以下、添付図面を参照しながら、本発明の好ましい実施の形態について詳細に説明する。
図1は、本発明の好ましい実施形態による半導体装置10の構成を示すブロック図である。
本実施形態による半導体装置10はDRAMなどの半導体メモリであり、複数のメモリセルを含むメモリセルアレイ11と、メモリセルアレイ11に対するアクセス制御を行うアクセス回路12と、メモリセルアレイ11に対するデータの入出力制御を行う入出力回路13と、コマンド信号CMDを受け付けるコマンドデコーダ14とを備えている。図1に示すように、メモリセルアレイ11に含まれるメモリセルは、通常セル11aと冗長セル11bに分類される。冗長セル11bは、不良のある通常セル11aを置換することにより不良アドレスを救済するために用いられる。
本実施形態による半導体装置10は、外部端子として複数のコマンド端子21、複数のアドレス端子22及び複数のデータ端子23を備えている。コマンド端子21はコマンド信号CMDが供給される端子であり、アドレス端子22はアドレス信号ADDが供給される端子である。また、データ端子23は、リードデータDQの出力及びライトデータDQの入力を行う端子である。その他、クロック信号CKが入力されるクロック端子24や、図示しない電源端子なども設けられている。
通常動作時における半導体装置10の動作は、コマンド信号CMDの組み合わせによって指定される。例えば、コマンド信号CMDがリード動作を表している場合には、コマンドデコーダ14によってリード信号が内部生成され、コマンド信号CMDがライト動作を表している場合には、コマンドデコーダ14によってライト信号が内部生成される。これらの内部コマンドは、アクセス回路12や入出力回路13に供給される。
リード信号が内部生成されると、メモリセルアレイ11に記憶されたデータのうち、アドレス信号ADDにより指定されるアドレスに記憶されたデータにアクセスし、読み出したリードデータDQをデータ端子23へ出力する。メモリセルへのアクセスはアクセス回路12によって制御され、リードデータDQの出力は入出力回路13によって制御される。一方、ライト信号が内部生成されると、データ端子23に入力されたライトデータDQを入出力回路13に取り込み、アクセス回路12の制御により、アドレス信号ADDによって指定されるアドレスに書き込む。
図1に示すように、本実施形態による半導体装置10は、アンチヒューズ回路31及びアドレス比較回路32をさらに備えている。アンチヒューズ回路31は、不良のある通常セル11aのアドレス(不良アドレスRADD)を記憶する回路であり、後述するように、複数のアンチヒューズセットを含んでいる。
アドレス比較回路32は、アンチヒューズ回路31記憶された不良アドレスRADDとアドレス端子22を介して供給されたアドレス信号ADDとを比較する回路である。比較の結果はアクセス回路12に供給される。アクセス回路12は、アドレス比較回路32により一致が検出されなかった場合には通常セル11aに対してアクセスを行い、一致が検出された場合には冗長セル11bに対してアクセスを行う。これにより、不良アドレスが救済される。
次に、アンチヒューズ回路31の構成について詳細に説明する。
図2は、アンチヒューズ回路31の回路構成を示すブロック図である。
図2に示すように、アンチヒューズ回路31は、不良アドレスを記憶する複数のヒューズセット100と、ヒューズセット100の動作を制御する制御回路110と、エントリすべき動作モードを判定するモード判定回路120とを備えている。
ヒューズセット100は、それぞれ1アドレスを不揮発的に記憶可能な回路である。したがって、アンチヒューズ回路31は、ヒューズセット100と同数の不良アドレスを記憶することができる。具体的なヒューズセット100の数については製品によって異なるが、例えば1000セット程度設けられることが多い。ヒューズセット100の具体的な回路構成については後述する。
モード判定回路120は、外部端子VPPS,VBBSに供給される電圧に基づいてエントリすべき動作モードを判定する。本実施形態では、動作モードとして少なくとも「セットモード」、「書き込みモード」、「センスモード」を備えている。
「セットモード」とは、不良アドレスをヒューズセット100に一時的にラッチさせるためのモードである。このモードでは、アンチヒューズ素子の破壊は行われない。「書き込みモード」とは、実際にアンチヒューズ素子を破壊するためのモードであり、セットモードにて不良アドレスをラッチした後にエントリされる。「センスモード」とは、ヒューズセット100に書き込まれた不良アドレスを読み出すモードであり、実使用状態においては常にこのモードにエントリされる。
