以下、図を参照して本発明を実施するための形態について誘導型回転電機を例に説明する。この回転電機はハイブリット自動車等の駆動系に使用され、車輪を駆動する駆動用のモータの機能と、発電を行う発電機の機能の両方を有している。回転電機は、例えば、停止中のエンジンの始動に用いられたり、エンジンと共に車両を走行するためのトルク発生に用いられたり、単独のトルクで車両走行に用いられたりする。
図1は、回転電機の側面断面図である。図2は、図1に示す回転電機の固定子の断面を示す図である。図3は、回転電機の回転子の断面を示す斜視図である。回転電機は、軸方向の一端側が開口した有底筒状のハウジング1と、このハウジング1の開口端を封止するカバー2を有している。ハウジング1とカバー2は、複数本、例えば6本のボルト3によって締結されている。ハウジング1の内側には水路形成部材22が設けられおり、固定子4はその水路形成部材22の内側に焼き嵌め等で固定されている。水路形成部材22の図示左端のフランジはハウジング1とカバー2とに挟まれて固定されており、水路24が水路形成部材22とハウジング1との間に形成される。回転電機を冷却する冷却水は、ハウジング1に形成された取入口32から水路24に取り入れられた後、ハウジング1の排出口34から排出される。
固定子4は、複数のスロット411が周方向等間隔に設けられた固定子鉄心412と、各スロット411内に巻回された3相の固定子コイル413とによって構成されている。本実施の形態の誘導型回転電機は、8極構成の固定子コイル413はスター結線にて結線され、それぞれの相は一対の巻線部分が並列に接続された2Y結線となっている。固定子コイル413が巻回される固定子鉄心412には、48のスロット411が形成されている。固定子鉄心412は、例えば厚さ0.05〜0.35mmの電磁鋼板を打ち抜き加工またはエッチング加工により成形し、成形された電磁鋼板を積層して構成された積層鋼板からなり、周方向に等間隔の放射状に配置された複数のスロット411が形成されている。
固定子鉄心412の内周側には、固定子鉄心412と微小な隙間を介して対向するように、回転子5が回転可能に配置されている。回転子5はシャフト6に固定されており、シャフト6と一体に回転する。シャフト6は、ハウジング1およびカバー2にそれぞれ設けられた一対のボールベアリング7a,7bによって回転自在に支持されている。これらのベアリング7a,7bの内、カバー2側のベアリング7aは、不図示の固定板によってカバー2に固定されており、ハウジング1の底部側のベアリング7bは、ハウジング1の底部に設けられた凹部に固定されている。
シャフト6の左端には、プーリー12がナット11によって取り付けられている。シャフト6のプーリー12とベアリング7aとの間には、スリーブ9およびスペーサ10が設けられている。スリーブ9の外周およびプーリー12の内周はやや円錐形状となっており、ナット11による締め込み力によってプーリー12とシャフト6とが強固に一体化され、これらは一体的に回転できるようになっている。固定子4に対して回転子5が回転駆動されると、プーリー12によってシャフト6の回転力が外部に出力される。また、発電機として機能する場合には、プーリー12からの回転力がシャフト6に入力される。
図3に示すように、かご型回転子である回転子5の回転子鉄心513には、回転軸方向に延びる複数の導体バー511が、周方向の全周に渡って等間隔で埋め込まれている。回転子鉄心513は磁性体からなり、回転子鉄心513の軸方向両端には、各導体バー511を短絡させる短絡環512がそれぞれ設けられている。なお、図3の斜視図では、回転子鉄心513と導体バー511との関係を明示するために、回転軸に垂直な面で断面した断面構造を示しており、プーリー12側の短絡環512およびシャフト6は図示されていない。
回転子鉄心513は、厚さ0.05〜0.35mmの電磁鋼板を打ち抜き加工またはエッチング加工により成形し、成形された電磁鋼板を積層して構成された積層鋼板からなる。図3に示すように、回転子鉄心513の内周側には、軽量化の為に略扇形の空洞部514が周方向等間隔に設けられている。回転子鉄心513の外周側すなわち固定子側には前述した導体バー511が埋め込まれており、導体バー511の内側の回転子ヨーク530に磁気回路が形成される。各導体バー511および短絡環512はアルミによって構成されており、ダイキャストによって回転子鉄心513に一体とされている。回転子鉄心の両端に配置された短絡環512は、回転子鉄心513から軸方向両端に突出するように設けられる。なお、図1には図示していないが、ハウジング1の底部側には、回転子5の回転を検出するための検出ロータが設けられている。回転センサ13は、回転する検出ロータの歯を検出し、回転子5の位置や回転子5の回転速度を検知するための電気信号を出力する。
図4は、2Y接続された固定子コイル413の接続図であり、駆動用の二次電池612とインバータ装置620の直流端子が電気的に接続されている。インバータ装置620の交流端子は、固定子コイル413と電気的に接続されている。二次電池612からインバータ装置620に直流電力が供給され、固定子鉄心412に巻回された3相の固定子コイル413にインバータ装置620から交流電力が供給される。固定子コイル413は、交流電力の周波数に応じた回転速度の回転磁界を発生する。
本実施の形態では、固定子コイル413は2個のスター結線Y1,Y2を有している。Y1結線は、U相巻線Y1UとV相巻線Y1VとW相巻線Y1Wとを有している。Y2結線は、U相巻線Y2UとV相巻線Y2VとW相巻線Y2Wとを有している。Y1結線とY2結線は並列接続されており、それぞれの中性点も接続されている。巻線Y1Uは、直列接続されたコイルU11,コイルU12,コイルU13およびコイルU14から構成されている。また、巻線Y2Uは、直列接続されたコイルU21,コイルU22,コイルU23およびコイルU24から構成されている。同様に、巻線Y1Vは直列接続されたコイルV11〜V14から構成され、巻線Y2Vは直列接続されたコイルV21〜V24から構成され、巻線Y1Wは直列接続されたコイルW11〜W14から構成され、巻線Y2Wは直列接続されたコイルW21〜W24から構成されている。
