JP5412930B2 - 回転電機制御システム - Google Patents

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本発明は、回転電機制御システムに係り、特に 少なくとも矩形波制御モードと過変調制御モードとの間で制御を切り替える回転電機制御システムに関する。
回転電機をインバータによって駆動する場合に、その制御方法として、正弦波制御モードと過変調制御モードと矩形波制御モードとを使い分けることが行われている。すなわち、回転電機の高出力化と小型化とを両立させるためには、1パルススイッチングを用いる矩形波制御モードが必要であり、低速領域で優れた特性を有する正弦波制御モードと、中速領域で用いられる過変調制御モードとの間のモード切替を行いながら、最適に回転電機を制御している。
ここで、正弦波制御モードと過変調制御モードとは、電流フィードバック制御であり、電圧指令と搬送波(キャリア)とを比較することでパルス幅変調(Pulse Width Modulation:PWM)パターンを回転電機に出力する制御である。一方、矩形波制御モードは、電気角に応じて1パルススイッチング波形を回転電機に出力する制御であり、電圧振幅は最大値に固定され、位相を制御することでトルクをフィードバック制御している。
正弦波制御モードから過変調制御モード、過変調制御モードから矩形波制御モードの3つのモードの間の切替は、変調率、あるいは変調率に相当する電圧指令振幅によって行われるが、矩形波制御モードから過変調制御モードへの切替は、矩形波制御モードにおいて電圧指令振幅が一定であるので、切替先である過変調制御モードでの動作ラインに対する実電流の偏差によって切替のタイミングを判定することで行われる。
例えば、特許文献1には、交流電動機の駆動制御装置として、電圧振幅が基準三角波のピーク値の1.00倍を超えたらPWM電流制御モードから過変調制御モードに切り替え、電圧振幅が基準三角波のピーク値の1.27倍を超えたら矩形波制御モードに切り替え、一方実電流位相の絶対値が電流指令位相の絶対値未満となったら矩形波制御モードから過変調制御モードに切り替えることが述べられている。
そして、d軸電流及びq軸電流には周期的なノイズや高調波が含まれるので測定電流にローパスフィルタ処理を行うが、このフィルタ処理のため、矩形波制御モードから過変調制御モードへの切り替えが遅れることがあり、電流位相のハンチング等を引き起こし、制御が不安的になることを指摘している。そこで、ここでは、誘起電圧等を加味した必要電圧振幅VRと基準三角波のピーク値とを比較し、さらにチャタリングを起こさないようなオフセット値を設けることで、矩形波制御モードから過変調制御モードへの切り替えの遅れが生じないようにすることが開示されている。
なお、本発明に関連する技術として、特許文献2には、モータを用いて操舵力を補助する電動パワーステアリング装置において、モータを制御する制御装置は、モータに流れる電流の電流座標変換を行って2軸に変換された電流が目標電流に一致するように制御を行うが、モータに流れる電流の検出信号に中点オフセットが生じると、電流座標変換処理を行った場合、変換された信号は本来の信号に対してリプルが重畳された信号となることが述べられている。
特開2008−11682号公報 特開2007−69836号公報
上記のように、矩形波制御モードから過変調制御モードへの切替は、切替先である過変調制御モードでの動作ラインに対する実電流の偏差によって切替のタイミングを判定する。過変調制御モードでの動作ラインとは、回転電機を予め定めた運転条件で運転できる電流動作点を結んだラインで、例えば、回転電機が最大効率となる電流指令値を結んだラインである。このラインを運転条件特性線と呼ぶことにすると、実電流値がこの運転条件特性線に到達したときに、矩形波制御モードから過変調制御モードに切替が行われることになる。
実際には、回転電機の特性のばらつき、制御処理のばらつき等があるので、特許文献2に述べられているように、電流は、本来の基本波成分にリプル成分が重畳したものになる。このようなリプル成分等の影響を考慮して、特許文献1に述べられているように、運転条件特性線からある程度の位相を遅らせて制御モードの切替閾値ラインが設定される。このように切替閾値ラインを設定することで、リプル成分が重畳した実電流が切替閾値ラインに到達したときに矩形波制御モードから過変調制御モードに切り替えるものとできる。
ところで、リプル成分は、上記のように回転電機の特性ばらつきによっても生じるので、予めリプル成分を想定して切替閾値ラインを設定しても、回転電機の特性ばらつきによって実際のリプル成分が想定していたリプル成分と異なると、制御モードの切替タイミングがばらつくことになり、回転電機の制御にばらつきが生じることになる。
本発明の目的は、矩形波制御モードから過変調制御モードへの切替タイミングのばらつきを抑制できる回転電機制御システムを提供することである。他の目的は、回転電機特性のばらつきによる矩形波制御モードから過変調制御モードへの切替タイミングのばらつきを抑制できる回転電機制御システムを提供することである。
