JP5432553B2 - 手術用顕微鏡 - Google Patents

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Description

本発明は、手術用顕微鏡に関し、光分割手段を介して分割された、肉眼観察用光路と撮像用光路を備える手術用顕微鏡に関するものである。
従来、この種の手術用顕微鏡としては、例えば、下記の特許文献1〜4に記載のものがある。そこで、それらの特許文献に記載されている手術用顕微鏡を、図11〜図14を用いて分かり易く説明する。
図12は特許文献1に記載の手術用顕微鏡の光学系の説明図であり、(a)は概略構成を示す図、(b)は(a)の手術用顕微鏡の光学系に用いられ得るフィルタの透過特性を示すグラフである。この特許文献1に記載の手術用顕微鏡は、図12(a)に示すように、肉眼観察光学系51を構成している左右の肉眼観察光学系51R,51Lの光路に、光分割素子として部分透過ミラー52R,52Lを備え、観察対象70からの光を2つの光路を通る光に分割している。一方の部分透過ミラー52Lを反射した光路には、ビームスプリッタ53を備え、さらに2つの光路に分割している。ビームスプリッタ53を介して分割された夫々の光路には、撮像素子54a,54bを備えている。また、ビームスプリッタ53を介して分割された一方の光路には、図12(b)に示すように、近赤外波長の閾値61よりも短い波長帯域の光を透過せず近赤外波長の閾値61よりも長い波長帯域の光を透過するフィルタ55を備えている。他方の部分反射ミラー52Rを反射した光路には、撮像素子54cを備えている。
そして、特許文献1に記載の手術用顕微鏡は、このような構成により、部分透過ミラー52R,52Lを透過した光を用いて可視光の実体像を肉眼で観察するとともに、部分透過ミラー52Rを反射した光と、部分透過ミラー52Lで反射されビームスプリッタ53で分割された一方の光路を通る光とを用いて可視光の実体像を撮像画像として得ることができ、かつ部分透過ミラー52Lで反射されビームスプリッタ53で分割されたもう一方の光路を通る光を用いて近赤外波長の蛍光像の撮像画像が得られるようになっている。
図13は特許文献2に記載の手術用顕微鏡の光学系の説明図であり、(a)は概略構成を示す図、(b)は(a)の手術用顕微鏡の光学系における光分割素子の反射特性を示すグラフである。この特許文献2に記載の手術用顕微鏡は、図13(a)に示すように、肉眼観察光学系51を構成している左右の肉眼観察光学系51R’,51L’の光路に、光分割素子としてダイクロイックミラー52R’,52L’を備えている。ダイクロイックミラー52R’,52L’は、図13(b)に示すように、所定波長帯域の近赤外光を反射しかつ可視光を透過する特性を有している。ダイクロイックミラー52R’,52L’を反射した光路には、撮像素子54R’,54L’を備えている。
そして、特許文献2に記載の手術用顕微鏡は、このような構成により、ダイクロイックミラー52R’,52L’を透過した光を用いて肉眼で可視光の実体像を観察できるとともに、ダイクロイックミラー52R’,52L’で反射した光を用いて近赤外光の実体像を撮像画像として得ることができるようになっている。
図14は特許文献3に記載の手術用顕微鏡の光学系の概略構成を示す説明図である。この特許文献3に記載の手術用顕微鏡は、主観察者が肉眼で観察するための肉眼観察光学系51”を構成している左右の肉眼観察光学系51R”,51L”の光路に、光分離素子としてビームスプリッタ52R”,52L”を備えている。一方のビームスプリッタ52R”で反射された光路には、副観察者が肉眼で観察するための第二の肉眼観察光学系56”を備えている。他方のビームスプリッタ52L”で反射された光路には、可視光と赤外光とを分離する波長分離素子57”を有すると共に、波長分離素子57”で分離された夫々の光路に撮像素子54a”,54b”を備えている。
そして、特許文献3に記載の手術用顕微鏡は、このような構成により、ビームスプリッタ52R”,52L”を透過した光を用いて主観察者が可視光の実体像を観察できるとともに、一方のビームスプリッタ52R”を反射した光を用いて副観察者が可視光の実体像を観察でき、さらに、他方のビームスプリッタ52L”を反射した光を用いて可視光像と赤外光像を撮像画像を得ることができるようになっている。
図15は特許文献4に記載の手術用顕微鏡の光学系の概略構成を示す説明図である。この特許文献4に記載の手術用顕微鏡は、主観察者71Aが左右の肉眼で観察するための肉眼観察光学系51”’の左右の光路に、光分離素子としてビームスプリッタ52R”’,52L”’を備えている。ビームスプリッタ52R”’,52L”’の透過側には、撮像素子を備えた撮像装置54”’が設けられている。撮像装置54”’で得られた画像は、主観察者71A以外の複数の観察者(ここでは観察者71B,71C)に観察可能になっている。
特開2004−163413号公報 特開平6−319765号公報 特開平5−344997号公報 特開2008−6089号公報
このように、従来一般の手術用顕微鏡では、主観察者としての主術者が肉眼で観察すると共に、主術者が観察している観察対象の観察像と同じ像を副観察者としての助手が肉眼で又は撮像画像として観察できるように、肉眼観察光学系の光路に光分割素子を設けている。
ところで、手術用顕微鏡で撮像する観察対象の画像には、可視光による観察画像の他にも蛍光による観察画像が重要となってきている。蛍光画像は、気管支における扁平上皮内癌、前癌病変の発見、食道における早期食道癌、前癌病変の発見、胃における胃癌副病変の発見、病変の拡がり診断、大腸における大腸腫瘍性病変の拾い上げ等に有効である。そして、特に、例えば、蛍光色素としてICG(イントシアニングリーン)を用いた蛍光画像などの近赤外波長帯域での蛍光画像は、人間の肉眼では認識することが難しい粘膜深部の血管や血流情報を強調でき、癌の深達度診断と治療方針の判定、癌と腺腫(前癌病変)の判別や内視鏡的粘膜下層剥離術後の出血予想及び止血対策に有効である。このため、近年の手術用顕微鏡では、肉眼観察光学系の光路に光分割素子を設けることによって、主術者による肉眼での可視光像の観察とともに、近赤外光の観察画像を得ることが求められている。
しかるに、特許文献1に記載されている手術用顕微鏡の場合には、観察対象70からの光を分割するための光分離素子に部分透過ミラー52R,52Lを用いているため、可視波長帯域の波長と近赤外帯域の蛍光波長が同じ割合で混在した状態で、肉眼観察側光路と撮像側光路とに分割されることになる。しかし、そのような割合の状態で分割されると、近赤外波長の蛍光は微弱であるため、観察に必要な光量が不足してしまうし、さらに、ビームスプリッタ53により2つの光路を通る光に分割されるので、近赤外蛍光波長の観察画像がさらに暗くなってしまう。また、それだからといって、部分透過ミラー52R,52Lの光分割比を、撮像側光路の方が大きくなるようにすると、肉眼観察光学系51が暗くなり、主術者の肉眼観察に支障をきたしてしまうおそれがある。
また、特許文献2に記載されている手術用顕微鏡の場合には、ダイクロイックミラー52R’,52L’によって、肉眼観察光学系51’を通る可視光と撮像光学系を通る赤外光とに分割している。しかし、特許文献2に記載の構成のように、撮像側に可視波長帯域の波長を通さないのでは、肉眼観察光学系51’で観察する手術者以外の人間が観察対象70の可視光画像を観察することができない。
この問題を回避するためには、ダイクロイックミラー52R’,52L’の肉眼観察側光路に、肉眼観察像と撮像画像とに分けるためのビームスプリッタをさらに設けることが考えられる。しかし、そのようにすると、ビームスプリッタの長さ分、肉眼観察光学系51’の光路長が伸びて、肉眼観察を行う主術者のアイポイントが高くなり、観察をしながらの手術を行い難くしてしまう。
また、特許文献3に記載されている手術用顕微鏡の場合には、観察対象70からの光を、ビームスプリッタ52L”で、主観察者の肉眼観察光学系51”の光路と撮像側の光路とに分けており、可視光と赤外光との分離は、撮像側の光路内で波長分離素子57”’を用いて行っている。即ち、特許文献3に記載の手術用顕微鏡でも、可視波長帯域の波長と近赤外波長帯域の蛍光波長が同じ割合で混在した状態で、肉眼観察側と撮像側とに分割されるため、特許文献1に記載の手術用顕微鏡と同様、近赤外蛍光波長の光量が不足し、波長分離素子57”’で赤外光と可視光を分離したとしても、近赤外蛍光観察画像が暗くなってしまうことになる。一方、ビームスプリッタ52L”の光分割比を、撮像側が大きくなるようにすると、主観察者の肉眼観察光学系51”が暗くなり、手術者の肉眼観察に支障をきたしてしまう恐れがある。
これらのように、特許文献1〜3に記載されている従来の手術用顕微鏡では、いずれも、手術者による肉眼での観察像と、可視光画像と赤外光画像とを良好な明るさで得ることができないという問題があった。