特に限定されるものではないが、本実施形態では、外部端子VPPS,VBBSにそれぞれ3V、0Vを印加することにより「セットモード」にエントリすることができ、それぞれ4V、−2Vを印加することにより「書き込みモード」にエントリすることができる。また、外部端子VPPS,VBBSをいずれもオープン状態とすることにより、「センスモード」にエントリすることができる。外部端子VPPS,VBBSは、いずれも実使用状態においては使用されない端子であり、ウェハ状態で行う動作テスト時においてのみ使用される。したがって、実使用状態においては外部端子VPPS,VBBSは常にオープン状態である。
セットモードにエントリすると、モード判定回路120は、モード信号M1,M2をいずれもハイレベルとし、これに応じて制御回路110はセットモード時における動作を行う。さらに、モード判定回路120は、動作電圧VPPSV,VBBSVのレベルをそれぞれ外部端子VPPS,VBBSへの供給電圧、つまりそれぞれ3V、0Vとし、これを各ヒューズセット100に供給する。
書き込みモードにエントリすると、モード判定回路120は、モード信号M1をハイレベル、モード信号M2をローレベルとし、これに応じて制御回路110は書き込みモード時における動作を行う。さらに、モード判定回路120は、動作電圧VPPSV,VBBSVのレベルをそれぞれ外部端子VPPS,VBBSへの供給電圧、つまりそれぞれ4V、−2Vとし、これを各ヒューズセット100に供給する。
センスモードにエントリすると、モード判定回路120は、モード信号M1をローレベル、モード信号M2をハイレベルとし、これに応じて制御回路110はセンスモード時における動作を行う。さらに、モード判定回路120は、動作電圧VPPSV,VBBSVのレベルをいずれもVSSレベルとする。
図3は、ヒューズセット100の回路構成を示すブロック図である。
図3に示すように、1つのヒューズセット100には、m個のビット記憶回路210と、イネーブル回路220と、ディセーブル回路230とが含まれている。ビット記憶回路210は、それぞれ記憶すべき不良アドレスの1ビットに対応する。したがって、1つのヒューズセット100に含まれるビット記憶回路210の数(=m)は、記憶すべきアドレスのビット数と等しい(或いはそれ以上)。
イネーブル回路220は、当該ヒューズセット100を有効化する場合に活性化される回路であり、ディセーブル回路230は、当該ヒューズセット100を無効化する場合に活性化される回路である。ディセーブル回路230は、イネーブル回路220よりも優先順位が高く、したがって、イネーブル回路220とディセーブル回路230の両方が活性化された場合、当該ヒューズセット100は無効化される。尚、イネーブル回路220とディセーブル回路230の両方が非活性である場合も、当該ヒューズセット100は無効とされる。
ビット記憶回路210、イネーブル回路220及びディセーブル回路230は、互いに同じ回路構成を有している。具体的には、図3に示すように、いずれも選択回路310、ラッチ回路320、アンチヒューズ素子330及びセンス回路340によって構成されている。選択回路310は、当該ヒューズセット100が選択された場合に活性化される回路であり、それぞれ対応するビット信号DATA1〜DATAm、イネーブル信号E、ディセーブル信号Dが入力される。また、ラッチ回路320は、アンチヒューズ素子330に書き込むべきデータを一時的に保持する回路である。
そして、センス回路340の出力であるビット信号B1〜Bmが1つの不良アドレスを示し、イネーブル信号Eaがアクティブであれば当該不良アドレスは有効とされ、ディセーブル信号Daがアクティブであれば当該不良アドレスは無効とされる。このように、一つのヒューズセット100からの出力100aは、ビット信号B1〜Bm、イネーブル信号Ea及びディセーブル信号Daによって構成される。図2に示したとおり、これら出力100aの集合が不良アドレスRADDである。
図4は、ビット記憶回路210の具体的な回路図である。
