以下、本発明に係る皮膜付イオンゲルの製造方法につき好適な実施の形態を挙げ、添付の図面を参照して詳細に説明する。
図1は、本実施の形態に係る皮膜付イオンゲル10の模式的な断面図である。この皮膜付イオンゲル10は、イオンゲルからなるコア12が高分子からなる皮膜14で被覆されて構成される微細な粒体、換言すれば、微粒子である。なお、この場合、皮膜付イオンゲル10は概ね球体に近似される。
図1においては、皮膜付イオンゲル10の直径に沿う断面を示している。上記したように、皮膜付イオンゲル10の粒径は、図1におけるD1とD2の平均値として示されるが、この場合、D1とD2は略同等である。
コア12をなすイオンゲルは、イオン液体と高分子との相溶化合物からなる。すなわち、イオン液体が高分子のネットワークに取り込まれて形成されたものである。
皮膜付イオンゲル10を電解質として採用する場合、イオン液体としては、目的とするイオンを伝導することが可能な物質を選定すればよい。例えば、燃料電池の電解質とする場合、プロトンを伝導可能な物質を選定するようにする。具体的には、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムメタンスルホネート、ジエチルメチルアンモニウムトリフルオロメタンスルホネート、エチルメチルプロピルアンモニウムノナフルオロブタンスルホネートや、プロトン伝導機能を向上させるべくこれらのいずれかにリン酸、トリフルオメタンスルホン酸、パーフルオロスルホン酸高分子粉末のような酸塩基化合物を混合したもの等を例示することができる。
一方、高分子としては、使用されるイオン液体をそのネットワーク中に取り込んで相溶化合物を形成するものが選定される。イオン液体が上記した物質である場合、その好適な例としては、ポリアクリル酸メチル、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸メチル、ポリメタクリル酸、ポリアクリルアミド、ポリアクリロニトリル、ポリヒドロキシエチルメタクリレート、ポリ酢酸ビニル等の重合性ビニルモノマーが重合した高分子が挙げられる。
なお、高分子は、前記ネットワークが共有結合を介して架橋されたものであることが一層好ましい。この場合、イオンゲルに適度な強度が発現し、このためにコア12の形状維持が容易となるからである。
皮膜14をなす高分子は、特に限定されるものではないが、脂肪族又は芳香族に属するポリアミド類、ポリエステル類、ポリウレタン類を好適な例として挙げることができる。又は、重合性ビニルモノマーが重合したものであってもよい。
この高分子は、その分子構造中に共有結合を介した架橋構造を含むものであることが一層好ましい。この場合、皮膜14の強度が向上するとともに、コア12が膨潤したときであっても変形することが防止されるからである。
皮膜14の厚みTは、0.1nm〜100nmであることが好ましい。厚みTが0.1nm未満であると、皮膜14としての強度を確保することが容易ではない。また、100nmを超えると、イオン伝導に対する抵抗が大きくなる。
以上のようなコア12及び皮膜14を有する皮膜付イオンゲル10の好適な粒径(D1とD2の平均値)は、1nm〜1mmの範囲内である。1nmよりも小さいと、コア12を構成するイオンゲルの分子数が十分でなくなり、イオン伝導度が低下する傾向がある。また、1mmを超えると、皮膜14に破損が生じた際にコア12が漏洩することを防止することが容易でなくなる。皮膜付イオンゲル10の一層好適な粒径は、10nm〜100μmである。
このように構成された皮膜付イオンゲル10では、コア12(イオンゲル)が皮膜14によって保護される。従って、仮に、イオンゲル中のイオン液体に対して親和性が高い物質と皮膜付イオンゲル10が接触したとしても、イオン液体がイオンゲルから前記物質に移動することが阻止される。皮膜14がブロック作用を営むからである。
すなわち、皮膜14を設けることにより、イオン液体を化学的ないし物理的に安定な状態に維持することが容易となる。このため、該皮膜付イオンゲル10を燃料電池の電解質とした場合、コア12に含まれるイオン液体が生成水に移動すること、ひいては生成水に同伴されて燃料電池の外部に排出されることを防止することができ、その結果、燃料電池の発電性能を維持することができる。
また、皮膜付イオンゲル10は、上記したように極めて微細な微粒子である。このため、充填箇所の形状に対応した形状で充填したり、所望の形状の凝集体(ないし圧粉成形体)とすることが可能である。従って、この皮膜付イオンゲル10から燃料電池の電解質を得ようとする場合には、例えば、予め所定形状として形成されたシール部材内に皮膜付イオンゲル10の微粒子を充填すればよい。
このように、本実施の形態によれば、デバイスに応じた所望の形状の電解質を得ることができる。しかも、この場合、電解質が皮膜14を有するので破損が生じ難く、仮に破損が生じた場合であってもコア12がゲルであるので皮膜14の外方に流出し難い。従って、イオン伝導体であるイオン液体が漏洩する懸念を払拭し得る。
皮膜付イオンゲル10は、以下に説明する第1〜第4の製法によって微粒子として得ることができる。
はじめに、第1の製法につき説明する。この第1の製法は、2種のモノマー(以下、各々を第1モノマー、第2モノマーと指称する)を重合させることで皮膜14を形成するものである。
この場合、先ず、イオンゲルを得るためのイオン液体とイオンゲル用モノマーとを混合して第1混合溶液を調製する。第1混合溶液には、さらに、イオンゲル用モノマーの重合を促進するための重合開始剤又は架橋剤の少なくともいずれか一方を添加することもできる。