また、特許文献1、3に記載されてい従来の手術用顕微鏡においては、ビームスプリッタ等の光分割素子を介して主術者側の光路(肉眼観察光学系の光路)とは異なる光路に分割された光は、上述のように用途に応じて、さらにビームスプリッタ等の第2の光分割素子を介して2つの光路に分割され、それぞれの光路において所定の波長の観察像が得られるように構成されている。
そこで、一方の観察像を明るい画像として観察するためには、例えば、第2の光分割素子を光路から退避させて、光を分割させずに一方の光路を通るようにすることが考えられるが、そのようにすると、第2の光分割素子を挿脱するスペースが必要となり、装置が大型化してしまう。
また、その他にも第2の光分割素子を切り替え可能なミラーで構成し、ミラーを光路に挿脱可能にする構成が考えられるが、そのようにすると、ミラーの傾斜角度を保ちながら光路に挿脱可能にするためには、高精度かつ複雑な切り替え機構が必要となり、製造コストが高くなってしまう。
また、特許文献4に記載されている手術用顕微鏡の場合は、ビームスプリッタ52L”’,52R”’を介して、主観察者71A以外の複数の観察者71B,71Cが撮像画像を観察できる構成になっているが、近赤外波長の光による画像を観察することができる構成にはなっていない。
このように、従来の内視鏡用顕微鏡装置は、光分割素子が、観察対象からの光を、手術者が可視光像を肉眼で観察するための肉眼観察光学系と撮像用光学系とに分割する構成をしているが、肉眼観察像を観察しながら、可視光画像と蛍光画像の両方の観察を行う場合には、微弱な近赤外波長帯域での蛍光画像を光量を落とすことなく観察することができなかった。
また、主術者が観察する光路以外の光路に配置された第2の光分割素子を介して、対象物からの光をさらに2つの観察光路に分ける構成においては、第2の光分割素子を光路から挿脱することなく夫々の観察光路を通る光量比を調整することができなかった。
本発明は、上記従来の問題点に鑑みてなされたものであり、肉眼での観察とともに可視光画像と微弱な近赤外波長帯域での蛍光画像の観察をすることができ、しかも、微弱な近赤外波長帯域での蛍光画像を光量を落とすことなく観察することができる手術用顕微鏡、さらには、主術者以外の光路に配置された第2の光分割素子を介して2つの観察光路に分ける構成において、第2の光分割素子を光路から挿脱することなく夫々の観察光路を通る光量比を調整することが可能な手術用顕微鏡を提供することを目的とする。
上記目的を達成するため、本第1の発明による手術用顕微鏡は、観察対象を肉眼で観察するための肉眼観察光学系と、前記観察対象を撮像するための撮像光学系と、前記観察対象からの光を透過及び反射することによって前記肉眼観察光学系の光路を通る光と前記撮像光学系の光路を通る光とに分割する光分割素子を備えた手術用顕微鏡において、前記撮像光学系は、前記光分割素子の透過側に配置され、可視波長帯域と近赤外波長帯域の光を分離する波長分離手段と、分離した夫々の波長を撮像する撮像素子を有し、前記光分割素子は、可視波長帯域では一定の透過率を有し、近赤外波長帯域では前記可視波長帯域での透過率よりも高い透過率を有することを特徴としている。
また、本第2の発明による手術用顕微鏡は、観察対象を肉眼で観察するための肉眼観察光学系と、前記観察対象を撮像するための撮像光学系と、前記観察対象からの光を透過及び反射することによって前記肉眼観察光学系の光路を通る光と前記撮像光学系の光路を通る光とに分割する光分割素子を備えた手術用顕微鏡において、前記撮像光学系は、前記光分割素子の反射側に配置され、可視波長帯域と近赤外波長帯域の光を分離する波長分離手段と、分離した夫々の波長を撮像する撮像素子を有し、前記光分割素子は、可視波長帯域では一定の反射率を有し、近赤外波長帯域では前記可視波長帯域での反射率よりも高い反射率を有することを特徴としている。
また、本第の発明手術用顕微鏡においては、前記光分割素子は、前記観察対象からの光を透過及び反射することによって2つの光路を通る光に分割する第1の光分割素子と、前記第1の光分割素子で分割された透過側の光路を通る光を透過及び反射することによってさらに2つの光路に分割する第2の光分割素子とを備えてなり、前記第1の光分割素子と前記第2の光分割素子との間に、光軸を中心として回転可能な波長板を有し、前記波長板を回転することにより、前記第1の光分割素子と前記第2の光分割素子の分光透過率を調整可能にするのが好ましい
また、本第1の発明の手術用顕微鏡においては、前記光分割素子の可視波長帯域での分光透過率の変動幅が、可視波長帯域での平均透過率に対し±10%以内であるのが好ましい。
また、本第2の発明の手術用顕微鏡においては、前記光分割素子の可視波長帯域での分光反射率の変動幅が、可視波長帯域での平均反射率に対し±10%以内であるのが好ましい。
また、本第の発明の手術用顕微鏡においては、前記第1の光分割素子及び前記第2の光分割素子の可視波長帯域での分光透過率の変動幅が、可視波長帯域での平均透過率に対し±10%以内であるのが好ましい。
また、本第の発明の手術用顕微鏡においては、前記第1の光分割素子及び前記第2の光分割素子の可視波長帯域での分光反射率の変動幅が、可視波長帯域での平均反射率に対し±10%以内であるのが好ましい。
また、本第1の発明の手術用顕微鏡においては、前記光分割素子の分光透過率が次の条件式(1)〜(3)を満足するのが好ましい。
1.3<E/[(A+B+C+D)/4] ・・・(1)
A×B×C×D≠0 ・・・(2)
5%≦(A+B+C+D)/4≦50% ・・・(3)
但し、Eは波長800nmでの透過率、Aは波長400nmでの透過率、Bは波長500nmでの透過率、Cは波長600nmでの透過率、Dは波長700nmでの透過率である。
また、本第2の発明の手術用顕微鏡においては、前記光分割素子の分光反射率が次の条件式(1’)〜(3’)を満足するのが好ましい。
1.3<E’/[(A’+B’+C’+D’)/4] ・・・(1')
A’×B’×C’×D’≠0 ・・・(2')
5%≦(A’+B’+C’+D’)/4≦50% ・・・(3')
但し、E’は波長800nmでの透過率、A’は波長400nmでの反射率、B’は波長500nmでの反射率、C’は波長600nmでの反射率、D’は波長700nmでの反射率である。
また、本第の発明の手術用顕微鏡においては、前記観察光学系が、前記第1の光路分割素子により分割された他方の光路に配置された、前記観察対象を肉眼で観察するための第1の肉眼観察光学系と、前記第2の光路分割素子により分割された一方の光路に配置された、前記観察対象を撮像するための撮像光学系と、前記第2の光路分割素子により分割された他方の光路に配置された、前記観察対象を肉眼で観察するための第2の肉眼観察光学系とを有するのが好ましい。
また、本第1の発明においては、前記光分割素子の透過側であって前記光分割素子と前記撮像光学系との間に配置され、前記光分割素子からの光を透過及び反射することによって前記撮像光学系を通る光線と第2の肉眼観察光学系を通る光線に分割する第2の光分割素子をさらに備え、前記光分割素子と前記第2の光分割素子の反射面のコーティングは、夫々2種の物質を交互に繰り返し蒸着して形成され、前記2種の物質の屈折率は、e線に対する屈折率の大きい方をn1、小さい方をn2としたとき、以下の条件式を満足することが好ましい。
n1/n2≦1.35
また、本第2の発明においては、前記光分割素子の反射側であって前記光分割素子と前記撮像光学系との間に配置され、前記光分割素子からの光を透過及び反射することによって前記撮像光学系を通る光線と第2の肉眼観察光学系を通る光線に分割する第2の光分割素子をさらに備え、前記光分割素子と前記第2の光分割素子の反射面のコーティングは、夫々2種の物質を交互に繰り返し蒸着して形成され、前記2種の物質の屈折率は、e線に対する屈折率の大きい方をn1、小さい方をn2としたとき、以下の条件式を満足することが好ましい。
n1/n2≦1.35
また、本第1及び第2の発明において、前記光分割素子と前記第2の光分割素子の反射面のコーティングに用いられる前記2種の物質は、Al2O3とTa2O5であることが好ましい。その場合、そのコーティングは、2種の物質を10層以上蒸着して形成されるようにすると、一層好ましいものとなる。
また、本第1及び第2の発明において、前記コーティングは、波長400〜700nmの範囲での透過率又は反射率の極大値と極小値の和が12以上であることが好ましい。
また、本第1及び第2の発明において、前記波長分離手段は、可視光光路長補正部材と、近赤外光を透過させる近赤外光光路長補正部材を光路上で切り替えるのが好ましい。
本発明によれば、肉眼での観察とともに可視光画像と微弱な近赤外波長帯域での蛍光画像の観察をすることができ、しかも、微弱な近赤外波長帯域での蛍光画像を光量を落とすことなく観察することができる手術用顕微鏡、さらには、主術者以外の光路に配置された第2の光分割素子を介して2つの観察光路に分ける構成において、第2の光分割素子を光路から挿脱することなく夫々の観察光路を通る光量比を調整することが可能な手術用顕微鏡が得られる。