本実施の形態では、分布巻の中でもコイルエンドの寸法を小さくできる重ね巻を採用しており、コイルU11〜コイルW24の各々は、図5(a)に示すような連続した二組のコイル4131a,4131bから成る。同一巻数(例えば、3ターン)のコイル4131a,4131bは、渡り導体部4134を介して連続している。コイル4131a,4131bの巻き方はα巻としているが、順巻でも良い。本実施の形態の回転電機では、二組のコイル4131a,4131bが24セット用いられ、予め図5(a)のように巻き回されたコイル4131a,4131bのそれぞれが、固定子鉄心412の対応するスロット411に内側から嵌め込まれる。
図4では、コイルU11を構成する2つのコイル4131a,4131bを数字2,1で表示している。図2においては、コイルU11を構成する2つのコイル4131a,4131b、およびコイルU12を構成する2つのコイル4131a,4131bの巻回しの様子が、破線(4131a)および実線(4131b)で模式的に示されている。詳細は後述するが、いずれのコイル4131a,4131bも、4つのスロットを間に挟んだ一対のスロット411間に巻回されている。
例えば、コイルU11を構成するコイル4131bの場合には、番号1のスロットと番号6のスロットとの間に巻回され、番号1のスロットにおいては回転子側(先端側)に配置され、番号6のスロットにおいては底側に配置されている。一方、コイル4231aは、番号2のスロットの先端側と番号7のスロットの底側との間で巻回される。同様に、コイルU12のコイル4131aは、番号38と番号43のスロット411に跨って巻き回され、コイルU12のコイル4131bは、番号37と番号42のスロット411に跨って巻き回される。なお、コイルが巻き回される一対のスロット間にいくつのスロットが挟まれるかは、スロット総数や相数などに依存し、必ずしも4とは限らない。
図4では、コイルU11のコイル4131aは数字2で表され、コイル4131bは数字1で表されているが、これらの数字1および2は、コイル4131a,4131bが配置されるスロット411の内、スロット先端側に配置される方のスロット番号を示している。スロット番号は48個あるスロット411の任意のスロット411を番号1とし、周方向に順に付した番号である。コイル4131aは、番号2のスロット411と番号7のスロット411に跨って巻き回され、番号2のスロット411においては回転子側(スロット先端側)に挿入され、番号7のスロット411においてはスロット底側に挿入されている。
以下同様に、図4の一対のコイルに対して示される番号は、各コイルが回転子側に挿入されるスロットの番号を表している。このように、一対になった2つのコイル4131a,4131bは隣同士のスロット411に挿入することで、トルク脈動を低減できる。
図6は、スロット411と固定子コイル413を構成するコイルの配置関係を示す図である。図6の欄442に示す番号は、上述したスロット番号1〜48を示す。例えば、コイルU11を構成する2つのコイル4131a,4131b(すなわち、図4の番号2,1を付したコイル)は、番号2および1のスロット411の回転子側に挿入される。図6では、そのことが分かりやすいように、番号2,1の下側の欄外に符号U11を付した。例えば、欄442において、コイルW13は番号29と30で表されている。すなわちコイルW13は、スロット番号29のスロット411の回転子側に配置されたコイル4131aと、スロット番号30のスロット411の回転子側に配置されたコイル4131bとの直列接続でコイルW13が構成されていることを示している。
図6の欄444は、固定子巻線の相とその相における配置の順番を示している。上述したように、コイルU11を構成するコイル4131a,4131bは、スロット番号2,1のスロット411の回転子側にそれぞれ挿入されている。このコイルU11は、欄444では共に「U1」と記されている。これは、固定子巻線におけるU相の1番目、すなわちU相の基準位置に配置されていることを示している。コイルU21を構成するコイル4131a,4131bは、欄442に示すようにスロット番号44,43のスロット411の回転子側に挿入され、欄444には共に「U2」と記されている。これは、コイルU21は、固定子巻線のU相の2番目、すなわちU相の基準位置から機械角で45°の位置に配置されていることを示している。同様に、コイルU12を構成するコイル4131a,4131bは、欄442に示すようにスロット番号38,37のスロット411の回転子側にそれぞれ挿入され、欄444には共に「U3」と記されている。これは、コイルU12は、固定子巻線のU相の3番目、すなわちU相の基準位置から機械角で90°の位置に配置されていることを示している。
すなわち、図4に示す巻線Y1Uにおいて、コイルU11はU相の基準位置に配置され、コイルU12,コイルU13およびコイルU14は、それぞれ基準位置から3番目(機械角90°)、5番目(機械角180°)および7番目(機械角270°)の位置に配置されている。一方、巻線Y2UのコイルU21〜U24は、欄444に示すように、それぞれU相の基準位置から2番目(機械角45°)、4番目(機械角135°)、6番目(機械角225°)、8番目(機械角315°)の位置に配置されている。
