JP5421191B2 - 盛土補強構造の設計方法 - Google Patents

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本発明は、液状化もしくは沈下の可能性のある軟弱地盤の上に造成された既設もしくは新設の盛土の補強構造を設計する方法に関するものである。
道路や鉄道、防波堤や護岸などの各種堰堤として供される盛土の造成に際し、その下部地盤が軟弱な場合には盛土を支持し得るだけの強度を有する程度に補強施工される。例えば、下部地盤が軟弱な粘性土層を有している場合には、過度な沈下や不等沈下を防止するために浅層混合処理ないしは深層混合処理をはじめとする適宜の地盤改良施工が当該粘性土層をターゲットに実施される。一方、下部地盤(の特に上部層)に砂質層が存在し、かつ地下水が比較的高い場合には、地震時に当該砂質層が液状化して盛土法面がはらみ出すこと等を防止するために、地下水位低下工法や過剰間隙水圧消散工法などの地盤改良施工が実施される。
ところで、盛土の破壊形態を分類すると、図8a〜dで示すように大きく4つのタイプに分類することができる。図8aで示すタイプIは法面崩壊タイプであり、地震時に盛土自体に作用する慣性力等によって法面の表層部分が地すべり状に崩壊するタイプである。
一方、図8bで示すタイプIIは地震時の慣性力等により、盛土内部で円弧すべり破壊を生じる場合や、盛土のみならず、その下部地盤をも巻き込んで円弧すべり破壊を形成する場合である。また、図8cで示すタイプIIIは盛土自体が分断する破壊態様であり、図8dで示すタイプIVは盛土自体が沈下する形態である。このタイプIVでは、過度な沈下量の場合に堰堤の機能を確保することができない。
ここで、上記する盛土の破壊形態のうち、特に、タイプII,IIIの場合の破壊形態では、盛土の天端面の平坦性や連続性が失われ、道路や鉄道などの線状盛土の場合には、その機能が完全に失われる。そこで、これらの破壊形態に対しても効果的に盛土の破壊を防止するとともに当該盛土の機能維持を図る盛土補強技術の開発が切望されている。
なお、盛土直下の軟弱地盤に薬液注入処理やセメント混合処理等を実施することによって地盤改良をおこなう方策や、基礎地盤内で軟弱地盤下方の比較的硬質で液状化や沈下の可能性のない(低い)地盤まで鋼矢板等を打設して盛土直下地盤を締め切り、さらに矢板頭部をタイロッドで結ぶ等の方策は従来一般におこなわれる方法である。しかし、これらの方策は沈下抑制等に対する高い効果が期待できる一方で、タイロッドで結ぶために施工コストが高くなり、既設盛土の補強の場合においては、盛土の変状防止や近接施工における施工エリア確保などの面でタイロッドの施工が極めて困難であるといったデメリットも大きい。そして、このデメリットは、その延長が長スパンに及ぶ道路や鉄道などに供される線状盛土において特に顕著となる。
施工コストと耐震補強の必要性の双方に鑑みれば、盛土の多少の沈下は許容するものの、上記のごとき法面のはらみ出しを防止して、当該盛土の最低限の機能確保、たとえばその天端面の平坦性を確保する等を図ることのできる盛土の補強方法や補強構造が望ましい。
本発明者等はこのような盛土の補強方法や補強構造に関する技術の発案に至り、これを特許文献1に開示している。より具体的には、特許文献1の図1で開示するように、盛土Bの有する対向した法面の法尻にそのはらみ出しを抑制するための抑え部材1,1’を設け、これに法尻よりも外側の軟弱な砂質地盤G1内に抵抗体3,3’を配し、抑え部材1,1’と抵抗体3,3’をそれぞれ引張部材2,2’にて繋いで形成された補強構造である。
