JP5421417B2 - 岸壁クレーン - Google Patents

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Description

本発明は、港湾や内陸地のコンテナターミナルなどで、コンテナの荷役に使用される岸壁クレーンに関するものである。
港湾等のコンテナターミナルでは、岸壁クレーン、門型クレーン、コンテナトレーラ等によって、船舶及びトレーラ間のコンテナの荷役を行っている。このコンテナターミナルにおける地震対策として、岸壁クレーンに免震構造を採用したクレーンが提案されている(例えば特許文献1参照)。
図8に従来の岸壁クレーンを示す。この岸壁クレーン1Xは、脚構造物2Xと、脚構造物2Xの下端にそれぞれ配置した走行装置8と、脚構造物2Xの上方に設置したブーム6及びガーダ7と、ブーム6及びガーダ7に沿って横行しコンテナの荷役作業を行うトロリ(荷役装置)9を有している。
この脚構造物2Xは、海側脚3aと陸側脚3b(以下、総称して脚3という)と、脚3a、3bを連結する水平部材(以下、ポータルタイビームという)5を有している。また、脚構造物2Xは、それぞれの脚3a、3bの上方からポータルタイビーム5に向けてそれぞれ延伸した海側斜材4aと陸側斜材4b(以下、総称して斜材、又はV字型斜材4という)を有している。
更に、脚構造物2Xは、V字型斜材4の下端部とポータルタイビーム5を連結する免震装置30を有している。この免震装置30は、積層ゴムで構成されており、横行方向(海陸方向)xで変位可能に構成されている。なお、yは鉛直方向を示している。
上記の構成により、この岸壁クレーン1Xは、地震発生時の振動を抑制することができる。これは、V字型斜材4の下端部に設置した免震装置30が横行方向xに変位(スライド)し、岸壁クレーン1Xの振動の固有周期を長周期化することができるためである。
しかしながら、上記のV字型斜材4及び免震装置30を搭載した岸壁クレーン1Xは、いくつかの問題点を有している。第1に、大規模地震が発生した場合に、免震装置30が横行方向xに変形可能となるスライド距離を超えてしまい、免震装置30の積層ゴムが破断してしまう恐れがあるという問題を有している。つまり、岸壁クレーン1Xが、地震発生時に免震機能を失ってしまう恐れがある。これは、積層ゴムで構成した免震装置30のスライド距離が、それほど大きくないためである。具体的には、横行方向xに±300mm以下であった。
ここで、大規模地震とは、例えば、平成18年の港湾法改正により想定されている地震波であり、レベル2地震動と呼ばれるものである。このレベル2地震動とは、土木学会の第三次提言により、現在から将来にわたって当該地点で考えられる最大級の大きさを持つ地震動と定義されている。
第2に、上記の免震装置30の破断を回避するために、変位量の大きい免震装置を採用することが困難であるという問題を有している。これは、積層ゴムの大型化によりスライド距離を延長しようとした場合、ゴムの大型化によりばね定数が高くなり、むしろスライド距離が短くなってしまうという性質を有しているためである。また、積層ゴムのばね定数が高くなると(ゴムが硬くなると)、岸壁クレーンの固有周期が短くなってしまう。そ
のため、地震が発生した際には、岸壁クレーンに大きな加速度が発生し、走行装置8が浮き上がり、脱輪が発生する可能性がある。
第3に、積層ゴムで構成した免震装置30が、スライド距離の限界に達しない場合であっても、破断してしまう恐れがあるという問題を有している。これは、地震発生時に、免震装置30の鉛直上向きyに引っ張り力が発生し、この引っ張りにより免震装置30が破断してしまうためである。特に、積層ゴムで構成した免震装置30は、圧縮方向の力には強いが、引っ張り方向の力には弱いためである。なお、免震装置30の鉛直方向yに発生する力は、岸壁クレーン1Xの海側脚3a及び陸側脚3bが交互に持ち上がるような振動(ロッキングR又はロッキング現象という)により生じる。
以上より、従来の岸壁クレーン1Xは、大規模地震が発生した場合、十分な免震性能を得られず、倒壊してしまう危険性がある。
特開2003−12275号公報
