JP5410767B2 - 次亜塩素酸水溶液の連続自動生成器 - Google Patents

次亜塩素酸水溶液の連続自動生成器 Download PDF

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Description

本発明は、次亜塩素酸ナトリウム溶液と希塩酸、酢酸等の酸性溶液を安定的に混合し、次亜塩素酸を高濃度に含有する水溶液を連続的かつ自動的に生成する装置に関する。
次亜塩素酸塩、特に次亜塩素酸ナトリウムは安価で手に入り、取扱いが容易なことから、病院や厨房等において殺菌剤として広く用いられている。例えば、病院においては医療器具の殺菌、リネンの殺菌、厨房においては調理器具の殺菌、野菜、肉、魚介類等の食品の殺菌に用いられている。
ところで次亜塩素酸ナトリウムよりも次亜塩素酸の方が殺菌力が強いことが明らかとなっており、pH5付近で溶液中の次亜塩素酸の存在比が最も高くなることが公知である。特許文献1の図3には各pHにおける次亜塩素酸の存在比率のグラフが掲載されている。同特許文献によると殺菌作用は非解離の次亜塩素酸(HClO)の状態の殺菌力が最も高く、次亜塩素酸イオンの殺菌力の8倍とも80倍とも言われていると記載されている。
近年では、次亜塩素酸ナトリウムと希塩酸や酢酸等の酸性溶液を混合して、pHを5付近に調整した次亜塩素酸を高濃度に含有する水溶液(以下、次亜塩素酸水溶液又は殺菌水と称する)を調整する装置が提案されている。
例えば、特許文献2においては、酸水溶液を貯蔵している酸水溶液貯蔵タンクと、該酸水溶液貯蔵タンクの酸水溶液を供給する酸水溶液供給手段と、該酸水溶液供給手段によって供給された酸水溶液と水供給源から流量センサーを介して供給された水を混合する希釈混合部と、次亜塩素酸ナトリウム水溶液を貯蔵している次亜塩素酸ナトリウム水溶液貯蔵タンクと、該次亜塩素酸ナトリウム水溶液貯蔵タンクの次亜塩素酸ナトリウム水溶液を供給する次亜塩素酸ナトリウム水溶液供給手段と、該希釈混合部で得られた希釈酸水溶液に該次亜塩素酸ナトリウム水溶液供給手段によって供給された次亜塩素酸ナトリウム水溶液を加えて希釈酸水溶液と次亜塩素酸ナトリウム水溶液を混合させる混合反応部と、該混合反応部で生成された殺菌水のpH値を測定するpHセンサーと、該pHセンサーによって測定されたpH値及び該流量センサーによって得られた流量に基づいて該酸水溶液供給手段及び該次亜塩素酸ナトリウム水溶液供給手段を制御する制御装置とを備えたことを特徴とする殺菌水の連続生成装置が開示されている。
また、特許文献3では2つの混合器(希釈槽15、反応槽35)で別々に次亜塩素酸ナトリウム溶液の希釈並びにその希釈された次亜塩素酸ナトリウム溶液及び酸の混合を行う方法及び装置が開示されている。この装置によれば、pHが5.0〜6.8に調整された次亜塩素酸水溶液を得ることができるとの記載がある。
特開平6−206076号公報([0002]、[0003]、図3) 特開2005−161142号公報(請求項1) 特開2006−264996号公報([0019]、図1)
水源からの水の供給量が変化しても常にpHが一定で、かつ次亜塩素酸水溶液を高濃度に含有する殺菌水を提供することができる装置を提案することを目的とする。
次亜塩素酸ナトリウム水溶液のpHを5付近に調整することで、高い殺菌作用を有する次亜塩素酸の存在比が高まり殺菌水としての効力が高まることは既述の通りであるが、特許文献2に示されるような従来の装置で殺菌水を調整した場合、装置の吐水口から吐出される水量(水圧)が変化することに起因して、製造される殺菌水のpHが変化してしまうという問題があった(特許文献1[0010])。