以上において、イオン液体としては、上記の1−エチル−3−メチルイミダゾリウムビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムメタンスルホネート、ジエチルメチルアンモニウムトリフルオロメタンスルホネート、エチルメチルプロピルアンモニウムノナフルオロブタンスルホネート、又はこれらのいずれかにリン酸、トリフルオメタンスルホン酸、パーフルオロスルホン酸高分子粉末のような酸塩基化合物が混合されたもの等が例示され、また、イオンゲル用モノマーとしては、このイオン液体に対して可溶であるアクリル酸メチル、アクリル酸、メタクリル酸メチル、メタクリル酸、アクリルアミド、アクリロニトリル、ヒドロキシエチルメタクリレート、酢酸ビニル等の重合性ビニルモノマーが例示される。
この場合、重合開始剤としては、上記したイオンゲル用モノマーの重合を促進し且つイオン液体に対して可溶である物質が選定される。その好適な例としては、ラウロイルパーオキサイド、アゾビスイソブチロニトリル、2、2’−アゾビス(2−メチルプロピオンアミド)ジヒドロクロライド、過酸化ベンゾイル等、分解に伴ってラジカルを発生し得る物質が挙げられる。
また、架橋剤としては、上記したイオンゲル用モノマーが重合することで形成されたネットワークを架橋することが可能であり、且つイオン液体に対して可溶である物質が選定される。その好適な例としては、N,N−メチレンビスアクリルアミド、エチレングリコールジメタクリレート等の重合性ビニル基を複数個有するものが挙げられる。
その一方で、イオン液体と混合した際に該イオン液体に対して相分離を起こす溶媒を用意する。この溶媒は、イオン液体と2相に分離するものであれば特に限定されるものではないが、イオン液体が上記した物質である場合、その好適な例としては水が挙げられる。この場合、安価であり且つ入手が極めて容易であるという利点がある。
なお、後述する理由から、この溶媒に対して界面活性剤を添加することが好ましい。溶媒が水である場合、界面活性剤の好適な例としては、非イオン活性剤であって且つHLBの値が12以上のものが挙げられる。
次に、この溶媒と、上記のようにして調製した第1混合溶液とを混合する。これにより、第2混合溶液が調製される。
この混合の際には、マグネチックスターラ、撹拌翼、ホモジナイザ又は超音波分散装置等を用い、強制的な機械的撹拌を行う。これにより、イオンゲル用モノマーとイオン液体とでエマルジョンが形成される。なお、前記溶媒に界面活性剤が添加されている場合、エマルジョンの形成が促進されるとともに、形成されたエマルジョンが破壊されることが阻害される。すなわち、エマルジョンを微細形状に維持することが容易となる。
なお、第2混合溶液の温度が過度に高いと、エマルジョンが破壊され易くなる傾向がある。従って、第2混合溶液を収容した容器をオイルバスに浸漬する等して冷却を行い、第2混合溶液の温度を40℃以下に保つことが好ましい。
この状態で放置すれば、エマルジョン中のイオンゲル用モノマーの重合が自発的に開始して進行する。又は、第2混合溶液の温度が上昇しない程度に紫外線を照射することで重合を開始させるようにしてもよい。第2混合溶液の温度が過度の上昇すると上記同様にエマルジョンが破壊される懸念があるので、この工程でも第2混合溶液を冷却することが一層好ましい。
イオンゲル用モノマーの重合が進行すると、高分子のネットワークが形成されるとともに、該ネットワーク中にイオン液体が取り込まれる。その結果、高分子とイオン液体の相溶化合物であるイオンゲルが生成する。
イオンゲルは、各エマルジョンがゲル化することで形成されたものであるので微細である。すなわち、粒径が1nm〜1mmの微粒子となる。なお、粒径は、例えば、反応時間を適宜設定することで調節することができる。このようにして得られたイオンゲルを、次に、遠心分離や濾過等によって分離し、乾燥する。
その一方で、皮膜14の原材料となる第1モノマーを含む溶液を調製する。このためには、例えば、第1混合溶液を調製する際に用いたイオン液体と同一のイオン液体に第1モノマーを溶解すればよい。
また、この溶液とは別に、皮膜14の原材料となる第2モノマーを含む溶液を調製する。すなわち、例えば、第2混合溶液を調製する際に用いた溶媒と同一の溶媒に第2モノマーを溶解すればよい。
第1モノマー及び第2モノマーとしては、重縮合によって高分子を生成するものが好適である。さらに、重合に際して架橋構造を併せて形成するものであることが一層好ましい。このような第1モノマーと第2モノマーの組み合わせの具体例としては、イソフタル酸クロリド、テレフタル酸クロリド、トリメソイルクロリドの群の中の1つ以上と、m−フェニレンジアミン、p−フェニレンジアミンの群の中の1つ以上とを挙げることができる。なお、2つの群のいずれか一方が第1モノマーとなり、残余の一方が第2モノマーとなりさえすれば、どちらの群を第1モノマーとして使用しようと差し支えはない。
上記した第1モノマーを含む溶液に対してイオンゲルを添加すると、この溶液が、イオンゲル内のイオン液体に浸透する。その後、過剰の溶液を洗浄によって除去することにより、前記溶液を含んだイオン液体を内包するイオンゲルが得られる。
このようにして得られたイオンゲルを、第2モノマーを含む溶液に添加する。これに伴い、この溶液とイオンゲルとの界面、換言すれば、イオンゲルの表面において、第1モノマーと第2モノマーの重合(好適には重縮合)が自発的に開始して進行する。すなわち、高分子からなる皮膜14がイオンゲルの表面に形成され、これにより、イオンゲル(コア12)の表面が皮膜14で被覆された皮膜付イオンゲル10が得られるに至る。
