JP5426098B2 - 潤滑剤組成物 - Google Patents

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Description

本発明は潤滑剤組成物に関し、詳しくはフッ素オイルやフッ素グリースと好適であり、優れた防錆性を有する潤滑剤組成物に関する。
フッ素系潤滑剤は、自動車、電気機器、建設機械、情報機器、産業機械、工作機械等の各種機械及びそれらを構成する各部品の潤滑に広く使われている。近年、これらの機械の高速化、小型化、高性能化、軽量化に伴い、これら周辺機器の温度はますます上昇する傾向にある。
また沿岸部での機器使用や、部品の海外輸送時の錆防止効果を潤滑剤に要求したり、さらに生産効率向上やメンテナンス間隔の低減等の理由から低摩擦・耐摩耗の要求や、触媒作用をもつ部材との接触環境下で安定して使用したいとの理由から、特に防錆特性が求められている。
特許文献1では、高温での耐久性に加えて、錆止め性能にも優れた転がり軸受用にフッ素グリース組成物を開発しており、グリース組成物に、マグネシウム化合物および気化性防錆剤を添加している。実施例をみると、用いている気化性防錆剤として主にベンゾトリアゾールを使用しており、確かに防錆性能を付与することには成功しているが、使用している気化性防錆剤ベンゾトリアゾールは熱劣化し易く、高温で使用すると潤滑剤そのものの寿命を低下させる要因になる。またフッ素オイルヘの溶解性が低いため、フッ素オイルヘの転用もできない。
特許文献2では、フッ素オイルヘの溶解性の高い添加剤として,カルボキシル基、アミド誘導体が開示されている。確かにカルボキシル基、アミド基は金属保護膜を作り,防錆性能を向上させるが、熱安定性に欠けるため、高温下で使用すると、防錆効果を持続的に発揮することができない。
特許文献3では、低温から高温までの使用用途で、防錆用添加剤としてセバシン酸ジナトリウム、炭酸ナトウム、ペルフルオロポリエーテル鎖を含有するカルボン酸誘導体を添加したフッ素グリースが開示されている。確かにこれらの添加剤によって防錆性能を向上できるものの、フッ素オイルヘの溶解性、耐熱性の見地から、高温用のフツ素オイル、グリース用途として十分ではない。
特許文献4では、アリ−ルトリアジン末端基を有するパーフルオロポリエーテル鎖を含有する化合物により、防錆性を付与している。
しかしながら、該化合物の合成プロセスは3段階あり、工業規模へのスケールアップには向いていない。
また、例えば実施例1の化合物を得るためのトリクロロトリアジンとHOCHCF(OCF(OCFCFOCFCHOHとの反応においては、複数の副生成物が生じやすいため、反応条件を厳密に制御する必要があり、目的物を収率よく得るのが困難である。
特開平9−59664号公報 特許第2818242号公報 特開2006−348291号公報 特開2006−290892号公報
そこで、本発明の課題は、フッ素オイルやフッ素グリースと好適であり、耐熱性を有しながら優れた防錆性を有する潤滑剤組成物を提供することにある
本発明の他の課題は以下の記載によって明らかになる。
上記課題は以下の各発明によって解決される。
下記一般式(I)で示される含フッ素ジアミド化合物潤滑油に溶解させて、当該潤滑油に防錆性を付与することを特徴とする防錆性付与方法
一般式(I)

〔式中、Yは酸素原子(O)、硫黄原子(S)、CO基、SO基又はSO基を表わし、kは1〜5の整数であり、mは0〜10の整数であり、nは1以上の整数である。フェニル基に有する2つの置換基の置換位置は、オルト位、メタ位、パラ位の何れでも良い。〕
(請求項2)
前記一般式(I)において、Yは酸素原子(O)又は硫黄原子(S)である請求項1記載の防錆性付与方法