装置の水源としては水道水を用いることが最も一般的であるが、先止め式蛇口に生成装置を直結する場合は、当然ながら使用水量が変化するため水圧が一定でなく、使用水量が変化する度に製造される殺菌水のpHが塩基性又は酸性に変化してしまうことが避けられないという問題があった(後述の比較例参照)。pHが5付近(目安として4.5〜5.5)を外れれば、期待されている殺菌能が発揮されず、被殺菌対象物が汚染されたまま使用されることとなり、感染症や食中毒などの深刻な結果をもたらすことになる。それに加えて、殺菌水のpHが強酸性又は強塩基性に偏れば、被殺菌対象物を侵し、手荒れ、酸味、苦味の原因にもなっていた。さらに悪いことには、殺菌水のpHが酸性側に偏ってしまった場合は、塩素ガスの発生のおそれがあるし、塩基性側に殺菌水のpHが偏ってしまった場合は、殺菌効果の低い溶液となりかつスケールの発生の原因ともなるという問題があった。
このような殺菌水のpHの偏りは、適宜の制御手段(例えば特許文献2の制御装置80)によってpHをモニターし、pHの変化に応じて供給する酸と次亜塩素酸ナトリウムの供給量を制御することによって、水量が変化してから数分間で定常値(すなわち、pH5前後)に復帰するよう補正がかかるようになっている。しかし、pHの変化がセンサーによって感知されてから、pHの補正がかかるのはpHが変化した後のことであって、既に吐水口から吐出されている低いpHの殺菌水に対しての補正はできない。また、pHの低下に対して補正をかけたときがちょうど吐水口でpHが上昇する時点であれば、補正をかけるどころかより大きなpHの変動を生み出すことになる。つまり、制御によるpHの補正は数分間持続するpHの設定値からの変動に対して有効であって、1分程度の変化には対応できないものであった。そのためpHが5付近から大きくずれた殺菌能力の低い次亜塩素酸水が供給されるという問題があった。この問題は、特許文献2の如くバッファータンク(撹拌タンクアキュムレータ74)を設けて、タンク内に製造された殺菌水をいったん溜めて撹拌して、極端なpHの偏りを緩和することにより解決することができるが、装置の使用開始直後はバッファータンクが満たされるまでは殺菌水を外部に供給することができないし、装置を長期間使用しない場合はバッファータンク内の殺菌水を排出しなければならないという問題があった。また、バッファータンクを設けた場合、バッファータンクの出口側に電磁弁を設けたり、バッファータンク内の液量をモニターするセンサーを設けたり、バッファータンク内の殺菌水を送り出すポンプを別途設ける必要が生じ、装置がどうしても複雑化、大型化するためコスト的に不利であるという問題があった。
また、引用文献3のように次亜塩素酸ナトリウム溶液の希釈と塩酸と希釈された次亜塩素酸ナトリウム溶液の混合をそれぞれ別々の混合器(希釈槽15、反応槽35)で行う方法も公知である。この方法はいわゆるバッチ式であって次亜塩素酸の希釈と次亜塩素酸溶液と酸の混合を二工程に分けて行う方法である。この方法によれば上述のようなバッファータンクを設ける必要はないが、希釈槽15における混合が終わった後に複数の電磁弁の開閉を制御部61により制御して希釈槽での混合が完了した後に反応槽35での混合に移行するよう調節する必要があり、装置の制御が複雑となってやはり製造コストが高くなったり、装置が大型化してしまうという問題があった。
本発明は酸性溶液、次亜塩素酸ナトリウム溶液及び水源から流量計を介して供給された水を混合するための混合器と、該混合器の下流に配置され混合液のpHを検知するpH検知手段と、該pH検知手段で検知したpH値及び前記の流量計の流量値に基づいて酸性溶液の供給量及び次亜塩素酸ナトリウム溶液の供給量を制御して所定のpHを維持するための制御手段とからなる次亜塩素酸水溶液の自動生成器において、前記の混合器は水平に配置した給水管と、給水管の上流側に下方から接続される酸注入口と、給水管の下流側に下方から接続される次亜塩素酸ナトリウム注入口とからなり、当該次亜塩素酸水溶液の自動生成器は、前記酸注入口に酸性溶液を送り込むポンプと、前記次亜塩素酸ナトリウム注入口に次亜塩素酸ナトリウム溶液を送り込むポンプとを備える次亜塩素酸水溶液の連続自動生成器により上記の課題を解決する。すなわち、本発明は水平又はほぼ水平に配置した給水管に溶媒となる水を通水し、該給水管の下方から希塩酸や酢酸等の酸性水溶液及び次亜塩素酸ナトリウム水溶液をポンプで以って給水管に注入すれば、水源からの水の供給量が変化しても、また、吐出口の水量又は水圧が変化した場合であっても、常にpHが一定の次亜塩素酸水溶液を高濃度に含有する殺菌水が生成されることを見出し、その知見に基づき完成されたものである。