本発明は、上記の問題を鑑みてなされたものであり、その目的は、V字型斜材を有する岸壁クレーンにおいて、大規模地震(例えばレベル2地震動)が発生した場合であっても、岸壁クレーンの固有周期を長周期化し、振動を抑制することのできる岸壁クレーンを提供することである。
上記の目的を達成するための本発明に係る岸壁クレーンは、海側脚及び陸側脚の上方から、前記海側脚及び前記陸側脚を連結する水平部材に向けてそれぞれ延伸した斜材を有する岸壁クレーンにおいて、前記岸壁クレーンが、前記水平部材に沿って設置したガイドと、前記斜材の下端部に設置し且つ前記ガイドに沿って移動可能に構成した移動体と、前記移動体と前記ガイドの相対位置を固定する固定装置を有しており、地震が発生した際に、前記固定装置が解除され、前記移動体が前記ガイドに沿って移動自在となるように構成したことを特徴とする。
この構成により、岸壁クレーンは、大規模地震が発生した際であっても、岸壁クレーンの振動を抑制することができる。これは、岸壁クレーンの固有周期を長周期化することができるためである。
上記の岸壁クレーンにおいて、前記岸壁クレーンが、前記移動体を地震発生前に固定されていた初期位置に戻す復元力を作用させる復元機構を有していることを特徴とする。この構成により、地震発生後に、岸壁クレーンの復旧を速やかに実現することができる。また、地震発生時には、この復元力が、岸壁クレーンの振動を減衰する減衰力として作用するため、岸壁クレーンの振動を抑制することができる。
上記の岸壁クレーンにおいて、前記復元機構が、傾斜部を有する前記ガイドを有しており、前記傾斜部が、前記初期位置から前記海側脚及び前記陸側脚に向かってそれぞれ鉛直上向きに傾斜する上り勾配となるように構成されていることを特徴とする。この構成により、ガイドに沿って移動する移動体は、重力により初期位置に戻ろうとする力(復元力)を得ることができる。そのため、岸壁クレーンは、復元力の作用による地震終了後の速やかな復旧、及び減衰力の作用による地震発生中の振動の抑制を実現することができる。
上記の岸壁クレーンにおいて、前記固定装置が、前記ガイドにケーシングを固定し且つ前記移動体にロッドを固定した油圧シリンダと、前記油圧シリンダの左室と右室を連結する油圧回路と、前記油圧回路の油の流れを制御する油圧バルブを有しており、通常時は、前記油圧バルブを閉止して前記油圧シリンダを固定状態とし、地震が発生した際に、前記油圧バルブを開放して前記油圧シリンダを摺動可能状態とするように構成したことを特徴とする。
この構成により、地震が発生した際、移動体の固定を解除するタイミングを精密に制御することができる。また、復旧作業の際、移動体を初期位置に戻すための外力を作用させることができる。
本発明に係る岸壁クレーンによれば、大規模地震(例えばレベル2地震動)が発生した場合であっても、岸壁クレーンの固有周期を長周期化し、振動を抑制することのできる岸壁クレーンを提供することができる。
本発明に係る実施の形態の岸壁クレーンの概略図である。 本発明に係る実施の形態の岸壁クレーンの側面の部分断面を示した図である。 本発明に係る実施の形態の岸壁クレーンの正面の部分断面を示した図である。 本発明に係る異なる実施の形態の岸壁クレーンの平面の部分断面を示した図である。 本発明に係る異なる実施の形態の岸壁クレーンの平面の部分断面を示した図である。 本発明に係る実施の形態の岸壁クレーンの側面の部分断面を示した図である。 本発明に係る異なる実施の形態の岸壁クレーンの正面の部分断面を示した図である。 従来の岸壁クレーンの概略図である。
以下、本発明に係る実施の形態の岸壁クレーンについて、図面を参照しながら説明する。図1に本発明の実施の形態の岸壁クレーン1の概略を示す。この岸壁クレーン1は、海側脚3a、陸側脚3b及び水平部材(以下、ポータルタイビームという)5を含む脚構造物2と、脚構造物2の上方に設置したブーム6及びガーダ7と、脚構造物2の下方に設置した走行装置8を有している。また、岸壁クレーン1は、脚3a、3bの上方から、ポータルタイビーム5に向けてそれぞれ延伸した海側斜材4a及び陸側斜材4b(総称して、斜材又はV字型斜材4)を有している。