次に、第2の製法について説明する。この第2の製法も、第1モノマーと第2モノマーを重合させることで皮膜14を形成するものである。
この場合、先ず、イオンゲルを得るためのイオン液体及びイオンゲル用モノマーと、皮膜14の原材料となる第1モノマーとを混合して第1混合溶液を調製する。第1混合溶液には、さらに、イオンゲル用モノマーの重合を促進するための重合開始剤又は架橋剤の少なくともいずれか一方を添加することもできる。
以上において、イオン液体としては、第1の製法と同様に、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムメタンスルホネート、ジエチルメチルアンモニウムトリフルオロメタンスルホネート、エチルメチルプロピルアンモニウムノナフルオロブタンスルホネート、又はこれらのいずれかにリン酸、トリフルオメタンスルホン酸、パーフルオロスルホン酸高分子粉末のような酸塩基化合物が混合されたもの等が例示され、また、イオンゲル用モノマーとしては、このイオン液体に対して可溶であるアクリル酸メチル、アクリル酸、メタクリル酸メチル、メタクリル酸、アクリルアミド、アクリロニトリル、ヒドロキシエチルメタクリレート、酢酸ビニル等の重合性ビニルモノマーが例示される。
重合開始剤としても第1の製法と同様に、上記したイオンゲル用モノマーの重合を促進し且つイオン液体に対して可溶である物質が選定される。その好適な例としては、ラウロイルパーオキサイド、アゾビスイソブチロニトリル、2、2’−アゾビス(2−メチルプロピオンアミド)ジヒドロクロライド、過酸化ベンゾイル等、分解に伴ってラジカルを発生し得る物質が挙げられる。
また、架橋剤としても第1の製法と同様に、上記したイオンゲル用モノマーが重合することで形成されたネットワークを架橋することが可能であり、且つイオン液体に対して可溶である物質が選定される。その好適な例としては、N,N‘−メチレンビスアクリルアミド、エチレングリコールジメタクリレート等の重合性ビニル基を複数個有するものが挙げられる。
第1モノマーとしては、第2モノマーとの重縮合によって高分子を生成するものが好適である。さらに、重合に際して架橋構造を併せて形成するものであることが一層好ましい。なお、第1モノマーと第2モノマーの組み合わせの具体例については後述する。
上記した第1混合溶液とは別に、イオン液体と混合した際に該イオン液体に対して相分離を起こす溶媒を用意する。この溶媒も第1の製法と同様に、イオン液体と2相に分離するものであれば特に限定されるものではないが、イオン液体が上記した物質である場合、その好適な例としては水が挙げられる。この場合、安価であり且つ入手が極めて容易であるという利点がある。
なお、後述する理由から、この溶媒に対して界面活性剤を添加することが好ましい。溶媒が水である場合、界面活性剤の好適な例としては、非イオン活性剤であって且つHLBの値が12以上のものが挙げられる。
次に、この溶媒と、上記のようにして調製した第1混合溶液とを混合する。これにより、第2混合溶液が調製される。
この混合の際には、マグネチックスターラ、撹拌翼、ホモジナイザ又は超音波分散装置等を用い、強制的な機械的撹拌を行う。これにより、イオンゲル用モノマーとイオン液体とでエマルジョンが形成される。なお、前記溶媒に界面活性剤が添加されている場合、エマルジョンの形成が促進されるとともに、形成されたエマルジョンが破壊されることが阻害される。すなわち、エマルジョンを微細形状に維持することが容易となる。
なお、第2混合溶液の温度が過度に高いと、エマルジョンが破壊され易くなる傾向がある。加えてエマルジョン中のイオンゲル用モノマーの重合を防止するため、第2混合溶液を冷却することが好ましい。従って、第2混合溶液を収容した容器をオイルバスに浸漬する等して冷却を行い、第2混合溶液の温度を20℃以下に保つことが好ましい。
この第2混合溶液に、皮膜14の原材料となる第2モノマーを添加する。この添加に際しては、第2混合溶液を調製する際に用いた溶媒と同一の溶媒に第2モノマーを溶解したものを滴下することが好ましい。
ここで、第1モノマーと第2モノマーの組み合わせの具体例としては、第1の製法と同様に、イソフタル酸クロリド、テレフタル酸クロリド、トリメソイルクロリドの群の中の1つ以上と、m−フェニレンジアミン、p−フェニレンジアミンの群の中の1つ以上とを挙げることができる。
第1の製法と同様に、2つの群のいずれが第1モノマーであろうと差し支えはない。すなわち、イソフタル酸クロリド、テレフタル酸クロリド、トリメソイルクロリドの群の中の1つ以上を用いて第1混合溶液を調製し、第2混合溶液に対してm−フェニレンジアミン、p−フェニレンジアミンの群の中の1つ以上を添加するようにしてもよいし、その逆に、m−フェニレンジアミン、p−フェニレンジアミンの群の中の1つ以上を用いて第1混合溶液を調製し、第2混合溶液に対してイソフタル酸クロリド、テレフタル酸クロリド、トリメソイルクロリドの群の中の1つ以上を添加するようにしてもよい。
このような組み合わせの第1モノマーと第2モノマーが、液滴であるエマルジョンと溶液の界面、すなわち、エマルジョン液滴の表面において、自発的に重合(好適には重縮合)を開始する。すなわち、この重合が進行することにより、高分子からなる皮膜14がイオン液体のエマルジョンの液滴表面に形成される。
この状態で放置すれば、エマルジョン中のイオンゲル用モノマーの重合が自発的に開始して進行する。又は、第2混合溶液の温度が上昇しない程度に紫外線を照射することで重合を開始させるようにしてもよい。