本発明の第一実施形態にかかる手術用顕微鏡の概略構成を示す説明図である。 図1の手術用顕微鏡において肉眼観察光学系の光路を通る光と撮像光学系の光路を通る光とに分割する光分離素子の分光反射率特性を示すグラフである。 本発明の第二実施形態にかかる手術用顕微鏡の概略構成を示す説明図である。 図3の手術用顕微鏡において肉眼観察光学系の光路を通る光とその他の光路を通る光とに分割する光分離素子、及び助手用光学系の光路を通る光と撮像光学系の光路を通る光とに分割する光分離素子の分光透過率特性を示すグラフである。 本発明の第三実施形態にかかる手術用顕微鏡の要部構成を示す説明図である。 図5の手術用顕微鏡における光分割素子を透過する偏光の透過率を示す説明図で、(a)は2つの光分割素子の間に配置されたλ/2板を、その光学軸が第1の光分離素子を透過した直線偏光成分と一致するように回転させたときにおける、第1の光分割素子を透過しλ/2板を通過した直線偏光成分の割合と、第2の光分割素子の偏光透過率特性を示すグラフ、(b)は2つの光分割素子の間に配置されたλ/2板を、その光学軸が光軸を中心として入射する直線偏光成分に対し45°傾くように回転させたときにおける、第1の光分割素子を透過しλ/2板を通過した直線偏光成分の割合と、第2の光分割素子の偏光透過率特性を示すグラフである。 本発明の実施例1にかかる手術用顕微鏡の概略構成を示す説明図である。 図7の手術用顕微鏡における主術者用光学系の構成を示す説明図で、(a)はリレー系を構成する光学部材を示す斜視図、(b)は観察鏡筒内部の光学構成を示す断面図である。 実施例1の手術用顕微鏡に用いられるICG用励起光カットフィルタの分光透過率特性を示すグラフである。 実施例2の手術用顕微鏡における光分割素子の透過率特性を示すグラフである。 実施例3の手術用顕微鏡における撮像光学系の概略構成を示す説明図である。 特許文献1に記載の手術用顕微鏡の光学系の説明図であり、(a)は概略構成を示す図、(b)は(a)の手術用顕微鏡の光学系に用いられ得るフィルタの透過特性を示すグラフである。 特許文献2に記載の手術用顕微鏡の光学系の説明図であり、(a)は概略構成を示す図、(b)は(a)の手術用顕微鏡の光学系における光分割素子の反射特性を示すグラフである。 特許文献3に記載の手術用顕微鏡の光学系の概略構成を示す説明図である。 特許文献4に記載の手術用顕微鏡の光学系の概略構成を示す説明図である。
第一実施形態
図1は本発明の第一実施形態にかかる手術用顕微鏡の概略構成を示す説明図、図2は図1の手術用顕微鏡において肉眼観察光学系の光路を通る光と撮像光学系の光路を通る光とに分割する光分離素子の分光反射率特性を示すグラフである。
第一実施形態の手術用顕微鏡は、観察対象3を肉眼で観察するための肉眼観察光学系1と、観察対象3を撮像するための撮像光学系2と、観察対象3からの光を透過及び反射することによって肉眼観察光学系1の光路を通る光と肉眼観察光学系1とは別の光路を通る光とに分割する光分割素子4,4’と、助手用光学系1’を備えている。
肉眼観察光学系1は、主観察者である主術者Aが肉眼で観察するための光学系であり、右眼用光学系1Rと、左眼用光学系1Lとで構成されている。右眼(左眼)用光学系1R(1L)は、対物レンズ11と、アフォーカルズームレンズ12R(12L)と、結像レンズ13R(13L)と、接眼レンズ14R(14L)を有している。
対物レンズ11は、観察対象3からの光束をアフォーカル光束にする。アフォーカルズームレンズ12R(12L)は、観察倍率を変更する。結像レンズ13R(13L)は、光分割素子4(4’)を透過した光の像を×印の位置に形成する。接眼レンズ14R(14L)は、結像レンズ13R(13L)を介して形成される像を拡大する。
光分割素子4は、ダイクロイックミラーで構成され、アフォーカルズームレンズ12Lと結像レンズ13Lの間に配置されており、観察対象3からの光を透過及び反射することによって左眼用光学系1Lの光路を通る光と撮像光学系2の光路を通る光とに分割する。
撮像光学系2は、光分割素子4の反射側に配置されており、結像レンズ21と、波長分離手段としてのダイクロイックプリズム22と、撮像素子としての二つのCCD23,24を有している。
結像レンズ21は、光分割素子4で反射された光の像をCCD23,24に結像する。
ダイクロイックプリズム22は、光分割素子4で反射された光のうち、可視波長帯域(ここでは、400〜700nm)の光を透過し、近赤外波長帯域(ここでは、ICGの蛍光波長帯域である780〜850nm)の光を反射する。
CCD23は、ダイクロイックプリズム22で反射された近赤外波長帯域の光の観察像を撮像する。CCD24は、ダイクロイックプリズム22を透過した可視波長帯域(400〜700nm)の光の観察像を撮像する。
光分割素子4’は、ハーフミラーで構成され、アフォーカルズームレンズ12Rと結像レンズ13Rの間に配置されており、観察対象3からの光を透過及び反射することによって右眼用光学系1Rの光路を通る光と助手用光学系1’の光路を通る光とに分割する。
助手用光学系1’は、副観察者である助手Bが肉眼で観察するための光学系であり、光路分割素子1a’と、右眼用光学系1R’と、左眼用光学系1L’とで構成されている。
光路分割素子1a’は、2つの反射面1a1R’,1a1L’を有する反射部材1a1’と、反射面1a1R’(1a1L’)で反射した光を右眼用光学系1R’(左眼用光学系1L’)へ向けて反射する反射面1a21’(1a21’)を有する反射部材1a2R’(1a2L’)を有している。
右眼(左眼)用光学系1R’(1L’)は、結像レンズ13R’(13L’)と、接眼レンズ14R’(14L’)を有している。結像レンズ13R’(13L’)は、光路分割素子1a’の反射面1a1R’(1a1L’)、1a21’(1a21’)で反射された光の像を×印の位置に形成する。接眼レンズ14R’(14L’)は、結像レンズ13R’(13L’)を介して形成される像を拡大する。
なお、図1では、便宜上、右眼用光学系1R’と左眼用光学系1L’とを紙面上に並べて示したが、実際には、左眼用光学系1L’は紙面において右眼用光学系1R’の奥側に配置されている。
ここで、第一実施形態の手術用顕微鏡では、光分割素子4のダイクロイック面は、図2に示すように、可視波長帯域(400〜700nm)では一定の反射率(ここでは、平均して約30%であって、その変動幅が平均透過率である約30%に対し±10%以内の反射率)を有し、近赤外波長帯域(780〜850nm)では可視波長帯域での反射率よりも高い反射率(ここでは、平均して約60%の反射率)を有している。
このように構成された第一実施形態の手術用顕微鏡では、観察対象3である術部からの光は、対物レンズ11、アフォーカルズームレンズ12R(12L)を経て、光分割素子4(4’)に入射する。
光分割素子4(4’)を透過した光は、結像レンズ13R(13L)で結像され、接眼レンズ14R(14L)によって拡大されて主術者Aの眼で観察される。これにより、主術者Aは、観察対象3の可視光像を肉眼で立体観察できる。
光分割素子4’で反射された光は、光路分割素子1a’の反射面1a1R’(1a1L’)、及び反射部材1a2R’(1a2L’)の反射面1a21’(1a21’)で反射されて、右眼用光学系1R’(左眼用光学系1L’)の光路へ導かれる。右眼用光学系1R’(左眼用光学系1L’)の光路へ導かれた光は、結像レンズ13R’(13L’)で結像され、接眼レンズ14R’(14L’)によって拡大されて助手Bの眼で観察される。これにより、助手Bは、観察対象3の可視光像を肉眼で立体観察できる。
光分割素子4で反射された光は、結像レンズ21を経てダイクロイックプリズム22に入射する。ダイクロイックプリズム22は、可視波長帯域(400〜700nm)の光を透過し近赤外波長帯域(780〜850nm)の光を反射する。ダイクロイックプリズム22で反射された近赤外波長帯域の光は、CCD23に結像する。ダイクロイックプリズム22を透過した可視波長帯域の光は、CCD24に結像する。
このように、第一実施形態の手術用顕微鏡では、主術者Aが観察対象3を肉眼で可視光観察できるとともに助手Bも観察対象3を肉眼で可視光観察でき、かつ、赤外光と可視光の夫々の撮像画像が得られる。
このとき、第一実施形態の手術用顕微鏡では、上述したように、光分割素子4のダイクロイック面は、図2に示すように、可視波長帯域(400〜700nm)では一定の反射率(ここでは、平均して約30%であって、その変動幅が平均透過率である約30%に対し±10%以内の反射率)を有し、近赤外波長帯域(780〜850nm)では可視波長帯域での反射率よりも高い反射率(ここでは、平均して約60%の反射率)を有している。
このため、第一実施形態の手術用顕微鏡によれば、可視波長帯域(400〜700nm)の観察像を撮像することができ、かつ、近赤外波長帯域(780〜850nm)の波長の蛍光像を光量を極力減らすことなく、観察に十分な光量を確保した明るさで撮像できる。
