JP2012177691A - 磁性マーカー粒子 - Google Patents

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Abstract

【課題】pH緩衝液中でも優れた分散安定性を呈する磁性粒子を提供することであり、好ましくはpH緩衝液中において実用上十分な分散安定性と磁気捕集性とを併せて呈する磁性マーカー粒子を提供する。
【解決手段】磁性粒子と該磁性粒子の表面に被着したポリマーとを有して成る磁性マーカー粒子であって、該ポリマーが、第1親水性基と第2親水性基との少なくとも2種類の親水性基を含んで成り、該第2親水性基が立体的に嵩高い構造を形成する官能基となっており、また該磁性マーカー粒子を含んで成る緩衝溶液について式1で表される該磁性マーカー粒子の沈降速度の値Vが1.0×10−3〜6.0の範囲となることを特徴とする、磁性マーカー粒子。

【選択図】なし

Description

本発明は、磁性マーカー粒子に関する。より詳細には、本発明は、緩衝溶液中において高い分散性を呈する磁性マーカー粒子、好ましくは高い分散安定性を呈し、かつ磁気捕集性も高い磁性マーカー粒子に関する。
従来より、磁性粒子が分散した分散液は、バイオテクノロジー分野またはライフサイエンス分野において、細胞、蛋白質、核酸またはその他の生体物質の定量分析、定性分析、分離および精製などの種々の用途において用いられている。特に最近では、磁性粒子を標的物質(即ち、目的とする生体物質)を検出するためのマーカーとして用いることも行われている(例えば特許文献1および特許文献2参照)
ここで、高い分散安定性を呈する磁性粒子の合成法としては、溶剤中で脂肪族カルボン酸を用いたものが知られている(特許文献3参照)。しかしながら、かかる方法により得られた磁性粒子は疎水性を呈し、水中での分散性は極めて悪いものであった。この磁性粒子に2−アミノエタノールを加えると、水系で分散安定化を図れるものの、中性領域において分散性が低下するので使い勝手の点で問題を残している(非特許文献1参照)。
一方、水中での分散安定性が比較的高い磁性ビーズとしてはダイナビーズ(登録商標、Invitorogen製)が知られている。しかしながら、かかる磁性粒子は、ポリマーコアに磁性粒子を含浸させて成るものであるので、飽和磁化量が大きくないという欠点を有している。また、この磁性粒子は、粒子サイズが1〜5μmであり、磁性マーカーとして用いるには粒子サイズが非常に大きいものである。
また、磁化量が大きく分散安定性が高い粒子として、サーマ・マックス(登録商標、マグナビート製)が知られている。サーマ・マックスでは特殊コートが粒子表面に施されている。しかしながら、かかる粒子を含んだ分散液では、分散状態、凝集状態の制御を行うには液温を制御しなければならず、使い勝手の点で決して満足のいくものではなかった。
そして、このような磁性粒子については、一般的に分散性が高ければ高いほど、磁気捕集性は悪化する傾向にある。例えば、上述の特許文献3の粒子は溶剤中では分散性が非常に高いものの、磁気分離を実用的な時間内に行うことができない(つまり、磁気分離にかかる時間が必要以上に大きく磁気分離には適していない)。一方、このような粒子を水中で分散させると、分散性は悪いものの、磁気分離を行うことをできることが、よい例であろう。また、上述のダイナビーズは粒子サイズが大きいために、磁気分離は可能であるが、磁性マーカーとして用いるには粒子サイズが大きすぎる。さらに、上述のサーマ・マックスは分散状態、凝集状態の制御を行うことで、磁気分離を行いやすくしているが、前述のように使い勝手の点では依然問題があった。
更にいえば、特許文献4には、分散安定性が高く、かつ磁気捕集製も良い粒子について記載されているものの、特許文献4の粒子はあくまでも超常磁性粒子に関してのみであり、強磁性粒子は磁気凝集性を呈するなどの点で使用には適さないという問題点があった。
このように、磁性粒子を含んだ分散液は、その分散安定性や磁気捕集性、磁気特性・粒子サイズなどの点で少なからず制約があった。従って、好適な物理的特性を備えた“分散安定性に富みかつ磁気捕集性の高い磁性粒子分散体”が望まれているものの、それについての検討はあまり進んでいないのが実情である。特にバイオテクノロジー分野またはライフサイエンス分野において分散媒として用いられるpH緩衝液については、それに含まれる磁性粒子の分散安定性の挙動に関して実質的な検討は行われていない。
また、粒子の形状としては、板状、直方体などが考えられるが、一般的に最も多いものは不定形(即ち、様々な形状の粒子が混合されてなるもの)である。かかる場合、粒子表面の状態が形状により異なる可能性があるため、磁性マーカーとして用いると、測定結果のバラツキなどにつながる原因となる。
磁性粒子を想定した場合においては、磁場印加後に、磁気凝集と呼ばれる残留磁化により粒子同士が凝集してしまう挙動が問題となり得る。これを解決するために、超常磁性の粒子を用いる場合が多い。超常磁性粒子は保磁力を持たないため、残留磁化がなく、磁場がない状態では磁気凝集を起こさないためである。
しかしながら、材質が酸化鉄から成る場合、超常磁性粒子の粒径が20nm以下であるので、高分散の状態にすると、磁気捕集を行うことができないという問題があった。これを解決したものとして、上記のサーマ・マックス(登録商標、マグナビート製)がある。サーマ・マックスでは高分散、低分散の状態を温度により変化させ超常磁性粒子でも扱いやすくなっているといえる。しかしながら、かかる粒子を含んだ分散液では、上述した通り、分散状態、凝集状態の制御を行うには液温を制御しなければならず、使い勝手の点で決して満足のいくものではなかった。また、上記のダイナビーズ(登録商標、Invitorogen製)もあるが、かかるビーズは、上述した通り、ポリマーコアに磁性粒子を含浸させて成るものであるので、飽和磁化量が大きくないという欠点を有している。また、かかるビーズは、磁気凝集性をほとんど呈しないが、粒子サイズが1〜5μmであり、粒子が大きいため分散性が悪く、使い勝手の点で決して満足のいくものではなかった。
特表2003−524781号公報 特開2005−188950公報 特開2005−48250号公報 特開昭60−1564号公報 特公平7−6986号公報 特開2008−201666号公報
Journal of Magnetism and Magnetic Materials, 320 (2008) L121 Water Research, 13 (1979) 21 Journal of Colloid and interface Science, 74 (1980) 227 Chemistry of Materials, 20 (2008) 198
本発明は、上記事情に鑑みて為されたものである。つまり、本発明の最たる課題は、pH緩衝液中でも優れた分散安定性を呈する磁性粒子(より具体的には磁性マーカー粒子)を提供することであり、好ましくは、pH緩衝液中において実用上十分な分散安定性と磁気捕集性とを併せて呈する磁性マーカー粒子を提供することである。
このように、磁性マーカー粒子として使い勝手を向上させるためには実用上十分な分散性を確保しつつ、実用上十分な磁気捕集性を確保する必要がある。ここで、実用上十分な分散性を確保する上で磁気凝集が問題となるので、その磁気凝集をなくす(低下させる)ために保磁力をなくす(低下させる)ことが考えられる。この保磁力をなくす(低下させる)ためには、一般的な手法として超常磁性の20nm以下にする必要があるが、そうすると今度は実用上十分な磁気捕集性がなくなるという問題が生じてくる。つまり、実用上十分な分散性を確保しつつ、実用上十分な磁気捕集性を確保するのは困難であり、トレードオフの問題が伴うことになる。
そこで、本願発明者らは従来技術の延長線上で対応するのではなく、新たな方向で対処することを考えた。具体的には、本願発明者らは磁気異方性に着目した。つまり、磁気捕集ができる粒径を維持しつつ、保磁力をなくす(低下させる)ために、保磁力の原因となる磁気異方性をなくす(低下させる)という点に着目した。磁気異方性としては、粒子の結晶構造に起因する“結晶磁気異方性”と、粒子の形状に起因する“構造磁気異方性”とが存在する。結晶磁気異方性は物質により変わらないので、形状に起因する構造磁気異方性を下げることが重要と考えた。ここで、構造磁気異方性が低いということは等方的あることだが、最も等方的な構造は球状構造と考えられる。つまり、球状を持つ粒子を作成すれば、保磁力が低い粒子を得られることに行き着いた。
球状の磁性粒子を作る試みは以前より行われているもの、粒度分布が比較的広い点で問題がある(例えば特許文献6、および非特許文献2、3、4を参照されたい)。特に、前者の特許文献では粒子表面に合成時に用いた糖が残っている可能性があり、表面の均一性や、実際に磁性マーカーにした場合に非特異結合が生じる可能性があり、これらの点は実用上懸念すべきことである。
以上のように、“分散性”と“磁気捕集性”とを兼ね備えた粒子は必要とされているものの、「そのように相反する性質を兼ね備えた粒子」というものは未だ作られていないというのが現状である。特にバイオテクノロジー分野またはライフサイエンス分野において分散媒として用いられるpH緩衝液については、それに含まれる磁性粒子の分散安定性および磁気捕集性の挙動に関して実質的な検討は行われていない。
従って、本発明では、pH緩衝液中でも実用上十分な分散安定性を呈しつつも、実用上十分な磁気捕集性を持つといった、トレードオフの問題により好適に対処した磁性マーカー粒子を提供することも課題としている。
本発明者らは、まず、上記の最たる課題を解決すべく鋭意検討した結果、磁性粒子の表面に形成するポリマーの成分組成および立体的構造に着目することによって、緩衝溶液中において分散性および分散安定性に優れている磁性マーカー粒子を得ることを見出した。また、凝集粒径を制御することによって実用上分散安定性に問題がないだけでなく、磁気捕集性の点でも優れた磁性マーカー粒子を得ることを見出し、本発明を完成させた。
更には、本発明者らは、磁性粒子の形状を球状にし、かつ、その磁性粒子の表面に形成するポリマーの成分組成および立体的構造を更に加味するといった技術的思想に基づいて、緩衝溶液中において分散性および分散安定性に優れた磁性マーカー粒子を得ることができることも見出した。そして、凝集粒径を制御することを併せて考慮することによって、低い保磁力に起因して磁場印加後も実用上分散安定性に問題がなく、かつ磁気捕集性も高い磁性マーカー粒子を得ることができることを見出した。
本発明で提供される磁性マーカー粒子は、磁性粒子とその磁性粒子の表面に被着したポリマー(以下では「被着ポリマー」とも称す)とを有して成る粒子である。かかる磁性マーカー粒子では、被着ポリマーが第1親水性基と第2親水性基との少なくとも2種類の親水性基を含んで成り、第2親水性基が立体的に嵩高い構造を形成する官能基となっている。このような磁性マーカー粒子をpH緩衝溶液に分散させて得られるpH緩衝分散液については、以下の式1で表される沈降速度の値V(即ち、後述するように、分散安定度の尺度I)が約1.0×10−3〜約6.0の範囲または場合によっては約0.5×10−3〜約10の範囲もしくは約2.5×10−3〜約4.0などの範囲となっており、高い分散安定性ないしは実用上十分な分散安定性を有している。

上記[式1]における「緩衝溶液」は、具体的にいえばリン酸バッファー生理食塩水(PBS)pH7.2のことを実質的に指している。下記の[式2]および[式3]における「緩衝溶液」も同様で、リン酸バッファー生理食塩水(PBS)pH7.2のことを実質的に指している。
ある好適な態様では、被着ポリマーに含まれる第1親水性基はノニオン系もしくは双性イオン系の官能基である。ノニオン系官能基は、例えば、ヒドロキシル基、ピロリドン基およびアミド基から成る群から選択される少なくとも1種以上の官能基であってよい。また、双性イオン系官能基は、たとえばベタイン基であってよい。尚、ここでいう「ベタイン基」とは、正電荷と負電荷とが隣り合わない位置に配置され全体として電荷を有さない官能基または分子構造のことを実質的に意味している。
ある好適な態様では、第2親水性基の立体的に嵩高い構造が架橋構造に少なくとも起因している。第2親水性基は、例えば、ポリエチレングリコール鎖であってよい。
ある好適な態様では、磁性マーカー粒子の緩衝溶液中の沈降速度の値Vを水中の沈降速度の値Vで除して得られる沈降速度比Rが約0.5〜約30の範囲、好ましくは約0.5〜約20の範囲、より好ましくは約0.5〜約1.5の範囲となっている(式2参照):

一般に、緩衝溶液中のほうが分散安定性が悪くなるので、上記Rの値によって、水を基準にした緩衝溶液中での分散安定性の比較が可能となる。本発明では、水を基準にした緩衝溶液中での分散安定性を示すRの値は0.5〜30の範囲、好ましくは約0.5〜約20の範囲、より好ましくは0.5〜1.5の範囲となっている。これは、1に近いため、本発明の磁性マーカー粒子は、緩衝溶液中でも水と変わらない分散安定性を有しているといえる。尚、ここでいう「水」は、イオン交換水、滅菌水または超純水等の水を指しているが、特には超純水のことを指している。
別のある好適な態様では、磁性マーカー粒子を含んで成る緩衝溶液について、以下の式3で表される磁性マーカー粒子の沈降速度のV’の値が約1.0×10−6〜約1.0×10−4の範囲となっている(ある場合ではV’は約4.5×10−6〜約7.5×10−5もしくは約4.5×10−6〜約3.5×10−5となっている):