本発明に係る回転電機制御システムは、少なくとも矩形波制御モードと過変調制御モードとの間で制御を切り替える回転電機制御システムであって、直交するd軸とq軸とで構成されるdq平面上において、回転電機を予め定めた運転条件で運転できる電流動作点を結んで得られる運転条件特性線上で、電流指令を実行する電流指令実行手段と、回転電機の特性ばらつきまたは制御のばらつきの少なくとも一方により予め予測できないリプル成分が実電流動作点に含まれるとき、電気一周期における実d軸電流の最大値と最小値の平均値、及び電気一周期における実q軸電流の最大値と最小値の平均値に基づいてその実電流動作点における実電流基本波成分の動作点を算出する基本波成分算出手段と、運転条件特性線に基づいて設定される切替閾値ラインを実電流基本波成分の動作点が越えるときに矩形波制御モードから過変調制御モードに切り替えるモード切替手段と、を備えることを特徴とする。
また、本発明に係る回転電機制御システムにおいて、モード切替手段は、運転条件特性線を切替閾値ラインとして、運転条件特性線を実電流基本波成分の動作点が越えるときに矩形波制御モードから過変調制御モードに切り替えることが好ましい。
上記構成により、回転電機制御システムは、直交するd軸とq軸とで構成されるdq平面上において、回転電機を予め定めた運転条件で運転できる電流動作点を結んで得られる運転条件特性線に基づいて設定される切替閾値ラインを制御モードの切替を行う切替閾値ラインとし、一方で電気一周期について求められる実電流動作点のリプル成分に基づいてその実電流動作点における実電流基本波成分の動作点を求めて、その実電流基本波成分の動作点が切替閾値ラインを越えるときに矩形波制御モードから過変調制御モードに切り替える。実電流基本波成分の動作点は、リプル成分を含まないときの本来の実電流の動作点であるので、これと切替閾値ラインと一致するときに制御モードを切り替えれば、リプル成分の変動によって制御モードの切替のばらつきが生じない。回転電機特性のばらつきはリプル成分の変動をきたすが、上記構成によれば、回転電機特性がばらついても制御モードの切替のばらつきが生じない。
また、回転電機制御システムにおいて、電気一周期における実d軸電流の最大値と最小値の平均値と、電気一周期における実q軸電流の最大値と最小値の平均値とに基づいて実電流基本波成分の動作点を算出するので、簡単な演算で実電流基本波成分の動作点、すなわちリプル成分を含まない本来の実電流の動作点を求めることができる。
また、回転電機制御システムにおいて、運転条件特性線を切替閾値ラインとして、運転条件特性線を実電流基本波成分の動作点が越えるときに矩形波制御モードから過変調制御モードに切り替えるので、リプル成分以外のばらつき要因が少ない場合には、このように簡明な切替制御を行うことが可能となる。
本発明に係る実施の形態において、車両に搭載される回転電機に対する回転電機制御システムの構成を示す図である。 回転電機の動作点に応じて制御モードが選択される様子を説明する図である。 本発明に係る実施の形態において、矩形波制御のときの制御ブロック図である。 本発明に係る実施の形態において、過変調制御のときの制御ブロック図である。 従来技術において、運転条件特性線である最大効率特性線と、制御モード切替の切替閾値ラインの様子を説明する図である。 本発明に係る実施の形態において、実電流の基本波成分の動作点を用いた制御モードの切替の様子を説明する図である。
以下に図面を用いて、本発明に係る実施の形態につき、詳細に説明する。以下では、回転電機制御システムが用いられるものとして回転電機が搭載される車両を説明するが、これは例示であって、少なくとも矩形波制御モードと過変調制御モードとの間で制御を切り替える回転電機制御システムを用いるものであればよい。また、この車両には、回転電機として、1台でモータ機能と発電機機能とを有するモータ・ジェネレータを2台用いるものとして説明するが、これは例示であって、モータ機能のみを有する回転電機を1台、発電機機能のみを有する回転電機を1台用いるものとしてもよい。また、モータ・ジェネレータを1台用いるものとしてもよく、3台以上用いるものとしてもよい。なお、以下では、回転電機の他に、エンジンを搭載する車両として説明するが、エンジンを搭載しない構成としてもよい。
以下では、回転電機に接続される電源回路として、蓄電装置、電圧変換器、インバータ、平滑コンデンサを含む構成を説明するが、これは例示であって、これら以外の要素を含むものとしてもよい。例えばシステムメインリレー、低電圧DC/DCコンバータ等を含むことができる。また、蓄電装置とは別に、燃料電池を電源として含むものとしてもよい。
以下では、全ての図面において同様の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。また、本文中の説明においては、必要に応じそれ以前に述べた符号を用いるものとする。
図1は、車両に搭載される回転電機についての回転電機制御システム10についてその構成を示す図である。回転電機制御システム10は、電源回路12と、これに接続される2つの回転電機26,28と、これらの構成要素の動作を全体として制御する回転電機制御装置30とを含んで構成される。回転電機制御装置30は、いくつかの制御機能を有する回路の集合体であって、ベクトル制御によって回転電機の動作制御を行う部分を含む。ベクトル制御による矩形波制御と過変調制御については、後にそれぞれ図面を用いて詳細に説明する。
回転電機(MG1)26と回転電機(MG2)28は、車両に搭載されるモータ・ジェネレータ(MG)であって、電源回路12に含まれる蓄電装置14から電力が供給されるときはモータとして機能し、図示されていないエンジンによる駆動時、あるいは車両の制動時には発電機として機能する3相同期型回転電機である。
回転電機(MG1)26と回転電機(MG2)28は、車両に搭載されるモータ・ジェネレータ(M/G)であって、電力が供給されるときはモータとして機能し、制動時には発電機として機能する3相同期型回転電機である。図1の例では、2つの回転電機26,28の中の一方を蓄電装置14の充電のための発電機、他方を主として車両走行用としての駆動モータとして用いられる。
すなわち、上記のように、車両に搭載されるエンジンによって一方の回転電機(MG1)26を駆動して発電機として用い、発電された電力を蓄電装置14に供給するものとして用いる。また、他方の回転電機(MG2)28を車両走行のために用いて、力行時には蓄電装置14から電力の供給を受けてモータとして機能して車両の車軸を駆動し、制動時には発電機として機能して回生エネルギを回収し、蓄電装置14に供給するものとできる。
電源回路12は、2次電池である蓄電装置14と、蓄電装置14側の平滑コンデンサ16と、電圧変換器18と、インバータ22,24側の平滑コンデンサ20と、インバータ22,24を含んで構成される。電源回路12は、回転電機26,28と接続される回路であり、回転電機26,28が駆動モータとして機能するときにこれに電力を供給し、あるいは回転電機26,28が発電機として機能するときは回生電力を受け取って蓄電装置14を充電する機能を有する。
蓄電装置14としては、例えば、約200Vの端子電圧を有するリチウムイオン組電池あるいはニッケル水素組電池、またはキャパシタ等を用いることができる。
電圧変換器18は、蓄電装置14側の電圧をリアクトルのエネルギ蓄積作用を利用して例えば約650Vに昇圧する機能を有する回路で、昇圧コンバータとも呼ばれる。なお、電圧変換器18は双方向機能を有し、インバータ22,24側からの電力を蓄電装置14側に充電電力として供給するときには、インバータ22,24側の高圧を蓄電装置14に適した電圧に降圧する作用も有する。
蓄電装置14側の平滑コンデンサ16と、インバータ22,24側の平滑コンデンサ20は、それぞれの側の正極母線と負極母線との間における電圧、電流の変動を抑制し平滑化する機能を有する。
インバータ22,24は、回転電機制御装置30の制御の下で作動する複数のスイッチング素子を含んで構成され,交流電力と直流電力との間の電力変換を行う回路である。図1に示されるように、(MG1)インバータ22は回転電機(MG1)26に接続され、(MG2)インバータ24は回転電機(MG2)28に接続される。
そして、回転電機(MG1)26を発電機として機能させるとき、インバータ22は、回転電機(MG1)26からの交流3相回生電力を直流電力に変換し、蓄電装置14側に充電電流として供給する交直変換機能を有する。また、回転電機(MG2)28に接続されるインバータ24は、車両が力行のとき、蓄電装置14側からの直流電力を交流3相駆動電力に変換し、回転電機(MG2)28に駆動電力として供給する直交変換機能と、車両が制動のとき、逆に回転電機(MG2)28からの交流3相回生電力を直流電力に変換し、蓄電装置14側に充電電流として供給する交直変換機能とを有する。
かかるインバータ22,24は、複数のスイッチング素子とダイオードとを組み合わせた回路で構成することができる。
回転電機制御装置30は、上記の各要素の作動を全体として制御する機能を有する。例えば、図示されていないエンジンの作動を制御する機能、2つの回転電機26,28の作動を制御する機能、電源回路12の作動を制御する機能等を制御する機能等を有する。
かかる回転電機制御装置30は、車両の搭載に適した制御装置、例えば車載用コンピュータによって構成することができる。回転電機制御装置30を1つのコンピュータで構成することもできるが、必要な処理速度が各構成要素によって異なること等を考慮し、複数のコンピュータにこれらの機能を分担させることもできる。例えば、エンジンの作動を制御する機能をエンジン電気制御ユニット(Electrical Control Unit:ECU)に分担させ、2つの回転電機26,28の作動を制御する機能をMG−ECUに分担させ、電源回路12の作動を制御する機能をPCU(Power Control Unit)に分担させ、全体を統合ECUで制御する等の構成とすることもできる。
図1において、回転電機制御装置30は、これらの機能のうち、特に回転電機制御機能として、2つの回転電機26,28の制御モードの切替について、切替タイミングのばらつきを少なくする制御を有する部分が示されている。すなわち、回転電機制御装置30は、2つの回転電機26,28の制御について、正弦波制御モードを実行する正弦波制御処理部32、過変調制御モードを実行する過変調制御処理部34、矩形波制御モードを実行する矩形波制御処理部36、電気一周期について求められる実電流動作点のリプル成分に基づき、その実電流動作点における実電流基本波成分の動作点を求める基本波成分算出処理部38と、運転条件特性線に基づいて設定される切替閾値ラインを実電流基本波成分の動作点が越えるときに矩形波制御モードから過変調制御モードに切り替えるモード切替処理部40とを含んで構成される。
これらの機能は、ソフトウェアを実行することで実現でき、具体的には、回転電機制御プログラムの中の制御モード切替パートを実行することで実現できる。これらの機能の一部をハードウェアによって実現するものとしてもよい。
上記構成の作用、特に回転電機制御装置30の各機能について以下に詳細に説明する。なお、2つの回転電機26,28の制御は特に区別がないので、以下では、第2の回転電機28に代表させて、その制御モードの切替等について説明する。