図4に示すように、ビット記憶回路210に含まれる選択回路310は、NチャンネルMOSトランジスタ311とPチャンネルMOSトランジスタ312が並列接続されたトランスファゲート構成を有している。これらトランジスタ311,312のゲートには、対応する選択信号SEL及びその反転信号が供給される。選択信号SELは、所望のヒューズセット100を選択するための信号であり、したがって、ヒューズセット100ごとに異なる選択信号SELが割り当てられる。かかる構成により、選択信号SELがハイレベルに活性化すると、対応するビット信号DATAi(i=1〜m)がラッチ回路320に供給される。
ラッチ回路320は、2つのインバータ321,322が循環接続された、いわゆるフリップフロップ構成を有している。したがって、選択信号SELが活性化すると、ビット信号DATAiがラッチ回路320に一時的に記憶されることになる。当然ながら、ラッチ回路320への書き込みは、アンチヒューズ素子への書き込みとは異なり、非常に高速に行うことが可能である。図4に示すように、ラッチ回路320には、モード判定回路120により生成される動作電圧VPPSVが供給される。
ラッチ回路320の出力は、書き込みトランジスタ301を介してアンチヒューズ素子330に供給される。アンチヒューズ素子330は、MOSトランジスタのソースとドレインが短絡された構成を有しており、そのゲート331にはラッチ回路320の出力が供給され、ソース/ドレイン332にはモード判定回路120により生成される動作電圧VBBSVが供給される。
初期状態におけるアンチヒューズ素子330は、ゲート絶縁膜を介して、ゲート331とソース/ドレイン332とが絶縁されている。このため、両者間に電流は流れない。しかしながら、ゲート331とソース/ドレイン332との間に高電圧を印加すると、ゲート絶縁膜に絶縁破壊が生じ、両者間に電流パスが形成される。ゲート絶縁膜を絶縁破壊した後は、これを元に戻すことはできず、したがって、不可逆的な不揮発性書き込みが可能となる。アンチヒューズ素子330のゲート331は、読み出しトランジスタ302を介してセンス回路340に接続される。
ここで、選択回路310及びラッチ回路320を構成するトランジスタ、並びに、図4に示すトランジスタ301,302は、いずれも他のトランジスタと比べてゲート絶縁膜が厚い耐圧構造を有している。これに対し、アンチヒューズ素子330を構成するトランジスタは、センス回路340や他の内部回路を構成する通常のトランジスタであり、ゲート絶縁膜の膜厚が薄く設定されている。これは、アンチヒューズ素子330の絶縁破壊を行う際に、選択回路310やラッチ回路320が絶縁破壊するのを防止するためである。ゲート絶縁膜を厚くするとトランジスタとしての能力は低下するが、選択回路310やラッチ回路320などの動作速度が若干低下しても、実用上の問題はほぼ皆無である。
センス回路340は、ラッチ回路320と同様、トランジスタ341,342からなるインバータと、トランジスタ343,344からなるインバータが循環接続された、いわゆるフリップフロップ構成を有している。トランジスタ342,344のソースには、センス信号CSNが供給される。センス信号CSNは、アンチヒューズ素子330の状態を読み出す期間においてはVDDレベルとされ、センス動作を行う際にはVSSレベルとされる。トランジスタ341,342のゲートに接続されるノードaは、読み出しトランジスタ302を介してアンチヒューズ素子330のゲート331に接続されるとともに、ビット記憶回路210の出力端として用いられる。ノードaの代わりに、トランジスタ343,344のゲートに接続されるノードbを出力端として用いても構わない。
ノードa,bには、それぞれトランジスタ345,346を介して電源電圧VDD及び基準電圧Vrefが供給される。トランジスタ345,346は、プリチャージ信号PREがローレベルに活性化するとオンし、ノードa,bをそれぞれ電源電圧VDD及び基準電圧Vrefにプリチャージする。電源電圧VDDと基準電圧Vrefとの関係は、
VDD>Vref
であり、したがって、プリチャージ直後の状態におけるビット出力Bi(i=1〜m)はハイレベル(1)である。