上記式1のVは粒径に依存することになるが、粒径の2乗で除することで、粒径依存をなくせることがストークスの式より理解できる。そこで、式3においては、一次粒径の2乗で除しており、凝集度合いの影響は残した沈降速度V’が把握される。本発明では、式3で表される磁性マーカー粒子の沈降速度の値V’は1.0×10−6〜1.0×10−4の範囲となっており、高い分散安定性ないしは実用上十分な分散安定性を有しているといえる。ちなみに、「一次粒径」とは、緩衝溶液に分散させる前の状態における粒径サイズのことであり、粒子の透過型電子顕微鏡写真または光学顕微鏡写真に基づいて例えば300個の粒子のサイズを測定し、その数平均として算出した粒子サイズを実質的に意味している。
本発明の磁性マーカー粒子は、緩衝溶液中に分散させた際に優れた分散安定性および分散性を呈するものである。特に好ましい態様では、本発明の磁性マーカー粒子は、分散安定性が実用上十分かつ磁気捕集速度も実用上十分となっている。ここで本明細書にいう「実用上十分」とは、各種用途(即ち、後述するように、バイオテクノロジー分野またはライフサイエンス分野において、体外診断などの検査薬用、医療、研究分野でのDNAやタンパクなど生体物質の回収や検査、また、ドラッグデリバリーシステム(DDS)等の用途)の各操作中にて問題が生じないということである。より具体的に言えば、「実用上十分」とは、磁性マーカー粒子を含んで成る緩衝溶液について“少なくとも10分程度の分散安定性が呈されること”あるいは“10分以内に磁性マーカー粒子の磁気捕集ができること”を実質的に意味している。
本発明の磁性マーカーは、その表面に被着しているポリマーが「第1親水性基」と「立体的に嵩高い構造を形成する第2親水性基」との少なくとも2種類の親水性基を含んで成り、緩衝溶液中に分散させた際に優れた分散安定性および分散性を呈し、ある好適な態様では、実用上十分な分散安定性・分散性を呈するだけでなく、実用上十分な磁気捕集性をも呈することを特徴としている。
本明細書において「磁性マーカー粒子」とは、バイオテクノロジー分野またはライフサイエンス分野において、体外診断などの検査薬用、医療、研究分野でのDNAやタンパクなど生体物質の回収や検査、また、ドラッグデリバリーシステム(DDS)等の用途に用いられる「磁性を有する粒子」を実質的に意味している。磁性マーカー粒子は、一般には平均粒径サイズ20〜500nmの単一の粒子であることが望ましいが、このような粒子が複数個で存在する形態として用いてもよい。
また、本明細書において「緩衝溶液」または「pH緩衝分散液」とは、酸または塩基が加えられた際にpHの変化を打ち消そうとする緩衝作用を有する流体を意味しており、特には、メディカルサイエンスやバイオサイエンスの分野において用いられる「pHが略一定に保たれる液体」を指している。上述したように、上記の式1〜3についていえば、緩衝溶液はリン酸バッファー生理食塩水(PBS)pH7.2のことを指している。
更に、本明細書において、「磁性粒子に被着したポリマー」とは、ポリマーが粒子本体の表面全体を覆っている態様のみならず、ポリマーが粒子本体の表面の一部に被着している態様」をも実質的に包含している。好ましくは、本発明の磁性マーカー粒子では、物理的結合ではなく化学的結合によってポリマーが粒子本体に被着している。そのような特徴に起因して、本発明の磁性マーカー粒子では被着ポリマー量が比較的少なく、例えば磁性マーカー粒子の全重量基準で1〜20重量%程度となっている。
更に、本明細書において「立体的に嵩高い構造」とは、分子鎖が三次元的に延在することにより官能基の見かけ上の体積が大きくなっている態様を実質的に意味している。例えば、第2親水性基がポリエチレングリコール鎖(PEG)である場合を例にとると、図2に示すように分子鎖間を架橋した状態となっている構造に相当し得る(かかる場合、PEG鎖長、即ち、PEG単位の個数nは3〜50程度、好ましくは5〜25程度、より好ましくは6〜12程度であり得る)。
ある好適な態様では、被着ポリマーが「ヒドロキシル基、ベタイン基、ピロリドン基およびアミド基から成る群から選択される少なくとも1種以上の官能基(第1親水性基)」と「ポリエチレングリコール鎖(第2親水性基)」との組合せを含んで成る。これにより、各種官能基および鎖が相乗的に作用して粒子の高い分散安定性に効果的に寄与し得る。
磁性マーカー粒子のコア部分に相当する磁性粒子本体の材質は、粒子が全体的として磁性を帯びることになる限り、特に限定されるものではない。例えば、磁性マーカー粒子の本体がフェライトを含んで成る。
本発明の磁性マーカー粒子は、上述したように、実用上十分な磁気捕集性を呈し得る。かかる特性を具体的にいえば、本発明の磁性マーカー粒子を含んで成る緩衝溶液(磁性マーカー粒子の分散粒径:約200nm〜約700nm、磁性マーカー粒子の濃度:約0.1〜0.3mg/mL)について約0.36Tの磁場下において緩衝溶液中の磁性マーカー粒子を磁気捕集すると、緩衝溶液の相対吸光度が約0.1〜約0.2(磁気捕集操作前の初期値は1)になるまでの時間が約60秒以内となっている。
また、ある好適な態様では、本発明の磁性マーカー粒子は、磁気捕集後の再分散性も優れている。つまり、磁気捕集により粒子を一旦凝集させた場合でもあっても、その凝集状態を容易に解除することができ、粒子の再使用が可能となる。かかる特性を具体的にいえば、本発明の磁性マーカー粒子を含んで成る緩衝溶液について“緩衝溶液中の磁性マーカー粒子を磁気捕集した後で超音波照射により分散させる処理”を10回繰り返した場合、その処理前の状態を基準にした「磁性マーカー粒子の分散粒径の増加率」は約5%以下におさえられている。
ある好適な態様では、本発明の磁性マーカー粒子は、その一次粒径(即ち、緩衝溶液に分散させる前の状態における粒径サイズ)が20nm〜600nm(例えば20nm〜500nm)となっている。このような粒径サイズに起因して、本発明の磁性マーカー粒子は、強磁性を呈し得る。換言すれば、本発明の粒子は、好ましくは、強磁性粒子であるといえる。
ある好適な態様では、本発明の磁性マーカー粒子には「生体物質結合性物質」および/または「生体物質結合性官能基」が固定化されている。換言すれば、本発明の磁性マーカー粒子では、その表面に「生体物質(標的物質)を結合させることが可能な物質または官能基」が結合している。生体物質結合性物質または生体物質結合性官能基の固定化ためにカルボキシル基、ヒドロキシル基およびそれらの誘導体(例えばベタイン構造を有するカルボキシル基)から成る群から選択される少なくとも1種が導入されていてもよい。このように本発明の磁性マーカー粒子には生体物質結合性物質または生体物質結合性官能基が固定化されているので、生体物質と本発明の粒子とを共存させると、生体物質が粒子に結合することができ、ひいては、本発明の粒子を生体物質検出用の“マーカー”として好適に用いることができる。ここで、「生体物質(標的物質)」とは、メディカルサイエンスやバイオサイエンスの分野において常套的に用いられる物質であって、粒子に直接的または間接的に結合できるものであれば、いずれの種類の物質であってもかまわない。具体的な生体物質としては、例えば、核酸、蛋白質(例えばアビジンおよびビオチン化HRPなども含む)、糖、脂質、ペプチド、細胞、真菌、細菌、酵母、ウィルス、糖脂質、糖蛋白質、錯体、無機物、ベクター、低分子化合物、高分子化合物、抗体または抗原等を挙げることができる。
ここで、磁性粒子の形状を“球状”に特化した場合について述べると、本発明で提供される磁性マーカー粒子は、その一次粒子の長短半径比が1.0〜1.3の範囲となった略球形状を有している。つまり、磁性マーカー粒子は、全体として粒子が略球形状を有しており、特にコアとなる磁性粒子が“真球”となっている。
かかる本発明の磁性マーカー粒子は球形状であるがゆえ、球状粒子と称することができる。ここで「球形状」ないしは「球状」とは、粒子の長さが全方向で揃っている形状を指し、全体としてサイズ的に異方性のない形状を指している。換言すれば、球形状の磁性マーカー粒子は真球状であり、幾何学的な球面形状が真球状の粒子となっている。「真球」とは、中心を通る球直径が実質的に全て同一となっている球のことである。これらについて具体的に説明すると、「球形状を有する粒子」ないしは「球状粒子」とは、長短半径比(種々の方向で測定した場合の最大長さと最小長さとの比)が1.0〜1.3の範囲となった粒子のことを指している。かかる長短半径比は、粒子の透過型電子顕微鏡写真、走査型電子顕微鏡写真、または光学顕微鏡写真に基づいて例えば300個の粒子の最大寸法と最小寸法を測定し、その比を計算することにより求めることができる。
球形状の磁性粒子であっても、被着ポリマーに含まれる第1親水性基はノニオン系もしくは双性イオン系の官能基であることが好ましい(ノニオン系官能基は、例えば、ヒドロキシル基、ピロリドン基およびアミド基から成る群から選択される少なくとも1種以上の官能基であってよい。また、双性イオン系官能基は、たとえばベタイン基であってよい)。同様に、球形状の磁性粒子であっても、第2親水性基の立体的に嵩高い構造が架橋構造に少なくとも起因していることが好ましい(第2親水性基は、例えば、ポリエチレングリコール鎖であってよい)。「立体的に嵩高い構造」とは、分子鎖が三次元的に延在することにより官能基の見かけ上の体積が大きくなっている態様を実質的に意味している。例えば、第2親水性基がポリエチレングリコール鎖(PEG)である場合を例にとると、図2に示すように分子鎖間を架橋した状態となっている構造に相当し得る(かかる場合、PEG鎖長、即ち、PEG単位の個数nは3〜50程度、好ましくは5〜25程度、より好ましくは6〜12程度であり得る)。
このような球形状の磁性マーカー粒子をpH緩衝溶液に分散させて得られるpH緩衝分散液については、上記式1で表される沈降速度の値V(即ち、後述するように、分散安定度の尺度I)が約0.1〜約4.0の範囲または場合によっては約0.5〜約3.0の範囲もしくは約0.5〜約2.0の範囲となっており(例えばV=約0.5〜約1.5あるいは約0.8〜約1.5の範囲となっており)、高い分散安定性ないしは実用上十分な分散安定性を有している。
球形状の磁性マーカー粒子については、「緩衝溶液中の沈降速度の値Vを水中の沈降速度の値Vで除して得られる沈降速度比R」が0.5〜20、好ましくは1〜20、より好ましくは5〜9の範囲となっている(上記式2参照)。上記と同様であるが、緩衝溶液中のほうが分散安定性が悪くなるので、上記沈降速度比Rの値によって、水を基準にした緩衝溶液中での分散安定性の比較が可能となる。本発明では、かかる沈降速度比Rの値はより好ましくは5〜9となっている。これは、1に近いため、球形状の磁性マーカー粒子は、緩衝溶液中でも水と変わらない分散安定性を有しているといえる。
球形状の磁性マーカー粒子を含んで成る緩衝溶液については、上記式3で表される磁性マーカー粒子の沈降速度のV’の値が1.0×10−6〜1.0×10−4の範囲となっている(ある場合ではV’は約0.1×10−5〜約3.0×10−5ないしは0.5×10−5〜約2.0×10−5となっている)。このように、球形状の磁性マーカー粒子であっても、式3で表される磁性マーカー粒子の沈降速度の値V’は1.0×10−6〜1.0×10−4の範囲となっているので、高い分散安定性ないしは実用上十分な分散安定性を有しているといえる。
球形状の磁性マーカー粒子であっても、緩衝溶液中に分散させた際に優れた分散安定性および分散性を呈するものであり、より具体的には、分散安定性が実用上十分となっているだけでなく、磁気捕集速度も実用上十分となっている。
「実用上十分な磁気捕集性」について具体的にいえば、球形状の磁性マーカー粒子は、それを含んで成る緩衝溶液(磁性マーカー粒子の分散粒径:約200nm〜約700nm、磁性マーカー粒子の濃度:約0.1〜0.3mg/mL)につき約0.36Tの磁場下において緩衝溶液中の磁性マーカー粒子を磁気捕集すると、緩衝溶液の相対吸光度が約0.1〜約0.2(磁気捕集操作前の初期値は1)になるまでの時間が約60秒以内となっている。
球形状の磁性マーカー粒子であっても、磁気捕集後の再分散性は優れている。つまり、磁気捕集により粒子を一旦凝集させた場合でもあっても、その凝集状態を容易に解除することができ、粒子の再使用が可能となる。例えば、球形状を有する磁性マーカー粒子を含んで成る緩衝溶液について、その磁性マーカー粒子に着磁処理と再分散処理とを行った際、磁性マーカー粒子の分散粒径の増加率が2%以内に抑えられている(分散粒径の増加率=「着磁処理および再分散処理を行った後の分散粒子」/「着磁処理および再分散処理を行う前の分散粒子」×100)。かかる特性を具体的に述べると、球形状の磁性マーカー粒子を含んで成る緩衝溶液について“緩衝溶液中の磁性マーカー粒子を磁気捕集した後で超音波照射により分散させる処理”を10回繰り返した場合、その処理前の状態を基準にした「磁性マーカー粒子の分散粒径の増加率」が約2%以下におさえられる、といったことになる。
球形状の磁性マーカー粒子は、その一次粒径(即ち、緩衝溶液に分散させる前の状態における粒径サイズ)が20nm〜600nmとなっていることが好ましい。このような粒径サイズに起因して、球形状の磁性マーカー粒子は、強磁性を呈し得る。換言すれば、球形状の粒子は、好ましくは強磁性粒子であるといえる。
球形状の磁性マーカー粒子は、一般には平均粒径サイズ20〜600nmの単一の粒子であることが望ましいが、このような粒子が複数個で存在する形態として用いてもよい。この点、本発明に係る球形状の磁性マーカー粒子は、粒径分布を示すCV値が好ましくは18%以下となっている。ここでCV値とは、変動係数(Coefficient of Variation)のことを指している。より具体的には、本明細書における「CV値」は、粒子サイズ測定により得られた全データを統計処理して算出される係数であって、以下の式4により定義される。
[式4]

球形状の磁性マーカー粒子であっても、被着ポリマーが「ヒドロキシル基、ベタイン基、ピロリドン基およびアミド基から成る群から選択される少なくとも1種以上の官能基(第1親水性基)」と「ポリエチレングリコール鎖(第2親水性基)」との組合せを含んで成ることが好ましい。これにより、各種官能基および鎖が相乗的に作用して粒子の高い分散安定性に効果的に寄与し得る。
球形状を有する磁性マーカー粒子は、飽和磁化量が好ましくは2〜100A・m2/kg(emu/g)となっており、また、保磁力が好ましくは約0.3kA/m〜約6.5kA/mとなっている(より具体的には保磁力が0.399kA/m〜6.38kA/mとなっている)。磁性マーカー粒子のコア部分に相当する磁性粒子本体の材質は、粒子が全体的として磁性を帯びることになる限り(特に上記のような飽和磁化量および/または保磁力を有する限り)、特に限定されるものではない。例えば、磁性マーカー粒子の本体がフェライトまたはマグネタイトを含んで成る。
本発明では、上記磁性マーカー粒子を製造する方法も提供される。かかる本発明の製造方法は、ポリマー原料を用いて磁性粒子にポリマーを被着させる工程を含んで成り、ポリマー原料が「重合可能な部位と第1親水性基とを有する化合物」および「第2親水性基となる、少なくとも2つの重合可能な部位を有する架橋性官能基を含む化合物」を含んで成ることを特徴としている。
本明細書にいう「重合可能な部位」とは、二重結合部位やペプチド結合可能な部位、アミド結合可能な部位などの反応性に富む部位を実質的に意味している。
本発明の製造方法において磁性粒子は市販のものを用いてもよいし、あるいは、以下の工程(i)および(ii)を含んで成る方法によって調製してもよい:
(i)鉄イオンを含んで成る水溶液とアルカリ水溶液とを混合し、得られる混合水溶液中で「鉄元素を含んで成る水酸化物」を析出させる工程、および
(ii)混合水溶液を加熱処理に付し、水酸化物から磁性粒子を形成する工程。
ある好適な態様では、工程(ii)において、水とグリセリンとを含んで成る混合溶液中で水酸化物をソルボサーマル反応に付す。また、ある好適な態様では、工程(ii)では、加熱処理に際して、混合溶液にマイクロ波を照射する。即ち、加熱源としてマイクロ波を用いる。
好ましくは、本発明の製造方法は、磁性粒子および/またはポリマーに対して生体物質結合性物質または生体物質結合性官能基を固定化する工程を更に含んで成る。
更に、本発明では、上記磁性マーカー粒子を含んで成る緩衝溶液も提供される。かかる緩衝溶液は、媒体としての緩衝液中に上記磁性マーカー粒子が分散して成り、上記の式1で表される沈降速度の値V(即ち、分散安定度の尺度I)が約1.0×10−3〜約6.0の範囲または場合によっては約0.5×10−3〜約10の範囲もしくは約2.5×10−3〜約4.0の範囲となっており、高い分散安定性ないしは実用上十分な分散安定性を有していることを特徴とする。本発明の緩衝溶液のある好適な態様では、上記の式3で表わされる磁性マーカー粒子の沈降速度の値V’は約1.0×10−6〜約1.0×10−4の範囲または場合によっては約4.5×10−6〜約7.5×10−5の範囲となっており、高い分散安定性ないしは実用上十分な分散安定性を有している。さらに、本発明の緩衝溶液に含まれる磁性マーカー粒子の沈降速度Vが水中の磁性マーカー粒子の沈降速度の値Vで除されて得られる沈降速度比V/V(即ち、上記式2で表わされるRの値)は約0.5〜約30、より好ましくは約0.5〜約20、更に好ましくは約0.5〜約1.5となっている。それゆえ、本発明の緩衝溶液の分散安定性(即ち、それに含まれる磁性マーカー粒子の分散安定性)は、水中における分散安定性と大きな差はない。
本発明の緩衝溶液のある好適な態様では、含まれる磁性マーカー粒子の分散粒径が約200nm〜約700nmであって、磁性マーカー粒子の濃度が約0.1〜0.3mg/mLとなっており、約0.36Tの磁場下において緩衝溶液中の磁性マーカー粒子を磁気捕集すると、緩衝溶液の相対吸光度が約0.1〜約0.2(磁気捕集操作前の初期値は1)になるまでの時間が約60秒以内となっている。更に本発明の緩衝溶液の別のある好適な態様では、“緩衝溶液中の磁性マーカー粒子を磁気捕集した後で超音波照射により分散させる処理”を10回繰り返した場合、その処理前の状態を基準にした「磁性マーカー粒子の分散粒径の増加率」は約5%以下におさえられている。
球形状の磁性マーカー粒子が分散して成る緩衝溶液についていえば、上記の式1で表される沈降速度の値V(即ち、分散安定度の尺度I)が約0.1〜約4.0の範囲、または場合によっては約0.5〜約3.0の範囲もしくは約0.5〜約2.0の範囲となっており、実用上十分な分散安定性ないしは実用上十分な分散安定性を有している。また、球形状の磁性マーカー粒子の分散緩衝溶液では、磁性マーカー粒子の分散粒径が約200nm〜約700nmであって、磁性マーカー粒子の濃度が約0.1〜0.3mg/mLとなっており、約0.36Tの磁場下において緩衝溶液中の磁性マーカー粒子を磁気捕集すると、緩衝溶液の相対吸光度が約0.1〜約0.2(磁気捕集操作前の初期値は1)になるまでの時間が約60秒以内となっている。更に球形状の磁性マーカー粒子の分散緩衝溶液では、“緩衝溶液中の磁性マーカー粒子を磁気捕集した後で超音波照射により分散させる処理”を10回繰り返した場合、その処理前の状態を基準にした「磁性マーカー粒子の分散粒径の増加率」は約2%以下におさえられている。
本発明の磁性マーカー粒子は、その磁気特性・粒子サイズがメディカルサイエンスやバイオサイエンスの分野でマーカーとして用いるのに好適であるだけでなく、特に界面活性剤を用いなくてもpH緩衝溶液中で優れた分散性および分散安定性を呈するものである。分散安定性についていえば、従来の磁性粒子を含んだ緩衝溶液における上記の式1で表される沈降速度Vの値が一般的に約60[μm/(s・G)]程度であるのに対して、本発明の磁性マーカー粒子の場合では、沈降速度Vが1.0×10−3〜6.0[μm/(s・G)]の範囲(例えば約2.5×10−3〜約2)となっている。ここで、式1で表わされる沈降速度Vは、後述で詳述するが、いわゆる“静置下における緩衝溶液中の分散粒子の沈降速度”と同一視することができ、その値が小さいほど分散安定性が高いことを示している一方、逆にその値が大きいほど分散安定性が低いことを示している。よって、分散粒径が大きければ、このV値は大きくなる。本発明の磁性マーカー粒子の緩衝溶液中における分散安定性は、ほぼ同じ1次粒径を持つ従来の磁性粒子よりも少なくとも10倍(より具体的には10倍〜60000倍、即ち、少なくとも10倍〜10000倍程度)高くなっているといえる。
また、磁性マーカー粒子の緩衝溶液中の沈降速度の値Vを水中での沈降速度の値Vで除した沈降速度比V/Vの値が0.5〜20、好ましくは0.5〜1.5であり、水中と緩衝溶液中での沈降速度の差があまりないことを示している。さらに、該磁性マーカー粒子を含んで成る緩衝溶液について式3で表される該磁性マーカー粒子の沈降速度の値V’が1.0×10−6〜1.0×10−4の範囲(例えば4.5×10−6〜3.5×10−5)となっている。V’はVと異なり、1次粒径の2乗で除した値となっている。こうすることで、一次粒径が異なっていても、粒子の凝集状態の単純比較が可能であるが、そのV’に基づいた場合であっても、本発明の磁性マーカー粒子の緩衝溶液中における分散安定性は高いといえる。
分散性についていえば、動的光散乱法(DLS法)を用いて測定された「緩衝溶液中の磁性マーカー粒子の粒径(即ち、分散粒径)」は、従来の粒径よりも小さくなっている。つまり、本発明では緩衝溶液中の凝集は抑えられており、それゆえ、小さな粒子を用いた利点が大きく損なわれていない。具体的には、本発明の磁性マーカー粒子では、緩衝溶液に分散させた際に測定される分散粒径Dpが一次粒径D(=「緩衝溶液に分散させる前の粒子を顕微鏡で目視測定した粒径」)の1.1〜6倍程度(場合によっては1.5〜6倍程度または1.1〜1.8倍程度)となっている。この点、従来の磁性粒子を含んだ緩衝溶液で測定される分散粒径Dpが一次粒径Dの6〜40倍程度となっていることに鑑みると、本発明の磁性マーカー粒子では、従来よりも分散性が優れているといえる。尚、更にいえば、本発明の磁性マーカー粒子が分散した緩衝溶液では、分散粒径が比較的揃っており、粒度分布も優れている。
分散粒径Dpが小さすぎると、高い分散安定性が供されるものの磁気捕集性が低下し得る。換言すれば、磁気捕集性を議論する場合にはDpが重要となり、あまりにDpが小さくなると、凝集粒子1つあたりにかかる捕集するための力が小さく、捕集されにくい。しかしながら、分散安定性を求めるためには、Dpが小さいほうが良い。すなわち、磁気捕集性と分散安定性は相反する関係といえる。この点、本発明の磁性マーカー粒子の好適な態様では、分散粒径Dpが200〜700nmとなっており、分散安定性および磁気捕集性ともに実用上問題ないものとなっている(Dpがこの範囲に入っていれば、Dが小さくなっていても実用上問題ない)。即ち、本発明は、Dpを制御することで、使用する際に特別な操作なく、磁気捕集性と分散安定性を実用上問題なく両立することができている点でも特徴を有している。
更に好適な態様では、本発明の磁性マーカー粒子は、磁気捕集後の再分散性も優れているので、同一用途または別の用途において再度使用することが可能となる(特に、その再使用において生体物質への結合能が大きく低下しない)。
このようなpH緩衝溶液中での本発明の優れた効果は、特定の理論に拘束されるわけではないが、次のような本発明の粒子の特徴的な成分組成および立体的構造に起因している。