最初に、正弦波制御モード、過変調制御モード、矩形波制御モードについて説明する。正弦波制御モードと過変調制御モードとは、電流フィードバック制御であり、電圧指令と搬送波(キャリア)とを比較することでパルス幅変調(Pulse Width Modulation:PWM)パターンを回転電機28に出力する制御である。一方、矩形波制御モードは、電気角に応じて1パルススイッチング波形を回転電機28に出力する制御であり、電圧振幅は最大値に固定され、位相を制御することでトルクをフィードバック制御している。上記のように、これら3つの制御モードは、それぞれ、正弦波制御処理部32、過変調制御処理部34、矩形波制御処理部36によって実行される。
正弦波制御モード、過変調制御モード、矩形波制御モードの3つのモードの間の切替は、変調率、あるいは変調率に相当する電圧指令振幅によって行われる。変調率とは、インバータ)の出力電圧Ed一定の条件でトルクの制御をするときの制御信号振幅をEdとの比で示すもので、インバータの出力電圧の利用効率の指標となるものである。矩形波制御モードの場合は、矩形波である方形波電圧の信号振幅である線間基本波電圧は、Ed{(6)1/2}/π=0.78Edであるので変調率は0.78である。正弦波と三角波の比較による正弦波制御モードと過変調制御モードの場合は、その信号振幅である線間基本波電圧は、Ed{(3)1/2}/2{(2)1/2}=0.61Edであるので、変調率は0.61である。
このように、回転電機28を高出力にするには、変調率を大きくできる矩形波制御の方が向いている。一方で、正弦波制御モード、過変調制御モードにおいては、PWM技術によって形成される擬似正弦波を用いるので、矩形波制御モードに比べ、応答を速くすることができる。これらのことから、低速領域では、正弦波制御モード、中速領域では過変調制御モード、高速領域で矩形波制御モードを用いることが好ましい。
図2は、回転電機の動作点に応じて制御モードが選択される様子を説明する図である。この図は、回転電機28の回転数を横軸に、トルクを縦軸にとり、その最大トルク特性線50を示し、さらに、最大トルク特性線50で示される作動領域においてどの制御モードが用いられるかを示す図である。この図に示されるように、低速側に正弦波制御モード作動領域52が、高速側に矩形波制御モード作動領域56が、その中間に過変調制御モード作動領域54がそれぞれ設定されている。
次に、これら3つの制御モードの切替について説明する。図2で示されたように、回転数とトルクで与えられる回転電機28の動作点の状態に応じて、制御モードの切替が行われる。速度とトルクを次第に上げて行くにつれて、正弦波制御モードから過変調制御モード、過変調制御モードから矩形波制御モードへと制御モードを切り替える。速度とトルクを変更することは、インバータの直流電圧の変更、つまり電圧変換器18の昇圧比の変更で行うことができる。また、昇圧比の変更とともに、インバータの電圧利用率を変更することで速度とトルクを変更できる。
したがって、以下のように変調率によって、制御モードの切替を行うものとできる。すなわち、変調率が0.61以下のときに正弦波制御モード、変調率が0.61から0.78の間は過変調制御モード、変調率が0.78となれば矩形波制御モードを用いるように制御モードを切り替える。
これと逆方向に制御モードを切り替えるときも変調率を用いることができるが、矩形波制御モードから過変調制御モードへの切替は、矩形波制御モードにおいて電圧指令振幅が一定であるので、切替先である過変調制御モードでの動作ラインに対する実電流の偏差によって切替のタイミングを判定することで行われる。
回転電機の制御にはベクトル制御が行われるので、次にベクトル制御について説明する。例えばU相、V相、W相の3相を有する3相同期型回転電機の場合、U相、V相、W相の3相の状態がd軸、q軸の2軸の状態に変換され、このd軸、q軸の電流、電圧について制御が行われる。回転界磁型の3相同期型電動機に用いられるベクトル制御では、回転子の磁極が形成する磁束の方向がd軸にとられ、d軸に直交する軸がq軸に取られる。後述する図5に示されるように、dq平面は、このd軸とq軸とを直交する座標軸として構成される平面である。
ここで、回転電機28のd軸インダクタンスをLd、q軸インダクタンスをLq、巻線抵抗をR、電気角速度をω、逆起電力定数をψ、d軸電流をId、q軸電流をIq、d軸電圧をVd、q軸電圧をVqとすると、回転電機の理論式は以下のように示すことができる。
すなわち、d軸電圧Vdは、Vd=R×Id−ω×Lq×Iqで与えられる。また、q軸電圧Vqは、Vq=R×Iq+ω×Ld×Id+ωψで与えられる。また、回転電機28の極数をpとして、トルクτは、τ=pψIq+p(Ld−Lq)Idqで与えられる。
d軸電流とq軸電流とで規定される電流ベクトルの絶対値IaをIa=(Id 2+Iq 21/2とし、電流位相βをβ=tan-1(Iq/Id)とすると、トルクτの式が電流位相βで表すことができる。すなわち、トルクτ=pψIasinβ+(1/2)×p(Ld−Lq)Ia 2×sin2βで与えられる。この式は、電流位相βでトルクτが制御できることを示している。すなわち、電流位相とは、電流におけるd軸電流成分とq軸電流成分との間の位相を示すものである。
このようにして、dq平面上で、電流位相βを制御することで回転電機28のトルクを制御できる。なお、最大トルクを与える電流位相βは、上記トルクτの式を電流位相βで微分してその値をゼロとおいた式に基いて求めることができる。すなわち、β=cos-1〔[−ψ+{ψ2−8(Ld−Lq21/2]/4(Ld−Lq)Ia〕で最大トルクのときの電流位相βが求められる。このように計算で求められる関係式に、必要な場合に適当な補正を加えて、回転電機28を最大効率で運転できる特性線を求めることができる。