イオンゲル用モノマーの重合が進行すると、高分子のネットワークが形成されるとともに、該ネットワーク中にイオン液体が取り込まれる。その結果、高分子とイオン液体の相溶化合物であるイオンゲルが生成する。これにより、イオンゲル(コア12)の表面が皮膜14で被覆された皮膜付イオンゲル10が得られるに至る。
次に、第3の製法について説明する。第3の製法は、イオンゲル(コア12)を皮膜形成用高分子の溶液で被覆した後、この溶液を固相に変化させて皮膜14とするものである。
第1の製法及び第2の製法と同様に、第3の製法においても、先ず、イオンゲルを得るためのイオン液体と、イオンゲル用モノマーとを混合して第1混合溶液を調製する。上記と同様に、イオン液体としては1−エチル−3−メチルイミダゾリウムビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムメタンスルホネート、ジエチルメチルアンモニウムトリフルオロメタンスルホネート、エチルメチルプロピルアンモニウムノナフルオロブタンスルホネート、又はこれらのいずれかにリン酸、トリフルオメタンスルホン酸、パーフルオロスルホン酸高分子粉末のような酸塩基化合物が混合されたもの等を用いることができ、一方、イオンゲル用モノマーとしてはアクリル酸メチル、アクリル酸、メタクリル酸メチル、メタクリル酸、アクリルアミド、アクリロニトリル、ヒドロキシエチルメタクリレート、酢酸ビニル等の重合性ビニルモノマーを用いることができる。
その一方で、第1の製法及び第2の製法と同様に、イオン液体と混合した際に該イオン液体に対して相分離を起こす溶媒を用意する。この溶媒は、上記したような界面活性剤が添加されたものであることが好ましい。
次に、第1の製法及び第2の製法に準拠した操作を行う。すなわち、上記のようにして調製した溶媒と第1混合溶液とを、機械的撹拌を行いながら混合して第2混合溶液を調製するとともに、エマルジョンを形成させる。さらに、イオンゲル用モノマーを重合させて高分子とすることで、粒径が1nm〜1mmのイオンゲルを生成させる。このようにして得られたイオンゲルを、遠心分離や濾過等によって分離した後に乾燥する。
以上とは別に、イオンゲル用モノマーが重合して生成した高分子を架橋することが可能な架橋剤を含む溶液を調製する。具体的には、例えば、第2混合溶液を調製する際に用いた溶媒と同一の溶媒に架橋剤を溶解すればよい。
架橋剤としては、分子構造に繰り返し構造を有さない有機化合物が好適である。具体的には、エチレンジアミン等の反応性が高い官能基を複数個有する物質や、N,N‘−メチレンビスアクリルアミド、エチレングリコールジメタクリレート等の重合性ビニル基を複数個有するものが挙げられる。さらに、ラウロイルパーオキサイド、アゾビスイソブチロニトリル、2、2’−アゾビス(2−メチルプロピオンアミド)ジヒドロクロライド、過酸化ベンゾイル等の重合開始剤を添加するようにしてもよい。
この溶液に対し、前記イオンゲルを添加する。その結果、該イオンゲルの表面に存在する前記高分子の架橋が開始して進行する。この架橋によって架橋高分子からなる皮膜14が形成され、イオンゲル(コア12)の表面が皮膜14で被覆された皮膜付イオンゲル10が得られる。
なお、イオンゲル用モノマーを重合させて高分子を得る(換言すれば、イオンゲルを形成する)と同時に、イオンゲルの表面における高分子を架橋することも可能である。
この場合、例えば、第3の製法に準拠して第1混合溶液及び第2混合溶液を調製する。そして、この溶液に対して架橋剤を添加すればよい。この添加により、エマルジョンが形成される。
このエマルジョンには、イオンゲル用モノマーを含むイオン液体が内包されている。第1の製法に準拠してこのイオンゲル用モノマーを重合させて高分子とすると、該高分子中、エマルジョンの表面近傍に存在するものは、前記架橋剤の作用によって速やかに架橋する。すなわち、高分子となると同時に架橋体に変化し、皮膜14を形成する。
すなわち、この場合、イオンゲルの形成と、該イオンゲル表面の架橋とを同時に進行させることができる。
イオン液体である1−エチル−3−メチルイミダゾリウムビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミドを1.0g秤量し、これに対して、1.0g(1×10-3mol)のメタクリル酸メチルモノマー、0.04g(2×10-4mol)のエチレングリコールジメタクリレート、0.06g(2.2×10-4mol)のアゾビスイソブチロニトリルを溶解して第1混合溶液を調製した。
その一方で、20mlの脱イオン水に対し、非イオン性界面活性剤であるイゲパールDM−970(アルドリッチ社製ポリオキシエチレンノニルフェノールの商品名、HLB=19)を0.001g溶解した。
次に、前記第1混合溶液と、イゲパールDM−970を溶解した前記脱イオン水とを混合して第2混合溶液とし、さらに、第2混合溶液をバスにて氷冷しながら60分間、マグネチックスターラで該第2混合溶液を激しく撹拌した。その結果、第2混合溶液にエマルジョンが形成された。
前記第2混合溶液を冷却して5℃に保ちつつ、波長254nmのUVランプを照射してメタクリル酸メチルモノマーを重合させた。これにより、ポリメタクリル酸メチルのネットワークに1−エチル−3−メチルイミダゾリウムビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミドが取り込まれた、換言すれば、ポリメタクリル酸メチルと1−エチル−3−メチルイミダゾリウムビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミドが相溶化したイオンゲル微粒子を得た。
次に、遠心分離器にて遠心分離を行うことで前記イオンゲル微粒子を沈殿させた後、脱イオン水で液相を置換するとともに撹拌した。この操作を繰り返すことで、イオンゲル微粒子を洗浄した。
