以下、本発明のシアニン化合物及び本発明の光学フィルターについて、好ましい実施形態に基づき詳細に説明する。
まず、上記一般式(I)で表される本発明のシアニン化合物について説明する。
上記一般式(I)中のR1及びR2並びに上記一般式(V)中のR3〜R7で表される置換基を有してもよい炭素原子数1〜10のアルキル基としては、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、第二ブチル、第三ブチル、イソブチル、アミル、イソアミル、第三アミル、ヘキシル、シクロヘキシル、シクロヘキシルメチル、シクロヘキシルエチル、ヘプチル、イソヘプチル、第三ヘプチル、N−オクチル、イソオクチル、第三オクチル、2−エチルヘキシル、ノニル、イソノニル、デシル等が挙げられ、上記一般式(I)中のR1及びR2、上記一般式(III)中のX並びに上記一般式(V)中のR3〜R7で表される置換基を有してもよい炭素原子数1〜10のアルコキシ基としては、メチルオキシ、エチルオキシ、プロピルオキシ、イソプロピルオキシ、ブチルオキシ、第二ブチルオキシ、第三ブチルオキシ、イソブチルオキシ、アミルオキシ、イソアミルオキシ、第三アミルオキシ、ヘキシルオキシ、シクロヘキシルオキシ、ヘプチルオキシ、イソヘプチルオキシ、第三ヘプチルオキシ、N−オクチルオキシ、イソオクチルオキシ、第三オクチルオキシ、2−エチルヘキシルオキシ等が挙げられ、上記一般式(I)中のR1及びR2並びに上記一般式(V)中のR3〜R7で表される置換基を有してもよい炭素原子数6〜30のアリール基としては、フェニル、ナフチル、アントラセン−1−イル、フェナントレン−1−イル等が挙げられ、上記一般式(I)中のR1及びR2、上記一般式(III)中のX並びに上記一般式(V)中のR3〜R7で表される置換基を有してもよい炭素原子数7〜30のアリールアルキル基としては、ベンジル、フェネチル、2−フェニルプロパン、ジフェニルメチル、トリフェニルメチル、スチリル、シンナミル等が挙げられる。上記一般式(I)、(III)及び(V)中に含まれていてもよいRで表される炭素原子数1〜10のアルキル基及び炭素原子数6〜30のアリール基、並びに上記一般式(V)中に含まれていてもよいRで表される炭素原子数1〜10のアルコキシ基としては、例えば、それぞれ上記に挙げたものが挙げられる。
上記一般式(I)において、Anq-で表される陰イオンとしては、例えば、一価のものとして、塩化物イオン、臭化物イオン、ヨウ化物イオン、フッ化物イオン等のハロゲン化物イオン;過塩素酸イオン、塩素酸イオン、チオシアン酸イオン、ヘキサフルオロリン酸イオン、ヘキサフルオロアンチモン酸イオン、テトラフルオロホウ酸イオン等の無機系陰イオン;ベンゼンスルホン酸イオン、トルエンスルホン酸イオン、トリフルオロメタンスルホン酸イオン、ジフェニルアミン−4−スルホン酸イオン、2−アミノ−4−メチル−5−クロロベンゼンスルホン酸イオン、2−アミノ−5−ニトロベンゼンスルホン酸イオン、N−アルキル(又はアリール)ジフェニルアミン−4−スルホン酸イオン等の有機スルホン酸系陰イオン;オクチルリン酸イオン、ドデシルリン酸イオン、オクタデシルリン酸イオン、フェニルリン酸イオン、ノニルフェニルリン酸イオン、2,2’−メチレンビス(4,6−ジ−t−ブチルフェニル)ホスホン酸イオン等の有機リン酸系陰イオン;ビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミドイオン、ビスパーフルオロブタンスルホニルイミドイオン、パーフルオロ−4−エチルシクロヘキサンスルホン酸イオン、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ホウ酸イオン、トリス(フルオロアルキルスルホニル)カルボ陰イオン等が挙げられ、二価のものとしては、例えば、ベンゼンジスルホン酸イオン、ナフタレンジスルホン酸イオン等が挙げられる。また、励起状態にある活性分子を脱励起させる(クエンチングさせる)機能を有するクエンチャー陰イオンや、シクロペンタジエニル環にカルボキシル基、ホスホン酸基、スルホン酸基等の陰イオン性基を有するフェロセン、ルテオセン等のメタロセン化合物陰イオン等も、必要に応じて用いることができる。また、pは、分子全体で電荷が中性となるように選択される。
上記のクエンチャー陰イオンとしては、例えば、下記一般式(A)又は(B)で表されるもの、特開昭60−234892号公報、特開平5−43814号公報、特開平5−305770号公報、特開平6−239028号公報、特開平9−309886号公報、特開平10−45767号公報、特開平11−208118号公報、特公平7−96334号公報等に記載されたような陰イオンが挙げられる。
(式中、Mは、ニッケル原子、コバルト原子又は銅原子を表し、R
8及びR
9は、ハロゲン原子、炭素原子数1〜8のアルキル基、炭素数6〜30のアリール基又は−SO
2−G基を表し、Gは、アルキル基、ハロゲン原子で置換されていてもよいアリール基、ジアルキルアミノ基、ジアリールアミノ基、ピペリジノ基又はモルフォリノ基を表し、a及びbは、各々0〜4を表す。また、R
10、R
11、R
12及びR
13は、各々独立にアルキル基、アルキルフェニル基、アルコキシフェニル基又はハロゲン化フェニル基を表す。)
上記一般式(II)において、Ra〜Riで表される炭素原子数1〜4のアルキル基としては、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、第二ブチル、第三ブチル、イソブチル等が挙げられ、該アルキル基中のメチレン基が−O−で置換された基としては、メトキシ、エトキシ、プロピルオキシ、イソプロピルオキシ、メトキシメチル、エトキシメチル、2−メトキシエチル等が挙げられ、該アルキル基中のメチレン基が−CO−で置換された基としては、アセチル、1−カルボニルエチル、アセチルメチル、1−カルボニルプロピル、2−オキソブチル、2−アセチルエチル、1−カルボニルイソプロピル等が挙げられ、Zで表される置換基を有してもよい炭素原子数1〜8のアルキレン基としては、メチレン、エチレン、プロピレン、メチルエチレン、ブチレン、1−メチルプロピレン、2−メチルプロピレン、1,2−ジメチルプロピレン、1,3−ジメチルプロピレン、1−メチルブチレン、2−メチルブチレン、3−メチルブチレン、4−メチルブチレン、2,4−ジメチルブチレン、1,3−ジメチルブチレン、ペンチレン、へキシレン、ヘプチレン、オクチレン、エタン−1,1−ジイル、プロパン−2,2−ジイル等が挙げられ、該アルキレン基中のメチレン基が−O−、−S−、−CO−、−COO−、−OCO−、−SO2−、−NH−、−CONH−、−NHCO−、−N=CH−又は−CH=CH−で置換された基としては、メチレンオキシ、エチレンオキシ、オキシメチレン、チオメチレン、カルボニルメチレン、カルボニルオキシメチレン、メチレンカルボニルオキシ、スルホニルメチレン、アミノメチレン、アセチルアミノ、エチレンカルボキシアミド、エタンイミドイル、エテニレン、プロペニレン等が挙げられる。
