以下本発明を詳細に説明する。先ず、塗布装置について説明する。請求項1の記述に関し、「常温速硬化性組成物」とは、本発明では、その速硬化性の指標を可使時間(ポットライフとも言う)で表記している。そして、20℃における可使時間が0.3〜30分の範囲のものを速硬化性であると定義している。理由は、0.3分においては速硬化が十分達成(超速硬化)されること、又、0.3分以下では、混合液を置換する時間に余裕がなく、操作性を低下させる恐れがあるからである。又、30分を以上では、一般的な通念として速硬化性であると言えない恐れがあるからである。
本発明で言う可使時間とは、2液(主剤、硬化剤)が混合されると重合が開始され、重合体の分子量が増加し始める。分子量の増加は粘度上昇を来たし流動性を著しく低下させる。この流動性を著しく低下させるまでの時間を、本発明では可使時間と称する。流動性の低下は円滑な塗布作業を困難にし、更に重合が進行すると塗布作業ができないゲル化を経て、固化、硬化体となる。従って塗布作業は可使時間以内にする必要がある。本発明における好ましい可使時間は0.3〜15分である。より好ましくは0.3〜5分である、更により好ましくは0.3〜2分である。最も好ましくは0.5〜2分である。しかしこれらに限定されるものではない。
又、本発明でいう「間欠吐出に使用できる塗布装置」とは、実用的な塗布作業ができる塗布装置を意味する。通常の塗布作業においては、塗布に使用する2液混合液は常に連続的使用されるものではなく、作業は、例えば、塗布/一時停止/塗布の連続サイクル塗布、作業のトラブル等に伴う作業の一時停止又は中断、更には作業の終了等、必ず断続的に使用されるものである。従って、該塗布装置は、本発明の速硬化性組成物の断続使用(間欠吐出)に対しても安定して塗布操作(易操作)ができる塗布装置を意味する。従来、2液混合型の塗布装置においては、高速作業性(高生産性)と易操作性とは相反関係にあり、易操作性と高速作業性を両立させる塗布装置は得られていなかった。本発明では、その双方を両立させることにある。
この相反関係を打破するために本発明者は鋭意検討した。その結果、本発明の目的を達成するには、20℃における可使時間が0.3〜30分の2液(A液、B液)混合型の速硬化性組成物に対して安定的に使用できる塗布装置は、(1)A液、B液、2液の精密定量吐出機(2)液切り替え弁、(3)混合器を有し、且つ該混合器中における混合液の滞留時間が可使時間の0.05〜1倍において、該混合液の置換(洗浄)手段を有する必要がある。このように本発明は2液混合型の速硬化性(超速硬化性を含む)組成物用の塗布装置であるので、とりわけ、混合器構造(混合器構成)、混合器内混合液を正確且つ効率的に置換(洗浄)する手段、更には塗布装置を統合的に制御、管理するシステムが重要である。前記に記したが、本発明のような速硬化(超速硬化を含む)になると混合器内でのゲル生成が速くなりゲル化時間が極端に短くなる。そのためゲル制御技術が重要になる。これには、混合液の置換手段がより重要であり、該置換には混合器構造が大きく関与するからである。
置換について検討した結果、機内混合液の滞留時間が少なくとも可使時間の0.05〜1倍の間において、混合液を正確且つ効率的に置換する(置換時間という)ことが本発明の達成に極めて重要であることが分かった。これにより、本発明の速硬化性組成物の断続使用(間欠吐出)に対しても安定した塗布操作(易操作)が可能になることを見出した。ここで、置換時間が可使時間の0.05倍以下であると置換時間が余りにも短いため置換操作に余裕がなくなり、操作性の低下を来たす。又、同時に置換操作を頻繁に行う必要があり、操作性、高生産性の低下を招き又経済的でもない。置換時間が可使時間の1倍を超えると、混合液粘度が急激に増大するため置換できない恐れがある。好ましい置換時間は可使時間の0.1〜0.5倍、より好ましくは0.1〜0.3倍、更により好ましくは約0.2〜0.3倍である。
従来からも、遅硬化性組成物の混合液の置換は可使時間以内に溶剤などを用いて置換することは公知であった。しかし本発明のような速硬化組成物においては、反応(重合)が一端開始されるとその反応熱による蓄熱、温度上昇に伴い反応が加速され急激な粘度上昇を伴う。そのため、塗布作業を円滑に行うには、混合液の置換をどのタイミングで行うのが合理的であるか従来は知られていなかった。本発明者は詳細な試験を重ねた結果、混合液の置換時間は、少なくとも可使時間以内であれば置換は可能であり、特に置換時間が可使時間の1/2以下では、混合直後の流動性に対し、流動性の低下が緩やであることを見出した(表5)。そのため可使時間の1/2以内に置換されるのが好ましい。更に、可使時間の1/3においては流動性の低下は殆ど認められないことを見だした。その結果、より好ましい置換時間は可使時間の1/3以内であるといえる。
本発明の塗布装置に用いられる精密定量吐出機は、精密定量吐出ができるものであれば、公知、市販のものを使用することができる。なかでも、シリンダー/ピストン方式、プランジャーポンプなどの容積計量方式の吐出器が好ましい。本発明においては、2液の供給量(吐出量)は、常に厳密に保持される必要がある。本発明の混合器は微小・小型化に重点を置いている。微小系において、2液の吐出量(A液/B液吐出量比)が常に一定に、より厳密に保持される必要がある。該2液の吐出精度、特に液切り替え時等、瞬間の吐出精度において容積計量方式が勝る。又、液切り替え弁は、スライド弁の他、回転弁、逆止弁、ニードル弁などが含まれる。
又、混合器としては、前記の置換を効果的にするために、混合器の冷却、混合器の小型化又は混合器の複数使用がより有効である。混合器を低温で冷却することにより、混合液の反応速度を抑え、可使時間が著しく延長できることが分かった。その結果、操作性が著しく改善できた。表4に示すように20℃における可使時間がー25℃では約20倍以上延長され、室温に戻すことにより混合液は本来の反応速度を再生し速硬化性を回復することを見出した。これより、易操作性と高速作業性の両立が図られることが理解される。ここで冷却温度は約−25℃〜+5℃である。ここで温度が−25℃以下では、反応速度が更に遅くなり好都合であるが、しかし温度低下によるA液、B液の流動性不良が懸念される。しかし、流動性が妨げなければ、−25℃以下、例えば−40℃でも一向にさしつけない。+5℃以上では常温との温度差が小さいため可使時間の延長効果が少なく、したがって易操作性の改善効果が少ない。
又、混合器の小型化が重要である。混合器が小さければ小さいほど、混合液の置換に要する液剤の使用量が少なくて済み、経済的である。混合器の内容積は1ml以下が好ましく、より好ましくは0.2ml以下であり、更に好ましくは0.1ml以下、最も好ましくは0.05ml以下である。下限値としては大よそ0.01ml程度である。しかし混合器内容積については上記の範囲に限定されるものではない。この他にも混合器を小型化する目的は、本発明の速硬化組成物は一端反応が開始されると発生した反応熱が蓄熱され、系内の温度が上昇する。温度上昇は反応速度を加速させ可使時間を一層短縮する(表3.N03−6〜3−7)。そのため蓄熱をできるだけ抑制することにある。蓄熱量は混合液量に依存するので混合器を可能な限り小さくすることが重要である。しかし、混合器の小型化には自ずから限界もあり、混合器があまりも小さいと混合器中への2液供給の定率保持、混合性、吐出性、又、混合器の加工精度及び混合器強度の保持が困難になる恐れがある。