更に、岸壁クレーン1は、V字型斜材4の下端部に設置した移動体10と、ポータルタイビーム5に沿って設置したガイド11と、移動体10とガイド11の相対位置を固定する固定装置(図示しない)を有している。ここで、移動体10がポータルタイビーム5上に固定されている位置(例えば、海側脚3aと陸側脚3bの中間点)を、移動体10の初期位置Pとする。また、ポータルタイビーム5は、内部に空洞を有する角柱形状に形成されている。
次に、岸壁クレーン1の動作について説明する。まず、地震が発生した際に、緊急地震
速報、地震計又は加速度計等を入力信号として、移動体10の固定を解除する。この固定装置の解除により、移動体10は、ガイド11に沿って移動自在となる。
上記の構成により、岸壁クレーン1は、以下の作用効果を得ることができる。第1に、レベル2地震動等の大規模地震が発生した場合であっても、岸壁クレーン1は振動を抑制することができる。これは、移動体10のスライドにより岸壁クレーン1の固有周期を長くすることができるからである。
第2に、岸壁クレーンの大型化の要請に応えることができる。特に、岸壁クレーンの大型化に伴い、強度上V字型斜材の設置が必要となった場合であっても、岸壁クレーンの耐震性能を向上することができる。
なお、V字型斜材4の上端部は、海側脚3a又は陸側脚3bの上方であって、ブーム6及びガーダ7の高さと同じか又は低い位置にピン結合等で固定することが望ましい。この構成により、岸壁クレーン1の脚構造物2の剛性をより向上し、固有周期を長くすることができるためである。
また、脚構造物2と走行装置8の間に、積層ゴム等で構成した従来の免震装置を設置することが望ましい。岸壁クレーンの耐震性能を向上することができるためである。
図2に、移動体10を中心に一部を断面とした部分断面の側面図を示す。岸壁クレーン1は、V字型斜材4a、4bの下端部に設置した移動体10と、ポータルタイビーム5に沿って設置したガイド11と、移動体10とガイド11の相対位置を固定する固定装置12を有している。この移動体10は、V字型斜材4a、4bとそれぞれ例えばピン13を利用したピン結合等で連結されている。また、移動体10は、例えばせん断ピンで構成した固定装置12で、ガイド11又はポータルタイビーム5の少なくとも一方に固定されている。更に、移動体10は、潤滑性の高い材料(例えばMCナイロン、ナフロン(登録商標)等)で構成することが望ましい。移動体10の滑らかなスライドを実現するためである。同様の理由で、移動体10の下面、側面又は上面の少なくとも1つに走行輪を設置してもよい。
加えて、ガイド11は、その底面が、初期位置Pから海側脚3a又は陸側脚3bに向かって鉛直上向きとなる傾斜部(上り勾配)14を有している。このガイド11の傾斜部14は、移動体10を初期位置Pに戻す力を発生させる復元機構となる。なお、破線で示した移動体10は、地震が発生した際に、移動体10が傾斜部14を移動している様子を示している。
次に、岸壁クレーン1の動作について説明する。地震が発生した際、例えばせん断ピンの破断により固定装置12が解除される。固定装置12の解除により、移動体10は、ガイド11に沿って移動する。このとき、移動体10は、復元機構である傾斜部14から常に初期位置Pに戻ろうとする復元力を与えられる。また、移動体10は、地震発生中は、海側脚3a及び陸側脚3bの間で、進行方向を変えながらスライド(摺動)を繰り返す。
上記の構成により、岸壁クレーン1は、以下の作用効果を得ることができる。第1に、岸壁クレーン1は、大規模地震が発生した場合であっても、振動を抑制することができる。これは、移動体10のスライドにより、岸壁クレーン1の振動の固有周期を長くできるためである。なお、この移動体10は、ガイド11に沿って±500mm以上、望ましくは±1000mm以上の距離をスライドできるように構成することができる。これは、移動体10が、積層ゴムのように材料物性等の影響から、スライド距離に制約を受けることがないためである。
第2に、地震発生後の岸壁クレーン1の復旧作業を迅速に行うことができる。これは、移動体10に、初期位置Pに戻ろうとする復元力が働いているためである。例えば、地震発生後に、移動体10が初期位置Pまですでに戻っている場合は、移動体10を固定装置12により固定する作業のみで、岸壁クレーン1の復旧作業は完了する。また、移動体10が初期位置Pまで戻りきらない場合であっても、外力を加えて移動体10を初期位置Pに戻す際に、復元力が働くため、復旧作業を迅速に行うことができる。つまり、傾斜部14を有するガイド11は、移動体10に復元力を与える復元機構である。