次に、ベクトル制御を用いた回転電機28のフィードバック制御について、矩形波制御モードと過変調制御モードとに分けて説明する。
図3は、ベクトル制御による回転電機28の矩形波制御における制御ブロック図である。図3において、インバータ24と回転電機28とを除く部分42が、回転電機制御装置30の矩形波制御処理部36に相当する。
この制御ブロック図に示されるように、矩形波制御モードにおいては、座標変換部72において回転電機28の各相電流値をdq電流値に変換し、トルク推定部74においてdq電流値からトルク推定値Testを算出し、これをトルク指令値Tcomにフィードバックするトルクフィードバックが行われる。
ここで、トルク指令値Tcom70は、図示されていない車両のアクセル等から求められるユーザの要求トルクに基づいて算出される。
座標変換部72は、回転電機28の各相電流値のうち2つの電流値と回転角度θを取得し、各相電流値に基づいてd軸電流値Idとq軸電流値Iqを算出する機能を有する。図7の例では、適当な電流検出手段によって取得されたV相電流値IvとW相電流値Iwと、レゾルバ等によって取得された回転電機28の回転角度θに基づいて座標変換が行われている。
トルク推定部74は、座標変換部72によって算出されたd軸電流値Idとq軸電流値Iqとから上記で説明したトルクの式τ=pψIq+p(Ld−Lq)Idqに従って、トルクを算出し、これをトルク推定値Testとして出力する機能を有する。
減算器76は、トルク指令値Tcomからトルク推定値Testを減算してトルク偏差ΔTを算出する機能を有する。
PI演算部78は、回転電機28について予め求められている電圧位相φとトルクTとの関係に基づき、所定ゲインの下で比例積分制御を行ってトルク偏差ΔTに対応する制御偏差を求め、その制御偏差に応じた電圧位相φを算出する機能を有する。矩形波制御モードでは、電圧振幅は一定であるので、この電圧位相φによってトルク制御が実行されることになる。
矩形波発生部80は、算出された電圧位相φに基づいて、矩形波パルスである各相電圧指令値Iu,Iv,Iwを発生する機能を有し、信号発生部82は、各相電圧指令値に基づいて、インバータ24を構成する各スイッチング素子に対する制御信号を発生する機能を有する。3相作動型インバータは、6つのスイッチング素子を有しているので、図7では、6つの制御信号がインバータ24に供給される様子が示されている。これによって、電圧位相φに従った3相の矩形波パルスが回転電機28に供給される。
このようにして、矩形波制御モードにおいては、回転電機28の実d軸電流と実q軸電流に基づいて算出されたトルク推定値がトルク指令に対してフィードバックされるトルクフィードバック制御が行われる。
図8は、過変調制御モードのときの制御ブロック図である。図4において、インバータ24と回転電機28とを除く部分44が、回転電機制御装置30の過変調制御処理部34に相当する。
この制御ブロック図に示されるように、過変調制御モードにおいては、座標変換部72において回転電機28の各相電流値をd軸電流値Idとq軸電流値Iqとに変換し、一方でトルク指令値Tcomからd軸電流指令値Idcomとq軸電流指令値Iqcomを算出sする。そして、d軸電流指令値Idcomにd軸電流値Idをフィードバックし、q軸電流指令値Iqcomにq軸電流値Iqをフィードバックする電流フィードバックが行われる。
トルク指令値Tcom70と座標変換部72は図3で説明したものと同じ内容である。電流指令生成部90は、例えば予め作成したテーブル等を用いて、トルク指令値Tcomをd軸電流指令値Idcomとq軸電流指令値Iqcomの組として算出する機能を有する。
減算器92は、d軸電流指令値Idcomからd軸電流値Idを減算してd軸電流偏差ΔIdを算出し、減算器94は、q軸電流指令値Iqcomからq軸電流値Iqを減算してq軸電流偏差ΔIqを算出する機能を有する。
PI演算部96は、d軸電流偏差ΔIdとq軸電流偏差ΔIqについて、所定のゲインの下で比例積分制御を行ってこれらに対応する制御偏差を求め、その制御偏差に応じたd軸電圧指令値Vdとq軸電圧指令値Vqを算出する機能を有する。
座標変換部98は、先ほどの座標変換部72と互いに逆変換の関係にあるもので、dq電圧値を各相電圧値に変換する機能を有する。すなわち、回転電機28の回転角度θに基づいて、d軸電圧指令値Vdとq軸電圧指令値Vqを、各相電圧指令値Vu,Vv,Vwに変換する機能を有する。なお、これらの変換に際し、インバータ24にコンバータから供給されるシステム電圧も反映される。
PWM信号生成部100は、各相電圧指令値Vu,Vv,Vwと所定の搬送波との比較によって、インバータ24を構成する各スイッチング素子に対する制御信号を発生する機能を有する。図3で説明したように、インバータ24は、6つのスイッチング素子を有しているので、ここでも、6つの制御信号がインバータ24に供給される様子が示されている。これによって、各相電圧指令値に対応する各相のPWM信号が回転電機28に供給される。
このようにして、過変調制御モードにおいては、トルク指令値に対応するd軸電流指令値とq軸電流指令値のそれぞれに対し、回転電機28の実d軸電流値と実q軸電流値がフィードバックされる電流フィードバック制御が行われる。
なお、正弦波制御処理部32に対応するベクトル制御によるフィードバック制御の内容も基本的には図4と同じ構成であるので、その詳細な説明を省略する。
