上の塩化リチウム、又は60体積%以上のジメチルスルホキシドと;を含有する温度応答性粒子の保存用の水分散体。
  4. 前記担体粒子は磁性粒子であることを特徴とする請求項3に記載の水分散体。
  5. 前記温度応答性粒子の粒径が50〜200nmであることを特徴とする請求項4に記載の水分散体。
  6. 前記温度応答性粒子は、N−アクリロイルグリシンアミド及びN−アクリロイルアスパラギンアミドの一方又は両方を合わせて90モル%以上含むモノマーを重合又は共重合させてなる高分子に担持されるリガンドをさらに有することを特徴とする請求項4又は5に記載の水分散体。
  7. 塩化ナトリウム、硝酸ナトリウム、硫酸マグネシウム、又は塩化リチウムの濃度が5M以下であることを特徴とする請求項3〜6のいずれか一項に記載の水分散体。
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