上記一般式(III)中のXで表される置換基を有する炭素原子数1〜10のアルキル基における該置換基としては、フッ素原子、塩素原子等のハロゲン原子、水酸基、アミノ基、シアノ基、ニトロ基、スルホニル基、カルボキシル基等が挙げられる。Xで表される置換基を有する炭素原子数1〜10のアルキル基としては、具体的には、トリクロロメチル、ジクロロメチル、モノクロロメチル、ペンタクロロエチル、テトラクロロエチル、トリクロロエチル、ジクロロエチル、ヘプタクロロプロピル、ヘキサクロロプロピル、ペンタクロロプロピル、テトラクロロプロピル、トリクロロプロピル、パークロロブチル、トリフルオロメチル、ジフルオロメチル、モノフルオロメチル、ペンタフルオロエチル、テトラフルオロエチル、トリフルオロエチル、ジフルオロエチル、ヘプタフルオロプロピル、ヘキサフルオロプロピル、ペンタフルオロプロピル、テトラフルオロプロピル、トリフルオロプロピル、パーフルオロブチル、ヒドロキシメチル、アミノメチル等が挙げられる。
上記一般式(IV)中の環Aで表される五員環又は六員環の複素環は、五員環又は六員環の複素単環だけでなく、五員環又は六員環の複素環を構成成分として含む縮合複素環も含む。上記一般式(IV)中の環Aで表される五員環の複素環としては、ピロール環、ピラゾリジン環、ピラゾール環、イミダゾール環、イミダゾリジン環、オキサゾール環、イソキサゾール環、イソオキサゾリジン環、チアゾール環、イソチアゾリジン環、セレナゾール環、インドレニン環、ナフトラクタム等が挙げられ、環Aで表される六員環としては、例えば、ピペリジン環、ピペラジン環、モルフォリン環、チオモルフォリン環、ピリジン環、ピラジン環、ピリミジン環、ピリダジン環、トリアジン環、キノリン環、イソキノリン環、キノキサリン環、ユロリジン環等の含窒素複素環が挙げられる。上記一般式(IV)中の環Aで表されるメタロセン構造としては、上記一般式(II)においてZが直接結合であるものが挙げられる。これらの環は他の環と縮合されていたり、置換されていたりしてもよい。
上記一般式(V)中のR3〜R7で表されるハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が挙げられる。上記一般式(V)中のR3及びR4、R4及びR5、R5及びR6あるいはR6及びR7が連結して形成する環構造としては、ナフタレン環、フェナントレン環、シクロプロパン環、シクロブタン環、シクロペンタン環、シクロヘキサン環、シクロへプタン環、シクロペンテン環、シクロヘキセン環、ピペリジン環、ピペラジン環、ピロリジン環、モルフォリン環、チオモルフォリン環、ピリジン環、ピラジン環、ピリミジン環、ピリダジン環、ユロリジン環、トリアジン環、フラン環、チオフェン環、ピロール環、テトラヒドロピラン環、キノリン環、イソキノリン環、イミダゾール環、オキサゾール環、チアゾール環、イミダゾリジン環、ピラゾリジン環、イソオキサゾリジン環、イミノオキサゾリジン環、イソチアゾリジン環、ロダニン環、チオオキサゾリドン環、チオヒダントイン環、インダンジオン環、チアナフテン環、ピラゾロン環、ピリドン環、ピラゾリジンジオン環、ローダニン環、バルビツール酸環、チオバルビツール酸環、オキサゾロン環、ヒダントイン環、チオヒダントイン環、スクシンイミド環、マレイミド環等が挙げられ、これらの環は他の環と縮合されていたり、置換されていたりしてもよい。
上記の炭素原子数1〜10のアルキル基、炭素原子数1〜10のアルコキシ基、炭素原子数6〜30のアリール基及び炭素原子数7〜30のアリールアルキル基等であって置換基を有していてもよいものにおける該置換基としては、以下のものが挙げられる。尚、以下の置換基の中でも、炭素原子を含有する置換基を有する場合は、該置換基を含めた基全体の炭素原子数が、それぞれに規定された範囲を満たすものとする。
上記置換基としては、例えば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、シクロプロピル、ブチル、第二ブチル、第三ブチル、イソブチル、アミル、イソアミル、第三アミル、シクロペンチル、ヘキシル、2−ヘキシル、3−ヘキシル、シクロヘキシル、ビシクロヘキシル、1−メチルシクロヘキシル、ヘプチル、2−ヘプチル、3−ヘプチル、イソヘプチル、第三ヘプチル、n−オクチル、イソオクチル、第三オクチル、2−エチルヘキシル、ノニル、イソノニル、デシル等のアルキル基;メチルオキシ、エチルオキシ、プロピルオキシ、イソプロピルオキシ、ブチルオキシ、第二ブチルオキシ、第三ブチルオキシ、イソブチルオキシ、アミルオキシ、イソアミルオキシ、第三アミルオキシ、ヘキシルオキシ、シクロヘキシルオキシ、ヘプチルオキシ、イソヘプチルオキシ、第三ヘプチルオキシ、n−オクチルオキシ、イソオクチルオキシ、第三オクチルオキシ、2−エチルヘキシルオキシ、ノニルオキシ、デシルオキシ等のアルコキシ基;メチルチオ、エチルチオ、プロピルチオ、イソプロピルチオ、ブチルチオ、第二ブチルチオ、第三ブチルチオ、イソブチルチオ、アミルチオ、イソアミルチオ、第三アミルチオ、ヘキシルチオ、シクロヘキシルチオ、ヘプチルチオ、イソヘプチルチオ、第三ヘプチルチオ、n−オクチルチオ、イソオクチルチオ、第三オクチルチオ、2−エチルヘキシルチオ等のアルキルチオ基;ビニル、1−メチルエテニル、2−メチルエテニル、2−プロペニル、1−メチル−3−プロペニル、3−ブテニル、1−メチル−3−ブテニル、イソブテニル、3−ペンテニル、4−ヘキセニル、シクロヘキセニル、ビシクロヘキセニル、ヘプテニル、オクテニル、デセニル、ぺンタデセニル、エイコセニル、トリコセニル等のアルケニル基;ベンジル、フェネチル、ジフェニルメチル、トリフェニルメチル、スチリル、シンナミル等のアリールアルキル基;フェニル、ナフチル等のアリール基;フェノキシ、ナフチルオキシ等のアリールオキシ基;フェニルチオ、ナフチルチオ等のアリールチオ基;ピリジル、ピリミジル、ピリダジル、ピペリジル、ピラニル、ピラゾリル、トリアジル、ピロリル、キノリル、イソキノリル、イミダゾリル、ベンゾイミダゾリル、トリアゾリル、フリル、フラニル、ベンゾフラニル、チエニル、チオフェニル、ベンゾチオフェニル、チアジアゾリル、チアゾリル、ベンゾチアゾリル、オキサゾリル、ベンゾオキサゾリル、イソチアゾリル、イソオキサゾリル、インドリル、2−ピロリジノン−1−イル、2−ピペリドン−1−イル、2,4−ジオキシイミダゾリジン−3−イル、2,4−ジオキシオキサゾリジン−3−イル等の複素環基;フッ素、塩素、臭素、ヨウ素等のハロゲン原子;アセチル、2−クロロアセチル、プロピオニル、オクタノイル、アクリロイル、メタクリロイル、フェニルカルボニル(ベンゾイル)、フタロイル、4−トリフルオロメチルベンゾイル、ピバロイル、サリチロイル、オキザロイル、ステアロイル、メトキシカルボニル、エトキシカルボニル、t−ブトキシカルボニル、n−オクタデシルオキシカルボニル、カルバモイル等のアシル基;アセチルオキシ、ベンゾイルオキシ等のアシルオキシ基;アミノ、エチルアミノ、ジメチルアミノ、ジエチルアミノ、ブチルアミノ、シクロペンチルアミノ、2−エチルヘキシルアミノ、ドデシルアミノ、アニリノ、クロロフェニルアミノ、トルイジノ、アニシジノ、N−メチル−アニリノ、ジフェニルアミノ,ナフチルアミノ、2−ピリジルアミノ、メトキシカルボニルアミノ、フェノキシカルボニルアミノ、アセチルアミノ、ベンゾイルアミノ、ホルミルアミノ、ピバロイルアミノ、ラウロイルアミノ、カルバモイルアミノ、N,N−ジメチルアミノカルボニルアミノ、N,N−ジエチルアミノカルボニルアミノ、モルホリノカルボニルアミノ、メトキシカルボニルアミノ、エトキシカルボニルアミノ、t−ブトキシカルボニルアミノ、n−オクタデシルオキシカルボニルアミノ、N−メチル−メトキシカルボニルアミノ、フェノキシカルボニルアミノ、スルファモイルアミノ、N,N−ジメチルアミノスルホニルアミノ、メチルスルホニルアミノ、ブチルスルホニルアミノ、フェニルスルホニルアミノ等の置換アミノ基;スルホンアミド基、スルホニル基、カルボキシル基、シアノ基、スルホ基、水酸基、ニトロ基、メルカプト基、イミド基、カルバモイル基、スルホンアミド基等が挙げられ、これらの基は更に置換されていてもよい。また、カルボキシル基及びスルホ基は塩を形成していてもよい。
上記一般式(I)で表されるシアニン化合物の中でも、下記一般式(VI)で表されるもの、特に下記一般式(VII)で表されるものが、製造コストが小さく、且つ耐光性及び有機溶媒に対する溶解性が高いので、光学フィルターに用いる光吸収剤としてとりわけ好ましい。
(式中、R
1、R
2、An
q-、p及びqは、上記一般式(I)と同じであり、環Aは、上記一般式(IV)と同じである。)
(式中、R
1、R
2、An
q-、p及びqは上記一般式(I)と同じであり、R
3、R
4、R
5、R
6及びR
7は、上記一般式(V)と同じである。)
上記一般式(I)で表される本発明のシアニン化合物の具体例としては、下記化合物No.1〜28が挙げられる。なお、以下の例示では、陰イオンを省いたシアニンカチオンで示している。本発明のシアニン化合物において、ポリメチン鎖は共鳴構造をとっていてもよく、またカチオンがもう一方の複素環骨格中の窒素原子上にあってもよい。
上記一般式(I)で表されるシアニン化合物は、その製造方法によって特に限定されず、例えば文献(OS,vol80,200)に記載された反応等の周知一般の反応を利用した方法で得ることができる。該化合物は、例えば、Qが上記一般式(IV)で表される連結基であるとき、下記[化11]に示す反応式の如く、ビルスマイヤー反応により中間体アルデヒドを合成し、得られた中間体アルデヒドとインドレニン四級塩を反応させる方法により合成することができる。尚、Qが上記一般式(III)で表される連結基であるときにも、下記反応式に準じて製造することができる。
(式中、R
14及びR
15は、炭素原子数1〜10のアルキル基、炭素原子数6〜30のアリール基又は炭素原子数7〜30のアリールアルキル基を表し、R
14及びR
15は、連結して環構造を形成してもよく、R
1、R
2、An
q-、p及びqは、上記一般式(I)と同じであり、環Aは、上記一般式(IV)と同じである。)
本発明のシアニン化合物は、後述の光学フィルター等の光学要素に好適に用いることができる他、光学記録材料、CCD及びCMOS用の光学フィルター、色素増感型太陽電池、光電気化学電池、非線形光学装置、エレクトロクロミックディスプレイ、ホログラム、有機半導体、有機EL、ハロゲン化銀写真感光材料等に用いたり、光増感剤;印刷インキ、インクジェット、電子写真カラートナー、化粧料、プラスチック等の着色剤;タンパク質用染色剤、物質検出のための発光染料等としても用いることができる。
次に、本発明の光学フィルターについて説明する。
本発明の光学フィルターは、上記一般式(I)で表されるシアニン化合物の少なくとも一種を含有する。該シアニン化合物は、それぞれ吸収極大波長を800〜1100nmの範囲内又はその付近に持ち、一部の紫外線、可視光線あるいは近赤外線を選択的に吸収して遮断することができるので、該シアニン化合物を含有する本発明の光学フィルターは、表示画像の高品質化、赤外リモコン誤作動防止等に用いられる画像表示装置用の光学フィルターとして特に好適なものである。本発明の光学フィルターは、液晶表示装置(LCD)、プラズマディスプレイパネル(PDP)、エレクトロルミネッセンスディスプレイ(ELD)、陰極管表示装置(CRT)、蛍光表示管、電界放射型ディスプレイ等の画像表示装置用の他に、眼鏡レンズ、窓、分析装置用途、半導体装置用途、天文観測用途、光通信用途等の各種用途にも用いることができる。
本発明の光学フィルターは、画像表示装置用として用いる場合は、通常、ディスプレイの前面に配置される。例えば、本発明の光学フィルターは、ディスプレイの表面に直接貼り付けてもよく、ディスプレイの前に前面板が設けられている場合は、前面板の表側(外側)または裏側(ディスプレイ側)に貼り付けてもよい。
本発明の光学フィルターにおいて、上記一般式(I)で表されるシアニン化合物の含有量は、合計で通常0.1〜1000mg/m2、好ましくは1〜100mg/m2である。該含有量が0.1mg/m2未満では、光吸収効果を十分に発揮することができず、1000mg/m2を超えて含有する場合には、フィルターの色目が強くなりすぎて表示品質等を低下させるおそれがあり、さらには、光吸収剤の配合量が増えることにより明度が低下するおそれもある。