上記の次亜塩素酸ナトリウム注入口を酸注入口の上流に配置した場合であっても、水の供給量が変化しても常にpHが一定の次亜塩素酸水溶液を高濃度に含有する殺菌水を生成することができるが、この場合、先に次亜塩素酸ナトリウムが給水管に注入されるため給水管の内部が強アルカリ性となるために、水中のカルシウムイオンやマグネシウムイオンが炭酸カルシウムや炭酸マグネシウムとして析出し、スケールとして注入口に付着するという問題を生じる。このことは重大な問題であって、次亜塩素酸ナトリウムが設定量注入されなくなり、濃度、pHが極端に低下し、殺菌効力が著しく低下した液を吐出することになる。地域に差があるものの、カルシウムが多く含まれる水源では1ヶ月に一回注入口のメンテナンスを要することがあった。したがって、本発明ではスケールの付着を防止する観点から、給水管の通水方向の上流に酸注入口を、下流側に次亜塩素酸ナトリウム注入口を設ける必要がある。また、上流に酸注入口を配置しておけば、経年時のスケール除去の際、次亜塩素酸ナトリウム水溶液の注入を止めて塩酸のみを注入することで、注入口の酸洗浄が行えるので好ましい。
より具体的には、水平に配置した給水管の流水方向に対して垂直な断面の管芯から見た鉛直下方を基準の0°とし、水平右方向を90°、鉛直上方向を±180°、水平左方向を−90°としたときに、酸注入口と次亜塩素酸ナトリウム注入口の管芯からの接続角度が共に−60〜60°の範囲に収まる角度で給水管に接続することが好ましい。
給水管の角度を傾斜させた場合や、垂直に配置した場合には、水量が変化した際のpHの変動量が大きくなってしまうため、混合器の給水管は水平であることが最も好ましい。ただ装置内の各部品の配置の関係上、混合器を傾けて配置せざるを得ない場合は、多少傾斜させても構わない。
さらに、水平に配置した給水管の流水方向に対して垂直な断面の管芯から見た鉛直下方を基準の0°とし、水平右方向を90°、鉛直上方向を±180°、水平左方向を−90°としたときに、酸注入口と次亜塩素酸ナトリウム注入口の管芯からの接続角度が共に−75〜75°の範囲に収まる角度で給水管に接続し、かつ、酸注入口と次亜塩素酸ナトリウム注入口の管芯からの接続角度が相等しくなるようにしてもよい。この場合、酸及び次亜塩素酸ナトリウム注入口が共に−75〜75°の範囲に収まるように配置すれば、後述するようにpHのアルカリ側への変動を最大で0.5以内、酸性側への変動を最大で0.3以内に抑えることができる。また、上記の範囲を−45〜45°の範囲とすれば、pHのアルカリ側への変動をごく小さくすることができるのでより好ましい。
本発明で使用する酸性溶液としては、希塩酸が好適に用いられるが、他にも酢酸、ギ酸、リン酸等の弱酸、希釈した強酸を使用し得る。用いる酸性溶液の濃度についても特に限定はないが、極端に濃度が低いと酸溶液を収めておくタンク5が大型化してしまうし、極端に濃度が高いと混合器に注入する酸性溶液の量がごく微量となり、制御装置によるpHの調節が困難となるし、また流路の腐食等の問題が生じる。したがって酸性溶液として塩酸を選択する場合は4〜10%を目安とするとよい。
本発明では次亜塩素酸ナトリウムが好適に用いられるが、その他の次亜塩素酸塩、例えば次亜塩素酸カリウム、次亜塩素酸カルシウム、次亜塩素酸セシウム等も使用し得る。また、亜塩素酸カリウム、亜塩素酸カルシウム、亜塩素酸ナトリウム、亜塩素酸セシウム等の亜塩素酸塩も使用することができる。用いる次亜塩素酸ナトリウム溶液等の濃度については特に限定はないが、極端に濃度が低いと溶液を収めておくタンク10が大型化してしまうし、極端に濃度が高いと混合器に注入する溶液の量がごく微量となり、制御装置による有効塩素濃度の調節が困難となるので、溶液として次亜塩素酸ナトリウムを選択した場合、4〜12%とするとよい。
本発明の次亜塩素酸水の連続生成器によれば水源からの水の供給量が変化しても、また、吐水量が変化した場合であっても殺菌水のpHの変化がなく、以て次亜塩素酸の存在比を高めた殺菌水を安定して連続的に製造することができる。したがって、蛇口に直接に本発明の次亜塩素酸水の連続生成器を繋いで使用することが可能となる。