これに対し、光分割素子4を、従来の特許文献1に記載の手術用顕微鏡における部分透過ミラー52R,52Lのように、ハーフミラーで構成したのでは、光分割素子4を反射する近赤外光の反射率が低くなるため、CCD23で撮像したときの近赤外光の画像が暗くなって観察し難くなる。
また、光分割素子4を、特許文献2に記載の手術用顕微鏡におけるダイクロイックミラー52R’,52L’のように、撮像側を可視波長帯域の波長が通らない特性のダイクロイックミラーで構成すると、近赤外光の撮像画像と可視光の撮像画像とを同時に得ることができなくなる。
このように、第一実施形態の手術用顕微鏡によれば、主術者、助手が肉眼で可視光観察できるとともに、近赤外光の光量を極力減らすことなく、微弱なICG蛍光画像と可視光画像とを同時に得ることができる。
なお、図1の構成では、近赤外光と可視光とを分離して夫々の撮像画像を得るために、波長分離手段としてダイクロイックプリズム22を用い、ダイクロイックプリズム22で分割された夫々の光路にCCD23,24を配置したが、波長分離手段はこのような構成に限定されるものではない。例えば、可視波長帯域の光を通過させるとともに近赤外波長帯域の光を遮光するフィルタと、可視波長帯域の光を遮光するとともに近赤外波長帯域の光を透過させるフィルタとをターレットに備えた回転フィルタを回転させることにより、それらのフィルタが、結像レンズ21の出射光軸上に交互に切り替わって挿入されるようにし、可視光像と近赤外像とを時分割で得るようにしてもよい。そのようにした場合には、CCDは、回転フィルタからの透過光軸上に一つ配置するだけで足りることになる。
また、第一実施形態の手術用顕微鏡では、可視波長帯域を400nm〜700nmに設定したが、380nm〜700nmに設定してもよい。また、近赤外波長帯域を780〜850nmに設定したが、例えば、700〜1000nmに設定してもよい。
また、第一実施形態の手術用顕微鏡では、光分割素子4のダイクロイック面の反射率を、可視波長帯域(400〜700nm)では平均して約30%であって、その変動幅が平均透過率である約30%に対し±10%以内の反射率、近赤外波長帯域(780〜850nm)では可視波長帯域での反射率よりも高い平均して約60%の反射率としたが、光分割素子4の分光反射率は、次の条件式(1')〜(3')を満足するように設定するのが好ましく、その範囲であれば、どのように設定しても良い。
1.3<E’/[(A’+B’+C’+D’)/4] ・・・(1')
A’×B’× C’×D’≠0 ・・・(2')
5%≦(A’+B’+C’+D’)/4≦50% ・・・(3')
但し、E’は波長800nmでの透過率、A’は波長400nmでの反射率、B’は波長500nmでの反射率、C’は波長600nmでの反射率、D’は波長700nmでの反射率である。
条件式(1')を満足しないと、近赤外光を効率よく利用できず、明るいICG蛍光観察画像が得難くなる。
条件式(2')を満足しないと、可視光画像の色バランスが悪くなる。
条件式(3')の下限値を下回ると、撮像系の光量が不足し、観察に適した明るさの可視光画像が得難くなる。
条件式(3')の上限値を上回ると、手術者の肉眼観察系の光量が不足し、支障を来たし易い。
第二実施形態
図3は本発明の第二実施形態にかかる手術用顕微鏡の概略構成を示す説明図である。図4は図3の手術用顕微鏡において肉眼観察光学系の光路を通る光とその他の光路を通る光とに分割する光分離素子、及び助手用光学系の光路を通る光と撮像光学系の光路を通る光とに分割する光分離素子の分光透過率特性を示すグラフである。
第二実施形態の手術用顕微鏡は、観察対象3を肉眼で観察するための肉眼観察光学系1と、観察対象を撮像するための撮像光学系2’と、観察対象3からの光を透過及び反射することによって肉眼観察光学系1の光路を通る光と肉眼観察光学系1とは別の光路を通る光とに分割する光分割素子4と、助手用光学系1’と、光分割素子4で分割されて上記別の光路を通る光を透過及び反射することによって撮像光学系2’の光路を通る光と助手用光学系1’を通る光とに分割する光分割素子4”を備えている。
肉眼観察光学系1は、主観察者である主術者Aが肉眼で観察するための光学系であり、光路分割素子1aと、右眼用光学系1Rと、左眼用光学系1Lとで構成されている。
光路分割素子1aは、2つの反射面1a1R,1a1Lを有する反射部材1a1と、反射面1a1R(1a1L)で反射した光を右眼用光学系1R(左眼用光学系1L)へ向けて反射する反射面1a21(1a21)を有する反射部材1a2R(1a2L)を有している。
右眼(左眼)用光学系1R(1L)は、対物レンズ11と、アフォーカルズームレンズ12と、結像レンズ13R(13L)と、接眼レンズ14R(14L)を有している。
対物レンズ11は、観察対象3からの光束をアフォーカル光束にする。アフォーカルズームレンズ12は、観察倍率を変更する。結像レンズ13R(13L)は、光分割素子4で反射され、光路分割素子1aの反射面1a1R(1a1L)、1a21(1a21)で反射された光の像を×印の位置に形成する。接眼レンズ14R(14L)は、結像レンズ13R(13L)を介して形成される像を拡大する。
なお、図3では、便宜上、右眼用光学系1Rと左眼用光学系1Lとを紙面上に並べて示したが、実際には、左眼用光学系1Lは紙面において右眼用光学系1Rの奥側に配置されている。
光分割素子4は、ダイクロイックミラーで構成され、アフォーカルズームレンズ12と光分離素子4”の間に配置されており、観察対象3からの光を反射及び透過することによって、肉眼観察光学系1の光路を通る光と、肉眼観察光学系1の光路以外の光路を通る光とに分割する。
また、光分割素子4”は、ダイクロイックミラーで構成され、光分割素子4と回転フィルタ22’の間に配置されており、光分割素子4を透過した観察対象3からの光を透過及び反射することによって、撮像光学系2’の光路を通る光と、助手用光学系1’の光路を通る光とに分割する。
撮像光学系2’は、光分割素子4”の透過側に配置されており、波長分離手段としての回転フィルタ22’と、結像レンズ21と、CCD23を有している。
結像レンズ21は、光分割素子4”を透過した光の像をCCD23に結像する。
回転フィルタ22’は、光分割素子4”を透過した光のうち、可視波長帯域(ここでは、400〜700nm)の光を透過し近赤外波長帯域(ここでは、ICGの蛍光波長帯域である780〜850nm)の光を遮光するフィルタ221’と、可視波長帯域(400〜700nm)の光を遮光し近赤外波長帯域(ここでは、ICGの蛍光波長帯域である780〜850nm)の光を透過するフィルタ222’をターレットに備えて構成されている。そして、ターレットの回転によりこれらのフィルタ221’,222’が結像レンズ21の光軸上に交互に切り替わって挿入されるように配置されている。
CCD23は、回転フィルタ22’からの透過光軸上に配置されており、可視波長帯域(400〜700nm)の光の像と近赤外波長帯域(780〜850nm)の光の像とを時分割で撮像する。
助手用光学系1’の構成は、第一実施形態の手術用顕微鏡と実質的に同じであるため、第一実施形態の場合と同じ符号を付け、具体的な説明を省略する。
なお、図3では、便宜上、右眼用光学系1R’と左眼用光学系1L’とを紙面上に並べて示したが、実際には、右眼用光学系1R’は紙面において左眼用光学系1L’の奥側に配置されている。
ここで、第二実施形態の手術用顕微鏡では、光分割素子4,4”のダイクロイック面は、夫々、図4に示すように、可視波長帯域(400〜700nm)では一定の透過率(ここでは、平均して約40%であって、その変動幅が平均透過率である約40%に対し±10%以内の透過率)を有し、近赤外波長帯域(780〜850nm)では可視波長帯域での透過率よりも高い透過率(ここでは、平均して約70%の透過率)を有している。
このように構成された第二実施形態の手術用顕微鏡では、観察対象3である術部からの光は、対物レンズ11、アフォーカルズームレンズ12を経て、光分割素子4に入射する。
光分割素子4で反射された光は、光路分割素子1aにおける反射部材1a1の反射面1a1R(1a1L)、及び反射部材1a2R(1a2L)の反射面1a21(1a21)で反射されて、右眼用光学系1R(左眼用光学系1L)の光路へ導かれる。右眼用光学系1R(左眼用光学系1L)の光路へ導かれた光は、結像レンズ13R(13L)で結像され、接眼レンズ14R(14L)によって拡大されて主術者Aの眼で観察される。これにより、主術者Aは、観察対象3の可視光像を肉眼で立体観察できる。
光分割素子4を透過した光は、光分割素子4”に入射する。
光分割素子4”で反射された光は、光路分割素子1a’における反射部材1a1の反射面1a1R’(1a1L’)、及び反射部材1a2R’(1a2L’)の反射面1a21’(1a21’)で反射されて、右眼用光学系1R’(左眼用光学系1L’)の光路へ導かれる。右眼用光学系1R’(左眼用光学系1L’)の光路へ導かれた光は、結像レンズ13R’(13L’)で結像され、接眼レンズ14R’(14L’)によって拡大されて助手Bの眼で観察される。これにより、助手Bは、観察対象の可視光像を肉眼で立体観察できる。
