JP5434389B2 - 炭素多孔体の製造方法及び蓄電デバイス - Google Patents
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Description
カルボキシ基又はヒドロキシ基を有する含窒素複素環式化合物とアルカリ土類金属イオンとの混合物を不活性雰囲気下で焼成することにより焼成物を得る焼成工程と、
該焼成物中の前記アルカリ土類金属イオンに由来する成分を溶解可能な洗浄液で前記焼成物を洗浄して該成分を除去することにより炭素多孔体の前駆体を得る前駆体生成工程と、
前記前駆体とアルカリ金属イオンとの混合物を不活性雰囲気下で熱処理することにより熱処理物を得る熱処理工程と、
該熱処理物中の前記アルカリ金属イオンに由来する成分を溶解可能な洗浄液で前記熱処理物を洗浄して該成分を除去することにより炭素多孔体を得る炭素多孔体生成工程と、
を含むものである。
この工程では、カルボキシ基又はヒドロキシ基を有する含窒素複素環式化合物と金属イオンとの混合物を不活性雰囲気下で焼成することにより焼成物を得る。ここで、含窒素複素環式化合物は、カルボキシ基又はヒドロキシ基を1つだけ有していてもよいし、2つ以上有していてもよい。2つ以上有しているときには、カルボキシ基及びヒドロキシ基のいずれか一方だけを有していてもよいし、両方を有していてもよい。なお、ヒドロキシ基よりもカルボキシ基の方が好ましい。また、含窒素複素環式化合物としては、ピロールやピリジンなどのように1つの窒素を含む複素環式化合物;ピラゾールやイミダゾール、ピラジン、ピリミジン、ピリダジンなどのように2つの窒素を含む複素環式化合物;1,2,3−トリアジンや1,2,4−トリアジン、1,3,5−トリアジンなどのように3つの窒素を含む複素環式化合物などが挙げられるが、これらのうちピリジンが好ましい。つまり、含窒素複素環式化合物として好ましいものは、カルボキシ基を有するピリジンであり、例えばピリジン−3−カルボン酸(ニコチン酸)、ピリジン−2−カルボン酸、ピリジン−4−カルボン酸、ピリジン−2,3−ジカルボン酸、ピリジン−2,4−ジカルボン酸、ピリジン2,5−ジカルボン酸、ピリジン−2,6−ジカルボン酸、ピリジン−3,4−ジカルボン酸、ピリジン−3,5−ジカルボン酸、ピリジン−2,4,5−トリカルボン酸などが挙げられる。アルカリ土類金属イオンとしては、マグネシウムイオン、カルシウムイオン、ストロンチウムイオン、バリウムイオンなどが挙げられ、このうちカルシウムイオンが好ましい。また、原料としては、アルカリ土類金属の水酸化物、塩化物、硫酸塩、硝酸塩などが挙げられるが、このうち水酸化物が好ましい。例えば、酸性を示す、含窒素複素環式化合物のカルボキシ基と中和するためである。含窒素複素環式化合物とアルカリ土類金属イオンとの混合物を得るには、例えば両者を水溶液中で混合したあと水を蒸発乾固することにより得るようにしてもよい。両者の使用量は、中和反応式に基づく化学量論量だけ用いてもよいし、一方が他方に対して過剰になるように用いてもよい。こうして得られる混合物を不活性雰囲気下で焼成するのであるが、不活性雰囲気としては窒素雰囲気やアルゴン雰囲気などが挙げられる。また、焼成温度は、焼成する混合物にもよるが、例えば400〜1000℃とするのが好ましい。このようにして含窒素複素環式化合物とアルカリ土類金属とを原料とする焼成物を得ることができる。
この工程では、焼成物中のアルカリ土類金属イオンに由来する成分を溶解可能な洗浄液で焼成物を洗浄してこの成分を除去することにより炭素多孔体の前駆体を得る。ここで、洗浄液としては、アルカリ土類金属イオンに由来する成分を溶解可能であれば特に限定されないが、例えばアルカリ土類金属イオンがカルシウムイオンの場合には水や酸性水溶液を用いることが好ましい。酸性水溶液としては、例えば、塩酸、硫酸、硝酸、酢酸及びシュウ酸などが挙げられるが、このうち、酢酸がより好ましい。こうした洗浄を行うことにより、焼成物中のアルカリ土類金属イオンに由来する成分が存在していた箇所は空洞になるため、多孔体の前駆体となる。このようにして得られる前駆体は、比表面積が200m2/g以上、炭素原子に対する窒素原子の比(N/C)が0.03〜0.3程度となることが多い。ちなみに、洗浄前の焼成物の比表面積は10m2/g以下である。こうした洗浄の効率(つまりアルカリ土類金属に由来する成分の除去効率)を考慮すると、こうした成分の溶解度が高い洗浄液を用いることが好ましい。この点で、アルカリ土類金属イオンがカルシウムイオンの場合には、マグネシウムイオンやバリウムイオンなどと比べて水や酸性水溶液に対する溶解度が高いため、好ましい。