この抵抗体3,3’の設置位置は、砂質地盤G1が液状化した際に、それぞれの水平変位が大きくなる、好ましくは最も大きくなる領域に設置されるようにしたものであり、下部地盤の液状化によって盛土Bが沈下した場合に、法面上の抑え部材1,1’にはらみ出そうとする力が作用する一方で、液状化によって地盤には水平変位が生じ、地盤内の抵抗体3,3’はこの地盤の水平変位に追随して外周の土とともに側方へ変位することで引張部材2,2’に張力を作用させ、盛土のはらみ出しを効果的に抑止するものである。
このように、特許文献1で開示する技術は、盛土の法面がはらみ出そうとする方向とこれを抑えようとする抑え部材に繋がれた抵抗体の変位方向が相反する方向であることを利用し、双方の力が相殺されることで盛土のはらみ出しを抑止するものである。
この公開技術によって奏される効果を肯定しながらも、本発明者等はさらなる研究開発によって特に液状化に対する盛土のはらみ出しをより一層抑制できる技術の発案に至っている。
特開2009−79415号公報
本発明は上記する問題に鑑みてなされたものであり、特に地震時における下部の軟弱地盤の液状化に対して、盛土の損傷をその機能停止にまで至らない程度に効果的に補強することのできる盛土補強構造を設計する方法を提供することを目的とする。
前記目的を達成すべく、本発明による盛土補強構造の設計方法は、液状化もしくは沈下の可能性のある軟弱地盤の上に造成され、対向する法面と略平坦な天端面を少なくとも有する盛土の補強構造を設計する方法であって、前記盛土の補強構造は、法面に配される抑え部材と、地盤内に配されると抵抗体と、抑え部材と抵抗体を繋ぐ引張部材とから構成されるものであり、盛土直下の軟弱地盤であって、盛土による上載荷重を見込むことのできる軟弱地盤内に前記抵抗体を配設するものである。
本発明の設計方法によって形成される盛土の補強構造は、特許文献1で開示する盛土補強構造に対して補強構造を構成する軟弱地盤内に配設される抵抗体の配設位置を盛土直下で盛土による上載荷重を見込むことのできる軟弱地盤内とすることにより、抵抗体に期待される反力をより一層大きくすることができ、これに起因してより一層高い盛土のはらみ出し抑制効果を期待することのできる補強構造である。
特許文献1で開示する盛土の補強構造は、液状化が懸念される軟弱地盤のうちで無補強の場合に側方への地盤変位が期待される領域内に抵抗体を配設することによって法面抑えに要する反力を期待するものであり、液状化によって剛性が低下した地盤(粘性流体のような状態)が側方へ変位しようとする流動力による抵抗体の支圧効果を利用している。この「支圧効果」とは、グラウンドアンカーの抵抗体(改良体)における抵抗力として知られる摩擦効果と支圧効果のうちの後者を意味するものであるが、剛性の低下した地盤の流動方向に対して直角方向の抵抗体の投影面積が大きいほど、抵抗体による反力は大きくなる。
ところで、本発明者等によれば、液状化が懸念される比較的均一な軟弱地盤上の盛土を想定した際に、地震により、盛土直下の軟弱地盤よりも盛土重量による上載荷重の影響が無い盛土直下の外側エリアの軟弱地盤が先行して液状化(過剰間隙水圧の上昇)するとの知見が得られている。
このことを図7を参照して説明する。同図において、盛土Mの下方には地下水位が高い砂質系の軟弱地盤が広がっており、この軟弱地盤は盛土Mの直下の軟弱地盤G1とその外側エリアの軟弱地盤G2から構成されている。そして、この軟弱地盤が地震時に液状化した際には、上載荷重の影響の無い軟弱地盤G2が先行して液状化することによってここに側方変位X1が生じ、この側方変位X1によって盛土MにストレッチングX2(盛土のせん断変形にともなう水平方向拡幅)が生じ得る。