以上でベクトル制御による回転電機28の矩形波制御モードと過変調制御モードの説明をしたので、次に、矩形波制御モードから過変調制御モードへの切替について説明する。上記で説明したように、ベクトル制御によれば、電流位相βを制御することでトルクが制御でき、トルクの式から、最大トルクのときの電流位相βの軌跡をdq平面上で求めることで、回転電機28を最大効率で運転できる最大効率特性線を得ることができる。
図5は、d軸とq軸とを直交する座標軸として構成されるdq平面であり、ここに上記の最大効率特性線62が示されている。この最大効率特性線62上で電流指令を実行すれば、回転電機28を最大効率で運転することができる。このように、最大効率でなくても、dq平面上において、回転電機28を予め定めた運転条件で運転できる電流動作点を結んで得られる運転条件特性線を示すことができる。そして、このようにして求められた運転条件特性線上で電流指令を実行することで、回転電機28を正弦波制御モードまたは過変調制御モードで運転できる。以下では、予め定めた運転条件を最大効率運転条件として、運転条件特性線を最大効率特性線62として説明を続ける。
この最大効率特性線62は、最大トルクのときの電流位相βを満たすd軸電流とq軸電流の電流組を結んで得られる特性線であるが、これらのd軸電流、q軸電流に対応するd軸電圧、q軸電圧の電圧組を結んで得られる特性線が図6において電圧指令特性線66として示されている。
図5で示される最大電圧円60は、回転電機28に供給される最大電圧を示す線であり、矩形波制御モードでは、その電圧振幅が一定のときは、この最大電圧円60の上で、電圧位相を制御することで出力されるトルクの大きさを制御することができる。したがって、この最大電圧円60の内部の電圧指令特性線66は、正弦波制御モードおよび過変調制御モードにおける最大効率運転のときの電圧指令のd軸電圧とq軸電圧の電圧組を示すものである。
このようにして、dq平面を用いることで、正弦波制御モードおよび過変調制御モードにおける最大効率運転のときの電流指令が実行される最大効率特性線62、これに対応する電圧指令が実行される電圧指令特性線66が示される。また、矩形波制御モードにおける電圧指令は、最大電圧円60上で実行されることが示される。
最大効率特性線62上で実行される電流指令は、電流位相に従って実行されることになる。また、最大電圧円60上で実行される電圧指令は、電圧位相に従って実行されることになる。このように回転電機28の運転においては、特に制御モードの切替においては、電流位相、電圧位相について、指令値と実際の値との偏差を監視しながら実行される。
図5において示される切替閾値ライン64は、dq平面上で、最大効率特性線62よりも遅角側に予め設定された位相差を有する特性線である。切替閾値ライン64は、このラインを越えるときに、矩形波制御モードから過変調制御モードに切り替えるものとする切替タイミングの判断基準としての機能を有する。
運転条件特性線である最大効率特性線62は、矩形波制御モードから過変調制御モードに切り替えるときに、切替先となる過変調制御モードにおける動作線である。この切替先動作線である最大効率特性線62と位相差を有して切替閾値ライン64を設ける理由は、実電流値は様々な理由でばらつきが生じ得るから余裕を見る必要があるためである。すなわち、実際に電流を計測するつもりで検出された値に基づいて最大効率特性線62に到達したことを判断すると、真の実電流値はまだ最大効率特性線62に到達していないことがあり、逆に既に最大効率特性線62に到達した後であることもある。
上記の特許文献1の例では、測定電流にローパスフィルタ処理をしているので、このローパスフィルタ処理によって検出値と真の実電流値との間に偏差が生じえる。特許文献2の例では、検出器の中点オフセットによってd軸電流、q軸電流にリプル成分が生じるので、このリプル成分を検出すると、真の実電流値はリプル成分がない値であるので、リプル成分によって検出値と真の実電流値との間に偏差が生じえる。
このように様々な理由で、実際に電流を計測するつもりで検出された値と、真の実電流値との間に偏差が生じえる。以下では、この偏差の原因をリプル成分のみとして、説明を続ける。このように偏差原因をリプル成分とし、検出される電流値はリプル成分を含む実電流値であるとすると、リプル成分を含む実電流値である検出値が切替閾値ライン64に到達したときに、実はリプル成分のない元々の実電流値がちょうど最大効率特性線62のところに来ているように、切替閾値ライン64を設定することになる。
図6に、検出値と真の実電流との間の偏差がリプル成分のみと考えたときの制御モードの切替の考え方を説明する図である。ここでは、dq平面上に、最大効率特性線62と、これに対しリプル成分を考慮した切替閾値ライン64とが示されている。最大効率特性線62は、過変調制御モードのときにこのライン上で電流指令を実行すれば、回転電機28を最大効率で運転できる動作線である。換言すれば、回転電機制御装置30の過変調制御処理部34は、この最大効率特性線62上で電流指令を実行する機能を有する。
図6には、矩形波制御モードにおけるdq平面上の実電流値の移行線120も示されている。この実電流値の移行線120は、矩形波制御モードにおいて回転電機28のトルクと回転数が変更されたときの実電流値がdq平面上で移動する軌跡を示す線である。図6の例では、d軸電流の負の値の絶対値が次第に小さくなって、最大効率特性線62および切替閾値ライン64に近づいていく様子が示されている。
