JP5433597B2 - 壁掛け家具の係止具及び係止装置 - Google Patents
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Description
前者は壁面及び家具背面の上下2カ所に係止具を設け、家具を上下2カ所で固定するようにしたものである。しかしながら、上下の係止具は別部材であり、壁面の係止具と家具背面の係止具との上下方向の位置合わせに精度が要求され、一般生活者のさぎょうには適さない。
後者の発明は係止面を傾斜させることにより、家具が壁面に自重で押しつけられるようにしたものであるが下端部は別部材で固定するものである。
そこで、地震テストの震度を下げて、地震テスト中の家具の動きを見てみると、落下しない家具(縦二段)は、壁にピッタリ貼り付いた状態で壁の上下左右や前後の動きにも家具全体が壁から離れていなかった。他方落下した家具(縦三段)は振り子運動をして、壁から離れていることがわかった。
この結果から、壁から離れない条件があるはずと考え、条件の違いを探した。
縦二段と縦三段の違いは、フックの位置であった。家具の高さから考えると、縦三段の家具では下部フックの位置が家具の下端から離れすぎている(高すぎる)のでは、と考え、縦三段の家具のフックの位置を縦二段の同じような位置関係(家具高さに対して)にするために10cm下げて実験を行った。
すると、縦三段の家具も、壁にピタリと貼り付いて、落下しなくなった。
本願発明はこのような実験、知見に基づくものである。
前記フックの数は上下に2つ以上設けるものとして、壁掛け家具の上下寸法に対応して数個設けてもよい。
前記において、壁掛け物の背面に凹部を設け、受け具基盤を前記凹部の底面に固着し、受け盤は前記凹部の中に位置させ、壁掛け家具の背面と壁面とを密接させた状態で係止させるようにすることが好ましい(請求項3)。
すなわち、受け具の壁掛け物への固着位置は、最下段受け穴の上縁から壁掛け物の下端までの距離を壁掛け物の上下の距離の80%以下好ましくは65%以下とした壁掛け物の係止装置である。
請求項5の発明は、請求項4の条件に加えて、受け具の壁掛け物への固着位置を、最下段受け穴の上縁から壁掛け物の下端までの距離を壁掛け物の上下の距離の10%以上、好ましくは25%以上としたものである。
請求項2の発明によればフックの上面を基盤から直角に伸びる受け面と傾斜した押さえ面とで構成し、受け面の寸法と受け穴の厚さ寸法とを同等としたので、フックを受け穴に挿通して壁掛け物を下方へ落とし込むことにより、受け具の壁面側の面と壁面との距離が自動的に固定され、安定した係止状態が得られる。
加えて、請求項3の発明によれば、壁掛け家具の背面に凹部を設け、受け具基盤を前記凹部の底面に固着して、壁掛け家具の背面と壁面とを密接させた状態で係止させることにより、耐震性を一層増加させることができる。
係止装置によって壁掛け家具を吊り下げる場合、家具の最上端を壁から吊すのが、家具として一番安定する状態である。しかし、家具の最下端がフリーな状態(固定されていない)なので、地震などの揺れに対して家具の下部が揺動して壁から離れる。
地震に強い家具の取り付け構造とするためには。家具が地震時の構造体(壁面)の変形に追随することが必要である。すなわち壁掛け家具の下端と壁との間に隙間が無く、壁の変形に追随していることが必要である。
本願発明は、フックを上下複数とすることにより壁掛け家具の下端が地震時にも壁から可及的に離れないようにするものである。
尤も、フックを壁掛け家具の上端部と下端部に対応させることによりこの目的は達成することができる。
しかしながら、個別のフックを上下に生活者が取り付けることは位置合わせが難しく好ましくない。また、家具の上下長に対応する長さの帯状板にフックを設けることも考えられるが、部材が長大となり運搬に適さず、取り扱いも難しい。
そこで、可及的に短い間隔でフックを設けたフック体によって、壁掛け家具の下部の揺れを防止しようところ、請求項4記載の数値を得たものである。
(図2は)上下のフックの間隔が9cmのフック体を壁掛け家具の背面に左右2カ所で係止させた実験結果である。縦軸は測定値の縦方向の位置を、家具の下端からの距離を家具の上下寸法で割った数を%で示す。家具の下端が0%であり、数値が増えるにつれて家具の上方に行き、80%近辺で下方のフックに至る。グラフの横軸は壁と家具背面との隙間の量であり、単位は便宜的にmmで示してある。