その一方で、盛土直下の軟弱地盤G1は周辺の軟弱地盤G2が液状化している時点では液状化に達していないことから、剛性の高い状態が維持されている。したがって、仮に抵抗体が軟弱地盤G2内に配されている場合には、軟弱地盤G2の液状化によって盛土にストレッチングが発生し、このストレッチングによって引張部材に張力が発生するのに対して、抵抗体が軟弱地盤G1内に配されている場合にはこのエリアの地盤が未だ液状化に達していないことから、この抵抗体による抵抗力によって盛土のストレッチングの増大を効果的に抑えることが可能となるのである。
液状化に達した軟弱地盤内での流動力による抵抗体の反力(特許文献1に開示の技術)と、液状化に達していないことで剛性が確保された軟弱地盤内での抵抗体の反力(本発明の技術)を比較した場合に、抵抗体1個あたりに期待される反力の大きさは後者の方が大きいことは明らかであり、このことは、抵抗体1個あたりの補強効果が大きくなることを意味している。すなわち、液状化している軟弱地盤内では抵抗体の支圧効果のみが期待されるのに対して、液状化に達していない地盤内では、従来のグラウンドアンカー工法の改良体と同様にさらに大きな支圧効果や抵抗体周面の摩擦効果も期待できるからである。
ここで、盛土直下の軟弱地盤内に配設される抵抗体の配設位置は、天端面直下の軟弱地盤内に配設するように設計するのが望ましい。
これは、天端面直下と法面直下で下方の軟弱地盤に作用する上載荷重が相違することによるものであり、上載荷重が相対的に大きくなる天端面直下に抵抗体を配設することで、より大きな支圧効果と抵抗体周面の摩擦効果を期待することができる。
また、本発明の設計方法の他の実施の形態において、前記軟弱地盤における液状化に対する安全率に関し、盛土直下のエリアが盛土直下の外側エリアよりも高い安全率を有し、かつ、盛土直下のエリアにおいては上方エリアが下方エリアよりも高い安全率を有しており、少なくともこの液状化に対する安全率を前記抵抗体の配設位置を決定する決定要因とするものであってもよい。
事前に液状化解析を実施して軟弱地盤内における液状化安全率コンタ等を作成しておき、この安全率コンタに基づいて、最も安全率の高いエリアに抵抗体を配設するといった設計方法や、さらに施工性等も加味して可及的に安全率の高いエリアに抵抗体を配設するといった設計方法がある。ここで、解析の実施例としては、コンピュータ内で盛土およびその下方の軟弱地盤をモデル化し(たとえば2次元、3次元のFEM解析用のメッシュモデル)、コンピュータ内でこのモデルに所定の入力地震動もしくは水平震度を載荷した際の地盤内における過剰間隙水圧分布を求め、この過剰間隙水圧分布に基づいて液状化に対する安全率分布(コンタ)を作成する方法などを挙げることができる。
ところで、設計時に想定した地震動よりも大きな地震が発生し、盛土直下の基礎地盤が完全に液状化する場合においても、上記する本発明の設計方法によって形成された盛土の補強構造が有効であることを以下で説明する。
地震動の大小に関わらず、基礎地盤が液状化する場合には必ず、盛土による上載荷重の影響のない盛土直下外周の地盤から盛土直下の地盤への順で液状化が生じる。このため、想定を超えるような大きな地震動が発生した場合に、盛土のストレッチングが発生する盛土直下外周地盤の液状化時に盛土直下地盤は未だ液状化に達していないため、アンカー張力を期待することができる。
したがって、通常の設計では、対象構造物に対して想定地震規模が設定され、この規模を超えた地震に対する構造物の安全性を十分に保証することはできなくなるが、本発明の設計方法で形成される盛土の補強構造は、想定地震動を超えた地震動に対してもその補強効果を見込むことができるのである。
さらに、対向する法面の補強構造のそれぞれの抵抗体を、盛土の中心ラインよりも他方の法面側となる位置に配設するように設計してもよいし、盛土の中心ラインよりも他方の法面側とならない位置、すなわち、中心ラインよりも自身の法面側に配設するように設計してもよい。
