次に、本発明を実施するための形態を図面と共に説明する。
図1に、本発明のトナーの製造装置の一例を示す。トナーの製造装置100は、樹脂を含むトナー材料を有機溶媒に溶解又は分散させたトナー材料液Lを吐出する液滴吐出ユニット110と、液滴吐出ユニット110の下方に配置され、液滴吐出ユニット110から吐出された液滴L'を、乾燥気体Gを用いて乾燥して母体粒子Tを形成する乾燥塔120と、母体粒子Tを捕集する捕集部130と、捕集部130で捕集された母体粒子Tを貯留する貯留部140と、液滴吐出ユニット110にトナー材料液Lを供給する供給部150とを有する。なお、乾燥気体Gとは、大気圧下の露点温度が−10℃以下である気体を意味する。
図2に、液滴吐出ユニット110を示す。液滴吐出ユニット110は、トナー材料液Lを貯留する貯留部材111と、振動部材112を有する。なお、図2(a)及び(b)は、それぞれ概略断面図及び底面図である。
貯留部材111は、複数の吐出口Nが形成されている薄膜111a、貯留部材本体111b及びトナー材料液Lを貯留する貯留部111cを有する。
薄膜111aは、トナー材料液Lに含まれる有機溶媒に耐性を有する樹脂又はハンダを用いて、貯留部材本体111bと接合されている。
薄膜111aを構成する材料としては、弾性率が大きい材料であれば、特に限定されず、ニッケル、ニッケル合金、ステンレス鋼、ケイ素、酸化ケイ素等が挙げられるが、アスペクト比が大きい吐出口を精度よく形成できることから、ケイ素、酸化ケイ素が好ましい。
薄膜111aの製造方法としては、電鋳法、シリコンプロセス等が挙げられる。また、パンチを用いて、吐出口Nを形成することにより、薄膜111aを製造してもよい。
薄膜111aは、通常、厚さが5〜500μmであり、吐出口Nの開口径が5〜15μmである。厚さが5μm未満であると、薄膜111aの剛性が小さくなることがあり、500μmを超えると、トナー材料液Lを吐出することが困難になることがある。また、吐出口Nの開口径が1μm未満であると、吐出口Nが目詰まりしやすくなることがあり、40μmを超えると、粒度分布が狭い母体粒子Tを形成することが困難になることがある。なお、吐出口Nの開口径は、吐出口Nの形状が真円であれば、直径を意味し、楕円であれば、短径を意味する。
また、薄膜111aには、吐出口Nが2〜3000個形成されている。吐出口Nが2個未満であると、生産性が低下することがあり、3000個を超えると、粒度分布が狭い母体粒子を形成することが困難になることがある。
なお、貯留部材111には、支持部材(不図示)が設けられており、これにより、液滴吐出ユニット110が乾燥塔120の天面部に保持されている。このとき、液滴吐出ユニット110は、乾燥塔120の側面に保持されていてもよい。
振動部材112は、薄膜111aに平行な面を有する電歪振動子112a、電歪振動子112aで発生したたわみ振動の振幅を増幅するホーン112b、電歪振動子112aを挟持する電極112c及び112d、電極112c及び112dの間に交流電圧を印加する電源112eを有する。このとき、電極112c及び112dの間に交流電圧を印加すると、電歪振動子112aの薄膜111aに対して平行な面は、薄膜111aに対して垂直な方向に周期的にたわみ振動する。さらに、電歪振動子112aで発生したたわみ振動の振幅がホーン112bで増幅され、ホーン112bの薄膜111aに対して平行な面Pは、薄膜111aに対して垂直な方向に周期的にたわみ振動する。その結果、薄膜111aが周期的にたわみ振動し、複数の吐出口Nからトナー材料液Lが吐出される。
薄膜111aがたわみ振動する周波数は、通常、20kHz〜2MHzであり、50〜500kHzが好ましい。周波数が20kHz未満であると、吐出口Nが目詰まりしやすくなることがあり、2MHz以上であると、粒度分布が狭い母体粒子Tを形成することが困難になることがある。このとき、電歪振動子112aがたわみ振動する振動波形としては、特に限定されないが、正弦波形、矩形波形等が挙げられる。
電歪振動子112aとしては、特に限定されないが、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)等の圧電セラミックスが挙げられる。圧電セラミックスは、一般に、振動の変位が小さいため、積層体として用いられる。また、これら以外の電歪振動子112aとしては、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)等の圧電高分子、水晶、LiNbO3、LiTaO3、KNbO3等の圧電単結晶材料等が挙げられる。
また、電歪振動子112aとしては、圧電セラミックスが機械的に結合されており、高強度であることから、ボルト締めランジュバン型振動子が好ましい。これにより、高振幅で励振する時に破損を抑制することができる。
なお、電歪振動子112aの代わりに、磁歪振動子を用いて、電極112c及び112dの間に交流電流を印加してもよい。磁歪振動子としては、特に限定されないが、ニッケル、鉄、フェライト等の強磁性体が挙げられる。
ホーン112bは、電歪振動子112aで発生したたわみ振動の振幅を増幅することができるため、電歪振動子112aで発生するたわみ振動の振幅が小さくてもよく、機械的負荷が軽減するため、振動部材112を長寿命化することができる。このとき、ホーン112bの薄膜111aに対して平行な面Pが最大振動面となるように設計されている。
ホーン112bは、他の形状であってもよく、例えば、ステップ型(図3(a)参照)、エクスポネンシャル型(図3(b)参照)、コニカル型(図3(c)参照)等が挙げられる。
なお、電歪振動子112aで発生するたわみ振動の振幅が大きい場合は、ホーン112bを省略してもよい。
液滴吐出ユニット110は、図4に示すように、トナー材料液Lが吐出される方向と略同一の方向に乾燥気体G'を供給する流路113が形成されている。乾燥気体G'の速度V1は、自由落下速度よりも大きければよく、吐出口Nから吐出された液滴L'の初速度V0よりも大きくてもよいし、小さくてもよい。乾燥気体G'は、複数の吐出口Nから吐出された液滴L'の速度を調整するため、液滴L'の合一を抑制することができる。乾燥気体G'は、流路113の周方向に均一な層流を形成していることが好ましい。乾燥気体G'が乱流を形成していると、液滴L'が合一することがある。乾燥気体G'としては、特に限定されないが、空気、窒素等が挙げられる。
流路113には、複数の吐出口Nの近傍に、乾燥気体G'の流れを絞る絞り113aが設けられており、複数の吐出口Nに対向する開口部113bが形成されている。このとき、開口部113bの幅Dに対して、薄膜111aと絞り113aの間のクリアランスCが小さいため、クリアランスCが乾燥気体G'の速度を決定する主な要因となる。また、開口部113bは、上流側から下流側に向けて拡大するテーパー状であるため、液滴L'が絞り113aに付着することを抑制できる。
乾燥塔120内には、乾燥気体供給口121から乾燥気体Gが供給される。乾燥気体Gは、乾燥塔120の周方向に均一な層流を形成しており、開口部113bから放出された液滴L'を搬送すると共に、乾燥させる。これにより、開口部113bから放出された液滴L'の合一を抑制することができる。このとき、乾燥気体Gの速度V2は、乾燥気体G'の速度以上であることが好ましい。V2がV1未満であると、乱流を形成することがある。また、圧力計PG1における圧力P1は、圧力計PG2における圧力P2以下であることが好ましい。P1がP2以下を超えると、液滴L'に負圧が作用して逆流することがある。
このとき、乾燥気体供給口121から乾燥気体Gを供給する代わりに、乾燥塔120の下部から吸引してもよい。
なお、乾燥塔120には、図5に示すように、複数の液滴吐出ユニット110が乾燥塔120に保持されている。このとき、乾燥塔120に保持される液滴吐出ユニット110は、100〜1000個であることが好ましい。液滴吐出ユニット110が100個未満であると、トナーの生産性が低下することがあり、1000個を超えると、液滴吐出ユニット110を制御することが困難になることがある。