・例えば緩衝溶液中で電離した官能基の負電化による静電反発があると、高い分散能力を持つものの、pH緩衝液中では、そこに含まれる塩によって、負電荷が中和されて静電反発が小さくなってしまう。それゆえ、緩衝溶液中における分散性は低下してしまうことになる。本発明のように、第1親水性基、例えば、ヒドロキシル基、ピロリドン基またはアミド基などのノニオン系官能基をポリマー中に持つ場合、それらとPEGのエーテル結合部(−O−)は水和力が高く、かつ中和可能な電荷を持つことがないので、pH緩衝液の塩による中和の影響を実質的に受けることがない。また、ベタイン基などが含まれる場合では親水性のカルボキシル基などが分子内で電荷中和されており、同様にpH緩衝液の塩による中和の影響を実質的に受けることがない。

・本発明では、PEGの両末端に重合可能な基を有し得るので、ポリマー間を架橋することになり、粒子の立体障害が大きくなっており、この立体的な効果が“分散安定性の向上”や“磁気捕集後の再分散性の向上”に有効に寄与し得る(後述で参照する図2を参照のこと)。
尚、球形状の磁性マーカー粒子に特化して述べれば、かかる磁性マーカー粒子は、粒径分布の良好な球形状の磁性マーカー粒子となっている。上記と同様、球形状の磁性マーカー粒子は、磁気特性・粒子サイズがメディカルサイエンスやバイオサイエンスの分野でマーカーとして用いるのに好適であるだけでなく、特に界面活性剤を用いなくてもpH緩衝溶液中で優れた分散性および分散安定性を呈するものである。分散安定性についていえば、従来の磁性粒子(即ち、不定形・非球状の磁性粒子やポリマー被着されていない粒子)を含んだ緩衝溶液における上記の式1で表される沈降速度Vの値が一般的におよそ6〜60[μm/(s・G)]程度であるのに対して、球形状の磁性マーカー粒子の場合では、沈降速度Vが約0.1〜約4.0[μm/(s・G)]の範囲となっている。球形状の磁性マーカー粒子の緩衝溶液中における分散安定性は、従来の磁性粒子よりも数十倍〜数百倍(例えば10〜40倍程度)高くなっている。同様に、球形状の磁性マーカー粒子につき、式3で表わされる沈降速度の値V’は1.0×10−6〜1.0×10−4の範囲となっており、粒径依存を排除して考慮したとしても、球形状の磁性マーカー粒子の緩衝溶液中における分散安定性は高くなっている。また、式2で表わされるRの値が好ましくは5〜9となっており緩衝溶液中でも水とそれほど変わらない分散安定性を有している。
また、pH緩衝溶液中での本発明の上記優れた効果は、球形状の磁性マーカー粒子についていえば、粒子の特徴的な成分組成および立体的構造に起因して奏されるだけでなく、構造磁気異方性とも相俟って奏されることになる。
図1は、本発明の製造方法の工程を示すフローチャートである。 図2は、ポリエチレングリコール鎖に起因した粒子の立体障害を模式的に示した図である。 図3は、測定セル中の磁場の強さを測る態様を模式的に示した図である(図3(a):上面図、図3(b):側面図)。 図4は、“分散安定性評価”の結果を示した写真であって、一ケ月放置後の試験管内の分散状態を示している。 図5は、『沈降速度に基づく分散安定性評価』の実施に際して得られる生データ例を示したグラフ。 図6は、“磁気捕集性の評価”の結果を示したグラフである。 図7は、“再分散性の評価” の結果を示したグラフである。 図8は、“磁気捕集性の評価”の結果を示したグラフ(球形状に特化したケース)である。
以下にて、本発明の磁性マーカー粒子およびその磁性マーカー粒子の製造方法を詳細に説明する。
《本発明の磁性マーカー粒子》
本発明の磁性マーカー粒子は、コアとなる磁性粒子(以下では「コア粒子」とも称す)とそのコア粒子表面に被着したポリマーを有して成り、被着しているポリマーが第1親水性基と立体的に嵩高い構造を形成する第2親水性基との少なくとも2種類の親水性基を含んで成る。
本発明の磁性マーカー粒子は、バイオテクノロジー分野またはライフサイエンス分野のマーカーとしているのに好適な磁気特性およびサイズなどを有している。具体的には、磁性マーカー粒子の飽和磁化は好ましくは2A・m2/kg(emu/g)〜100A・m2/kg(emu/g)であり、より好ましくは4A・m/kg(emu/g)〜90A・m/kg(emu/g)となっている。マーカー粒子の飽和磁化が上記に示す下限値を下回ると、粒子の磁界に対する感応性が低くなり、磁気応答性が低下してしまう傾向にある。その一方で、磁性マーカー粒子の飽和磁化が上記に示す上限値を上回ると、粒子が磁気的に必要以上に凝集して、その分散性が低下し得る。尚、本明細書における飽和磁化の数値は、例えば振動試料型磁力計(東英工業(株)製)を用いて、796.5kA/m(10キロエルステッド)の磁界を印加したときの磁化量を測定することにより得られる数値である。一方、磁性マーカー粒子の保磁力は、好ましくは0.079kA/m〜15.93kA/m(10〜200エルステッド)であり、より好ましくは1.59kA/m〜11.94kA/m(20エルステッド〜150エルステッド)である。特に球形状の磁性マーカー粒子に特化して述べると、磁性マーカー粒子の保磁力は、好ましくは0.399kA/m〜6.38kA/m(5〜80エルステッド)であり、より好ましくは0.399kA/m〜4.79kA/m(5〜60エルステッド)であり、更に好ましくは0.399kA/m〜3.19kA/m(5エルステッド〜40エルステッド)である。ある一例を挙げると球形状の磁性マーカー粒子の保磁力は例えば3.0kA/m〜4.0kA/mである。
磁性マーカー粒子は、捕集するときに印加された磁界・磁場によってある程度磁化され得るが、保磁力が上記に示す上限値を上回ると粒子間の凝集力が必要以上に大きくなり、その分散性が低下し得る。その一方で、上記に示す下限値を下回る保磁力を得る場合では、使用するコア粒子の種類や、さらにはコア粒子の合成方法までもが制約を受けることになってしまう。本明細書における保磁力の数値は、例えば振動試料型磁力計(東英工業(株)製)を用いて、796.5kA/m(10キロエルステッド)の磁界を印加して磁化を飽和させた後、磁界をゼロに戻し、さらに逆方向に磁界を徐々に増加させながら印加して、磁化の値がゼロになる印加磁界の強さから得られる数値である。
上記のような磁気特性を有する限り、本発明の磁性マーカー粒子の“コア粒子”はいずれの粒子であってもよい。例えば、コア粒子は、超常磁性粒子でなく強磁性粒子となっていることが好ましく、例えば強磁性酸化物粒子となっている(球形状の磁性マーカー粒子に特化して述べると、“球状の強磁性酸化物粒子”となっているといえる)。ここでいう「強磁性」とは、磁場に応答して実質的に永久磁化され得るものを意味している。また、「強磁性酸化物粒子」とは、金属酸化物粒子であり、磁気応答性(磁界に対する感応性)を有する粒状物を指している(「磁気応答性を有する」とは、磁石等による外部磁界・外部磁場が存在するとき、磁界・磁場により磁化する、あるいは磁石に吸着するなど、磁界・磁場に対して感応性を示すことを意味している)。強磁性酸化物としては、特に制限はなく、鉄、コバルト、ニッケルなどの公知の金属、ならびにそれらの合金および酸化物が挙げられる。特に磁界・磁場に対する感応性に優れることから、強磁性酸化物粒子は強磁性酸化鉄であることが好ましい。かかる粒子の強磁性酸化鉄としては、公知の種々の強磁性酸化鉄を使用することができる。特に、化学的安定性に優れることから、強磁性酸化鉄は、マグヘマイト(γ−F e)、マグネタイト(Fe)、ニッケル亜鉛フェライト(Ni1−XZnFe)およびマンガン亜鉛フェライト(Mn1−xZnFe)から成る群から選択される少なくとも1種のフェライトであることが好ましい。これらの中でも大きな磁化量を有しており、磁界・磁場に対する感応性に優れるマグネタイト(Fe)が特に好ましい。尚、用途や表面処理によっては、鉄やニッケル等の磁性金属または合金も使用することが可能である。
ちなみに、バイオなどの分野でよく用いられる磁性粒子は超常磁性を持つものが極めて多い。“超常磁性”が多い理由は、超常磁性粒子は残留磁化、保磁力が極めて小さいため、特段の処理をしなくても、磁気捕集後の再分散に影響を及ぼさないからである。一方、保磁力のある強磁性を持つ粒子を用いると、特段の処理をしなければ、磁気凝集の問題が発生し、使いにくいものとなる。一般にマグネタイトなどの酸化鉄が超常磁性を示す一次粒径は20nmよりも小さいとされ、それ以上の粒径では、強磁性を示すこととなる。
本発明の磁性マーカー粒子の平均粒径サイズ(一次粒径)は、好ましくは約5nm〜約1000nm、より好ましくは約20nm〜約600nm、更に好ましくは約20nm〜約500nm、例えば約20nm〜約400nm程度もしくは約20nm〜約300nm程度となっている。球形状の磁性マーカー粒子に特化して述べると、球形状の磁性マーカー粒子の平均粒径サイズ(一次粒径)は、約20nm〜約6000nm、好ましくは約20nm〜約600nm、より好ましくは約20nm〜約500nm、更に好ましくは約20nm〜約400nm程度(例えば、100nm〜270nm)となっている。粒径サイズが上記の下限値を下回ると磁気特性を保持できなくなってしまう一方、粒径サイズが上記の上限値を上回ると、緩衝溶液に分散させた際に高い分散安定性を確保することができなくなってしまう。ここで、「粒径サイズ」とは、粒子(ポリマー被着層も含め)のあらゆる方向における長さのうち最大となる長さを実質的に意味している。そして、本明細書でいう「平均粒径サイズ」とは、粒子の透過型電子顕微鏡写真または光学顕微鏡写真に基づいて例えば300個の粒子のサイズを測定し、その数平均として算出した粒子サイズを実質的に意味している。
また、本発明の磁性マーカー粒子の形状は、球状、楕円状、米粒状、針状または板状などの各種形状となり得る。尚、本発明の磁性マーカー粒子の密度は、好ましくは3〜9g/cmであり、より好ましくは4〜6g/cmである。
ここで、磁気異方性を特に重視するならば、磁性マーカー粒子の形状は球状となっていることが好ましい。即ち、磁性マーカー粒子の全体的な形状が球形状をなしており、粒子の重心を通る種々の方向で測定した場合の重心から外周までの最長の長さ(長半径)と最小の長さ(短半径)との比である長短半径比が1.0〜1.3の範囲、好ましくは1.0〜1.25の範囲、より好ましくは1.0〜1.2の範囲となっていることが好ましい。このような長短半径比を有していることによって、粒子形状に起因する構造磁気異方性が低下し、保磁力の低いマーカー粒子が実現される。換言すれば、球形状の磁性マーカー粒子では、他の特徴的な成分組成および立体的構造などと相俟って、構造磁気異方性に起因して、実用上十分な分散性と磁気捕集性とを兼ね備えた粒子が実現されているといえる。なお、実際には上記長短径比は立体として測定することは困難なため、撮影した電子顕微鏡写真より計測する。長短半径比を簡単に求めることができる解析ソフトウェアとして、Image-Pro Plus(日本ローパー社)があり、「半径比」として求められる値が上記長短半径比に相当する。
ちなみに、保磁力を持つ要因として、形状に依存する形状磁気異方性と、物質に依存する結晶磁気異方性とがある。球状の磁性マーカーでは、形状磁気異方性がなくなると考えることができる。結晶磁気異方性は形状に依存しないため、マグヘマイト(γ−F e)、マグネタイト(Fe)、ニッケル亜鉛フェライト(Ni1−XZnFe)およびマンガン亜鉛フェライト(Mn1−xZnFe)などの物質により固有の値を持つ。このため、形状を球状にしても、一般に強磁性体とされる物質を用いている限りは、保磁力が0に近づくことがあったとしても、0になることはない。このように、単に球形であるからということだけで、20nm以上の粒子が超常磁性であるといえるわけではない。
球形状の磁性マーカー粒子についていえば、かかる球状磁性粒子の粒径に関するCV値(変動係数)は、0.01%〜19%であり、好ましくは0.1%〜18%であり、更に好ましくは0.1%〜17%である(例えば、あるい場合では、CV値は10%〜17%となる)。この値が大きいと、粒径のばらつきは大きくなり、マーカーとして使用した際の結果のばらつきの原因となるため、好ましくない。粒子の透過型電子顕微鏡写真または光学顕微鏡写真に基づいて例えば300個の粒子のサイズを測定し、それの統計処理を行うことで粒径に関しての変動係数を求めることができる。
本発明では、コア粒子の表面にポリマーが被着または結合している。即ち、本発明の磁性マーカーでは、コアとなる磁性粒子の表面にポリマー層が存在している。かかるポリマー層は、コア粒子表面の少なくとも一部に存在しており、好ましくはコア粒子を内包するように粒子表面全体に存在している。特に好ましい態様では、ポリマー層とコア粒子とは相互に化学的に結合しており、そのような“化学的結合”に起因して、磁性マーカー粒子におけるポリマーの被着量は比較的減じられている。具体的にいえば、磁性マーカー粒子におけるポリマーの被着量は、ポリマー原料の種類などに依存し得るものの、磁性マーカー粒子の全体重量基準で、1〜20重量%であり得、好ましくは2〜20重量%程度(例えば2〜17重量%程度)である。特に球形状の磁性マーカー粒子についていえば、かかる磁性マーカー粒子の全体重量基準で、1〜20重量%であり、好ましくは1〜10重量%、より好ましくは1〜5重量%程度である。ポリマー被着量が上記に示す上限値を上回ると、1つのコア粒子表面だけでなく、複数のコア粒子が一塊となるようにポリマーが存在し得る傾向が大きくなる一方、ポリマーの被着量が上記に示す下限値を下回ると、ポリマーに起因する分散能が低下することになり、複数のコア粒子同士が凝集する傾向が大きくなる。このようなポリマー被着量は、後述する「緩衝溶液中における分散性および分散安定性」に有効に寄与し得る。
本発明では、コア粒子の表面に被着しているポリマー(即ち「被着ポリマー」)が、「第1親水性基」と「立体的に嵩高い構造を形成している第2親水性基」との少なくとも2種類の親水性基を含んで成る。かかる場合、第1親水性基と立体障害構造を形成する第2親水性基との相互の作用に起因して、高い分散性を呈する磁性マーカー粒子が供されることになり、ひいては、実用上十分な“分散安定性”と“磁気捕集性”とを兼ねた磁性マーカー粒子も供されることになる。第1親水性基は、ノニオン系官能基(非イオン性官能基)もしくは双性イオン系官能基(両性官能基)であることが好ましく、例えば、ヒドロキシル基、ピロリドン基もしくはアミド基、または、ベタイン基などであってよい。一方、第2親水性基は、その立体的に嵩高い構造が架橋構造に起因しているものであることが好ましく、例えば、ポリエチレングリコール鎖などであってよい。
〈ヒドロキシル基〉
−OH

特定の理論に拘束されるわけではないが、第1親水性基として非イオン性のヒドロキシル基が被着ポリマーに存在すると、それが有するOH部の高い水和力に起因して、ヒドロキシル基が中和可能な電荷を持つことがないので、緩衝溶液に含まれる塩による中和の影響を実質的に受けることがない。このようなヒドロキシル基は、「重合可能な部位とヒドロキシル基とを有する化合物(例示すれば、ヒドロキシエチルアクリレート、特に2−ヒドロキシエチルアクリレート)」を原料として用いることによって導入できる。
〈ベタイン基(例えばカルボキシベタイン)〉
−N(CH)(CH)CHCOO

特定の理論に拘束されるわけではないが、第1親水性基として双性イオンのベタイン基、例示すれば両性のベタインのカルボキシメチルベタイン(例えば大阪有機化学工業製のGLBT:N,N−ジメチル−N−メタクリロイルオキシエチル−N−カルボキシメチル−アンモニウムベタイン)が被着ポリマーに存在すると、カルボキシル基と第4級アンモニウムとが同一モノマー分子中に存在する。このような化合物はモノマー分子内で電荷中和されているので、緩衝溶液に含まれる塩による中和の影響を実質的に受けることがない。このような両性(双性イオン)化合物としては、カルボキシベタイン(R(CH)+CHCOO-)、ジメチルアミンオキシド(R(CH)NO)、スルホベタイン(−N(CHSO )、ヒドロキシスルホベタイン(−N(CHCHCH(OH)CHSO )、イミダゾリニウムベタイン、β―アミノプロピオン酸(−NHC4COO)を含む化合物を挙げることができる。ベタイン基の被着ポリマーへの導入は「重合可能な部位とベタイン基とを有する化合物(例えば大阪有機化学工業のGLBT)」を原料として用いることによって行うことができる。ちなみに、単純にカルボキシベタイン、ジメチルアミンオキシドの量を増やすと後述のアビジンなどとの結合を行うことができず、最終的な磁性ビーズの性能が低下する原因となる。この量は使用方法に応じて適当な量があるので、使用目的に応じて変更する必要がある。
〈ピロリドン基〉

特定の理論に拘束されるわけではないが、第1親水性基として非イオン性のピロリドン基が被着ポリマーに存在すると、それが有する高い水和力に起因して、ピロリドン基が中和可能な電荷を持つことがないので、緩衝溶液に含まれる塩による中和の影響を実質的に受けることがない。このようなピロリドン基は「重合可能な部位とピロリドン基とを有する化合物(例示すればN-ビニル-2-ピロリドン(例えば“V−パイロール”)」を原料として用いることによって導入できる。
〈アミド基〉
−C(=O)−N−

特定の理論に拘束されるわけではないが、第1親水性基として非イオン性のアミド基が被着ポリマーに存在すると、それが有する高い水和力に起因して、アミド基が中和可能な電荷を持つことがないので、緩衝溶液に含まれる塩による中和の影響を実質的に受けることがない。このようなアミド基は、「重合可能な部位とアミド基とを有する化合物(例示すればN,N−ジメチルアクリルアミドやアクリルアミド)」を原料として用いることによって導入できる。
〈ポリエチレングリコール鎖〉
―[CHCHO]