プリチャージを完了した後、読み出しトランジスタ302をオンさせると、ノードaはアンチヒューズ素子330に接続される。このとき、センス信号CSNはVDDレベルとされる。ノードaがアンチヒューズ素子330に接続されると、アンチヒューズ素子330の状態に応じてノードaのレベルが変化する。つまり、アンチヒューズ素子330が絶縁破壊されている場合には、ノードaからアンチヒューズ素子330へ電流が流れるため、ノードaの電位は低下し、センス信号CSNをVSSレベルに変化させることによりビット出力Biはローレベル(0)に反転する。これに対し、アンチヒューズ素子330が絶縁破壊されていない場合には、ノードaの電位はVDDに保たれるため、センス信号CSNをVSSレベルに変化させてもビット出力Biはハイレベル(1)を保持する。このようにして、センス回路340は、アンチヒューズ素子330に書き込まれた情報を読み出すことができる。
イネーブル回路220及びディセーブル回路230についても、ビット信号DATAiの代わりにイネーブル信号E及びディセーブル信号Dが供給され、それぞれイネーブル信号Ea及びディセーブル信号Daを出力する他は、図4に示したビット記憶回路210と同じ回路構成を有している。
以上が本実施形態による半導体装置の構成である。次に、本実施形態による半導体装置の動作について、アンチヒューズ回路31に着目して説明する。
アンチヒューズ回路31の動作は、不良アドレスを一時的にラッチするセット動作と、ラッチされた不良アドレスをアンチヒューズ素子に書き込む書き込み動作と、アンチヒューズ素子に書き込まれた不良アドレスを読み出すセンス動作に大別される。これらの動作は、それぞれ上述した「セットモード」、「書き込みモード」及び「センスモード」にエントリすることによって行われる。
セット動作及び書き込み動作は、ウェハ状態で行われる一連のテスト工程に含まれる。
図5は、テスト工程の大まかな流れを示すフローチャートである。
テスト工程は図示しないテスタを用いて行われ、図5に示すように、まず実際にデータの書き込み及び読み出しを行うことによって、不良アドレスの検出、つまり動作テストを行う(ステップS11)。これにより検出された不良アドレスは、テスタの内部に一時的に記憶される。
次に、テスタは、記憶した不良アドレスを半導体装置10に転送し、ヒューズセット100内のラッチ回路320にラッチさせる(ステップS12)。この時、アンチヒューズ回路31は「セットモード」にエントリされ、セット動作を行う。次に、テスタは、ラッチ回路320にラッチされた不良アドレスを実際にアンチヒューズ素子330に書き込ませる(ステップS13)。この時、アンチヒューズ回路31は「書き込みモード」にエントリされ、書き込み動作を行う。これにより、複数の不良アドレスがそれぞれヒューズセット100に不揮発的に記憶される。最後に、アンチヒューズ回路31に対してロールコールテストを行う(ステップS14)。各ステップS12〜S14における動作の詳細については後述する。
このようなテスト工程は、製造時においてウェハ状態で行われる。つまり、複数の半導体装置(チップ)に対して並列に実行される。具体的には、図6に示すように、半導体ウェハ400に含まれる半導体装置のうち、j×k個の半導体装置に対して並列に動作テストが行われる。並列にテストされるj×k個の半導体装置は、いわゆるDUT(Device Under Test)と呼ばれる。DUTの数は、テスタに設けられたプローブカード401の構成に依存し、例えば200個程度の半導体装置が並列にテストされる。
プローブカード401は、テスト対象となる半導体装置に設けられた各端子と接触するための多数のプローブを有しているが、図6に示すように、クロック信号CKを供給するためのプローブ401aと、コマンド信号CMDを供給するためのプローブ401bと、アドレス信号ADDを供給するためのプローブ401cは、それぞれチップ間で共通接続されている。これは、不良アドレスを検出するための動作テストにおいては、各チップに個別のクロック信号CK、アドレス信号ADD及びコマンド信号CMDを供給する必要がなく、全てのチップに対してこれら信号を共通に与えればよいからである。
これに対し、入出力データDQに関してはチップごとに個別である必要があることから、データDQを授受するためのプローブ401dについては共通接続されず、チップごとに個別接続される。
図7は、セット動作(ステップS12)を説明するためのフローチャートである。
セット動作とは、検出された不良アドレスをテスタから半導体装置10へ転送し、ヒューズセット100内のラッチ回路320にラッチさせる動作である。上述の通り、テスト工程は複数のチップに対して並列に実行され、複数のチップに対してアドレス信号ADDが共通に与えられる。つまり、各チップに個別のアドレス信号ADDを供給することはできない。これに対し、当然ながら不良アドレスはチップごとに異なる。