乾燥塔120では、トナー材料液Lを吐出する方向と略同一の方向に流れる乾燥気体Gを用いて、液滴吐出ユニット110から吐出された液滴L'を搬送することにより、液滴L'が乾燥し、母体粒子Tが形成される。
捕集部130は、母体粒子Tの搬送方向の下流側に、乾燥塔120に連続して設けられており、開口径が上流側から下流側に向けて縮小するテーパー面131を有する。さらに、吸引ポンプ(不図示)を用いて吸引することにより、捕集部130内に上流側から下流側に向かう渦流Sが発生する。これにより、母体粒子Tが捕集され、配管132を介して、貯留部140に移送されて貯留される。このとき、捕集部130から貯留部140に母体粒子Tを圧送してもよいし、貯留部140の側から母体粒子Tを吸引してもよい。
供給部150は、トナー材料液Lを貯留するタンク151と、トナー材料液Lを液滴吐出ユニット110に圧送供給するポンプ152と、トナー材料液Lを液滴吐出ユニット110に圧送供給する際に、トナー材料液Lが流れる配管153、主管路154及び枝管路155と、液滴吐出ユニット110からトナー材料液Lを排出する配管156とを備える。このとき、液滴吐出ユニット110からトナー材料液Lが吐出されると、タンク151から自給的にトナー材料液Lが液滴吐出ユニット110に供給されるが、トナーの製造装置100が稼働している場合は、補助的にポンプ152を用いて、液滴吐出ユニット110に供給される。また、配管156では、トナー材料液L中の気泡が排出される。
図6に、主管路154及び枝管路155を示す。主管路154は、内部のトナー材料液Lが流れる向きに垂直な断面が正方形であり、薄膜111aに対して、底面が平行になるように配置されている。枝管路155は、内部のトナー材料液Lが流れる向きに垂直な断面が円であり、主管路154の底面に等間隔で一直線上に接続されている。また、枝管路155の各々は、複数の液滴吐出ユニット110の各々の貯留部111cに接続されている。このとき、主管路154の内部のトナー材料液Lが流れる向きに垂直な断面の面積は、トナー材料液Lが流れる向きに対して、上流側よりも下流側の方が小さく、直線的に変化している。このため、複数の液滴吐出ユニット110の各々の貯留部111cの内圧を均等化することができる。その結果、トナー材料液Lが安定に吐出され、長時間に亘って、粒度分布が狭いトナーを安定に製造することができる。
主管路154の内部のトナー材料液Lが流れる向きに垂直な断面の面積は、液粘度と流量によって変わるが、通過させるトナー組成液の流れによって生じる圧力損失が10kPaを超えないように設定される。これを超えると、液の供給が十分になされないことがある。
また、主管路154の内部のトナー材料液Lが流れる向きに垂直な断面の面積の隣接する枝管路155の間における変化は、通常、途中に配置される枝管路に設けられた液吐出手段に総液される流量の割合で、先端に向かうにつれ減少される形態が望ましい。
一方、枝管路155の内部のトナー材料液Lが流れる向きに垂直な断面の面積も主幹路と同様に、圧力損失を発生させない程度であることが望ましい。
なお、主管路154の内部のトナー材料液Lが流れる向きに垂直な断面の面積は、直線的に変化しているが、特に限定されず、連続的に変化していればよい。また、主管路154のトナー材料液Lが流れる向きに垂直な断面の形状は、正方形であるが、特に限定されず、長方形状、円形状、楕円形状等が挙げられる。
一方、枝管路155は、主管路154に等間隔で一直線上に接続されているが、特に限定されず、等間隔で格子状に接続されていてもよい。また、枝管路155の内部のトナー材料液Lが流れる向きに垂直な断面の形状は、円形であるが、特に限定されず、長方形状、円形状、楕円形状等が挙げられる。
さらに、配管156を設けずに封止し、配管153からの距離が最大である枝管路155と貯留部111cを接続せずに、タンク151と接続されている配管と接続して、トナー材料液Lを循環させてもよい。このとき、配管153からの距離が最大である枝管路155とタンク151を接続する配管で、トナー材料液L中の気泡を排出させてもよい。
次に、トナーの製造装置100を用いて、トナーを製造する方法について説明する。まず、液滴吐出ユニット110の貯留部材111にトナー材料液Lを供給した状態で、振動部材112の電歪振動子112aに交流電圧を印加することにより、電歪振動子112aでたわみ振動が発生する。さらに、たわみ振動の振幅がホーン112bにより増幅され、ホーン112bの薄膜111aに対して平行な面Pは、薄膜111aに対して垂直な方向に周期的に振動する。即ち、振動部材112の薄膜111aに対して平行な面Pのたわみ振動が貯留部材111内のトナー材料液Lに伝播されて圧力が周期的に変化する。その結果、薄膜111aが周期的にたわみ振動して、乾燥塔120内にトナー材料液Lが吐出される。
そして、乾燥塔120内に吐出された液滴L'は、トナー材料液Lが吐出される方向と略同一の方向に流れる乾燥気体Gを用いて搬送されることにより、有機溶媒が除去され、母体粒子Tが形成される。さらに、母体粒子Tは、乾燥塔120の下流側の捕集部130で、渦流Sを用いて捕集され、貯留部140に移送されて貯留される。その結果、個数平均粒径に対する重量平均粒径の比が1.00〜1.15である母体粒子Tを製造することができる。また、重量平均粒径が3〜10μmである母体粒子Tを製造することができる。
なお、液滴吐出ユニット110で、トナー材料液Lを吐出した後、乾燥塔120で液滴L'を乾燥させて、母体粒子Tを形成しているが、硬化性樹脂を含むトナー材料を用いて、乾燥塔120で液滴Lを硬化させてもよい。また、トナー材料を溶融させたトナー材料溶融液を吐出する液滴吐出ユニットを用いてトナー材料溶融液を吐出した後、液滴を冷却させて母体粒子を形成してもよい。
図7に、液滴吐出ユニット110の変形例を示す。液滴吐出ユニット110'は、貯留部材111及びホーン112bの代わりに、トナー材料液を貯留する貯留部111c'を有するホーン112b'が設けられている以外は、液滴吐出ユニット110と同一の構成である。このとき、ホーン112b'は、トナー材料液Lに含まれる有機溶媒に耐性を有する樹脂又はハンダを用いて、薄膜111aと接合されており、貯留部材の一部を兼ねる。また、貯留部111c'は、枝管路155と接続されており、液滴吐出ユニット110'は、必要に応じて、弾性体を用いて、乾燥塔120に保持される。
図8に、液滴吐出ユニット110の変形例を示す。液滴吐出ユニット110''は、貯留部材111、電歪振動子112a及びホーン112bの代わりに、電歪振動子112aが2層積層されている積層体がホーン112b及びトナー材料液を貯留する貯留部111c'を有するホーン112b'に挟持されているボルト締めランジュバン型振動子を用いる以外は、液滴吐出ユニット110と同一の構成である。
図9に、トナーの製造装置100の変形例を示す。トナーの製造装置200は、液滴吐出ユニット110の代わりに、液滴吐出ユニット210が設けられている以外は、トナーの製造装置100と同一の構成である。
図10に、液滴吐出ユニット210を示す。液滴吐出ユニット210は、トナー材料液Lを貯留する貯留部材211と、振動部材212を有する。なお、図10(a)及び(b)は、それぞれ断面図及び底面図である。このとき、液滴吐出ユニット210にも、液滴吐出ユニット110と同様に、トナー材料液Lが吐出される方向と略同一の方向に乾燥気体を供給する流路113が形成されている。また、直線状の枝管路155が主管路154に接続されている。
貯留部材211は、貯留部材本体111b及び貯留部111cの代わりに、形状が異なる貯留部材本体211b及び貯留部211cが設けられている以外は、貯留部材111と同一の構成である。
薄膜111aは、トナー材料液Lに含まれる有機溶媒に耐性を有する樹脂又はハンダを用いて、貯留部材本体211bと接合されている。
なお、貯留部材211には、支持部材(不図示)が設けられており、これにより、液滴吐出ユニット210が乾燥塔120の天面部に保持されている。このとき、液滴吐出ユニット110は、乾燥塔120の側面に保持されていてもよい。