この工程では、前駆体とアルカリ金属イオンとの混合物を不活性雰囲気下で熱処理することにより熱処理物を得る。この工程により、更に炭素多孔体の比表面積を高めることができる。アルカリ金属イオンとしては、リチウムイオン、ナトリウムイオン、カリウムイオンなどが挙げられ、このうちカリウムイオンが好ましい。また、原料としては、アルカリ金属の水酸化物、塩化物、硫酸塩、硝酸塩などが挙げられるが、このうち水酸化物が好ましい。前駆体とアルカリ金属イオンとを混合するに際して、前駆体の100重量部に対して100重量部以上600重量部以下、より好ましくは200重量部以上400重量部以下のアルカリ金属イオンを含む化合物を混合することが好ましい。アルカリ金属化合物が100重量部以上では前駆体の比表面積を高めやすく、600重量部以下では炭素多孔体から窒素が除去されるのをより抑制することができ、好ましい。こうして得られる混合物を不活性雰囲気下で熱処理するのであるが、不活性雰囲気としては窒素雰囲気や希ガス雰囲気(例えばアルゴン雰囲気)などが挙げられる。この不活性雰囲気には、水蒸気などを添加してもよい。この熱処理工程では、所定の熱処理温度範囲で熱処理を行う。この熱処理条件によっては炭素多孔体に含まれる窒素が脱離してしまうことから、できるだけ穏和な条件とすることが好ましい。所定の熱処理温度範囲は、例えば、熱処理温度と比表面積と炭素多孔体の含窒素量との関係を経験的に求め、比表面積を高めると共に含まれる窒素分の減少をより抑える温度範囲とすることができる。熱処理温度は、熱処理する混合物にもよるが、例えば、350℃以上1000℃以下とするのが好ましい。特に、カルボキシ基を有するピリジンを含む含窒素複素環式化合物として用いた際には、熱処理温度は、400℃以上600℃未満の範囲、より好ましくは450℃以上550℃以下の範囲とすることが好ましい。400℃を超えると比表面積をより高めやすく、600℃未満では炭素多孔体から窒素が除去されるのをより抑制することができ、好ましい。また、昇温速度は、10℃/分以下であることが好ましく、5℃/分以下であることがより好ましく、2℃/分以下であることが更に好ましい。また、目標温度での保持時間は、8時間以内が好ましく、5時間以内がより好ましく、3時間以内が更に好ましい。このようにして、前駆体とアルカリ金属イオンとを原料とする熱処理物を得ることができる。
この工程では、熱処理物中のアルカリ金属イオンに由来する成分を溶解可能な洗浄液で熱処理物を洗浄してこの成分を除去することにより炭素多孔体を得る。ここで、洗浄液としては、アルカリ金属イオンに由来する成分を溶解可能であれば特に限定されないが、例えば、水や酸性水溶液を用いることが好ましい。こうした洗浄を行うことにより、熱処理物中のアルカリ金属イオンを除去し、より中性な炭素多孔体を得ることができる。このようにして本発明の炭素多孔体を得ることができる。
ニコチン酸(ピリジン−3−カルボン酸:東京化成)と水酸化カルシウム粉末(和光純薬)との中和塩を蒸発乾固法で調製した。中和当量に相当する試薬を水に分散したのち、80℃の湯浴で加熱することで透明溶液を得た。透明溶液を蒸発乾固することで、ニコチン酸カルシウムの中和塩を得た。この中和塩を石英反応管中、不活性雰囲気(窒素気流中)で加熱することで炭素化した。窒素の流量は1L/分、炭素化温度は500℃であった。所定の温度に到達後、3時間の温度保持を行った。炭素化後の試料を水洗し、そこへ過剰量の酢酸(和光純薬)を加え、炭素化に伴い生成したカルシウム塩を溶解した。ろ別後、水洗および乾燥を行い、メノウ乳鉢にて磨砕することで、熱処理前の前駆体としての窒素原子をドープした多孔質炭素材料を得た。この前駆体を用いて液体窒素温度における窒素吸脱着測定を行った。この前駆体のBET比表面積は、407m2/gであった。この結果を基に、BJH法を用いて細孔分布を解析した。その測定結果である吸着等温線及び細孔分布をそれぞれ図1及び図2に示す。