このような問題を解決すべく、本実施形態ではアドレス端子22を介してアドレス信号ADDをインクリメント(又はデクリメント)させながら、データ端子23を用いて不良の有無をチップごとに通知する。以下、具体的に説明する。
まず、外部端子VPPS,VBBSにそれぞれ3V、0Vを印加することにより、同じDUTに属する全チップのアンチヒューズ回路31を「セットモード」にエントリさせる(ステップS21)。セットモードにエントリすると、モード判定回路120はモード信号M1,M2をいずれもハイレベルとし、これに応答して制御回路110はセットモード時における動作を行う。
制御回路110をセットモードにエントリさせた後、テスタ側においてアドレス信号ADDを最小値(=0)に設定し(ステップS22)、当該アドレスが不良アドレスであるチップに対して「救済セットアドレス」を供給する(ステップS23,S24)。救済セットアドレスとは、当該不良アドレスを記憶させるべきヒューズセット100のアドレスを指す。救済セットアドレスはチップごとに個別である必要があることから、これらの信号の供給にはデータ端子23を介したデータDQを用いる。
救済セットアドレスを受けた制御回路110は、対応する選択信号SELを活性化させ、これによって所定のヒューズセット100を選択する(ステップS25)。これにより、選択されたヒューズセット100内の選択回路310が導通状態となる。この状態で、当該不良アドレスの各ビットDATA1〜DATAm及びイネーブル信号Eをヒューズセット100に供給する(ステップS26)。この時、書き込みトランジスタ301は、オフ状態に保持される。これにより、選択されたヒューズセット100内のラッチ回路320には、不良アドレスの各ビットDATA1〜DATAm及びイネーブル信号Eがラッチされることになる。
このような動作は、アドレス信号ADDをインクリメントすることにより(ステップS28)、全アドレスに対して行われる。そして、アドレス信号ADDが最大値(ADD=Max)となり、全アドレスのインクリメントが完了すると(ステップS27:YES)、一連のセット動作を完了する。以上の動作により、全ての不良アドレスがヒューズセット100にラッチされることになる。また、不良アドレスがラッチされたヒューズセット100のイネーブル回路220には、イネーブル信号Eがラッチされることになる。
セット動作において1アドレスの処理に要する時間、つまり、図7に示すステップS23〜ステップS28までの動作に要する時間は、ナノ秒オーダーである。一例として、1アドレスの処理に要する時間を14nsとし、アドレスの総数を34000アドレスとすると、セット動作を完了するのに必要な時間は約0.48sとなる。つまり、同じDUTに属する全てのチップに対して、0.48秒でセット動作を完了させることができる。
図8は、セット動作時における各信号の変化の一例を示すタイミング図である。
図8に示す例では、2クロックサイクルにてアドレスをインクリメントしている。具体的には、クロック信号CKの1回目の立ち上がりエッジに応答してアドレス信号ADDの前半部分(ADDa)を入力し、2回目の立ち上がりエッジに応答してアドレス信号ADDの後半部分(ADDb)を入力している。
一方、救済セットアドレスについては、複数のデータ端子23のうち4つの端子を使用し、このうちビットDQ0をイネーブル信号として用いる。ビットDQ0はハイアクティブであり、対象となる2クロックサイクルの期間中全てハイレベルであれば当該チップの選択が有効となり、アンチヒューズ回路31はイネーブル信号Eを生成する。一方、残りの3ビットDQ1〜DQ3については、クロック信号CKの両エッジにて合計4回取り込まれる。これら4回の取り込み(AF1〜AF4)によって救済セットアドレスが指定される。上述の通り、ビットDQ1〜DQ3により指定される救済セットアドレスは、ヒューズセット100の選択に用いられる。
図9は、セット動作時における各信号の変化の一例を示す表である。