(請求項3)
前記潤滑油が、動粘度(40℃)5〜2000mm/sのパーフルオロポリエーテル油を含む請求項1又は2記載の防錆性付与方法
(請求項4)
前記潤滑油が、増稠剤を含む請求項1、2又は3記載の防錆性付与方法
(請求項5)
前記増稠剤が、平均一次粒径0.01〜50μmの微粒子であり、その粒子がフッ素樹脂、シリカ、グラファイト、カーボンから選ばれる少なくとも1種を含む請求項4記載の防錆性付与方法
(請求項6)
前記増稠剤が、金属石けん、金属複合石けん、ウレア、脂肪族ジカルボン酸金属塩から選ばれる少なくとも1種を含む請求項4又は5記載の防錆性付与方法
(請求項7)
前記潤滑油が、軸受、ギヤ、リニアガイド又は磁気ディスクに使用される請求項1〜6の何れかに記載の防錆性付与方法
(請求項8)
前記潤滑油として、下記(A−1)〜(A−4)の何れかのパーフルオロポリエーテル油に防錆性を付与することを特徴とする請求項1〜7の何れかに記載の潤滑油の防錆性付与方法。
(A−1)
RfO(CF CF O) (CF O) Rf
〔式中、Rfは、パーフルオロ低級アルキル基を表す。〕
(A−2)
RfO〔CF(CF )CF O〕 (CF O) Rf
〔式中、Rfは、パーフルオロ低級アルキル基を表す。〕
(A−3)
RfO〔CF(CF )CF O〕 Rf
〔式中、Rfは、パーフルオロ低級アルキル基を表す。〕
(A−4)
F〔CF CF CF O〕 Rf
〔式中、Rfは、パーフルオロ低級アルキル基を表す。〕
本発明によれば、フッ素オイルやフッ素グリースと好適であり、優れた防錆性を有する潤滑剤組成物を提供することができる。
以下、本発明の実施の形態を説明する。
本発明の潤滑剤組成物は、上記一般式(I)で示される含フッ素ジアミド化合物(添加剤)と、潤滑油(基油)とからなる。
<一般式(I)で示される含フッ素ジアミド化合物>
一般式(I)中、Yは酸素原子(0)、硫黄原子(S)、CO基、SO基又はSO基を表わし、好ましくは酸素原子(0)又は硫黄原子(S)である。
kは1〜5の整数であり、好ましくは1〜3の整数である。
mは0〜10の整数であり、1〜5の範囲が好ましく、さらに好ましくは1又は2である。mが10を越えると、添加剤の粘度が高くなり,目的としている基油に溶けなくなる。
nは1以上の整数であり、好ましくは2〜40の範囲である。nが1未満では高温度域で蒸発量が多くなるが、防錆効果の高さは変わらない。また、基油に溶け込まないという問題がある。
フェニル基に有する2つの置換基の置換位置は、オルト位、メタ位、パラ位の何れでも良い。
前記化合物を添加することで高い防錆効果を得られるため、合成油を基油とした潤滑剤に一般に用いられる添加剤のうち、防錆剤を省くことも可能である。
上記一般式(I)で示される含フッ素ジアミド化合物は、例えば下記一般式(II)で示される酸フロライド体と、下記一般式(III)で示されるジアミノ基を有する化合物を、ピリジン溶媒中で反応させて合成することができる。
一般式(II)
式中、nは1以上の整数であり、好ましくは2〜40の範囲である。
一般式(III)
式中、Yは酸素原子(0)、硫黄原子(S)、CO基、SO基又はSO基を表わし、好ましくは酸素原子(0)又は硫黄原子(S)である。
mは0〜10の整数であり、1〜5の範囲が好ましく、さらに好ましくは1又は2である。
フェニル基に有する2つの置換基の置換位置は、オルト位、メタ位、パラ位の何れでも良い。
上記合成方法は、ピリジン溶媒中で反応を行うため、フッ化ナトリウム同様のフッ化水素トラップ能を有し、低毒性な物質(ピリジン)を用いているので、フッ化ナトリウムのような問題はない。
ピリジン毒性及び特性は以下の通りである。