巻線Y1VのコイルV11は、コイルU11に対してスロット411で2個分、すなわち機械角で15°シフトしている。このコイルV11の位置がV相の基準位置となり、欄444には「V1」と示されている。巻線Y1VのコイルV11と直列接続されたコイルV12〜V14は、欄444に「V3」,「V5」,「V7」と示されているように、V相の基準位置から3番目(機械角90°)、5番目(機械角180°)および7番目(機械角270°)の位置に配置されている。一方、欄444に「V2」と示されている巻線Y2VのコイルV21は、コイルV11の位置から機械角で45°シフトした位置にある。巻線Y2Vの他のコイルV22〜V24は、欄444に「V4」,「V6」,「V8」と示されているように、V相の基準位置から4番目(機械角135°)、6番目(機械角225°)、8番目(機械角315°)の位置に配置されている。このように、V相のコイルV11はコイルU11に対して機械角で15°シフトしているので、V相のコイルはU相のコイルに対して15°シフトしている。同様に、W相のコイルW11は、コイルU11に対して機械角で30°シフトしているので、W相のコイルは全てU相のコイルに対して30°シフトしている。
次に欄446について説明する。この実施の形態では、周回する各コイル4131a,4131bは2つのスロットを通して周回する構造となっている。すなわち、上述したように、コイルU11のコイル4131aは番号2のスロット411と番号7のスロット411との間に巻回され、番号2のスロット411では、巻線はスロット内の回転子側に配置され、番号7のスロット411では、巻線はスロット411のスロット底側に配置される。欄446には、この底側のスロット番号が表示されている。例えば、コイルU11のコイル4131bは1番目と6番目のスロット間に周回され、1番目のスロット411では回転子側に、6番目のスロット411ではスロット底側に配置されている。
欄448は、欄442の番号で示すスロット411のスロット底側に位置するコイルの相およびその相におけるコイルの配置の順番を示している。また、欄450に記載の符号は、欄448に記載のコイルの周回するスロットを示している。例えば、スロット番号2のスロット411の回転子側には、欄422に示すようにコイルU11のコイル4131aが挿入されている。一方、スロット番号2のスロット411の底側に挿入されるコイルは、回転子側がスロット番号45のスロット411に挿入されるコイルV21のコイル4131bである。そのため、欄450には番号45が記載されている。そして、このコイルがV相の2番目コイルであることを示す符号「V2」が欄448に記載されている。
図7は、24個のコイル(コイルU11〜W24)を固定子鉄心412のスロット内に装着し、コイル同士を接続する前の状態を示す。なお、本実施の形態では、コイルの巻き方はα巻、コイル連続巻数2、合計コイル数48の回転電機について説明するが、これに限らずコイルの巻き方は順巻きにしてもよいし、コイル連続巻数や合計コイル数は増減させてもよい。
コイルU11〜W24の各々は、図5(a)に示すように、渡り導体部4134で連続している2つのコイル4131a,4131bから成る2連続α巻コイルで構成されている。重ね巻では、図7に示すように各コイルU11〜W24の導体端末線211,212は固定子鉄心412の軸方向片側に集中し、48本の導体端末線211,212がコイルエンド220の図示上方に引き出されている。重ね巻は、分布巻の中でもコイルエンドの寸法を小さくできる。なお、図7は、導体端末線211,212を接続する前の状態を示している。これらの導体端末線211,212は、図4に示すように直列接続されるべき隣のコイルの導体端末線211,212と接続される。
図8は導体端末線211,212の接続形態を示す図であり、コイルエンド部の一部を示したものである。図8(a)に示すように、外周側の導体端末線211を、コイルエンド220に沿って内周側の導体端末線212の位置まで渦巻状に這い回す。そして、導体端末線211の端末接続部211aを、コイルエンド220の外周に対してほぼ直角に、すなわち径方向外側に折り曲げる。その後、内周側の導体端末線212をコイルエンド220の上端に沿って周方向に折り曲げ、図8(b)に示すように端末接続部212aの幅広面を端末接続部211aの側面に接触させ、端末接続部211a,212a同士をTIG溶接等により接続する。
本実施の形態では、図8に示すようなコイルエンド220を跨ぐ導体端末線211,212を有する回転電機において、以下に説明するような相間絶縁構造を採用している。
(第1の相間絶縁構造)
図9は、固定子4のコイルエンド220における相間絶縁構造の第1の例を説明する図である。外周側の導体端末線211を渦巻状に引き回す前に、図9(a)に示すように導体端末線211に対して絶縁チューブ100を装着する。その後、絶縁チューブ100が装着された導体端末線211をコイルエンド220に沿って成形し、図9(b)に示すように、絶縁チューブ100が設けられていない端末接続部211aを、コア外周側(固定子の径方向外側)に折り曲げる。
ここで、成形後において隣接する導体端末線211間のギャップが小さい場合には、絶縁チューブ100として、シリコーンワニスガラスチューブ、フッ素樹脂チューブ、フッ素ゴムチューブなどの肉厚が薄く(0.3mm程度)、絶縁信頼性の高いものを使えば良い。但し、絶縁チューブ100はこれに限るものではない。また、必要な絶縁距離は絶縁紙、絶縁チューブの厚さを変えることで調整が可能である。
次に、コイルエンド220の上に絶縁部材103を装着する(図9(b)参照)。この絶縁部材103は、コイルエンド220と内周側の導体端末線212との絶縁を確保するために設けられるものであり、コイルエンド220の上面および内周面に配置される。
図10は、絶縁部材103の作成手順を説明する図である。絶縁部材103には種々の絶縁材料を用いることができるが、ここでは絶縁紙を用いる場合について説明する。図10(a)に示すように、絶縁部材103に用いる絶縁紙103aの形状は長方形を成し、長辺の長さL1はコイルエンド内周に接する円の周長に設定される。一方、短辺の長さは、コイルエンド220の高さL2と、コイルエンド220の径方向幅L3を足し合わせた長さに設定される。
次に、絶縁部材103をコイルエンド220に沿わせるための折り目103cと、コイルエンド高さ位置に相当する折り目103bを設ける(図10(a)参照)。そして、折り目103bに沿って絶縁紙103aを二つ折りし(図10(b)参照)、さらに、折り目103cに沿って絶縁紙103aを重ね折りする(図10(c)参照)。
