JP5421515B2 - 軽油組成物 - Google Patents
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この要望に対して、カーボンニュートラルの概念、すなわち、燃料(油)の中でも、植物に由来するものは、ライフサイクルで見ると大気中の二酸化炭素を増加させることにはならないと考えられることから、それを使用することによって排出される二酸化炭素は、温室効果ガス排出量にはカウントされないこととされている。そのため、植物由来の化合物、例えば油脂類を原料として得られる脂肪酸アルキルエステルを配合した軽油組成物が注目されている(例えば、特許文献1参照)。
このような消泡速度が遅く、消泡時間が長い軽油は、取扱い上の問題を生ずることが多い。例えば、通常給油取扱所の軽油の計量機の給油ノズルには満量停止装置が取り付けられていて、ディーゼル車に軽油を給油する際に、軽油が満量近くになって泡面が検知されると給油は停止される。しかし、消泡速度が遅く、消泡時間が長い軽油では、発泡した泡が消えないため満量まで給油されないことがある。このように、消泡速度が遅い軽油は、適切な給油が妨げられることがある。
従って、消泡速度が速い、つまり消泡時間が短い軽油であることが必要とされている。
しかしながら、この方法では、必ずしも消泡速度が速く、消泡時間が短いとはいえず、また脂肪酸アルキルエステルを配合した軽油については、その性能は充分に検討されていない。
1.脱硫軽油及び脱硫灯油を容量%比(軽油/灯油)で75/20〜45/45の範囲で混合した、JIS K2241に準拠して測定される表面張力が26.4〜27.2mN/mの範囲である炭化水素系軽油基材に、組成物全量を基準とし、脂肪酸アルキルエステルを2〜20容量%配合してなり、15℃における密度が0.816〜0.825g/cm3の範囲である軽油組成物、
2.さらに、下記の(1)〜(5)の条件を満たすことを特徴とする前記1に記載の軽油組成物、
(1)セタン価が45〜70
(2)硫黄分が10質量ppm以下
(3)窒素分が3質量ppm以下
(4)芳香族分が10〜20容量%
(5)70%留出温度が240〜330℃、かつ90%留出温度が270〜360℃
3.水分が100質量ppm以下である前記1又は2に記載の軽油組成物、
を提供するものである。
A = 3.72(1.08a−25.91)1.75 ・・・(1)
で表される消泡時間指数Aが35以下である炭化水素系軽油基材を用いることを要する。
前記式(1)中、aは炭化水素系軽油基材の表面張力(mN/m)を表す。この炭化水素系軽油基材の表面張力は、JIS K2241「切削油剤」の7.3に規定する「表面張力試験方法」に基づいて測定した値である。
前記式(1)で表される消泡時間指数Aが35を超える炭化水素系軽油基材を用いた場合、脂肪酸アルキルエステルを配合した軽油組成物の消泡速度が低下し、消泡時間が長くなるため本願発明の目的を達することができない。この消泡時間指数Aは、30以下であることが好ましい。
したがって、本発明に用いる炭化水素系軽油基材は、15℃における密度が0.79g/cm3以上であることが好ましい。
炭素数8〜22の脂肪酸は、飽和脂肪酸でも不飽和脂肪酸でよく、また直鎖状脂肪酸、分岐鎖を有する脂肪酸であってもよい。このような脂肪酸の具体例としては、例えば、カプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、パルミトレイン酸、ステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、アラキン酸、エイコセン酸、アラキドン酸、エイコサペンタエン酸、ベヘニン酸、エルカ酸、ドコサペンタエン酸、ドコサヘキサエン酸などが挙げられる。
このような混合脂肪酸は、動物油や植物油などの油脂、すなわちトリグリセリドを原料とし、それから得られる混合脂肪酸を用いることが、大量に入手することができるため好適である。このような原料動物油の具体例としては、牛脂、豚脂、羊脂、鯨油、魚油、肝油等が、原料植物油の具体例としては、アマニ油、サフラワー油、ひまわり油、大豆油、コーン油、綿実油、ゴマ油、オリーブ油、ヒマシ油、落花生油、ココヤシ油、パーム核油、パーム油、菜種油、米ぬか油等が挙げられる。また、これら動物油の廃食油も好適に用いられる。
15℃における密度が0.81g/cm3以上であれば、出力を高く、燃費を良好に保つことができる。一方、15℃における密度の上限は、特に制限はないが、0.85g/cm3以下であることが好ましい。15℃における密度が0.85g/cm3以下であれば、燃焼性を良好に保ち、排気ガス中の全炭化水素(THC)、CO及びPMの発生を抑制することができる。15℃における密度は、0.82〜0.84g/cm3がより好ましい。
