JP5428545B2 - 全固体電池システム - Google Patents
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Description
以下、本発明の全固体電池システムについて、構成ごとに説明する。
本発明における全固体電池は、正極活物質を含有する正極活物質層と、負極活物質を含有する負極活物質層と、上記正極活物質層および上記負極活物質層の間に形成された固体電解質層とを有するものである。
(1)正極活物質層
まず、本発明における正極活物質層について説明する。本発明における正極活物質層は、Mo6S8−x(0≦x≦0.2)で表されるシュブレル化合物を正極活物質として含有する層である。さらに、正極活物質層は、必要に応じて、固体電解質材料および導電化材の少なくとも一方を含有していても良い。中でも、本発明においては、正極活物質層が、固体電解質材料として硫化物固体電解質材料を含有することが好ましい。出力特性に優れた全固体電池を得ることができるからである。
本発明における正極活物質は、Mo6S8−x(0≦x≦0.2)で表されるシュブレル化合物である。シュブレル(Chevrel)化合物とは、一般的には、三元モリブデン・カルコゲナイトであって、一般式MxMo6X8−y(M=金属、X=S、Se、Te)で表されるものをいう。これに対して、本発明におけるシュブレル化合物とは、Mo6S8−x(0≦x≦0.2)で表されるものであって、一般的なシュブレル化合物に類似した結晶構造を有するものをいう。本発明において、Mo6S8−xのxは、0≦x≦0.1であることが好ましい。特に、本発明においては、正極活物質がMo6S8であることが好ましい。より出力特性に優れた全固体電池を得ることができるからである。また、本発明におけるシュブレル化合物は、例えば、一般的なシュブレル化合物(例えばCu2Mo6S8)を還元することにより得ることができる。
本発明における正極活物質層は、上述した正極活物質に加えて、固体電解質材料を含有することが好ましい。正極活物質層におけるイオン伝導性が向上するからである。特に、本発明においては、正極活物質層に含まれる固体電解質材料が、硫化物固体電解質材料であることが好ましい。本発明における正極活物質(Mo6S8−x(0≦x≦0.2)で表されるシュブレル化合物)は、硫化物固体電解質材料と反応しにくく、高抵抗層の発生を抑制できるからである。
本発明における正極活物質層は、さらに導電化材を含有していても良い。導電化材の添加により、正極活物質層の導電性を向上させることができる。導電化材としては、例えばアセチレンブラック、ケッチェンブラック、カーボンファイバー等を挙げることができる。また、正極活物質層における導電化材の含有量は、特に限定されるものではないが、例えば0.1重量%〜20重量%の範囲内であることが好ましい。また、正極活物質層の厚さは、目的とする全固体電池の種類によって異なるものであるが、例えば1μm〜100μmの範囲内であることが好ましい。
次に、本発明における固体電解質層について説明する。本発明における固体電解質層は、正極活物質層および負極活物質層の間に形成される層である。固体電解質層に用いられる固体電解質材料は、イオン伝導性を有するものであれば特に限定されるものではないが、中でも、硫化物固体電解質材料であることが好ましい。出力特性に優れた全固体電池を得ることができるからである。また、固体電解質層における硫化物固体電解質材料の含有量は多いことが好ましく、特に本発明においては、固体電解質層が、硫化物固体電解質材料のみから構成されていることが好ましい。より出力特性に優れた全固体電池を得ることができるからである。固体電解質層に用いられる固体電解質材料については、上記「(1)正極活物質層」で記載した内容と同様であるので、ここでの記載は省略する。また、本発明における固体電解質層の厚さは、例えば0.1μm〜1000μmの範囲内、中でも0.1μm〜300μmの範囲内であることが好ましい。
次に、本発明における負極活物質層について説明する。本発明における負極活物層は、少なくとも負極活物質を含有する層である。本発明においては、正極活物質であるシュブレル化合物が、Liイオン等の伝導イオンを含有していないため、通常、負極活物質が伝導イオンとなる金属元素を有する。例えば、本発明における全固体電池が全固体リチウム電池である場合、負極活物質がLi元素を有する。Li元素を有する負極活物質としては、例えば、Li金属、Li合金、Li酸化物、Li窒化物等を挙げることができる。Li元素を有する合金としては、例えば、Li−In合金、Li−Al合金、Li−Sn合金、Li−Pb合金、Li−Si合金等を挙げることができる。また、Li元素を含有する酸化物としては、例えば、Li−Ti酸化物等を挙げることができる。また、Li元素を含有する窒化物としては、例えば、Li−Co窒化物、Li−Fe窒化物、Li−Mn窒化物等を挙げることができる。
本発明における全固体電池は、上述した正極活物質層、固体電解質層および負極活物質層を少なくとも有するものである。さらに通常は、正極活物質層の集電を行う正極集電体、および負極活物質の集電を行う負極集電体を有する。正極集電体の材料としては、例えばSUS、アルミニウム、ニッケル、鉄、チタンおよびカーボン等を挙げることができ、中でもSUSが好ましい。一方、負極集電体の材料としては、例えばSUS、銅、ニッケルおよびカーボン等を挙げることができ、中でもSUSが好ましい。また、正極集電体および負極集電体の厚さや形状等については、全固体電池の用途等に応じて適宜選択することが好ましい。また、本発明に用いられる電池ケースには、一般的な全固体電池の電池ケースを用いることができる。電池ケースとしては、例えばSUS製電池ケース等を挙げることができる。また、本発明の全固体電池は、発電要素を絶縁リングの内部に形成したものであっても良い。
