JP5412714B2 - 耐熱性に優れたアルミニウム合金板の製造方法、耐熱性および深絞り性に優れたアルミニウム合金板の製造方法 - Google Patents

耐熱性に優れたアルミニウム合金板の製造方法、耐熱性および深絞り性に優れたアルミニウム合金板の製造方法 Download PDF

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本発明は、耐熱性に優れたアルミニウム合金板、耐熱性および深絞り性に優れたアルミニウム合金板およびそれらの製造方法に関する。
JIS3000系のAl−Mn系アルミニウム合金板は、成形性および耐食性に優れ、塗装焼付け後の耐力の低下が少なく、アルミニウム缶、電気・機械機器など成形加工用の板として広く用いられてきた。
加えて、電池ケース用アルミニウム板、エンジンカバーなど、耐熱性が要求される部品の素材として最適で、焼鈍材として成形性も良好なJIS3000系合金板を安価に供給することが求められている。
耐熱特性に関して、特許文献1では、Mn1.8〜2.8重量%を溶解したアルミニウム溶湯を対向して設けた一対の冷却したロール間を通過させることによって冷却固化して厚さ4〜10mmの板状鋳塊とし、つぎにこれを冷間圧延することを特徴とする耐熱アルミニウム板材の製造方法が開示されている。
しかしながら、ここで検討されている合金特性は、電気炉中で300〜450℃に加熱焼鈍された冷延板の室温引張試験の0.2%耐力であり、いわゆる耐軟化特性に優れた耐熱アルミニウム板材の製造方法を示しているに過ぎない。また、成形性に関する記述は一切見られない。
一方、成形性に関して、特許文献2では、Al−Mn−Mg系アルミニウム合金板の製造条件、特に熱間圧延の条件、およびその後の焼鈍条件を適切に設定し、最終板におけるMn固溶量0.16%を超え、DI成形性に優れるとともに、DI成形、塗装焼付処理後の缶胴縁部の成形性にも優れたアルミニウム合金板が提唱されている。
具体的には、Al−Mn−Mg系合金をDC鋳造法で鋳造し、530〜600℃で均質化処理、さらに熱間圧延の終了温度を250〜320℃、上がり板厚2.5mmを超え3.5mm以下として熱間圧延を行ない、第1段焼鈍を加熱速度100℃/hr以下、330〜400℃×1〜10時間で行ない、続いて第2段焼鈍を450〜600℃×10分以内行ない、その後85%以上の冷間圧延を施して、Mn固溶量0.16%を超えるアルミニウム合金板を得るものである。
特許文献3では、缶底(ボトム)成形時しわ性に優れ、かつ塗装焼付後の耐熱軟化性に優れた飲料缶胴用アルミニウム合金板の製造方法が提唱されている。
具体的には、重量比でMg:0.8〜1.5%、Mn:0.5〜1.5%、Fe:0.35〜0.5%、Si:0.20〜0.35%、Cu:0.1〜0.3%、Ti:0.1%以下、B:0.05%以下を含有し、残部Alと不可避的成分を含むアルミニウム合金鋳塊を製造ならびに面削後、550〜620℃の温度域で均質化処理を施し、次いで、熱間圧延を施す際に、均質化処理後熱間粗圧延までの間、熱間粗圧延の開始温度として予め設定される温度域の上限以下の温度域における昇温速度ならびに冷却速度を40℃/時間以上とし、熱間粗圧延を熱間粗圧延の開始温度として予め設定された温度域で行った後、熱間粗圧延の終了から熱間仕上圧延の開始までの滞在時間(HR−HT時間)を20分以内として熱間仕上圧延を出側温度300〜350℃として行い、次いで、冷間圧延を最終パスの出側温度140℃以上の温度とし、冷間圧延最終圧延以外の圧延パスの出側温度を110℃以下として行った後、冷間圧延を行った後の冷却を80℃までの冷却速度を15〜30℃/時間として行うことを特徴とする飲料缶胴用アルミニウム合金板の製造方法が提唱されている。