また、本発明の光学フィルターには、さらにジイモニウム化合物を含有させることが好ましい。ジイモニウム化合物を含有させることにより、上記一般式(I)で表されるシアニン化合物の耐光性、耐熱性及び耐湿熱性、特に耐光性を一層向上させることができる。これによって、経時的に本発明の光学フィルターの光吸収能が低下することをより効果的に防ぐことができる。ジイモニウム化合物の含有量は、光学フィルターの単位面積当たり好ましくは10〜10000mg/m2、さらに好ましくは50〜1000mg/m2である。
上記ジイモニウム化合物としては、例えば下記一般式(VIII)で表される化合物を使用することができる。
(式中、R
21、R
22、R
23、R
24、R
25、R
26、R
27及びR
28は、それぞれ独立に、水素原子又は炭素原子数1〜8のアルキル基を表し、R
29、R
30、R
31及びR
32はそれぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、炭素原子数1〜8のアルキル基又はアミノ基を表す。R
21、R
22、R
23、R
24、R
25、R
26、R
27、R
28、R
29、R
30、R
31及びR
32で表される炭素原子数1〜8のアルキル基、R
29、R
30、R
31及びR
32で表されるアミノ基は、置換基を有していてもよい。上記炭素原子数1〜8のアルキル基中のメチレン基は、−O−又は−CH=CH−で置換されていてもよく、rは1〜4の数を表し、R
33及びR
34は、それぞれ独立に、炭素原子数1〜8のパーハロアルキル基を表す。)
R21〜R32で表される炭素原子数1〜8のアルキル基としては、例えば、一般式(I)中のR1及びR2等で表される炭素原子数1〜10のアルキル基として前記に例示したうちの炭素原子数が1〜8のものが挙げられる。R21〜R32で表される炭素原子数1〜8のアルキル基又はR29〜R32で表されるアミノ基が有してもよい置換基としては、一般式(I)中のR1及びR2で表される炭素原子数1〜10のアルキル基等が有してもよい置換基として前記に例示したものが挙げられる。R33及びR34で表される炭素原子数1〜8のパーハロアルキル基としては、例えば、一般式(I)中のR1及びR2等で表される炭素原子数1〜10のアルキル基として前記に例示したうちの炭素原子数が1〜8のもので、全ての水素がフッ素原子、塩素原子、臭素原子又はヨウ素原子で置換されたものが挙げられる。
本発明の光学フィルターの構成に関しては、特に制限されるものではないが、通常、透明支持体に、必要に応じて下塗り層、反射防止層、ハードコート層、潤滑層、保護層等の各層を設けたものが挙げられる。本発明のシアニン化合物や、本発明のシアニン化合物以外の色素化合物である光吸収剤、各種安定剤等の任意成分を本発明の光学フィルターに含有させる方法としては、例えば、(1)透明支持体又は任意の各層に含有させる方法、(2)透明支持体又は任意の各層にコーティングする方法、(3)透明支持体及び任意の各層から選択される任意の隣合う二者間の粘着剤層に含有させる方法、(4)任意の各層とは別に、本発明のシアニン化合物等の光吸収剤等を含有する光吸収層を設ける方法が挙げられる。
上記透明支持体の材料としては、例えば、ガラス等の無機材料;ジアセチルセルロース、トリアセチルセルロース(TAC)、プロピオニルセルロース、ブチリルセルロース、アセチルプロピオニルセルロース、ニトロセルロース等のセルロースエステル;ポリアミド;ポリカーボネート;ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリ−1,4−シクロヘキサンジメチレンテレフタレート、ポリエチレン−1,2−ジフェノキシエタン−4,4'−ジカルボキシレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル;ポリスチレン;ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリメチルペンテン等のポリオレフィン;ポリメチルメタクリレート等のアクリル系樹脂;ポリスルホン;ポリエーテルスルホン;ポリエーテルケトン;ポリエーテルイミド;ポリオキシエチレン、ノルボルネン樹脂等の高分子材料が挙げられる。透明支持体の透過率は80%以上であることが好ましく、86%以上であることがさらに好ましい。ヘイズは、2%以下であることが好ましく、1%以下であることがさらに好ましい。屈折率は、1.45〜1.70であることが好ましい。透明支持体の厚みは0.1〜50mmの範囲が好ましい。
上記透明支持体中には、本発明のシアニン化合物以外の他の光吸収剤、赤外線吸収剤、紫外線吸収剤、蛍光消光剤、フェノール系、リン系、イオウ系等の酸化防止剤、難燃剤、滑剤、帯電防止剤、無機微粒子、耐光性付与剤、芳香族ニトロソ化合物、アミニウム化合物、イミニウム化合物、遷移金属キレート化合物、粘土鉱物等の任意成分を添加することができ、また、上記透明支持体には、各種の表面処理を施すこともできる。尚、上記任意成分は、透明支持体以外の層に添加することもできる。
本発明のシアニン化合物以外の光吸収剤としては、例えば、光学フィルターを画像表示装置用途に用いる場合には、色調調整用の光吸収剤、外光の反射や映り込み防止用の光吸収剤が挙げられ、画像表示装置がプラズマディスプレイの場合には、赤外リモコン誤作動防止用の光吸収剤が挙げられる。
上記色調調整用の光吸収剤としては、波長450〜620nmのオレンジ光の除去のために用いられるものとして、トリメチンインドリウム化合物、トリメチンベンゾオキサゾリウム化合物、トリメチンベンゾチアゾリウム化合物等のトリメチンシアニン誘導体;ペンタメチンオキサゾリウム化合物、ペンタメチンチアゾリウム化合物等のペンタメチンシアニン誘導体;スクアリリウム色素誘導体;アゾメチン色素誘導体;キサンテン色素誘導体;アゾ色素誘導体;オキソノール色素誘導体;ベンジリデン色素誘導体;ピロメテン色素誘導体;アゾ金属錯体誘導体:ローダミン色素誘導体;フタロシアニン誘導体;ポルフィリン誘導体;ジピロメテン金属キレート化合物等が挙げられる。
上記の外光の反射や映り込み防止用の光吸収剤(波長480〜500nm対応)としては、トリメチンインドリウム化合物、トリメチンオキサゾリウム化合物、トリメチンチアゾリウム化合物、インドリデントリメチンチアゾニウム化合物等のトリメチンシアニン誘導体;フタロシアニン誘導体;ナフタロシアニン誘導体;ポルフィリン誘導体;ジピロメテン金属キレート化合物等が挙げられる。