経口ラット毒性:LD50 890mg/kg
常温において液体(融点−42℃、沸点115.5℃)
溶媒であるピリジンは、単独である必要はなく、原料化合物や反応生成物の溶解性向上のため、他の有機溶媒を併用しても良い。
一般式(III)で示されるジアミノ基を有する化合物としては、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼンなどが挙げられ、かかる1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼンは、CAS No.10526−07−5、2479−46−1、3491−12−1、等の市販品から入手できる。
また上記のジアミノ基を有する化合物は、m=2以上の芳香族ポリエーテルでもよく、更に、各々のエーテル結合原子O(酸素原子)をCO、S、SO、SOに置き換えた化合物(例えば、CAS No.141699−34−5、60191−34−6、17619−11−3)でもよい。
なお、上記合成方法は、一般式(I)で示される化合物において、kが3である場合の方法であるが、kが異なった酸フロライド体を用いても同様に合成できる。その場合にも、ピリジン溶媒を用いることが重要である。
<潤滑油>
本発明における潤滑油(必要により以下、基油という場合がある。)としては、下記一般式(IV)で示されるパーフルオロポリエーテル油を好ましく用いることができる。
一般式(IV)
RfO(CFO)(CO)g(CO)Rf
上記式中、Rfはパーフルオロメチル基、パーフルオロエチル基などの炭素数1〜5のパーフルオロ低級アルキル基を表わす。
一般式(IV)で示されるパーフルオロポリエーテル油の中でも、下記一般式(V)〜一般式(VIII)のパーフルオロポリエーテル油が具体的な化合物として挙げられる。
一般式(V)
RfO[CF(CF)CFO]Rf
上記式中、Rfは前記定義と同じであり、iは2〜200の整数である。
一般式(V)で示されるパーフルオロポリエーテル油は、へキサフルオロプロピレンの光酸化重合で生成した先駆体を完全にフッ素化することにより、あるいはフッ化セシウム触媒下に、ヘキサフルオロプロピレンをアニオン重合させ、得られた末端CF(CF)COF基を有する酸フロライド化合物をフッ素ガスで処理することによって得られる。
一般式(VI)
F(CFCFCF2〜100CFCF
この一般式(VI)で示されるパーフルオロポリエーテル油は、フッ化セシウム触媒の存在下に2,2,3,3−テトラフルオロオキセタンをアニオン重合させ、得られた含フッ素ポリエーテル(CFCFCFO)nを160〜300℃の紫外線照射下のもと、フッ素ガス処理することにより得られる。
一般式(VII)
RfO(CFCFO)(CFO)Rf
上記式中、Rfは前記定義と同じであり、j+k=3〜200であり、j:k=10:90〜90:10でランダムに結合している。
一般式(VII)で示されるパーフルオロポリエーテル油は、テトラフルオロエチレンの光酸化重合で生成した先駆体を完全にフッ素化することにより得られる。
一般式(VIII)
RfO[CF(CF)CFO](CFO)Rf
上記式中、Rfは前記定義と同じであり、l+m=3〜200、l:m=10:90でランダムに結合している。
一般式(VIII)で示されるパーフルオロポリエーテル油は、へキサフルオロプロペンの光酸化重合で生成した先駆体を完全にフッ素化することにより得られる。
これらのパーフルオロポリエーテル油(基油)は、単独で、あるいは混合しても用いることができる。
本発明において、好ましいパーフルオロポリエーテル油は、潤滑油として用いる場合には、動粘度(40℃)5〜2000mm/sのパーフルオロポリエーテル油である。ここで動粘度の測定方法は、JIS K−2283準拠による(キャノン−フェンスケ粘度計)。