本発明における全固体電池の種類としては、全固体リチウム電池、全固体ナトリウム電池、全固体マグネシウム電池および全固体カルシウム電池等を挙げることができ、中でも、全固体リチウム電池および全固体ナトリウム電池が好ましく、特に、全固体リチウム電池が好ましい。また、本発明における全固体電池は、一次電池であっても良く、二次電池であっても良いが、中でも、二次電池であることが好ましい。繰り返し充放電でき、例えば車載用電池として有用だからである。本発明における全固体電池の形状としては、例えば、コイン型、ラミネート型、円筒型および角型等を挙げることができ、中でも角型およびラミネート型が好ましく、特にラミネート型が好ましい。
次に、本発明における加温手段について説明する。本発明における加温手段は、上記全固体電池を80℃以上に加温する手段である。本発明においては、全固体電池を100℃以上に加温することが好ましい。温度が低すぎると、高電流密度における容量が小さくなるからである。一方、本発明においては、全固体電池を500℃以下に加温することが好ましく、360℃以下に加温することがより好ましい。温度が高すぎると、Liイオン伝導性の観点からは好ましいものの、固体電解質材料の劣化が顕著になるからである。
本発明の全固体電池システムは、上述した全固体電池および加温手段を有するものであれば特に限定されるものではない。中でも、本発明の全固体電池システムは、高電流密度で作動させるものであることが好ましい。作動時の電流密度は、例えば0.1mA/cm2〜1000mA/cm2の範囲内、中でも1mA/cm2〜100mA/cm2の範囲内であることが好ましい。また、上述した全固体電池の使用方法においては、上記範囲の電流密度で作動させることが好ましい。
(Mo6S8の合成)
Cu2Mo6S8(日本無機化学工業株式会社製)を、6MのHCl中で1週間撹拌し、その後、ろ過し、真空下150℃で乾燥することにより、Mo6S8を得た。得られたMo6S8および原料であるCu2Mo6S8に対して、XRD測定を行った。その結果を図3に示す。これにより、Mo6S8結晶が得られていることが確認された。
出発原料として、硫化リチウム(Li2S)と五硫化リン(P2S5)とを用いた。これらの粉末をアルゴン雰囲気下のグローブボックス内で、Li2S:P2S5=70:30(モル比)となるように秤量し、メノウ乳鉢で混合し、原料組成物を得た。次に、得られた原料組成物1gを45mlのジルコニアポットに投入し、さらにジルコニアボール(Φ10mm、10個)を投入し、ポットを完全に密閉した。このポットを遊星型ボールミル機に取り付け、回転数370rpmで40時間メカニカルミリングを行った。その後、290℃で1時間熱処理を行うことにより、Li7P3S11を得た。
上記の方法で得られたMo6S8およびLi7P3S11を用い、不活性雰囲気下で、全固体リチウム二次電池を作製した。まず、プレス機を用いて、図4に示すような発電要素Aを作製した。ここで、正極活物質層1を構成する材料として、Mo6S8(6mg)およびLi7P3S11(9mg)の合材を用いた。さらに、負極活物質層2を構成する材料として、箔状のLi−In合金を用いた。このLi−In合金は、厚さ300μmのIn箔に、厚さ200μmのLi箔を貼り合わせたものである。また、固体電解質層3を構成する材料としてLi7P3S11(80mg)を用いた。
正極活物質として、Mo6S8の代わりに、Cu2Mo6S8を用いたこと以外は、作製例1と同様にして、全固体リチウム二次電池を得た。
作製例1で得られた全固体リチウム二次電池を用いて充放電評価を行った。充放電条件は、まず、100℃で12.8mA/cm2の電流密度で0VまでCV放電を行い、その後、同じ条件で0V−3Vの範囲で充放電を行った。
作製例2で得られた全固体リチウム二次電池を用いたこと以外は、実施例1と同様にして充放電評価を行った。
充放電時の温度を、60℃に変更したこと以外は、実施例1と同様にして充放電評価を行った。
充放電時の温度を、25℃に変更したこと以外は、実施例1と同様にして充放電評価を行った。
実施例1および比較例1〜3の初回充放電における充放電曲線を図5に示す。図5に示されるように、実施例1および比較例1では、12.8mA/cm2の高い電流密度で、100mAh/gを超える高い容量を示すことが確認された。これに対して、比較例2、3では、いずれも100mAh/g未満の容量しか得られなかった。これは、実施例1および比較例1で用いたシュブレル化合物の結晶構造が安定なため、シュブレル化合物と硫化物固体電解質材料とが反応してなる高抵抗層の発生を抑制できたためであると考えられる。
2 … 負極活物質層
3 … 固体電解質層
10 … 全固体電池
11 … 発熱体
12 … 温度検知部
13 … 制御部
20 … 全固体電池システム
Claims (3)
- 正極活物質を含有する正極活物質層、負極活物質を含有する負極活物質層、並びに、前記正極活物質層および前記負極活物質層の間に形成された固体電解質層を有する全固体電池と、前記全固体電池作動時に、前記全固体電池を80℃以上に加温する加温手段とを有し、
前記正極活物質が、Mo6S8−x(0≦x≦0.2)で表されるシュブレル化合物であり、
前記正極活物質層および前記固体電解質層の少なくとも一方が、硫化物固体電解質材料を含有することを特徴とする全固体電池システム。 - 前記正極活物質が、Mo6S8であることを特徴とする請求項1に記載の全固体電池システム。
- 前記硫化物固体電解質材料が、Li2S−P2S5材料であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の全固体電池システム。
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