上記の赤外リモコン誤作動防止用の光吸収剤(波長750〜1100nm対応)としては、ジイモニウム化合物;ペンタメチンベンゾインドリウム化合物、ペンタメチンベンゾオキサゾリウム化合物、ペンタメチンベンゾチアゾリウム化合物等のペンタメチンシアニン誘導体;ヘプタメチンインドリウム化合物、ヘプタメチンベンゾインドリウム化合物、ヘプタメチンオキサゾリウム化合物、ヘプタメチンベンゾオキサゾリウム化合物、ヘプタメチンチアゾリウム化合物、ヘプタメチンベンゾチアゾリウム化合物等のヘプタメチンシアニン誘導体;スクアリリウム誘導体;ビス(スチルベンジチオラト)化合物、ビス(ベンゼンジチオラト)ニッケル化合物、ビス(カンファージチオラト)ニッケル化合物等のニッケル錯体;スクアリリウム誘導体;アゾ色素誘導体;フタロシアニン誘導体;ポルフィリン誘導体;ジピロメテン金属キレート化合物等が挙げられる。
本発明の光学フィルターにおいて、上記の色調調整用の光吸収剤、外光の反射や映り込み防止用の光吸収剤、及び赤外リモコン誤作動防止用の光吸収剤(近赤外線吸収剤)は、本発明のシアニン化合物を含有させる層と同一の層に含有させてもよく、別の層に含有させてもよい。それらの使用量はそれぞれ、通常光学フィルターの単位面積当たり0.1〜1000mg/m2の範囲であり、好ましくは5〜100mg/m2である。
また、上記透明支持体に添加することができる上記無機微粒子としては、例えば、二酸化珪素、二酸化チタン、硫酸バリウム、炭酸カルシウム、タルク、カオリン等が挙げられる。
上記透明支持体に施すことができる上記の各種の表面処理としては、例えば、薬品処理、機械的処理、コロナ放電処理、火焔処理、紫外線照射処理、高周波処理、グロー放電処理、活性プラズマ処理、レーザー処理、混酸処理、オゾン酸化処理等が挙げられる。
本発明の光学フィルターに設けることができる上記下塗り層は、任意の各層とは別に光吸収剤を含有するフィルター層を設ける場合に、透明支持体と光フィルター層との間に用いる層である。上記下塗り層は、ガラス転移温度が−60〜60℃のポリマーを含む層、フィルター層側の表面が粗面である層、又はフィルター層のポリマーと親和性を有するポリマーを含む層として形成する。また、下塗り層は、フィルター層が設けられていない透明支持体の面に設けて、透明支持体とその上に設けられる層(例えば、反射防止層、ハードコート層)との接着力を改善するために設けてもよく、光学フィルターと画像表示装置とを接着するための接着剤と光学フィルターとの親和性を改善するために設けてもよい。下塗り層の厚みは、2nm〜20μmが好ましく、5nm〜5μmがより好ましく、20nm〜2μmがさらに好ましく、50nm〜1μmがさらにまた好ましく、80nm〜300nmが最も好ましい。ガラス転移温度が−60〜60℃のポリマーを含む下塗り層は、ポリマーの粘着性で、透明支持体とフィルター層とを接着する。ガラス転移温度が−60〜60℃のポリマーは、例えば、塩化ビニル、塩化ビニリデン、酢酸ビニル、ブタジエン、ネオプレン、スチレン、クロロプレン、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、アクリロニトリル又はメチルビニルエーテルの重合又はこれらの共重合により得ることができる。ガラス転移温度は、50℃以下であることが好ましく、40℃以下であることがより好ましく、30℃以下であることがさらに好ましく、25℃以下であることがさらにまた好ましく、20℃以下であることが最も好ましい。下塗り層の25℃における弾性率は、1〜1000MPaであることが好ましく、5〜800MPaであることがさらに好ましく、10〜500MPaであることが最も好ましい。フィルター層の表面が粗面である下塗り層は、粗面の上にフィルター層を形成することで、透明支持体とフィルター層とを接着する。フィルター層の表面が粗面である下塗り層は、ポリマーラテックスの塗布により容易に形成することができる。ラテックスの平均粒径は、0.02〜3μmであることが好ましく、0.05〜1μmであることがさらに好ましい。フィルター層のバインダーポリマーと親和性を有するポリマーとしては、アクリル樹脂、セルロース誘導体、アルギン酸、ゼラチン、カゼイン、でんぷん、ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラール、ポリビニルピロリドン、可溶性ナイロン及び高分子ラテックス等が挙げられる。また、本発明の光学フィルターには、二以上の下塗り層を設けてもよい。下塗り層には、透明支持体を膨潤させる溶剤、マット剤、界面活性剤、帯電防止剤、塗布助剤、硬膜剤等を添加してもよい。
本発明の光学フィルターに設けることができる上記反射防止層においては、低屈折率層が必須である。低屈折率層の屈折率は、上記透明支持体の屈折率よりも低い。低屈折率層の屈折率は、1.20〜1.55であることが好ましく、1.30〜1.50であることがさらに好ましい。低屈折率層の厚さは、50〜400nmであることが好ましく、50〜200nmであることがさらに好ましい。低屈折率層は、屈折率の低い含フッ素ポリマーからなる層(特開昭57−34526号、特開平3−130103号、特開平6−115023号、特開平8−313702号、特開平7−168004号の各公報記載)、ゾルゲル法により得られる層(特開平5−208811号、特開平6−299091号、特開平7−168003号の各公報記載)、あるいは微粒子を含む層(特公昭60−59250号、特開平5−13021号、特開平6−56478号、特開平7−92306号、特開平9−288201号の各公報に記載)として形成することができる。微粒子を含む層では、微粒子間又は微粒子内のミクロボイドとして、低屈折率層に空隙を形成することができる。微粒子を含む層は、3〜50体積%の空隙率を有することが好ましく、5〜35体積%の空隙率を有することがさらに好ましい。