5mm/s未満のものは蒸発量が多く、耐熱用のグリースの規則であるJIS転がり軸受用グリース3種で規定されている蒸発量(1.5%以下)という条件を満たさなくなる。一方、2000mm/sを越えると、流動点(JIS K−2283)が10℃以上となり、通常の方法では低温起動時にベアリングが回転せず、それを使用可能とするには加熱する必要があり、一般的なグリースとしては使用適格を欠くようになる。粘度(40℃)のより好ましい範囲は、約10〜1500mm/sである。
<配合比>
上記のようなパーフルオロポリエーテル油(基油)と一般式(I)で示される新規な一級アミン誘導体である含フッ素アミド化合物を含む組成物は、組み合わせが新規なものである。
含フッ素アミド化合物の配合率は、潤滑剤組成物(オイル組成物)全体の0.1〜20質量%用いることができ、特に、0.5〜5質量%が望ましい。0.1質量%未満の場合、潤滑剤としての十分な効果が得られない。また、20質量%を越えると、コストパフォーマンスに見合った性能が発揮できない。
<その他の基油>
本発明の潤滑剤組成物には、上述のパーフルオロポリエーテル油以外の基油を混合することができる。ただし、オイルとしては、パーフルオロポリエーテル油と混合しても分離してしまうため、そのままでは使用できない。この場合、後述の増稠剤を配合し、グリースとして使用する。
パーフルオロポリエーテル油以外の油の種類は、特に制限されないが、ポリーα−オレフイン、エチレン−α−オレフイン共重合体、ポリブテン、アルキルベンゼン、アルキルナフタレンに代表される炭化水素系合成油、ポリアルキレングリコール、各種フェニルエーテル油、モノエステル、ジエステル、ポリオールエステル(ネオペンチルグリコールエステル、トリメチロールプロパンエステル、ペンタエリスリトールエステル、ジペンタエリスリトールエステル、コンプレックスエステル等)、芳香族エステル、炭酸エステルなどのエステル油、各種シリコーン油、各種フッ素油などの合成油、パラフィン系鉱油、ナフテン系鉱油、あるいは、これらを溶剤精製、水素化精製などを適宜組み合わせて精製した鉱油などの少なくとも1種を用いることができる。
これらのパーフルオロポリエーテル油以外の各種潤滑油基油の種類、および、性状については特に制限がなく、使用条件に応じて適宜選択し得る。
潤滑油(基油)の種類は、鉱油よりも耐熱性の優れる合成油が好ましく、さらに好ましくはエステル油を主成分とすることが好ましい。
また、性状について、一般には、動粘度(40℃)が約2〜1,000mm/s、好ましくは、約5〜500mm/sのものが用いられる。ここで動粘度の測定方法は、JIS K−2283準拠による(キャノン−フェンスケ粘度計)。
この範囲未満の動粘度のものを用いると、蒸発損失の増加や油膜強度の低下など寿命の低下や磨耗、焼きつきの原因となる可能性があり、一方、これ以上の動粘度のものを用いた場合には、粘性抵抗の増加など、消費動力やトルクが大きくなる不具合を生じる可能性がある。
<増稠剤>
本発明の潤滑剤組成物は、フッ素オイルとしても十分使用できうるものであるが、シール性を考慮した場合、グリースとしても有効である。この場合、増稠剤を配合する。
グリースとして使用される場合、増稠剤として、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロペン共重合体(FEP)、パーフルオロアルキレン樹脂等が用いられる。
ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)は、テトラフルオロエチレンの乳化重合、けん濁重合、溶液重合などの方法によって、数平均分子量Mnを約1,000〜1,000,000程度としたポリテトラフルオロエチレンを製造し、それを熱分解、電子線照射分解、物理的粉砕などの方法によって処理し、数平均分子量Mnを約1,000〜500,000程度としたものが用いられる。
また、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロペン共重合体(FEP)を製造する際の、テトラフルオロエチレンとへキサフルオロプロペンとの共重合反応および低分子量化処理も、ポリテトラフルオロエチレンの場合と同様にして行われ、数平均分子量を約1,000〜600,000程度としたものが用いられる。なお、分子量の制御は、共重合反応時に連鎖移動剤を用いて行うことができる。
得られた粉末状のフッ素樹脂は、一般に約500μm以下であり、好ましくは平均一次粒径0.01〜50μmの微粒子であり、より好ましくは0.1〜30μmの平均一次粒径を有する。
本明細書において、「平均一次粒径」における平均粒径は、電子顕微鏡で観察される粒子(100個以上)の一次粒径の算術平均である。一次粒径は、凝集していない最小単位の形でのポリテトラフルオロエチレン等の粒子の粒径であり、個々の粒子における直径の相対する2点間で測定可能な最大粒径を意味する。
本発明において、増稠剤としては、上記のフッ素樹脂粒子以外に、平均一次粒径0.01〜50μmの微粒子であるシリカ(二酸化珪素)、グラファイト、カーボン、更にはメラミンシアヌレート(MCA)、TiO(酸化チタン)又はBN(窒化ほう素)から選ばれる少なくとも1種を用いることも好ましいことである。
更に上記以外の増稠剤としては、Li石ケン等の金属石ケン,金属複合石ケン、ウレア樹脂、ベントナイト等の鉱物、有機顔料、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリアミドも使用できる。
耐熱性、潤滑性の面から考えると、脂肪族ジカルボン酸金属塩、モノアミドモノカルボン酸金属塩、モノエステルカルボン酸金属塩、ジウレア、トリウレア、テトラウレア等が望ましい。
<その他の添加剤>
本発明の目的が損なわれない範囲で、必要に応じ、一般的な合成油を基油とした潤滑剤に使用される流動点降下剤、無灰系分散剤、金属系清浄剤、酸化防止剤、腐食防止剤、消泡剤、耐磨耗剤、油性剤などの公知の添加剤を、用途に応じて添加することができる。
かかる添加剤を添加する際には、最終製品の耐熱性、低温流動性、軸受材との相性を阻害しないために、必要最少限とすることが望ましい。
流動点降下剤としては、例えば、ジ(テトラパラフィンフェノール)フタレート、テトラパラフィンフェノールの縮合生成物、アルキルナフタレンの縮合生成物、塩素化パラフィンーナフタレン縮合物、アルキル化ポリスチレンなどを挙げることができる。
無灰系分散剤としては、例えば、コハク酸イミド系、コハク酸アミド系、ベンジルアミン系、エステル系無灰分散剤などを挙げることができる。
金属系清浄剤としては、例えば、ジノニルナフタレンスルホン酸に代表される、スルホン酸金属塩、アルキルフノールの金属塩、サリチル酸金属塩などを挙げることができる。
酸化防止剤としては、例えば、2,6−ジ−t−ブチル4−メチルフェノール、4,4’−メチレンビス(2,6−ジ−t−ブチルフェノール)などのフェノール系や、アルキルジフェニルアミン(アルキル基は炭素数4〜20のもの)、トリフェニルジアミン、フェニル−α−ナフチルアミン、フェノチアジン、アルキル化フェニル−α−ナフチルアミン、フェニチアジン、アルキル化フェノチアジン等のアミン系酸化防止剤、リン系酸化防止剤、イオウ系酸化防止剤等などが挙げられ、単独、または2種以上を混合して用いることができる。