これは、特許文献1で開示する技術と異なり、本発明の設計方法によって形成される補強構造が、盛土による上載荷重を見込むことのできる軟弱地盤内に抵抗体を配設して剛性の高い地盤にて法面のはらみ出しを抑制できる高い反力を期待するという設計思想(技術思想)に立脚するものであって、他方側の法尻直下地盤の側方流動に沿った抵抗体の移動による反力を期待する設計思想でないことから、双方の引張部材やその先端の抵抗体が必ずしも交差する態様で地盤内に配設される必要はないのである。
ここで、本発明の設計方法で形成される盛土の補強構造にて適用される抑え部材は特に限定されるものではないが、それ自体が破壊することなく盛土を拘束できる強度を具備する適宜の材料から構成されればよい。例えば、鋼板やコンクリートブロック、鋼繊維や炭素繊維等を含んだシート材、土嚢、所定間隔で設置されたH鋼と該H鋼間に配設された木板とからなる親杭横矢板など、適宜の材料(部材)から抑え部材を構成することができる。さらに、抑え部材が設置される法面箇所は、法尻のみの形態、法肩のみの形態、法面全面の形態、法尻〜法面の中段の所定レベルまでの範囲の形態など、抑え部材にて法面のはらみ出しが抑制できる適宜の箇所を選定できる。
また、引張部材は、タイロッド、PC鋼棒、PC鋼線、高張力棒鋼など、法面がはらみ出そうとした際に生じ得る張力にて耐え得る引張耐力を具備する適宜の素材を選定できる。
本発明の設計方法で形成される盛土補強構造は、新設する盛土の補強構造として適用できることは勿論のこと、既存の盛土を経済的に補強施工できることに大きな利点がある。盛土直下を大規模に地盤改良する等の方法ではなくて、法面への抑え部材の設置や、軟弱地盤内への抵抗体の配設が主たる施工となることから、既存の盛土を残し、これを供用させながら補強施工をおこなうことができるためである。
また、この盛土が道路や鉄道などの線状盛土の場合には、この線状に沿って所定間隔に引張部材が配設される。なお、必要な場合には、この引張部材は法面の法尻から天端方向に2段、または3段の多段に設置することもできる。
また、引張部材に連結される抵抗体は、その材質も形状も特に限定されるものではないが、たとえば、引張部材先端に装着される支圧板、コンクリートの柱状ブロックなど、少なくとも引張部材よりもその断面が大きく、引張部材から伝達される引張力に対して地盤内に留まろうとして抗する形状、強度(引張強度、摩擦強度など)を具備していればよい。
さらに、引張部材と抵抗体が、先端に定着体を有するグラウンドアンカーからなる実施の形態であってもよい。グラウンドアンカーは、引張力を地盤に伝達するために、グラウトによって造成されるアンカー体と引張部、アンカー頭部によって大略構成されるものである。ここで、アンカー頭部は、盛土法面がはらみ出そうとする際に受ける力を引張部に伝達させる箇所であり、定着金具や支圧板、台座ブロック等から構成できる。また、引張部はアンカー頭部からの引張り力を軟弱地盤内に設置されたアンカー体に伝達させる箇所であり、引張材であるテンドンとシース等で構成でき、地盤や法面と絶縁されて伸縮自在な構造になっている。さらにアンカー体は、テンドンの引張力を地盤に伝達させるために地中に造成あるいは設置された引抜きに対する抵抗部分である。このアンカー体は、セメント系のグラウト(セメントペーストやモルタル)、合成樹脂系グラウト等を注入して造成できる。
本発明の盛土補強構造の設計方法によれば、特許文献1で開示する補強構造に対して抵抗体の配設位置を盛土直下の軟弱地盤内へ変更し、特に、その設計に際して液状化安全率を抵抗体配設位置の決定要因として補強構造が設計されることから、地震時において抵抗体により一層大きな反力を発揮することができ、盛土のはらみ出しをより効果的に抑制することのできる盛土補強構造を形成できる。