振動部材212は、ホーン112bを設けず、電歪振動子112aが電極112c及び112dで挟持されている積層体の代わりに、薄膜111aに平行な面を有する電歪振動子212aが電極212c及び212dで挟持されている積層体が薄膜111aの複数の吐出口Nの周囲に円環状に設けられている以外は、振動部材112と同一の構成である。このとき、電極212c及び212dの間に交流電圧を印加すると、電歪振動子212aの薄膜111aに対して平行な面は、薄膜111aに対して垂直な方向に周期的にたわみ振動する。その結果、薄膜111aが周期的にたわみ振動し、複数の吐出口Nからトナー材料液Lが吐出される。
薄膜111aがたわみ振動する周波数は、通常、20kHz〜2MHzであり、50〜500kHzが好ましい。周波数が20kHz未満であると、吐出口Nが目詰まりしやすくなることがあり、2MHz以上であると、粒度分布が狭い母体粒子Tを形成することが困難になることがある。このとき、電歪振動子212aがたわみ振動する振動波形としては、特に限定されないが、正弦波形、矩形波形等が挙げられる。
また、積層体は、薄膜111aの貯留部材本体211bと接合されていない領域に設けられているため、薄膜111aのたわみ振動の変位を大きくすることができる。
なお、図9では、複数の液滴吐出ユニット210が乾燥塔120に保持されている。このとき、乾燥塔120に保持される液滴吐出ユニット210は、100〜1000個であることが好ましい。液滴吐出ユニット210が100個未満であると、トナーの生産性が低下することがあり、1000個を超えると、液滴吐出ユニット210を制御することが困難になることがある。
次に、液滴吐出ユニット210を用いて液滴を吐出するメカニズムについて説明する。なお、ここでは、半径がr0である円形膜の周囲を固定した場合について説明する。なお、半径がr1である同心円内に複数の吐出口が形成されている。この場合、たわみ振動の基本振動は、図11に示すように、周囲(r=r0)が節になり、中心O(r=0)で振動の変位ΔLが最大(ΔLmax)となり、周期的にたわみ振動する。なお、図11(a)及び(b)は、それぞれ円形膜の半径方向の断面図及び円形膜の時間tにおける半径座標に対する振動の変位の関係を示す。
また、半径がr0である円形膜の周囲を固定した場合、たわみ振動に、図12に示すような、高次の振動モードが存在することが知られている。高次の振動モードは、同心円状の節を1個以上有する。さらに、図13に示すように、円形膜の中心部を凸形状とすることにより、液滴の吐出方向を制御すると共に、たわみ振動の振幅を調整することができる。
一方、円形膜がたわみ振動することにより、円形膜に設けられた吐出口の近傍にトナー材料液が存在すると、円形膜のたわみ振動の速度Vmに比例する音圧Pacが発生する。また、音圧Pacは、トナー材料液の放射インピーダンスZrの反作用として発生することが知られており、音圧Pacは、放射インピーダンスZrと円形膜のたわみ振動の速度Vmの積であり、式
Pac(r,t)=Zr・Vm(r,t)
で表される。このとき、円形膜のたわみ振動の速度Vmは、周期的に変化するため、円形膜のたわみ振動の速度Vmに比例する音圧Pacも周期的に変化する。これにより、吐出口の近傍のトナー材料液Lが気相に吐出される。吐出されたトナー材料液は、気相との表面張力の差により、球体になるため、周期的に液滴が生成する。
このとき、音圧Pacの変位量は、通常、10〜500kPaであり、10〜100kPaが好ましい。音圧Pacの変位量が10kPa未満であると、吐出口が目詰まりしやすくなることがある。
なお、液滴の直径は、吐出口の近傍におけるたわみ振動の変位が大きい程、大きくなる傾向にある。また、r=r1におけるたわみ振動の変位をΔLminとすると(図11、図12参照)、ΔLmax/ΔLminが2.0以下であると、母体粒子の粒度分布を狭くすることができる。
本発明において、液滴吐出ユニットは、液滴吐出ユニット110、110'、110''、210に限定されず、特開2008−65006号公報に開示されている構成であってもよい。
次に、トナー材料液Lについて説明する。トナー材料液Lは、樹脂を含み、必要に応じて、着色剤、離型剤、帯電制御剤、磁性体をさらに含むトナー材料を有機溶媒に溶解又は分散させることにより得られる。このとき、トナー材料は、3本ロールミル等の高せん断分散装置を用いて混合混練したものであってもよい。
有機溶媒としては、トナー材料を溶解又は分散させることが可能であれば、特に限定されないが、トルエン、キシレン、ベンゼン、四塩化炭素、塩化メチレン、1,2−ジクロロエタン、1,1,2−トリクロロエタン、トリクロロエチレン、クロロホルム、モノクロロベンゼン、ジクロロエチリデン、酢酸メチル、酢酸エチル、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等が挙げられ、二種以上併用してもよい。中でも、ポリエステルの溶解性に優れることから、有機溶媒のSP値は、8〜9.8cal1/2/cm3/2であることが好ましく、8.5〜9.5cal1/2/cm3/2がさらに好ましい。さらに、離型剤の結晶成長を効果的に抑制することができるため、エステル系溶媒及びケトン系溶媒が好ましく、除去が容易であることから、酢酸エチル、メチルエチルケトンが特に好ましい。
樹脂としては、特に限定されないが、スチレン系重合体、(メタ)アクリル系樹脂、スチレン−(メタ)アクリル系樹脂等のビニル系樹脂、ポリエステル、ポリオール樹脂、フェノール樹脂、シリコーン樹脂、ポリウレタン、ポリアミド、フラン樹脂、エポキシ樹脂、キシレン樹脂、テルペン樹脂、クマロンインデン樹脂、ポリカーボネート、石油系樹脂等が挙げられ、二種以上併用してもよい。
ビニル系樹脂を合成する際に用いられる単量体としては、特に限定されないが、スチレン、o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、p−フェニルスチレン、p−エチルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、p−n−アミルスチレン、p−tert−ブチルスチレン、p−n−へキシルスチレン、p−n−オクチルスチレン、p−n−ノニルスチレン、p−n−デシルスチレン、p−n−ドデシルスチレン、p−メトキシスチレン、p−クロロスチレン、3,4−ジクロロスチレン、m−ニトロスチレン、o−ニトロスチレン、p−ニトロスチレン等のスチレン系単量体;アクリル酸、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸n−オクチル、アクリル酸n−ドデシル、アクリル酸2−エチルへキシル、アクリル酸ステアリル、アクリル酸2−クロロエチル、アクリル酸フェニル等のアクリル系単量体;メタクリル酸、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸n−オクチル、メタクリル酸n−ドデシル、メタクリル酸2−エチルへキシル、メタクリル酸ステアリル、メタクリル酸フェニル、メタクリル酸ジメチルアミノエチル、メタクリル酸ジエチルアミノエチル等のメタクリル系単量体;エチレン、プロピレン、ブチレン、イソブチレン等のモノオレフィン類;ブタジエン、イソプレン等のポリエン類;塩化ビニル、塩化ビニリデン、臭化ビニル、フッ化ビニル等のハロゲン化ビニル類;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、安息香酸ビニル等のビニルエステル類;ビニルメチルエーテル、ビニルエチルエーテル、ビニルイソブチルエーテル等のビニルエーテル類;ビニルメチルケトン、ビニルヘキシルケトン、メチルイソプロペニルケトン等のビニルケトン類;N−ビニルピロール、N−ビニルカルバゾール、N−ビニルインドール、N−ビニルピロリドン等のN−ビニル化合物;ビニルナフタレン類;アクリロニトリル、メタクリロニトリル、アクリルアミド等の(メタ)アクリル酸誘導体;マレイン酸、シトラコン酸、イタコン酸、アルケニルコハク酸、フマル酸、メサコン酸等の不飽和二塩基酸又はその無水物;マレイン酸モノメチル、マレイン酸モノエチル、マレイン酸モノブチル、シトラコン酸モノメチル、シトラコン酸モノエチル、シトラコン酸モノブチル、イタコン酸モノメチル、アルケニルコハク酸モノメチル、フマル酸モノメチル、メサコン酸モノメチル等の不飽和二塩基酸のモノエステル;マレイン酸ジメチル、フマル酸ジメチル等の不飽和二塩基酸のジエステル;クロトン酸、ケイヒ酸等のα,β−不飽和酸、その無水物又は低級脂肪酸との無水物;アルケニルマロン酸、アルケニルグルタル酸、アルケニルアジピン酸、これらの無水物又はこれらのモノエステル;アクリル酸2−ヒドロキシエチル、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル、メタクリル酸2−ヒドロキシプロピル等の(メタ)アクリル酸のヒドロキシアルキルエステル類;4−(1−ヒドロキシ−1−メチルブチル)スチレン、4−(1−ヒドロキシ−1−メチルへキシル)スチレン等のヒドロキシ基を有する単量体等が挙げられ、二種以上併用してもよい。