次に、重ね折りした絶縁紙103aを元の形に展開し、折り目103cの幅L3の部分(符号βで示す部分)を切断しスリット103d(図10(e)参照)を形成する。このようにして、絶縁部材103に、コイルエンド220の内周面と導体端末線212との間に介在するように配置される絶縁部1030と、コイルエンド220の上面と導体端末線212の折り曲げ部分(端末接続部212a)との間に介在するように配置される絶縁部1031とが形成される。最後に、図10(e)に示すように、絶縁紙103aを折り目103cに沿って折り曲げて円形状に成形することで、絶縁部材103が完成する。
図9に戻って、コイルエンド220に絶縁部材103を配置したならば、図9(c)に示すように内周側導体端末線212の端末接続部212aを、コイルエンド220の外周側に折り曲げる。その後、端末接続部211a,212a同士をTIG溶接等により接続する。接続部分は、絶縁処理のためのワニス処理が施される。図9(c)に示すように、絶縁部材103の絶縁部1030は、コイルエンド220の内周面と導体端末線212との間に介在するように、コイルエンド220の内周面に沿って配置される。一方、絶縁材料103の絶縁部1031は、コイルエンド220の上面と導体端末線212の折り曲げ部分との間に介在するように、コイル上面に配置される。
コイルエンド220は、図5に示すコイル4131a,4131bのコイルエンド部分によって構成されるものであり、幅方向中央部分が最も高くなっている。そのため、コイルエンド220と折り曲げられた導体端末線212との間隔は、この幅方向中央部分において最も小さくなっている。よって、図10(a)に示す寸法L3は、コイルエンド220の径方向幅寸法よりも小さくても構わないが、少なくともコイルエンド220の径方向中央部分が覆われるような寸法に設定する必要がある。
図9(c)に示す相間絶縁構造では、絶縁部材103はコイルエンド220と内周側導体端末線212との絶縁のために設けられており、絶縁チューブ100はコイルエンド220と外周側導体端末線211との絶縁、および、外周側導体端末線211同士の絶縁のために設けられている。このような構成とすることで、導体端末線211,212とコイルエンド220との間の絶縁が確保される。なお、図8,9では、外周側導体端末線211をコイルエンド220に沿って引き回したが、内周側導体端末線212をコイルエンド220に沿って引き回す構成にしても良いのはもちろんである。
(第2の相間絶縁構造)
図11〜13は、相間絶縁構造の第2の例を説明する図である。上述した第1の相間絶縁構造では、絶縁紙等を折り曲げて形成した絶縁部材103を用いて相間絶縁を行った。以下に説明する第2の相間絶縁構造では、絶縁部材103に代えて、図11に示すような絶縁性の配線板120を用いて相間絶縁を行うようにした。
図11において、(a)は配線板120の斜視図であり、(b)はA−A断面図である。配線板120は、円筒部121と、円筒部121の上端に形成されたリング状の鍔状部122とを備えている。鍔状部122の上面には、一対の凸部123a,123bで構成されるガイド部123が複数形成されている。ガイド部123は、後述するように内周側の導体端末線212の端末接続部212aをコイルエンドの外周側に折り曲げる際のガイドとして用いられるものであって、導体端末線212の数と等しい数だけ形成されている。
配線板120を上述した絶縁部材103と対比すると、円筒部121は絶縁部1030に対応し、鍔状部122は絶縁部1031に対応している。図11に示す配線板120は、樹脂、ゴムなどの絶縁性材料を用いた薄肉の部材で構成され、一体成型により形成される。絶縁部材としての必要な絶縁距離は、配線板120の厚さを変えることで調整が可能である。
図12は、配線板120のコイルエンド220への装着手順を説明する図である。まず、図12(a)に示すように、第1の相間絶縁構造の場合と同様に外側の導体端末線211に絶縁チューブ100を装着し、その導体端末線211をコイルエンド220に沿って成形する。その後、端末接続部211aをコア外周側(固定子の径方向外側)に折り曲げた後に、配線板120をコイルエンド220に装着する。配線板120の円筒部121はコイルエンド220の内周面と導体端末線212との間に介在するように配置され、鍔状部122はコイルエンド220の上面に配置される。そして、図12(c)で示すように、内周側の導体端末線212の端末接続部211aを、凸部123aと凸部123bとの間、すなわちガイド部123の溝に沿って外側に折り曲げ、外周側導体端末線211の端末接続部211aに接続する。このように、ガイド部123は、導体端末線211,212間を絶縁するとともに、内周側の導体端末線212をコイルエンド220の外周側に折り曲げる際の、位置決めとしても機能する。
図13は、配線板120が装着され、端末接続部211a,212aの接続が完了した状態のコイルエンドを示す図であり、コイルエンドの一部を示したものである。外周側導体端末線211とコイルエンド220との間の絶縁は、外周側導体端末線211に装着された絶縁チューブ100により確保される。また、コイルエンド220を跨るように折り曲げられた導体端末線212とコイルエンド220との間の絶縁は、断面がL字形状の配線板120によって確保される。
(第3の相間絶縁構造)
図14,15は、相間絶縁構造の第3の例を説明する図である。上述した第2の相間絶縁構造では、絶縁部材として絶縁チューブ100と配線板120とを用いたが、第3の相間絶縁構造においては、図14に示すような絶縁部材130を用いるようにした。図14において、(a)は絶縁部材130の斜視図であり、(b)はB−B断面図である。
