JP5433160B2 - 電気化学デバイスユニットモジュール - Google Patents
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Description
例えば、特許文献1では、電気化学デバイスユニットとしてリチウムイオン電池における冷却に関する構造が示されている。この中で、複数の扁平形状の電池が放熱板と交互に積層されて組電池を構成しており、放熱板により効果的に冷却できるようになっている。そして、その放熱板の表面に絶縁処理が施されていることが特許文献1記載の発明の特徴である。その絶縁処理としては、アルマイト処理、ポリイミドやフェノール樹脂やポリアミドイミドなどの絶縁樹脂膜などの絶縁樹脂膜の形成、セラミック膜の形成などが示されている。このように放熱板の表面に絶縁処理を施すことにより、リチウムイオン電池それぞれの表面に異なる電位が発生しても、それが放熱板を介して接触して同電位となることはないので、組電池として十分な電圧が得られなくなる恐れもないというものであった。また、漏電して電位がモジュール外部に発生して感電するような恐れもないというものであった。
しかしながら、前述の従来技術では、その構成上、放熱板の表面に熱絶縁層(以下、単に絶縁層という)を1層しか設けることができない。このため、その唯一の絶縁層が、電気化学デバイスユニットと放熱板に局部的にはさまれたりこすれたりして破壊された場合には、放熱板を介して接触して同電位となり、組電池として十分な電圧が得られなくなったり、漏電して電位がモジュール外部に発生して感電する恐れがあった。実際、このような電気化学デバイスユニットが、携帯機器電源や車両用電池として使用される場合には、電気化学デバイスモジュールには常に振動や衝撃が加わっているのであるから、絶縁層は常に破壊される危険に晒されているといえる。
また、放熱板の放熱面積を増やすために、例えばモジュールから外側に突出した部位にフィンなどの放熱構造が付与される構造が考えられるが、その場合、必要部位だけに絶縁層を設ける作業は容易ではなくなる。絶縁層を設ける必要がある部位というのは、放熱板の少なくとも電気化学デバイスユニットと密着している部分であり、その平面部分だけ絶縁層を設ければよいのだが、フィン部への絶縁材料の付着を避けるためにシーリングするのは難しくコスト高になる。もちろん、フィン部分にシーリングをしないままだと、不要部分にも絶縁材料が付着してコスト高になるのは言うまでもないし、フィン表面に絶縁層が付くことで放熱性が低下する恐れもある。
それを避けるために、モジュールの組み立て作業時に、別に例えば絶縁性の薄い樹脂シートを用意して、これを電気化学デバイスユニットと放熱板の間に入れることも考えられるが、薄い樹脂シートでは取り扱いがしにくいという問題がある。樹脂シートを厚くすれば、取り扱いは容易になるが、電気化学デバイスユニットから放熱板への熱の伝わりが悪くなるので、折角放熱板を入れている意味が無い。
(1)電気化学デバイスユニットと放熱板を交互に積層してなる電気化学デバイスユニットモジュールにおいて、1枚または複数枚の絶縁仕切り板が、片面または両面の表面に、単層または多層の絶縁性の樹脂からなり、かつ塗装によって該樹脂が被覆されるか、または該樹脂の樹脂シートが接着もしくは熱溶着されてなる絶縁層が設けられた金属板であって、電気化学デバイスユニットと放熱板の間に双方に密着するようにして配置されていることを特徴とする電気化学デバイスユニットモジュール。
(2)前記(1)に記載の電気化学デバイスユニットモジュールにおける絶縁性の樹脂が、塗装で被覆される場合に、その塗装がプレコート塗装であることを特徴とする電気化学デバイスユニットモジュール。
(3)前記絶縁仕切り板が、金属基材上に互いに種類の異なる多層の絶縁層が設けられた金属板であることを特徴とする(1)または(2)に記載の電気化学デバイスユニットモジュール。
(4)前記絶縁仕切り板の放熱板側に絶縁層を有することを特徴とする(1)〜(3)のいずれか1項に記載の電気化学デバイスユニットモジュール。