広い波長領域の反射を防止するためには、上記反射防止層において、低屈折率層に加えて、屈折率の高い層(中・高屈折率層)を積層することが好ましい。高屈折率層の屈折率は、1.65〜2.40であることが好ましく、1.70〜2.20であることがさらに好ましい。中屈折率層の屈折率は、低屈折率層の屈折率と高屈折率層の屈折率との中間の値となるように調整する。中屈折率層の屈折率は、1.50〜1.90であることが好ましく、1.55〜1.70であることがさらに好ましい。中・高屈折率層の厚さは、5nm〜100μmであることが好ましく、10nm〜10μmであることがさらに好ましく、30nm〜1μmであることが最も好ましい。中・高屈折率層のヘイズは、5%以下であることが好ましく、3%以下であることがさらに好ましく、1%以下であることが最も好ましい。中・高屈折率層は、比較的高い屈折率を有するポリマーバインダーを用いて形成することができる。屈折率が高いポリマーとしては、ポリスチレン、スチレン共重合体、スチレン−ブタジエンコポリマー、ポリ塩化ビニル、ポリカーボネート、ポリアミド、メラミン樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、環状(脂環式又は芳香族)イソシアネートとポリオールとの反応で得られるポリウレタン等が挙げられる。その他の環状(芳香族、複素環式、脂環式)基を有するポリマーや、フッ素以外のハロゲン原子を置換基として有するポリマーも、屈折率が高い。二重結合を導入してラジカル硬化を可能にしたモノマーの重合反応により形成されたポリマーを用いてもよい。
さらに高い屈折率を得るため、上記ポリマーバインダー中に無機微粒子を分散してもよい。無機微粒子の屈折率は、1.80〜2.80であることが好ましい。無機微粒子は、金属の酸化物または硫化物から形成することが好ましい。金属の酸化物又は硫化物としては、酸化チタン(例えば、ルチル、ルチル/アナターゼの混晶、アナターゼ、アモルファス構造)、酸化錫、酸化インジウム、酸化亜鉛、酸化ジルコニウム、硫化亜鉛等が挙げられる。これらの中でも、酸化チタン、酸化錫及び酸化インジウムが特に好ましい。無機微粒子は、これらの金属の酸化物又は硫化物を主成分とし、さらに他の元素を含むことができる。主成分とは、粒子を構成する成分の中で最も含有量(質量%)が多い成分を意味する。他の元素としては、Ti、Zr、Sn、Sb、Cu、Fe、Mn、Pb、Cd、As、Cr、Hg、Zn、Al、Mg、Si、P、S等が挙げられる。被膜形成性で溶剤に分散し得るか、それ自身が液状である無機材料、例えば、各種元素のアルコキシド、有機酸の塩、配位性化合物と結合した配位化合物(例えばキレート化合物)、活性無機ポリマーを用いて、中・高屈折率層を形成することもできる。
上記反射防止層の表面には、アンチグレア機能(入射光を表面で散乱させて、膜周囲の景色が膜表面に移るのを防止する機能)を付与することができる。例えば、透明フィルムの表面に微細な凹凸を形成してその表面に反射防止層を形成するか、あるいは、反射防止層を形成後、エンボスロールにより表面に凹凸を形成することにより、アンチグレア機能を有する反射防止層を得ることができる。アンチグレア機能を有する反射防止層は、一般に3〜30%のヘイズを有する。
本発明の光学フィルターに設けることができる上記ハードコート層は、上記透明支持体の硬度よりも高い硬度を有する。ハードコート層は、架橋しているポリマーを含むことが好ましい。ハードコート層は、アクリル系、ウレタン系、エポキシ系のポリマー、オリゴマー又はモノマー(例えば紫外線硬化型樹脂)等を用いて形成することができる。シリカ系材料からハードコート層を形成することもできる。
上記反射防止層(低屈折率層)の表面は、潤滑層を形成してもよい。潤滑層は、低屈折率層表面に滑り性を付与し、耐傷性を改善する機能を有する。潤滑層は、ポリオルガノシロキサン(例えばシリコンオイル)、天然ワックス、石油ワックス、高級脂肪酸金属塩、フッ素系潤滑剤又はその誘導体を用いて形成することができる。潤滑層の厚さは、2〜20nmであることが好ましい。
本発明のシアニン化合物を光学フィルターに含有させる際、前記「(3)透明支持体及び任意の各層から選択される任意の隣合う二者間の粘着剤層に含有させる方法」を採用する場合には、本発明のシアニン化合物等を粘着剤に含有させた後、該粘着剤を用いて、上述した透明支持体及び任意の各層のうちの隣合う二者を接着すればよい。該粘着剤としては、シリコン系、ウレタン系、アクリル系等の粘着剤、ポリビニルブチラール接着剤、エチレン−酢酸ビニル系接着剤等の公知の合わせガラス用透明接着剤を用いることができる。また、該粘着剤を用いる場合、必要に応じて、硬化剤として、金属キレート系、イソシアネート系、エポキシ系等の架橋剤を用いることができる。また、粘着剤層の厚みは、2〜400μmとすることが好ましい。
前記「(4)任意の各層とは別に、本発明のシアニン化合物等の光吸収剤を含有する光吸収層を設ける方法」を採用する場合、本発明のシアニン化合物は、そのまま使用して光吸収層を形成することもできるし、本発明のシアニン化合物等の光吸収剤をバインダーに分散させて光吸収層を形成することもできる。該バインダーとしては、例えば、ゼラチン、カゼイン、澱粉、セルロース誘導体、アルギン酸等の天然高分子材料、あるいは、ポリメチルメタクリレート、ポリビニルブチラール、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、ポリ塩化ビニル、スチレン−ブタジエンコポリマー、ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリアミド等の合成高分子材料が用いられる。
上記バインダーを使用する際には、同時に有機溶媒を使用することもでき、該有機溶媒としては、特に限定されることなく公知の種々の溶媒を適宜用いることができ、例えば、イソプロパノール等のアルコール類;メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、ブチルジグリコール等のエーテルアルコール類;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、ジアセトンアルコール等のケトン類、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸メトキシエチル等のエステル類;アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル等のアクリル酸エステル類、2,2,3,3−テトラフルオロプロパノール等のフッ化アルコール類;ヘキサン、ベンゼン、トルエン、キシレン等の炭化水素類;メチレンジクロライド、ジクロロエタン、クロロホルム等の塩素化炭化水素類等が挙げられる。これらの有機溶媒は、単独で又は混合して用いることができる。