光分割素子4”を透過した光は、回転フィルタ22’に入射する。回転フィルタ22’は、ターレットの回転により、可視波長帯域(400〜700nm)の光と、近赤外波長帯域(780〜850nm)の光を交互に時分割で透過する。回転フィルタ22’を時分割で透過した可視波長帯域(400〜700nm)の光と、近赤外波長帯域(780〜850nm)の光は、結像レンズ21を経てCCD23に結像する。
このように、第二実施形態の手術用顕微鏡では、観察対象3を肉眼で可視光観察できるとともに助手Bも観察対象3を肉眼で可視光観察でき、かつ、赤外光と可視光の夫々の撮像画像が時分割で得られる。
このとき、第二実施形態の手術用顕微鏡では、上述したように、光分割素子4,4”のダイクロイック面は、図4に示すように、可視波長帯域(400〜700nm)では一定の透過率(平均して約40%であって、その変動幅が平均透過率である約40%に対し±10%の透過率)を有し、近赤外波長帯域(780〜850nm)では可視波長帯域での透過率よりも高い透過率(平均して約70%の透過率)を有している。
このため、第二実施形態の手術用顕微鏡によれば、可視波長帯域(400〜700nm)の観察像を撮像することができ、かつ、近赤外波長帯域(780〜850nm)の波長の蛍光像を、光量を極力減らすことなく、観察に十分な光量を確保した明るさで撮像できる。
また、第二実施形態の手術用顕微鏡によれば、一つのCCDで近赤外波長帯域と可視波長帯域の撮像画像が得られるので、撮像素子にかかわるコストを低減することができる。
なお、第二実施形態では、このように、近赤外波長帯域と可視波長帯域の撮像画像を一つのCCDで得られるようにしているが、図1に示されている第一実施形態の構成と同様に、近赤外光と可視光とを分離して夫々の撮像画像を得るために、波長分離手段としてダイクロイックプリズム22を用い、ダイクロイックプリズム22で分割された夫々の光路にCCD23,24を配置するようにしてもよい。
また、第二実施形態の手術用顕微鏡では、可視波長帯域を400nm〜700nmに設定したが、380nm〜700nmに設定してもよい。また、近赤外波長帯域を780〜850nmに設定したが、例えば、700〜1000nmに設定してもよい。
また、第二実施形態の手術用顕微鏡では、光分割素子4,4”のダイクロイック面の透過率を、可視波長帯域(400〜700nm)では平均して約40%であって、その変動幅が平均透過率である約40%に対し±10%以内の透過率、近赤外波長帯域(780〜850nm)では可視波長帯域での透過率よりも高い平均して約70%の透過率としたが、光分割素子4,4”の分光透過率は、次の条件式(1)〜(3)を満足するように設定するのが好ましく、その範囲であれば、どのように設定しても良い。
1.3<E/[(A+B+C+D)/4] ・・・(1)
A×B×C×D≠0 ・・・(2)
5%≦(A+B+C+D)/4≦50% ・・・(3)
但し、Eは波長800nmでの透過率、Aは波長400nmでの透過率、Bは波長500nmでの透過率、Cは波長600nmでの透過率、Dは波長700nmでの透過率である。
条件式(1)を満足しないと、近赤外光を効率よく利用できず、明るいICG蛍光観察画像が得難くなる。
条件式(2)を満足しないと、可視光画像の色バランスが悪くなる。
条件式(3)の下限値を下回ると、撮像系の光量が不足し、観察に適した明るさの可視光画像が得難くなる。
条件式(3)の上限値を上回ると、手術者の肉眼観察系の光量が不足し、支障を来たし易い。
第三実施形態
図5は本発明の第三実施形態にかかる手術用顕微鏡の要部構成を示す説明図である。図6は図5の手術用顕微鏡における光分割素子を透過する偏光の透過率を示す説明図で、(a)は2つの光分割素子の間に配置されたλ/2板を、その光学軸が第1の光分離素子を透過した直線偏光成分と一致するように回転させたときにおける、第1の光分割素子を透過しλ/2板を通過した直線偏光成分の割合と、第2の光分割素子の偏光透過率特性を示すグラフ、(b)は2つの光分割素子の間に配置されたλ/2板を、その光学軸が光軸を中心として入射する直線偏光成分に対し45°傾くように回転させたときにおける、第1の光分割素子を透過しλ/2板を通過した直線偏光成分の割合と、第2の光分割素子の偏光透過率特性を示すグラフである。
第三実施形態の手術用顕微鏡は、第二実施形態の手術用顕微鏡における光分割素子4,4”の代わりに、第1の光分割素子としての光分割素子4Pと、λ/2板6と、第2の光分割素子としての光分割素子4P”を備えている。
光分割素子4P,4P”は、図6(a)に示すように、分光透過率特性が直線偏光成分によって異なる偏光ビームスプリッタで構成されている。
λ/2板6は、光分割素子4Pと光分割素子P”との間に配置され、光軸Oを中心として回転可能に備えられている。
その他の構成は、第二実施形態の手術用顕微鏡と略同じである。
このように構成された第三実施形態の手術用顕微鏡では、λ/2板6を光軸Oを中心として回転させることに伴い、偏光面が回転する。そして、この偏光面の回転により2つの直線偏光成分の透過率が変動する。
ここでは、第1の光分離素子4P及び第2の光分離素子4P”の夫々が、400nm〜800nmの波長帯域におけるP偏光成分の透過率が80%、S偏光成分の透過率が20%である場合について説明する。
まず、λ/2板6を、その光学軸が第1の光分離素子4Pを透過した直線偏光成分と一致するように回転させたときの、第1の光分離素子4P〜第2の光分離素子4P”を透過する光の割合は、
P偏光成分の透過率:80%(第1の光分離素子4P)×80%(第2の光分離素子4P”)=64%
S偏光成分の透過率:20%(第1の光分離素子4P)×20%(第2の光分離素子4P”)=4%
ここで、第1の光分割素子4Pに入射する光に含まれるP偏光成分、S偏光成分の割合は夫々50%ずつであるから、
(64%+4%)/2=34%
となる。
また、λ/2板6を、その光学軸が第1の光分離素子4Pを透過した直線偏光成分と一致した状態から、その光学軸が光軸Oを中心として入射する直線偏光成分に対し45°傾くように回転させると、偏光面は90°回転する。これにより、第1の光分離素子4Pを透過した直線偏光成分の割合は、λ/2板6を通過することによって、P偏光成分が20%、S偏光成分が80%となる。
この場合の第1の光分離素子4〜第2の光分離素子4”を透過する光の割合は、
P偏光成分:20%(第1の光分離素子、λ/2板)×80%(第2の光分離素子4”)=16%
S偏光成分:80%(第1の光分離素子、λ/2板)×20%(第2の光分離素子4”)=16%
ここで、第1の光分割素子4Pに入射する光に含まれるP偏光成分、S偏光成分の割合は夫々50%ずつであるから、
(16%+16%)/2=16%
となる。
このことから、第三実施形態の手術用顕微鏡によれば、λ/2板6を回転させるだけで、光の透過率を可変とすることが可能で、光の透過率を増大させて、透過側でより明るい観察画像を得ることが可能となる。
この第三実施形態の手術用顕微鏡における第1の光分割素子4P、λ/2板6、第2の光分割素子4P”の構成は、第一及び第二実施形態の手術用顕微鏡に応用することができる。そのようにすれば、近赤外光の透過率を高くすることができ、より明るい観察像として近赤外波長帯域での蛍光像を観察することができる。
なお、第三実施形態では、光軸を中心として回転可能な波長板を一枚のλ/2板で構成したが、二枚のλ/4板で構成してもよい。
図7は本発明の実施例1にかかる手術用顕微鏡の概略構成を示す説明図である。図8は図7の手術用顕微鏡における主術者用光学系の構成を示す説明図で、(a)はリレー系を構成する光学部材を示す斜視図、(b)は観察鏡筒内部の光学構成を示す断面図である。図9は実施例1の手術用顕微鏡に用いられるICG用励起光カットフィルタの分光透過率特性を示すグラフである。
実施例1の手術用顕微鏡は、第二実施形態の手術用顕微鏡の基本構成を用いてより具体化したものである。
実施例1の手術用顕微鏡は、観察対象3を肉眼で観察するための主術者用の肉眼観察光学系と、観察対象3を撮像するための撮像光学系2”と、観察対象3からの光を透過及び反射することによって主術者用の肉眼観察光学系の光路を通る光と主術者用の肉眼観察光学系とは別の光路を通る光とに分割する光分割素子4と、助手用光学系1”と、光分割素子4で分割されて上記別の光路を通る光を透過及び反射することによって撮像光学系2”の光路を通る光と助手用光学系1”を通る光とに分割する光分割素子4”とを備えているほか、照明光学系を備えている。
照明光学系は、光源5aと、照明レンズ5bと、プリズム5cと、反射プリズム5dと、楔型のハーフミラー5eとで構成されている。