なお、スチレン系共重合体、スチレン−(メタ)アクリル系共重合体等のビニル系樹脂を合成する際に、ビニル基を2個以上有する架橋剤を用いると、ビニル系樹脂を架橋することができる。
2官能の架橋剤としては、特に限定されないが、ジビニルベンゼン、ジビニルナフタレン等の芳香族ジビニル化合物;エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,3−ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,5−ペンタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−へキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート等のアルキレン基で結合されたジ(メタ)アクリレート化合物;ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール(#400)ジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール(#600)ジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート等のエーテル結合を含むアルキレン基で結合されたジ(メタ)アクリレート化合物等が挙げられ、二種以上併用してもよい。これら以外の2官能の架橋剤としては、アリーレン基又はエーテル結合を含むアリーレン基で結合されたジ(メタ)アクリレート化合物、ポリエステル型ジアクリレート化合物が挙げられる。ポリエステル型ジアクリレート化合物の市販品としては、MANDA(日本化薬社製)が挙げられる。
多官能の架橋剤としては、特に限定されないが、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタンテトラ(メタ)アクリレート、オリゴエステル(メタ)アクリレート、トリアリルシアヌレート、トリアリルトリメリテート等が挙げられ、二種以上併用してもよい。
架橋剤は、トナーの定着性、耐オフセット性の点から、芳香族ジビニル化合物(特にジビニルベンゼン)、アリーレン基又はエーテル結合を1つ含むアリーレン基で結合されたジ(メタ)アクリレート化合物が好ましい。
これらの架橋剤は、単量体に対して、0.01〜10質量%用いることが好ましく、0.03〜5質量%がさらに好ましい。
ビニル系樹脂を合成する際に用いられる重合開始剤としては、特に限定されないが、2,2'−アゾビスイソブチロニトリル、2,2'−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2'−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2'−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、ジメチル−2,2'−アゾビスイソブチレート、1,1'−アゾビス(1−シクロへキサンカルボニトリル)、2−(カルバモイルアゾ)イソブチロニトリル、2,2'−アゾビス(2,4,4−トリメチルペンタン)、2−フェニルアゾ−2',4'−ジメチル−4'−メトキシバレロニトリル、2,2'−アゾビス(2−メチルプロパン)、メチルエチルケトンパ−オキサイド、アセチルアセトンパーオキサイド、シクロへキサノンパーオキサイド等のケトンパーオキサイド類;2,2−ビス(tert−ブチルパーオキシ)ブタン、tert−ブチルハイドロパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、1,1,3,3−テトラメチルブチルハイドロパーオキサイド、ジ−tert−ブチルパーオキサイド、tert−ブチルクミルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、α−(tert−ブチルパーオキシ)イソプロピルベンゼン、イソブチルパーオキサイド、オクタノイルパーオキサイド、デカノイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、3,5,5−トリメチルヘキサノイルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、m−トリルパーオキサイド、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、ビス(2−エチルへキシル)パーオキシジカーボネート、ジ−n−プロピルパーオキシジカーボネート、ビス(2−エトキシエチル)パーオキシカーボネート、ビス(エトキシイソプロピル)パーオキシジカーボネート、ビス(3−メチル−3−メトキシブチル)パーオキシカーボネート、アセチルシクロへキシルスルホニルパーオキサイド、tert−ブチルパーオキシアセテート、tert−ブチルパーオキシイソブチレート、tert−ブチルパーオキシ−2−エチルへキサレート、tert−ブチルパーオキシラウレート、tert−ブチルオキシベンゾエ−ト、tert−ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、ジ−tert−ブチルパーオキシイソフタレート、tert−ブチルパーオキアリルカーボネート、イソアミルパーオキシ−2−エチルへキサノエート、ジ−tert−ブチルパーオキシへキサハイドロテレフタレート、tert−ブチルパーオキシアゼレート等が挙げられ、二種以上併用してもよい。
スチレン−(メタ)アクリル系樹脂は、トナーの定着性、オフセット性、保存性の点から、テトラヒドロフラン(THF)に可溶な成分のGPCチャートにおいて、分子量が3×103〜5×104である領域に少なくとも1つのピークが存在し、分子量が1×105以上である領域に少なくとも1つのピークが存在することが好ましい。また、テトラヒドロフラン(THF)に可溶な成分のゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)チャートにおいて、分子量が1×105以下である成分の含有量が50〜90%であることが好ましく、メインピークの分子量が5×103〜3×104であることがさらに好ましく、メインピークの分子量が5×103〜2×104であることが特に好ましい。
本発明において、GPCチャートにおける分子量は、ポリスチレン換算の分子量であり、GPCの展開溶媒としては、THFが用いられている。
ビニル系樹脂は、酸価が0.1〜100mgKOH/gであることが好ましく、0.1〜70mgKOH/gがさらに好ましく、0.1〜50mgKOH/gが特に好ましい。
ポリエステルは、2価以上のアルコールと、2価以上のカルボン酸を縮合することにより合成することができる。なお、ポリエステルを合成する際に、3価以上のアルコール及び/又は3価以上のカルボン酸を用いると、ポリエステルを架橋することができる。