図9に示す例では、アドレス信号ADDの前半部分ADDa及び後半部分ADDbがいずれも10ビットである。1回目に入力される前半部分ADDaの10ビット(A0〜A9)と、2回目に入力される後半部分ADDbの3ビット(A0〜A2)からなる13ビットでロウアドレス(又はカラムアドレス)が指定され、後半部分ADDbのビットA4,A5からなる2ビットでバンクアドレスが指定される。後半部分ADDbのビットA3はイネーブルビットであり、セット動作時においては常にハイレベル(1)とされる。残りのビットA6〜A9は使用しない。これらのアドレス信号ADDは、同じDUTに属する全てのチップに対して共通に与えられる。
上述の通り、各アドレスに対応する救済セットアドレスはチップごとに異なり、イネーブル用のビットDQ0がハイレベル(1)であれば、他のビットDQ1〜DQ3が有効となる。図9に示す例では、アドレス#2、#5においてチップ#0がイネーブルとされ、アドレス#4においてチップ#1がイネーブルとされている。
このように、本実施形態によるセット動作によれば、任意の不良アドレスを個々のチップに対して並列にセットすることができる。
図10は、書き込み動作(ステップS13)を説明するためのフローチャートである。書き込み動作とは、ラッチ回路320に一時的にラッチされた不良アドレスをアンチヒューズ素子330に書き込む動作である。
まず、外部端子VPPS,VBBSにそれぞれ4V、−2Vを印加することにより、同じDUTに属する全チップのアンチヒューズ回路31を「書き込みモード」にエントリさせる(ステップS31)。書き込みモードにエントリすると、モード判定回路120はモード信号M1をハイレベル、モード信号M2をローレベルとし、これに応答して制御回路110は書き込みモード時における動作を行う。
テスタは、制御回路110を書き込みモードにエントリさせた後、図11に示すように、クロック信号CKを周期的に変化させる。書き込みモードにエントリしている場合、制御回路110は、クロック信号CKに同期して内部カウンタ111をインクリメントする。内部カウンタ111のカウント値Cはそれぞれ対応するヒューズセット100を示しており、したがって、カウント値Cが変化する度に異なるヒューズセット100が選択される。カウント値Cは、初期値として0に設定される(ステップS32)。
制御回路110は、カウント値Cにより選択されたヒューズセット100に対して、クロック信号CKがハイレベルの期間に書き込み信号SELBRKを供給する(ステップS33)。これにより、クロック信号CKがハイレベルの期間において書き込みトランジスタ301がオンする。この時、読み出しトランジスタ302についてはオフ状態に保持される。
書き込み動作時においては、アンチヒューズ素子330のソース/ドレイン332には、電圧VBBSV(−2V)が供給されている。このため、書き込みトランジスタ301がオンすると、当該ヒューズセット100に含まれるアンチヒューズ素子330のうち、対応するラッチ回路320にハイレベル(1)がラッチされているものについては、ゲート絶縁膜に6V(=4V+2V)の電圧が印加されることになる。これにより、当該アンチヒューズ素子330は絶縁破壊され、非導通状態から導通状態に不可逆的に遷移する。一方、当該ヒューズセット100に含まれるアンチヒューズ素子330のうち、対応するラッチ回路320にローレベル(0)がラッチされているものについては、ゲート絶縁膜に2V(=0V+2V)の電圧しか印加されないため、ゲート絶縁膜の破壊は生じない。つまり、当該アンチヒューズ素子330は非導通状態に保たれる。
これにより、ラッチ回路320を用いて一時的に保持されていた不良アドレスがアンチヒューズ素子330に不揮発的に記録されることになる。アンチヒューズ素子330への書き込みは、ラッチ回路320への書き込みに比べて長い時間(例えば5ms)を要する。
このような動作は、クロック信号CKに同期して内部カウンタ111をインクリメントすることにより(ステップS35)、全てのヒューズセット100に対して行われる。そして、内部カウンタ111のカウント値Cが最大値となり、全てのヒューズセット100に対する書き込み処理が完了すると(ステップS34:YES)、一連の書き込み動作を完了する。したがって、アンチヒューズ回路31に含まれるヒューズセット100の数が例えば1000個であるとすれば、約5秒(=5ms×1000)で同じDUTに属する全てのチップに対する書き込み動作が完了する。
ここで、書き込み動作をヒューズセット100ごとに行っているのは、テスタが供給可能な電流量に限界があることを考慮したためである。したがって、テスタが供給可能な電流量がある程度大きければ、1つのチップに含まれる複数のヒューズセット100に対して同時に書き込み動作を行っても構わない。これによれば、一連の書き込み動作をより高速に完了させることが可能となる。