以上のように従来は、成形加工性に優れ、同時にMnの固溶量を高く保ちながら、耐焼付軟化性に優れたAl−Mn系アルミニウム合金板を製造するためには、熱間圧延終了時のスラブ温度を適正な範囲に収め、さらに冷間圧延後、所定の中間焼鈍処理、所定の冷間圧延率で冷間圧延し、さらに所定の最終焼鈍処理を施す必要があり、工程が複雑化するためにコストアップとなるという欠点があった。
特開昭49−9414号公報 特開平8−13109号公報 特開2006−291326号公報
本発明は、複雑な工程を必要とせずに製造できる、耐熱性に優れたアルミニウム合金板および耐熱性および深絞り性に優れたアルミニウム合金板、およびこれらの製造方法を提供することを目的とする。
上記の目的を達成するために、第1発明によれば、質量%で、Si:0.05〜1.0%、Fe:0.05〜1.0%、Mn:0.5〜2.0%、Cu:0.05〜0.5%を含有し、残部がAlおよび不可避的不純物からなり、冷延されたままの状態であり、マトリックスのMn固溶量はMn含有量の40%以上で、200℃における耐力が130MPa以上、引張強さが140MPa以上であることを特徴とする耐熱性に優れたアルミニウム合金板が提供される。
第1発明のアルミニウム合金板を製造する方法は、上記組成の溶湯を双ベルト式鋳造機にて、スラブ厚みの1/4の部位における凝固冷却速度20〜200℃/secで厚み5〜15mmのスラブに鋳造し、冷間圧延を施すことを特徴とする。
更に、第2発明によれば、質量%で、Si:0.05〜1.0%、Fe:0.05〜1.0%、Mn:0.5〜2.0%、Cu:0.05〜0.5%を含有し、残部がAlおよび不可避的不純物からなり、冷延後に焼鈍された状態であり、マトリックスのMn固溶量はMn含有量の40%以上で、200℃における耐力が50MPa以上、引張強さが70MPa以上であり、下記式:
AVE=(r0°+2r45°+r90°)/4
〔ここで、r0°、r45°、r90°はそれぞれ冷延方向に平行、45°、垂直の各方向のランクフォード値である〕
によって定義されたrAVE値が0.7以上であることを特徴とする耐熱性および深絞り性に優れたアルミニウム合金板が提供される。
第2発明のアルミニウム合金板を製造する方法は、第1の観点によれば、上記組成の溶湯を双ベルト式鋳造機にて、スラブ厚みの1/4の部位における凝固冷却速度20〜200℃/secで厚み5〜15mmのスラブに鋳造し、冷間圧延を施した後、連続焼鈍炉にて450〜550℃で連続焼鈍を施すことを特徴とする。
第2発明のアルミニウム合金板を製造する方法は、第2の観点によれば、上記組成の溶湯を双ベルト式鋳造機にて、スラブ厚みの1/4の部位における凝固冷却速度20〜200℃/secで厚み5〜15mmのスラブに鋳造し、冷間圧延を施した後、焼鈍炉にて390〜450℃でバッチ焼鈍を施すことを特徴とする。
JIS3000系相当の組成において、双ベルト鋳造機により凝固冷却速度を限定し、Mn含有量に対するMn固溶量の比率を限定したことにより、冷延板としては耐熱性に優れ、焼鈍板としては耐熱性および深絞り性に優れた、アルミニウム合金板が得られる。
本発明者は、JIS3000系に相当する組成のAl−Mn系合金溶湯をベルト式鋳造機にて、スラブ厚み1/4箇所における凝固冷却速度20〜200℃/secで厚み5〜15mmのスラブに鋳造し、冷間圧延を施した後、(1)連続焼鈍炉にて450〜550℃で連続焼鈍を施すか、または(2)焼鈍炉にて390〜450℃でバッチ焼鈍を施すことにより、深絞り性および耐熱性に優れたアルミニウム合金板を製造することができることを見出した。
この製造方法によると、従来のDC鋳造機によるスラブ鋳造、両面面削、均質化処理、熱間圧延、その後の中間焼鈍などのプロセスが不要となるため、大幅にコストを低減することができる。