以上とは別に、1.0gの1−エチル−3−メチルイミダゾリウムビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミドに対して0.5g(1.9×10-3mol)のトリメソイルクロリドを溶解し、溶液を調製した。この溶液に対し、洗浄済の前記イオンゲル微粒子を混合した。これにより、イオンゲル微粒子を構成するイオン液体にトリメソイルクロリドを含ませた。
その後、遠心分離器にて遠心分離を行って前記イオンゲル微粒子を沈殿させた後、エタノールで液相を置換するとともに撹拌した。次に、イオンゲル粒子に対して再び遠心分離を行い、該イオンゲル微粒子に付着した余剰の1−エチル−3−メチルイミダゾリウムビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド、すなわち、イオン液体を取り除いた。
さらに、50mlの脱イオン水に0.5g(4.6×10-3mol)のm−フェニレンジアミンを溶解して調製した溶液に対し、余剰のイオン液体が取り除かれた前記イオンゲル微粒子を分散させて室温で12時間撹拌した。この最中、イオン液体に溶解したトリメソイルクロリドと、脱イオン水に溶解したm−フェニレンジアミンとが、イオン液体と脱イオン水の界面、すなわち、イオンゲル微粒子の表面において重合反応を起こした。その結果、イオンゲル微粒子の表面に高分子薄膜からなる皮膜が形成され、粒体としての皮膜付イオンゲルが得られた。
次に、遠心分離器にて遠心分離を行って前記皮膜付イオンゲル微粒子を沈殿させた。これを脱イオン水で洗浄して液相を置換するとともに撹拌する操作を繰り返すことで、皮膜付イオンゲル微粒子を洗浄した。さらに、洗浄後の皮膜付イオンゲル微粒子に対して真空乾燥を施した。この皮膜付イオンゲル微粒子の走査型電子顕微鏡(SEM)写真を図2に示す。図2から、皮膜付イオンゲル微粒子の二次元平面形状が略真円形状であることが分かる。なお、粒径は約10μmであった。
この皮膜付イオンゲル微粒子を、イオン液体である1−エチル−3−メチルイミダゾリウムビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミドの溶解度が高いエタノールに室温で24時間浸漬した。その後、該皮膜付イオンゲル微粒子を用いてEDXスペクトル測定を行った。スペクトルパターンを図3に示す。
この図3から、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミドの構成原子であるF原子が皮膜付イオンゲル微粒子に含まれていることが諒解される。このことは、皮膜付イオンゲル微粒子のコアであるイオンゲル、すなわち、ポリメタクリル酸メチルと1−エチル−3−メチルイミダゾリウムビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミドの相溶化合物から、イオン液体である1−エチル−3−メチルイミダゾリウムビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミドが流失することが防止されていることを意味するものである。
次に、この皮膜付イオンゲル微粒子を、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)板に形成した長さ10mm×幅2mm×深さ2mmの溝に隙間なく充填し、両端に白金板電極を設けた。さらに、各白金板電極をソーラトロン社製12608W型電気化学測定装置に接続し、アルゴン気流の雰囲気下において120℃で交流インピーダンス測定法を行い導電率を求めたところ、3.3×10-2S/cmであった。
1−エチル−3−メチルイミダゾリウムビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミドを1.0g秤量し、これに対して、2.0g(2×10-3mol)のメタクリル酸メチルモノマー、0.08g(2×10-4mol)のエチレングリコールジメタクリレート、0.11g(4.1×10-4mol)のアゾビスイソブチロニトリル、0.01g(4×10-5mol)のトリメソイルクロリドを溶解して第1混合溶液を調製した。
その一方で、20mlの脱イオン水に対してイゲパールDM−970を0.05g溶解した。
次に、前記第1混合溶液と、イゲパールDM−970を溶解した前記脱イオン水とを混合して第2混合溶液とし、さらに、第2混合溶液をバスにて氷冷しながら10分間、ホモジナイザーで該第2混合溶液を激しく撹拌した。その結果、第2混合溶液にエマルジョンが形成された。
前記第2混合溶液を冷却して5℃に保ち、マグネチックスターラーで激しく攪拌しつつ、5mlの脱イオン水に0.2g(1.8×10-3mol)のm−フェニレンジアミンを溶解して調製した溶液を滴下して加え、5℃に保ったまま12時間撹拌を継続した。この最中、イオン液体に溶解したトリメソイルクロリドと、脱イオン水に溶解したm−フェニレンジアミンとが、イオン液体と脱イオン水の界面、すなわち、イオンゲルの液滴の表面において重合反応を起こした。その結果、イオンゲル液滴の表面に高分子薄膜からなる皮膜が形成され、粒体としての皮膜付イオン液滴が得られた。
次に、第2混合溶液の温度を30℃に上げ、24時間保つことによりイオンゲルに内包されたイオン液体に含まれるメタクリル酸メチルモノマーを重合させ、イオンゲルとした。