また、本発明による電気化学デバイスユニットモジュールの組立では、別に用意した絶縁仕切り板を、電気化学デバイスユニットと放熱板を積層する際に、間に入れていくだけである。このため、放熱板にフィンなどの複雑形状が付与されていても、放熱板自体に絶縁層を付与するわけでないので、面倒なフィン部分のシーリング作業が必要無い。また、またシーリング作業を省いたために不要部分にまで絶縁材料を付着させてしまって余計なコストがかかったり、フィン部分に絶縁材料を付着させて放熱性能が低下してしまったりする恐れも無い。
以上より、本発明によれば、低コストで、絶縁性や耐電解液性に優れ、熱の伝わりを阻害しない、電気化学デバイスユニットモジュール構造を提供することができる。
なお、電気化学デバイスとは、電気化学の原理を用いるデバイスのことであり、物質間の電子の授受(酸化、還元など)とそれに付随する諸現象を扱う化学を利用した人工的な構造物をいう。例えば内部の電極や電解液などの構成材料が電気化学反応することにより、高密度のエネルギーを取り出せるもので、ニッケル水素電池やリチウムイオン電池などが代表的である。ただし、それ以外のものであっても、本発明の効果が損なわれるものではない。電気化学デバイスは通常最小単位のユニット複数個が組合されて使われ、それらを必要最小限のスペースに効率的に配置するためには、デバイスの形状は扁平の四角形が好ましく、さらにそれらを積層してモジュールとするのが好ましい。本発明は、そのような形状の、一般的な電気化学デバイスに適用できる。
図1〜3で示すように、電気化学デバイスユニットモジュール1は、電気化学デバイスユニット2と放熱板4の間に絶縁仕切り板3を入れている。図2の実施形態では、絶縁仕切り板基材3cの片面に絶縁層3bを付与している。これにより、隣り合う電気化学デバイスユニットの表面に異なる電位が発生しても、それが放熱板を介して接触して同電位となることはなく、組電池として十分な電圧が得られなくなる恐れもない。また、漏電して電位がモジュール外部に発生して感電するような恐れもない。また、電気化学デバイスユニットの組立では、絶縁仕切り板を、電気化学デバイスユニットと放熱板を積層する際に、間に入れていくだけなので、面倒なフィン部分のシーリング作業が無く、またシーリング作業を省いたために不要部分にまで絶縁材料を付着させてしまって余計なコストがかかったり、フィン部分に絶縁材料を付着させて放熱性能低下したりする恐れもない。
図4,5で示すように、この実施形態では、絶縁仕切り板基材3cの両面に絶縁層3aを付与している。これにより、図2,3で示す実施形態の効果はもちろん発揮され、さらに絶縁層3aが2層設けられているので、携帯機器電源や車両用電池など、電気化学デバイスモジュールに常に振動や衝撃が加わっている環境で、絶縁層が電気化学デバイスユニットと放熱板に局部的にはさまれたりこすれたりする場合でも、二重に保護されているので、絶縁機能が失われる恐れがない。
図6で示すように、電気化学デバイスユニット2と放熱板4の間に絶縁仕切り板3を入れており、本実施形態では、その絶縁仕切り板3が曲げ加工されてフィン5と反対側の部分で連続的に一体の形状となっている。これにより、図2、3、4、5で示す実施形態の効果はもちろん発揮され、さらに、放熱板の下側も覆われるので、確実に絶縁機能を発揮することができる。
さらに、電気化学デバイスユニットモジュールの組立において、絶縁仕切り板を、電気化学デバイスユニットと放熱板とともに積層する際に、放熱板の両側に別々に入れる必要がなく、放熱板1枚に対して絶縁仕切り板を1枚入れればよく、組み立て作業が容易になる。この形状にするためには、折り曲げ加工でも何でもかまわない。また、紙面手前側や紙面奥側(図示していない)が、後述のように接合されて袋状になっていてもよい。
図7で示すように、電気化学デバイスユニット2と放熱板4の間に絶縁仕切り板3を入れており、本実施形態では、その絶縁仕切り板3がフィン5と反対側の部分6で接合されて一体となっている。これにより、図2、3、4、5、6で示す実施形態の効果はもちろん発揮される。この接合は、接着剤を使う方法でもよいし、熱溶着する方法でもよいし、粘着テープを使う方法でもよいし、機械的に例えば折り曲げてかしめる方法でもよい。また、接合する部位は、紙面手前側や紙面奥側(図示していない)だけでもよいし、あるいは、フィンと反対側の部分と紙面手前側や紙面奥側の3辺全部で袋状になっていてもよい。