又、混合器として、通常のモーターの回転による撹拌混合、この他にも振動等による混合、等を利用した動的混合器、スタティックミキサーなどの静的混合器、いずれも使用できる。混合液の置換性、混合器の小型化、経済性、操作性(ハンディータイプの塗布装置)等の点でスタティックミキサーが適切である。スタティックミキサーの小型化には、太軸ミキサー(図6(b)が、混合部容積の減少及びミキサー強度の保持の点で有用である。又、多段ミキサー(図6(c)も有効である。
更に又、スタティックミキサーを少なくとも2基(図7)有するマルチミキサーが有効である。該マルチミキサーは混合液吐出用ミキサーと混合液置換用ミキサーとして分離して使用される。すなわち、混合液吐出ミキサーを長時間使用し続けるとミキサー内に非流動成分(A液、B液反応生成物の増粘成分、固形分等)が蓄積され混合性が低下してくる。このような状況になると、単に混合液の置換のみではミキサーの再生は困難で新たにミキサーの交換やミキサーの強力な洗浄が必要となり、何れにしても作業の中断を伴う。この中断を避け、又は中断時間を最小限にするために、使用中ミキサーの混合性が低下してきたら該ミキサーを塗布装置から脱着し、そのあとに、直ぐに洗浄済みのミキサーを装着し吐出作業を継続する。一方、脱着したミキサーは直ちに別の洗浄工程で洗浄を済ませ、装着に備える。このミキサーの装着、脱着をロボット等で自動的に行う。これにより、常に良好な混合性と安定的な吐出となる。
又、置換液としては、通常の溶剤、第4類第2石油以上の高沸点溶剤、可塑剤を含む非反応性の希釈剤、2種の主剤(A液のポリイソシアネート、B液のポリオール)いずれも使用できる。溶剤及び高沸点溶媒は前記のマルチミキサーの洗浄に特に有効である。この洗浄においては、揮発性蒸気の揮散による環境面、引火による安全面への影響を遮断するため、洗浄系をクローズド系にし、溶剤を循環して洗浄するのが良い。又、主剤(A液、B液)で置換する場合は、混合器はスタッティクミキサーが望ましく、A液又はB液の何れかの液で混合液を押し出し置換することによりスタティックミキサーを清浄に保つことができる。この方法によれば溶剤を使用する必要がないので装置がシンプルにできる利点がある。
又、混合液の置換は、混合器内混合液の温度及び又は粘度を確認する混合液センサー、混合器内の滞留時間を確認する吐出タイマーで、夫々の計測値をデータ処理(置換プログラム)により、自動的に制御されることにより、本発明速硬化性組成物の間欠吐出が可能になる。ここで使用される混合機センサーは混合液の温度センサー、赤外線カメラ等公知技術により、リアルタイムに計測される。又、混合液の粘度(混合直後、滞留:≒0時間、と滞留:T時間の粘度比較)、は、混合液の吐出時の流動状態をカメラ(高速度)で連続的にモニターして、標準状態(滞留≒0時間)の流動性の対比等から求められる。該流出状態のモニターを容易にするため、予め、混合物(A液又はB液)は着色剤又は充填剤等を添加されるのが望ましい。しかし、混合液のセンサーに関してはこれらに限定されない。
次に、本発明の塗布システムを説明する。前記の塗布装置は環境的、経済的等において極めて価値があるが、更に、完全な塗布システムとして構築される必要がある。なぜなら、たまたま発生する不完全な塗布(接着剤、シーリング、コーティング等)により生じる製品(部材)欠陥は該経済性の優位性を破壊する。言うまでもなく、該部材は、車、家電製品等多くの高級製品に組み込まれており、一度、部材欠陥が発生すると製品に致命的なダーメージを与えかねないからである。
そのため、万全な塗布システムを確立する必要がある。本発明のシステムは、前記の装置に、A液、B液の供給センサー、混合液の置換センサー、吐出物確認センサーを配し構成される(図1)。該供給センサーには、A液、B液の重量変化を計測するデジタル重量計、管内を流れる流量計、A液,B液の夫々の供給タンクの液面レベルを表示するレベル計等が用いられる。又、混合液センサー及び吐出センサーには前記のセンサーが用いられる。 該システムは、これらセンサーによりリアルタイムに計測された信号をデータ処理し、安定塗布を実行する自動制御プログラム(液剤供給プログラム、置換プログラム及び吐出(塗布)プログラム)、塗布の異常を警告する警告プログラム、履歴を監視、貯蔵し、塗布の追跡調査を可能にする監視プログラム等を包含する。その結果、該システムは塗布の最適設定、製品(塗布体)の品質向上及び万全な品質管理システムを可能にする。
更に、本発明を図により説明する。しかし、これらの図は本発明の一例であって本発明を限定するものではない。図1は、精密定量吐出器に容積計量方式の吐出器、混合器に冷却部付きの静的混合器を使用した場合における塗布装置並びに塗布システムの概要を示した概念図である。該装置は、液剤供給用A液タンク(A0)、B液タンク(B0)、液切り替え用制御弁(A2)、(B2)を介して、夫々の精密定量吐出器(A1)、(B1)及び、冷却部(D)と吐出口(E)を有する混合器(C)に接続され、更に、(a1)、(b1)はA液、B液の供給センサー、(c)は置換センサー、(e)は吐出センサーを備え、それらを統合的に制御する制御部(S)からなっている。
ここで、(a1)、(b1)は前記の供給センサー、(c)は混合液センサー、e)は吐出センサーである。更に(S)には、駆動系(モーター、空圧、電磁弁、アクチュエータ、タイマー等)の制御機器を配し、計測信号をデータ処理するマイコン等のハードとソフト(安定塗布自動制御プログラム、警告プログラム、監視プログラム等)と連携している。ここで、吐出器(A1)、(B1)はシリンダー/ピストン方式の吐出器、(A2)、(B2)は三方回転弁、(D)混合器は冷却器(C)付きのスタティックミキサーである。又、(a1)、(b1)は、(A)液、(B)液の液面レベル計である。この他にも電子重量計など公知のものが使用される。(c)はサーミスターデジタル温度計である。(e)は監視用カメラである。
又、実線は液剤、点線(細線)は電気信号系、点線(太線)は駆動系の流れを表す。又、制御系(S)は前記の制御機器、マイコンのハード及びソフト等である。1.吐出器への液剤供給:は、制御系(S)のタイマーとの連動により、三方回転弁(A2)、(B2)二基を同時作動させ、液剤供給タンク(A0)、(B0)と吐出器(A1)、(B1)が同通する。と同時に吐出器ピストンが後退(2基は同期の往復運動)してシリンダー内に液剤を供給する。2.液剤の吐出は、 三方回転弁2基が切り替わり吐出器と冷却器(C)付きの混合器スタッティックミキサー(D)が同通する。同時にピストンを前進、2液押し出しスタティックで混合されて、混合液がノズル(E)から吐出される。
ここで、3.混合液の滞留時間は、該滞留時間は前記ピストンの後退時間と停止時間の和で示される。この吐出と停止がタイマーで自動サイクル(吐出/停止)制御運転される。タイマー制御による、ピストン作動、三方弁作動、駆動源には空圧アクチュエータが用いられる。液剤供給タンクからの液供給はピストンの吸引力で行っており、特に供給タンクへの加圧(空圧)は用いなくてもよい。しかし、液剤の粘度が高い場合には緩やかな加圧は有効である。