図12は、ロールコールテスト(ステップS14)を説明するためのフローチャートである。ロールコールテストとは、各ヒューズセット100に不良アドレスが正しく書き込まれているか否かを判定するテストである。
まず、外部端子VPPS,VBBSをオープン状態とすることにより、同じDUTに属する全チップのアンチヒューズ回路31を「センスモード」にエントリさせる(ステップS41)。センスモードにエントリすると、モード判定回路120はモード信号M1をローレベル、モード信号M2をハイレベルとし、これに応答して制御回路110はセンスモード時における動作を行う。
テスタは、制御回路110をセンスモードにエントリさせた後、図13に示すように、各チップにリセット信号RESETを供給する(ステップS42)。リセット信号RESETは、コマンド信号CMDの所定の組み合わせであり、したがってコマンド端子21に供給される。
センスモードへのエントリ中にリセット信号RESETが供給されると、制御回路110は、クロック信号CKに同期して内部カウンタ112をインクリメントする。内部カウンタ112のカウント値C1は、初期値として0に設定される(ステップS43)。
内部カウンタ112のカウント値C1はそれぞれ複数のヒューズセット100を指しており、したがって、カウント値C1が変化する度に異なる複数のヒューズセット100が選択されることになる。一つのカウント値C1により選択されるヒューズセット100の数については特に限定されず、例えば32セット程度とすることができる。尚、一つのカウント値C1により選択されるヒューズセット100の数を2のべき条に設定すれば、内部カウンタ112を別途設ける必要はなく、内部カウンタ111の上位ビットを使用すれば足りる。
次に、制御回路110は、プリチャージ信号PREを所定期間ローレベルとし、センス回路340をプリチャージする(ステップS44)。上述の通り、電源電圧VDDと基準電圧Vrefとの関係は、
VDD>Vref
であることから、プリチャージ直後の状態におけるビット出力Bi(i=1〜m)及びイネーブル信号Eaはハイレベル(1)である。
プリチャージが完了した後、制御回路110は、カウント値C1により選択された複数のヒューズセット100に対してセンス信号SELBSAを供給する(ステップS45)。これにより、選択されたヒューズセット100内の読み出しトランジスタ302がオンし、センス回路340のノードaがアンチヒューズ素子330に接続される。この時、書き込みトランジスタ301についてはオフ状態に保持される。
その結果、アンチヒューズ素子330が絶縁破壊されている場合には、ノードaからアンチヒューズ素子330へ電流が流れるため、ノードaの電位は低下し、ビット出力Bi及びイネーブル信号Eaはローレベル(0)に反転する。これに対し、アンチヒューズ素子330が絶縁破壊されていない場合には、ノードaの電位はVDDに保たれるため、ビット出力Bi及びイネーブル信号Eaはハイレベル(1)を保持する。
以上により、選択された複数のヒューズセット100に書き込まれた不良アドレス及びイネーブル信号Eaが読み出される。このような動作は、クロック信号CKに同期して内部カウンタ112をインクリメントすることにより(ステップS47)、全てのヒューズセット100に対して行われる。そして、内部カウンタ112のカウント値C1が最大値となり、全てのヒューズセット100に対するセンス動作が完了すると(ステップS46:YES)、一連のセンス動作を完了する。
このようにして読み出された不良アドレスは、図示しないテスタに供給され、動作テスト(ステップS11)にて検出された不良アドレスと比較される。その結果、両者が全て一致していれば(ステップS48:YES)、ロールコールテストを終了する。これに対し、少なくとも一部のアドレスが不一致であれば(ステップS48:NO)、アンチヒューズ素子330の破壊が不十分であることから、同じヒューズセット100に対して再書き込みを実行する(ステップS49)。
そして、再度ロールコールを行い、テスタ内に記憶された不良アドレスと比較する。その結果、再書き込みの成功により両者が全て一致していれば(ステップS50:YES)、ロールコールテストを終了する。これに対し、不一致のアドレスが一つでも残存していれば(ステップS50:NO)、当該ヒューズセット100への書き込みを断念し、ディセーブル回路230に含まれるアンチヒューズ素子330への書き込みを行う(ステップS51)。これにより、当該ヒューズセット100は無効化される。