図8、9で示すように、電気化学デバイスユニットと放熱板の間に絶縁仕切り板3を入れており、本実施形態では、その絶縁仕切り板3が2枚積層された構造となっている。これにより、図2、3、4、5で示される効果はもちろん発揮され、さらに、絶縁仕切り板が多数枚積層されているので、携帯機器電源や車両用電池など、電気化学デバイスモジュールに常に振動や衝撃が加わる環境で、絶縁層が電気化学デバイスユニットと放熱板に局部的にはさまれたりこすれたりする場合でも、多重に保護されているので、絶縁機能が失われる恐れが無い。この絶縁仕切り板の種類や枚数、厚さは、使用される環境や必要とされる機能に応じて適宜選択されるべきものであり、同じものが多数枚でもよいし、異なるものが適宜組み合わされていてもよい。
図10、11で示すように、電気化学デバイスユニット2と放熱板4の間に絶縁仕切り板3を入れており、本実施形態では、その絶縁仕切り板基材3cの表面に多層の絶縁層(3a、3b)が設けられている。これにより、図2、3、4、5で示される効果はもちろん発揮され、さらに、絶縁層が多層設けられているので、携帯機器電源や車両用電池など、電気化学デバイスモジュールに常に振動や衝撃が加わっている環境で、絶縁層が電気化学デバイスユニットと放熱板に局部的にはさまれたりこすれたりする場合でも、多重に保護されているので、絶縁機能が失われることはない。また、種類の異なる絶縁層を組み合わせて多層とすることで、1種類では不可能な機能を発揮することが可能である。例えば、絶縁性の高い第1層の上に、第1層を保護する第2層を被覆するといった具合である。この多層の絶縁層の種類や積層数、厚さは、使用される環境や必要とされる機能に応じて適宜選択されるべきものであり、同じものが多数層あってもよいし、異なるものが適宜組み合わされていてもよい。
基材として使用する材料は、高放熱性、高耐薬品性、及びある程度の強度があることが望ましく、例えば金属ではアルミニウム、銅系もしくは鉄系の合金、メッキなどの表面処理を施したものも使用できる。金属以外でも、絶縁層を設けることができれば、使用が可能であるが、この場合は高い放熱性が必要ない部位に適する。
絶縁層に使用しうる材料は、樹脂(アクリル、ポリエステル、エポキシ樹脂、フッ素、フェノール、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリプロピレンなど)、セラミック(アルミナ、ジルコニアなど)、アルマイトが挙げられるが、本発明においては、上記のように樹脂を使用する。
基材と絶縁層との組み合わせは、絶縁性、放熱性、耐薬品性、強度などの具体的な仕様と、製造コスト、作りやすさなどにより、適切な組み合わせを選択できる。例えば基材にアルミニウム、絶縁層にポリプロピレンを用いた態様であれば、放熱性や耐薬品性に優れ、十分な強度を有する絶縁仕切り板とすることができる。
また、基材と絶縁層が一体となった構成においては、絶縁性を有する樹脂材料であって、該樹脂としては、アクリル、ポリエステル、エポキシ樹脂、フッ素、フェノール、ポリイミド、ポリアミドイミドなどが挙げられる。この態様においては、高い放熱性や強度が必要とされない部位で使用することが好ましい。
また、絶縁仕切り板や放熱板の金属部分の材料としては、熱伝導性のよいアルミニウムが好ましいが、薄ければ放熱性への影響は小さいので、熱伝導率の低い材料でも使用可能である。例えば、鉄系や銅系の材料を使えば、それ自体が耐アルカリ性に優れるため、ニッケル水素電池の場合には、被覆される絶縁層との相乗効果で耐アルカリ性に特に優れた構造とすることができる。また、金属板の表面に耐アルカリ性に優れるメッキなどの表面処理を施せば、同様に耐アルカリ性が特に優れた構造とすることができる。アルマイトを絶縁層とする場合には、金属層はアルミニウムである必要がある。電気化学デバイスがリチウムイオン電池の場合も同様で、電解液に耐性のある材料やメッキなどの表面処理を施すことにより、電解液の耐性に優れた構造とすることができる。