第2親水性基としてのポリエチレングリコール鎖が被着ポリマーに存在する場合、特定の理論に拘束されるわけではないが、それが有するエーテル結合部の高い水和力に起因して、ポリエチレングリコール鎖が中和可能な電荷を持つことがないので、緩衝溶液に含まれる塩による中和の影響を実質的に受けることがない。ここで、導入に際して用いられる「少なくとも2つの重合可能な部位を有するポリエチレングリコール鎖の化合物」の場合、第1親水性基モノマーから成るポリマー間を架橋するので、ポリマーが嵩高くなり得る。つまり、粒子の立体障害が大きくなり(図2参照)、緩衝溶液中の粒子の分散性および分散安定性の向上に有効に寄与し得る。特に図2を参照すると分かるように、ポリエチレングリコール鎖が、ポリマー間を相互に橋渡しするように形成されており、粒子を全体的に取り囲むようにポリエチレングリコール鎖が存在している。ポリエチレングリコール鎖の導入に用いる「少なくとも2つの重合可能な部位を有するポリエチレングリコール鎖の化合物としては、例えば、ライトアクリレート(共栄社化学)を使用してもよい。
ノニオン系官能基(非イオン性官能基)としては、上記以外にも、エステル(カルボン酸エステル−COO−、チオエステル(−CO−S−)、リン酸エステル(O=P(O−))、硫酸エステル(−O−SO−O−)、炭酸エステル(−O−C(=O)−O−))、アミンオキシド(−N(CH→O)、エーテル(−O−)などを持つ化合物(例えば、アクリル酸2-ヒドロキシエチル(和光純薬工業製)、メタクリル酸2-ヒドロキシエチル(和光純薬工業製))をあげることができる。ちなみに、一般に分子鎖や分子量が増加すれば官能基が嵩高くなるので、そのように嵩高い親水性基は第2親水性基として好適に用いることができる。
更にいえば、親水性を供与する基としては、カルボキシル基や、スルホ基(スルホン酸基)のような陰イオン系(アニオン性)や、陽イオン系(カチオン性)、両性(双性イオン)があり、緩衝溶液中で上述と同様の効果が奏されるものであれば第1親水性基および/または第2親水性基として使用してよい。
・陰イオン系(アニオン性)としては、カルボキシル基、スルホ基(スルホン酸基)のほか、リン酸基を持つ化合物をあげることができる。また、スルホ基(スルホン酸基)は最末端が(−SO )であればよく、硫酸エステル(−OSO )、スルホコハク酸エステル(−OCCH(CHCOO)SO 、メチルタウリン(−CON(CH)CSO )、イセチオン酸(−COOCSO )なども含まれる。

・陽イオン系(カチオン性)としては、第4級アンモニウム塩(例えば、テトラアルキルアンモニウム塩)やピリジニウム塩、イミダゾリニウム塩などを含む化合物がある。
本発明の磁性マーカー粒子は、上記のような第1親水性基および第2親水性基を含有することによって高い分散安定性を主として呈することなるが、更に分散性を調整すべく、第3親水性基を含んでいてもよい。第3親水性基は、上記で例示した官能基と同じであってよいものの、好ましくは異なる種類の官能基であり、例えばスルホ基(スルホン酸基)であってよい。かかるスルホ基は、「重合可能な部位とスルホ基とを有する化合物(例えば、スチレンスルホン酸または2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸)」を原料として用いることによって、被着ポリマーに導入できる。尚、かかる第3親水性基は、分散安定性調整に加えて又は分散安定性とは別の観点から選択された官能基であってもよく、例えば、生体物質結合性物質または生体物質結合性官能基の固定化に供する官能基であってもよい(例示すればカルボキシル基、ヒドロキシル基などであってよい。
被着ポリマーが「第1親水性官能基としてヒドロキシル基、ベタイン基、ピロリドン基またはアミド基」と「第2親水性官能基としてポリエチレングリコール鎖」と含んで成る場合、それらのモル比、即ち、「ヒドロキシル基、ベタイン基、ピロリドン基またはアミド基のモル数」と「ポリエチレングリコール鎖のモル数」との比は、好ましくは1:0.001〜1:0.15、より好ましくは1:0.002〜1:0.1、更に好ましくは1:0.003〜1:0.06(例えば1:0.01〜1:0.06)である。尚、ここでいうモル比は、粉末状態の複数個の磁性マーカー粒子についての平均値である。
被着ポリマーが「第1親水性官能基としてヒドロキシル基、ベタイン基、ピロリドン基またはアミド基」と「第2親水性官能基としてポリエチレングリコール鎖」と「カルボキシル基またはヒドロキシル基」とを含んでいてよく、その場合では、後段階での「生体物質結合性物質」および/または「生体物質結合性官能基」を磁性マーカー粒子に容易に固定化することができる。それらのモル比、即ち、「ヒドロキシル基、ベタイン基、ピロリドン基またはアミド基のモル数」と「ポリエチレングリコール鎖のモル数」と「カルボキシル基」の比は、好ましくは1:0.001:0.005〜1:0.15:0.2、より好ましくは1:0.002:0.01〜1:0.1:0.15、更に好ましくは1:0.003:0.01〜1:0.06:0.1(例えば1:0.01:0.01〜1:0.06:0.1)である。
本発明の磁性マーカー粒子は、好ましくは、その表面に「生体物質結合性物質」および/または「生体物質結合性官能基」が固定化して成るものである。「生体物質結合性物質」は、ビオチン、アビジン、ストレプトアビジンおよびニュートラアビジンから成る群から選択される少なくとも1種以上の物質であることが好ましい。また、「生体物質結合性官能基」は、カルボキシル基、水酸基、エポキシ基、トシル基、スクシンイミド基、マレイミド基、チオール基、チオエーテル基およびジスルフィド基などの硫化物官能基、アルデヒド基、アジド基、ヒドラジド基、一級アミノ基、二級アミノ基、三級アミノ基、イミドエステル基、カルボジイミド基、イソシアネート基、ヨードアセチル基、カルボキシル基のハロゲン置換体、ならびに、二重結合から成る群から選択される少なくとも1種以上の官能基であることが好ましい(これらの官能基の誘導体であってもかまわない)。尚、本明細書において「固定化」とは、一般的に、コア粒子および/または被着ポリマー層の表面付近に「生体物質結合性物質」または「生体物質結合性官能基」が存在している態様を実質的に意味しており、必ずしも「生体物質結合性物質」または「生体物質結合性官能基」がコア粒子および/または被着ポリマー層の表面に直接取り付けられている態様のみを意味するものではない。また、「固定化」とは、それらの表面の少なくとも一部に「生体物質結合性の物質または官能基」が固定化されている態様を実質的に意味しており、「生体物質結合性の物質または官能基」が必ずしも表面全体にわたって固定化されていなくてもよい。
本発明の粒子には「生体物質結合性の物質または官能基」が固定化されているので、かかる物質または官能基を介して標的物質(即ち、目的とする生体物質)を粒子に結合させることができる。つまり、本発明の粒子はマーカー粒子として好適に用いることができる。
上述したように本発明の磁性マーカー粒子は、pH緩衝溶液中で優れた分散性および分散安定性を呈するものである。ここで、pH緩衝液のpH値は、特に制限されるわけではないが、約3〜約11であってよく、好ましくは約5〜約8である。具体的なpH緩衝液としては、酢酸緩衝液、リン酸緩衝液、クエン酸緩衝液、ホウ酸緩衝液、酒石酸緩衝液、トリス緩衝液、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)を挙げることができる(このようなpH緩衝液は、市販されているものもあるが、それぞれ適宜調製を行うことも可能である)。尚、本発明の粒子は、PBS系のような塩(KCl/NaCl)が多量に含まれている緩衝溶液であってもすぐれた分散安定性を呈する点で特に有利な効果を奏するものであるといえる。
《本発明の磁性マーカー粒子の分散安定性および分散性》
次に本発明の磁性マーカー粒子の特徴である「pH緩衝溶液中における優れた分散性および分散安定性」について詳述する。
(沈降速度に基づく分散安定性)
分散安定性の指標として液体中に含まれる粒子の沈降速度がある。これは粒子を含むサンプル液を静置し、一定時間経過後の粒子の沈降状態から沈降速度を求めるものである。かかる沈降速度の値が小さいほど分散安定性が高いと判断できる。通常は重力を用いた方法であり、測定に時間がかかるが、時間短縮するために、遠心力を用いて沈降速度を増して測定を行うことができる。この方法を用いる測定装置として日本ルフト製のLUMiSizer、LUMiFugeがあり、そのような装置によって沈降速度Vsを求めることができる。かかる装置は最大2300Gの遠心力を与えることができるので、理論上、自然沈降の場合よりも測定時間を2300倍短縮でき、沈降速度を測定する際には非常に有効である。また、上記装置では、5G〜2300Gの範囲で遠心力を任意で設定できるため、速く沈みすぎて測定できない、逆に沈降速度が極めて遅く測定に長時間を要するといった問題点を遠心力の変更により、測定しやすい条件を設定することができる。尚、粒子の沈降速度を求める際に留意すべき点は、遠心力により沈降速度が変化することである。これは、「小さな粒子が流体中を沈降する際の速度を求めるために用いる計算式であるストークスの式」からも理解できる。つまり、遠心力が異なる場合、沈降速度を直接比較することはできないといえる。従って、以下の式1では、遠心力の影響が除かれるように考慮して分散安定性を評価している。

式1を用いることで遠心力に依存しない値が得られ、緩衝溶液中における磁性マーカー粒子の分散安定性を直接比較することができる。
ここで、従来の磁性粒子を含んだ緩衝溶液における沈降速度Vの値が一般的に約60[μm/(s・G)]程度であるのに対して、本発明の磁性マーカー粒子の場合では、沈降速度Vが約1.0×10−3〜約6.0[μm/(s・G)]の範囲となっている(球形状の磁性マーカー粒子に特化して述べると、沈降速度Vが好ましくは約6.0×10−3〜約4.0[μm/(s・G)]の範囲となっている)。上述したように、沈降速度Vは“静置下における分散粒子の沈降速度”と同一視することができるので、その値が小さいほど分散安定性が高いことを示している一方、逆にその値が大きいほど分散安定性が低いことを示している(このようなことから、式1における沈降速度Vというものは、磁性マーカー粒子の緩衝溶液中における分散安定度Isと同一視できる)。つまり、本発明の磁性マーカー粒子の緩衝溶液中における分散安定性は、従来の磁性粒子における場合よりも少なくとも10倍(より具体的には10倍〜60000倍、即ち、少なくとも10倍〜10000倍程度)高くなっている(球形状の磁性マーカー粒子に特化して述べると、かかる粒子の緩衝溶液中における分散安定性は、従来の磁性粒子における場合よりも数十倍〜数百倍(例えば10〜40倍程度)高くなっているといえる)。尚、本明細書における沈降速度Vの値は、上述の日本ルフト製のLUMiSizer、LUMiFuge装置を用いた測定により得られた値Vsをもとに計算したものであることを付言しておく。
緩衝溶液と水とを比べると一般的には緩衝溶液中の方が分散安定性が低下し得るものの、本発明の磁性マーカー粒子は、緩衝溶液中でも水中と変わらない分散安定性を有している。より具体的にいえば、磁性マーカー粒子の緩衝溶液中における沈降速度の値Vを水中における沈降速度の値Vで除して得られる沈降速度比R(式2参照)は約0.5〜約30、好ましくは約1.0〜30、より好ましくは約1.0〜約20である(例えば、Rが0.5〜20の範囲や0.5〜9の範囲であったり、0.5〜1.5の範囲であったりする。球形状の磁性粒子に特化して述べると、沈降速度比Rは、約0.5〜約20、好ましくは約1.0〜約20であり、例えば5〜9の範囲であったり、0.5〜9の範囲であったりする):


このように本発明の磁性マーカー粒子は、緩衝溶液中でも水中とほとんど変わらない分散安定性を有しているので、生体物質を用いる実際の使用においては、緩衝溶液を用いなければいけない場合が多いが、この際でも水中と同様の感覚で使うことができるため、好ましい。
更に、粒径の影響を考慮して本発明の磁性マーカー粒子の分散安定性を評価してみる。遠心力のみならず粒径にも依存しない沈降速度V’(即ち、遠心力および粒径に依存しない磁性マーカー粒子の分散安定度)は、以下の式3で表わすことができる。分散粒径を用いるとストークスの式より、本来なら定数になってしまう。それを防ぐため、式3では、一次粒径を用いている。凝集の程度が大きければ、V’は大きくなり、凝集の状態が反映されている。


本発明の磁性マーカー粒子では上記V’の値が約1.0×10−6〜約1.0×10−4の範囲となっている。かかるV’の値に照らしてみたとしても、本発明の磁性マーカー粒子の分散安定性が高いといえ、上記式1の場合と同様、従来の磁性粒子における分散安定度よりも少なくとも10倍程度高い。
(ゼータ電位に基づく分散安定性)
“沈降速度”のみならず、“ゼータ電位”からも分散安定性を評価できる。かかるゼータ電位は、一般的に粒子表面の性質を評価する上で重要な値であり、特に粒子の分散・凝集性、相互作用、表面改質を評価する際の指標である。磁性粒子は表面積をなるべく小さくした方が安定する。これは磁性粒子に凝集しようとする傾向を与える。一方、磁性粒子は帯電しており、粒子間には静電的な反発が働く。これは磁性粒子に分散しようとする傾向を与える。ゼータ電位はこの静電的な反発の大きさに対応しているため、磁性粒子の安定性の指標とすることができる。ゼータ電位がゼロに近づくと粒子の凝集しようとする傾向が静電的反発に打ち勝つため、粒子の凝集が引き起こされる。逆にゼータ電位の絶対値を大きくするようなポリマー処理を磁性粒子表面に実施することで、磁性粒子の分散安定性を増すことが可能となる(一般にゼータ電位は20mV以上が好ましいとされている)。ここで、本発明の磁性マーカー粒子は、緩衝溶液(pH3〜11)に分散させた際のゼータ電位の絶対値が20〜65mVとなっており、より好適な態様では30〜65mVとなっている。よって、本発明の磁性マーカー粒子は、優れた分散安定性を有しているといえる。尚、本明細書におけるゼータ電位の値は、日本ベル製ZetaProbeを用いた測定で得られる値である(かかる装置では、ゼータ電位を各種のpHごとに決定することが可能である)。
(分散粒径に基づく分散性)
分散性の指標としては“分散粒径”がある。この分散粒径は、動的光散乱法(DLS法)により求められる粒子径であって、電子顕微鏡から求められる粒径(一次粒径)とは異なり、緩衝溶液中での見掛けの粒子径を示している。従って、分散粒径は、緩衝溶液中での粒子の凝集状態(即ち、粒子の凝集程度)を間接的に示している。換言すれば、一次粒径と分散粒径との差が小さいほど、凝集の程度は小さく分散性が高いといえる一方(一次粒径と分散粒径とが同じであれば粒子が1つ1つ独立して溶液中に存在する単分散状態にあるといえる一方)、一次粒径と分散粒径との差が大きいほど、凝集状態が大きくて分散性が低いといえる。ここで、本発明の磁性マーカー粒子は、緩衝溶液(pH3〜11)に分散させた際に測定される分散粒径Dpは、一次粒径Dの1.1〜6倍程度の値を有している。従来の磁性粒子を含んで成る緩衝溶液で測定される分散粒径Dpが一次粒径Dの6〜40倍程度の値を有していることに鑑みると、本発明の磁性マーカー粒子は、従来よりも優れた分散性を呈するといえる。
《本発明の磁性マーカー粒子の磁気捕集性》
次に本発明の磁性マーカー粒子の特徴である「pH緩衝溶液中における優れた磁気捕集性」について詳述する。
pH緩衝溶液中に含まれる磁性マーカー粒子の磁気捕集性の指標として、“pH緩衝溶液の吸光度の変化”を採用することができる。つまり、磁気捕集性を把握するのに分光光度計による吸光度測定を用いることができる。これについて詳述する。本発明の磁気マーカーが含まれるpH緩衝溶液では、緩衝溶液中に磁性マーカー粒子が分散しており、pH緩衝溶液は、その磁性マーカー粒子の色がついた分散液となっている。この分散液に対して外側から磁石を用いて磁性マーカー粒子を捕集すると、磁石の近傍に磁性体が集まるので、分散液が全体的に無色透明となる。よって、分光光度計による吸光度測定を行うと、分散状態である初期状態では、吸光度は高いものの、磁気捕集が進行するにつれ、徐々に吸光度が下がっていくことになる。これにより、磁気捕集性を把握することができる。
ここで、本発明の磁性マーカー粒子は、上述したように、実用上十分な磁気捕集性を呈し得るが、それを定量的に説明すれば次のようになる。本発明の磁性マーカー粒子を含んで成る緩衝溶液(この場合の磁性マーカー粒子の分散粒径は好ましくは約200nm〜約700nmであって、磁性マーカー粒子の濃度は例えば約0.1〜0.3mg/mLである)について0.36Tの磁場の影響下において緩衝溶液中の磁性マーカー粒子を磁気捕集すると、緩衝溶液の相対吸光度が約0.1〜0.2(磁気捕集操作前の初期値は1)になるまでの時間が約60秒以内となっている。たとえば、一例を挙げると、磁性マーカー粒子の分散粒径が約365nmであって、磁性マーカー粒子の濃度は例えば約0.2mg/mLである緩衝溶液に対して0.36Tの磁場を作用させる場合では、磁気捕集を開始してから約60秒程度で緩衝溶液の相対吸光度(約550nmの光の吸光度)が初期の“1”から約0.15にまで低下し得る。尚、球形状の磁性マーカー粒子に特化して述べると、かかる磁性マーカー粒子の分散粒径が約350nmであって、磁性マーカー粒子の濃度は例えば約0.2mg/mLである緩衝溶液に対して0.36Tの磁場を作用させる場合では、磁気捕集を開始してから約60秒程度で緩衝溶液の相対吸光度(約550nmの光の吸光度)が初期の“1”から約0.15にまで低下し得る。
本発明における吸光度の値は、例えば、日立ハイテクノロジー社製のバイオ光度計U−0080Dを用いて得られものである。また、磁気捕集時の磁場を供するものとしては、磁石を用いてよく、フェライト磁石、サマリウムコバルト磁石、ネオジム磁石、アルニコ磁石など磁石であればどれでも使用できる。更に、本発明における磁場の値“0.36T”は、例えば、マイテック(株)製の「ハンディテスラメータ エルル DTM6100」を用いて測定した値である。かかる装置を用いて磁場の強さを測定する際の態様を図3に示す。測定セルに磁石を貼り付けたのち、測定セル内壁部側面に接触させるようにセンサー部を配置する。また、センサー部の先端はセル内壁下部に接触させておく。このようにして、分散液に供される磁場の値を測定できる。
ちなみに、実際の用途において磁気捕集を行う場合、磁気捕集速度を速めて測定する用途に対しては強力磁石であるネオジム磁石、サマリウムコバルト磁石などを用いてよい。その逆で、磁気捕集速度を遅くして測定する用途に対してはフェライト磁石などを使用してもよい。電磁石を用いる方法もあり、かける電流値により磁場の強さを任意に変更でき、そのため磁気捕集速度を任意に変更することが可能である。また、別の考え方では素材ではなく、磁石の表面磁束密度を目安にすることも可能である。この場合は、この値が大きい程、磁気捕集速度は速く、逆に値が低ければ、磁気捕集速度は遅くなる。この値は、使用者が用途に応じて自由に決めることが可能である。実用上では、測定セル内部の磁場の強さを実測するほうがわかりやすい。これについても同様に、磁場が強いと磁気捕集速度は速くなり、磁場が弱いと磁気捕集速度は遅くなるので、使用者が用途に応じて自由に決めてよい。
《実用上十分な“分散安定性”/“磁気捕集性”》
上述したように、“分散安定性”および“磁気捕集性”という2つの特性は相反する関係を有し得る。この点、本発明の磁性マーカー粒子の好適な態様では、実用上十分な“分散安定性”と“磁気捕集性”とを兼ね備えている。具体的には、本発明の磁性粒子は、緩衝溶液中での分散粒径が約200nm〜約700nmとなっており、上述の式1で表される沈降速度Vの値が約1.0×10−3〜約6.0程度となっているとともに、磁性マーカー粒子を含んで成る緩衝溶液(磁性マーカー粒子の分散粒径:約200nm〜約700nm、磁性マーカー粒子の濃度:約0.1〜0.3mg/mL)について0.36Tの磁場の影響下にて緩衝溶液中の磁性マーカー粒子を磁気捕集すると、緩衝溶液の相対吸光度が約0.1〜0.2(磁気捕集操作前の初期値は1)になるまでの時間が約60秒以内となっている(尚、緩衝溶液中の磁性マーカー粒子の分散粒径の値は、例えば、濃厚系粒径アナライザー FPAR-1000(大塚電子製)を用いて測定して得られる値である)。球形状の磁性マーカー粒子に特化して述べると、かかる粒子は、緩衝溶液中での分散粒径が約200nm〜約700nmとなっており、上述の式1で表される沈降速度Vの値が約0.1〜約4.0または場合によっては約0.5〜約3.0もしくは約0.5〜約2.0程度となっているとともに、球状磁性マーカー粒子を含んで成る緩衝溶液(磁性マーカー粒子の分散粒径:約200nm〜約700nm、磁性マーカー粒子の濃度:約0.1〜0.3mg/mL)について0.36Tの磁場の影響下にて緩衝溶液中の球状磁性マーカー粒子を磁気捕集すると、緩衝溶液の相対吸光度が約0.1〜0.2(磁気捕集操作前の初期値は1)になるまでの時間が約60秒以内となっている。
《本発明の磁性マーカー粒子の再分散性》
本発明の磁性マーカー粒子は、分散性の中でも特に磁気捕集後の再分散性も優れている。つまり、緩衝溶液中にて磁気捕集により磁性マーカー粒子を凝集させた後(即ち、磁性マーカー粒子に着磁石処理をした後)で分散処理を施した場合、粒子の良好な分散状態を再度得ることができる。
このような“磁気捕集後の再分散性”は、再分散処理後の分散粒径を指標にすることができ、再分散処理後の分散粒径が磁気捕集前の分散粒径に近ければ近いほど再分散性が優れているといえ、逆に、再分散処理後の分散粒径が磁気捕集前の分散粒径よりも大きくなればなるほど再分散性が劣るといえる。このような“再分散性”の特性を具体的に説明すると、本発明の磁性マーカー粒子を含んで成る緩衝溶液について“緩衝溶液中の磁性マーカー粒子を磁気捕集した後で超音波照射により分散させる処理”を10回繰り返した場合、“磁性粒子の分散粒径の増加率(磁気捕集・再分散処理を行う前を基準にした増加率)”が約5%以下(即ち、増加率0%〜5%程度)、好ましくは4%以下(即ち、増加率0%〜4%程度)となっている。球形状の磁性マーカー粒子に特化して述べると、球状磁性マーカー粒子を含んで成る緩衝溶液について“緩衝溶液中の磁性マーカー粒子を磁気捕集した後で超音波照射により分散させる処理”を10回繰り返した場合、“球状磁性粒子の分散粒径の増加率(磁気捕集・再分散処理を行う前を基準にした増加率)”が約3%以下(即ち、増加率0%〜3%程度)、好ましくは2%以下(即ち、増加率0%〜2%程度)、更に好ましくは1%以下(即ち、増加率0%〜1%程度)となっている。ここでいう「磁気捕集」とは、上述の“磁気捕集性”の場合と同様、磁性マーカー粒子を含んだ緩衝溶液に磁場を作用させて磁気マーカー粒子を凝集させる操作を実質的に意味しており、「超音波照射による分散」とは、凝集した磁性マーカー粒子に対して超音波を照射して粒子を再分散させる操作を実質的に意味している。より具体的にいえば“磁性粒子の分散粒径の増加率”の値は、下記のような緩衝溶液について下記のような磁気捕集および超音波照射を行った場合に得られる値を実質的に意味している。