4.液剤供給センサー(a1)、(b1)は液剤レベル監視用センサーであり、液剤供給量の変化を連続的計測され、制御系(S)で2液の液切れ等の警報に利用される。5.(c)は混合液の温度を連続的に計測するサーミスター温度センサーである。6.(e)は吐出確認センサーは、高速度カメラ等である。吐出状況の確認は、正常な吐出(標準吐出: 吐出時間の初期値、すなわち滞留時間が0時間)と異常な吐出(滞留T時間後の増粘、液切れ等)の比較を流出画像の比較(プログラム)より、吐出状況の異常の有無を判別する。又、吐出、塗布体の画像を直接確認する手段としても有効である。
又、7.混合液の置換は、混合液の滞留時間、混合液の発熱温度、及び吐出状況等の計測から置換プログラムにより実行される。置換はA液、B液何れかの液剤を使用して、ピストンの最大液量(シリンダーの最大有効容積)でピストンを押し出して混合器内混合液を置換する(片液置換)方法が用いられる。ここで、ピストン1回の押し出しで、混合液が十分に置換される必要があるため混合器容積は、シリンダーの最大有効容積に比べて十分小さい必要があり、本系では、約1/5〜1/10である。同様に、8.塗布の自動管理は、これらセンサーを使用して、制御系(S)で前記の安定塗布自動制御プログラム、警告プログラム、監視プログラム等が連携、実行される。
図2は、簡易型の塗布装置を示したものである。該装置は、吐出器はプラスチック製のシリンジ(注射器)、シリンジの駆動源は空圧でピストン運動の切り替え用スイッチ、液切り替え弁はスライド弁と電磁弁、混合器はスタティクミキサー(冷却無)及び制御系を備える構成である。大別して液剤貯留系(10)、塗布機系(20〜60)及び駆動/制御系(90)で構成される。
(1)A液用、B液用2基の吐出器であるシリンダー(21a〜21b)、及びシリンダーに対応するピストン(22a〜22b)、(2)液切り替え弁であるスライド弁の固定部(外筒/31)それに対応する可動部(内筒/32)、(3)混合器(50)を備えている。2基のシリンダーの吐出口は外筒流路(313a〜313b)の溝穴に差し込み固定され、その周辺は注入樹脂(23)で強固に固定されている。ここでシリンダーとピストンは市販のプラスチック製種々サイズのシリンジを使用することができ、材質は弾性率が高く、軽量、安価で自己潤滑性に富むポリプロピレンが好適である。又シリンダーの固定に使用される注入樹脂は、硬質ウレタン樹脂、エポキシ樹脂等が使用される。ウレタン樹脂は、粘度が低いため充填し易く、樹脂が硬くて強靭であり、且つ硬化時間が速いため好適である。又、シリンダー/及びピストンの材質に金属、セラミックス等を用いても何ら問題はない。
ここでシリンダー/ピストンにプラスチック製、又その固定に注入樹脂を用いる理由は、一つは塗布機(20)の軽量化である。塗布機は据え置き型の他に本図に示すように手作業で携帯して使用されるケースが多い。このとき作業者の負担をかるくするため小型化、軽量化は必須条件である。二つは塗布機の吐出機と液切り替え弁を低価格にして簡単に作製でき且つ塗布機の構造を単純にすることができるからである。又、2基シリンダーの夫々対応するピストンは固定部(27)によって2基夫々が固定されている。通常の塗布作業においては2液の供給と吐出は連動/同期してピストンが可動する。本発明の好ましい塗布作業は一定の塗布サイクル(タイマー運転)で連続使用するのがより好ましい。
しかし、塗布作業には作業の中断が必ず伴うため、作業の一時停止などに伴う混合器内の液置換はA液、B液のいずれかで置換洗浄できるように、A液、B液のピストンは同期を解除し、夫々が単独(28a〜28b)で可動できる。更に好ましくは混合器内の混合液の滞留時間が可使時間を超えると、自動的に検知し、混合液を置換できる機構となっている。検知手段は、図1と同様に、吐出時間等から混合器内の滞留時間を算出し、置換プログラムにより実行される。又、ピストンの可動は空圧(95)を用いる。この他に、電気的、機械的、手動いずれでもでも構わない。
2基のシリンダーの形状、容積は同じであっても異なっていてもよいが、望ましくは同じであることが好ましい。理由はA液、B液を等容量吐出できると、気泡の混入、2液の定率吐出が崩れた場合等において、A液/B液の混合比率の変化を、より小さくするのに効果がある。その結果,硬化物の特性に最も大きい影響を与えるNCO/OH基比のバラツキを小さくするのに効果がある。又、混合性をよくする効果もある。又、A液、B液の吐出量は、シリンダーの断面積とピストンのストローク(25)長さを調節(26)することによってできる。本発明でいう「最大有効容積(ピストンの最大ストローク有効容積)とは、最大のストローク長さにより規定される容積である。又、本発明の定常吐出におけるピストンのストローク長は、好ましくは最大ストローク長の約1/3以下であることが望ましい。
又、図4(c)に示すように、シリンダーとピストンの隙間(221)にグリース類を充填し、湿気の侵入を防ぐことが望ましい。理由は、湿気はイソシアネートと反応し硬化物を与える。ピストン摺動部への僅かな湿気の侵入がシリンダー内のA液からイソシアネートが漏洩すると摺動部での硬化を防ぐために、グリースの使用は有用である。
次いで、液切り替え弁について、図3及び図4により説明する。図3及び図4は、切り替え弁としてスライド弁を使用した場合の液の切り替えに伴う、スライド弁の位置関係をしめした概略図である。図3(a)はシリンダーへの液剤供給を示す図である。図3(b)はシリンダーから混合器への吐出を示す図である。液切り替え弁であるスライド弁の固定部(外筒/31)は、A液用、B液用のそれぞれに対し、混合器側への吐出口(311)、タンクからの液剤取入口(312)及びシリンダーへの供給口(313)が設けられており、その夫々に流路が設けられている。スライド弁の可動部(内筒/32)は、A液用、B液用の夫々に対し、液剤タンクからシリンダーへの液剤供給流路(L字型流路/321)及びシリンダー内の液を混合器に吐出する流路(直線型流路/322)が設けられている。更に該L字型流路と該直線型流路は図のように一定の間隔で分離して設けられている。図4(a)、図4(b)も同様に、液切り替えによる流路を示したものである。
図3(a)は電磁石(33)の電磁力が解除(オフ)され、バネ(38)の復元力で、スライド弁可動部(32)を押し下げた状態を示す。このとき、タンク側とシリンダー側の流路が繋がりシリンダーに液剤が供給され、ピストンを後退させ、リミットスイッチ(01)が作動すると、図3(a)のように電磁石がオン状態になりスライド弁が押し上げられる。このとき流路がシリンダーから混合器側の流路に切り替わり、シリンダー内の液は混合器へ吐出される状態になる。このようにスライド弁可動部を上下に可動させることによって流路を切り替える。この上下に可動の際、可動部流路と固定部の流路が常に合致するように、可動部は上下のみの可動であり、上下の移動軸がずれない構造となっている。
図3(c)は可動部の液漏れ、湿気の侵入等を防ぐために、スライド弁にゴム製Oリング(323)を設けている。スライド弁の材質は金属、又は自己潤滑性に富み強度に優れるエンジニアリングプラスチック、例えば、ポリアセタール、硬質ポリエチレン、テフロン(登録商標)、ポリフェニレンサルファイド(充填剤入り)など、いずれでもよい。軽量化、自己潤滑性に勝るプラスチックがよい。