これにより、ポリメタクリル酸メチルのネットワークに1−エチル−3−メチルイミダゾリウムビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミドが取り込まれた、換言すれば、ポリメタクリル酸メチルと1−エチル−3−メチルイミダゾリウムビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミドが相溶化したイオンゲルがトリメソイルクロリドとm−フェニレンジアミンとが重合して得られた高分子薄膜からなる皮膜に覆われたイオンゲル微粒子の表面に皮膜が形成され、粒体としての皮膜付イオンゲルが得られた。
次に、遠心分離器にて遠心分離を行い、皮膜付イオンゲル微粒子を沈殿させた。これを脱イオン水で洗浄して液相を置換するとともに撹拌する操作を繰り返すことで、皮膜付イオンゲル微粒子を洗浄した。さらに、洗浄後の皮膜付イオンゲル微粒子に対して真空乾燥を施した。この皮膜付イオンゲル微粒子のSEM写真を図4に示す。図4から、皮膜付イオンゲル微粒子の二次元平面形状が略真円形状であることが分かる。なお、平均粒径は約60μmであった。
この皮膜付イオンゲル微粒子を、イオン液体である1−エチル−3−メチルイミダゾリウムビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミドの溶解度が高いエタノールに室温で24時間浸漬した。その後、該皮膜付イオンゲル微粒子を用いてEDXスペクトル測定を行った。スペクトルパターンを図5に示す。
この図5から、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミドの構成原子であるF原子が皮膜付イオンゲル微粒子に含まれていることが諒解される。このことは、皮膜付イオンゲル微粒子のコアであるイオンゲル、すなわち、ポリメタクリル酸メチルと1−エチル−3−メチルイミダゾリウムビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミドの相溶化合物から、イオン液体である1−エチル−3−メチルイミダゾリウムビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミドが流失することが防止されていることを意味するものである。
さらに、この皮膜付イオンゲル微粒子につき、実施例1と同一条件下で交流インピーダンス測定法を行った。その結果、該皮膜付イオンゲル微粒子の導電率は、2.6×10-2S/cmであった。
1.0gの1−エチル−3−メチルイミダゾリウムビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミドに対し、2.0g(2×10-3mol)のメタクリル酸メチルモノマー、0.08g(4×10-5mol)のエチレングリコールジメタクリレート、0.11g(4.1×10-4mol)のアゾビスイソブチロニトリルを溶解して第1混合溶液を調製した。
その一方で、20mlの脱イオン水に対してイゲパールDM−970を0.05g溶解した。
以降は実施例1に準拠し、前記第1混合溶液とイゲパールDM−970を溶解した前記脱イオン水とで第2混合溶液を得た後、第2混合溶液をバスにて氷冷しながら60分間、マグネチックスターラで該第2混合溶液を激しく撹拌した。その結果、第2混合溶液にエマルジョンが形成された。
前記第2混合溶液を冷却して5℃に保ちつつ、波長254nmのUVランプを照射してメタクリル酸メチルモノマーを重合させた。これにより、ポリメタクリル酸メチルのネットワークに1−エチル−3−メチルイミダゾリウムビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミドが取り込まれ、ポリメタクリル酸メチルと1−エチル−3−メチルイミダゾリウムビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミドの相溶化合物であるイオンゲル微粒子を得た。
次に、この第2混合溶液に0.1g(6.5×10-4mol)のN,N‘−メチレンビスアクリルアミドを添加し、5℃で12時間攪拌しさらに室温で12時間撹拌した。この最中、イオンゲル微粒子中でネットワークを形成したポリメタクリル酸メチルと、第2混合溶液内の脱イオン水に溶解したN,N‘−メチレンビスアクリルアミドとが、イオン液体と脱イオン水の界面、すなわち、イオンゲル微粒子の表面において架橋反応を起こした。その結果、イオンゲル微粒子の表面に高分子架橋体の薄膜からなる皮膜が形成され、粒体としての皮膜付イオンゲルが得られた。
次に、遠心分離器にて遠心分離を行って前記皮膜付イオンゲル微粒子を沈殿させた。これを脱イオン水で洗浄して液相を置換するとともに撹拌する操作を繰り返すことで、皮膜付イオンゲル微粒子を洗浄した。さらに、洗浄後の皮膜付イオンゲル微粒子に対して真空乾燥を施した。この皮膜付イオンゲル微粒子のSEM写真を図6に示す。図6から、この皮膜付イオンゲル微粒子の二次元平面形状も略真円形状であることが分かる。この場合、平均粒径は約10μmであった。
この皮膜付イオンゲル微粒子を、実施例1、2と同様に、エタノールに室温で24時間浸漬した。その後、該皮膜付イオンゲル微粒子を用いてEDXスペクトル測定を行った。スペクトルパターンを図7に示す。図7に示すように、この実施例3においても、F原子に由来するピークが出現している。
さらに、実施例1、2と同様にして交流インピーダンス測定法を行ったところ、この皮膜付イオンゲル微粒子の導電率は3.3×10-2S/cmであった。
1.0gの1−エチル−3−メチルイミダゾリウムビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミドに対し、2.0g(2×10-3mol)のメタクリル酸メチルモノマー、0.11g(4.1×10-4mol)のアゾビスイソブチロニトリルを溶解して第1混合溶液を調製した。