以上の説明から理解できるように、本発明の盛土補強構造の設計方法によれば、特に地震時における盛土下部の軟弱地盤の液状化に対して、盛土の損傷をその機能停止にまで至らない程度に効果的に補強することのできる補強構造を設計することができる。
本発明の盛土補強構造の設計方法を説明したフロー図である。 本発明の設計方法によって形成された盛土補強構造の一実施の形態を示す模式図である。 本発明の設計方法によって形成された盛土補強構造の他の実施の形態を示す模式図である。 遠心力載荷模型実験による過剰間隙水圧比分布図である。 液状化解析による過剰間隙水圧比分布図である。 液状化解析による地盤内の液状化安全率コンタを示した図であり、(a)は盛土高8m、盛土天端幅25、軟弱地盤層厚20mの解析モデルの結果であり、(b)は盛土高6m、盛土天端幅10.8、軟弱地盤層厚20mの解析モデルの結果である。 盛土直下の外側エリアの軟弱地盤が先行して液状化している状態を説明した図である。 (a)〜(d)は、盛土の破壊形態を示した模式図である。
以下、図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。なお、図示例は液状化の可能性の高い軟弱地盤上での既設もしくは新設の盛土の補強構造の設計方法と、この設計方法によってデザインされる補強構造を示すものであるが、粘性土からなり、圧密沈下の可能性のある軟弱地盤に対しては、本発明の設計方法を圧密沈下対策のための補強構造用に適宜修正して適用できることは勿論のことである。
図1は、本発明の盛土補強構造の設計方法を説明したフロー図である。この設計方法では、まず、新設の盛土、もしくは既設の盛土の下に広がる地盤において、地下水位が比較的高く(たとえば地表下10mよりも浅い地下水位)、この表層20m程度の範囲に砂質系の地盤が存在する場合に、この対象地盤を液状化の可能性がある軟弱地盤と認定し、液状化解析によって軟弱地盤における液状化安全率分布(液状化安全率コンタ)を作成する(ステップS1)。なお、図6a,bには、液状化安全率コンタの一例を示している。
そして、図示する設計方法では、原則として、盛土直下の軟弱地盤を地盤改良せずに、盛土に補強構造を施工することによって、盛土の多少の沈下は許容するものの、法面のはらみ出しによって盛土崩壊に至ることを抑制し、もって盛土の天端面の平坦性などの最低限の機能確保を図ることを設計目的としたものである。
ステップS1で液状化安全率コンタが作成されたら、補強構造の仕様の決定と、盛土直下の地盤エリア内で、補強構造を形成する抵抗体の配設位置を決定する(ステップS2)。
具体的に、この設計方法で設計された補強構造を図2を参照して説明する。
この補強構造10は、図1の設計フローに基づいて設計された、液状化の可能性のある軟弱地盤G上に造成される既設または新設の盛土Mを補強する構造である。具体的には、略平坦な天端面M1と、対向する法面M2,M2とから外形が形成される盛土Mの法尻にそのはらみ出しを抑制するための抑え部材1,1が設けられ、これに盛土M直下の軟弱地盤G内に設置された抵抗体3,3が、引張部材2,2にてそれぞれ繋がれて各法面M1ごとに補強構造10が形成される。なお、この補強構造10にて補強された盛土Mは、一般にその延長が長スパンに亘る線状盛土である、鉄道や道路などのインフラ施設として供されるものである。また、天端面M1が「略平坦」とは、天端面M1が平坦であることのほかに、天端面M1の中央が若干高く、その側方が若干低くなっている通常の道路構造の形態などを包含する意味である。