次いで、本簡易型、塗布装置の置換、洗浄液について説明する。通常、混合機の置換、洗浄には溶剤が用いられる。しかし、溶剤には、揮発性蒸気による臭気等環境面、引火による安全面又は洗浄後の廃液処理などの課題があるので、使用については、閉鎖系にするなどの対策が必要である。簡易型塗布装置おいて、本発明者は溶剤に代わる洗浄、置換について鋭意検討した。その結果、本発明に使用される主剤(A液、B液)が置換、洗浄液として有効であること見出した。A液(ポリイソシアネート)、B液(ポリオール)を置換液に用いると溶剤の課題が解消でき、且つ装置の簡略化に効果がある。
本発明の速硬化性組成物の混合液に対して、該組成物の反応液剤であるA液又はB液で置換洗浄できるか否かこれまで知られていなかった。その理由は、混合液を主剤で置換した場合、例えば図5(b)、B液供給口(40b)を通しB液置換した場合、混合機内の液はB液で満たされる。しかし、混合機内にはA液の供給口(40a)も存在する。そのため、A液供給口の先端部ではA液は必ずB液と接することになる。そうした場合、B液置換後においてもA液、B液界面は存在し、反応硬化することになる。特に本発明のような速硬化性組成物においては、硬化がより短時間で開始され、その硬化物の生成によりA液流路が塞がれてしまうことになる。そのため、A液又はB液による混合液の置換は実質的に不可能と考えられていた。
この点について本発明者は詳細に試験した結果、A液、B液界面では確かに硬化物の生成は認められた。しかしその生成物は肉眼で微かに識別できるかできないかの極めて薄い硬化物(薄膜層)であり、そして又、時間が経過しても硬化物層厚さの成長認められなかった。その結果、塗布作業を再開しても、吐出圧でその薄膜層は容易に破砕、吐出され塗布作業に何ら支障がなかった。更に、A液置換とB液置換においては、短時間の作業中断では両者に殆ど差がない。A液置換は長時間の作業中断になると混合機先端の吐出口では湿気と接するため硬化する傾向があった。しかし、B液置換ではこのようなことがないので、長時間の中断ではB液置換が好ましい。又、A液、B液の粘度の影響については、粘度の高い方の液で置換するのが好ましい。
このようにして、混合液の液置換に、A液、又はB液の一方を用いることにより、溶剤使用による環境上、安全上の課題が解消できる。又、前記B液の1回の吐出(最大ストーローク長)で混合液の置換が可能時になるので、塗布装置の構造がシンプルになり、速硬化性組成物の塗布操作性が飛躍的に向上させることができる。混合液を置換した置換残液の処理に対しても、残液に他方の液を添加し硬化させることにより固形分として廃棄できるなど処理が容易である。
又、混合器の小型化に関し、混合器の内容積は、例えば図5(a)に示すように、スタティックミキサーエレメントの長さ(Δ)とそれに対応するミキサー外筒(51)の内径で囲われる体積から、ミキサーの体積を差し引いた空間容積で示される。ここで、(Δ)は、エレメント数にも依存し、小型化にはエレメント数を少ない方が良い。一方、混合性はエレメント数が多いほど良い。そのため、エレメント数を少なく且つ混合性を良くする、そのために使用される本発明の組成物としては、2液の極性が近接している方が良い。更に又、混合器の内容積は器内の混合液を、少なくとも小さい方のピストンの1回の最大吐出(最大ストローク容積)で置換できるように混合器容積は十分小さい必要がある。該容積は該最大ストローク容積の約1/3以下であることが望ましい。
スタティックミキサーの小型化(空間容積)には、図6(b)に示す太軸型のスタティックミキサーが好ましい(通常のスタティックミサー比べ、ミキサーエレメントの外径、1エレメントの長さが同じ場合、該太軸型は混合機容積を小さくする(63、ΔφとΔの積)ことができる)。その他、太軸にすることにより、ミキサー内の流速が上がり混合性が増す。又、ミキサーエレメントの強度が増すなど、ミキサーの小型化に都合がよい。又、他の事例として、ミキサー径が異なる2種のミキサーを接続(ミキサーの先端側に小口径のミキサーを使用)する2段式ミキサー(図6(c))などが有効である。
更に、図5(a)に冷却部付の混合器を示す。該混合器が可使時間を著しく延長し操作性を改善する。そして冷却部(53)は混合器とワンタッチ式で容易に挿脱着できる構造となっている。この挿脱着については公知技術が使用される。好ましい冷却温度は前記に示した約ー25℃〜+5℃である。冷却は、例えばシリコーン油等を冷却した冷却媒体の循環使用などが好ましい。その他、操作し易く、効率的に冷却できるものであれば何でもよく、これに限定されない。又、冷却部付混合器の設置は、据え置き型、携帯型何れに使用できる。又、混合器は動的混合器、静的混合器何れも使用できる。
更に又、図6(d)、(65)は、混合器の吐出口に冷却を緩和するノズルを用いた混合器である。混合器で冷却された混合液を直接塗布すると、塗布直後の液は過度に冷却されており、このとき空気中の湿気を吸収し結露する恐れがある。この結露防止に冷却緩和ノズルの使用は効果がある。特に本発明のポリウレタン組成物はイソシアネートと、吸収した湿気が反応し、硬化物を発泡させる恐れがある。又、該ノズルの冷却緩和には、自然空冷、又は微加温された空気流(エアーカーテン)などが使用できる。又、吐出した塗布体に直接、乾燥空気流を流しても良い。また、該ノズルの材質は金属、プラスティック何でもよく、安価で使い捨て使用できるものが望ましい。
又、図7は、マルチ型スタティックミキサーとその洗浄についての概念図である。(71、72)は2基のスタッティクミキサーである。一方のミキサー(71)は吐出用、他方のミキサー(72)は洗浄用を示している。右図は定常吐出工程、左図は洗浄工程を示す。吐出工程の一方ミキサー(71)を使用し続けミキサーの混合性等が低下してくると、前記置換プログラムによりミキサーが自動的に交換され洗浄工程に移る。このとき、洗浄工程で既に洗浄を終えた他方のミキサー(72)が吐出工程のミキサーとして即設置される。(73)はミキサーを自動交換用のロボット等の制御機器であり、又、ミキサーの固定部にはミキサーを容易に挿脱着できるようにワンタッチ式の公知カプラー等が使用される。(74)は洗浄系を示す。ここで、(75)は洗浄液タンク、(76)は洗浄液循環用ポンプ、(77)は液切り替え弁である。(78)は洗浄液の循環経路を示す。該ミキサー交換の自動制御、及び該ミキサーの洗浄は公知技術により行うことができる。なお、該ミキサーは2個以上であっても良く、その交換、洗浄について、本図に限定されるものではない。
次いで、本発明の2液混合による常温速硬化性組成物について説明する。本発明者は、本発明の速硬化性用の塗布装置での使用を可能にする組成系について鋭意検討した。その結果、下記からなる組成物が本発明の速硬化性組成物として適切であることが分かった。