次に、無効化したヒューズセット100に書き込むべき不良アドレスを、未使用状態である他のヒューズセット100に対して書き込む(ステップS52)。そして、再々度ロールコールを行い、テスタ内に記憶された不良アドレスと比較する。その結果、代替書き込みの成功により両者が全て一致していれば(ステップS53:YES)、ロールコールテストを終了する。これに対し、不一致のアドレスが一つでも残存していれば(ステップS53:NO)、当該チップを不良品として取り扱う(ステップS54)。
このように、本実施形態では、ヒューズセット100を有効化するイネーブル回路220の他に、無効化するディセーブル回路230を備えていることから、再書き込みが失敗したとしても、直ちに当該チップを廃棄するのではなく、未使用状態である他のヒューズセット100への代替書き込みが可能となる。これにより、製品の歩留まりを向上させることが可能となる。
以上が一連のテスト工程にて行われる動作である。
このように、本実施形態によれば、セット動作(ステップS12)にて全ての不良アドレスをラッチさせた後、実際にアンチヒューズ素子330に対する書き込み動作(ステップS13)を行っていることから、時間のかかる書き込み動作を複数のチップに対して並列に実行することが可能となる。このため、アンチヒューズ素子330への書き込み時間を大幅に短縮することが可能となる。
しかも、セット動作(ステップS12)においては、アドレス信号ADDをインクリメントしながら、データDQを用いて救済セットアドレスを供給していることから、異なる不良アドレスを個々のチップに対してセットすることができる。このため、アドレス信号ADDを供給するためのプローブ401cが共通接続された、通常のプローブカード401を用いることが可能となる。
さらに、ロールコールテスト(ステップS14)において書き込み不良が発見されたヒューズセット100については、ディセーブル回路230を活性化させることによって事後的に無効化することができる。これにより、未使用のヒューズセット100への代替書き込みが可能となることから、製品の歩留まりを向上させることが可能となる。
上述の通り、実使用状態においては、外部端子VPPS,VBBSがオープン状態とされ、したがって、常にセンスモードとなる。したがって、電源投入時やリセット時においてリセット信号RESETを発行すると、図12に示したステップS43〜ステップS47の処理が実行され、各ヒューズセット100に書き込まれた不良アドレスRADDが読み出される。そして、読み出された不良アドレスRADDは、図1に示したアドレス比較回路32に供給され、アドレス比較回路32及びアクセス回路12による制御により、不良のある通常セル11aが冗長セル11bに置換される。これにより、不良アドレスが救済される。
以上、本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明は、上記の実施形態に限定されることなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能であり、それらも本発明の範囲内に包含されるものであることはいうまでもない。
例えば、上記実施形態では、セット動作(ステップS12)にて全ての不良アドレスをラッチさせた後、実際にアンチヒューズ素子330に対する書き込み動作(ステップS13)を行っているが、本発明がこれに限定されるものではない。したがって、ラッチ回路320を省略し、上述したセット動作時において実際にアンチヒューズ素子330への書き込みを行っても構わない。
また、上記実施形態では、各ヒューズセット100にディセーブル回路230を設けることによって、イネーブル化したヒューズセット100の無効化を可能としているが、本発明においてこのようなディセーブル回路230を設けることは必須でない。
さらに、上記実施形態では、アンチヒューズ素子330として、MOSトランジスタと同じ構成を有するゲート破壊型のアンチヒューズ素子を用いているが、本発明においてアンチヒューズ素子の具体的な構成については特に限定されない。したがって、例えば、DRAMのセルキャパシタと同じ構成を有する容量破壊型のアンチヒューズ素子を用いても構わない。