● 緩衝溶液:媒体(リン酸緩衝生理食塩水PBS),粒子濃度(10mg/ml)
● 磁気捕集操作:0.24Tの磁場を緩衝溶液全体に2分間作用させる操作(東洋紡績(株)製磁性ビーズ分離用スタンド「Magical Trapper」使用、磁場測定装置:マイテック(株)製の「ハンディテスラメータ エルル DTM6100」)

● 超音波照射操作(再分散操作):アズワン(株)製超音波洗浄器(VS-150、周波数50kHz、出力150W)を用いて“凝集した磁性マーカー粒子領域”に2分間印加させる操作。

* 尚、分散粒径自体の値は、例えば、レーザ回折/散乱式粒度分布測定装置 LA-920(堀場製作所製)を用いて測定して得られる値である。
本発明の磁性マーカー粒子は、強磁性粒子であり得るので(即ち、“強磁性”ゆえに一般的に磁気凝集性を呈する粒子であるので)、その点に鑑みれば本発明の粒子は“強磁性”でありつつも“磁気捕集後の再分散性”に優れているといった有利な特徴を有している。尚、このように“磁気捕集後の再分散性”は、粒子の立体的構造に起因するものと考えられる。つまり、特定の理論に拘束されるわけではないが、本発明の粒子では、PEGの両末端の重合可能な基に起因してポリマー間が架橋されており、それによって粒子の立体障害が大きくなっている。従って、そのような“粒子の立体障害”によって“磁気捕集後の優れた再分散性”が供されるものと推測され得る。また、球形状の磁性マーカー粒子の場合では、粒子の長短半径比が1.0〜1.3の範囲となっており、粒子形状に起因する構造磁気異方性が低下し、保磁力の低いマーカー粒子が実現されているので、その点においても“磁気捕集後の再分散性”が向上する要因となっている。
《本発明の製造方法》
次に、本発明の製造方法について説明を行う。本発明の製造方法では、磁性粒子(即ち、コア粒子)を調製した後、その調製した磁性粒子を用いて磁性マーカー粒子を製造することになる。図1にかかる本発明の製造方法の工程フローを示す。まず、工程(i)では、鉄イオンを含んで成る水溶液とアルカリ水溶液とを混合し、得られる混合水溶液中で鉄元素を含んで成る水酸化物を析出させる。例えば、鉄イオンを含んで成る水溶液に対してアルカリ水溶液を加える。これにより、鉄イオンとアルカリイオンとが相互に反応し、鉄元素を含んで成る水酸化物が混合水溶液中に析出してくる(析出物は「沈殿物」または「共沈物」とも称すことができる)。
工程(i)で用いる「鉄イオンを含んで成る水溶液」は、例えば、塩化鉄または硫酸鉄などの鉄化合物を水に溶解させることによって得られる酸性水溶液である。この場合、鉄イオンは、酸性溶液中に一般に存在することになる。塩化鉄としては塩化第一鉄(FeCl・4HO)および塩化第二鉄(FeCl・6HO)を挙げることができ、また、硫酸鉄としては硫酸第一鉄(FeSO・7HO)を挙げることができ、これらを水に溶解させることによって、鉄イオンを生じさせる。水溶液中の鉄イオンの濃度は、好ましくは0.03〜6mol/l、より好ましくは0.06〜3mol/lである。所望の磁気特性を得るべく、コバルトイオン、白金イオンおよび/またはマグネシウムイオンを必要に応じて含ませてもよい。鉄化合物は、一度溶解しやすい溶媒に溶解させた上で、溶解しにくい溶媒と混合させて反応に用いることも可能である。たとえば、硫酸鉄を少量の水に溶解させた上で、グリセリンなどの多価アルコール溶媒と混合させるということも可能である。グリセリンを含めることによって、結晶成長が等方的に進む(結晶形状が球状化する)という効果が奏され得る。
「鉄イオンを含んで成る水溶液」は、アセチルアセトナト鉄などの鉄化合物を該鉄化合物が可能な溶媒に溶解させることによって得てもよい。アセチルアセトナト鉄としてはアセチルアセトナト鉄(II)(Fe(CHCOCH=C(O)CHを挙げることができる。これらをそれらが可溶な溶媒に溶解させることによって、鉄イオンを生じさせる。
一方、工程(i)で用いるアルカリ水溶液は、NaOH、KOH、NHまたはテトラメチルアンモニウムヒドロキシド(N(CHOH)等のアルカリを水に溶解させることによって得られる水溶液である。従って、アルカリ水溶液中では、アルカリはイオンの形態で一般に存在する。アルカリ水溶液のアルカリ濃度は、好ましくは0.03〜20mol/lである(尚、球形状の磁性マーカー粒子を得る場合についていうと、より好ましいアルカリ濃度は0.06〜10mol/lとなり得る)。アルカリ水溶液には、鉄のイオン価数に応じた量のアルカリイオンが含まれていることが好ましく、鉄イオンの価数以上のアルカリイオンが存在していることが特に好ましい。尚、アルカリ水溶液中にアルカリイオンが必要以上に多く存在すると、得られる強磁性粒子の水洗回数が多くなり水洗処理が非効率となってしまう。
鉄イオンを含んで成る水溶液とアルカリ水溶液とを混合する際の温度条件は、特に制限はなく、好ましくは10〜90℃程度(例えば常温)であってよい。また、好気下、嫌気下どちらの条件でも行うことができる。好気下のほうが、簡便性の点から好ましい。さらに、混合する際の圧力条件も特に制限はなく、大気圧下で行うことができる。マグネティックスターラーやスリーワンモータなどの攪拌機を用いて「鉄イオンを含んで成る水溶液」を攪拌しながら、その水溶液に対して、等速滴下が可能な滴下ポンプ等でアルカリ水溶液を滴下供給し、「鉄イオンを含んで成る水溶液」と「アルカリ水溶液」とを混合することが好ましい。
球形状の磁性マーカー粒子を得る場合では、工程(i)の別法として次の方法も可能である。「鉄イオンを含んで成る溶液」を水溶液とし、球状化をもたらす添加剤として、グリセリンでなく、ポリビニルアルコールおよび/またはmyo−イノシトールなどのOH基を多く持つ化合物を加える。その後、アルカリ溶液を加え、さらに酸化剤であるNaNOを添加したのち、加熱を行う。このような手法によっても、“球状化”を好適に促進させることができる。尚、かかる場合、「鉄イオンを含んで成る溶液」およびアルカリ溶液については前述の通りである。OH基を多く持つ化合物の濃度は、好ましくは0.03〜6mol/l、より好ましくは0.06〜3mol/lである。また、酸化剤についていえば、NaNO、KNOなど酸化能を持つものであれば、いずれの種類の酸化剤を使用してもよい。酸化剤の濃度は好ましくは0.03〜4mol/l、より好ましくは0.06〜1mol/lである。
工程(ii)においては、工程(i)で得られた混合水溶液を加熱処理に付す。必要に応じてエアーポンプなどを用いて混合水溶液に空気を吹き込みながら加熱処理を行ってよい。加熱温度は、好ましくは70〜300℃であり、より好ましくは70〜100℃である。加熱処理の圧力条件は、特に制限はなく、大気圧下で行ってよい。加熱時間も、特に制限はなく、例えば5時間〜30時間程度である(場合によっては5時間〜12時間程度または8時間〜25時間程度であってもよい)。また、工程(ii)では必要に応じて超音波処理を施してもよい。
加熱処理時の圧力条件に関していえば、水熱反応(ソルボサーマル反応)と呼ばれる、圧力容器中で溶媒の沸点以上に加熱した高圧反応を利用することも可能である。また、加熱方法についていえば、オイルバス、マントルヒーター、乾燥機といったものや、マイクロ波を用いた加熱装置を用いることも可能である。マイクロ波は、その照射により加熱できる溶媒は制限されるが、溶媒自体が加熱されるため、内部から均一に加熱できるという特徴がある。このような、マイクロ波を用いた加熱装置としては、マイルストーンゼネラル社製MicroSYNTHを挙げることができる。
工程(ii)の加熱処理が行われることによって、水酸化物が溶解して好ましくはスピネル型構造の強磁性酸化鉄粒子が形成される。スピネル型構造の酸化鉄粒子としては、特に限定されるものではないが、マグネタイト(Fe )、マグヘマイト(γ−Fe )粒子、マグネタイト−マグヘマイト中間体を挙げることができる。また、加熱処理に付す混合溶液に含まれているイオンによっては、上記酸化鉄にコバルト(Co)、白金(Pt)、マグネシウム(Mg)、亜鉛(Zn)および/またはニッケル(Ni)などが更に含まれた粒子を得ることができる(コバルト、白金、マグネシウム、亜鉛またはニッケルなどは、保磁力を調整するために有効である)。マグネタイト粒子への“コバルト添加”は保磁力を増大させるために有効であり、“マグネシウム添加”は保磁力を低減させるために有効である。
工程(ii)で形成または合成された粒子は、洗浄、濾過および乾燥に付すことが好ましい。粒子を洗浄することによって、粒子表面から不純物を除去できる。洗浄は、水を用いた水洗が好ましいものの、水以外にもエタノール、メタノールといったアルコール系をはじめとする水に可溶な溶媒を用いて磁性粒子を洗浄してもよい。濾過は、洗浄に際して行ってよく、洗浄液などを磁性粒子から除去できる。磁性粒子の乾燥は必須ではなく、必要に応じて有無を選択できる。乾燥する場合は、好ましくは10〜150℃、より好ましくは40〜90℃の温度条件下で行うことが好ましい。乾燥機を用いて磁性粒子を乾燥させてよいものの、自然乾燥により磁性粒子を乾燥させてもかまわない。
尚、工程(i)、(ii)ともに、嫌気下、好気下条件のいずれでも実施可能である。嫌気下条件で反応する場合は、工程で用いる溶媒や工程での容器中を嫌気性ガスで置換する必要がある。嫌気性ガスとしては、酸素以外の不活性ガスであれば、窒素、アルゴンなど各種ガスが使用可能である。好気下条件で反応させる場合は、大気下で反応を行えばよい。
以上のような本発明の製造方法によって、コア粒子を得ることができる。かかるコア粒子は、後に行う被着ポリマー化で形成される粒子形状が所望のものとなるように球状、楕円状、米粒状となっていることが好ましい。特に“球状”を得る場合では、本発明の製造方法のうち、アルカリ濃度が球形形成に一番寄与し得るので、この条件を最適化することで、球形状のコア粒子を好適に得ることができるといえる。
工程(ii)に引き続いて、工程(iii)を実施する。つまり、ポリマー原料を用いて磁性粒子の表面に被着ポリマーを形成する。市販の磁性粒子を用いる場合では、この工程(iii)から本発明の製造方法を実施する。まず、かかる被着ポリマーの形成を助力すべく、コア粒子にシランカップリング剤処理を行うことが好ましい。
シランカップリング剤処理を行うことによって、被着ポリマーを粒子表面に結合させることができる「重合可能な反応基(2重結合など)」をコア粒子に設けることができる。シランカップリング剤としては、アクリル基やメタクリル基を末端に持つシランカップリング剤を挙げることができる。また、シランカップリング剤処理に用いる溶媒は、コア粒子が分散し、シランカップリング剤が溶解するものであれば、特に制限はない。しかしながら、シランカップリング剤を加水分解させる必要があり、その点で水が微量でも必要である。従って、水が溶けやすい溶媒が好ましい。具体的にはメタノール、エタノール、テトラヒドロフランおよび水から成る群から選択される少なくとも1種を溶媒として用いることが好ましい。更には、シランカップリング剤の加水分解をより進行させるために、触媒として酸もしくはアルカリを加えても良い。触媒としての酸は例えば酢酸であり、触媒としてのアルカリは例えばアンモニア水である。シランカップリング剤とコア粒子との反応を行う際の温度は、用いる溶剤の融点以下かつ沸点以上でなければ、任意に設定することが可能である。反応時間も、任意に設定可能であるものの、反応温度との兼ね合いで選択することが好ましい。
シランカップリング剤処理の後、洗浄を実施することにより、未反応のシランカップリング剤を除去することが好ましい。かかる洗浄方法も特に制限はないが、遠心分離法を用いる方法が簡易であるので適当である。洗浄後は、コア粒子を乾燥に付してもよい。乾燥により、コア粒子表面とシランカップリング剤との間に化学結合が生じやすくなる。この乾燥方法も特に制限はなく、任意温度で乾燥を行ってもよいものの、乾燥時の凝集を防ぐために凍結乾燥を行うことが好ましい。乾燥を実施した場合、再分散させる必要があるがこの方法に関しても特に制限はない。
次いで、シランカップリング剤処理で形成されたコア粒子表面の「重合可能な反応基を基」に対して被着ポリマー化を実施する。具体的な操作としては、コア粒子、被着ポリマー原料、溶媒および必要に応じて用いられる重合開始剤を混ぜ合わせる。これにより、コア粒子の表面に被着ポリマー層が形成される。被着ポリマー原料としては、「少なくとも両末端に重合可能な部位を有するポリエチレングリコール鎖の化合物(例えば、共栄社化学より市販されているライトアクリレート)」と、「ヒドロキシル基と末端に重合可能な部位とを有する化合物(例えば、ヒドロキシエチルアクリレートモノマー)」、「ベタインと末端に重合可能な部位とを有する化合物GLBT」、「ピロリドンと末端に重合可能な部位とを有する化合物(例えば、V−パイロール)」および/または「アミド基と末端に重合可能な部位を有する化合物(例えば、N,N−ジメチルアクリルアミドもしくはアクリルアミド)」などを用いることが好ましい。また、ポリマー化に用いる溶媒は、特に制限はないが、例えば、水、メタノール、エタノールおよびテトラヒドロフランから成る群から選択される少なくとも1種を用いることができる。更に、必要に応じて用いられる重合開始剤は、用いる溶媒の種類に合わせて適宜選択することができ、溶媒が水またはアルコール系の場合、例えば、2,2'-アゾビス(2-メチルプロピオンアミジン)二塩酸塩や、水溶性アゾ重合開始剤(和光純薬製のVA−044またはVA−061)を用いることができる。
被着ポリマー化は、酸素ができる限りない条件下で行うことが好ましい。従って、各種原料などが仕込まれた反応容器内に窒素やアルゴンガスなどを満たして被着ポリマー化を実施することが好ましい。また、被着ポリマー化を行う際の温度(反応温度)は用いる反応開始剤の分解速度によって適宜設定することになる。被着ポリマー化を実施する時間(反応時間)も特に制限はない。
このような被着ポリマー化によって、コア粒子表面にポリマーが被着した磁性マーカー粒子を得ることができる。被着ポリマー化後、洗浄を行い、未反応の原料モノマーや粒子に結合しなかったポリマーの除去を行う。この洗浄方法も特に制限はないが、簡易であるので遠心分離法を用いた洗浄が好ましい。
磁性マーカー粒子の表面に対して「生体物質結合性物質」または「生体物質結合性官能基」を固定化させる場合、かかる固定化処理は、被着ポリマー化の前、被着ポリマー化に際して又は被着ポリマー化の後のいずれで行ってもよい。例えば、被着ポリマー化の後に「生体物質結合性官能基」を固定化させる場合では、磁性マーカー粒子を溶媒中に分散させ、加温状態で、反応触媒と固定化すべき官能基を持つ化合物とを添加し、数時間反応させる。かかる反応によって、「生体物質結合性官能基」が磁性マーカー粒子に固定化される。ここで用いる溶媒は、固定化すべき官能基を持つ化合物が溶解できると共に、60℃以上に加温した場合でも安定した反応速度が得られるものであれば、いずれの種類の溶媒であってもよく、例えば、水、エチレングリコールなどが挙げられる。同様に、反応触媒も上述の反応を促進させるものであれば、いずれの種類の触媒を用いてもよく、例えば、塩化白金酸などを用いることができる。
また、「生体物質結合性官能基」の固定化を被着ポリマー化に際して実施する場合では、被着ポリマー化時において「生体物質結合性官能基」を有するモノマーを重合または共重合させてよい。かかる場合、「標的物質が結合可能な官能基」を有するモノマーの例としては、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸グリシジル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキル、(メタ)アクリル酸ジメチルアミノアルキル、(メタ)アクリル酸イソシアナートアルキル、p−スチレンスルホン酸(塩)、ジメチロールプロパン酸、N−アルキルジエタノールアミン、(アミノエチルアミノ)エタノールまたはリジン等を挙げることができる。更に、例えば、「生体物質結合性物質」を固定化させる場合では、「生体物質結合性物質」と結合性を有する官能基(カルボキシル基および/またはヒドロキシル基)を粒子本体表面または被着ポリマー表面に予め導入し、その官能基を介して「標的物質が結合可能な物質」を粒子に固定化させることができる。
《磁性マーカー粒子の用途》
本発明の磁性マーカー粒子の用途について付言しておく。本発明の磁性マーカー粒子は、上述したように、体外診断などの検査薬用、医療、研究分野でのDNAやタンパクなど生体物質の回収や検査、また、ドラッグデリバリーシステム(DDS)等の用途に用いられる磁性を有する粒子である。従って、例えば、ある特定の生体物質と特異的に結合する物質を粒子表面につけ、サンプル溶液と混合、粒子だけを回収することで、必要な生体物質だけを取り出すことができる。この手法は、体外診断やDNA,タンパク質などの回収、検査に用いることができる。また、粒子に治療薬をつけた上で体内に入れ、必要部位に粒子を移動させることで、DDS用途にも用いることが可能となる。体外診断での検体が血液をはじめとする体液であったり、DDS用途に用いる場合は、血液は塩が多量に存在する一種の緩衝液といえるため、この粒子の特徴はきわめて重要となる。
以上、本発明の実施形態について説明してきたが、本発明はこれに限定されず、種々の改変を行ってもよい。