本発明によると、質量%で、Si:0.05〜1.0%、Fe:0.05〜1.0%、Mn:0.5〜2.0%、Cu:0.05〜0.5%を含有し、残部が実質的にAlおよび不可避的不純物からなる合金溶湯を双ベルト式鋳造機によって厚み5〜15mmのスラブに鋳造する。スラブ厚み1/4箇所における凝固冷却速度を20〜200℃/secと比較的速くすることができるため、マトリクスからのMnの析出が抑制され、マトリックス中のMn固溶量を高くすることができる。
このスラブを直接コイルに巻き取り、中間焼鈍を施すことなく、最終ゲージまで冷間圧延を施すことにより、耐熱性に優れたAl−Mn系アルミニウム合金板とすることができる。さらに、最終焼鈍処理として、(1)連続焼鈍炉にて450〜550℃で連続焼鈍を施すか、または(2)焼鈍炉にて390〜450℃でバッチ焼鈍を施すことにより、調質を行うことにより、深絞り性および耐熱性に優れたAl−Mn系アルミニウム合金板とすることができる。
次に本発明の合金成分の意義および限定理由について説明する。本願においては、特に断りのない限り、「%」は「質量%」を意味する。
〔Mn:0.5〜2.0%〕
必須元素であるMnは、Fe、Siとともに鋳造時に5μm以下のサイズのAl-(Fe・Mn)-Si系金属間化合物を均一かつ微細に晶出させ、分散強化による強度アップに寄与する。これら微細な金属間化合物は最終焼鈍時に再結晶粒の核となるが、マトリックス中のMnの固溶量が高く、再結晶阻止作用が強く、最終焼鈍後も圧延集合組織が残存するため、rAVE値を高め深絞り性に優れた板となる。
また、薄スラブ連続鋳造機では、溶湯の凝固冷却速度が速いため、Mnが過飽和に固溶する傾向が大きくなり、均質化処理、中間焼鈍を施さない本発明においては、最終板におけるマトリックス中のMn固溶量がMn含有量の40%以上となる。マトリックスに固溶されたMnは最終焼鈍後も圧延集合組織を残存させ、深絞り性に優れた板となる。しかも、高温保持による強度は、従来法によるDC材に比較して高くなり、耐熱性にも優れた板となる。
Mn含有量の範囲は、0.5〜2.0%とする。Mn含有量が0.5%未満ではその効果が十分でなく、耐熱性が低下する。2.0%を超えると鋳造時に粗大な金属間化合物を生じやすく、深絞り性を劣化させる。好ましいMn含有量は、0.5〜1.7%である。
〔Fe:0.05〜1.0%〕
必須元素であるFeは、Mn、Siと共存させることにより、薄スラブ中にAl-Fe、Al-(Fe・Mn)-Si系化合物などを均一かつ微細に晶出させる。これら微細な金属間化合物は最終焼鈍後も金属組織中に残存するが非常に微細であるため、高温強度が高まる。
Fe含有量の範囲は0.05〜1.0%とする。Fe含有量が0.05%未満では最終板の強度が低くなりすぎ、1.0%を越えると鋳造時に粗大な金属間化合物を生じやすく、深絞り成形性を劣化させる可能性があり好ましくないからである。Fe含有量の好ましい範囲は、0.05〜0.8%である。
〔Si:0.05〜1.0%〕
必須元素であるSiは、Fe、Mnとともに鋳造時に5μm以下のサイズのAl-(Fe・Mn)-Si系金属間化合物を均一かつ微細に晶出させる。これら微細な金属間化合物は最終焼鈍後も金属組織中に残存するが非常に微細であるため、高温強度が高まる。
Si含有量の範囲は0.05〜1.0%とする。Si含有量が0.05%未満では最終板の強度が低くなりすぎ、1.0%を越えると鋳造時に粗大な金属間化合物を生じやすく、深絞り成形性を劣化させる可能性があり、いずれも好ましくない。Si含有量の好ましい範囲は、0.05〜0.8%である。
〔Cu:0.05〜0.5%〕
必須元素であるCuは、マトリックス中に固溶し、高温強度が高まる。Cu含有量の範囲は、0.05〜0.5%とする。Cu含有量が0.05%未満では最終焼鈍板の強度が低くなりすぎ、0.5%を越えると耐食性が劣化し、いずれも好ましくない。