絶縁部材130は、内側円筒部131と、外側円筒部132と、それらを連結するリング部133とを備えている。リング部133の上面には、第2の相間絶縁構造で示したガイド部123と同様の機能を有するガイド部134が設けられている。ガイド部134は、一対の凸部134a,134bで構成されており、内周側導体端末線212と同数設けられている。また、外側円筒部131の外周面には、導体端末線211同士の絶縁を確保するためのガイド部135が複数形成されている。ガイド部135の数は導体端末線211の数と同じである。絶縁部材130は、樹脂、ゴムなどの絶縁性材料を用いた薄肉の部材で構成され、一体成型により形成される。絶縁部材としての必要な絶縁距離は、絶縁部材130の厚さを変えることで調整が可能である。
図15は、絶縁部材130のコイルエンド220への装着手順を説明する図である。まず、図15(a)に示すように、コイルエンド220に絶縁部材130を装着する。この時、内周側導体端末線212がガイド部134の溝位置、すなわち、凸部134aと凸部134bとの間の溝と対向するように、絶縁部材130を位置決めする。コイルエンド220の内周面には絶縁部材130の内側円筒部131が対向し、コイルエンド220の上面にはリング部133が対向し、コイルエンド220の外周面には外側円筒部132が対向する。
次に、図15(b)に示すように、外周側の導体端末線211を、ガイド部135に沿わせるように折り曲げる。その結果。各導体端末線211の端末接続部211aが、対応する内周側導体端末線212に相対する位置(接続位置)にそれぞれ導かれることになる。その後、導体端末線211の端末接続部211aを、図15(c)のようにコイルエンド220の外周側(固定子の径方向外側)に折り曲げる。さらに、図15(d)に示すように、内周側の導体端末線212の端末接続部212aをガイド部134の溝に沿って外側に折り曲げ、外周側の導体端末線211の端末接続部211aに接続する。
このように、第3の相間絶縁構造においては、コイルエンド220は絶縁部材130によって覆われることになるため、コイルエンド220と導体端末線211,212との絶縁が確保される。また、ガイド部134,135は、各導体端末線211,212間の絶縁部材として機能するとともに、導体端末線211,212を曲げ加工する祭の位置決め機構としての機能も有している。その結果、導体端末線211,212の曲げ加工を、容易にかつ正確に行うことができる。また、前述した第2の相間絶縁構造では、各導体端末線211のそれぞれに絶縁チューブ100を装着していたが、第3の相間絶縁構造では絶縁チューブ100を省略することができるので、コスト低減を図ることができる。
(第4の相間絶縁構造)
図16,17は、相間絶縁構造の第4の例を説明する図である。図16は第4の相間絶縁構造における絶縁部材140を示す斜視図であり、一部を断面とした。絶縁部材140は、図14に示した絶縁部材130からガイド部134,135を省略したものである。この絶縁部材140は、導体端末線211同士および導体端末線212同士のギャップが大きい場合に適用される。
図17は、絶縁部材140をコイルエンド220に装着した状態を示す図であり、コイルエンド220の内周面、外周面および上面は、絶縁部材140の内側円筒部141、外側円筒部142およびリング部143によって覆われている。そのため、導体端末線211,212とコイルエンド220間の絶縁は絶縁部材140によって確保される。一方、導体端末線211間および導体端末線212間のギャップは十分確保されているので、絶縁部材130のようなガイド部134,135は設けられていない。本構造においても、コイルエンド220の相間絶縁のすべてを一部品で確保することが可能である。絶縁部材140の材料としては樹脂、ゴムなどを使用できる。また、必要な絶縁距離は絶縁部材140の厚さを変えることで調整が可能である。
(第5の相間絶縁構造)
図18は、相間絶縁構造の第5の例を説明する図である。上述した第4の相間絶縁構造では、カップ状の絶縁部材140を用いて絶縁を確保したが、第5の相間絶縁構造においては、図18(a)に示すように、絶縁部材140の代わりにガラステープなどの絶縁テープ150をコイルエンド220に巻きつけるようにした。その後の、導体端末線211,212間の接続手順は、図18の(b)〜(d)に示すように、第4の相間絶縁構造の場合と同様の手順で行われる。本構造においても、コイルエンドの相間絶縁のすべてを一部品(絶縁テープ150)で確保することが可能である。また、必要な絶縁距離は絶縁テープ150の厚さを変えることで調整が可能である。
(第6の相間絶縁構造)
図19,20は、相間絶縁構造の第6の例を説明する図である。第6の相間絶縁構造では、絶縁紙160(図20参照)と図19に示す結線板170とを用いて絶縁を確保するようにした。図19において、(a)は結線板170の平面図であり、(b)はC−C断面図であり、(c)は接続導体172の斜視図である。
結線板170は、リング状の絶縁板171と、絶縁板171に組み込まれた接続導体172とで構成されている。絶縁板171の上面には円弧状の溝171cが形成されており(図19(a),(b)参照)、それらの溝171cの中に図19(c)に示す接続導体172がそれぞれ組み込まれている。溝171cは、導体端末線211または212の数と同数形成されている。
接続導体172の両端に形成された接続部172a,172bは、結線板170の上面からほぼ垂直に突出している。絶縁板171には、接続部172aの外周側に隣接して形成された貫通孔171aと、接続部172bの内周側に隣接して形成された貫通孔171bとが設けられている。図19(b)の二点鎖線で示すように、貫通孔171aには導体端末線211(端末接続部211a)が挿入され、貫通孔171bには導体端末線212(端末接続部212a)が挿入される。
図20はコイルエンド220における相間絶縁構造を説明する図であり、結線板170のコイルエンド220への装着手順を示したものである。まず、図20(a)に示すように、コイルエンド220に絶縁紙160を装着する。絶縁紙160はコイルエンド220の全周に亘って複数配置され、コイルエンド220の内周面、外周面および上面を覆うように設けられる。