上段は重り無しの場合であり、当初の設定値(上段フックの位置が家具上端から71mm、自由長さ853mm(84%))の場合、震度6弱の地震時(加速度540gal)に家具の下端(0%)の隙間は0mmである。途中家具が歪み壁と離れるところがあるが、フック部(80%近辺)に大きな力は加わっていない。
前記「自由長さ」とは、図1に符号Lで示すものであり、下段のフックから家具の下端までの長さをいう。
同じ条件で震度6強の80%レベル(720gal)に進めると、家具下端は壁から離れ、隙間が大きくなり、下段のフックを中心に振り子運動をするようになる。フック部には大きな力が加わり、家具が落下する原因となる。
これを改善するためには、家具の下端部を壁に押さえつけるようにすればよいが、大きな力が作用しているため、粘着テープで固定する程度の補強では耐えることができない。
そこで、フック体の位置を下げ下段フックの位置を75%程度まで下げたところ、震度6強80%でも家具の下端が壁から離れることはなかった。
下段は30Kgの重りをのせた場合である。重りはずれないように棚板に固定した。当初の設定では、震度6弱においても家具の下端は壁から大きく離れてしまった。そこで、下段フックの位置を65%程度に移したところ、家具の下端は壁から離れなくなり、震度6強でも同様であった(図には震度6強の場合を示す)。
この結果から、震度6強における落下防止のためには、3段の家具では自由長さ57%以下、2段の家具では60%以下がよいことがわかる。
尤も、従来の壁掛け装置においては震度5弱までは耐えることができても震度5強では落下事故が発生していることを考えると、震度5強に耐えることのできる80%以下という数値は、本願発明の顕著な効果として捉えることができる。
図に示す力の大きさで判っている力は、FHとM0だけである。
FH=Z* Ks*W
Z=1,震度6強の場合Ks=0.9、W=30kg(錘)+6kg(家具の重さ)であるから(Wは、錘が無い場合は、家具だけの重さになる。)
FH=1.0*0.9*36=32.4 kgf
となる。
Mo=(W+0.5*FH)*L3G=(36+16.2)*9.5=495.9 kgf-cm (L3Gは棚奥行きの半分)
これと、力の釣り合いの式とモーメントの釣り合いの式
より、Ra 、Rb、Rc を求める。
この時Rc が正(プラス)の場合は、点C(家具下端)は壁に接触しており、接触力(=Rc)が有る。つまり、Rcが、「正」ということは、家具が壁を押している(接触しないと押せない)ことになる。
反対に、Rc が負(マイナス)の場合は、点C(家具下端)は壁に接触していない。
家具下端と壁を、ひも等で繋がっておれば、家具下端が壁を引っ張る状態になるが、そのようなものは設けていないので、この場合は、解は無い。
この場合は、Rcが作用していない状態を考え、再度、計算することになる。
力の釣り合いの式とモーメントの釣り合いの式は
未知数(Ra 、Rb)を式(1‘) 、(2‘)より求める。
Ra=(FH* l2 - Mo)/(2 * l)
Rb=(Mo - FH * ( l+ l2 ))/(2 * l)
各場所の変位(隙間)は、位置xにおいて
y (隙間) = y1 + y2
x= l2の場所に、荷重FHやモーメントMOが作用している。したがって、x= l2の場所を境に、式が変わる。
x< l2の場合の式が今回示した式(3)、(4)、(5)であり、x>= l2の場合の式が式(6)、(7)、(8)である。
x < l2 の場合、
l2< x <l1+ l2 の場合、
から求まる。
数値は1/(6*E*I)で全て無次元化しているが、今回は、1/(6*E*I)=0.00001を使用して計算した。
この時Rc が正(プラス)の場合は、式(1)と式(2)は、未知数(Ra 、Rb、Rc)が3個、方程式が2個なので解けない、三つ目の方程式として、家具下端が壁に接しているとうい条件を入れる。(当然、この仮定が外れる時は、Rcがマイナスの時)
つまり、式(5)を導入。
家具下端(x= l1 + l2)で、
y (隙間) = y1 + y2 + y3 =0
この三つの連立方程式から、未知数(Ra 、Rb、Rc)が求まる。ついで、Rcが0となるXの値を導くことにより、適切な自由長さを計算により求めることができる。
ここで、y3は、接触力Rc による変位成分であり、次式で計算される。
計算結果(表1)によれば、三段の家具が落下しない金具位置(下段フック、下段受け穴の上縁の位置)は震度5強で89%、震度6弱74%、震度6強(80%)で65%、震度6強(100%)で60%とされており、その結果を図に当てはめると階段状の線となる。そして実験結果を表示すると、概ね計算で求めた線の下側で落下しない結果が得られている。2段の家具においても計算値と実験結果は概ね一致している。