2価のアルコールとしては、特に限定されないが、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、2,3−ブタンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,5−ペンタンジオール、1,6−へキサンジオール、ネオペンチルグリコール、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、水素化ビスフェノールA又はビスフェノールAに、エチレンオキシド、プロピレンオキシド等の環状エーテルを開環付加することにより得られるジオール等が挙げられ、二種以上併用してもよい。
3価以上のアルコールとしては、特に限定されないが、ソルビトール、1,2,3,6−ヘキサンテトロール、1,4−ソルビタン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、トリペンタエリスリトール、1,2,4−ブタントリオール、1,2,5−ペンタトリオール、グリセロール、2−メチルプロパントリオール、2−メチル−1,2,4−ブタントリオール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、1,3,5−トリヒドロキシベンゼン等が挙げられ、二種以上併用してもよい。
2価のカルボン酸としては、特に限定されないが、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸等のべンゼンジカルボン酸又はその無水物;コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸等のアルキルジカルボン酸又はその無水物;マレイン酸、シトラコン酸、イタコン酸、アルケニルコハク酸、フマル酸、メサコン酸等の不飽和二塩基酸又はその無水物等が挙げられ、二種以上併用してもよい。
3価以上のカルボン酸としては、特に限定されないが、トリメット酸、ピロメット酸、1,2,4−ベンゼントリカルボン酸、1,2,5−ベンゼントリカルボン酸、2,5,7−ナフタレントリカルボン酸、1,2,4−ナフタレントリカルボン酸、1,2,4−ブタントリカルボン酸、1,2,5−ヘキサントリカルボン酸、1,3−ジカルボキシ−2−メチル−2−メチレンカルボキシプロパン、テトラ(メチレンカルボキシ)メタン、1,2,7,8−オクタンテトラカルボン酸、エンポール三量体酸、又はこれらの無水物、部分低級アルキルエステル等が挙げられ、二種以上併用してもよい。
ポリエステルは、トナーの定着性、耐オフセット性の点から、THFに可溶な成分のGPCチャートにおいて、分子量が3×103〜5×104である領域に少なくとも1つのピークが存在することが好ましい。また、THFに可溶な成分のGPCチャートにおいて、分子量が1×105以下である成分の含有量が60〜100%であることが好ましく、分子量が5×103〜2×104である領域に少なくとも1つのピークが存在することがさらに好ましい。
ポリエステルは、酸価が0.1〜100mgKOH/gであることが好ましく、0.1〜70mgKOH/gがさらに好ましく、0.1〜50mgKOH/gが特に好ましい。
なお、ビニル系樹脂及び/又はポリエステルと、他の樹脂を併用する場合、全樹脂中の酸価が0.1〜50mgKOH/gである樹脂の含有量が60〜100質量%であることが好ましい。
本発明において、酸価は、JIS K0070に記載された方法を用いて測定することができる。
着色剤としては、特に限定されないが、カーボンブラック、ニグロシン染料、鉄黒、ナフトールイエローS、ハンザイエロー(10G、5G、G)、カドミウムイエロー、黄色酸化鉄、黄土、黄鉛、チタン黄、ポリアゾイエロー、オイルイエロー、ハンザイエロー(GR、A、RN、R)、ピグメントイエローL、ベンジジンイエロー(G、GR)、パーマネントイエロー(NCG)、バルカンファストイエロー(5G、R)、タートラジンレーキ、キノリンイエローレーキ、アンスラザンイエローBGL、イソインドリノンイエロー、ベンガラ、鉛丹、鉛朱、カドミウムレッド、カドミウムマーキュリレッド、アンチモン朱、パーマネントレッド4R、パラレッド、ファイセーレッド、パラクロロオルトニトロアニリンレッド、リソールファストスカーレットG、ブリリアントファストスカーレット、ブリリアントカーンミンBS、パーマネントレッド(F2R、F4R、FRL、FRLL、F4RH)、ファストスカーレットVD、ベルカンファストルビンB、ブリリアントスカーレットG、リソールルビンGX、パーマネントレッドF5R、ブリリアントカーミン6B、ポグメントスカーレット3B、ボルドー5B、トルイジンマルーン、パーマネントボルドーF2K、ヘリオボルドーBL、ボルドー10B、ボンマルーンライト、ボンマルーンメジアム、エオシンレーキ、ローダミンレーキB、ローダミンレーキY、アリザリンレーキ、チオインジゴレッドB、チオインジゴマルーン、オイルレッド、キナクリドンレッド、ピラゾロンレッド、ポリアゾレッド、クロムバーミリオン、ベンジジンオレンジ、ペリノンオレンジ、オイルオレンジ、コバルトブルー、セルリアンブルー、アルカリブルーレーキ、ピーコックブルーレーキ、ビクトリアブルーレーキ、無金属フタロシアニンブルー、フタロシアニンブルー、ファストスカイブルー、インダンスレンブルー(RS、BC)、インジゴ、群青、紺青、アントラキノンブルー、ファストバイオレットB、メチルバイオレットレーキ、コバルト紫、マンガン紫、ジオキサンバイオレット、アントラキノンバイオレット、クロムグリーン、ジンクグリーン、酸化クロム、ピリジアン、エメラルドグリーン、ピグメントグリーンB、ナフトールグリーンB、グリーンゴールド、アシッドグリーンレーキ、マラカイトグリーンレーキ、フタロシアニングリーン、アントラキノングリーン、酸化チタン、亜鉛華、リトボン等が挙げられ、二種以上併用してもよい。
着色剤の含有量は、トナー材料に対して、1〜15質量%であることが好ましく、3〜10質量%がさらに好ましい。
また、着色剤として、顔料を用いる場合は、トナー材料は、樹脂との相溶性が大きい顔料分散剤を含むことが好ましい。顔料分散剤の市販品としては、アジスパーPB821、アジスパーPB822(以上、味の素ファインテクノ社製)、Disperbyk−2001(ビックケミー社製)、EFKA−4010(EFKA社製)等が挙げられる。
トナー材料中の顔料分散剤の含有量は、顔料に対して、0.1〜10質量%であることが好ましい。この含有量が0.1質量%未満であると、顔料の分散性が不十分となることがあり、10質量%を超えると、トナーの高湿下における帯電性が低下することがある。
顔料分散剤は、GPCチャートにおいて、メインピークの極大値の分子量が500〜1×105であることが好ましく、3×103〜1×105がさらに好ましく、5×103〜5×104が特に好ましく、5×103〜3×104が最も好ましい。分子量が500未満であると、極性が大きくなって、顔料の分散性が低下することがあり、1×105を超えると、溶媒との親和性が大きくなって、顔料の分散性が低下することがある。
なお、着色剤としては、顔料と樹脂が複合化されたマスターバッチを用いることもできる。マスターバッチ用の樹脂としては、特に限定されないが、ポリスチレン、ポリp−クロロスチレン、ポリビニルトルエン等のスチレン系単独重合体;スチレン−p−クロロスチレン共重合体、スチレン−プロピレン共重合体、スチレン−ビニルトルエン共重合体、スチレン−ビニルナフタレン共重合体、スチレン−アクリル酸メチル共重合体、スチレン−アクリル酸エチル共重合体、スチレン−アクリル酸ブチル共重合体、スチレン−アクリル酸オクチル共重合体、スチレン−メタクリル酸メチル共重合体、スチレン−メタクリル酸エチル共重合体、スチレン−メタクリル酸ブチル共重合体、スチレン−α−クロロメタクリル酸メチル共重合体、スチレン−アクリロニトリル共重合体、スチレン−ビニルメチルケトン共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−イソプレン共重合体、スチレン−アクリロニトリル−インデン共重合体、スチレン−マレイン酸共重合体、スチレン−マレイン酸エステル共重合体等のスチレン系共重合体;ポリメタクリル酸メチル、ポリメタクリル酸ブチル、ポリ塩化ビニル、ポリ酢酸ビニル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル、エポキシ樹脂、エポキシポリオール樹脂、ポリウレタン、ポリアミド、ポリビニルブチラール、ポリアクリル酸、ロジン、変性ロジン、テルペン樹脂、脂肪族又は脂環族炭化水素樹脂、芳香族系石油樹脂、塩素化パラフィン、パラフィンワックス等が挙げられ、二種以上併用してもよい。