●例えば、本発明の粒子は、磁性マーカー粒子ゆえに、目的とする生体物質(即ち、標的物質)を検出するマーカーとして用いることを前提としてきたものの、粒子の磁気特性・粒子サイズ・密度によっては、細胞、蛋白質、核酸またはその他の生体物質を定量分析、定性分析、分離または精製などの種々の用途にも本発明の粒子を用いることができる(尚、粒子を標的物質の分離などに用いる場合では、本発明の粒子を「磁気分離用粒子」と称すことができる)。

● ある官能基によっては第1親水性基と第2親水性基との双方にまたがるものが存在し得る。例えば、上記の本願発明の説明では第2親水性基が立体的に嵩高い構造を形成することを前提にしてきたが、一般に分子鎖や分子量が増加すれば官能基が嵩高くなるので、分子鎖の長さや分子量などによっては第1親水性基が嵩高く、それゆえ、第1親水性基が立体的に嵩高い構造を有するものとなっていてもよい。

● 上記の本願発明の説明では、生体物質結合性物質または生体物質結合性官能基の固定化ためにカルボキシル基、ヒドロキシル基などを粒子本体に導入することに触れたが、第1親水性基および/または第2親水性基が生体物質結合性物質または生体物質結合性官能基の固定化に有効に寄与するものであれば、“固定化”のために特に付加的な官能基は必要ない。かかる場合、そのような官能基は、粒子の分散性に寄与するだけでなく、“生体物質結合性物質または生体物質結合性官能基の固定化”にも寄与するものであるといえる。
以下では、球形状のコア粒子から構成された磁性粒子に特化したケースと、“球形状”に特に特化していないケースに分けて説明する。まず、『球形状に特化していないケースA』について先に説明し、その後、『球形状のコア粒子から構成された磁性粒子に特化したケースB』について説明する。
『球形状に特化していないケースA』
《緩衝溶液》
用いる緩衝溶液として、PBS(リン酸バッファー生理食塩水)を調製した。リン酸水素2ナトリウム・7水和物0.210g、リン酸2水素カリウム0.031g、塩化ナトリウム0.877gを水100mlに溶解させて、PBSを得た。pHは7.2であった。
《粒子の調製》
実施例1〜26および比較例1〜7において粒子を以下のように調製した。
実施例1
<マグネタイト粒子の合成>
コア粒子となるマグネタイト粒子を、以下の方法により合成した。まず、100gの硫酸第一鉄(FeSO・7HO)を1000ccの純水に溶解させ、硫酸第一鉄水溶液を調製した。この硫酸第一鉄と等倍モルになるように、28.8gの水酸化ナトリウムを500ccの純水に溶解させ、水酸化ナトリウム水溶液を調製した。次いで、硫酸第一鉄水溶液を攪拌しながら、1時間かけて水酸化ナトリウム水溶液を滴下し、水酸化第一鉄の沈殿物を生成させた。滴下終了後、攪拌しながら、水酸化第一鉄の沈殿物を含む懸濁液の温度を85℃まで昇温した。懸濁液の温度が85℃に達した後、200L/hrの速度で、エアーポンプを使用して空気を吹き込みながら、8時間酸化して、マグネタイト粒子を生成させた。このマグネタイト粒子は、ほぼ球形で、一次粒径が24nmであった(マグネタイト粒子の一次粒径は、透過型電子顕微鏡写真上、300個の粒子サイズを測定し、その数平均として求めた)。
<シランカップリング剤処理>
マグネタイト2gをメタノール600ml中に分散させた。この溶液に、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン(LS−3360、信越化学製)20mlを加えて、40℃で4時間撹拌した。次いで、遠心分離に付して洗浄を行った後、溶媒を水に置換して、シランカップリング剤の被着した磁性粒子を得た。
<被着ポリマー化処理>
シランカップリング剤が被着した磁性粒子200mgを水60mlに分散させた。得られた溶液を撹拌しながら、窒素ガスを流し、窒素雰囲気下にした。その後、ヒドロキシエチルアクリレートHEA(和光純薬製)0.31g、ライトアクリレート9EG−A(共栄社化学製)(PEG)0.016g、ライトアクリレートHOA−MS(共栄社化学製)0.033gを加えた。しばらく撹拌した後、1.2mgの2,2'-アゾビス(2-メチルプロピオンアミジン)二塩酸塩(和光純薬製)を加え、70℃の窒素雰囲気下で5時間反応させた。その後、遠心分離法により、洗浄を行った。これにより、ポリマー被覆された磁性マーカー粒子を得た。かかる粒子の粒径を電子顕微鏡から算出して“一次粒径”として求めた。その結果“一次粒径”は24nmであった。
<分散粒径および被着ポリマー量の測定>
ポリマー被着量を測定すると共に、磁性マーカー粒子を緩衝溶液に分散させてDLS法により分散粒径を測定した。ポリマー被着量の測定は、磁性マーカー粒子を乾燥させた後、熱重量分析により行った。具体的には、熱重量分析装置(リガク製、Thermo plus EVO/TG-DTA)により有機物(ポリマー)の燃焼に起因した粒子の重量減少分からポリマー被着量を間接的に求めた。その結果、被着ポリマー量は15.9重量%であって、分散粒径は125.5nm(水中)および115.6nm(PBS中)であることが分かった。
実施例2〜5
被着ポリマー化処理を以下の表1に示す条件で行ったこと以外は実施例1と同様に行った(尚、実施例4では、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸(和光純薬製)(AMPS)を付加的に用いた。また、実施例5では合成中分散処理として超音波処理を行った)。
実施例6〜9
コア粒子を戸田工業製マグネタイトTM−023(一次粒径:230nm)とし、モノマー量などは表1に記載したように変更したこと以外は、実施例1と同様に行った。尚、実施例7のみ、合成中分散処理として超音波処理を行った。
実施例10〜14
用いるモノマーとしてGLBT(大阪有機化学工業製)、ライトアクリレート−9EG−A、ライトアクリレートHOA−MSを表1に記載したように変更して使用した以外は実施例1と同様に実施した。尚、実施例14のみ、合成中分散処理として超音波処理を行った。
実施例15〜18
コア粒子を戸田工業製マグネタイトTM−023(一次粒径:230nm)とし、モノマー量などは表1に記載したように変更したこと以外は、実施例10と同様に行った。
実施例19
用いるモノマーとしてピロリドン環を持つV−パイロール(ISP Japan製)、ライトアクリレート9EG−A、ライトアクリレートHOA−MSを表1に記載したように変更して使用した以外は、実施例1と同様に実施した。
実施例20
コア粒子を戸田工業製マグネタイトTM−023(一次粒径:230nm)としたこと以外は、実施例19と同様に行った。
実施例21
用いるモノマーとしてDMAA(N,N−ジメチルアクリルアミド)(東京化成工業製)、ライトアクリレート9EG−A、ライトアクリレートHOA−MSを表1に記載したように変更して使用した以外は、実施例1と同様に実施した。
実施例22
コア粒子を戸田工業製マグネタイトTM−023(一次粒径:230nm)としたこと以外は、実施例21と同様に行った。
実施例23
用いるモノマーをAAm(アクリルアミド)(和光純薬工業製)、ライトアクリレート9EG−A、ライトアクリレートHOA−MSを表1に記載したように変更した以外は、実施例1と同様に実施した。
実施例24
コア粒子を戸田工業製マグネタイトTM−023(一次粒径:230nm)としたこと以外は、実施例23と同様に行った。
実施例25および26
用いるモノマーとしてアクリル酸(和光純薬工業製)、ライトアクリレート9EG−A、ライトアクリレートHOA−MSを表1に記載したように変更して使用し、かつ、コア粒子を戸田工業製マグネタイトTM−023(一次粒径:230nm)としたこと以外は、実施例1と同様に実施した。
比較例1
被着ポリマー化処理をアクリル酸1.6gのみで行い、ライトアクリレート9EG−A、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸を用いなかったこと以外は実施例1と同様に行った。
比較例2および3
被着ポリマー化処理を表1に示す条件で行ったこと以外は実施例1と同様に行った。尚、比較例2は被着ポリマー量が多すぎ、比較例3は逆に少なすぎて、分散安定性が悪化した。
比較例4および5
被着ポリマー化処理を表1で示す条件で行ったこと以外は実施例1と同様に行った。ポリマー処理量が少なかったので、水中では分散性が高かったが、PBS中では凝集してしまい、DLSの測定を行うことができなかった。尚、比較例5のみ、合成中に分散処理として超音波印加を行った。
比較例6
実施例1のうち、シランカップリング処理、被着ポリマー化処理を行わなかった。つまり、磁性粒子そのものを用いた例である。この場合では、分散安定性が非常に悪く、数分で略全ての粒子が沈降してしまい、DLS法による測定を行うことができなかった。
比較例7
実施例6のうち、シランカップリング処理、被着ポリマー化処理を行わなかった。つまり、磁性粒子そのものを用いた例である。この場合では、分散安定性が非常に悪く、数分で略全ての粒子が沈降してしまい、DLS法による測定を行うことができなかった。
(表1)
表1を参照すると分かるように、第1親水性基として、ヒドロキシル基(HEA)、ベタイン基(GLBT)、ピロリドン基(V−パイロール)、アミド基(DMAA、AAm)およびカルボキシル基(アクリル酸)などが被着ポリマーに含まれ、かつ、第2親水性基としてポリエチレングリコール鎖が被着ポリマーに含まれると、PBS中において分散性・分散安定性に優れていることが分かった。また、粒径、特に凝集粒径によっては、実用上分散安定性に問題がないだけでなく、磁気捕集性の点でも優れたものとなることが分かった。
比較例2にて被着ポリマーの総量が多すぎ、比較例3にて逆に被着ポリマーの総量が少なすぎて分散安定性が悪化したことに鑑みると、表1の結果からは、実施例1〜26のような適量のポリマー原料から磁性マーカー粒子を製造することが良いことが示唆された。更には、比較例4のように、被着ポリマーの総量が少ない場合、水中での分散性が高くても、pH緩衝液中だと、凝集してしまう場合があることが分かった。
《pH緩衝液中における分散安定性の評価》
(目視確認による安定性評価)
実施例1および比較例4を用いて分散安定性の評価を行った。溶媒として水およびPBS緩衝液を用いた。磁性マーカー粒子の濃度は1mg/mlに調整した。これを1ヶ月放置し、その沈降度合いから、分散安定性を評価した。実施例1についての結果(水・PBS)を図4(a)に示し、比較例4についての結果を図4(b)に示す。水を用いた場合は、実施例1および比較例4ともに分散安定性にほとんど大差はない。しかしながら、PBS緩衝液中での安定性は、明らかに実施例1>比較例4となっている。これにより、第1親水性基と第2親水性基とが適量供されることによって分散安定性が向上することが理解できるであろう。
(沈降速度に基づく分散安定性評価)
実施例1、5〜7、10、14、15、17、25および26ならびに比較例4、5を用いてリン酸緩衝生理食塩水(PBS)中と水中とで沈降速度の測定を行った。測定装置として、日本ルフト製LUMiFuge110を用いた。測定条件として、実施例6、7、15、17、25、26における水を用いた測定は遠心速度2000rpm、遠心力は525×gとした。一方、かかる実施例につきPBSを用いた測定では遠心速度500rpm、遠心力は35xgとした。比較例4および5でのPBSおよび水を用いた測定では遠心速度200rpm、遠心力は5xgとした。その他の実施例は、PBS、水共に遠心速度4000rpmとした。遠心力は2300xgとした。測定試料を装置に仕込み、透過率を測定した。このように、必要に応じて、遠心速度と遠心力は任意に設定できる。測定後、サンプルをセットした際の初期透過率と測定終了時の透過率の中央となる透過率で、試料セル中での位置変化を元に沈降速度Vsを算出した(このような算出に関連する生データ例については図5を参照のこと。図5の生データはLUM社のLUMiFugeを使用した取得したものである)。その後、遠心力の作用を除くためにVsを遠心力で除して本発明における沈降速度値を算出した。即ち、上述の式1に基づいて沈降速度Vを算出した。また、水中とPBS中での沈降速度Vの比をとり、沈降速度比V/Vを求めた。さらに、沈降速度Vを1次粒径の2乗で除し沈降速度V’を得た。これらの結果を表2に示す。
(表2)
表2を参照すると、水中ではいずれも粒子の分散安定性が高いことが分かる。また、PBS中においては総じて実施例のV、V’の値が小さく、分散安定性が高いことが分かる(例えば、実施例においてはVの値が約2.5×10−3〜約4となっており、特に実施例1,5,6,7,10,14,15および17においてはVの値が約2.5×10−3〜約2となっている。また、実施例においてはVの値が約4.5×10−6〜約7.5×10−5となっており、特に実施例1,5,6,7,10,14,15および17においてはVの値が約4.5×10−6〜約3.5×10−5となっている)。一方、比較例4、5ではV、V’の値が実施例と比べ、大きくなっており、分散安定性が低いことが分かる。このように、本発明の磁性マーカー粒子は、PBS中においても、高い分散安定性を持つことが理解できた。尚、実施例1、5、10および14などの結果を参照すると、沈降速度比(V/V、即ちR)が0.5〜1.5の範囲にあり、本発明の磁性マーカー粒子が緩衝溶液中でも水と変わらない分散安定性を有していることも分かった。
《磁気捕集性の評価》
実施例6ならびに比較例としてInvirogen社製ダイナビーズ(MyOne Carboxylic acid)を用いてリン酸緩衝生理食塩水(PBS)中と水中とで磁気捕集速度の測定を行った。測定装置としては日立ハイテクノロジー社製バイオ光度計U−0080Dを用いた。具体的には0.2mg/mLの磁性ビーズ分散液を1cm角の分光セルに仕込んで分光光度計にセットし、ピペッティングにより十分分散させた後、二六製作所製ネオジム磁石NK037(大きさ:40mm×20mm×1mm、表面磁束密度:134mT)をセル外部に近接させ、550nmの光の吸光度の時間変化を測定した。この際のセル内部の磁場は前述した方法で測定すると0.36Tであった。
図6に測定結果を示す。図6から見てわかるように、実施例6は吸光度が短時間で低下している。具体的には、磁場を作用させてから約60秒程度で緩衝溶液の相対吸光度が初期の“1”から約0.15にまで低下した。つまり、本発明の磁性マーカー粒子を含んだ緩衝溶液では、より短い時間で効果的に粒子を磁気捕集できることを把握できた。
《再分散性の評価》
“磁気捕集後の再分散性”の効果を確かめるために、評価試験を実施した。具体的には、まず、“実施例6”、“実施例15”、“実施例25”、“実施例6、15および25の原料粉(原料磁性粉、比較例5)”、“実施例6、15および25の原料粉にシランカップリング剤処理までを済ませたもの(Si処理品)”をそれぞれリン酸緩衝生理食塩水(PBS)中に分散させた(10mg/ml)。これにより得られる緩衝液分散体について、以下の条件にて“磁気捕集による粒子凝集”および”超音波で再分散”といった操作を10回繰り返した。