また、上記の下塗り層、反射防止層、ハードコート層、潤滑層、フィルター層、粘着剤層等は、一般的な塗布方法により形成することができる。塗布方法としては、ディップコート法、エアーナイフコート法、カーテンコート法、ローラーコート法、ワイヤーバーコート法、グラビアコート法、ホッパーを使用するエクストルージョンコート法(米国特許第2681294号明細書記載)等が挙げられる。二以上の層を同時塗布により形成してもよい。同時塗布法については、米国特許第2761791号、米国特許第2941898号、米国特許第3508947号、米国特許第3526528号の各明細書及び原崎勇次著「コーティング工学」253頁(1973年朝倉書店発行)に記載がある。
例えば本発明のシアニン化合物を光学フィルターに含有させるに際し、前記(1)の方法で任意の各層に含有させる場合、前記(2)の方法でコーティングする場合、前記(3)の方法で粘着剤層に含有させる場合、又は前記(4)の方法で光吸収層を設ける場合は、例えば、本発明のシアニン化合物、有機溶媒及びその他のバインダー成分、各種添加剤等を含む塗工液を調製し、該塗工液を上記の塗布方法により透明支持体又は任意の各層等に塗布することにより、所望の構成の光学フィルターを得ることができる。
本発明の光学フィルターの作成において、本発明のシアニン化合物、有機溶媒及びその他のバインダー成分、各種添加剤等を含む塗工液の固形分中の本発明のシアニン化合物の含有量は、0.1〜5質量%、特に0.1〜1.0質量%であるのが好ましい。
また、前記(1)の方法で本発明のシアニン化合物を透明支持体に含有させる場合、常法により、本発明のシアニン化合物を透明支持体材料に配合してなる樹脂組成物を調製してペレットとし、該ペレットを薄板に成形すればよい。上記樹脂組成物中における本発明のシアニン化合物の含有量は、0.01〜0.1質量%が好ましい。
以下、実施例、評価例をもって本発明を更に詳細に説明する。しかしながら、本発明は以下の実施例等によって何ら制限を受けるものではない。
尚、実施例1〜4は、本発明のシアニン化合物の実施例(合成例)を示し、実施例5〜11は、本発明のシアニン化合物を含有する光学フィルターの実施例(作成例)を示す。また、評価例1及び2では、本発明のシアニン化合物を含有する光学フィルターを作製し、該光学フィルターを試験片として用いて、本発明のシアニン化合物の耐熱性及び耐湿熱性の評価(評価例1)並びに耐光性の評価(評価例2)を行った。
[実施例1〜4]化合物No.1〜No.3及びNo.5の四フッ化ホウ酸塩の合成
前記〔化11〕に示した反応式に従い、下記<ステップ1>及び<ステップ2>の手順で本発明のシアニン化合物を合成した。
<ステップ1>中間体アルデヒドの製造
窒素置換した反応フラスコに、ジメチルホルムアミド0.12モルを仕込み、50℃で該当するフェニル酢酸クロリド0.08モルを滴下した。70℃まで昇温してオキシ塩化リン0.24モルを滴下し、70℃で3時間撹拌した。室温まで冷却し、氷70.1gを加え、続いて炭酸カリウムをpH10になるまで加えた。トルエン70.1gを加え、3時間加熱還流した。室温まで冷却し、油層を飽和食塩水でpH7になるまで洗浄した。硫酸ナトリウムによる乾燥後、溶媒を留去し、目的の中間体アルデヒドを得た。
<ステップ2>化合物No.1〜No.3及びNo.5の四フッ化ホウ酸塩の合成
窒素置換した反応フラスコに、該当するインドレニン四級塩0.03モル、ステップ1で得られた中間体アルデヒド0.015モル、酢酸ナトリウム0.027モル及びメタノール48.5gを加えて撹拌した。無水酢酸0.12モルを滴下し、3時間加熱還流を行った。室温まで冷却し、析出物をろ過してクロロホルム/メタノールから再結晶し、得られた固体をろ過し、メタノールによる洗浄、乾燥を経て、化合物No.1〜No.3及びNo.5の四フッ化ホウ酸塩をそれぞれ得た。得られた化合物について、各種分析を行った。得られた化合物の同定は、IR分析及び1H−NMR分析により行った。分析結果を〔表1〕〜〔表3〕に示す。
〔実施例5〕光学フィルターの作成1
下記の配合にて塗工液を調製し、易密着処理した188μm厚のポリエチレンテレフタレートフィルムに、該塗工液をバーコーター#30により塗布した後、100℃で10分間乾燥させ、ポリエチレンテレフタレートフィルム上に膜厚10μmのフィルム層を有する光学フィルター(シアニン化合物の含有量2.0mg/m2)を得た。この光学フィルターについて、日本分光社製紫外可視近赤外分光光度計V−570で吸収スペクトルを測定したところ、λmaxが861.5nmで半値幅が170nmであった。
(配合)
スミペックス LG 2.5g
(住友化学社製アクリル系樹脂バインダー、樹脂分40質量%)
化合物No.1の四フッ化ホウ酸塩 2.0mg
メチルエチルケトン 2.5g
〔実施例6〕光学フィルターの作成2
化合物No.1の四フッ化ホウ酸塩に代えて化合物No.2の四フッ化ホウ酸塩を用いた以外は実施例5と同様にして光学フィルターを作成し、得られた光学フィルターについて、日本分光社製紫外可視近赤外分光光度計V−570で吸収スペクトルを測定したところ、λmaxは866nm、半値幅は194nmであった。
〔実施例7〕光学フィルターの作成3
化合物No.1の四フッ化ホウ酸塩に代えて化合物No.3の四フッ化ホウ酸塩を用いた以外は実施例5と同様にして光学フィルターを作成し、得られた光学フィルターについて、日本分光社製紫外可視近赤外分光光度計V−570で吸収スペクトルを測定したところ、λmaxは857.5nm、半値幅は236nmであった。
〔実施例8〕光学フィルターの作成4
化合物No.1の四フッ化ホウ酸塩に代えて化合物No.5の四フッ化ホウ酸塩を用いた以外は実施例5と同様にして光学フィルターを作成し、得られた光学フィルターについて、日本分光社製紫外可視近赤外分光光度計V−570で吸収スペクトルを測定したところ、λmaxは859.5nm、半値幅は223nmであった。
〔実施例9〕光学フィルターの作成5
化合物No.1の四フッ化ホウ酸塩に代えて化合物No.1のビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド塩を用いた以外は実施例5と同様にして光学フィルターを作成し、得られた光学フィルターについて、日本分光社製紫外可視近赤外分光光度計V−570で吸収スペクトルを測定したところ、λmaxは873.5nm、半値幅は188nmであった。尚、化合物No.1のビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド塩は、実施例1における化合物No.1の四フッ化ホウ酸塩の合成方法に準じて合成した。