ここで、抑え部材1は、鋼板やコンクリートブロック、鋼繊維や炭素繊維等を含んだシート材、土嚢などのうちのいずれか一種、もしくはこれらのうちの複数の組合せを使用でき、少なくとも法面が地震時にはらみ出そうとした際に、作用するはらみ出し力に抗し得る強度を具備するものである。
また、引張部材2は、タイロッド、PC鋼棒、PC鋼線、高張力棒鋼などのうちのいずれか一種を使用でき、法面がはらみ出そうとした際に抑え部材1を介して伝達される張力に耐え得る引張耐力を具備するものである。
さらに、抵抗体3は、支圧板、コンクリートの柱状ブロックなど、少なくとも引張部材よりもその断面が大きく、引張部材から伝達される引張力に対して地盤内に留まろうとして抗する形状、強度を具備するものである。
また、引張部材2と抵抗体3のユニットとして、テンドンとシース等で構成される引張部材と、セメント系のグラウトからなる抵抗体と、を具備するグラウンドアンカーを適用することもできる。
本設計方法では、この抵抗体3の配設位置を、軟弱地盤Gの中でも盛土Mの直下で、盛土Mによる上載荷重を見込むことのできる軟弱地盤内のいずれかのエリアに配設するものである。
より具体的には、図示する盛土Mにおいては、その中央の天端面M1の直下エリアGaと、その側方の法面M2の直下エリアGbが盛土Mによる上載荷重を見込むことのできるエリアであることから、このエリアのいずれかの箇所に抵抗体3を配設する。
より大きな上載荷重を受ける地盤エリアに抵抗体3が配設されていることによって、液状化の際に法面M2がはらみ出そうとした際に抵抗体3からより大きな反力を得られることから、抵抗体3の配設位置は図示例のようにエリアGa,Gbの中でも天端面M1の直下エリアGaであるのが好ましい。
このことは、後述する図6で説明するように、液状化解析の結果から、一般にその安全率は、上載荷重を見込むことのできない盛土直下の外側エリアGcが最も小さく、エリアGb,Gaの順に安全率が大きくなることからも、安全率の最も高いエリアGa内で抵抗体が配設されるのがよいことが分かる。
地震時において、盛土直下の地盤エリアGa,Gbよりも盛土重量による上載荷重の影響が無い盛土直下の外側エリアGcが先行して液状化することになる。この際に、盛土直下の外側エリアGcの剛性が低下し、盛土Mにはストレッチング(盛土のせん断変形にともなう水平方向拡幅)が生じる。この外側エリアGcが液状化している段階で、盛土直下の地盤エリアGa,Gbは液状化に達しておらず、したがって高い地盤剛性が維持されている。
この高い剛性の維持された盛土直下の地盤エリアGa,Gb内に抵抗体が配設されていることにより、軟弱地盤Gの液状化発生の初期の段階、すなわち、外側エリアGcが液状化している段階において、この外側エリアGcが液状化していることによって生じる盛土のストレッチングが増大するのを効果的に抑制することができる。
そして、この液状化初期の段階における盛土のストレッチングの抑制によって、本発明の設計方法が掲げる目的である、盛土の多少の沈下は許容するものの、法面のはらみ出しによる盛土崩壊を抑制することが達成されることになる。
図3は、補強構造の他の実施の形態を示したものである。この補強構造10Aは、対向する法面M2,M2それぞれの抑え部材1から伸びる引張部材2’、2’が相互にクロスし、抵抗体3,3が天端面M1の直下エリアGa内に配設されたものである。
また、図示例以外にも、抵抗体が対応する法面M2の直下エリアGb内に配設されるもの(引張部材がクロスしないもの)や、相手側の法面M2の直下エリアGb内に配設されるもの(引張部材がクロスするもの)などであってもよい。