腐食防止剤としては、例えば、ベンゾイミダゾール、ベンゾトリアゾール、チアジアゾールなどを挙げることができる。
消泡剤としては、例えば、ジメチルポリシロキサンやポリアクリル酸、金属石ケン、脂肪酸エステル、リン酸エステルなどを挙げることができる。
耐摩耗剤としては、例えば、リン酸エステル、亜リン酸エステル、リン酸エステルアミン塩等のリン系化合物、スルフィド類、ジスルフィド類等の硫黄系化合物、塩素化パラフィン、塩素化ジフェニル等の塩素系化合物、及び、ジアルキルジチオリン酸亜鉛(ZnDTP)、ジアルキルジチオカルバミン酸モリブデン(MoDTP)等の有機金属化合物、等を挙げることができる。
油性剤としては、例えば、脂肪酸、高級アルコール、多価アルコール、多価アルコールエステル、脂肪族エステル、脂肪族アミン、脂肪酸モノグリセライドなどを挙げることができる。
以下に本発明の実施例を説明するが、本発明はかかる実施例によって限定されない。
実施例1
1,4−ビス(4アミノフェノキシ)ベンゼン29.5gを、ピリジン200mlに溶解し、氷浴上にて酸フロライド(n=1)124gをゆっくり滴下し、0℃から室温の条件下で終夜攪拌した。
メタノール50mlを加え攪拌した後、飽和NaHCO水溶液で中和した。
AK−225(CFCFCHCl、CCCFCHClFの混合物)で抽出し、飽和NaCl水溶液で洗浄した。エバポレーターでAK−225を留去し、黄色粉末(C−1)を得た(124.8g 99.1%)。
C−1の化学構造をNMRで解析したことろ、一般式(I)の構造を有し、n=1、m=1、k=3であった。合成原料から類推すると、YはO(酸素原子)である。
得られた黄色粉末(C−1)2gを、下記式の基油(A−1)198gに添加し、80℃にて30分攪拌混合した後冷却し、白濁溶液を得た。
(A−1)
Rf(CFCFO)(CFO)Rf
Rf:パーフルオロ低級アルキル基
粘度(40℃):160mm/s
この溶液について、JIS K2246に従って防錆試験を行った(温度49℃、湿度95%、50時間)。
50時間経過後のさび発生度(%)により表1に示す基準に従って5段階に評価した。評価方法を表1に示す。その結果を表2に示す。
実施例2
1,4−ビス(4アミノフェノキシ)ベンゼン 10.1gを、ピリジン100ml、AK−225の混合溶媒に溶解し、室温にて酸フロライド(n=11 209.0g)をゆっくり滴下し、室温から40℃の条件下で終夜攪拌した。
メタノール50mlを加え攪拌した後、飽和NaHCO水溶液で中和した。
AK−225で抽出し、飽和NaCl水溶液で洗浄した。エバポレーターでAK−225を留去し、淡黄色高粘度液体(C−2)を得た(173.9g 96.3%)。
C−2の化学構造をNMRで解析したことろ、一般式(I)の構造を有し、n=11、m=1、k=3であった。合成原料から類推すると、YはO(酸素原子)である。
得られた淡黄色高粘度液体(C−2)6gを、基油(A−1)194gに添加し、80℃にて30分攪拌混合した後冷却し、透明溶液を得た。
この溶液について、実施例1と同様に防錆試験を行った。
実施例3
1,4−ビス(4アミノフェノキシ)ベンゼン 2gを、ピリジン100ml、AK−225 100mlの混合溶媒に溶解し、室温にて酸フロライド(n=40 101.0g)をゆっくり滴下し、室温から40℃の条件下で終夜攪拌した。
メタノール50mlを加え攪拌した後、飽和NaHCO水溶液で中和した。
AK−225で抽出し、飽和NaCl水溶液で洗浄した。エバポレーターでAK−225を留去し、淡黄色高粘度液体(C−3)を得た(97.6g 99.6%)。
C−3の化学構造をNMRで解析したことろ、一般式(I)の構造を有し、n=40、m=1、k=3、であった。合成原料から類推すると、YはO(酸素原子)である。