ここで、該ポリウレタン組成物のA液は、平均官能基数が2〜3、平均NCO基当量が84〜2000のポリイソシアネートを含有し、該ポリイソシアネートは例えば、ジフェニルメタン4,'4ジイソシアネート(MDI)の誘導体(液状MDI、クルードMDI、ヒマシ油変性MDIなど)、TDI誘導体(TDIのプレポリマー)等の芳香族ジイソシアネート、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、イソホロンジイソシネート(IPDI)、テトラメチルキシレンンジイソシアネート(TMXDI)、キシリデンジイソシアネート、水添キシリデンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート等の脂肪族又は脂環族ジイソシアネート、及びそれらの誘導体である。又、シアヌレート環を有するHDI等の3量体も有用である。しかし、これらに限定されずウレタン化学で使用される公知のものを用いることができる。
該ポリイソシアネートは単独物、混合物の何れであってもよい。又、NCO平均官能基基数は2〜3のものが好ましい。2以下では高分子形成能が劣り、又3以上では粘度が高くなる恐れがある。又平均NCO当量が約84〜2000のものが用いられる。84以下ではイソシアネートの蒸気圧が高く安全面が懸念される。2000以上では粘度が高くなり操作性の低下する恐れがある。好ましい当量は90〜500、より好ましい当量は90〜300である。この中でも、速い硬化速度、優れた耐熱性、イソシアネートの中では蒸気圧が低くい安全面で有利で、且つ粘度低いMDIの誘導体、耐熱性と耐候性に優れるHDIの3量体などが好ましい。
又、安全面、環境面の点から、使用されるポリイソシアネートの20℃における蒸気圧は1×10−2 (10のマイナス2乗)Torr(mmHg)以下であることが望ましい。蒸気圧がこれより高くなると人体への吸入毒性への影響が懸念されるからである。TDI、やHDIは蒸気圧が高いため好ましいものではないが、しかし十分なる換気設備、厳重なる安全対策が施されれば使用することができる。
ここで、A液の粘度は5〜100,000mPa・sのものが用いられる。5mPa・s以下では粘度が低すぎ、流動性が高くなりすぎて操作し難い恐れがある。反対に100,000mPa・s以上では粘度が高いために流動性が低下する恐れがある。微小な混合器においては、液移動や混合性(拡散)において低粘度の方が良い。粘度が高いと圧力損出が大きく作業し辛くなる恐れがある。好ましい粘度範囲は10〜10,000mPa・sであり、より好ましくは10〜3,000mPa・s、である。しかし、これらの粘度に限定されるものではない。
該組成物のB液は、平均官能基数が2〜6、平均OH基当量が40〜5000のポリオールを含有するポリオールは、例えば、通常のポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、又、ブタジエン変性ポリオール、ヒマシ油変性ポリオール、シリコーン変性ポリオール、エポキシ変性ポリオール、フッ素原子置換されたポリオール、など通常のウレタン化学で使用される公知のポリオールを用いることができる。又、耐熱性の点ではポリエーテル系よりポリエステルポリオールが好ましい。該ポリオールは単独物、混合物のいずれでもよい。OH平均官能基数は2〜6、より好ましくは2〜3である。2以下では高分子形成能が劣り、又6以上では粘度が高くなる恐れがある。又、OH基当量が40〜5000である。この中には低分子量の鎖延長剤が含まれる。当量数が5,000を超えると粘度が高くなる恐れがある。好ましい当量数は50〜1,000、より好ましくは50〜500、更により好ましくは50〜300である。
又、該B液には、本発明組成物を速硬化型にするための触媒が用いられる。それらは、例えば、トリエチレンジアミン等の3級アミン系触媒、金属系触媒としてのジブチルスズジラウリレート等の有機スズ系触媒、鉄・クロム・ニッケル・亜鉛などのオクテン酸塩類、又はナフテン酸塩類、アセチルアセトン錯化合物など、通常の公知ウレタン触媒が使用せられる。中でもスズ系触媒が好ましい。又、ポリオール中の触媒量は0.01〜5重量%である。理由は0.01%以下では本発明の十分な速硬化性が得られない恐れがある。5%以上では十分速硬化性が得られ、添加増による物性への悪影響が懸念されるので、これ以上の添加は意味がない。好ましくは0.05〜4重量%、より好ましくは0.05〜1.5重量%である。
又、硬化物の発泡を抑えるために、B液中の含水率が0.5%以下である必要がある。好ましい含水率は0.1%以下であり、より好ましくは0.05%以下である。又、B液の粘度は50〜100,000m・Paのものが用いられる。50mPa・s以下では粘度が低すぎ、流動性が高くなりすぎて操作し難い恐れがある。反対に100,000mPa・s以上では粘度が高いために流動性が低下する恐れがある。特に微小な混合器においては、液移動や混合性(拡散)において低粘度の方が良い。粘度が高いと圧力損出が大きく作業し辛くなる恐れがある。好ましい粘度範囲は50〜10,000mPa・sであり、より好ましくは50〜5,000mPa・s、更に好ましくは50〜3,000mPa・sである。又、A剤,B剤夫々の粘度が小さすぎて流れすぎる場合は夫々の液にチクソ剤の添加等により構造粘性を持たせるのが有効である。
又、A液及びB液の粘度差が大きいと特に静的混合器においては混合性の低下の恐れがある。従って双方の粘度差は近接していることが望ましい。好ましいA液/B液の粘度比は20/1〜1/20、より好ましくは10/1〜1/10である。しかし、これらの粘度に限定されるものではない
更に、本発明の組成物は、硬化物の最適物性を得るため、最適な当量基準が前提である。そのため、該当量基準(NCO基/OH基当量比)は1.5/1〜1/1.5の範囲である。当量比が1.5/1以上、また1/1.5以下では、いずれにおいても分子量が十分大きくならないために、十分な硬化物強度が得られない。好ましい当量比は1.3/1〜1/1.3、更に好ましい当量比は1.2/1〜1/1.2である。
更に又、A液とB液の混合比率も重要である。特にスタティックミキサー混合においては、A液/B液の体積混合比率は100/20〜20/100の範囲にあることが望ましい。混合比率が1/1混合から極端に異なると混合性の低下、及びA液/B液の吐出比のバラツキを助長する恐れがある。そのため、A液とB液の混合比率はできるだけ近接していることが望ましい。好ましい混合比率は100/50〜50/100、であり、理想的には100/100である。しかし、混合比率はこれらに限定されるものではない。
又、本発明においては2液混合時における相溶化状態は更に重要である。ここで、本発明でいう、相溶化とは、混合液が互いに溶解し均一透明液の状態を指す。又、準相溶化とは、混合液が微粒状に分散、分離を伴わない半透明状態、又は混合液が不透明の状態にあっても相分離速度が遅い状態(本発明では、混合1時間後においても分離が認めらない)を指す。本発明では、2液の混合液は、相溶化、又は準相溶化状態が保持される必要がある。理由は、相溶化、又は準相溶化状態でないと、混合機内で2液の混合が不十分ため硬化がせず、安定した硬化物特性が得られない。スタティックミキサーでの混合性を良くするには、エレメント数を増やす必要があり、これはミキサー容積を大きくすることにつながり本発明の目的とするところではない。ここで、相溶化の指標として、ソルビュリティーパラメーター(SP値)が重要であり、ポリイソシアネート、及びポリオールのSP値が近接しているほど相溶化し易く望ましい。
更に又、本発明の速硬化性組成物に求められる20℃における可使時間は0.3〜30分の範囲である。好ましい可使時間は0.3〜15分である。より好ましくは0.3〜5分である、更により好ましくは0.3〜2分である。最も好ましくは0.5〜2分である。しかしこれらに限定されるものではない。