〔任意元素:Ti〕
Tiは0.10%以下ならば含有しても本発明の効果を阻害することはなく、薄スラブの結晶粒微細化剤として作用し、スラブ割れ等の鋳造欠陥を確実に防止することができる。Ti含有量が0.005%未満では、その効果が十分でなく、Ti含有量が0.10%を超える場合には、鋳造時にTiAl等の粗大な金属間化合物が生成するため、成形性を著しく低下する。したがって、Ti含有量の好ましい範囲は0.005〜0.10%とする。Ti含有量の更に好ましい範囲は、0.005〜0.05%である。
〔任意元素:B〕
Bは、Tiと混在することで、鋳塊の結晶粒微細化効果が飛躍的に向上する。B含有量が0.0005%未満の場合には、結晶粒微細化効果が十分でなく、スラブ割れ等の鋳造欠陥を確実に防止することが困難である。B含有量が0.01%を超える場合には、鋳塊の結晶粒微細化効果が飽和するだけではなく、最終焼鈍板において、余剰のTiBの凝集体が介在物として作用する場合があり、深絞り加工時に板表面キズを発生させるなど成形性を低下させる虞がある。したがって、B含有量の好ましい範囲は、0.0005〜0.01%である。
〔不可避的不純物〕
不可避的不純物は、アルミニウム地金、返り材、フラックスなどに含まれる不純物元素、或いは炉材シリカの還元溶出、溶製治具と溶湯との反応などが原因で混入する。Ni、Zn、Ga、V、Ca、Naなどが代表的な元素である。
本発明の製造方法の諸条件を限定した理由を説明する。
本発明の耐熱性及び深絞り性に優れたAl−Mn系合金板の製造に用いるスラブは双ベルト式鋳造機により鋳造する。双ベルト式鋳造機とは、上下に対面し水冷されている一対の回転ベルト間に溶湯を注湯してベルト面からの冷却で溶湯を凝固させてスラブとし、ベルトの反注湯側より該スラブを連続して引き出してコイル状に巻き取る方式の鋳造機である。
〔双ベルト式鋳造機により鋳造した厚さ5〜15mmのスラブを巻き取り〕
〔スラブ厚み1/4における凝固冷却速度が20〜200℃/sec〕
本発明においては、鋳造するスラブの厚さは5〜15mmとする。この範囲の厚さであれば、スラブ厚み1/4において20〜200℃/sec程度の凝固冷却速度を確保できるので、均一な鋳造組織を形成し易く、マトリックス中へのMnの固溶量を確保することができる。また、鋳造凝固時に生成される金属間化合物のサイズを5μm以下に抑えることが可能となり、深絞り性および耐熱性に優れたアルミニウム合金板を製造することができる。
上記のスラブ厚さ範囲は、ベルト式鋳造機の実行面からも適当である。すなわち、スラブ厚さが5mm未満であると、単位時間当りに鋳造機を通過するアルミニウム合金量が少なくなり過ぎて、鋳造自体が困難になる。スラブ厚さが15mmを超えると、コイルとして巻き取ることが困難になる。
〔薄スラブに均質化処理、中間焼鈍を施すことなく〕
本発明においては、コイルに巻き取った薄スラブに均質化処理、中間焼鈍を施すことなく最終板厚まで冷間圧延する。均質化処理、中間焼鈍を施さないため、マトリックス中に過飽和に固溶されたMnは、そのまま維持され、耐熱性に優れた板を製造できる。さらに、これらマトリックス中に固溶されたMnなどの遷移金属元素は転位の動きを妨げて最終焼鈍での再結晶に必要な歪エネルギーを十分に蓄えることができる。このような理由から、冷間圧延における圧下率は、80〜96%程度が好ましい。
また、この製造方法では、従来法による複雑な工程のうち、両面面削、均質化処理、熱間圧延、中間焼鈍などの工程が省略されるため、製造コストを低く抑えることが可能である。
〔連続焼鈍炉にて450〜550℃で連続焼鈍を施す〕
本発明においては、冷間圧延後に最終焼鈍を行う。この最終焼鈍は、バッチ焼鈍炉で実施してもよいが、連続焼鈍炉(CAL)で実施する方が好ましい。連続焼鈍炉(CAL)とは、コイルを連続的に溶体化処理等するための設備であり、熱処理を施すための誘導加熱装置や水冷するための水槽および空冷するためのエアノズル等を備えたことを特徴としている。
連続焼鈍による焼鈍温度は450〜550℃の範囲とする。450℃未満であると、再結晶が十分ではないため、深絞り性が低下する。550℃を超えると、再結晶粒が粗大化し最終焼鈍板の強度が低下して好ましくない。
連続焼鈍炉における焼鈍温度での保持時間は40秒以内とする。40秒以上の保持時間の場合、ライン速度を下げる必要があり、生産性を低下させるため好ましくない。
〔焼鈍炉にて390〜450℃でバッチ焼鈍を施す〕
最終焼鈍は、焼鈍炉でバッチ焼鈍を実施してもよい。バッチ焼鈍の焼鈍温度は390〜450℃の範囲とする。390℃未満であると、再結晶が十分ではないため、深絞り性が低下する。450℃を超えると、再結晶粒が粗大化し最終焼鈍板の強度が低下して好ましくない。
焼鈍温度での保持時間は1〜10時間の範囲とする。保持時間1時間未満の場合、昇温速度にもよるが、コイル全体が均一に加熱されないため、均一で微細な再結晶組織が得られない。保持時間10時間を超える場合、生産コストが掛かりすぎるため好ましくない。
〔サンプルの製造〕
CC材については、表1に示す合金組成のアルミニウム合金溶湯を溶解炉で溶製し、セラミックスフィルターを通して濾過し、双ベルト式連続鋳造機で10mmの厚みのスラブを鋳造してコイルに巻き取った。鋳造したスラブはその後、均質化処理、中間焼鈍を施すことなく、最終板厚1mmまで冷間圧延した。この冷間圧延板の調質は、H18である。
Figure 0005412714
DC材については、表1に示す合金組成のアルミニウム合金溶湯をDC鋳造機にて1200mm×500mm×3800mmのスラブに鋳造し、両面面削した後、熱処理炉にて550℃×12hrsの均質化処理を行い、引き続き熱間圧延機にて、熱延を行って、6mm厚さの熱間圧延板をコイルに巻き取った。その後、中間焼鈍することなく、最終板厚1mmまで冷間圧延した。この冷間圧延板の調質も、H18である。
CC材冷延板は、連続焼鈍炉(CAL:continuous annealing line)にて、保持温度525℃で焼鈍し、DC材冷延板は、同じく連続焼鈍炉にて、保持温度525℃で焼鈍を行った。これらの最終焼鈍板の調質は、いずれも「O」である。
〔Mn固溶量の測定〕
その後、CC材(H18材、O材)、DC材(H18材、O材)について、マトリックス中のMnの固溶量は、熱フェノール法で測定した。具体的に記載すると、板を熱フェノールで分解し、フィルター濾過した溶液をクエン酸で抽出した後、ICP発光分光分析法で測定した。結果を表2に示す。CC材におけるMn固溶量とMn含有量との比率は40%以上で、DC材における比率は10%以下である。
Figure 0005412714
〔耐熱性(高温強度)〕
さらに各板材から、圧延平行方向の引張試験片を切り出し加工して、200℃、300℃、400℃の各温度において温間引張試験を行い、耐力、引張強さを測定した。結果を表3に示す。
Figure 0005412714
冷間圧延板(H18材)および最終焼鈍後の各板材(O材)について、CC材はDC材に比べ、各温度における耐力、引張強さともに高いことが判った。
CC材(H18材)は、200℃で耐力130MPa以上、引張強さ140MPa以上であり、300℃で耐力40MPa以上、引張強さ50MPa以上であり、400℃で耐力25MPa以上、引張強さ30MPa以上であった。
CC材(O材)は、200℃で耐力50MPa以上、引張強さ70MPa以上であり、300℃で耐力40MPa以上、引張強さ50MPa以上であり、400℃で耐力25MPa以上、引張強さ30MPa以上であった。