マスターバッチ用の樹脂は、酸価が30mgKOH/g以下、アミン価が1〜100mgKOH/gであることが好ましく、酸価が20mgKOH/g以下、アミン価が10〜50mgKOH/gであることがさらに好ましい。酸価が30mgKOH/gを超えると、トナーの高湿下における帯電性が低下し、顔料の分散性も不十分となることがある。また、アミン価が1mgKOH/g未満である場合及び100mgKOH/gを超える場合は、顔料の分散性が不十分となることがある。
本発明において、アミン価は、JIS K7237に記載された方法を用いて測定することができる。
マスターバッチは、樹脂と着色剤に高せん断力を印加して、混合混練することにより得られる。このとき、着色剤と樹脂の相互作用を高めるために、有機溶媒を用いることができる。
また、マスターバッチは、フラッシング法を用いて製造してもよい。具体的には、着色剤の水性ペーストを、樹脂及び有機溶媒と混合混練することにより、着色剤を樹脂側に移行させた後、水と有機溶媒を除去する。この場合、着色剤のウエットケーキをそのまま用いることができるため、乾燥する必要がない。
なお、混合混練する際には、3本ロールミル等の高せん断分散装置を用いることができる。
トナー材料中のマスターバッチの含有量は、樹脂に対して、0.1〜20質量%であることが好ましい。
離型剤としては、特に限定されないが、低分子量ポリエチレン、低分子量ポリプロピレン、ポリオレフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、パラフィンワックス、サゾールワックス等の脂肪族炭化水素系ワックス、酸化ポリエチレンワックス等の脂肪族炭化水素系ワックスの酸化物又はそれらのブロック共重合体;キャンデリラワックス、カルナバワックス、木ろう、ホホバろう等の植物系ワックス;みつろう、ラノリン、鯨ろう等の動物系ワックス;オゾケライト、セレシン、ペテロラタム等の鉱物系ワックス;モンタン酸エステルワックス、カスターワックスの等の脂肪酸エステルを主成分とするワックス類;脱酸カルナバワックスの等の脂肪酸エステルを一部又は全部を脱酸化したもの;パルミチン酸、ステアリン酸、モンタン酸等の飽和直鎖脂肪酸;プランジン酸、エレオステアリン酸、バリナリン酸等の不飽和脂肪酸;ステアリルアルコール、エイコシルアルコール、ベヘニルアルコール、カルナウピルアルコール、セリルアルコール、メシリルアルコール等の飽和アルコール;ソルビトール等の多価アルコール;リノール酸アミド、オレフィン酸アミド、ラウリン酸アミド等の脂肪酸アミド;メチレンビスカプリン酸アミド、エチレンビスラウリン酸アミド、ヘキサメチレンビスステアリン酸アミド等の飽和脂肪酸ビスアミド;エチレンビスオレイン酸アミド、ヘキサメチレンビスオレイン酸アミド、N,N'−ジオレイルアジピン酸アミド、N,N'−ジオレイルセパシン酸アミド等の不飽和脂肪酸アミド;m−キシレンビスステアリン酸アミド、N,N−ジステアリルイソフタル酸アミド等の芳香族系ビスアミド;ステアリン酸カルシウム、ラウリン酸カルシウム、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸マグネシウム等の脂肪酸金属塩;脂肪族炭化水素系ワックスをスチレン、アクリル酸等のビニル系単量体でグラフトしたワックス;ベヘニン酸モノグリセリド等の脂肪酸と多価アルコールの部分エステル化物;植物性油脂を水素添加することによって得られるヒドロキシル基を有するメチルエステル化物等が挙げられ、二種以上併用してもよい。中でも、オレフィンを高圧下でラジカル重合したポリオレフィン、高分子量ポリオレフィン重合時に得られる低分子量副生成物を精製したポリオレフィン、低圧下でチーグラー触媒、メタロセン触媒等の触媒を用いて重合したポリオレフィン、放射線、電磁波又は光を利用して重合したポリオレフィン、高分子量ポリオレフィンを熱分解して得られる低分子量ポリオレフィン、パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、フィッシャートロプシュワックス、ジントール法、ヒドロコール法、アーゲ法等により合成される合成炭化水素ワックス、炭素数が1である化合物を単量体とする合成ワックス、水酸基、カルボキシル基等の官能基を有する炭化水素系ワックス、炭化水素系ワックスと官能基を有する炭化水素系ワックスとの混合物、これらのワックスをスチレン、マレイン酸エステル、アクリル酸、メタクリル酸、無水マレイン酸等のビニル系単量体でグラフトしたものが好ましい。
また、離型剤は、プレス発汗法、溶剤法、再結晶法、真空蒸留法、超臨界ガス抽出法又は溶液晶析法を用いて、分子量分布を狭くしたり、低分子量固形脂肪酸、低分子量固形アルコール、低分子量固形化合物等の不純物を除去したりすることが好ましい。
離型剤は、融点が60〜140℃であることが好ましく、60〜120℃がさらに好ましい。融点が60℃未満であると、耐ブロッキング性が低下することがあり、140℃を超えると、耐オフセット性が不十分となることがある。
本発明において、融点は、高精度の内熱式入力補償型の示差走査熱量計を用いて測定することができ、DSC曲線の最大の吸熱ピークのピークトップの温度である。なお、融点は、ASTM D3418−82に準じて、測定することができ、1回昇温及び降温させて前履歴を取った後、昇温速度10℃/分で昇温させることによりDSC曲線が得られる。
また、融点の差が10〜100℃である離型剤を併用することにより、離型剤が有する可塑化作用と離型作用を同時に発現させることができる。可塑化作用を発現する相対的に融点が低い離型剤としては、分岐構造を有するもの、極性基を有するもの等が挙げられ、離型作用を発現する相対的に融点が高い離型剤としては、直鎖構造のもの、極性基を有さない無極性のもの等が挙げられる。このとき、少なくとも一方のワックスの融点が60〜120℃であることが好ましく、60〜100℃がさらに好ましい。
このような離型剤の組み合わせとしては、エチレンを主成分とするポリエチレンホモポリマー又はコポリマーとエチレン以外のオレフィンを主成分とするポリオレフィンホモポリマー又はコポリマーの組み合わせ、ポリオレフィンとグラフト変成ポリオレフィンの組み合わせ、アルコールワックス、脂肪酸ワックス又はエステルワックスと炭化水素系ワックスの組み合わせ、フィッシャートロプシュワックス又はポリオレフィンワックスとパラフィンワックス又はマイクロクリスタルワックスの組み合わせ、フィッシャートロプシュワックスとポリオレフィンワックスの組み合わせ、パラフィンワックスとマイクロクリスタルワックスの組み合わせ、カルナバワックス、キャンデリラワックス、ライスワックス又はモンタンワックスと炭化水素系ワックスの組み合わせ等が挙げられる。
トナー材料中の離型剤の含有量は、樹脂に対して、0.2〜20質量%であることが好ましく、0.5〜10質量%がさらに好ましい。
帯電制御剤としては、特に限定されないが、ニグロシン系染料、トリフェニルメタン系染料、クロム含有金属錯体染料、モリブデン酸キレート顔料、ローダミン系染料、アルコキシ系アミン、4級アンモニウム塩(フッ素変性4級アンモニウム塩を含む)、アルキルアミド、リンの単体又は化合物、タングステンの単体又は化合物、フッ素系界面活性剤、サリチル酸金属塩、サリチル酸誘導体の金属塩、銅フタロシアニン、ペリレン、キナクリドン、アゾ系顔料等が挙げられる。これら以外の帯電制御剤としては、スルホン酸基、カルボキシル基、四級アンモニウム塩基等の官能基を有する高分子化合物が挙げられる。