又、速硬化性組成物の操作性の改善手段として、該組成物を、冷却された混合機中で混合使用するのが極めて有効である。低温下においては混合液の反応速度が遅くなり可使時間が延長されるので余裕を持って操作することが可能である。そして、該組成物を低温状態で混合、塗布することにより、塗布体が室温(周囲環境)で暖められて、速硬化性を急速に回復させることが可能である。そのため、該低温混合に使用されるA液(ポリイソシアネート)、B液(ポリオール)の双方、又その混合液は低温下で流動性を保持する必要がある。流動温度は約ー25℃〜+5℃である。理由は、−25℃以下では、混合液の反応性は十分低下するので混合液の置換操作性は向上する。しかし、流動粘度は高くなるので操作性が低下する恐れがある。又、+5℃以上では、常温との温度差が近接しているので、可使時間の延長効果が少ない。好ましい流動化温度はー5℃〜−15℃、より好ましい温度はー15℃〜−25℃である。−25℃以下(例えば―40℃)でも流動性が妨げなければ一向に差し支えなく操作性は著しく向上する。
更に又、従来のポリウレタン硬化物は特に耐熱性を欠いていた。そして耐熱性の低下はポリウレタンの分子構造、ウレタン結合の分解に基づく本質的な問題であるとされていた。この耐熱性の欠陥により高性能、高機能分野への利用が著しく制約されていた。本発明者は耐熱性の改善を鋭意検討した。その結果、耐熱性が加熱硬化型に比べ劣るとされる常温硬化型において、25℃で3日間養生硬化させた硬化物が、空気中毎分10℃定速昇温条件下において、重量減少開始温度が250℃以上、且つ300℃における重量減少率が10%以下のものが得られた。これは従来ポリウレタンの耐熱性を大幅に改善する組成物である。更に、条件の最適化により、より好ましい耐熱性組成物として、該温度が260℃以上、該減少率が5%以下のものが、更には、260℃以上、3%以下であるものが得られた。これは、耐熱性が良好とされる加熱硬化型(酸無水物)エポキシに近いものである。このように、速硬化性と耐熱性の双方を満たすポリウレタンは、従来、見られなかったことであり、新規な常温速硬化の耐熱性組成物として有用である。
更に、高温下における電気絶縁性改善について検討した。前記の組成物を25℃で3日間養生硬化させた硬化物の体積抵抗率が、25℃で10の13乗以上且つ110℃で10の11乗以上である組成物を見出した。更に好ましい体積抵抗率として、25℃で10の14乗以上且つ110℃で10の12乗以上のものが得られた。これらは、いずれも高温下における電気絶縁性を改善するものである。従来のポリウレタンにおいては、電気絶縁性は温度上昇により急激に低下し、従来、高温下(110℃)の体積抵抗値は、常温下(25℃)の体積抵抗値に比べ約3〜4桁低下するものであった。これに比べ本発明の組成物は約2桁程度の低下で済み、低下が緩やかであった。又、絶縁性の指標として、体積抵抗値が10の11乗以上保持されることから、耐熱絶縁特性の改善効果が著しく、新規な常温速硬化性の耐熱高絶縁組成物として有用である。
更に又、従来ポリウレタンでは温度上昇により硬化物が軟化するため高温下における硬度低下は避けられなかった。本発明硬化物のショアーD硬度が、25℃で80以上、110℃下で60以上である耐熱硬度組成物が得られた。より好ましい硬度として、25℃で80以上、110℃で75以上である。これらも又、従来のポリウレタンでは見られなかったものであり、新規な常温速硬化性の耐熱高硬度組成物として有用である。
本発明の組成物は必要に応じ、各種の添加剤を配合することができる。フマル酸エステル、アジピン酸エステル、リン酸エステル等の可塑剤、反応性の可塑剤。炭酸カルシウム、硫酸カルシウム、ケイ酸マグネシウム、炭酸マグネシウム、アルミナ、石英粉末、シリカ、半水石膏、ゼオライト、セメント、タルクなどの無機充填剤。さらに各種金属粉、各種の有機系粉末、着色剤、熱安定剤、酸化防止剤、光安定剤などが添加できる。しかしこれらに限定されない。又、流動性を妨げない範囲でポリマー類を添加できる。
次いで、本発明の塗布方法並びに硬化方法について説明する。本発明は、先の易作業性且つ高生産性に優れる2液混合型塗布装置を使用して、物性バランスが良好で且つ耐熱性が改善されたポリウレタン速硬化性組成物を塗布、硬化させることからなる。本塗布方法、硬化方法を使用すれば、極めて多様な特性を有し且つ耐熱性に優れ、潜在力に富むポリウレタン硬化物を省エネ、高生産性等、極めて経済的に硬化物を製造することができる。その結果、家電・情報通信等の電子部材、車両・輸送機材、建築用材、環境衛生材及び一般工業資材等多方面分野への粘着、接着、シーリング、コーティング、ポッティングなどを経済的、高効率に製造することが可能である。又、特性面では、ゲル、ゴム的なものから高強度材、高硬度材、耐熱材など幅広く、又、各種の機能性充填剤を使用することによって熱伝導材、導電材、難燃材など、の多様な機能材の効率な製造が可能である。
以下、本試験に使用した原料物質、試験器具、及び試験法等は下記によった。
[原料] 本試験に使用した、原料(ポリイソシアネート、ポリオール、触媒等)を表1に示した。なお、同表の物性値は、文献値又はメーカーのカタログ等の値を引用した。
[試験器具](1)2液定量吐出器: 本試験に使用した吐出器は下記によった。
吐出器A:(2連式等容積吐出器): 市販品のポリプロピレン製シリンジ(注射器5ml、2器)を使用して、表3、実験番号3−1の処方(A液、B液共50g)をプラスチック性カップに秤量、手動で混合、混合液を、2台のシリンダー間に充填し、図2の(21)相当の2連式シリンダーを作製した。ピストンについても2器を冶具で固定、(22)に相当のピストンを作製した。
(2)混合器: スタティックミキサー: 市販品プラスティック製スタティックミキサー(B)、3mmφ(B1: 7エレメント容積0.12ml、B2: 14エレメント容積0.26ml、B3: 17エレメント0.3ml)を使用した。なお、上記のミキサー内容積は、内容積相当分の水を充填し、その重量変化から内容積を算出した。
〔試験方法の説明〕
(低温下における流動性試験): (1)−5℃における流動性試験: 試験液(表3の処方液)2gを10mlガラスサンプル管にとり密栓、−5〜7℃低温槽に1時間静置。同温度(同槽内)でサンプル管を転倒させ、該試験液の流動性を判定した。<判定>(○)試験液が容易に流動した。(×)試験液が流動しなかった。(△)試験液が少し流動した。
(2)−25℃における流動性試験: 前記(1)の温度をー25〜−27℃と抜き取り時間を変えた他は、前記(1)の方法に準じた。
(低温下における可使時間の測定): (1)−5℃における可使時間: 試験液(表4のA液、B液)各1gを10mlガラス製サンプル管(予め撹拌用SAS板(5X80X1mm)を装填)に採取、ラップフィルムで覆った。同様に該試験を3点調製した(n=3)。この試験液はA液が下層、B液が上層に分離した。該試験液をー5〜−7℃低温槽中で1時間静置した。その後、該試験液を、同温度(同槽内)で15秒間撹拌、良く混合し(n=3共)、同温度で静置を続け、可使時間測定に備えた。第1回目は静置5分後、第2回目は10分後、第3回目は15分後に夫々を槽内から取り出し、直ちに、素早く容器を転倒、その流動状態から可使時間を推定した。可使時間は、「前記の低温下における流動性の判定(△)試験液が少し流動した」の時間とした。