活性炭(クラレRP−20)を炭素材料としての比較例1とした。この活性炭を用いて液体窒素温度における窒素吸脱着測定を行った。その測定結果である吸着等温線及び細孔分布をそれぞれ図1及び図2に示す。この活性炭のBET比表面積は、1634m2/gであった。
得られた上記の前駆体の100重量部に対し、100重量部の水酸化カリウム(和光純薬)を混合した。この混合物を不活性雰囲気下(窒素気流中)で加熱することで、熱処理工程を行った。熱処理は、目標温度を500℃とし、この温度に達するまで2℃/分で昇温を行い、この温度に到達後、3時間、加熱を維持したあと、室温まで降温した。熱処理終了後、熱処理物をイオン交換水中に分散し、数回水洗することで、水酸化カリウムに由来した金属イオン成分を除去した。これを空気中、120℃で乾燥し、得られたものを実施例1の炭素多孔体とした。
得られた上記の前駆体の100重量部に対し、それぞれ200重量部、300重量部、400重量部、600重量部の水酸化カリウム(和光純薬)を混合した以外は実施例1と同様の工程を経て得られたものをそれぞれ実施例2〜5の炭素多孔体とした。
実施例4の炭素多孔体において、熱処理温度を400℃とした以外は実施例4と同様の工程を経て得られたものをそれぞれ実施例4の炭素多孔体とした。
実施例4の炭素多孔体において、熱処理温度を600℃とした以外は実施例4と同様の工程を経て得られたものをそれぞれ比較例2の炭素材料とした。
各炭素材料について、液体窒素温度における窒素吸着測定から細孔構造特性値を求めた。比表面積はBET解析から算出し、ミクロ細孔容量は非特許文献1(K.Kaneko,C.Ishii,M.Ruike and H.Kuwabara,Carbon,30,1075-1088 (1992).)に記載のSPE(Subtracting Pore Effect)解析から算出した。また平均細孔径は、窒素吸着等温線の相対圧力(P/P0)が0.995であるときの窒素吸着量を全細孔容量(ミクロ細孔とメソ細孔の総量)とし、平均細孔径(nm)=全細孔容量×2÷比表面積×1000…式(1)から求めた。細孔形状はスリット型の細孔構造を仮定した。
各試料のN/C比(窒素原子と炭素原子の量比)を、X線光電子分光法(XPS)から求めた。X線光電子分光測定は、XPS測定装置(アルバックファイ製PHI−5500MC)を用い、X線源としてMgKαを用いて行った。N/C比は、各試料のXPS測定を行い、各試料の炭素のC1Sピークと窒素のN1Sピークの面積を求め、その面積比から計算した。
前駆体、実施例1〜5の炭素多孔体及び比較例1の炭素材料の各々をメノウ乳鉢にて磨砕したのちに、空気中、120℃で乾燥した。炭素多孔体を87重量部、導電助剤であるケッチェンブラック(ライオン製ECP600)を8.7重量部、および結合剤であるテフロンパウダーを4.3重量部の割合で混練し、シート状の電極を形成した。図3は蓄電デバイス10の説明図であり、上段が蓄電デバイス10の組立前の断面図、下段が蓄電デバイス10の組立後の断面図である。蓄電デバイス10を組み立てるにあたり、まず、外周面にねじ溝が刻まれたステンレス製の円筒基体12の上面中央に設けられたキャビティ14に、負極16と、セパレータ18と、上述した正極20(合材重量として1mg)とをこの順に積層した。本実施例では、負極16として直径16mm、厚さ0.4mmのリチウム金属箔、セパレータ18としてポリエチレン製セパレータ(東燃化学製、微多孔性ポリエチレン膜)を用いた。そして、非水系電解液をキャビティ14に注入したあと、ポリプロピレン製の絶縁リング29を入れ、次いでポリプロピレン製のリング22の穴に液密に固定されたステンレス製の円柱24を正極20の上に配置し、ステンレス製のコップ状の蓋26を円筒基体12にねじ込んだ。更に、円柱24の上にPTFE製の絶縁用樹脂リング27を配置し、蓋26の上面中央に設けられた開口26aの内周面に刻まれたねじ溝に貫通孔25aを持つ加圧ボルト25をねじ込み、負極16とセパレータ18と正極20とを加圧密着させた。蓄電デバイス10の組み立ては全てアルゴングローブボックス中で行った。