JP5412714B2 - 耐熱性に優れたアルミニウム合金板の製造方法、耐熱性および深絞り性に優れたアルミニウム合金板の製造方法 - Google Patents
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rAVE=(r0°+2r45°+r90°)/4
〔ここで、r0°、r45°、r90°はそれぞれ冷延方向に平行、45°、垂直の各方向のランクフォード値である〕
によって定義されたrAVE値が0.7以上であることを特徴とする耐熱性および深絞り性に優れたアルミニウム合金板が提供される。
必須元素であるMnは、Fe、Siとともに鋳造時に5μm以下のサイズのAl-(Fe・Mn)-Si系金属間化合物を均一かつ微細に晶出させ、分散強化による強度アップに寄与する。これら微細な金属間化合物は最終焼鈍時に再結晶粒の核となるが、マトリックス中のMnの固溶量が高く、再結晶阻止作用が強く、最終焼鈍後も圧延集合組織が残存するため、rAVE値を高め深絞り性に優れた板となる。
必須元素であるFeは、Mn、Siと共存させることにより、薄スラブ中にAl-Fe、Al-(Fe・Mn)-Si系化合物などを均一かつ微細に晶出させる。これら微細な金属間化合物は最終焼鈍後も金属組織中に残存するが非常に微細であるため、高温強度が高まる。
必須元素であるSiは、Fe、Mnとともに鋳造時に5μm以下のサイズのAl-(Fe・Mn)-Si系金属間化合物を均一かつ微細に晶出させる。これら微細な金属間化合物は最終焼鈍後も金属組織中に残存するが非常に微細であるため、高温強度が高まる。
必須元素であるCuは、マトリックス中に固溶し、高温強度が高まる。Cu含有量の範囲は、0.05〜0.5%とする。Cu含有量が0.05%未満では最終焼鈍板の強度が低くなりすぎ、0.5%を越えると耐食性が劣化し、いずれも好ましくない。
Tiは0.10%以下ならば含有しても本発明の効果を阻害することはなく、薄スラブの結晶粒微細化剤として作用し、スラブ割れ等の鋳造欠陥を確実に防止することができる。Ti含有量が0.005%未満では、その効果が十分でなく、Ti含有量が0.10%を超える場合には、鋳造時にTiAl3等の粗大な金属間化合物が生成するため、成形性を著しく低下する。したがって、Ti含有量の好ましい範囲は0.005〜0.10%とする。Ti含有量の更に好ましい範囲は、0.005〜0.05%である。
Bは、Tiと混在することで、鋳塊の結晶粒微細化効果が飛躍的に向上する。B含有量が0.0005%未満の場合には、結晶粒微細化効果が十分でなく、スラブ割れ等の鋳造欠陥を確実に防止することが困難である。B含有量が0.01%を超える場合には、鋳塊の結晶粒微細化効果が飽和するだけではなく、最終焼鈍板において、余剰のTiB2の凝集体が介在物として作用する場合があり、深絞り加工時に板表面キズを発生させるなど成形性を低下させる虞がある。したがって、B含有量の好ましい範囲は、0.0005〜0.01%である。
不可避的不純物は、アルミニウム地金、返り材、フラックスなどに含まれる不純物元素、或いは炉材シリカの還元溶出、溶製治具と溶湯との反応などが原因で混入する。Ni、Zn、Ga、V、Ca、Naなどが代表的な元素である。
本発明の耐熱性及び深絞り性に優れたAl−Mn系合金板の製造に用いるスラブは双ベルト式鋳造機により鋳造する。双ベルト式鋳造機とは、上下に対面し水冷されている一対の回転ベルト間に溶湯を注湯してベルト面からの冷却で溶湯を凝固させてスラブとし、ベルトの反注湯側より該スラブを連続して引き出してコイル状に巻き取る方式の鋳造機である。
〔スラブ厚み1/4における凝固冷却速度が20〜200℃/sec〕
本発明においては、鋳造するスラブの厚さは5〜15mmとする。この範囲の厚さであれば、スラブ厚み1/4において20〜200℃/sec程度の凝固冷却速度を確保できるので、均一な鋳造組織を形成し易く、マトリックス中へのMnの固溶量を確保することができる。また、鋳造凝固時に生成される金属間化合物のサイズを5μm以下に抑えることが可能となり、深絞り性および耐熱性に優れたアルミニウム合金板を製造することができる。
上記のスラブ厚さ範囲は、ベルト式鋳造機の実行面からも適当である。すなわち、スラブ厚さが5mm未満であると、単位時間当りに鋳造機を通過するアルミニウム合金量が少なくなり過ぎて、鋳造自体が困難になる。スラブ厚さが15mmを超えると、コイルとして巻き取ることが困難になる。
本発明においては、コイルに巻き取った薄スラブに均質化処理、中間焼鈍を施すことなく最終板厚まで冷間圧延する。均質化処理、中間焼鈍を施さないため、マトリックス中に過飽和に固溶されたMnは、そのまま維持され、耐熱性に優れた板を製造できる。さらに、これらマトリックス中に固溶されたMnなどの遷移金属元素は転位の動きを妨げて最終焼鈍での再結晶に必要な歪エネルギーを十分に蓄えることができる。このような理由から、冷間圧延における圧下率は、80〜96%程度が好ましい。
また、この製造方法では、従来法による複雑な工程のうち、両面面削、均質化処理、熱間圧延、中間焼鈍などの工程が省略されるため、製造コストを低く抑えることが可能である。