第3に、地震発生中であっても移動体10には、初期位置Pに戻ろうとする力(復元力)が働く。この力は、岸壁クレーン1の振動を減衰する減衰力ともいうことができる。そのため、岸壁クレーン1の振動を抑制することができる。
なお、ガイド11の傾斜部14を下方の凸部を有する円弧状に形成してもよい。この構成により、移動体10は初期位置Pから離れるほど、大きな復元力を得ることができる。
また、V字型斜材4a、4bと脚3(海側脚3a及び陸側脚3b)との結合部、及びV字型斜材4a、4bと移動体10との結合部は、上記のピン13によるピン結合に限られない。この結合は、一定の変形を許容することのできる柔結合であれば、例えばゴム等を介在した結合等であってもよい。
図3に、移動体10を中心に一部を断面とした部分断面の正面を示す。移動体10は、ガイド11又はポータルタイビーム5の少なくとも一方に、固定装置(例えばせん断ピン)12で固定されている。また、ガイド11は、少なくとも移動体10の側方を覆うように構成されている。
次に、岸壁クレーン1の動作について説明する。まず、地震が発生し、V字型斜材4を介して移動体11に横行方向(図3手前から奥方向)xの力が働くと、この力によりせん断ピンが破断する(固定装置12が解除される)。このせん断ピンは、ガイド11及びポータルタイビーム5に形成した穴(破線で示す)を通過し、ポータルタイビーム5内の空洞に落下する。この固定装置12の解除により、移動体10は、ガイド11に沿って移動自在となる。このせん断ピンを採用する構成により、岸壁クレーン1は、地震の発生と共に、停電等が発生した場合であっても、自動的に免震効果を得ることができる。
なお、固定装置12は、緊急地震速報や、コンテナターミナル又は岸壁クレーンに搭載した地震計の信号等により、解除されるように構成してもよい。この場合、固定装置は、移動体10を拘束する拘束部と、信号等を受信する受信機を有するように構成する。
また、ガイド11が、図3に示すように移動体10の上面を覆う天蓋20を有するように構成する。この構成により、移動体10に鉛直上向きの力が働いた場合であっても、移動体10がガイド11から外れることを防止できる。この鉛直上向きの力は、岸壁クレーンに生じるロッキング現象等を原因とするものである。更に、天蓋20の設置により、移動体10の移動を妨げる飛来物等が、ガイド11内の通路上に落下することを抑制できる。
加えて、せん断ピン等の固定装置12の解除と共に、移動体10内に内包された潤滑油Lを放出するように構成してもよい。移動体10のスライドがスムーズになるからである。具体的には、例えば図3に示した岸壁クレーン1は、せん断ピンの破断及び落下により、潤滑油Lが移動体10の下面に供給されるように構成することができる。また、天蓋20と移動体10の間に潤滑油を供給又は噴射する装置を設置してもよい。ロッキング現象等により移動体10が天蓋20下面との接触及び摺動を繰り返す可能性があるためである
。具体的には、例えば天蓋20と移動体10の間の隙間に、袋状物に充填した潤滑油Lを配置し、この袋状物が移動体10の移動により破れるように構成することができる。
図4に異なる実施の形態の岸壁クレーン1A及び1Bを示す。図4は、ガイド11の端部と接近した移動体10を示した平面の部分断面図である。図4左方に示す岸壁クレーン1Aは、ガイド11端部(横行方向xの端部)から、移動体10に向かって設置したばね等の弾性体21Aと、この弾性体21Aに固定され且つ移動体10と接触することのできる接触板22を有している。この弾性体21A及び接触板22は、移動体10に復元力を与える復元機構である。つまり、地震動によりガイド11端部に移動した接触板22に衝突した移動体10は、弾性体21A及び接触板22により、初期位置Pに戻される方向の復元力を得ることができる。