帯電制御剤の市販品としては、ニグロシン系染料のボントロン03、4級アンモニウム塩のボントロンP−51、含金属アゾ染料のボントロンS−34、オキシナフトエ酸系金属錯体のE−82、サリチル酸系金属錯体のE−84、フェノール系縮合物のE−89(以上、オリエント化学工業社製)、4級アンモニウム塩モリブデン錯体のTP−302、TP−415(以上、保土谷化学工業社製)、4級アンモニウム塩のコピーチャージPSY VP2038、トリフェニルメタン誘導体のコピーブルーPR、4級アンモニウム塩のコピーチャージ NEG VP2036、コピーチャージ NX VP434(以上、ヘキスト社製)、LRA−901、ホウ素錯体であるLR−147(日本カーリット社製)等が挙げられる。
帯電制御剤の使用量は、通常、樹脂に対して、0.1〜10質量%であり、0.2〜5質量%が好ましい。
また、磁性体としては、特に限定されないが、マグネタイト、マグヘマイト、フェライト等の磁性酸化鉄又は他の金属酸化物を含む酸化鉄;鉄、コバルト、ニッケル等の金属又はこれらの金属とアルミニウム、コバルト、銅、鉛、マグネシウム、スズ、亜鉛、アンチモン、ベリリウム、ビスマス、カドミウム、カルシウム、マンガン、セレン、チタン、タングステン、バナジウム等の金属との合金等が挙げられ、二種以上併用してもよい。
磁性体の具体例としては、Fe3O4、γ−Fe2O3、ZnFe2O4、Y3Fe5O12、CdFe2O4、Gd3Fe5O12、CuFe2O4、PbFe12O、NiFe2O4、NdFe2O、BaFe12O19、MgFe2O4、MnFe2O4、LaFeO3、鉄粉、コバルト粉、ニッケル粉等が挙げられるが、中でも、Fe3O4、γ−Fe2O3が好ましい。
また、磁性体としては、異種元素を含むマグネタイト、マグヘマイト、フェライト等の磁性酸化鉄も用いることができる。異種元素としては、特に限定されないが、リチウム、ベリリウム、ホウ素、マグネシウム、アルミニウム、ケイ素、リン、ゲルマニウム、ジルコニウム、スズ、硫黄、カルシウム、スカンジウム、チタン、バナジウム、クロム、マンガン、コバルト、ニッケル、銅、亜鉛、ガリウム等が挙げられ、中でも、マグネシウム、アルミニウム、ケイ素、リン、ジルコニウムが好ましい。異種元素は、酸化鉄の結晶格子の中に取り込まれていてもよいし、酸化鉄の表面に酸化物あるいは水酸化物として存在していてもよいが、酸化物として酸化鉄中に取り込まれていることが好ましい。
異種元素は、磁性体の生成時に、異種元素の塩を混在させ、pHを調整することにより、磁性体の中に取り込むことができる。また、磁性体の生成後に、pHを調整する、あるいは、異種元素の塩を添加してpHを調整することにより、磁性体の表面に存在させることができる。
磁性体は、個数平均粒径が0.1〜2μmであることが好ましく、0.1〜0.5μmがさらに好ましい。なお、個数平均粒径は、透過電子顕微鏡を用いて拡大撮影した写真をデジタイザーで測定することにより測定することができる。
また、磁性体は、10kOeの磁場を印加した時に、抗磁力が20〜150Oe、飽和磁化が50〜200emu/g、残留磁化が2〜20emu/gであることが好ましい。
トナー材料中の磁性体の含有量は、樹脂100質量部に対して、10〜200質量部であることが好ましく、20〜150質量部がさらに好ましい。
なお、磁性体は、着色剤としても用いることができる。
本発明においては、トナーとして、母体粒子Tを用いてもよいし、母体粒子Tに流動性向上剤、クリーニング性向上剤等の外添剤を添加したものを用いてもよい。
流動性向上剤としては、特に限定されないが、フッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン等のフッ素系樹脂粒子;湿式製法シリカ、乾式製法シリカ等のシリカ粒子、酸化チタン粒子、アルミナ粒子又はこれらの粒子がシラン化合物等で疎水化処理されているもの等が挙げられ、二種以上併用してもよい。中でも、シリカ粒子、酸化チタン粒子、アルミナ粒子が好ましく、シラン化合物で疎水化処理されているシリカ粒子がさらに好ましい。
乾式製法シリカは、ハロゲン化ケイ素を気相酸化することにより生成される。乾式製法シリカの市販品としては、AEROSIL−130、300、380、TT600、MOX170、MOX80、COK84(以上、日本アエロジル社製)、Ca−O−SiL−M−5、MS−7、MS−75、HS−5、EH−5(以上、CABOT社製)、Wacker HDK−N20 V15、N20E、T30、T40(以上、WACKER−CHEMIE社製)、D−CFineSilica(ダウコーニング社製)、Fransol(Fransil社製)等が挙げられる。
流動性向上剤の個数平均粒径は、通常、5〜100nmであり、5〜50nmが好ましい。
流動性向上剤は、BET法を用いて測定される比表面積が30m2/g以上であることが好ましく、60〜400m2/gがさらに好ましい。また、疎水化処理されている流動性向上剤は、BET法を用いて測定される比表面積が20m2/g以上であることが好ましく、40〜300m2/gがさらに好ましい。
シラン化合物で疎水化処理されているシリカは、シラン化合物がシリカに化学吸着又は物理吸着しているが、メタノール滴定試験によって測定される疎水化度が30〜80%であることが好ましい。
シラン化合物としては、ヒドロキシプロピルトリメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、n−ヘキサデシルトリメトキシシラン、n−オクタデシルトリメトキシシラン、ビニルメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、ジメチルビニルクロロシラン、ジビニルクロロシラン、γ−メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、へキサメチルジシラン、トリメチルシラン、トリメチルクロロシラン、ジメチルジクロロシラン、メチルトリクロロシラン、アリルジメチルクロロシラン、アリルフェニルジクロロシラン、ベンジルジメチルクロロシラン、ブロモメチルジメチルクロロシラン、α−クロロエチルトリクロロシラン、β−クロロエチルトリクロロシラン、クロロメチルジメチルクロロシラン、トリオルガノシリルメルカプタン、トリメチルシリルメルカプタン、トリオルガノシリルアクリレート、ビニルジメチルアセトキシシラン、ジメチルエトキシシラン、トリメチルエトキシシラン、トリメチルメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、イソブチルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン、へキサメチルジシロキサン、1,3−ジビニルテトラメチルジシロキサン、1,3−ジフェニルテトラメチルジシロキサン等が挙げられ、二種以上併用してもよい。中でも、2〜12個のシロキサン単位を有し、末端にそれぞれシラノール基を0〜1個有するジメチルポリシロキサンが好ましい。これら以外のシラン化合物としては、ジメチルシリコーンオイル等のシリコーンオイルが挙げられる。
流動性向上剤の添加量は、母体粒子Tに対して、0.03〜8質量%であることが好ましい。
クリーニング性向上剤としては、特に限定されないが、ステアリン酸亜鉛粒子、ステアリン酸カルシウム粒子、ステアリン酸粒子等の脂肪酸又はその金属塩の粒子;ポリメタクリル酸メチル粒子、ポリスチレン粒子等のソープフリー乳化重合により製造された樹脂粒子等が挙げられる。
樹脂粒子は、体積平均粒径が0.01〜1μmであることが好ましい。
外添剤を添加する際には、V型混合機、ロッキングミキサー、レーディゲミキサー、ナウターミキサー、ヘンシェルミキサー、ハイブリタイザー、メカノフュージョン、Qミキサー等の混合機を用いることができる。
本発明において、トナーは、一成分現像剤として用いてもよいし、キャリアと混合して二成分現像剤として用いてもよい。このとき、二成分系現像剤は、キャリア100質量部に対して、トナー1〜200質量部を混合することが好ましく、2〜50質量部がさらに好ましい。
なお、一成分現像剤又は二成分現像剤は、電子写真、静電記録、静電印刷等において、静電潜像を現像する際に用いることができる。