本発明においては、冷間圧延後に最終焼鈍を行う。この最終焼鈍は、バッチ焼鈍炉で実施してもよいが、連続焼鈍炉(CAL)で実施する方が好ましい。連続焼鈍炉(CAL)とは、コイルを連続的に溶体化処理等するための設備であり、熱処理を施すための誘導加熱装置や水冷するための水槽および空冷するためのエアノズル等を備えたことを特徴としている。
連続焼鈍による焼鈍温度は450〜550℃の範囲とする。450℃未満であると、再結晶が十分ではないため、深絞り性が低下する。550℃を超えると、再結晶粒が粗大化し最終焼鈍板の強度が低下して好ましくない。
最終焼鈍は、焼鈍炉でバッチ焼鈍を実施してもよい。バッチ焼鈍の焼鈍温度は390〜450℃の範囲とする。390℃未満であると、再結晶が十分ではないため、深絞り性が低下する。450℃を超えると、再結晶粒が粗大化し最終焼鈍板の強度が低下して好ましくない。
CC材については、表1に示す合金組成のアルミニウム合金溶湯を溶解炉で溶製し、セラミックスフィルターを通して濾過し、双ベルト式連続鋳造機で10mmの厚みのスラブを鋳造してコイルに巻き取った。鋳造したスラブはその後、均質化処理、中間焼鈍を施すことなく、最終板厚1mmまで冷間圧延した。この冷間圧延板の調質は、H18である。
その後、CC材(H18材、O材)、DC材(H18材、O材)について、マトリックス中のMnの固溶量は、熱フェノール法で測定した。具体的に記載すると、板を熱フェノールで分解し、フィルター濾過した溶液をクエン酸で抽出した後、ICP発光分光分析法で測定した。結果を表2に示す。CC材におけるMn固溶量とMn含有量との比率は40%以上で、DC材における比率は10%以下である。
さらに各板材から、圧延平行方向の引張試験片を切り出し加工して、200℃、300℃、400℃の各温度において温間引張試験を行い、耐力、引張強さを測定した。結果を表3に示す。
焼鈍後の各板材から、圧延平行方向、圧延45°方向、圧延垂直方向の引張試験片を切り出し、室温引張試験を行って、r値(ランクフォード値)を計測し、前記3方向の平均値であるrAVE値を以下の式で算出した。結果を表4に示す。
rAVE=(r0°+2r45°+r90°)/4
Claims (3)
- 質量%で、Si:0.37〜0.79%、Fe:0.54〜0.62%、Mn:0.5〜2.0%、Cu:0.07〜0.11%を含有し、残部がAlおよび不可避的不純物からなり、冷延されたままの状態であり、マトリックスのMn固溶量はMn含有量の40%以上で、200℃における耐力が130MPa以上、引張強さが140MPa以上であるアルミニウム合金板の製造方法であって、上記組成の溶湯を双ベルト式鋳造機にて、スラブ厚みの1/4の部位における凝固冷却速度20〜200℃/secで厚み5〜15mmのスラブに鋳造し、該スラブを直接コイルに巻き取り、均質化処理、中間焼鈍を施すことなく、圧下率80〜96%の冷間圧延を施すことを特徴とする耐熱性に優れたアルミニウム合金板の製造方法。
- 質量%で、Si:0.37〜0.79%、Fe:0.54〜0.62%、Mn:0.5〜2.0%、Cu:0.07〜0.11%を含有し、残部がAlおよび不可避的不純物からなり、冷延後に焼鈍された状態であり、マトリックスのMn固溶量はMn含有量の40%以上で、200℃における耐力が50MPa以上、引張強さが70MPa以上であり、下記式:
rAVE=(r0°+2r45°+r90°)/4
〔ここで、r0°、r45°、r90°はそれぞれ冷延方向に平行、45°、垂直の各方向のランクフォード値である〕
によって定義されたrAVE値が0.7以上であるアルミニウム合金板の製造方法であって、上記組成の溶湯を双ベルト式鋳造機にて、スラブ厚みの1/4の部位における凝固冷却速度20〜200℃/secで厚み5〜15mmのスラブに鋳造し、該スラブを直接コイルに巻き取り、均質化処理、中間焼鈍を施すことなく、圧下率80〜96%の冷間圧延を施した後、連続焼鈍炉にて450〜550℃で連続焼鈍を施すことを特徴とする耐熱性および深絞り性に優れたアルミニウム合金板の製造方法。 - 質量%で、Si:0.37〜0.79%、Fe:0.54〜0.62%、Mn:0.5〜2.0%、Cu:0.07〜0.11%を含有し、残部がAlおよび不可避的不純物からなり、冷延後に焼鈍された状態であり、マトリックスのMn固溶量はMn含有量の40%以上で、200℃における耐力が50MPa以上、引張強さが70MPa以上であり、下記式:
rAVE=(r0°+2r45°+r90°)/4
〔ここで、r0°、r45°、r90°はそれぞれ冷延方向に平行、45°、垂直の各方向のランクフォード値である〕
によって定義されたrAVE値が0.7以上であるアルミニウム合金板の製造方法であって、上記組成の溶湯を双ベルト式鋳造機にて、スラブ厚みの1/4の部位における凝固冷却速度20〜200℃/secで厚み5〜15mmのスラブに鋳造し、該スラブを直接コイルに巻き取り、均質化処理、中間焼鈍を施すことなく、圧下率80〜96%の冷間圧延を施した後、焼鈍炉にて390〜450℃でバッチ焼鈍を施すことを特徴とする耐熱性および深絞り性に優れたアルミニウム合金板の製造方法。
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