(2)−25℃の可使時間: 前記(1)の温度をー25〜−27℃に、又、同温度で混合後静置時間を10分、15分、20分変えた他は、前記(1)の方法に準じた。
(常温下における、流動性、可使時間、固着時間の測定): 実施例の方法によった。
(重量減少開始温度及び300℃における重量減少率の測定): METTLER社製熱分析装置を使用、 室温3日間キュアーした硬化物約10mgをサンプリング、該測定装置にセット、空気中毎分10℃で、常温から600℃まで定速昇温させ、硬化物の重量変化を連続的に測定、重量減少曲線を測定した。該重量減少曲線から、(1)重量減少が開始される温度を重量減少開始温度とした。又、(2)該重量曲線から、300℃における重量減少を求め、該温度における重量減少率(%)を算出した。
(体積抵抗率の測定): 安藤電気製電気抵抗測定装置を使用、 室温3日間キュアーした所定形状の硬化物を該装置にセット、測定電圧100V、JISK−6991−1995の方法に準拠して、25℃、及び加熱槽で昇温、温度110℃下で、夫々体積固有抵抗値を測定した。
(ショアーD硬度測定): 室温3日間キュアーした硬化物(厚さ10mm、20mm角)を、温度25℃、及び加熱温度110℃下における、ショアーD硬度を測定した。
(半田耐熱性): 室温3日間キュアーした試験片(厚さ2mm、幅7mm、長さ20mm)を、鉛フリーはんだ(融点220℃)浴、温度250℃に3分間浸漬して、外観を観察した。
(耐熱油性): 室温3日間キュアーした試験片(厚さ2mm、幅7mm、長さ20mm)を、石油系αオレフィン油(PAO−5010:出光興産製)温度230℃に2時間浸漬して、外観を観察した。
以下、実施例により本発明を説明する。
実施例1. ポリイソシアネート、及びポリオールの低温流動性を評価するために、表2に示す試験液(配合処方、表中の数値は、A液、B液夫々の100重量部に対する、ポリイソシアネート及びポリオールの重量部を表す)を使用して、各試験液2gを10mlガラスサンプル管に採取、NO2−1〜NO2−14の全試験液を調製した。(1)全試験液をー5℃〜−7℃に調整された低温槽に1時間貯蔵後流動性を測定した。そのあと(2)低温槽の温度を下げ、全試験を−25℃〜−27℃で1時間貯蔵し、該温度における流動性を測定した。なお、流動性の評価については、前記試験法によった。試験液の配合処方、並びに流動性の試験結果を表2に併記した。
表2の結果から次のことが言える。(1) −5℃における流動性については、ポリイソシアネート、ポリオール共、総じて流動性は保持される。しかし、(2) −25℃における流動性について、ポリイソシアネート単独物の流動性は、NO2−4(IPDI)を除き、大きく低下する。そのため、流動性の維持にはIPDIとの混合物が有効である。又、ポリオールについて、ポリエーテル系、ひまし油に比べ、ポリエステル系は流動性が低下する傾向があった。流動性の維持には、ポリイソシアネートと同様、混合物としての使用が有効であった。
実施例2.次に、20℃における可使時間を評価するために、表3に示す試験液を使用して、各種可使時間の調製並びに測定を行った。(1)可使時間の調節はB液中の触媒量を変えて行った。A液、B液の混合は、当量比が1/1、混合量はA液、B液各1gの計2gを10mlガラスサンプル管に採取、15秒間、手動撹拌密栓、サンプル管を15秒間隔で静置/転倒を繰り返し、混合液が流動し難くなる時間を可使時間とした。
又、(2)混合液量の影響を評価するため、液量(NO3−6〜3−7)を変えて試験した。なおこの試験は、NO.3−6はアルミ容器(底面20mmφ、高さ15mm、厚さ0.5mm)、NO.3−7は紙カップ中で混合、流動性の評価から可使時間を求めた。(3)固着時間は、前記(1)の評価後、混合液が硬化(表面固化)し始める時間を固着時間とした。試験条件並びに試験結果を表3に併記した。
表3の結果から次のことが言える。(1)の試験から、SN触媒量の添加量を変えることにより、本発明の2液混合速硬化性組成物(0.3分〜30分)を調製可能なことが判る。又、(2)混合量の可使時間に及ぶす影響は極めて大きいことが分かる(NO3−3、NO3−6〜3ー7)。これより、混合量が少なくなる(反応熱が少ないため反応加速効果が小)と可使時間が延長される。本発明の混合器の小型化が極めて有効であることを示唆する。
実施例3.次に、低温下(−5℃及びー25℃)における可使時間を評価するために、低温下(−25℃)で流動性を示す試験液(NO2−5A液、NO2−14B液)を用いて、表4に示す試験を行った。試験は前記の方法によった。試験結果を同表に併記した。
表4の結果から次のことが言える。低温混合により、例えば、−5℃においては、可使時間が常温(20℃)より約8倍、−25℃においては約20倍位,あるいはそれ以上延長されることが分かる。このことから、本発明における、混合器の冷却が、可使時間の延長に著しい効果があることが分かる。従って、本手法を用いることにより、本発明の2液混合速硬化性組成物の操作性を大幅に改善させることが理解できる。
実施例4.次に、20℃における、2液混合速硬化性組成物混合物の発熱温度、流動性の測定を行った。又、該測定から、可使時間並びに置換時間を推定した。可使時間の異なる供試験液組成、並びに混合条件を表5に示した。
(1)発熱温度の測定: 表5に示す可使時間の異なる、A液、B液計2g(NO5−1〜5−4)を10mlガラスサンプル管に採取した。該サンプル管にサーミスタデジタル温度計を差し込み、温度を測定した(初期温度)。該温度計で約15秒間2液を撹拌混合、撹拌を停止し温度を測定した。停止後サンプル管を静置、混合液の液温を15秒間隔で温度測定した。夫々4点(a0〜a2、及びb1)測定し、その発熱曲線を表5(a)に示した。
(2)流動性の測定: NO5−2の(a1)液を使用して流動性を評価した。前記(1)の発熱温度測定と同じ条件で2液試験液を、予め、該サンプル管外壁面高さ方向に、液移動を計測するメニスカス(長さ40mm)を張り付けた前記サンプル管(底面20mmφ、高さ40mm)に採取した。幅広(7mm)のスパチラで2液を15秒間混合後サンプル管密栓し、サンプル管を静置した。混合開始30秒後(静置後15秒後)、サンプル管を転倒(5秒間保持)し、混合液の移動距離(流動性)をメニスカスから求めた。転倒5秒後、該管を元(静置状態)に戻した。この操作を30秒間隔で測定、その移動距離を求め、表5(b)に結果を示した。