このようにして、蓄電デバイス10を組み立てた。なお、蓋26の上面中央に設けられた開口26aの径は円柱24の径よりも大きいことから、蓋26と円柱24とは非接触な状態となっている。また、キャビティ14の周辺にはパッキン28が配置されているため、キャビティ14内に注入された電解液が外部に漏れることはない。この蓄電デバイス10では、蓋26と加圧ボルト25と円筒基体12とが負極16と一体化されて全体が負極側となり、円柱24が正極20と一体化されると共に負極16と絶縁されているため正極側となる。なお、非水系電解液は、1mol/L濃度の LiPF6系電解液(富山薬品工業製LIPAST 3E7DEC/PF1)を用いた。これはLiPF6塩を、エチレンカーボネートとジエチルカーボネートの混合溶媒(体積比3:7)に溶解したものである。このようにして組み立てた蓄電デバイス10を用いて、充放電特性の評価を行った。
前駆体、実施例1〜5及び比較例1の蓄電デバイスの充放電特性は、北斗電工製HJ1001SM8Aを用い、定電流法で評価した。500mA/g(正極合材重量あたりの電流量)の電流量で、デバイス端子間の電圧が4.5Vに達するまで定電流で充電を行い、4.5Vに達した後に電位を維持したまま、充電電流が50mA/gに達するまで充電を行うことで、蓄電デバイスを満充電した。充電が終了した後に、500mA/g(正極合材重量あたりの電流量)の電流による定電流放電を、端子間電圧が2.0Vに達するまで放電した。この充電−放電サイクルを40回繰り返した後に、40サイクル目の放電測定時の時間−電位曲線(クロノポテンショグラム)から、以下の式(2)を用い、蓄電デバイスの放電容量を求めた。放電容量(mAh)=電流(I)×経過時間(△t)…(2)
ここで電流(I)は定電流放電の電流値、経過時間(△t)は放電開始(端子間電圧4
.5V)から放電終了(端子間電圧2.0V)までに要した時間である。
表1に前駆体、実施例1〜5及び比較例1の測定結果をまとめた。表1には、作製条件としての前駆体とアルカリ化合物との重量比、BET比表面積(m2/g)、ミクロ細孔容量(mL/g)、平均細孔径(nm)、N/C比、放電容量(mAh/g)、単位表面積あたりの放電容量(mAh/m2)を示した。なお、放電容量を各試料の比表面積で除した値である単位表面積あたりの放電容量は、以下、放電能とも称する。表1に示したように、実施例1〜5では、全ての試料で比較例1を上回る放電能を示した。また、各実施例で調製された炭素多孔体は、比表面積が比較例1(活性炭)に比べ小さいにもかかわらず、実施例1を除いて比較例を上回る放電容量を示した。特に、実施例3,4において比較例1の約1.5倍の放電容量が得られた。
Claims (4)
- カルボキシ基又はヒドロキシ基を有する含窒素複素環式化合物とアルカリ土類金属イオンとの混合物を不活性雰囲気下で焼成することにより焼成物を得る焼成工程と、
該焼成物中の前記アルカリ土類金属イオンに由来する成分を溶解可能な洗浄液で前記焼成物を洗浄して該成分を除去することにより炭素多孔体の前駆体を得る前駆体生成工程と、
前記前駆体とアルカリ金属イオンとの混合物を不活性雰囲気下で所定の熱処理温度範囲で熱処理することにより熱処理物を得る熱処理工程と、
該熱処理物中の前記アルカリ金属イオンに由来する成分を溶解可能な洗浄液で前記熱処理物を洗浄して該成分を除去することにより炭素多孔体を得る炭素多孔体生成工程と、を含み、
前記熱処理工程では、前記所定の熱処理温度範囲として400℃以上600℃未満の温度範囲で熱処理する、
炭素多孔体の製造方法。 - 前記含窒素複素環式化合物は、カルボキシ基を有するピリジンである、請求項1に記載の炭素多孔体の製造方法。
- 前記熱処理工程では、前記前駆体の100重量部に対して200重量部以上600重量部以下の前記アルカリ金属イオンを含む化合物を混合して熱処理する、
請求項1又は2に記載の炭素多孔体の製造方法。 - 負極と正極との間に非水系電解液を介在させた蓄電デバイスであって、
前記正極は、請求項1〜3のいずれか1項に記載の炭素多孔体の製造方法によって製造された炭素多孔体を含む、
蓄電デバイス。
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