次に、図20(b)に示すように、絶縁紙160が設けられたコイルエンド220上に、予め接続導体172が組み込まれた結線板170を装着する。図20(c)は装着後の状態を示しており、外周側に配置された導体端末線211の端末接続部211aは絶縁板171の貫通孔171aに挿入され、内周側に配置された導体端末線212の端末接続部212aは絶縁板171の貫通孔171bに挿入される。その結果、図20(c)に示すように、端末接続部211aと接続導体172の接続部172aとが隣接するように配置され、端末接続部212aと接続導体172の接続部172bとが隣接するように配置される。その後、端末接続部211aと接続部172a、および、端末接続部212aと接続部172bとを溶接等により接続する。
このように、第6の相間絶縁構造では、絶縁紙160により導体端末線211,212とコイルエンド220との絶縁が確保され、コイルエンド220を跨ぐようにして導体端末線211,212を接続する接続導体172とコイルエンド220との絶縁は、絶縁板171によって確保される。また、導体端末線211,212を接続する接続導体172が結線板170に予め組み込まれていて、導体端末線211の引き回しや導体端末線212の曲げ加工を行う必要がないので、作業性の向上が図れる。
(第7の相間絶縁構造)
図21,22は、相間絶縁構造の第7の例を説明する図である。図21は第7の相間絶縁構造における結線板180の構造を示す図であり、(a)は平面図で、(b)はD−D断面図であり、(c)は接続導体182の斜視図である。前述した第6の相間絶縁構造では、図19(a)に示したように、導体端末線211,212の立設位置に合わせて接続導体172を円弧状に形成した。一方、第7の相間絶縁構造では、外周側導体端末線211を渦巻き状に引き回すことを前提にし、接続導体182の形状を図21(c)に示すような単純なU字形状とした。
リング状の絶縁板181の上面には、接続導体182を組み込むための溝181cが複数形成されている。溝181cは絶縁板181の径方向に延在し、溝181cの外周側に近接して貫通孔181aが形成され、溝181cの内周側に近接して貫通孔181bが形成されている。貫通孔181a,181bは、それぞれ導体端末線211,212が挿入される孔である。
図22は、結線板180のコイルエンド220への装着手順を示す図である。まず、図22(a)に示すように、コイルエンド220に絶縁紙160を装着し、導体端末線211を渦巻き状に引き回すような曲げ加工を行う。なお、第6の相間絶縁構造の場合と同様に、絶縁紙160はコイルエンド220の全周に亘って複数配置され、コイルエンド220の内周面、外周面および上面を覆うように設けられる。
次に、図22(b)に示すように、絶縁紙160が設けられたコイルエンド220上に、予め接続導体182が組み込まれた結線板180を装着する。図22(c)は装着後の状態を示しており、外周側に配置された導体端末線211の端末接続部211aは絶縁板181の貫通孔181aに挿入され、内周側に配置された導体端末線212の端末接続部212aは絶縁板181の貫通孔181bに挿入される。その結果、図22(c)に示すように、端末接続部211aと接続導体182の接続部182aとが隣接するように配置され、端末接続部212aと接続導体182の接続部182bとが隣接するように配置される。その後、端末接続部211aと接続部182a、および、端末接続部212aと接続部182bとを溶接等により接続する。
図22(a)〜(c)では、曲げ加工された導体端末線211同士が近接するように示されているが、本構造は、実際には図17に示す場合と同様に、導体端末線211同士のギャップが大きい場合に適用される。そのため、導体端末線211には絶縁チューブ100が装着されていない。
図23は第7の相間絶縁構造の変形例を示す図であり、導体端末線211同士のギャップが小さい場合に適用される。そのため、図23(a)に示すように、導体端末線211には絶縁チューブ100が装着される。絶縁チューブ100を用いることで、導体端末線211同士の絶縁だけでなく、導体端末線211とコイルエンド220との絶縁も確保できるので、第7の相間絶縁構造で用いた絶縁紙160に代えて、第1の相間絶縁構造で用いた絶縁部材103(絶縁紙103a)を使用することが出来る。
絶縁部材103および絶縁チューブ100を装着したならば、第7の相間絶縁構造の場合と同様に接続導体182が組み込まれた結線板180を装着し(図23(b)参照)、端末接続部211aと接続部182a、および、端末接続部212aと接続部182bとを溶接等により接続する(図23(c)参照)。
(第8の相間絶縁構造)
図24,25は、相間絶縁構造の第8の例を説明する図である。図24は第8の相間絶縁構造における結線板190の構造を示す図である。図24において、(a)は結線板190の表面側を示す図であり、(b)は結線板190の裏面側を示す図である。いずれも、リング形状をした結線板190の上半分を示したものである。また、図24の(c)は、(a)のE−E断面図である。
図24に示す結線板190では、図19に示す結線板170と同一部分については同一の符号を付した。すなわち、結線板190は、裏面側に絶縁壁190a,190bを設けた点が、図19に示す結線板170と異なる。絶縁壁190aは各貫通孔171aの内周側に隣接して形成され、絶縁壁190bは各貫通孔171bの内周側に隣接して形成されている。図24(c)に示すように、結線板190をコイルエンド220に装着すると、絶縁壁190aは導体端末線211とコイルエンド220との間に配置され、絶縁壁190bは導体端末線212とコイルエンド220との間に配置される。これにより、導体端末線211,212とコイルエンド220との絶縁を確保することが出来る。