表5の結果から次のことが言える。(1)発熱曲線: (a0)の無触媒系(遅硬化系: 混合液は1日後でも流動)には、発熱が全く認められない。(a1)、(a2)と触媒の増量により発熱温度が増し、又、発熱ピーク温度が短時間側にずれる。ピーク温度経過後の温度は低下を早めるのが認められる。又、硬化速度の速い組成系(b1)は混合直後から発熱の度合いが大きい。(a0)を除く何れにおいても、2液を混合すると直ぐ発熱(反応)する、いわゆる付加重合で認められる重合誘導期間は認められない、ことが見出された。(2)流動曲線: (a1)組成系の流動曲線をプロットした。前記の発熱曲線も併記した。該曲線より、本系においては、混合開始から4分後は殆ど流動性(移動距離)に変化は認められない。その後流動性の低下(4分〜12分)が大きく、その後低下は緩やか(13分〜17分)となり、約20分で流動性が停止した。(3)可使時間の評価: 先に、可使時間が混合液量(NO3−6〜3−7)に依存することを示した。本発明の目的から可使時間の評価は微小/混合系が望ましい。微所系で且つ高反応性(速硬化性)の流動性(粘度)の評価(通常の粘度測定法)は難しいものがある。そのため、本発明においては、可使時間の簡便評価法として該流動曲線の測定から評価し、又、可使時間は、表5(b)の2直線の交点(図のPL点)近傍を可使時間(10〜13分)とした。
(4)固着時間の測定: (1)の(a1)発熱曲線測定のサンプルを用いて、固着時間を測定した。固着時間は混合液の内部が硬化し表面がタックフリーし始める時間を固着時間とした。
(5)置換時間の推定(表5(c)): 図より、置換時間は、流動性の低下がし始め点(約5〜6分: 可使時間の1/2)、より好ましくは、殆ど流動低下が生じない時間(4分: 可使時間の1/3)帯で、置換するのが良いと推定された。
実施例5.主剤(A液又はB液)による、混合器内混合液の置換性試験、及び混合性、吐出性の評価試験を行った。置換試験は以下の方法によった。(1) 前記の(A)試作プラスチック製2基連結式ピストンシリンダー(5ml2基、混合液調製用)、(C)5ml置換用ピストンシリンダー及び前記のスタティックミサー(B3)の夫々をプラスチック製三方回転弁(外径6mm、内径4mm)に接続した。三方弁への接続の位置関係は、三方弁を中心に(a)のシリンダーは上部側、(B3)ミキサーは下部側、(C)置換シリンダーは水平側にある。又、その接続方法は、(A)シリンダーの2基の吐出口はその固定冶具(2液を貫通する)を介して三方弁の上部側管(内径2mmφ)に接続されている。(B3)のミキサー上部側(吸入口)はその固定冶具(液を貫通する)を介して三方弁の下部側管(内径2mmφ)と接続されている。又、(C)の置換シリンダーの吐出口は三方弁の水平側管に直接差し込み接続されている。
(2)例NO6−1の実施:(ア) 固定冶具(出口を粘着テープで塞いだ)を取り付けた(A)シリンダーの一方にNO5−4A液、他方にNO5−4B液夫々約3mlを充填、その後ピストンを装填する。シリンダーの上下を反転し、テープを剥がし、ピストンを押し出しシリンダー内の空気を追い出し、液で満たした。次に、同様に(C)シリンダーに置換液の5−4B液を約3ml充填、ピストンを装填し、シリンダー内を液で満たした。夫々の液で満たされた該(A)、該(C)、該(B3)を三方弁に接続した。(イ)次に、三方弁のコックを切り替え(A)と(B3)を連通させた((C)は遮断)。次に、(A)シリンダーのピストンを押し2液を吐出し(B3)ミキサー内を2液でみたし混合し、ピストンを停止した(初期時間: 滞留時間:0秒)。停止を14秒(滞留時間)続けた後、(ロ)直ぐ三方弁を置換側((C)と(B3)が連通)に切り替え、(C)ピストンを押し置換液(B液)を吐出させ、ミキサー内の混合液をB液2ml(ミキサー容積の5倍量+流路容積)で置換した。ミキサー内の外観を観察すると共にその状態を30分保持した。(ウ)30分後にミキサー及びミキサーエレメントを取り外し、ひまし油で洗浄してミキサー内の残渣を確認した。
(3)NO6−2は、置換時間を30秒に変えた他はNO6−1の方法によった。NO6−3は置換時間を70秒に変えた他はNO6−1の方法によった。NO6−4は、置換液をA液に変えた他はNO6―1の方法によった。NO6−5は、ミキサーをB2ミキサー、及び置換量を1.7mlとした他はNO6−1の方法によった。NO6−6はミキサーをB1に、置換液量を1.0mlとしたほかNO6−1の方法によった。置換性試験、及び混合性、吐出性試験の試験条件並びに試験結果を表6に併記した。
表6の結果から次のことが言える。(ア)可使時間が70秒の速硬化性混合液の置換に対して、主剤(A液又はB液何れも)置換が有効であることが分かった。置換時間としては、可使時間の0.43倍、0.2倍で置換したものは、ミキサーの外観に変化はなく、またミキサー内に残渣もなく、置換が何れも効果的にあることが示された。しかし、NO6−4の可使時間相当の置換については、ミキサー内部に一部ゲル成分残渣が認められた。これは高粘性成分が生成し、主剤では置換しきれなかったためと考えられる。このことは前記の実施例4、表5(b)の結果の妥当性を示唆し、主剤置換は流動性の低下しない範囲で置換することが極めて有効であることが理解される。(イ)2液の定量吐出性(2液の吐出精度)及び混合液の吐出性(混合器内の吐出抵抗等)は何れも良好で問題はなかった。(ウ)混合性については、当然ながらスタティックミキサーのエレメント数に依存した。本系では、十分な混合性を得るには17エレメントが必要であることが示された。しかし、これは2液の組成を変え、2液の相溶性を良くすることによりエレメント数を少なくすることは可能であると考えられる。(エ)本試験で使用したミキサー(B3)の容積は0.3ml(内径3mmφ、17エレメント)であり、置換性、混合性、吐出性何れも良好であった。このことから、更なるミキサーの小型化が可能であると考えられる。該ミキサー(B3)の結果ら、ミキサー内径2mmφ(内容積0.1ml以下/計算値)のものも十分可能であると予想され、また、これらは公知技術を使用し十分作製が可能である。更なるミキサーの小型化は、置換液量を減少させ経済的であり且つ簡便な方法で高生産性と易操作性が実現できるので、極めて有用であることが示唆される。
実施例6. 次に、本発明の速硬化性組成物の硬化物特性を評価するために、表7に示す配合試験を行った。また同表に示した混合条件で可使時間、並びに固着時間を測定すると共に、室温で3日間養生し硬化物を作製した。得られた該硬化物について、前記の測定方法により硬化物特性を評価した。配合表並びに試験結果を同表に併記した。又、参考例として加熱硬化型のエポキシを併記した。なお、同表に示した
組成物は本発明の組成物を例示したものであって、本発明はこれに制約されるものではない。
表7の結果から次のことが言える。NO7−1とNO7−3の熱分解性(重量開始減少温度と300℃重量減少率)が、耐熱性が良好な加熱硬化型エポキシ(参考例)に比べても遜色ない。又、NO7−2の耐熱硬度はエポキシと殆ど同等である。このことから、NO7−1〜7−3の耐熱性はエポキシ相当と言える。NO7−4は従来型のポリウレタン組成物例である。これに比べて,NO7−1〜NO7−3は、従来型の耐熱性(熱分解性)を大幅に改善していることが分かる。又NO7−1は耐熱電気絶縁性が、NO7−2は耐熱硬度が大幅に改善されていることが分かる。又、NO7−1及びNO7−3は半田耐熱性や耐熱油性も良好である。これらは新しい知見であり、従来のポリウレタンは耐熱性が悪いとする定説の見直しを促すものである。又、これら組成物は、常温速硬化性による省エネルギー、高生産性、及び易環境性を有しており、表中の強度特性の評価からもわかるように、高硬度、強靭〜柔軟、軟質、の広い強度領域の調整が可能なことを示している。このことから、本発明の組成物は高生産性と優れた製品設計性を兼備するものとして理解される。