図4右方に示す岸壁クレーン1Bは、ガイド11端部と移動体10を連結するゴムバンド等の弾性体21Bを有している。このゴムバンド等の弾性体21Bは、移動体10に復元力を与える復元機構である。ここで、移動体10の端部(横行方向xの端部)又はガイド11内壁の少なくとも一方に、移動体10とガイド11端部の衝突を防止するストッパー24を設置することが望ましい。更に、ストッパー24の少なくも一部をゴム等の緩衝材で構成することが望ましい。ストッパー24と他の部材との衝突の衝撃を和らげることができるからである。
なお、図4に示すばね等の弾性体21Aを採用する場合は、想定される地震動の規模に応じて、ガイド11の横行方向xの長さを短く構成することが望ましい。この構成により、移動体10は、空走距離が短くなり、早期に弾性体21Aから復元力を得ることができるからである。
図5に異なる実施の形態の岸壁クレーン1Cを示す。図5は、ガイド11の端部と接近した移動体10を示した平面の部分断面図である。この移動体10Cは、端部の一部を弾性体(例えばゴム等)21Cで構成している。具体的には、移動体10Cの角部に、三角柱状の弾性体21Cを設置している。また、ガイド11Cは、端部に向かって絞り込んだテーパー部25を有している。この弾性体21C及びテーパー部25は、移動体10Cに復元力を与える復元機構である。
この構成により、移動体10Cがガイド11Cの端部に移動すると、弾性体21Cがテーパー部25に押され変形する。この変形が戻ろうとする力により、移動体10Cは初期位置Pに戻される方向の力を得ることができる。
なお、岸壁クレーンは、前述した復元機構のうちの少なくとも1つ、又は複数の組み合わせを備えるように構成することができる。例えば、図2に示した傾斜部14と、図4左方に示したばね等の弾性体21Aと接触板22を組み合わせた構成を採用し、復元機構とすることができる。
この複数の復元機構を組み合わせる構成により、移動体10に作用する復元力を大きくすることができる。そのため、岸壁クレーン1の復旧作業を更に迅速に進めることができる。
図6に、異なる実施の形態の岸壁クレーン1Dを示す。図6は、移動体10を中心に一部を断面とした部分断面の側面を示した図である。移動体10は、固定装置12Dにより、ガイド11又はポータルタイビーム5の少なくとも一方に固定されている。この固定装置12Dは、ガイド11にケーシングを固定し且つ前記移動体にロッドを固定した油圧シリンダ26と、油圧シリンダ26の左室と右室を連結する油圧回路Sと、油圧回路Sの油
の流れを制御する油圧バルブであるトリガー27及び制御弁28と、油圧ポンプ29を有している。この油圧バルブ27、28は、ソレノイドバルブ等で構成することができる。
次に、固定装置12Dの動作について説明する。岸壁クレーン1Dが荷役作業等を行う通常時には、この固定装置12Dの油圧バルブ27、28を閉止し、油圧シリンダ26を固定状態とする。この制御により、移動体10は、初期位置Pに固定され、岸壁クレーン1Dは剛の状態となり、荷役作業等を行うことができる。
地震が発生した際には、緊急地震速報又は地震計等の信号によりトリガー27を開放し、油圧シリンダ26を摺動可能状態とする。この制御により、移動体10はガイド11に沿ってスライド可能となり、岸壁クレーン1Dの振動を抑制することができる。
また、地震終了後には、トリガー27を閉止、制御弁28を開放し、油圧ポンプ29の作動により、移動体10を初期位置Pに戻す復旧作業を行う。
この固定装置12Dの採用により、地震が発生した際、移動体の固定を解除するタイミングを精密に制御することができる。また、復旧作業の際、移動体10を初期位置Pに戻すための外力を作用させることができる。
なお、本発明で採用する固定装置12Dは、油圧シリンダを有するものに限られない。移動する流体を、油の代わりに、水又は空気等としてもよい。また、トリガー27をソレノイドバルブで構成し、通電時にバルブを閉止し、停電時にバルブを開放するように設定することが望ましい。この構成により、地震と共に停電が発生した場合であっても、トリガー27を開放することができる。
更に、油圧ポンプ29を制御し、油圧シリンダ26をアクティブ制御としてもよい。つまり、地震動により摺動する油圧シリンダ26に、この振動を打ち消す方向の外力を付するように油圧ポンプ29を制御することができる。この制御により、岸壁クレーン1Dの振動を更に抑制することができる。