図4は、本発明の設計方法におけるステップS1において、地盤の液状化解析の一実施の形態の結果を示すものであり、本発明者等が遠心力載荷模型実験によって過剰間隙水圧比分布を求めてコンタ図化したものである。また、図5は、本発明者等が液状化解析によって過剰間隙水圧比分布を求めてこれを図化したものである。
いずれの分布図とも、過剰間隙水圧比は盛土直下のエリアに比してその外側のエリアが相対的に高くなっており、盛土直下の中でも天端面直下が法面直下に比して過剰間隙水圧比が小さくなっている。さらに、盛土直下の中では、下方エリアに比して上方エリアの過剰間隙水圧比が小さくなっている。この過剰間隙水圧比は、過剰間隙水圧と初期鉛直有効応力との比の値であり、この値が1.0に達した状態が液状化していること、すなわち、安全率1.0に相当することから、図4で示す過剰間隙水圧比に関するコンタがそのまま液状化安全率となる。
また、図6a,bには、本発明者等による高速道路や鉄道の盛土構造物をモデル化した液状化解析による液状化安全率コンタを示しており、より具体的には、図6aは盛土高8m、盛土天端幅25、軟弱地盤層厚20mの解析モデルの結果であり、図6bは盛土高6m、盛土天端幅10.8、軟弱地盤層厚20mの解析モデルの結果である。
図6a,b等の液状化安全率分布(コンタ)をステップS1で作成し、この安全率と、施工性、工費等を勘案して、それらを要素とする最適値、すなわち、可及的に液状化安全率が高い盛土直下の地盤内であって、可及的に工費の安くなる位置(天端面直下か法面直下か、それらのいずれかにおいて上方地盤内か下方地盤内か、など)が抵抗体の配設位置として決定され、補強構造の具体的なデザインが決定されることになる。なお、工費よりも急速復旧に重きがおかれる場合は、安全率と施工性の2つを主たる抵抗体配設位置の決定要素として盛土直下における抵抗体の配設位置が決定される。
以上、本発明の実施の形態を図面を用いて詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲における設計変更等があっても、それらは本発明に含まれるものである。
1…抑え部材、2,2’…引張部材、3…抵抗体、10、10A…補強構造、M…盛土、M1…天端面、M2…法面、G…軟弱地盤(液状化の可能性のある地盤)、Ga…盛土の天端面直下エリア、Gb…盛土の法面直下エリア、Gc…盛土直下の外側エリア

Claims (4)

  1. 液状化もしくは沈下の可能性のある軟弱地盤の上に造成され、対向する法面と略平坦な天端面を少なくとも有する盛土の補強構造を設計する方法であって、
    前記盛土の補強構造は、法面に配される抑え部材と、地盤内に配される抵抗体と、抑え部材と抵抗体を繋ぐ引張部材とから構成されるものであり、
    盛土直下の軟弱地盤であって、盛土による上載荷重を見込むことのできる軟弱地盤内に前記抵抗体を配設する設計方法であり、
    前記軟弱地盤における液状化に対する安全率に関し、盛土直下の地盤エリアが盛土直下の外側の地盤エリアよりも高い安全率を有し、かつ、盛土直下の地盤エリアにおいては上方の地盤エリアが下方の地盤エリアよりも高い安全率を有しており、少なくともこの液状化に対する安全率を前記抵抗体の配設位置を決定する決定要因とする盛土補強構造の設計方法。
  2. 前記抵抗体を前記天端面直下の軟弱地盤内に配設する請求項1に記載の盛土補強構造の設計方法。
  3. 対向する法面の補強構造のそれぞれの抵抗体を、盛土の中心ラインよりも他方の法面側となる位置に配設する請求項1または2に記載の盛土補強構造の設計方法。
  4. 対向する法面の補強構造のそれぞれの抵抗体を、盛土の中心ラインよりも他方の法面側とならない位置に配設する請求項1または2に記載の盛土補強構造の設計方法。
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