得られた淡黄色高粘度液体(C−3)2gを、基油(A−1)198gに添加し、80℃にて30分攪拌混合した後冷却し、透明溶液を得た。
この溶液について、実施例1と同様に防錆試験を行った。
実施例4
A−1に代えて下記式の基油(A−2)196g、C−3を4g使用した以外は実施例3と同様にして溶液を得、防錆試験を行った。
(A−2)
Rf〔CF(CF)CF (CFO)Rf
Rf:パーフルオロ低級アルキル基
粘度(40℃):400mm/s
実施例5
A−1に代えて下記式の基油(A−3)190g、C−3を10g使用した以外は実施例3と同様にして溶液を得、防錆試験を行った。
(A−3)
RfO〔CF(CF)CFO〕Rf
Rf:パーフルオロ低級アルキル基
粘度(40℃):100mm/s
実施例6
ビス〔4−(アミノフェノキシ)フェニル〕スルホン 3gを、ピリジン100ml、AK−225の混合溶媒に溶解し、室温にて酸フロライド(n=11 209.0g)をゆっくり滴下し、室温から40℃の条件下で終夜攪拌した。
メタノール50mlを加え攪拌した後、飽和NaHCO水溶液で中和した。
AK−225で抽出し、飽和NaCl水溶液で洗浄した。エバポレーターでAK−225を留去し、淡黄色高粘度液体(C−4)を得た。
C−4の化学構造をNMRで解析したところ、一般式(I)の構造を有し、n=11、m=2、k=3であった。合成原料から類推すると、Y=SO基とO(酸素原子)である。
得られた淡黄色高粘度液体(C−4)10gを、下記式の基油(A−4)190gに添加し、80℃にて30分攪拌混合した後冷却し、透明溶液を得た。
(A−4)
F〔CFCFCFO〕Rf
粘度(40℃):200mm/s
この溶液について、実施例1と同様に防錆試験を行った。
実施例7
実施例2で得られた(C−2)2gと、基油(A−1)138g、増稠剤(B−:乳化重合法ポリテトラフルオロエチレン、分子量約10万〜20万、平均一次粒径0.2μm)60gを攪拌混合後、3本ロールにて混練し、白色のグリース状物質を得た。
このグリース状物質を試料とし、実施例1と同様に防錆試験を行った。
比較例1
基油(A−1)のみについて、実施例1と同様に防錆試験を行った。
比較例2
基油(A−2)のみについて、実施例1と同様に防錆試験を行った。
比較例3
基油(A−3)のみについて、実施例1と同様に防錆試験を行った。
比較例4
基油(A−4)のみについて、実施例1と同様に防錆試験を行った。
実施例1〜7及び比較例1〜4の組成及び防錆試験の評価を表2に示す。
実施例8
実施例7で得られたグリース状物質について、DIN51802(EMCOR試験、温度;室温、試験時間;165時間、回転速度;80rpm、試験媒体;蒸留水)の規定に従い防錆試験を行った。試験時間後、軸受の錆発生を表3に示す基準に従って、6段階に評価した。評価結果を表4に示す。
比較例5
添加剤(C−2)を除外し、基油(A−1)を140gに増量した以外は実施例7と同様な方法で、白色のグリース状物質を得た。このグリース状物質について、実施例8と同様な方法で錆発生を評価した。評価結果を表4に示す。
本発明は、潤滑剤を使用する分野で、特に潤滑性を付与し、長時間安定して使用可能な潤滑剤組成物(特にオイル、グリース、ディスパージョンとして)を使用する分野で用いることができる。