照明レンズ5bは、光源5aからの光を反射プリズム5d付近に結像させる。プリズム5cは、照明光学系の光路を曲げて、肉眼観察光学系や撮像光学系2”との干渉を避けるために設けられている。プリズム5cには、NAの大きな照明光束すべての光束を全反射させるために頂角が90°以上のプリズムが用いられている。楔型のハーフミラー5eは、反射プリズム5dを経た光を透過させて観察対象3である物体面を照明する。なお、光源5aは、ライトガイドの出射端面で構成しても良い。
主術者用の肉眼観察光学系は、楔型のハーフミラー5eと、対物レンズ11と、開口絞り1bと、反射プリズム1cと、アフォーカルズームレンズ12と、反射プリズム1dと、リレー系結像レンズ1eと、反射プリズム1f,1gと、ミラー1hと、反射プリズム1i,1jと、リレー系コリメータレンズ1kと、2回反射プリズム1lと、反射プリズム1mと、観察鏡筒1nを有している。
楔型ハーフミラー5eは、観察対象3である物体からの光を反射して対物レンズ11に導く。対物レンズ11は、観察対象3からの光束をアフォーカル光束にする。また、対物レンズ11は、構成するレンズ群の一部を光軸に沿って移動させることにより、作動距離を変えることができるようになっている。
開口絞り1bは、観察鏡筒1nにおける左右の開口絞りとズーム最高倍において共役となる位置に配置されており、アフォーカルズームレンズ12における高倍側で観察する光束の外側を遮光する。
反射プリズム1cは、開口絞り1bを通った光を上側に反射してアフォーカルズームレンズ12に導く。アフォーカルズームレンズ12は、構成するレンズ群のうち少なくとも2つのレンズ群が光軸に沿って移動することにより、アフォーカル状態を保って、変倍をすることができるようになっている。
光分割素子4は、ダイクロイックミラーで構成され、アフォーカルズームレンズ12と光分割素子4”の間に配置されており、観察対象3からの光を反射及び透過することによって主術者用光学系の光路を通る光と、撮像光学系2”及び助手用光学系の光路を通る光とに分割する。
反射プリズム1dは、図8(a)に示すように、光分割素子4の反射側に配置されており、光分割素子4より反射された光を下方に反射する。リレー系結像レンズ1eは、反射プリズム1dを経た光を結像点1e1に結像する。反射プリズム1fは、リレー系結像レンズ1eを出射した光を紙面の奥側に反射する。反射プリズム1gは、反射プリズム1fで反射された光を上方に反射する。ミラー1hは、反射プリズム1gで反射された光を対物レンズ11の光軸に平行に主術者側に反射する。反射プリズム1i,1jは、ミラー1hで反射された光を反射することによりその光軸を、対物レンズ11の光軸とアフォーカルズームレンズ12の光軸を含む平面上に移動させる。また、反射プリズム1d,1f,1gとミラー1hとでII型ポロプリズムを構成し、1回結像による像の反転を補正している
。なお、反射プリズム1cの反射角が90°よりも所定角度大きくなるように構成すると、反射角が90°の場合に比べて、ミラー1hによる反射角度を調整するための構成を簡単化且つ小型化できる。
リレー系コリメータレンズ1kは、反射プリズム1jで反射された光束をアフォーカル光束に変換する。なお、リレー系結像レンズ1eとリレー系コリメータレンズ1kの焦点距離を等しくしてアフォーカルリレー倍率を1倍にすると、光束径の差が小さくなり小型化しやすいので好ましい。2回反射プリズム1lは、リレー系コリメータレンズ1kを出射した光の光軸を45°下向きにして出射する。反射プリズム1mは、2回反射プリズム1lから出射した光の光軸を45°上向きにして出射する。
観察鏡筒1nは、反射プリズム1mを出射した光の光軸を中心として回転可能であり、観察者である主術者が首を傾けた状態でも観察できるように向きを調整できるようになっている。また、観察鏡筒1nは、上下方向にティルトも可能であり、観察者がより楽な姿勢で観察できるように向きを調整できるようになっている。
また、観察鏡筒1nは、観察光学系を2つ備えて構成されている。
第1の観察光学系は、観察者が観察対象3の像を肉眼で観察するための光学系であり、図8(b)に示すように、左右一対の結像レンズ1naR(1naL)と、プリズム系1nb,1nc,1nd,1neと、左右一対の接眼レンズ1nfR(1nfL)とで構成されている。なお、図8(b)中、1ngは、第1の観察光学系の鏡筒、O1は第1の観察光学系の光軸である。また、図7、図8(b)では第1の観察光学系を構成する左右一対の光学部材のうちの一方は紙面の奥に隠れている。
結像レンズ1naR(1naL)は、反射プリズム1mから出射したアフォーカル光束を結像させる。プリズム系1nb,1nc,1nd,1neは、像を正立化する。また、プリズム系1nb,1nc,1nd,1neは、ティルティングに対応できる構成をしている。接眼レンズ1nfR(1nfL)は、結像レンズ1naR(1naL)を介して形成される像を拡大する。
第2の観察光学系は、撮像光学系2”を介して撮像された観察対象3の画像を観察するための光学系であり、表示素子1n2aと、リレーレンズ1n2bと、反射部材1n2c,1n2dと、接眼レンズ1n2eとで構成されている。なお、図8(b)中、1n2fは、第2の観察光学系の鏡筒、O2は第2の観察光学系の光軸である。
表示素子1n2aは、撮像光学系2”を介して撮像された観察対象3の画像を表示する。リレーレンズ1n2bは、表示素子1n2aに表示された画像をリレーする。接眼レンズ1n2dは、リレーレンズ1n2eを介してリレーされた像を拡大する。
また、第1の観察光学系と第2の観察光学系は、アイポイントが一致し、観察者がアイポイントから覗くと観察対象3の実体像と、観察対象3の撮像画像を見ることができるようになっている。
光分割素子4”は、ダイクロイックミラーで構成され、光分割素子4とスライダの間に配置されており、光分割素子4を透過した観察対象3からの光を透過及び反射することによって撮像光学系2”の光路を通る光と助手用光学系1”の光路を通る光とに分割する。
撮像光学系2”は、光分割素子4”の透過側に配置されており、波長分離手段として、ICG用励起光カットフィルタ221”を光路に挿脱可能に備えたスライダ部22”と、反射部材25と結像レンズ21と、CCD23を有している。
結像レンズ21は、光分割素子4”を透過した光の像をCCD23に結像する。
ICG用励起光カットフィルタ22”は、図9に示すように、光分割素子4”を透過した光のうち、可視波長帯域(ここでは、400〜700nm)及びICG励起波長帯域(ここでは、790〜820nm)の光を遮光し、その他の近赤外波長帯域(ここでは、ICGの蛍光波長帯域である820〜850nm)の光を透過する。
助手用光学系1”は、副観察者である助手が肉眼で観察するための光学系であって、光分割素子4”の反射側に配置されており、リレー系結像レンズ1a”と、反射ミラー1b”と、イメージローテータ1c”と、リレー系コリメータレンズ1d”と、反射ミラー1e”と、観察鏡筒1f”を有している。
観察鏡筒1f”は、観察鏡筒1nにおける第1の観察光学系と同様、結像レンズと、接眼レンズ(図示省略)を有している。
ここで、実施例1の手術用顕微鏡では、光分割素子4のダイクロイック面、光分割素子4”のダイクロイック面は、夫々、図4に示した透過率特性と同様に、可視波長帯域(400〜700nm)では一定の透過率(ここでは、平均して約40%であって、その変動幅が平均透過率である約40%に対し±10%以内の透過率)を有し、近赤外波長帯域(780〜850nm)では可視波長帯域での透過率よりも高い透過率(ここでは、平均して約70%の透過率)を有している。
このように構成された実施例1の手術用顕微鏡では、光源5aから発した光は、照明レンズ5b、プリズム5c、反射プリズム5dを経て楔型ハーフミラー5eに入射する。そして、楔型ハーフミラー5eを透過した光が、観察対象3を照明する。
観察対象3からの光は、楔型ハーフミラー5eで反射され、対物レンズ11、開口絞り1b、反射プリズム1c、アフォーカルズームレンズ12を経て光分割素子4に入射する。
光分割素子4で反射された光は、反射プリズム1d、リレー系結像レンズ1e、反射プリズム1f,1g、ミラー1h、反射プリズム1i,1j、リレー系コリメータレンズ1k、2回反射プリズム1l、反射プリズム1mを経て観察鏡筒1nに入射する。そして、観察鏡筒1nにおける結像レンズ1naR(1naL)、プリズム系1nb,1nc,1nd,1ne、左右一対の接眼レンズ1nfR(1nfL)を経て主術者の眼で観察される。これにより、主術者は、観察対象の可視光像を肉眼で立体観察できる。
光分割素子4を透過した光は、光分割素子4”に入射する。
光分割素子4”で反射された光は、リレー系結像レンズ1a”、反射ミラー1b”、イメージローテータ1c”、リレー系コリメータレンズ1d”、反射ミラー1e”を経て観察鏡筒1f”に入射し、観察鏡筒1f”を経て助手の眼で観察される。これにより、助手は、観察対象の可視光像を肉眼で観察できる。