以下、実施例により本発明について詳細に説明するが、本発明は、実施例に何ら限定されない。なお、部は、質量部を意味する。
[トナー材料液Lの調製]
カーボンブラックのRegal400(Cabot社製)17部、分散剤のアジスパーPB821(味の素ファインテクノ社製)3部及び酢酸エチル80部を、攪拌羽根を有するミキサーを用いて、一次分散させた後、ダイノーミルを用いて、二次分散させ、顔料分散液を得た。
カルナバワックス18部、分散剤2部を及び酢酸エチル80部を、攪拌羽根を有するミキサーを用いて、一次分散させた。次に、攪拌しながら80℃まで昇温し、カルナバワックスを溶解させた後、室温まで冷却し、カルナバワックスを析出させた。さらに、ダイノーミルを用いて、二次分散させ、ワックス分散液を得た。なお、分散剤としては、ポリエチレンワックスにスチレン−アクリル酸ブチル共重合体をグラフトしたものを用いた。
ポリエステル100部、顔料分散液30部、ワックス分散液30部及び酢酸エチル840部を、攪拌羽根を有するミキサーを用いて、10分間攪拌して、比重が1.1888g/cm3であるトナー材料液Lを得た。
[実施例1]
500mlのトナー材料液Lを、トナーの製造装置200(図9参照)のタンク151からポンプ152を用いて、液滴吐出ユニット210に供給し、トナー材料液Lを吐出した。このとき、貯留部材211の薄膜111aは、電鋳法を用いて作製されており、外径が15mm、厚さが200μmであるニオブ酸リチウムの単結晶からなる板に、開口径が8μmである真円形状の吐出口Nが形成されている(図10参照)。このとき、吐出口Nは、薄膜111aの中心から直径5mmの領域に、100μmピッチで千鳥格子状に形成されている。電歪振動子212aは、外径が15mm、幅が5.5mm、厚さが1.2mmのチタン酸ジルコン酸鉛(PZT)からなる。このとき、電歪振動子212aにピーク電圧が8Vであり、周波数が98kHzである正弦波を印加して、薄膜111aをたわみ振動させた。流路113に5.2L/分の窒素ガスを流し、乾燥塔120に30L/分の窒素ガスを流した。このとき、窒素ガスの露点温度は−20℃であり、乾燥塔120の温度を27〜28℃とした。
一方、主管路154は、配管153に接続されている端部の内部の断面積が9cm2、配管153に接続されていない端部の内部の断面積が0cm2である。また、主管路154は、長さが40cmであり、端部から1cmの位置から2cm間隔で、内部の断面積が2mmの枝管路155が一直線上に20個接続されている。
以上のような条件で、トナー材料液Lを主管路154に170g/分で供給して、吐出した後、乾燥塔120で乾燥させ、母体粒子Tを30分間製造した。なお、捕集部130で、軟X線を照射することにより除電した後、孔径が1μmのフィルターを用いて捕集し、貯留部140に貯留した。このとき、貯留部140に貯留された母体粒子Tは、重量平均粒径が5.4μmであり、個数平均粒径に対する重量平均粒径の比が1.04であった。
なお、タンク151に設置した質量計を用いて、30分後のトナー材料液Lの吐出量を算出したところ、170g/分であった。
以上のことから、30分間に1回程度メンテナンスすることにより、長時間に亘って、粒度分布が狭い母体粒子Tを安定に製造できることがわかる。
(母体粒子の粒度分布の測定方法)
まず、フィルターを通して微細なごみを取り除くことにより得られた、円相当径が0.60μm以上159.21μm未満の粒子の濃度が20個/10−3cm3以下である水10ml中にノニオン系界面活性剤コンタミノンN(和光純薬社製)を数滴及び母体粒子5mgを加えた。次に、超音波分散機UH−50(STM社製)を用いて、20kHz、50W/10cm3の条件で1分間分散処理を行った後、合計5分間の分散処理を行い、円相当径が0.60μm以上159.21μm未満の粒子の濃度が4000〜8000個/10−3cm3である分散液を調製し、粒度分布を測定した。
詳細には、厚さが約200μmであるフラットで偏平な透明フローセルの流れ方向に沿って広がっている流路に分散液を通過させる。このとき、フローセルの厚さ方向に交差して通過する光路を形成するために、ストロボとCCDカメラが、フローセルの厚さ方向に対して、相互に反対側に位置するように装着されている。さらに、分散液が流れている間に、フローセルを流れている粒子の画像を得るために、ストロボ光が1/30秒間隔で照射される。その結果、母体粒子は、フローセルに平行な2次元画像として撮影され、2次元画像の面積と同一の面積を有する円の直径が円相当径として算出される。このとき、0.06〜400μmの範囲を226チャンネルに分割され、約1分間で1200個以上の母体粒子の円相当径が算出される。
[実施例2]
液滴吐出ユニット210の代わりに、液滴吐出ユニット110(図2参照)を用い、直径が15mm、厚さが1.2mmのチタン酸ジルコン酸鉛(PZT)からなる電歪振動子112aに印加する正弦波のピーク電圧を10V、周波数を200kHzとし、主管路154の配管153に接続されている端部の断面積を25cm2とし、トナー材料液Lを主管路154に360g/分で供給した以外は、実施例1と同様にして、母体粒子Tを得た。母体粒子Tは、重量平均粒径が5.0μmであり、個数平均粒径に対する重量平均粒径の比が1.08であった。
なお、タンク151に設置した質量計を用いて、30分後のトナー材料液Lの吐出量を算出したところ、360g/分であった。
以上のことから、30分間に1回程度メンテナンスすることにより、長時間に亘って、粒度分布が狭い母体粒子Tを安定に製造できることがわかる。
[実施例3]
主管路154の配管153に接続されている端部の断面積を25cm2とし、主管路154の端部から0.5cmの位置から1cm間隔で40個の枝管路155を一直線上に接続し、トナー材料液Lを主管路154に720g/分で供給した以外は、実施例2と同様にして、母体粒子Tを得た。母体粒子Tは、重量平均粒径が5.3μmであり、個数平均粒径に対する重量平均粒径の比が1.10であった。
なお、タンク151に設置した質量計を用いて、30分後のトナー材料液Lの吐出量を算出したところ、720g/分であった。
以上のことから、30分間に1回程度メンテナンスすることにより、長時間に亘って、粒度分布が狭い母体粒子Tを安定に製造できることがわかる。
[比較例1]
主管路154の断面積を9cm2で一定とした以外は、実施例1と同様にして、母体粒子Tを得た。母体粒子Tは、重量平均粒径が4.8μmであり、個数平均粒径に対する重量平均粒径の比が1.11であった。
なお、タンク151に設置した質量計を用いて、30分後のトナー材料液Lの吐出量を算出したところ、82g/分であった。これは、3分後に、主管路154の配管153に接続されていない端部の側に、枝管路155を介して、接続されている貯留部111cの内圧の低下による気泡の混入が始まったためである。
以上のことから、長時間に亘って、粒度分布が狭い母体粒子Tを安定に製造できないことがわかる。
[比較例2]
主管路154の断面積を25cm2で一定とした以外は、実施例2と同様にして、母体粒子Tを得た。母体粒子Tは、重量平均粒径が5.1μmであり、個数平均粒径に対する重量平均粒径の比が1.18であった。
なお、タンク151に設置した質量計を用いて、30分後のトナー材料液Lの吐出量を算出したところ、122g/分であった。これは、3分後に、主管路154の配管153に接続されていない端部の側に、枝管路155を介して、接続されている貯留部111cの内圧の低下による気泡の混入が始まったためである。
以上のことから、長時間に亘って、粒度分布が狭い母体粒子Tを安定に製造できないことがわかる。
[トナーの作製]
ヘンシェルミキサー(三井鉱山社製)を用いて、母体粒子Tに対して、1.0質量%の疎水性シリカH2000(クラリアントジャパン社製)を混合し、トナーを得た。
[現像剤の作製]
シリコーン樹脂をトルエンに分散させた分散液を、加温した状態で、平均粒径が50μmの球形フェライト粒子にスプレーコートした後、焼成し、冷却することにより、厚さが0.2μmの被覆層を形成し、キャリアを得た。
次に、トナー4部とキャリア96部を混合し、現像剤を得た。