● 磁気捕集操作:0.24Tの磁場を緩衝溶液全体に2分間作用させる操作(東洋紡績(株)製磁性ビーズ分離用スタンド「Magical Trapper」使用、磁場測定装置:マイテック(株)製の「ハンディテスラメータ エルル DTM6100」)

● 超音波照射操作(再分散操作):アズワン(株)製超音波洗浄器(VS-150、周波数50kHz、出力150W)を用いて“凝集した磁性マーカー粒子領域”に2分間印加させる操作。
上記操作の前後においては、分散粒径(二次粒径)の測定を行い、磁気凝集の程度の比較を行った。かかる分散粒径の測定にはレーザ回折/散乱式粒度分布測定装置 LA-920(堀場製作所製)を用いた。ちなみに、前述の粒径測定はDLS法により行っており、レーザ回折/散乱式粒度分布測定装置 LA-920とは異なる。これは、DLS法は測定可能範囲が数nm〜5μm程度で、磁気凝集の程度を測定するのには粒径的に不向きであると判断したためである(尚、測定原理が異なるため、同じ粒子を用いても、方法により異なる結果が得られる場合が多い)。
“再分散性の評価”の結果を表3および図7に示す。表3および図7では、実施例6、15および25、原料磁性粉(比較例7)、Si処理品が比較評価されている。粒径の標準偏差は粒径分布の広さを表わし、標準偏差が大きいほど分布が広い。磁気捕集する前から、原料磁性粉(比較例7)とSi処理品は平均粒径と分布がともに大きく、既に幅広い大きさの凝集を生じており凝集しやすいのがわかる。一方、実施例6、15および25は、平均粒径と分布はともに小さく、凝集が少なく凝集しにくいことが分かる。分布についていえば、実施例6、15および25が変わらないのに対し、原料磁性粉(比較例7)、Si処理品はいずれも大きくなった。さらに、分散粒径について実施例の場合では殆ど変化がないのに対して、原料磁性粉(比較例7)の場合が約20%大きくなり、Si処理品の場合では約10%大きくなった。つまり、原料磁性粉(比較例7)およびSi処理品の場合では、もともと凝集しやすく幅広い大きさの凝集を生じていたのが、磁場により、さらに磁気凝集が進んだといえる。
以上の結果から、本発明の磁性マーカー粒子の場合では、良好な再分散性が示されたが、これは、磁性マーカー粒子表面を覆うポリマーの立体障害が高いことが要因として考えられる。つまり、凝集しようとする力よりも立体障害の大きさによる抑止力のほうがより大きく、凝集を効果的に妨げる効果が生じていると考えられる。

(表3)
《生体物質結合性物質の固定化試験》
実施例1,10、比較例1の磁性マーカー粒子についてアビジンを固定化した。具体的には、まず、実施例1,10、比較例1で得られたポリマー被覆磁性粒子(それぞれ2mg)を25mM MES緩衝液1mlに溶かしてポリマー被覆磁性粒子液1mlを得た。次いで、かかるポリマー被覆磁性粒子液に対して「5mgのEDCを0.5mlの25mM MES緩衝液pH6.0に溶かした溶液0.5ml」と「5mgのSulfo−NHSを0.5mlの25mM MES緩衝液pH6.0に溶かした溶液0.5ml」を加え、2mlとし、15分撹拌した。スピンカラムで濾過し、さらに25mM MES緩衝液pH6.0を1ml加え、濾過洗浄した後、10mM リン酸緩衝液pH8.3にポリマー被覆磁性粒子を再溶解させ、1mlの体積となるように調製した。
次いで、1mgストレプトアビジン(和光純薬製)を0.5mlの10mM リン酸緩衝液pH8.3に溶かし、ポリマー被覆磁性粒子液0.5mlを加えて、1時間超音波を加えた。その後、さらに1時間チューブミキサーで撹拌した。次いで、スピンカラムで濾過した後、更に10mM リン酸緩衝液pH7.2を1ml加え、スピンカラムで5回濾過洗浄した。これにより、ストレプトアビジンが固定化されたポリマー被覆磁性粒子を得ることができた。尚、最終的には、ストレプトアビジン化ポリマー被覆磁性粒子を10mMリン酸緩衝液pH7.2で回収し、1mlの体積となるように調製した。
(特異結合能の評価試験)
ストレプトアビジン化ポリマー被覆磁性粒子とビオチンとの特異結合能を評価するため、ビオチン-フルオレセイン(PIERCE製)を用いて、ストレプトアビジン化ポリマー被覆磁性粒子のビオチン結合量を評価した。
まず、実施例1,10、比較例1で示したポリマー被覆磁性粒子それぞれにストレプトアビジンを結合したストレプトアビジン化ポリマー被覆磁性粒子を0.05mg/mlにPBS緩衝液で希釈し、0μl、10μl、50μl、100μl、250μlをエッペンチューブに加えた。次いで、PBS緩衝液を加え、250μlとした希釈系列を作り、それぞれに、PBS緩衝液に溶解させた40nMのビオチン-フルオレセイン溶液を500μl加え、750μlとした。そして、チューブミキサーを用いて1500rpmで10分撹拌した後、磁気分離を20分行った。磁気分離後、上澄み500μlを28700×gで10分遠心した。これにより得られた上澄み100μlをマイクロプレートに加え、プレートリーダー(TECAN製、infinite F200)で励起波長485nm、蛍光波長535nmで測定した。そして、ビオチン-フルオレセインの蛍光の減少から、ストレプトアビジン化ポリマー被覆磁性粒子のビオチン結合量を評価した。結果を表4に示す。
(表4)
(非特異結合能の評価試験)
ビオチン-フルオレセインとストレプトアビジン化ポリマー被覆磁性粒子の結合が非特異結合の可能性があるため、ビオチン-フルオレセインの蛍光団部位に相当するウラニン(和光純薬製)を用いて、非特異結合性を評価した。
まず、実施例1,10、比較例1で示したポリマー被覆磁性粒子それぞれにストレプトアビジンを結合したストレプトアビジン化ポリマー被覆磁性粒子を0.05mg/mlにPBS緩衝液で希釈し、0μl、10μl、50μl、100μl、250μlをエッペンチューブに加えた。次いで、PBS緩衝液を加え、250μlとした希釈系列を作り、それぞれに、PBS緩衝液に溶解させた40nMのウラニン溶液を500μl加え、750μlとした。チューブミキサーを用いて1500rpmで10分撹拌した後、磁気分離を20分行った。磁気分離後、上澄み500μlをさらに、28700×gで10分遠心下に付した。これにより得られた上澄み100μlをマイクロプレートに加え、プレートリーダーで励起波長485nm、蛍光波長535nmで測定した。そして、ウラニンの蛍光の減少から、ストレプトアビジン化ポリマー被覆磁性粒子についてウラニンとの非特異結合量を評価した。結果を表5に示す。
(表5)
表4および表5に示す結果から、ビオチン-フルオレセインの方がウラニンよりも結合量が大きく、ストレプトアビジン化ポリマー被覆磁性粒子がビオチンと特異的に結合していることが確認できた。つまり、本発明の粒子は、バイオテクノロジー分野またはライフサイエンス分野で用いるマーカーとして好適に利用できることが理解できた。
『球形状のコア粒子から構成された磁性粒子に特化したケースB』
次に、“球形状”に特化した場合の実施例について説明する。
《緩衝溶液》
用いる緩衝溶液として、PBS(リン酸バッファー生理食塩水)を調製した。リン酸水素2ナトリウム・7水和物0.210g、リン酸2水素カリウム0.031g、塩化ナトリウム0.877gを水100mlに溶解させて、PBSを得た。pHは7.2であった。
《粒子の調製》
参考例および比較例として粒子を調製した。参考例は、球状粒子を得ることを意図して行ったのに対して、比較例は球状でない粒子を得ることを意図して行った。
参考例1’
<マグネタイト粒子の合成>
反応系として嫌気下条件を用いた。溶媒としての水およびグリセリンは、窒素ガスを用いて脱気したものを使用した。また、反応中も容器内を窒素ガスで置換し、酸素を含まない条件にした。窒素ガスの純度は99.998%のものを用いた。
コア粒子となるマグネタイト粒子を、以下の方法により合成した。まず、1.1gの硫酸第一鉄(FeSO・7HO)を4ccの純水に溶解させ、硫酸第一鉄水溶液を調製した。この硫酸第一鉄をグリセリン120ccと混合し均一な溶液とした。また、これとは別に、112gの水酸化ナトリウムを100ccの純水に溶解させ、水酸化ナトリウム水溶液を調製した。次いで、硫酸第一鉄溶液を攪拌しながら、水酸化ナトリウム水溶液14.7ccを滴下し、水酸化第一鉄の沈殿物を生成させた。最終的な液量が145ccになるように水を滴下した。滴下終了後、攪拌しながら、30分撹拌した。この溶液を、耐圧容器に入れ、乾燥機で180℃、20時間反応させた。得られた粒子を洗浄し、乾燥させないまま、次の反応に用いた。かかるマグネタイト粒子は、長短半径比が1.14の球形で、一次粒径が250nmであった(マグネタイト粒子の長短半径比と一次粒径は、透過型電子顕微鏡写真上で、画像解析ソフトImage-Pro Plus(日本ローパー製)を用いて、300個の粒子サイズを測定し、その数平均として求めた)。また、飽和磁化量は77.6A・m2/kg(emu/g)、保磁力は3.10kA/m(38.9エルステッド)であった。
参考例2’〜7’
マグネタイト粒子合成を表6に示す条件で行ったこと以外は参考例1’と同様に行った。得られた粒子の粒径測定や磁気測定の結果を表7にまとめた。
参考例8’
マグネタイト粒子合成時の加熱方法として、マイクロ波の照射を採用し、そのほかの条件を表6に示す条件で行ったこと以外は参考例1’と同様に行った。得られた粒子の粒径測定や磁気測定の結果を表7にまとめた。マイクロ波照射による加熱装置としては、マイルストーンゼネラル社製MicroSYNTHを用いた。
参考例9’
嫌気下でなく、好気下条件で行った以外は参考例1’と同様におこなった。得られた粒子の粒径測定や磁気測定の結果を表7にまとめた。
比較例1’〜4’
マグネタイト粒子合成を表6に示す条件で行ったこと以外は参考例1’と同様に行った。得られた粒子の粒径測定や磁気測定の結果を表7にまとめた。尚、比較例1’〜4’は、上記実施例1’〜7’に対し、アルカリ量、もしくは反応時間を変更することで球状でない粒子を得ることを意図して行われたものである。反応時間が同じでもアルカリ量違う、またはアルカリ量が同じでも反応時間が違うと、球状粒子が得られないことが分かる(例えば、アルカリ量0.1mol〜0.19mol程度かつ反応時間10時間〜30時間程度であれば球状粒子が得られる)。
比較例5’,6’
市販のマグネタイト粒子TM−023(戸田工業製)である。1次粒径は230nm、CVは22.0、長短半径比は1.46であり、形状は角の取れた立方体や不定形粒子の混合物である。
(表6)
(表7)
参考例1’〜9’で得られたマグネタイト粒子は、比較例1’〜6’の粒子と比べて、長短軸比(即ち長短半径比)と、CV値が小さく、形状が整っていることが分かった(長短半径比についていうと、参考例1’〜7’では長短半径比が1.1〜1.25程度であるのに対して、比較例1’〜6’では長短半径比が1.4〜1.6程度であった)。即ち、参考例1’〜9’で得られた粒子は実質的に球形状となっていた。また、それらの粒子の保磁力も小さくなっていた。これは、粒子が球形状となり、形状磁気異方性が小さいことに起因していると考えられる。
上記参考例および比較例で得られた粒子を用いて、以下の「シランカップリング剤処理」および「被着ポリマー化処理」を実施した。
実施例1’〜9’
参考例1’の粒子を例にとって説明するが、参考例2’〜8’についても同様である。参考例1’〜9’でそれぞれ被着処理を行ったものが実施例1’〜9’に相当する。
<シランカップリング剤処理>
先の反応で得られたマグネタイト粒子200mgをメタノール50ml中に分散させた。この溶液に、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン(LS−3360、信越化学製)3mlを加えて、40℃で4時間撹拌した。次いで、遠心分離に付して洗浄を行った後、溶媒を水に置換して、シランカップリング剤の被着した磁性粒子を得た。
<被着ポリマー化処理>
シランカップリング剤が被着した磁性粒子200mgを水50mlに分散させた。得られた溶液を撹拌しながら、窒素ガスを流し、窒素雰囲気下にした。その後、アクリル酸(和光純薬製)0.68g、ライトアクリレート9EG−A(共栄社化学製)(PEG)35μl、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸(和光純薬製)(AMPS)35mgを加えた。しばらく撹拌した後、1.4mgの2,2'-アゾビス(2-メチルプロピオンアミジン)二塩酸塩(和光純薬製)を加え、70℃の窒素雰囲気下で4時間反応させた。その後、遠心分離法により、洗浄を行った。これにより、ポリマー被覆された磁性マーカー粒子を得た。かかる粒子の粒径を電子顕微鏡から算出して“長短半径比”および“一次粒径”を求めた。その結果“長短半径比”は約1.14、“一次粒径”は約250nmであった。これにより、コア粒子が球形状であるだけでなく、それにポリマーを被覆した粒子であっても球形状を有することが理解できた。つまり、球形状コア粒子に対してポリマー被着処理を実施しても、得られた粒子の形状はコア粒子の形状が反映されることが分かった。