図25は、結線板190の装着手順を示したものである。図25(a)では、導体端末線211,212が立設された状態で、結線板190をコイルエンド220に装着する。このとき、導体端末線211が絶縁板171の貫通孔171aに挿入されるとともに、導体端末線212が貫通孔171bに挿入されることにより、導体端末線211,212とコイルエンド220との間に絶縁壁190a,190bが配置されることになる。その後、端末接続部211aと接続部172a、および、端末接続部212aと接続部172bとを溶接等により接続する(図25(b)参照)。
このように、第8の相間絶縁構造では、結線板190に複数の絶縁壁190a,190bを設けたので、絶縁チューブ100を用いることなく導体端末線211,212とコイルエンド220との絶縁を確保することができる。その結果、各導体端末線211,212に絶縁チューブ100を装着するための手間が省け、組み立てコストの低減が図れる。
なお、結線板190では複数の導体端末線211,212の各々に対応して絶縁壁190aまたは190bを設けたが、図26に示す結線板110のように、絶縁壁190a,190bに代えて、外側円筒部110aおよび内側円筒部110bを絶縁板171の下面に設けても良い。このような構造とすることで、結線板110の形状を単純化することができる。
(第9の相間絶縁構造)
図27に示す第9の相間絶縁構造は、図16,17に示した第4の相間絶縁構造の変形例であって、コイルエンド220の冷却性能向上を図るために、冷却オイルを供給する構造を追加したものである。車両用回転電機の場合には大電流が流れるため、コイルエンド220における発熱が問題となる。そこで、第9の相間絶縁構造においては、絶縁部材140の内部空間に冷却オイルを循環させるためのオイル供給口140a、および冷却オイルを排出するためのオイル排出口140bを設けた。
図27において、上下方向が鉛直方向であり、コイルエンド220の上方に配置された冷却オイル供給管143から冷却オイル144が供給される。冷却オイル144は、絶縁部材140の頂部(図示上部)に形成されたオイル供給口140aから、絶縁部材140によって覆われたコイルエンド220の頂部に落下する。コイルエンド220に落下した冷却オイル144は、コイルエンド220を伝って破線144a,144bで示すように下方(流れの下流方向)に移動し、その間にコイルエンド220を冷却する。下方に移動しながら暖められた冷却オイル144は、最終的には絶縁部材140の底部(図示下部)に形成された排出口140bから排出される。排出された冷却オイル144は不図示の回収装置により回収され、再び冷却オイル供給管143を介して絶縁部材140の内部空間に供給される。
絶縁部材140はコイルエンド220の周囲を覆っているので、コイルエンド220に供給された冷却オイル144はコイルエンド220以外へ無駄に逃げることはなく、コイルエンド220の冷却に有効に利用される。そのため、冷却性能の向上が図られる。第9の相間絶縁構造においては、絶縁部材140は、相間絶縁の確保を図る機能とともに、コイルエンド220を冷却オイルで冷却する際の冷却性能の向上を図る機能も有している。なお、ここでは、絶縁部材140を例に説明したが、冷却オイルの供給口および排出口を設けてコイルエンド220に冷却オイル144を供給する構造は、コイルエンド220の全体を覆う構造の結線板110や絶縁部材130にも適用することが出来る。
図28は、図27に示す絶縁部材140の変形例である。図27に示す構造の場合、冷却オイル144は、コイルエンド220を伝って排出口140bに達するまでに十分に暖まってしまい、コイルエンド上側に比べてコイルエンド下側の冷却性能が低下する傾向となる。そこで、図28に示す変形例では、コイルエンド上側を冷却する冷却オイルの流れと、コイルエンド下側を冷却する冷却オイルの流れとを独立して形成するようにした。
図28において、(a)は絶縁部材140の側面図であり、(b)はG1−G1断面図、(c)はG2−G2断面図、(d)はG3−G3断面図である。なお、図28(b)、(c)では、絶縁部材140の右側半分のみを記載したが、絶縁部材140の構造は左右対称となっている。外側円筒部142には、上述した供給口140aおよび排出口140bに加えて、溝145,146、排出口145bおよび供給口146aが形成されている。また、図28(b)〜(d)に示すように、絶縁部材140のコイルエンド220が収められる空間には、コイルエンド220と絶縁部材140との隙間を埋める仕切り147が設けられている。絶縁部材140をコイルエンド220に装着すると、コイルエンド220と絶縁部材140との隙間は、仕切り147よりも上側(上流側)の部分と、仕切り147よりも下側(下流側)の部分とに分けられる。供給口146aは仕切り147よりも下流側に設けられている。
供給口140a,排出口145bおよび溝145はコイルエンド上側を冷却する冷却オイル用に設けられたものであり、溝146,供給口146aおよび排出口140bはコイルエンド下側を冷却する冷却オイル用に設けられたものである。
図29は冷却オイル144の流れを説明する図であり、図29(a)〜(c)はそれぞれ、図28(a)〜(c)に対応している。コイルエンド上側を冷却する冷却オイル144aを供給する冷却オイル供給管143aと、コイルエンド下側を冷却する冷却オイル144bを供給する冷却オイル供給管143bとが設けられている。図29(c)からも分かるように、独立した溝146を左右に一対形成しているので、冷却オイル供給管143bも一対設けられることになる。左右の溝146を頂部で連結するような構成であれば、一つの冷却オイル供給管143bで済ますことも可能である。