光分割素子4”を透過した光は、スライダ部22”に入射する。スライダ部22”を透過した光は、ここで、ICG用励起光カットフィルタ221”を光路に挿入されているときには、ICG用励起光及び可視光が遮光され、ICG用蛍光がICG用励起光カットフィルタ221”を透過する。また、ICG用励起光カットフィルタ221”を光路に挿入されていないときには、可視光がICG用励起光カットフィルタ221”を透過する。スライダ部22”を透過した光は、結像レンズ21を経てCCD23に結像する。
これにより、主術者が肉眼で可視光観察が可能であるとともに助手も肉眼で可視光観察が可能であり、かつ、ICG用励起光カットフィルタ221”の光路への挿脱により赤外光又は可視光の撮像画像が得られる。
CCD23で撮像された画像は、表示素子1n2aに表示される。表示素子1n2aに表示された画像は、リレーレンズ1n2b、反射部材1n2c,1n2d、接眼レンズ1n2eを経て主術者の眼で観察される。これにより、主術者は、観察対象3を肉眼で観察すると同時に撮像画像も観察することができる。
このとき、実施例1の手術用顕微鏡では、上述したように、光分割素子4,4”のダイクロイック面は、可視波長帯域(400〜700nm)では一定の透過率(平均して約40%であって、その変動幅が平均透過率である約40%に対し±10%以内の透過率)を有し、近赤外波長帯域では可視波長帯域(平均して約780〜850nm)での透過率よりも高い透過率(約70%の透過率)を有している。
このため、実施例1の手術用内視鏡によれば、可視波長帯域(400〜700nm)の観察像を撮像することができ、かつ、近赤外波長帯域(780〜850nm)の波長の蛍光像を光量を極力減らすことなく、観察に十分な光量を確保した明るさで撮像できる。
また、実施例1の手術用顕微鏡によれば、一つのCCDで近赤外波長帯域と可視波長帯域の撮像画像が得られるので、撮像素子にかかわるコストを低減することができる。
さらに、実施例1の手術用顕微鏡によれば、光分割素子4の透過側に撮像光学系を配置し、主術者用光学系を光分割素子4の反射側において、観察対象に対し略平行な方向に光学部材を配置したので、主術者のアイポイントを低くすることができる。
なお、図1の構成と同様に、近赤外光と可視光とを分離して夫々の撮像画像を得るため、波長分離手段としてダイクロイックプリズム22を用い、ダイクロイックプリズム22で分割された夫々の光路にCCD23,24を配置してもよい。
また、実施例1の手術用顕微鏡では、可視波長帯域を400nm〜700nmに設定したが、380nm〜700nmに設定してもよい。また、近赤外波長帯域を780〜850nmに設定したが、例えば、700〜1000nmに設定してもよい。
実施例2の手術用顕微鏡は、実施例1における光分割素子4,4”の反射面のコーティングを、夫々2種類の物質Al2O3とTa2O5を交互に繰り返し蒸着して形成したものである。Al2O3とTa2O5のe線に対する屈折率は、1.67と2.22であるが、2種類の物質のうち、e線に対する屈折率の大きい方をn1、小さい方をn2とした場合、n1/n2≦1.35を満足するようにすると、本実施例のように光分割素子4,4”の反射面での光線の反射方向が互いに逆向きになる場合でも、各反射面への入射角の差による像の色付きを低減することができる。そのため、このような条件を満たしさえすれば、2種類の物質は、本実施例のように、Al2O3とTa2O5に限定されるものではなく、例えば、上記のAl2O3と、e線に対する屈折率が1.47であるSiO2とを用いても構わない。また、2種類の物質によって形成される膜数は、余り少ないと効果も少ないので、10層以上に形成するのが好ましく、本実施例もそのように形成した。
その結果得られた本実施例の光分割素子4,4”の透過率特性を図10に示す。この図から、波長400〜700nmの範囲においては、透過率を表すグラフの曲線のリップルの周期が比較的短いことがわかる。本実施例のコーティングでは、波長400〜700nmの範囲での曲線の極大値と極小値の数の和が13となっている。このようにリップルを細かくすることによって、光分割素子4,4”の反射面への入射角の差による波長シフトが起きても色の変化が感じにくくなるため、像の色付きを目立たなくすることができる。極大値と極小値の数の和が多いほど、色付きは目立たなくなるが、波長400〜700nmの範囲での曲線の極大値と極小値の数の和が12以上であれば、実用上問題がない。
実施例3の手術用顕微鏡は、上記の実施例1とは撮像光学系2”の構成が異なっているだけである。そして、本実施例の撮像光学系2”は、図11に示されているように、光分割素子4”と反射部材25との間にリレーレンズ26を配置し、反射部材25と結像レンズ21との間にリレーレンズ27と切換手段7とを配置することによって、TVカメラ8で撮像できるようにしている。また、切換手段7は、一方の取付け孔に通常光光路長補正部材71を取り付けており、他方の取付け孔には特定波長光路長補正部材72と、特定波長帯域の光を透過させるフィルタ73とを取り付けており、直線作動と回転作動のいずれかによって、通常光光路長補正部材71を光路上に臨ませて可視光での撮像をしたり、特定波長光路長補正部材72とフィルタ73とを光路上に臨ませて赤外光での撮影をしたりすることができるようになっている。
周知のように、赤外光は可視光よりも波長が長いため、赤外光で観察する場合には、可視光で観察する場合よりも焦点位置が伸びてしまう。そのため、手術用顕微鏡で両方での観察が行えるようにすると、顕微鏡の大型化やコストアップを招いてしまう。しかしながら、本実施例の切換手段7には光路長補正部材71,72が設けられているため、ズーム倍率の関係で完全に補正されるとは言えないが、低倍時の同焦ズレと高倍時での同焦ズレの間に補正量を持っていくことによって、実用に供せられるような同焦ズレの少ない、小型で低コストな手術用顕微鏡が得られる。
なお、本実施例の場合には、特定波長光路長補正部材72と、特定波長帯域の光を透過させるフィルタ73とを、切換え部材7の本体に直接取り付けているが、それらを本体とは別の筒状の枠体に取り付けておき、その枠体を、本実施例における取付け孔に装脱可能に嵌合させるようにすると、種々のフィルタを装着することが可能になるだけではなく、フィルタごとの特定波長光路長補正部材と組み合わせて、フィルタごとに最適な焦点ズレ補正を行うことが可能になる。さらに、本実施例では、特定波長光路長補正部材72とフィルタ73とを、別部材として構成しているが、フィルタ73の厚さを調整することによって、特定波長光路長補正部材72を別部材として設けなくても済むようにすることが可能であり、そのようにすれば、低コスト化が可能になる。
実施例4の手術用顕微鏡の構成は、実施例3の構成と似ており、異なる点は、切換手段7の一方の取付け孔に、可視光での観察時に用いる明るさ絞りが取り付けられており、他方の取付け孔には、赤外光での観察時に用いる上記のフィルタ73と、可視光での観察時に用いる明るさ絞りよりも絞り径の大きい明るさ絞りが取り付けられていることである。そのため、本実施例を説明するための図面は用意されていない。
周知のように、可視光での観察時には、明るさが十分に確保できるので、絞り径を絞ることによって深度の深い撮影が可能である。しかし、ICGを用いた赤外蛍光観察のような特殊光観察を行うときには、可視光よりも赤外光の明るさがかなり暗いので、絞りを開放状態にして明るさを確保する必要があるが、本実施例のように構成すれば、切換手段7によって、明るさ絞り径が切り換わるため、明るい特殊光観察が可能になる。
なお、本実施例の場合にも、フィルタ73と絞り径の大きな明るさ絞りとは、切換え部材7の取付け孔に対して、直接取り付けるようにしてもよいが、それらを筒状の枠体に取り付けておき、その枠体を取付け孔に対し装脱可能に嵌合させるようにすると、種々のフィルタを装着することが可能になるだけではなく、フィルタごとの最適な絞り径にすることが可能になる。また、明るさ絞りは、フィルタ73と別部材とせず、フィルタ73に皮膜として直接形成するようにしてもよい。さらに、絞り径の小さい明るさ絞りを取り付けている一方の取付け孔に、上記の実施例3のように、通常光光路長補正部材71を取り付け、フィルタ73と絞り径の大きな明るさ絞りとを取り付けている他方の取付け孔に、上記の実施例3のように、特定波長光路長補正部材72を取り付けるようにしてもよい。そして、その場合には、さらに、通常光光路長補正部材71に絞り径の小さい明るさ絞りを皮膜として形成し、特定波長光路長補正部材72に絞り径の大きい明るさ絞りを皮膜として形成しても差し支えない。
本発明の手術用顕微鏡は、主術者が肉眼で観察するとともに観察画像を撮像し、可視光画像の他に、気管支における扁平上皮内癌、前癌病変の発見、食道における早期食道癌、前癌病変の発見、胃における胃癌副病変の発見、病変の拡がり診断、大腸における大腸腫瘍性病変の拾い上げ等のために蛍光画像を観察することが必要とされる医療、医学の分野に有用である。
1 肉眼観察光学系
1 対物レンズ
2 アフォーカルズームレンズ
2R (右眼用)アフォーカルズームレンズ
2L (左眼用)アフォーカルズームレンズ
3R、13R’、1naR (右眼用)結像レンズ