* ポリマー被覆前後で粒径変化を観測できなかったが、これは観察に用いた電子顕微鏡の性能に起因しているものと考えられる。具体的には、透過型電子顕微鏡(TEM)で観察を行ったが、TEMの電子線は軽元素(炭素、窒素など)を透過しやすいため、ポリマー層自体が見えない状態にあったということが要因の1つとして推測される。いずれにせよ、ポリマー被着後の粒子の粒径や形状は、コア粒子の粒径・形状が実質的にそのまま反映されるといえる。
<分散粒径および被着ポリマー量の測定>
ポリマー被着量を測定すると共に、磁性マーカー粒子を緩衝溶液に分散させてDLS法により分散粒径を測定した。ポリマー被着量の測定は、磁性マーカー粒子を乾燥させた後、熱重量分析により行った。具体的には、熱重量分析装置(リガク製、Thermo plus EVO/TG-DTA)により有機物(ポリマー)の燃焼に起因した粒子の重量減少分からポリマー被着量を間接的に求めた。その結果、被着ポリマー量は2.5重量%であって、分散粒径は297nmであることが分かった。
実施例10’〜15’
被着ポリマー化処理を以下の表8に示す条件で行ったこと以外は実施例1’〜9’と同様に行った。
実施例16’〜19’
ライトアクリレート9EG−Aの代わりにポリエチレングリコール鎖の長さの異なるライトアクリレート4EG−A(共栄社化学製)を用いた。この化合物は水への溶解性が低いため、水とメタノールの混合溶媒系で実施した。これ以外は実施例1’〜9’と同様に行った。実施した条件を以下の表8に示す。
実施例20’
ライトアクリレート9EG−Aの代わりにポリエチレングリコール鎖の長さの異なるライトアクリレート14EG−A(共栄社化学製)を用いた。これ以外は実施例1’〜9’と同様に行った。実施した条件を以下の表8に示す。
実施例21’
ライトアクリレート9EG−Aを用いなかった以外は実施例1’〜9’と同様に行った。実施した条件を以下の表8に示す。
実施例22’〜25’
モノマーの種類を、ヒドロキシル基を持つアクリル酸2−ヒドロキシエチル(HEA)(和光純薬工業製)、カルボキシル基を持つHOA-MS(共栄社化学製)、PEGを持つライトアクリレート9EG−A(共栄社化学製)に変更した以外は実施例1’と同様に行った。実施した条件を以下の表9に示す。
実施例26’
実施例22’の条件に、さらにスルホン基を持つモノマーとして2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸(和光純薬製)を加えた以外は同様に行った。実施した条件を以下の表9に示す。
実施例27’〜30’
モノマーの種類を、カルボキシベタインを持つGLBT(大阪有機化学工業製)、カルボキシル基を持つHOA−MS(共栄社化学製)、PEGを持つライトアクリレート9EG−Aに変更した以外は実施例1’と同様に行った。実施した条件を以下の表9に示す。
実施例31’
実施例27’の条件に、さらにスルホン基を持つモノマーとして2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸(和光純薬製)を加えた以外は同様に行った。実施した条件を以下の表9に示す。
実施例32’
用いるモノマーを、ピロリドン環を持つV−パイロール(ISP Japan製)、ライトアクリレート9EG−A(PEG)、ライトアクリレートHOA−MS(共英社化学製)を表9に記載したように変更した以外は実施例1’と同様に実施した。
実施例33’
用いるモノマーを、DMAA(N,N−ジメチルアクリルアミド)(東京化成工業製)、ライトアクリレート9EG−A(PEG)、ライトアクリレートHOA−MS(共英社化学製)を表9に記載したように変更した以外は実施例1’と同様に実施した。
実施例34’
用いるモノマーを、AAm(アクリルアミド)(和光純薬工業製)、ライトアクリレート9EG−A(PEG)、ライトアクリレートHOA−MS(共英社化学製)を表9に記載したように変更した以外は実施例1’と同様に実施した。
比較例5’
被着ポリマー化処理をアクリル酸1.6gのみで行い、ライトアクリレート9EG−A、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸を用いなかったこと以外は実施例1’と同様に行った。実施した条件を以下の表8に示す。
比較例6’、7’
被着ポリマー化処理を表8に示す条件で行ったこと以外は実施例1’と同様に行った。実施した条件を以下の表8に示す。尚、比較例2’は被着ポリマー量が多すぎ、比較例3’は逆に少なすぎて、分散安定性が悪化した。
比較例8’
実施例1’のうち、シランカップリング剤処理、被着ポリマー化処理を行わなかった。つまり、磁性粒子そのものを用いた例である。実施した条件を以下の表8に示す。この場合では、分散安定性は非常に悪く、数分でほぼすべての粒子が沈降してしまい、DLS法による測定を行うことができなかった。
比較例9’、10’
コア粒子を戸田工業製マグネタイトTM−023(一次粒径:230nm)とし、モノマー量などは表8に記載したように変更したこと以外は、実施例1’と同様に行った。実施した条件を以下の表8に示す。
(表8)
(表9)
比較例6’にて被着ポリマーの総量が多すぎ、比較例7’にて逆に被着ポリマーの総量が少なすぎて分散安定性が悪化したことに鑑みると、表8および9の結果からは、実施例1’〜34’のような適量のポリマー原料から磁性マーカー粒子を製造することが良いことが示唆されると共に、第1親水性基および第2親水性基に関するそれぞれの原料容量比は実施例1’〜34’のような値が好適であることが示唆される。
(沈降速度に基づく分散安定性評価)
実施例1’、5’、8’、12’、22’、26’、27’および31’ならびに比較例5’、8’および9’を用いてリン酸緩衝生理食塩水(PBS)中と水中とで沈降速度の測定を行った。測定装置として、日本ルフト製LUMiFuge110を用いた。測定条件として、比較例8’を除き、PBS中の測定は遠心速度500rpm、遠心力35×g、水中の測定は遠心速度1000rpm、遠心力525×gであった。比較例8’は、PBS、水中ともに測定は遠心速度200rpm、遠心力5×gであった。測定試料を装置に仕込み、セル中各位置での透過率変化を測定した。その後、測定開始時と終了時の透過率中間となる値での、試料セル中位置変化を求めた。さらに、これを元に沈降速度Vsを算出した(このような算出に関連する生データ例については図5を参照のこと。図5の生データはLUM社のLUMiSizerを使用した取得したものである)。その後、遠心力の作用を除くためにVsを遠心力で除して本発明における沈降速度値を算出した。即ち、上述の式1に基づいて沈降速度Vを算出した。結果を表10に示す。
(表10)
表10を参照すると、水中ではいずれも粒子の分散安定性が高いことが分かる。一方、PBS中においては実施例では総じてVB、の値が小さく、分散安定性が高くなっているものの、比較例ではVB、の値が大きく分散安定性が低いことが分かる(例えば、実施例においてはVの値が約0.1〜約4.0となっており、特に実施例22’,26’,27’および31’においてはVB、の値が約0.5〜約1.5となっている。また、実施例においてはVの値が約1.0×10−6〜約1.0×10−4となっており、特に実施例22’,26’,27’および31’においてはVの値が約0.1×10−5〜約3.0×10−5ないしは0.5×10−5〜約2.0×10−5となっている)。このように、本発明の磁性マーカー粒子は、PBS中においても、高い分散安定性を持つことが理解できた。尚、実施例の結果を参照すると、沈降速度比(V/V、即ちR)が1〜20の範囲(特に実施例22’,26’,27’および31’ではRが1〜10ないしは5〜9の範囲)にあり、本発明の磁性マーカー粒子が緩衝溶液中でも水と変わらない分散安定性を有していることも分かった。
《磁気捕集性の評価》
実施例22’とInvirogen社製ダイナビーズ(MyOne Carboxylic acid)を用いて水中で磁気捕集速度の測定を行った。測定装置としては日立ハイテクノロジー社製バイオ光度計U−0080Dを用いた。具体的には0.2mg/mLの磁性ビーズ分散液を1cm角の分光セルに仕込んで分光光度計にセットし、ピペッティングにより十分分散させた後、二六製作所製ネオジム磁石NK037(大きさ:40mm×20mm×1mm、表面磁束密度:134mT)をセル外部に近接させ、550nmの光の吸光度の時間変化を測定した。この際のセル内部の磁場は前述した方法で測定すると0.36Tであった。
図8に測定結果を示す。図8から見てわかるように、実施例22’の方がMyOneよりも、吸光度の低下が速い結果が得られた。具体的には、実施例22’は磁場を作用させてから約60秒程度で緩衝溶液の相対吸光度が初期の“1”から約0.15にまで低下したのに対して、MyOneは実施例22’よりも吸光度の低下速度が遅かった。つまり、本発明の磁性マーカー粒子を含んだ溶液では、より短い時間で効果的に粒子を磁気捕集できることを把握できた。
《再分散性の評価》
“磁気捕集後の再分散性”の効果を確かめるために、評価試験を実施した。具体的には、まず、「実施例1’」と「実施例1’の原料粉(原料磁性粉−1’)」、「実施例1’の原料粉にシランカップリング剤処理までを済ませたもの(Si処理品−1’)」、「比較例9’」 と「実施例5’の原料粉(原料磁性粉−9’)」、「実施例5’の原料粉にシランカップリング剤処理までを済ませたもの(Si処理品−9’)」、「実施例22’」および「実施例27’」をそれぞれリン酸緩衝生理食塩水(PBS)中に分散させた(10mg/ml)。これにより得られる緩衝液分散体について、以下の条件にて“磁気捕集による粒子凝集”および”超音波で再分散”といった操作を10回繰り返した。

● 磁気捕集操作:0.24Tの磁場を緩衝溶液全体に2分間作用させる操作(東洋紡績(株)製磁性ビーズ分離用スタンド「Magical Trapper」使用、磁場測定装置:マイテック(株)製の「ハンディテスラメータ エルル DTM6100」)

● 超音波照射操作(再分散操作):アズワン(株)製超音波洗浄器(VS-150、周波数50kHz、出力150W)を用いて“凝集した磁性マーカー粒子領域”に2分間印加させる操作。
上記操作の前後においては、分散粒径(二次粒径)の測定を行い、磁気凝集の程度の比較を行った。かかる分散粒径の測定にはレーザ回折/散乱式粒度分布測定装置 LA-920(堀場製作所製)を用いた。ちなみに、前述の粒径測定はDLS法により行っており、レーザ回折/散乱式粒度分布測定装置 LA-920とは異なる。これは、DLS法は測定可能範囲が数nm〜5μm程度で、磁気凝集の程度を測定するのには粒径的に不向きであると判断したためである(尚、測定原理が異なるため、同じ粒子を用いても、方法により異なる結果が得られる場合が多い)。
“再分散性の評価”の結果を表11に示す。着磁させた際の分散粒径の増加率を比較すると、実施例1’と比較例9’、原料磁性粉−1’と原料磁性粉−9’、Si処理品−1’とSi処理品−9’では、いずれも実施例1’系列の増加率が小さくなった。これは、形状が“球”であるので、保磁力が小さく、磁気凝集しにくいためであると考えられる。
また、分散粒径について実施例1’,22’および27’の場合では殆ど変化がないのに対して、原料磁性粉の場合が約16%大きくなり、Si処理品の場合では約7%大きくなった。つまり、原料磁性粉およびSi処理品の場合では、もともと凝集しやすく幅広い大きさの凝集を生じていたのが、磁場により、さらに磁気凝集が進んだといえる。なお、比較例9’系列にも同様のことが言える。
以上の結果から、本発明の磁性マーカー粒子の場合では、従来粒子(比較例9’)よりも、さらに良好な再分散性が示されたが、これは、先に述べたように、形状が球であるので、保磁力が小さく、磁気凝集しにくいためである。さらに、磁性マーカー粒子表面を覆うポリマーの立体障害が高いことも要因として考えられる。つまり、磁気凝集する力が弱くなったのと合わせて、凝集しようとする力よりも立体障害の大きさによる抑止力のほうがより大きく、凝集を効果的に妨げる効果が生じていると考えられる。
(表11)
《生体物質結合性物質の固定化試験》
実施例1’、12’および22’ならびに比較例5’の磁性マーカー粒子についてストレプトアビジンを固定化した。具体的には、まず、実施例1’、12’および22’ならびに比較例5’で得られたポリマー被覆磁性粒子(それぞれ2mg)を10mM リン酸緩衝液(pH7.2)1mLに溶かしてポリマー被覆磁性粒子液1mlを得た。次いで、かかるポリマー被覆磁性粒子液に対して5mgのDMT−MM(カップリング剤)を1mlの10mM リン酸緩衝液(pH7.2)に溶かした溶液1mLを加え、2mLとし、超音波を5分加えた後、さらに25分、1000rpmで撹拌した。磁気分離後、上澄みを除き、10mM リン酸緩衝液(pH7.2)1mL加えてピペッティング後、1分間超音波洗浄し、磁気分離で上澄みを除いた、この超音波洗浄、磁気分離をもう一度繰り返した後、10mM リン酸緩衝液(pH7.2)を加えて、1mLに調製し、カルボキシル基活性化ポリマー被覆磁性粒子液を得た。
次いで、1mgストレプトアビジン(和光純薬製)を0.5mlの10mM リン酸緩衝液(pH7.2)に溶かし、カルボキシル基活性化ポリマー被覆磁性粒子液0.5mlを加えて、1時間超音波を加えた。その後、一晩、ローテーターで撹拌し、カルボキシル基へのストレプトアビジンの結合反応を行った。反応終了後、磁気分離し、上澄みを除き、10mM リン酸緩衝液(pH7.2)1mL加えてピペッティング後、1分間超音波洗浄し、磁気分離で上澄みを除いた、0.2M Tris−HClを1ml加え、超音波を1分間加えた後、ローテーターで2時間撹拌することにより、未反応の活性化カルボキシル基のヒドロキシル化を行った。反応終了後、磁気分離し、上澄みを除き、10mM リン酸緩衝液(pH7.2)1mL加えてピペッティング後、1分間超音波洗浄し、磁気分離で上澄みを除いた、この洗浄操作をさらに2回、繰り返した後、10mM リン酸緩衝液(pH7.2)を加えて1mLに調製し、ストレプトアビジン固定化ポリマー被覆磁性粒子液を得た。
(特異結合能の評価試験)
ストレプトアビジン化ポリマー被覆磁性粒子とビオチンとの特異結合能を評価するため、ビオチン化HRPを用いて、ストレプトアビジン化ポリマー被覆磁性粒子のビオチン結合量を評価した。
まず、実施例1’、12’および22’ならびに比較例5’で示したポリマー被覆磁性粒子それぞれにストレプトアビジンを結合したストレプトアビジン化ポリマー被覆磁性粒子を0.05mg/mlにPBS緩衝液で希釈し、1.5mLチューブに、0.25mL加えた。磁気分離で上澄みを除き、濃度100ng/mlのビオチン化HRPを100μL加え、ボルテックスミキサーで30分間攪拌し、ビオチン化HRPをストレプトアビジン化ポリマー被覆磁性粒子に結合させた。10mM PBS緩衝液(pH7.2)400μLで、それぞれのチューブ内の粒子を洗浄し磁気分離した。この洗浄操作を計4回行った。PBS緩衝液(pH7.2)を除去した後、粒子が含まれるそれぞれのチューブに200μLのTMB(テトラメチルベンジジン)を加えて30分間静置させることによって、粒子溶液を発色させた。次いで、1N硫酸を200μL加えて、反応を停止させた。この反応停止液を1N硫酸で5倍希釈し、100μLをウェルプレートに分注した。TECAN社製プレートリーダーInfinite200で吸光度(450nm)を測定することによって、それぞれのチューブに仕込まれた粒子の発色量を求めた。結果を表12に示す。
(表12)
表12に示す結果から、実施例1’、12’および22’の球状磁性マーカー粒子は比較例5’の磁性粒子に比べて単位重量あたり、より多くのビオチン結合能を有することが確認できた。つまり、本発明の粒子は、バイオテクノロジー分野またはライフサイエンス分野で用いるマーカーとして好適に利用できることが理解できた。
本発明の磁性マーカー粒子は、pH緩衝溶液中での分散性および分散安定性が高く、また、ある好適な態様ではpH緩衝液中において実用上十分な分散安定性と磁気捕集性とを併せて呈するので、バイオテクノロジー分野またはライフサイエンス分野において、目的とする生体物質を検出するマーカーとして好適に用いることができるだけでなく、細胞、蛋白質、核酸またはその他の生体物質の定量分析、定性分析、分離および精製などの種々の用途にも用いることができる。
10 測定セル
20 磁石
30 磁場測定センサー

Claims (25)

  1. 磁性粒子と該磁性粒子の表面に被着したポリマーとを有して成る磁性マーカー粒子であって、
    該ポリマーが、第1親水性基と第2親水性基との少なくとも2種類の親水性基を含んで成り、該第2親水性基が立体的に嵩高い構造を形成する官能基となっており、また
    該磁性マーカー粒子を含んで成る緩衝溶液について式1で表される該磁性マーカー粒子の沈降速度の値Vが1.0×10−3〜6.0の範囲となることを特徴とする、磁性マーカー粒子。
  2. 前記第1親水性基がノニオン系または双性イオン系の官能基であることを特徴とする、請求項1に記載の磁性マーカー粒子。
  3. 前記ノニオン系の官能基がヒドロキシル基、ピロリドン基およびアミド基から成る群から選択される少なくとも1種以上の官能基である、あるいは、前記双性イオン系の官能基がベタイン基であることを特徴とする、請求項2に記載の磁性マーカー粒子。
  4. 前記第2親水性基の立体的に嵩高い構造が架橋構造に少なくとも起因していることを特徴とする、請求項1〜3のいずれかに記載のマーカー粒子。
  5. 前記第2親水性基がポリエチレングリコール鎖であることを特徴とする、請求項4に記載の磁性マーカー粒子。
  6. 前記磁性マーカー粒子の一次粒子の長短半径比が1.0〜1.3の範囲となった球形状を有していることを特徴とする、請求項1〜5のいずれかに記載の磁性マーカー粒子。
  7. 前記球形状の磁性マーカー粒子につき、粒径分布を示すCV値が18%以下であることを特徴とする、請求項6に記載の磁性マーカー粒子。
  8. 前記球形状の磁性マーカー粒子を含んで成る緩衝溶液について前記式1で表される該磁性マーカー粒子の沈降速度の値Vが0.1〜4.0の範囲となることを特徴とする、請求項6または7に記載の磁性マーカー粒子。
  9. 前記球形状の磁性マーカー粒子の飽和磁化量が2〜100A・m2/kg(emu/g)であることを特徴とする、請求項6〜8のいずれかに記載の磁性マーカー粒子。
  10. 前記球形状の磁性マーカー粒子の保磁力が0.3kA/m〜6.5kA/mであることを特徴とする、請求項6〜9のいずれかに記載の磁性マーカー粒子。
  11. 前記磁性マーカー粒子の前記緩衝溶液中の前記沈降速度の値Vを前記磁性マーカー粒子の水中の沈降速度の値Vで除して得られる沈降速度比Rが0.5〜20の範囲となることを特徴とする、請求項1〜10のいずれかに記載の磁性マーカー粒子。
  12. 前記磁性マーカー粒子を含んで成る緩衝溶液について式3で表される該磁性マーカー粒子の沈降速度の値V’が1.0×10−6〜1.0×10−4の範囲となることを特徴とする、請求項1〜11のいずれかに記載の磁性マーカー粒子。
  13. 前記磁性マーカー粒子に含まれるポリマー量が、該磁性マーカー粒子の重量基準で1〜20重量%であることを特徴とする、請求項1〜12のいずれかに記載の磁性マーカー粒子。
  14. 前記磁性マーカー粒子が強磁性粒子であることを特徴とする、請求項1〜13のいずれかに記載の磁性マーカー粒子。
  15. 前記磁性粒子がフェライトを含んで成ることを特徴とする、請求項1〜14のいずれかに記載の磁性マーカー粒子。
  16. 前記磁性マーカー粒子の一次粒径が20nm〜600nmであることを特徴とする、請求項1〜15のいずれかに記載の磁性マーカー粒子。
  17. 前記磁性マーカー粒子を含んで成る緩衝溶液について、該緩衝溶液中の該磁性マーカー粒子を磁気捕集した後で超音波照射により分散させる処理を10回繰り返した場合、該処理前の状態を基準にした「該磁性マーカー粒子の分散粒径の増加率」が5%以下となることを特徴とする、請求項1〜16のいずれかに記載の磁性マーカー粒子。
  18. 前記磁性マーカー粒子を含んで成る緩衝溶液(該磁性マーカー粒子の分散粒径:200nm〜700nm、該磁性マーカー粒子の濃度:0.1〜0.3mg/mL)について0.36Tの磁場下において該緩衝溶液中の該磁性マーカー粒子を磁気捕集すると、該緩衝溶液の相対吸光度が0.1〜0.2(磁気捕集の操作前の初期値は1)になるまでの時間が60秒以内となることを特徴とする、請求項1〜17のいずれかに記載の磁性マーカー粒子。
  19. 前記磁性粒子および/または前記ポリマーに生体物質結合性物質または生体物質結合性官能基が固定化されていることを特徴とする、請求項1〜18のいずれかに記載の磁性マーカー粒子。
  20. 前記生体物質結合性物質または前記生体物質結合性官能基の固定化ためにカルボキシル基、ヒドロキシル基およびそれらの誘導体から成る群から選択される少なくとも1種が導入されたものであることを特徴とする、請求項19に記載の磁性マーカー粒子。
  21. 請求項1〜20のいずれかに記載の磁性マーカー粒子の製造方法であって、
    ポリマー原料を用いて磁性粒子にポリマーを被着させる工程を含んで成り、
    該ポリマー原料が「重合可能な部位と前記第1親水性基とを有する化合物」および「前記第2親水性基となる、少なくとも2つの重合可能な部位を有する架橋性官能基を含む化合物」を含んで成ることを特徴とする製造方法。
  22. 前記磁性粒子を、
    (i)鉄イオンを含んで成る水溶液とアルカリ水溶液とを混合し、得られる混合水溶液中で鉄元素を含んで成る水酸化物を析出させる工程、および
    (ii)該混合水溶液を加熱処理に付し、該水酸化物から磁性粒子を形成する工程
    によって調製することを特徴とする、請求項21に記載の製造方法。
  23. 前記工程(ii)では、水とグリセリンとを含んで成る前記混合溶液中で前記水酸化物をソルボサーマル反応に付すことを特徴とする、請求項22に記載の磁性マーカー粒子の製造方法。
  24. 前記工程(ii)の前記加熱処理に際して、マイクロ波を前記混合溶液に照射することを特徴とする、請求項22または23に記載の磁性マーカー粒子の製造方法。
  25. 前記磁性粒子および/または前記ポリマーに生体物質結合性物質または生体物質結合性官能基を固定化することを特徴とする、請求項21〜24のいずれかに記載の磁性マーカー粒子の製造方法。
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