本発明の次亜塩素酸水の連続生成器は小型の混合器を備えており、該混合器を採用することにより生成する次亜塩素酸水のpHを安定化させるバッファータンクが不要になり、装置を小型することができる。これにより厨房の流しの下等の限られたスペースに収納することが可能となる。また、該混合器を採用することにより、装置の構成を簡素化することができ、故障しにくく、また故障したとしても修理が容易な次亜塩素酸水の連続生成器とすることができる。
本発明の混合器のみを拡大して示した断面図である。 図1の混合器の断面と酸及び次亜塩素酸ナトリウム水溶液の注入角度を示した図である。 本発明の次亜塩素酸水連続生成器の構成を模式的に示した図である。 実施例1の結果を示したグラフである。 実施例2の結果を示したグラフである。 比較例1の結果を示したグラフである。 比較例2の結果を示したグラフである。 比較例3の結果を示したグラフである。 比較例4の結果を示したグラフである。 比較例5の結果を示したグラフである。 比較例6の結果を示したグラフである。 比較例7の結果を示したグラフである。 比較例8の結果を示したグラフである。 比較例9の結果を示したグラフである。 比較例10の結果を示したグラフである。 比較例11の結果を示したグラフである。 酸注入口を上流側に、次亜塩素酸ナトリウム注入口を下流側に配置し、かつ、次亜塩素酸ナトリウム注入口と酸注入口の接続角度が等しくなるように(流水方向に対して同軸上)配置し、酸注入口と次亜塩素酸ナトリウムの注入口の取付位置を0〜±180°の範囲で変更して、水の供給量を10リットル/分から0リットル/分に切り替えた際のpHの変動量(δ=水量変化後のpH−水量変化前のpH(pH6.2))を測定した結果を示したグラフである。 酸注入口を上流側に、次亜塩素酸ナトリウム注入口を下流側に配置し、酸注入口と次亜塩素酸ナトリウム注入口の取付位置を0から±90°の範囲で変更して、その角度の差(注入角度差)と、水の供給量を10リットル/分から0リットル/分に切り替えた際のpHの変動量(δ=水量変化後のpH−水量変化前のpH(pH6.2))の関係をまとめたグラフである。
以下、本発明の一実施例を図示しながら具体的に説明する。
本発明の次亜塩素酸水の連続生成器は図1に示されるように水平に配置した流水を通水する給水管1と、給水管1の上流側に鉛直下方から接続される酸注入口2と、給水管の下流側に鉛直下方から接続される次亜塩素酸ナトリウム注入口3とからなる混合器4を有することを特徴とする。
本実施例では、給水管の流水方向に対して垂直な断面の管芯から見た鉛直下方を基準の0°とし、水平右方向を90°、鉛直上方向を±180°、水平左方向を−90°に(図2参照)、酸注入口2及び次亜塩素酸ナトリウム注入口3が0°の角度(真下)から給水管に接続されるように構成した。また、酸注入口及び次亜塩素酸ナトリウム注入口の口径はそれぞれ2mmとし、酸注入口と次亜塩素酸ナトリウム注入口の離隔距離(間隔)は75mmとした。
酸注入口2には8.5%の希塩酸を満たしたタンク5からポンプ6を使用して希塩酸が供給される。ポンプ6と酸注入口2の間には給水管4からの流水の侵入を阻止するサイフォン阻止弁7及びポンプ6がエアロックした際に使用するエア抜き用の電磁弁8を設けた(図3参照)。このエア抜き用の電磁弁8はエア抜き時に使用されるほか、希塩酸のタンク5交換時にはこの電磁弁8を開放してポンプ6を作動させることで、配管9内を希塩酸で速やかに満たすことができる。
次亜塩素酸ナトリウム注入口3には4〜12%の次亜塩素酸ナトリウム溶液を満たしたタンク10からポンプ11を使用して次亜塩素酸ナトリウムが供給される。本実施例では12%の次亜塩素酸ナトリウム水溶液のポンプ11と次亜塩素酸ナトリウム注入口3の間には給水管1からの流水の侵入を阻止するサイフォン阻止弁12及びポンプ11がエアロックした際に使用するエア抜き用の電磁弁13を設けた。このエア抜き用の電磁弁13はエア抜き時に使用されるほか、次亜塩素酸ナトリウムのタンク10の交換時にはこの電磁弁13を開放してポンプ11を作動させることで、配管14内を次亜塩素酸ナトリウム水溶液で速やかに満たすことができる。