そして、家具の上下寸法が長いものほど自由長さの比率は小さくすることが要求されるところ、壁掛け家具として用いられる家具の上下寸法は最大でも120cm程度と考えられる。そして実験結果において、上下長101.5cmの三段の壁掛け家具においても65%で震度6(80%)をクリアしている。
したがって、壁掛け家具において、自由長さの比率を60%以下とすることにより、通常使用される壁掛け家具において、震度6(80%)での落下のおそれが解消されるものと言うことができる。
更に、80%以下好ましくは65%以下という条件に加えて、自由長さの比率は10%以上好ましくは25%以上が好ましいものと考えられる。
前記基盤1には上下に亘り複数の小穴5が設けてあり、この小穴にネジや釘を挿通してフック体Aを壁面に固着する。
この受け穴は上縁が前記フック2の受け面3で支持されるものであり、上下の受け穴8,8aの上縁間の距離は上下のフック間の距離よりも僅かに(1ミリ以下)長くしてあり、壁掛け家具は上段のフック2によって吊り下げられるようにしてある。また、受け具Bの上下寸法は前記フック体Aの上下寸法と同等又はこれよりも長くしてある。
前記受け具基盤6には上下に亘り複数の小穴9が設けてあり、この小穴にネジや釘を挿通して受け具Bを壁掛け家具に固着する。
フック体Aは壁面に密着させた状態で、上下のフック2,2aを結ぶ直線が鉛直をなすようにして、左右2本、壁掛け家具に固着された2本の受け具の間隔にそろえて、固着してある。
壁掛け家具Dの背面には、左右二カ所、同じ高さ位置に受け具Bを取り付けるための凹部11が設けてある。この凹部11は底面を壁掛け家具Dの背面と平行な面とし、上下寸法は受け具Bの上下寸法と同等として、受け具Bの壁掛け家具への上下方向の取り付け位置が自動的に決定されるようにしてある。そして、凹部11深さは受け盤7,7aの突出高さよりも僅かに深くし、受け穴8、8aをフック体Aのフック2、2aに係止させたときに、壁掛け家具Dの背面がフックの押さえ面4によって壁側に引きつけられ、壁面に上下に亘り当接するようにしてある。
なお、受け具Bの上下寸法は前記フック体Aの上下寸法と同等かこれよりも長くしてあるので、受け穴をフックに係止させたとき、フック体Aは凹部11の中に収まり、フック体Aに妨げられることなく壁掛け家具Dの背面は壁面に当接する。
下段の受け穴8bの上縁から家具Dの下縁までの長さが家具の上下寸法の60%としてあるので、地震発生時における大きな力にも対抗することができ、震度6強の揺れにおいても家具の背面は壁面に追随し、落下することがない。
加えて、フックに垂直押さえ面4aを設けてあるので、上下方向の力を受けたときに受け具がフック面をせり上がることを回避でき、上下方向の力にも強い係止装置とすることができる
B 受け具
C 壁
D 壁掛け家具
1 基盤
2、2a フック
3 受け面
4a 垂直押さえ面
4b 傾斜押さえ面
6 基盤
7、7a 受け盤
8、8a 受け穴
11 凹部
Claims (5)
- 壁面に固着されるフック体と、壁掛け物の背面に固着される受け具とを組み合わせてなり、
前記フック体は、壁に固着されるフック基盤の表面に上向きに突出したフックを上下に複数配設して構成し、
前記受け具は、壁掛け物の背面に固着される受け具基盤と、これよりも突出した位置の受け盤とを有し、この受け盤に前記フックが係止される複数の受け穴を設けて構成した、
壁掛け物の係止具 - フックの上面は、基盤から直角に伸びる受け面と、受け面の先端から傾斜して上方に伸びる押さえ面とを有するものとし、受け面の寸法と受け穴の厚さ寸法とを同等とした請求項1記載の係止具
- 請求項2の係止具を使用し、壁掛け物の背面に凹部を設け、受け具基盤を前記凹部の底面に固着し、受け盤は前記凹部の中に位置させ、壁掛け物の背面と壁面とが面接触した状態で係止させるようにした、壁掛け物の係止装置
- 受け具の壁掛け物への固着位置は、最下段受け穴の上縁から壁掛け物の下端までの距離を壁掛け物の上下の距離の80%以下・10%以上とした、請求項3記載の壁掛け物の係止装置
- 受け具の壁掛け物への固着位置は、最下段受け穴の上縁から壁掛け物の下端までの距離を壁掛け物の上下の距離の10%以上とした、請求項4記載の壁掛け物の係止装置
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