〔実施例10〕光学フィルターの作成6
下記の配合にて粘着剤溶液を調製し、易密着処理した188μm厚のポリエチレンテレフタレートフィルムに、該粘着剤溶液をバーコーター#90により塗布した後、100℃で10分間乾燥させ、ポリエチレンテレフタレートフィルム上にフィルム上に厚さ約10μmの粘着剤層を有する光学フィルター(シアニン化合物の含有量2.0mg/m2)を得た。この光学フィルターについて、日本分光社製紫外可視近赤外分光光度計V−570で測定したところ、λmaxが861.5nmで半値幅が170nmであった。
(配合)
化合物No.1の四フッ化ホウ酸塩 2.0mg
アクリル系粘着剤(デービーボンド5541:ダイアボンド社製) 20g
メチルエチルケトン 80g
〔実施例11〕光学フィルターの作成7
下記の配合をプラストミルで260℃にて5分間溶融混練した。混練後、直径6mmのノズルから押出し水冷却ペレタイザーで色素含有ペレットを得た。このペレットを、電気プレスを用いて250℃で0.25mm厚の薄板(シアニン化合物の含有量2.0mg/m2)に成形した。この薄板について、日本分光社製紫外可視近赤外分光光度計V−570で吸収スペクトルを測定したところ、λmaxが861.5mで半値幅が170nmであった。
(配合)
ユーピロンS−3000 100g
(三菱瓦斯化学社製;ポリカーボネート樹脂)
化合物No.1の四フッ化ホウ酸塩 0.01g
〔実施例10〕光学フィルターの作成8
下記の配合にてUVワニスを作成し、易密着処理した188μm厚のポリエチレンテレフタレートフィルムに、該UVワニスをバーコーター#9により塗布した後、80℃で30秒間乾燥させた。その後、赤外線カットフィルムフィルター付き高圧水銀灯にて紫外線を100mJ照射し、硬化膜厚約5μmのフィルター層を有する光学フィルター(シアニン化合物の含有量2.0mg/m2)を得た。この光学フィルターについて、日本分光社製紫外可視近赤外分光光度計V−570で吸収スペクトルを測定したところ、λmaxが861.5nmで半値幅が170nmであった。
(配合)
アデカオプトマーKRX−571−65 100g
(ADEKA社製UV硬化樹脂、樹脂分80質量%)
化合物No.1の四フッ化ホウ酸塩 0.5g
メチルエチルケトン 60g
〔評価例1〕耐熱性及び耐湿熱性評価
化合物No.1〜No.3及びNo.5の四フッ化ホウ酸塩並びに化合物No.1のビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド塩、並びに下記[化13]に示す比較化合物について、耐熱性及び耐湿熱性を評価した。評価用試験片としては、以下の手順で作製した光学フィルターを使用した。
即ち、先ず、スミペックスLG(住友化学社製アクリル系バインダー、樹脂分40質量%)1.25g、メチルエチルケトン:トルエン=1:1混合溶媒5.0g、並びに〔表4〕に記載のシアニン化合物及びジイモニウム化合物(下記[化14]に示す)を混合して塗工液を調製した。次に、易密着処理した188μm厚のポリエチレンテレフタレートフィルムに、該塗工液をバーコーター#30により塗布した後、100℃で10分間乾燥させ、塗工面に0.9mm厚のガラスを張り合わせ、70℃で15分間乾燥して、粘着剤層(膜厚7〜8μm)を有する光学フィルターを得た。ただし、シアニン化合物の配合量は、透過率の値が同じになるように最適化した。尚、得られたそれぞれの光学フィルターにおいて、シアニン化合物及びジイモニウム化合物の単位面積(m2)当たりの含有量は、表4に記載の配合量(mg)と一致していた(即ち、例えば評価例1−1の光学フィルターは、シアニン化合物含有量3.5mg/m2、ジイモニウム化合物含有量15mg/m2)。
<耐熱性評価>
上記で得られた光学フィルターそれぞれについてUV吸収スペクトルのλmaxでの透過率を測定し、次いで、80℃の恒温槽に500時間放置した後、再度UV吸収スペクトルのλmaxでの透過率を測定し、放置前の透過率を100としたときの放置後の透過率の割合を求めて耐熱性評価とした。結果を〔表4〕に示す。
<耐湿熱性評価>
上記で得られた光学フィルターそれぞれについてUV吸収スペクトルのλmaxでの透過率を測定し、次いで、60℃/90%RHの恒温恒湿環境下に調整した恒温恒湿槽に500時間放置した後、再度UV吸収スペクトルのλmaxでの透過率を測定し、放置前の透過率を100としたときの放置後の透過率の割合を求めて耐湿熱性評価とした。
結果を〔表4〕に示す。
本発明のシアニン化合物は、単独でも十分に良好な耐熱性を有している(評価例1−6、1−7)。本発明のシアニン化合物は、ジイモニウム化合物と併用すると、耐熱性が極めて高く(評価例1−1〜1−5)、比較化合物No.1(ナフトラクタム構造を有さないが同様のλmaxを示す従来公知の化合物であるヘプタメチンシアニン化合物)及び比較化合物No.2(ナフトラクタム構造を有さない従来公知の化合物であるペンタメチンシアニン化合物;λmax=690nm)をジイモニウム化合物と併用した場合(比較評価例1−1、1−3)に比べて約1.1倍の耐熱性を示した。また、耐湿熱性についても、耐熱性と同様の傾向を示した。
[評価例2]耐光性評価
上記評価例1と同様にして光学フィルターを作製し(〔表5〕参照)、得られた光学フィルターそれぞれについて、UV吸収スペクトルのλmaxでの透過率を測定し、次いで、55000ルクスの光を300時間照射した後、再度UV吸収スペクトルのλmaxでの透過率を測定し、照射前の透過率を100としたときの照射後の透過率の割合を求めて耐光性評価とした。結果を[表5]に示す。
比較化合物は、ジイモニウム化合物を併用すると耐光性が認められる(比較評価例2−1及び2−3)が、単独では耐光性を示さない(比較評価例2−2及び2−4)。これに対し、本発明のシアニン化合物は、単独でも良好な耐光性が認められ(評価例2−6〜2−10)、ジイモニウム化合物を併用すると極めて良好な耐光性を示す(評価例2−1〜2−5)。本発明のシアニン化合物を単独で使用した場合(評価例2−6〜2−10)、耐光性は比較化合物(比較評価例2−2及び2−4)に比べ10倍以上であった。
以上の実施例、評価例及び比較評価例から、本発明のシアニン化合物を含有する本発明の光学フィルターは、750〜1100nmの波長の光に対して有効であり、且つ実用に耐えうる耐熱性、耐湿熱性、耐光性を有し、特に耐光性に優れることが分かる。