この実電流値の移行線120は、リプル成分を含まない元々の実電流値をdq平面上でつなげたものである。図6では丸印でリプル成分を含まない元々の実電流値を示してあるが、これを実電流の基本波成分110と呼ぶことができる。したがって、実電流値の移行線120は、dq平面上で実電流の基本波成分110をつなげたものである。
実電流の基本波成分110とは、実電流を検出するときに、変動成分であるリプル成分を取り除いたものである。図6には、この基本波成分110の周りにリプル成分112が示されている。リプル成分112とは、回転電機28の特性ばらつき等によって、元々の実電流値である基本波成分110に重畳される変動成分であり、図6に示されるように、基本波成分110を中心にしたある広がりを有する領域である。
実際に検出できるのはリプル成分112を含んだ電流値である。矩形波制御モードから過変調制御モードに切り替えるのは、実際に検出される値に基づくことになるので、リプル成分112が切替閾値ライン64に到達したタイミングで制御モードが切り替えられることになる。このタイミングのときに、そのリプル成分112を含む実電流の基本波成分110が最大効率特性線62の上に来ていればよい。
このことから、予め標準的なリプル成分112を定め、最大効率特性線62からリプル成分112の広がりの領域分だけ、dq平面上で遅角側にくる線を、切替閾値ライン64として設定することがよいことになる。
このように、最大効率特性線62から標準的リプル成分112だけ離れたところに切替閾値ライン64を設定することで、実際に検出されるリプル成分112を含む実電流値が切替閾値ライン64に到達したときを、制御モードの切替タイミングとすることができる。すなわち、実際に検出されるリプル成分112を含む実電流値が切替閾値ライン64に到達するまでは矩形波制御モードとし、切替閾値ライン64に到達したときから過変調制御モードとすれば、ちょうど実電流の基本波成分110が過変調制御モードにおける最大効率特性線62上に来ている。したがって、矩形波制御モードと過変調制御モードとの切替が滑らかに行われる。
ここでは、リプル成分112を予め標準的な広がりを有する領域として考えている。このように考えることで、最大効率特性線62に対し、ただ1つの切替閾値ライン64を設定することが可能である。
ところで、リプル成分は、回転電機28の特性ばらつきによってdq平面上で広い領域になることも狭い領域になることもある。図6におけるリプル成分112は、予め標準的なリプル成分として定めた領域の大きさを有するものとして示されている。これに対し、このリプル成分112の外側に破線でしめした拡大リプル成分116は、回転電機28の特性ばらつきによって、標準的とされたリプル成分112よりもdq平面上でさらに広い広がりの領域を有する拡大リプル成分116である。勿論、標準的とされたリプル成分112よりもdq平面上でさらに狭い広がりの領域を有する縮小リプル成分もあり得る。以下では、拡大リプル成分116を例に取り上げて説明を続ける。このように、回転電機28に特性ばらつきが生じると、実際に検出されるのはこの拡大リプル成分116を含む実電流となる。
拡大リプル成分116はばらつきを示すものであるので、回転電機28の特性がばらつくとそのばらつき程度によってそれぞれ異なるものとなる。したがって、様々な拡大リプル成分116があり得るので、予め拡大リプル成分116を考慮して切替閾値ライン64を異なるものとして設定することは困難である。切替閾値ライン64を標準的なリプル成分112に対して設定されたものとすると、実際に検出されるのは拡大リプル成分116を含む実電流であるので、その検出値が切替閾値ライン64に到達したときに制御モードを切り替えると、拡大リプル成分116のばらつきの影響を受けて制御モードの切替タイミングがばらつくことになる。
すなわち、実際に検出される拡大リプル成分116が切替閾値ライン64に到達したときに制御モードを切り替えても、実電流の基本波成分110は必ずしも最大効率特性線62の上にないことが生じえる。このように、リプル成分112を固定値として切替閾値ライン64を設定すると、矩形波制御モードから過変調制御モードへの切替タイミングがばらつくことになる。これが本発明の解決すべき課題である。
その様子について、図6を用いて説明する。図6において、矩形波制御モードにおける電流動作点が次第に最大効率特性線62と切替閾値ライン64に近づいていくことを考える。図6においてAとして示される動作点では、実電流の基本波成分110も、標準的として予め設定されたリプル成分112も、まだ最大効率特性線62と切替閾値ライン64に到達していない。ところが、拡大リプル成分116は切替閾値ライン64に達してしまっている。
このタイミングで矩形波制御モードから過変調制御モードに切り替えると、過変調制御モードにおいては、最大効率特性線62上にない状態の電流指令値が指示されることになる。つまり、制御モードの切替タイングが早すぎる方にばらつく。拡大リプル成分116に代えて縮小リプル成分の場合には、これと逆となって、制御モードの切替タイングが遅すぎる方にばらつくことになる。
なお、実電流が標準的なリプル成分112を含む場合の切替タイミングは、図6においてBとして示されている。このBにおいては、標準的として予め設定されたリプル成分112が切替閾値ライン64上の点114に達しており、そのタイミングでその実電流の基本波成分110はちょうど最大効率特性線62の上に来ている。したがって、このタイミングで矩形波制御モードから過変調制御モードに切り替えればよい。