その一方で、20mlの脱イオン水に対してイゲパールDM−970を0.05g溶解した。
以降は実施例1に準拠し、前記第1混合溶液とイゲパールDM−970を溶解した前記脱イオン水とで第2混合溶液を得た後、第2混合溶液をバスにて氷冷しながら60分間、マグネチックスターラで該第2混合溶液を激しく撹拌した。その結果、第2混合溶液にエマルジョンが形成された。
前記第2混合溶液を冷却して5℃に保ちつつ、波長254nmのUVランプを照射してメタクリル酸メチルモノマーを重合させた。これにより、ポリメタクリル酸メチルのネットワークに1−エチル−3−メチルイミダゾリウムビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミドが取り込まれ、ポリメタクリル酸メチルと1−エチル−3−メチルイミダゾリウムビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミドの相溶化合物であるイオンゲル微粒子を得た。
次に、この第2混合溶液に0.1g(6.5×10-4mol)のN,N‘−メチレンビスアクリルアミドを添加し、5℃で12時間攪拌しさらに室温で12時間撹拌した。この最中、イオンゲル微粒子中のポリメタクリル酸メチルと、第2混合溶液内の脱イオン水に溶解したN,N‘−メチレンビスアクリルアミドとが、イオン液体と脱イオン水の界面、すなわち、イオンゲル微粒子の表面において架橋反応を起こした。その結果、イオンゲル微粒子の表面に高分子架橋体の薄膜からなる皮膜が形成され、粒体としての皮膜付イオンゲルが得られた。
次に、遠心分離器にて遠心分離を行って前記皮膜付イオンゲル微粒子を沈殿させた。これを脱イオン水で洗浄して液相を置換するとともに撹拌する操作を繰り返すことで、皮膜付イオンゲル微粒子を洗浄した。さらに、洗浄後の皮膜付イオンゲル微粒子に対して真空乾燥を施した。この皮膜付イオンゲル微粒子のSEM写真を図8に示す。図8から、この皮膜付イオンゲル微粒子の二次元平面形状も略真円形状であることが分かる。この場合、平均粒径は約20μmであった。
この皮膜付イオンゲル微粒子を、実施例1〜3と同様に、エタノールに室温で24時間浸漬した。その後、該皮膜付イオンゲル微粒子を用いてEDXスペクトル測定を行った。スペクトルパターンを図9に示す。図9に示すように、この実施例4においても、F原子に由来するピークが出現している。
さらに、実施例1〜3と同様にして交流インピーダンス測定法を行った。その結果、この皮膜付イオンゲル微粒子の導電率は、3.9×10-2S/cmであった。
1.0gの1−エチル−3−メチルイミダゾリウムビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミドに対し、1.0g(1×10-3mol)のメタクリル酸メチルモノマー、0.005g(2.5×10-5mol)のエチレングリコールジメタクリレート、0.06g(2.2×10-4mol)のアゾビスイソブチロニトリルを溶解して第1混合溶液を調製した。
その一方で、20mlの脱イオン水に対してイゲパールDM−970を0.001g溶解した。
以降は実施例1に準拠し、前記第1混合溶液とイゲパールDM−970を溶解した前記脱イオン水とで第2混合溶液を得た後、第2混合溶液をバスにて氷冷しながら60分間、マグネチックスターラで該第2混合溶液を激しく撹拌した。その結果、第2混合溶液にエマルジョンが形成された。
前記第2混合溶液を冷却して5℃に保ちつつ、波長254nmのUVランプを照射してメタクリル酸メチルモノマーを重合させた。これにより、ポリメタクリル酸メチルのネットワークに1−エチル−3−メチルイミダゾリウムビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミドが取り込まれ、ポリメタクリル酸メチルと1−エチル−3−メチルイミダゾリウムビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミドの相溶化合物であるイオンゲル微粒子を得た。
次に、遠心分離器にて遠心分離を行うことで前記イオンゲル微粒子を沈殿させた後、脱イオン水で液相を置換するとともに撹拌した。この操作を繰り返すことで、イオンゲル微粒子を洗浄した。
以上とは別に、0.5gのエチレンジアミンを1.0mlの脱イオン水に溶解して溶液を調製した。この溶液に対し、洗浄済の前記イオンゲル微粒子を分散させて室温で12時間撹拌した。この最中、イオンゲル微粒子中でネットワークを形成したポリメタクリル酸メチルと、脱イオン水に溶解したエチレンジアミンとが、イオン液体と脱イオン水の界面、すなわち、イオンゲル微粒子の表面において架橋反応を起こした。その結果、イオンゲル微粒子の表面に高分子架橋体の薄膜からなる皮膜が形成され、粒体としての皮膜付イオンゲルが得られた。
次に、遠心分離器にて遠心分離を行って前記皮膜付イオンゲル微粒子を沈殿させた。これを脱イオン水で洗浄して液相を置換するとともに撹拌する操作を繰り返すことで、皮膜付イオンゲル微粒子を洗浄した。さらに、洗浄後の皮膜付イオンゲル微粒子に対して真空乾燥を施した。この皮膜付イオンゲル微粒子のSEM写真を図10に示す。図10から、この皮膜付イオンゲル微粒子の二次元平面形状も略真円形状であることが分かる。この場合、粒径は25μmであった。
この皮膜付イオンゲル微粒子を、実施例1〜4と同様に、エタノールに室温で24時間浸漬した。その後、該皮膜付イオンゲル微粒子を用いてEDXスペクトル測定を行った。スペクトルパターンを図11に示す。図11に示すように、この実施例2においても、F原子に由来するピークが出現している。