例えば、自動車補機、電気機器、建設機械、情報機器、産業機械、工作機械、音響映像機器、LBP等の精密/電機・電子、事務機器用、PC、HDD等記録媒体、遮断機、電気接点、半導体製造装置、家電製品、クリーンルーム、ダンパー、金属加工、搬送設備、自動車工業OEM、鉄道・船舶・航空、食品・薬品工業、鉄鋼、鉱業・ガラス・セメント工業、化学・ゴム・樹脂工業、フィルムテンター、製紙工業、印刷工業、木材工業、繊維・アパレル、相対運動する機械部品、内燃機関、ポンプ等の各種機械及びそれらを構成する各部品等の分野が挙げられる。さらに具体的には、転がり軸受、玉軸受、ローラー軸受、アンギュラ軸受、スラスト軸受、含浸軸受、鉄系軸受、銅系軸受、動圧軸受、樹脂軸受、内輪回転軸受、外輪回転軸受等の軸受、またボールネジ、直動軸受等の直動装置、減速機・増速機、ギヤ、チェーン、チェーンブッシュ、モーター等の動力伝達、真空ポンプ、バルブ、シール空圧機器等の油・空圧/バルブ・タップ/シール、電動工具等の工作機械、定着ローラー、スピンドル、トルクリミッター、エンジン、オルタネータ、テンションプーリー、アイドラプーリー、燃料ポンプ、オイルポンプ、吸気系・燃料、スロットル、電子制御スロットル、(排ガス循環装置等の)排気系部品、冷却系、電動ファンモータ、ファンカップリング、ウォーターポンプ、空調系、コンプレッサー、走行系、ハブベアリング、制動系、ABS、ブレーキ、操舵系、パワーステアリング、懸架系、駆動系、ボールジョイント、変速機、内・外装系(パワーウィンドウ、へッドライト、ドアミラーの光軸調整)、燃料電池、リニアガイド、電気接点、ATスイッチ、コンビネーションスイッチ、パワーウィンドウスイッチ、等を使用する産業分野である。

Claims (8)

  1. 下記一般式(I)で示される含フッ素ジアミド化合物潤滑油に溶解させて、当該潤滑油に防錆性を付与することを特徴とする防錆性付与方法
    一般式(I)

    〔式中、Yは酸素原子(O)、硫黄原子(S)、CO基、SO基又はSO基を表わし、kは1〜5の整数であり、mは0〜10の整数であり、nは1以上の整数である。フェニル基に有する2つの置換基の置換位置は、オルト位、メタ位、パラ位の何れでも良い。〕
  2. 前記一般式(I)において、Yは酸素原子(O)又は硫黄原子(S)である請求項1記載の防錆性付与方法
  3. 前記潤滑油が、動粘度(40℃)5〜2000mm/sのパーフルオロポリエーテル油を含む請求項1又は2記載の防錆性付与方法
  4. 前記潤滑油が、増稠剤を含む請求項1、2又は3記載の防錆性付与方法
  5. 前記増稠剤が、平均一次粒径0.01〜50μmの微粒子であり、その粒子がフッ素樹脂、シリカ、グラファイト、カーボンから選ばれる少なくとも1種を含む請求項4記載の防錆性付与方法
  6. 前記増稠剤が、金属石けん、金属複合石けん、ウレア、脂肪族ジカルボン酸金属塩から選ばれる少なくとも1種を含む請求項4又は5記載の防錆性付与方法
  7. 前記潤滑油が、軸受、ギヤ、リニアガイド又は磁気ディスクに使用される請求項1〜6の何れかに記載の防錆性付与方法
  8. 前記潤滑油として、下記(A−1)〜(A−4)の何れかのパーフルオロポリエーテル油に防錆性を付与することを特徴とする請求項1〜7の何れかに記載の潤滑油の防錆性付与方法。
    (A−1)
    RfO(CF CF O) (CF O) Rf
    〔式中、Rfは、パーフルオロ低級アルキル基を表す。〕
    (A−2)
    RfO〔CF(CF )CF O〕 (CF O) Rf
    〔式中、Rfは、パーフルオロ低級アルキル基を表す。〕
    (A−3)
    RfO〔CF(CF )CF O〕 Rf
    〔式中、Rfは、パーフルオロ低級アルキル基を表す。〕
    (A−4)
    F〔CF CF CF O〕 Rf
    〔式中、Rfは、パーフルオロ低級アルキル基を表す。〕
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