このように、実電流が標準的なリプル成分112を含むときは、Bのタイミングで制御モードを切り替えればよいが、拡大リプル成分116を含むときはAのタイミングで制御モードを切り替えねばならない。図6には示していないが、縮小リプル成分を含むときは、おそらくCで示されるタイミングで制御モードを切り替えなければならない。
上記では、リプル成分を含んでいる実電流を検出するものとしている。ここで、実電流の基本波成分110を推定できれば、切替閾値ライン64を用いずに、実電流の基本波成分110が最大効率特性線62を越えるタイミングで制御モードの切替を行えばよい。
図1の回転電機制御装置30の基本波成分算出処理部38は、リプル成分を含む実電流の測定に基づいて、その実電流の基本波成分を算出する機能を有する。ここで、図6に示されるように、基本波成分110はリプル成分112の中心位置であるので、dq平面上の基本波成分110の値は、検出される値の最大値と最小値の平均値として推定することができる。
いま、リプル成分は電気一周期ごとに繰り返される周期性のものであるとすると、電気一周期において検出される実d軸電流値の最大値をIdMAXとし、最小値をIdMINと、実Id電流の変動の基本波成分は、(IdMAX−IdMINと)/2と推定できる。同様に、電気一周期において検出される実q軸電流値の最大値をIqMAXとし、最小値をIqMINと、実Iq電流の変動の基本波成分は、(IqMAX−IqMINと)/2と推定できる。このようにして、実電流の基本波成分110のdq平面上の値を推定することができる。
図6で説明すると、回転電機28のトルクと回転数によって定まる動作点が矩形波制御モードで次第に最大効率特性線62に近づき、上記のようにして推定された実電流の基本波成分110がこの最大効率特性線62を越えるタイミングで、矩形波制御モードから過変調制御モードに切り替える。つまり、この場合には、最大効率特性線62が切替閾値ラインとして用いられていることになる。図6の例では、Bのタイミングで、過変調制御モードに切り替える。ここで、最大効率特性線62を越えるタイミングとは、最大効率特性線62に一致した以後は、過変調制御モードとなる、という意味である。
このようにすることで、最大効率特性線62を切替閾値ラインとして用いることができ、リプル成分112を考慮した切替閾値ライン64を用いる必要がなくなる。これは、上記のように、実電流のばらつき要因がリプル成分のみの場合であって、それ以外の要因を考慮して、別の切替閾値ラインを設けるときは、その切替閾値ラインを実電流の基本波成分110が越えるタイミングで、矩形波制御モードから過変調制御モードに切り替える。
例えば、特許文献1のようにフィルタ処理を行ったものを検出する構成では、フィルタ処理に起因する遅れ処理を考慮して切替閾値ラインが設定される。このときは、リプル成分を含まない実電流、つまり基本波成分がこの切替閾値ラインを超えるタイミングで制御モードを切り替えるものとする。このようにして、リプル成分の影響をなくして制御モードの切替を行うことができる。
本発明に係る回転電機制御システムは、矩形波制御モードと過変調制御モードとを有する回転電機制御システムに利用できる。
10 回転電機制御システム、12 電源回路、14 蓄電装置、16,20 平滑コンデンサ、18 電圧変換器、22,24 インバータ、26,28 回転電機、30 回転電機制御装置、32 正弦波制御処理部、34 過変調制御処理部、36 矩形波制御処理部、38 基本波成分算出処理部、40 モード切替処理部、42 (矩形波制御処理部に対応する)部分、44 (過変調制御処理部に対応する)部分、50 最大トルク特性線、52 正弦波制御モード作動領域、54 過変調制御モード作動領域、56 矩形波制御モード作動領域、60 最大電圧円、62 最大効率特性線、64 切替閾値ライン、66 電圧指令特性線、70 トルク指令値、72,98 座標変換部、74 トルク推定部、76,92,94 減算器、78,96 PI演算部、80 矩形波発生部、82 信号発生部、90 電流指令生成部、100 PWM信号生成部、110 基本波成分、112 リプル成分、114 点、116 拡大リプル成分、120 移行線。

Claims (2)

  1. 少なくとも矩形波制御モードと過変調制御モードとの間で制御を切り替える回転電機制御システムであって、
    直交するd軸とq軸とで構成されるdq平面上において、回転電機を予め定めた運転条件で運転できる電流動作点を結んで得られる運転条件特性線上で、電流指令を実行する電流指令実行手段と、
    回転電機の特性ばらつきまたは制御のばらつきの少なくとも一方により予め予測できないリプル成分が実電流動作点に含まれるとき、電気一周期における実d軸電流の最大値と最小値の平均値、及び電気一周期における実q軸電流の最大値と最小値の平均値に基づいてその実電流動作点における実電流基本波成分の動作点を算出する基本波成分算出手段と、
    運転条件特性線に基づいて設定される切替閾値ラインを実電流基本波成分の動作点が越えるときに矩形波制御モードから過変調制御モードに切り替えるモード切替手段と、
    を備えることを特徴とする回転電機制御システム。
  2. 請求項1に記載の回転電機制御システムにおいて、
    モード切替手段は、
    運転条件特性線を切替閾値ラインとして、運転条件特性線を実電流基本波成分の動作点が越えるときに矩形波制御モードから過変調制御モードに切り替えることを特徴とする回転電機制御システム。
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