さらに、この皮膜付イオンゲル微粒子の導電率を求めた。すなわち、実施例1〜4と同様にして交流インピーダンス測定法を行ったところ、3.9×10-2S/cmであった。
比較例1
比較のため、皮膜を具備しないイオンゲルを作製した。
具体的には、先ず、1.0gの1−エチル−3−メチルイミダゾリウムビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミドに対し、1.0g(1×10-3mol)のメタクリル酸メチルモノマー、0.04g(2.0×10-4mol)のエチレングリコールジメタクリレート、0.05g(2.0×10-4mol)のアゾビスイソブチロニトリルを溶解した。その一方で、20mlの脱イオン水に対してイゲパールDM−970を0.001g溶解した。
以上のようにして得られた溶液同士を混合して混合溶液を調製した後、該混合溶液をバスにて氷冷しつつ、ホモジナイザで該第2混合溶液を10分間激しく撹拌した。その結果、該混合溶液にエマルジョンが形成された。
次に、前記混合溶液を5℃に保ちながら、波長254nmのUVランプを照射してメタクリル酸メチルモノマーを重合させた。これにより、ポリメタクリル酸メチルのネットワークに1−エチル−3−メチルイミダゾリウムビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミドが取り込まれ、ポリメタクリル酸メチルと1−エチル−3−メチルイミダゾリウムビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミドの相溶化合物であるイオンゲル微粒子を得た。
次に、精密濾過によって前記イオンゲル微粒子を分離した後、脱イオン水で洗浄した。さらに、60℃にて真空乾燥を施した。図12は、このイオンゲル微粒子のSEM写真である。
このイオンゲル微粒子を、実施例1〜5と同様に、エタノールに室温で24時間浸漬した。その後、該イオンゲル微粒子を用いてEDXスペクトル測定を行った。図13は、そのスペクトルパターンである。この図13に示すように、この比較例1では、F原子に由来するピークが認められなかった。このことは、イオンゲル中の1−エチル−3−メチルイミダゾリウムビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミドがエタノールへ流失したことを意味する。
以上の実施例1〜5及び比較例1の結果を対比し、実施例1〜5における皮膜付イオンゲルの皮膜が、コアに含まれるイオン液体が流失することを防止する機能を営むことが明らかである。
また、このイオンゲル微粒子を用い、実施例1〜5と同一条件下で交流インピーダンス測定法を行った。その結果、該イオンゲル微粒子の導電率は4.3×10-2S/cmであった。
比較例2
さらに、比較のため、イオン液体を高分子と相溶化することなく皮膜を形成することを試みた。
この場合、先ず、1.0gの1−エチル−3−メチルイミダゾリウムビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミドに対し、0.2g(7.5×10-4mol)のトリメソイルクロリドを溶解した。その一方で、20mlの脱イオン水に対してイゲパールDM−970を0.001g溶解した。
以上のようにして得られた溶液同士を混合して混合溶液を調製した後、該混合溶液をバスにて氷冷しつつ、ホモジナイザで該第2混合溶液を10分間激しく撹拌した。その結果、該混合溶液に、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミドのエマルジョンが形成された。
次に、このエマルジョンを含む混合溶液に対し、0.2gのm−フェニレンジアミンを50mlの脱イオン水に溶解して調製した溶液を加え、室温で6時間撹拌した。これにより、イオン液体である1−エチル−3−メチルイミダゾリウムビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミドに溶解したトリメソイルクロリドと、脱イオン水に溶解したm−フェニレンジアミンとが、イオン液体と脱イオン水の界面、すなわち、エマルジョンの表面において重合反応を起こした。その結果、エマルジョンの表面に高分子薄膜からなる皮膜が形成され、皮膜付微粒子を得た。
次に、遠心分離器にて遠心分離を行い、前記皮膜付微粒子を沈殿させた。これを脱イオン水で洗浄して液相を置換するとともに撹拌する操作を繰り返すことで、皮膜付微粒子を洗浄した。さらに、洗浄後の皮膜付微粒子に対して真空乾燥を施した。この皮膜付微粒子のSEM写真を図14に示す。図14から、この場合、粒体形状を保ち得ないこと、換言すれば、粒体形状が破壊されていることが認められる。
さらに、この皮膜付微粒子を、実施例1〜5及び比較例1と同様に、エタノールに室温で24時間浸漬した。その後、該イオンゲル微粒子を用いてEDXスペクトル測定を行った。図15に、そのスペクトルパターンを示す。
この図15から、比較例2においてもF原子に由来するピークが認められないことが分かる。すなわち、この場合も、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミドがエタノールへ流失している。
このように、粒径状が破壊され、且つイオン液体を保持し得ない理由は、実施例1〜5においてはイオン液体が高分子のネットワークに取り込まれているのに対し、比較例2では、イオン液体が高分子のネットワークに取り込まれていないためであると推察される。