以上より、本発明の岸壁クレーン1は、前述した複数の固定装置及び復元機構を組み合わせて、耐震性能を向上することができる。
図7に、本発明の異なる実施の形態の岸壁クレーン1Eの移動体10Eを中心に一部を断面とした部分断面の正面を示す。移動体10Eは、車輪15を有している。また、ガイド11Eは、I型鋼で構成されており、その内壁に沿って車輪15が移動できるように構成している。また、I型鋼で構成されたガイド11Eの一部は、車輪15の天面を覆う天蓋20Eを形成している。
ここで、移動体10Eの車輪15は、その回転を固定装置(例えばせん断ピン、ブレーキ等)により固定されている。この車輪15の固定装置により、移動体10Eをポータルタイビーム5に対して相対的に固定することができる。なお、移動体10Eを、ガイド11E又はポータルタイビーム5の少なくとも一方に、固定装置(例えばせん断ピン)で固定してもよい。
上記の構成により、以下の作用効果を得ることができる。第1に、レベル2地震動等の大規模地震が発生した場合であっても、岸壁クレーン1Eは振動を抑制することができる。これは、移動体10Eのスライドにより岸壁クレーン1Eの固有周期を長くすることができるからである。特に、移動体10Eは、車輪15により移動できるため、円滑にスライドすることができる。第2に、移動体10Eに鉛直上向きの力が働いた場合であっても
、移動体10Eがガイド11Eから外れることを防止できる。これは、ガイド11Eが天蓋20Eを有しているからである。第3に、ガイド11EをI型鋼で形成する構成により、ガイド11Eの製造コストを低減することができる。
1 岸壁クレーン
2 脚構造物
3 脚
3a 海側脚
3b 陸側脚
4、4a、4b 斜材(V字型斜材)
5 水平部材(ポータルタイビーム)
10 移動体
11 ガイド
12 固定装置
14 傾斜部
26 油圧シリンダ
27 トリガー(油圧バルブ)
28 制御弁(油圧バルブ)
S 油圧回路
P 初期位置

Claims (5)

  1. 海側脚と陸側脚を連結する水平部材と、前記海側脚から前記水平部材に向けて延伸した海側斜材と、前記陸側脚から前記水平部材に向けて延伸した陸側斜材とを有する岸壁クレーンにおいて、
    前記岸壁クレーンが、前記水平部材に沿って設置したガイドと、前記海側斜材及び前記陸側斜材の下端部に設置し且つ前記ガイドに沿って移動可能に構成した移動体と、前記移動体と前記ガイドの相対位置を固定する固定装置を有しており、
    前記海側斜材及び前記陸側斜材の下端部が、前記ガイドの延設方向に直交する方向で水平方向に延びるピンによるピン結合を介してそれぞれ前記移動体に連結されており、
    前記ガイドが、前記移動体の上面を覆う天蓋を有する構成であり、
    地震が発生した際に、前記固定装置が解除され、前記移動体が前記ガイドに沿って移動自在となるように構成したことを特徴とする岸壁クレーン。
  2. 前記ガイドが、前記移動体の両側方を覆うとともに、前記移動体の上面を覆う天蓋を有する構成であることを特徴とする請求項1に記載の岸壁クレーン。
  3. 前記岸壁クレーンが、前記移動体を地震発生前に固定されていた初期位置に戻す復元力を作用させる復元機構を有していることを特徴とする請求項1又は2に記載の岸壁クレーン。
  4. 前記復元機構が、傾斜部を有する前記ガイドを有しており、
    前記傾斜部が、前記初期位置から前記海側脚及び前記陸側脚に向かってそれぞれ鉛直上向きに傾斜する上り勾配となるように構成されていることを特徴とする請求項3に記載の岸壁クレーン。
  5. 前記固定装置が、前記ガイドにケーシングを固定し且つ前記移動体にロッドを固定した油圧シリンダと、前記油圧シリンダの左室と右室を連結する油圧回路と、前記油圧回路の油の流れを制御する油圧バルブを有しており、
    通常時は、前記油圧バルブを閉止して前記油圧シリンダを固定状態とし、地震が発生した際に、前記油圧バルブを開放して前記油圧シリンダを摺動可能状態とするように構成したことを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の岸壁クレーン。
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