なお、上記15℃における密度は、JIS K 2249の「原油及び石油製品−密度試験方法及び密度・質量・容量換算表」に従って測定した値である。
(1)セタン価が45〜70であること。
セタン価が45以上であれば、異常燃焼によるディーゼルノックを生ずる恐れがなく、排気ガス中のNOXやPMの増大を抑制することができ、セタン価が70以下であれば、黒煙の発生を低減できる。セタン価は、48〜65がより好ましい。なお、セタン価は、JIS K2280の「オクタン価及びセタン価試験方法」によって測定される値である。
硫黄分が10質量ppm以下であれば、排ガス中のPMの排出量が増加することを抑制することができ、また、酸化触媒やNOx触媒などの後処理装置が劣化することを防ぐこともできる。硫黄分は、5質量ppm以下であることがより好ましい。なお、硫黄分の含有量はJIS K 2541−2の「原油及び石油製品−硫黄分試験方法−微量電量滴定式酸化法」に従って測定した値である。
窒素分が3質量ppm以下であれば、消泡性が悪化し消泡時間が長くなる恐れがない。窒素分は1質量ppm以下であることがより好ましい。なお、窒素分の含有量は、JIS K2609の化学発光法によって測定した値である。
芳香族分が10容量%以上であれば、ゴム膨潤に起因する燃料漏れが発生することを回避することができる。また、芳香族分が20容量%以下であれば、排気ガス中の全炭化水素(THC)、一酸化炭素(CO)及びPM(粒子状物質)の増加を抑制することができる。芳香族分は、12〜18容量%であることがより好ましい。
なお、上記芳香族分は、石油学会規格JPI−5S−49−97「石油製品−炭化水素タイプ試験方法−高速液体クロマトグラフ法」に従って測定した値である。
蒸留性状におけるT70が240℃以上であり、かつT90が270℃以上であれば、出力が低下する恐れがなく、またT70が330℃以下で、かつT90が360℃以下であれば、エンジン内で良好な噴霧を形成でき、燃焼状態を良好に保ち、出力の低下や排出ガス性状の悪化を回避することができる。
蒸留性状については、さらに50%留出温度(T50)が230〜300℃であることが好ましい。
なお、上記T50、T70、及びT90は、JIS K 2254「石油製品−蒸留試験方法」に基づいて測定した蒸留性状から求めた値である。
〔軽油組成物の性状と組成〕
(1)セタン価
JIS K 2280に準拠して測定した。
(2)動粘度
JIS K 2283に準拠して測定した。
(3)硫黄分
JIS K 2541−2に準拠して測定した。
(4)窒素分
JIS K 2609に準拠して測定した。
(5)芳香族分
石油学会規格JPI−5S−49−97に準拠して測定した。
(6)蒸留性状
JIS K 2541に準拠して測定した。
(7)表面張力
JIS K2241に準拠して測定した。
(8)水分
JIS K2275に準拠して測定した。
(9)消泡速度(消泡時間)
以下の手順で測定した。
(i) JIS R 3505に規定する清浄な100mLの共詮付きメスシリンダに、23±2℃に保った試料油を60mL採取し、共詮する。
(ii) 上記メスシリンダを振幅125〜250mm、1秒間に2回の割合で、30秒間、上下に振とうする。
(iii) 振とう操作が終了した後、直ちにメスシリンダを平面台に置き、泡が消えて油面が確認できるまでの時間(秒)を測定する。
(vi) 泡が消え油面が確認できるまでの時間を消泡時間(秒)とする。消泡時間(秒)が短い程、消泡速度が速く、良好であることを示す。
第1表に示した軽油基材を用いて、第2表に示す割合で混合して、軽油組成物を調製し、その性状・組成及び性能を第2表に示す。
第1表及び第2表中のDGOは脱硫軽油、DKは脱硫灯油であり、FAMEは菜種油脂肪酸のメチルエステルを示す。
Claims (3)
- 脱硫軽油及び脱硫灯油を容量%比(軽油/灯油)で75/20〜45/45の範囲で混合した、JIS K2241に準拠して測定される表面張力が26.4〜27.2mN/mの範囲である炭化水素系軽油基材に、組成物全量を基準とし、脂肪酸アルキルエステルを2〜20容量%配合してなり、15℃における密度が0.816〜0.825g/cm3の範囲である軽油組成物。
- さらに、下記の(1)〜(5)の条件を満たすことを特徴とする請求項1に記載の軽油組成物。
(1)セタン価が45〜70
(2)硫黄分が10質量ppm以下
(3)窒素分が3質量ppm以下
(4)芳香族分が10〜20容量%
(5)70%留出温度が240〜330℃、かつ90%留出温度が270〜360℃ - 水分が100質量ppm以下である請求項1又は2に記載の軽油組成物。
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