3L、13L’、1naL (左眼用)結像レンズ
4R、14R’、1nfR (右眼用)接眼レンズ
4L、14L’、1nfL (左眼用)接眼レンズ
1R、1R’ 右眼用光学系
1L、1L’ 左眼用光学系
1’、1” 助手用光学系
1a、1a’ 光分割素子
1a1、1a1’ 反射部材
1a1R、1a1R’、1a21、1a21’ (右眼用)反射面
1a1L、1a1L’、1a21、1a21’ (左眼用)反射面
1a2R、1a2R’ (右眼用)反射部材
1a2L、1a2L’ (左眼用)反射部材
1b 開口絞り
1c、1d、1f、1g、1i、1j 反射プリズム
1e、1a” リレー系結像レンズ
1h ミラー
1k、1d” リレー系コリメータレンズ
1l 2回反射プリズム
1m 反射プリズム
1n、1f” 観察鏡筒
1nb、1nc、1nd、1ne プリズム系
1ng 第1の観察光学系の鏡筒
1n2a 表示素子
1n2b リレーレンズ
1n2c、1n2d 反射部材
1n2e 接眼レンズ
1n2f 第2の観察光学系の鏡筒
1b”、1e” 反射ミラー
1c” イメージローテータ
2、2’、2” 撮像光学系
1 結像レンズ
2 ダイクロイックプリズム(波長分離手段)
2’ 回転フィルタ(波長分離手段)
3、24 CCD
2” スライダ部
21” ICG用励起光カットフィルタ
5 反射部材
6、27 リレーレンズ
3 観察対象
4、4’、4”、4P、4P” 光分割素子
5 照明光学系
5a 光源
5b 照明レンズ
5c プリズム
5d 反射プリズム
5e 楔型ハーフミラー
6 λ/2板
7 切換手段
1 通常光光路長補正部材
2 特定波長光路長補正部材
3 フィルタ
A 主観察者(主術者)
B 副観察者(助手)
O 光軸
O1 第1の観察光学系の光軸
O2 第2の観察光学系の光軸
51R、51R’、51R” (右眼用)肉眼観察光学系
51”’ 肉眼観察光学系
52R (右眼用)部分透過ミラー
52R’ (右眼用)ダイクロイックミラー
52R”、52R”’ (右眼用)ビームスプリッタ
51L、51L’、51L” (左眼用)肉眼観察光学系
52L (左眼用)部分透過ミラー
52L’、52L”’ (左眼用)ダイクロイックミラー
52L” (左眼用)ビームスプリッタ
53 ビームスプリッタ
54a、54b、54c、54a”、54b” 撮像素子
54R’ (右眼用)撮像素子
54L’ (左眼用)撮像素子
54”’ 撮像装置
55 フィルタ
56” 第二の肉眼観察光学系
57” 波長分離素子
61 近赤外波長の閾値
70 観察対象
71A 主観察者
71B、71C 主観察者以外の観察者

Claims (16)

  1. 観察対象を肉眼で観察するための肉眼観察光学系と、前記観察対象を撮像するための撮像光学系と、前記観察対象からの光を透過及び反射することによって前記肉眼観察光学系の光路を通る光と前記撮像光学系の光路を通る光とに分割する光分割素子を備えた手術用顕微鏡において、
    前記撮像光学系は、前記光分割素子の透過側に配置され、可視波長帯域と近赤外波長帯域の光を分離する波長分離手段と、分離した夫々の波長を撮像する撮像素子を有し、
    前記光分割素子は、可視波長帯域では一定の透過率を有し、近赤外波長帯域では前記可視波長帯域での透過率よりも高い透過率を有することを特徴とする手術用顕微鏡。
  2. 観察対象を肉眼で観察するための肉眼観察光学系と、前記観察対象を撮像するための撮像光学系と、前記観察対象からの光を透過及び反射することによって前記肉眼観察光学系の光路を通る光と前記撮像光学系の光路を通る光とに分割する光分割素子を備えた手術用顕微鏡において、
    前記撮像光学系は、前記光分割素子の反射側に配置され、可視波長帯域と近赤外波長帯域の光を分離する波長分離手段と、分離した夫々の波長を撮像する撮像素子を有し、
    前記光分割素子は、可視波長帯域では一定の反射率を有し、近赤外波長帯域では前記可視波長帯域での反射率よりも高い反射率を有することを特徴とする手術用顕微鏡。
  3. 前記光分割素子は、前記観察対象からの光を透過及び反射することによって2つの光路を通る光に分割する第1の光分割素子と、前記第1の光分割素子で分割された透過側の光路を通る光を透過及び反射することによってさらに2つの光路に分割する第2の光分割素子とを備えてなり
    前記第1の光分割素子と前記第2の光分割素子との間に、光軸を中心として回転可能な波長板を有し、
    前記波長板を回転することにより、前記第1の光分割素子と前記第2の光分割素子の分光透過率を調整可能にしたことを特徴とする請求項1に記載の手術用顕微鏡。
  4. 前記光分割素子の可視波長帯域での分光透過率の変動幅が、可視波長帯域での平均透過率に対し±10%以内であることを特徴とする請求項1に記載の手術用顕微鏡。
  5. 前記光分割素子の可視波長帯域での分光反射率の変動幅が、可視波長帯域での平均反射率に対し±10%以内であることを特徴とする請求項2に記載の手術用顕微鏡。
  6. 前記第1の光分割素子及び前記第2の光分割素子の可視波長帯域での分光透過率の変動幅が、可視波長帯域での平均透過率に対し±10%以内であることを特徴とする請求項3に記載の手術用顕微鏡。
  7. 前記第1の光分割素子及び前記第2の光分割素子の可視波長帯域での分光反射率の変動幅が、可視波長帯域での平均反射率に対し±10%以内であることを特徴とする請求項3に記載の手術用顕微鏡。
  8. 前記光分割素子の分光透過率が次の条件式(1)〜(3)を満足することを特徴とする請求項1又は4に記載の手術用顕微鏡。
    1.3<E/[(A+B+C+D)/4] ・・・(1)
    A×B×C×D≠0 ・・・(2)
    5%≦(A+B+C+D)/4≦50% ・・・(3)
    但し、Eは波長800nmでの透過率、Aは波長400nmでの透過率、Bは波長500nmでの透過率、Cは波長600nmでの透過率、Dは波長700nmでの透過率である。
  9. 前記光分割素子の分光反射率が次の条件式(1')〜(3')を満足することを特徴とする請求項2又は5に記載の手術用顕微鏡。
    1.3<E'/[(A'+B'+C'+D')/4] ・・・(1')
    A'×B'×C'×D'≠0 ・・・(2')
    5%≦(A'+B'+C'+D')/4≦50% ・・・(3')
    但し、E'は波長800nmでの透過率、A'は波長400nmでの反射率、B'は波長500nmでの反射率、C'は波長600nmでの反射率、D'は波長700nmでの反射率である。
  10. 前記観察光学系が、前記第1の光路分割素子により分割された他方の光路に配置された、前記観察対象を肉眼で観察するための第1の肉眼観察光学系と、前記第2の光路分割素子により分割された一方の光路に配置された、前記観察対象を撮像するための撮像光学系と、前記第2の光路分割素子により分割された他方の光路に配置された、前記観察対象を肉眼で観察するための第2の肉眼観察光学系とを有することを特徴とする請求項3に記載の手術用顕微鏡。
  11. 前記光分割素子の透過側であって前記光分割素子と前記撮像光学系との間に配置され、前記光分割素子からの光を透過及び反射することによって前記撮像光学系を通る光線と第2の肉眼観察光学系を通る光線に分割する第2の光分割素子をさらに備え、前記光分割素子と前記第2の光分割素子の反射面のコーティングは、夫々2種の物質を交互に繰り返し蒸着して形成され、前記2種の物質の屈折率は、e線に対する屈折率の大きい方をn1、小さい方をn2としたとき、以下の条件式を満足することを特徴とする請求項1に記載の手術用顕微鏡。
    n1/n2≦1.35
  12. 前記光分割素子の反射側であって前記光分割素子と前記撮像光学系との間に配置され、前記光分割素子からの光を透過及び反射することによって前記撮像光学系を通る光線と第2の肉眼観察光学系を通る光線に分割する第2の光分割素子をさらに備え、前記光分割素子と前記第2の光分割素子の反射面のコーティングは、夫々2種の物質を交互に繰り返し蒸着して形成され、前記2種の物質の屈折率は、e線に対する屈折率の大きい方をn1、小さい方をn2としたとき、以下の条件式を満足することを特徴とする請求項2に記載の手術用顕微鏡。
    n1/n2≦1.35
  13. 前記2種の物質は、Al2O3とTa2O5であることを特徴とする請求項11又は12に記載の手術用顕微鏡。
  14. 前記コーティングは、波長400〜700nmの範囲での透過率又は反射率の極大値と極小値の和が12以上であることを特徴とする請求項11又は12に記載の手術用顕微鏡。
  15. 前記コーティングは、2種の物質を10層以上蒸着して形成されることを特徴とする請求項13に記載の手術用顕微鏡。
  16. 前記波長分離手段は、可視光光路長補正部材と、近赤外光を透過させる近赤外光光路長補正部材を光路上で切り替えることを特徴とする請求項1又は2に記載の手術用顕微鏡。
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