セラミックの被覆方法としては、物理的蒸着法(PVD)や溶射などによるコーティングが挙げられるが、その他の物理的方法、化学的方法でもよい。
本発明では樹脂を使用するが、樹脂を塗装する場合は、例えば、溶媒で希釈した塗料中に浸漬する方法でもよいし、溶媒で希釈した塗料をスプレーで吹き付ける方法でもよいし、連続ラインによりロールで塗布するいわゆるプレコートによる方法でもよい。プレコートラインで連続的に塗布する方法であれば、樹脂被覆のコストを低く抑えることができるため好ましい。また、塗装の後に焼き付けを行ってもかまわない。
樹脂シートを接着する場合は、例えば、シートと金属板を接着材で接合してもよいし、熱溶着してもかまわない。
いずれも、仕切り板基材の表面に絶縁層が確実に被覆されるのであれば、どのような方法でもかまわない。
少なくとも電気化学デバイスユニットに相対する側の表面を被覆すれば、絶縁仕切り板の金属部分や放熱板を、漏電や中の液による浸食から防ぐことができる。絶縁仕切り板の両面を被覆すればさらによい。
逆に、絶縁層に電解液の耐性が無く、仕切り板基材に耐性がある場合には、電気化学デバイスに相対する側の表面には絶縁層を設けず、反対側の表面や積層している内部に絶縁層を設ける方法でもかまわない。
また、少なくとも接触して密着する領域だけに被覆すれば、被覆がある部分と無い部分での段差を生じずに絶縁仕切り板と電気化学デバイスユニットや放熱板をぴったりと密着でき、熱の伝わりを阻害しない。ただし、それ以外の領域まで被覆しても、コスト高にはなるが、本発明の効果を阻害するものではない。
絶縁層の厚さも、熱伝導だけを考えるとできるだけ薄い方が好ましいが、薄すぎると絶縁層が破壊されやすくなり、絶縁性や中の液に対する耐性が低下する恐れがある。実際には、絶縁層の材質や被覆方法により均一に安定して被覆できる厚さの範囲内で、すべての要求性能を満足するような厚さにする必要がある。実際には、絶縁層の厚さは1〜100μm程度の範囲が好ましい。
振動や衝撃によって、電気化学デバイスと絶縁仕切り板がずれたり、あるいは、絶縁仕切り板と放熱板がずれたりする可能性がある。ずれを防ぐためには、樹脂層表面の摩擦係数は大きいことが好ましい。また、こすれて磨耗しないような材料であること、また経年劣化しない材料であることが好ましい。
電池のケース材料として金属箔を樹脂でラミネートした構造でも構わない。ラミネートした樹脂に欠陥があったり破れていたりした場合などに、電位がモジュール外部に発生する可能性があり、そのために絶縁性が必要となるためである。
2 電気化学デバイスユニット
3 絶縁仕切り板
4 放熱板
5 フィン
Claims (4)
- 電気化学デバイスユニットと放熱板を交互に積層してなる電気化学デバイスユニットモジュールにおいて、1枚または複数枚の絶縁仕切り板が、片面または両面の表面に、単層または多層の絶縁性の樹脂からなり、かつ塗装によって該樹脂が被覆されるか、または該樹脂の樹脂シートが接着もしくは熱溶着されてなる絶縁層が設けられた金属板であって、電気化学デバイスユニットと放熱板の間に双方に密着するようにして配置されていることを特徴とする電気化学デバイスユニットモジュール。
- 請求項1に記載の電気化学デバイスユニットモジュールにおける絶縁性の樹脂が、塗装で被覆される場合に、その塗装がプレコート塗装であることを特徴とする電気化学デバイスユニットモジュール。
- 前記絶縁仕切り板が、金属基材上に互いに種類の異なる多層の絶縁層が設けられた金属板であることを特徴とする請求項1または2に記載の電気化学デバイスユニットモジュール。
- 前記絶縁仕切り板の放熱板側に絶縁層を有することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の電気化学デバイスユニットモジュール。
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