〔深絞り性〕
焼鈍後の各板材から、圧延平行方向、圧延45°方向、圧延垂直方向の引張試験片を切り出し、室温引張試験を行って、r値(ランクフォード値)を計測し、前記3方向の平均値であるrAVE値を以下の式で算出した。結果を表4に示す。
AVE=(r0°+2r45°+r90°)/4
Figure 0005412714
表4に示したように、CC材はDC材に比較してrAVE値が高く、深絞り性に優れることが判った。
本発明によれば、複雑な工程を必要とせずに製造できる、耐熱性に優れたアルミニウム合金板および耐熱性および深絞り性に優れたアルミニウム合金板、およびこれらの製造方法が提供される。

Claims (3)

  1. 質量%で、Si:0.370.79%、Fe:0.540.62%、Mn:0.5〜2.0%、Cu:0.070.11%を含有し、残部がAlおよび不可避的不純物からなり、冷延されたままの状態であり、マトリックスのMn固溶量はMn含有量の40%以上で、200℃における耐力が130MPa以上、引張強さが140MPa以上であるアルミニウム合金板の製造方法であって、上記組成の溶湯を双ベルト式鋳造機にて、スラブ厚みの1/4の部位における凝固冷却速度20〜200℃/secで厚み5〜15mmのスラブに鋳造し、該スラブを直接コイルに巻き取り、均質化処理、中間焼鈍を施すことなく、圧下率80〜96%の冷間圧延を施すことを特徴とする耐熱性に優れたアルミニウム合金板の製造方法。
  2. 質量%で、Si:0.370.79%、Fe:0.540.62%、Mn:0.5〜2.0%、Cu:0.070.11%を含有し、残部がAlおよび不可避的不純物からなり、冷延後に焼鈍された状態であり、マトリックスのMn固溶量はMn含有量の40%以上で、200℃における耐力が50MPa以上、引張強さが70MPa以上であり、下記式:
    AVE=(r0°+2r45°+r90°)/4
    〔ここで、r0°、r45°、r90°はそれぞれ冷延方向に平行、45°、垂直の各方向のランクフォード値である〕
    によって定義されたrAVE値が0.7以上であるアルミニウム合金板の製造方法であって、上記組成の溶湯を双ベルト式鋳造機にて、スラブ厚みの1/4の部位における凝固冷却速度20〜200℃/secで厚み5〜15mmのスラブに鋳造し、該スラブを直接コイルに巻き取り、均質化処理、中間焼鈍を施すことなく、圧下率80〜96%の冷間圧延を施した後、連続焼鈍炉にて450〜550℃で連続焼鈍を施すことを特徴とする耐熱性および深絞り性に優れたアルミニウム合金板の製造方法。
  3. 質量%で、Si:0.370.79%、Fe:0.540.62%、Mn:0.5〜2.0%、Cu:0.070.11%を含有し、残部がAlおよび不可避的不純物からなり、冷延後に焼鈍された状態であり、マトリックスのMn固溶量はMn含有量の40%以上で、200℃における耐力が50MPa以上、引張強さが70MPa以上であり、下記式:
    AVE=(r0°+2r45°+r90°)/4
    〔ここで、r0°、r45°、r90°はそれぞれ冷延方向に平行、45°、垂直の各方向のランクフォード値である〕
    によって定義されたrAVE値が0.7以上であるアルミニウム合金板の製造方法であって、上記組成の溶湯を双ベルト式鋳造機にて、スラブ厚みの1/4の部位における凝固冷却速度20〜200℃/secで厚み5〜15mmのスラブに鋳造し、該スラブを直接コイルに巻き取り、均質化処理、中間焼鈍を施すことなく、圧下率80〜96%の冷間圧延を施した後、焼鈍炉にて390〜450℃でバッチ焼鈍を施すことを特徴とする耐熱性および深絞り性に優れたアルミニウム合金板の製造方法。
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