図29(b)に示すように、オイル供給管143aから供給された冷却オイル144aは、供給口140aから絶縁部材140の内部空間に流れ込む。冷却オイル144aは、コイルエンド220を伝って下方(流れの下流側)へと流れ、コイルエンド220により暖められながら仕切り147に達する。仕切り147に達した冷却オイル144aは、仕切り147によって下流への流れを阻止される。その結果、冷却オイル144aは排出口145bを通って溝145内に排出され、溝145の下方に流れ落ちて不図示の回収装置により回収される。なお、冷却オイル144aの一部はコイルエンド220の導線間の隙間を通って仕切り147の下側(下流側)の空間に達するが、その冷却オイル144aは絶縁部材140の底部に設けられた排出口140bから排出されることになる(図29(c)参照)。
一方、図29(c)に示すように、オイル供給管143bから供給された冷却オイル144bは、溝146を下方に流れて供給口146aに達する。溝146を流れる冷却オイル144bはコイルエンド220に接触していないので、ほとんど暖められることなく供給口146aに達し、供給口146aから仕切り147の下側(下流側)の空間に流れ込む。仕切り147の下側の空間に流れ込んだ冷却オイル144bは、コイルエンド220を伝って下方へと流れる間にコイルエンド220の下側部分を冷却することになる。コイルエンド220により暖められながら絶縁部材140の底部へと達した冷却オイル144bは、排出口140bから排出される。
このように、コイルエンド220の上側を流れ落ちた冷却オイル144aでコイルエンド下側を冷却する構造ではなく、コイルエンド下側に冷却オイル144bを直接供給するようにしたので、コイルエンド下側の冷却効率の向上を図ることができる。
(第10の相間絶縁構造)
図30,31は、第10の相間絶縁構造における絶縁部材700を示す図である。図30の(a)は絶縁部材700の平面図で、(b)は絶縁部材700の裏面側を示す図である。図31は図30(a)のH−H断面を示す図である。この絶縁部材700は、図24に示した絶縁部材190に冷却オイルによる冷却構造を追加したものであり、絶縁部材190と同一部分には同一符号を付した。
絶縁部材700では、リング状の絶縁板171の内周部及び外周部に、内側円筒部701および外側円筒部702が形成されている。外側円筒部702の頂部(図示上側)には冷却オイルを供給する供給口140aが形成され、底部(図示下側)には排出口140bが形成されている。図31に示すように、外側円筒部702の外径は固定子鉄心412の外径とほぼ等しく設定され、内側円筒部701の内径は固定子鉄心412の内径とほぼ等しいか、または、より大きく設定されている。
図32(a),(b)に示すように、絶縁部材700をコイルエンド220に装着し、端末接続部211aと接続部172a、および、端末接続部212aと接続部172bとを溶接等により接続する。この状態で絶縁部材700を使用しても良いが、さらに、図32(c)に示すように外側円筒部702と固定子鉄心412との継ぎ目にテープ800を貼り付けて密閉することで、冷却オイルの漏れが防止され、冷却性のさらなる向上を図ることが可能となる。
図27に示す絶縁部材140の場合と同様に、冷却オイルは供給口140aから供給され、コイルエンド220を伝って流れ落ちた冷却オイルは排出口140bから排出される。絶縁機能に関しては、図25に示す絶縁部材190の場合と同様に、絶縁板171,絶縁壁190aおよび190bによって、コイルエンド220および導体端末線211,212の間の相互の絶縁が確保される。
なお、上述した絶縁部材110,170,180,190および700では、貫通孔に導体端末線211,212の端末接続部211a,212aを挿入することで、端末接続部211a,212aの位置決めを行うようにしたが、必ずしも貫通孔でなくても良い。例えば、絶縁部材110の場合であれば、図33に示すように貫通孔171a,171bの代わりに溝173a,17bを絶縁板171に設けて、それらの溝173a,17bで端末接続部211a,212aの位置決めを行うようにしても良い。
また、絶縁部材における筒状の部分は円筒でなくても良く、例えば、コイルエンド220を収容する空間の断面形状が台形となるように、筒状部分を円錐面の一部を成す形状としても良い。
さらにまた、絶縁チューブ100に関しては外周側の導体端末線211に装着する場合を示したが、これは、外周側にはコアバックのスペースがあって絶縁チューブを装着する余裕があるが、内周側は絶縁チューブ100を装着する十分な余裕がないためである。内周側に十分な余裕がある場合には、導体端末線212に絶縁チューブ100を装着する構成も可能である。
なお、本実施の形態における回転電機では、図7に示すように導体端末線211,212は一方の側のコイルエンド220に引き出される構造となっているので、導体端末線211,212が引き出される側のコイルエンド220について説明したが、両方のコイルエンドに引き出されるような構成の場合には、上述した絶縁部材等を両方のコイルエンド220に装着すれば良い。また、導体端末線211,212が引き出されない側のコイルエンド220に関しても、第9の相間絶縁構造で示した絶縁部材140と同様の形状を有するキャップをコイルエンド220に被せることにより、冷却オイルによるコイルエンド220の冷却をより効果的に行うことが出来る。
上述した実施の形態における回転電機を以下のように変形することもできる。(1)以上説明した実施の形態では8極構成の誘導型回転電機を例に説明したが、永久磁石型回転機等の固定子巻線にも本発明を適用することができる。(2)発電機の固定子巻線にも本発明を適用することができる。(3)巻線に用いられる導体の形状は矩形断面形状に限らず、円形状の丸線を使用した場合にも適用することができる。(4)上述した実施の形態では、固定子巻線の巻線方式として分布巻きで重ね巻を行う方式を例に説明したが、接続すべき導体端末がコイルエンド220の内周側と外周側とに分かれているものであれば、例えば、波巻方式の巻線であっても、本発明を同様に適用することができる。
なお、上述した各実施形態はそれぞれ単独に、あるいは組み合わせて用いても良い。それぞれの実施形態での効果を単独あるいは相乗して奏することができるからである。また、本発明の特徴を損なわない限り、本発明は上記実施の形態に何ら限定されるものではない。