図1中のINは水源15を示し、本実施例の場合、フレキシブルホースを介して水道の蛇口と装置を接続した。水源15から供給された水は給水側水質センサー16、給水電磁弁17、流量計18を介して混合器4に水が供給されるように構成した。本実施例では水源15として水道水を使用したが他にも井戸水等も使用し得る。
給水電磁弁17は混合器4の水の供給の有無又は多少を制御するために設けられる。前記給水電磁弁17は制御装置19と接続されており、水の供給の有無又は多少を制御装置19によって制御することができる。
流量計18は配管中を流れる水の量を測定し、得られたデータを制御装置19に送り、制御装置19により流量をモニターできるように構成した。モニターされた水の流量に応じて、所定量の希塩酸及び次亜塩素酸ナトリウム水溶液がポンプ6、11を介して酸注入口2及び次亜塩素酸ナトリウム注入口3から供給され、所定のpH(本実施例の場合pH6.2)の殺菌水が製造される。希塩酸及び次亜塩素酸ナトリウム水溶液の供給量の多少は制御装置19から発せられる電気信号により、ポンプ6、11の出力を調整することにより実現される。次亜塩素酸ナトリウム水溶液は有効塩素濃度が約50ppmとなるように、また、希塩酸酸についてはpHが6.2となるように、自動制御装置19の演算結果に基づいて、それぞれの溶液が混合器に注入される。混合器4の内径は本実施例では内径13mmとした。混合器の内径を13mmとした場合、0〜20L/分の間で水の供給量を制御することができる。pH6.2に調整された殺菌水を安定して供給するには一定以上の水圧と水量を確保することが好ましく、約80mL/分以上の供給量とすることが好ましい。殺菌水の製造量を大きくしたい場合は、給水管の内径を大きくすれば、それに応じてより多くの殺菌水を製造することができる。給水管の内径を大きくする場合、酸注入口と次亜塩素酸ナトリウム注入口の内径もそれに応じて大きくすることで、本実施例と同様に、水の供給量が変化してもpHの変動量の少ない次亜塩素酸水溶液の連続自動生成器を提供することができる。
給水側水質センサー16及び吐水側水質センサー20は供給側及び吐水側における電解質及びpHを測定し、得られたデータを制御装置19に送り、制御装置により電解質の量及びpH値をモニターできるように構成した(pH検知手段)。電解質の数値やpHの値が異常な数値を示した場合は、制御装置19から電気信号が発せられ、給水電磁弁17が直ちに閉鎖され、ポンプ6、11が停止するように構成されている。また、pHの値が補正可能な場合は、制御装置19から発せられる電気信号により給水電磁弁17の開弁量やポンプ6、11の出力を調整することにより、水量、酸性溶液及び次亜塩素酸ナトリウムの供給量を調節することにより、製造される殺菌水のpHの補正が可能となっている。
次に本実施例の次亜塩素酸水の連続生成器の操作手順を説明する。まず、制御装置19に設けられた作動スイッチを入にすると、電気信号を介して給水電磁弁17が開き、水が混合器4に供給され始めると共に、電気信号を介してポンプ6とポンプ11が作動し、8.5%希塩酸と12%次亜塩素酸ナトリウム溶液が混合器内に供給され始める。このとき希塩酸、次亜塩素酸ナトリウム溶液は水の流量に応じた所定量が混合器内にそれぞれ供給される。基本的には制御装置19の作動スイッチを入にするだけで、pHが約6.2に調節された次亜塩素酸を高濃度に含む殺菌水が吐出口21より吐出される。なお、pH5.0付近で次亜塩素酸の存在比が最も高くなるので、より強い殺菌力を求める場合は、酸の注入量を増大させればよい。本実施例の場合、被殺菌対象物が酸性の場合を想定しており、使用時にpHが5.0付近にまで下がることを想定して、吐水口21から吐出される殺菌水のpHを6.2とした。
上述の流量計18の数値が80mL/分を下回った場合や、給水側センサー16、吐出側水質センサー20のpH値や電解質の数値が異常値を示した場合は、制御装置19により給水電磁弁17が即座に閉じられると共に、ポンプ6、11が停止し、装置が緊急停止する。
以下、上述の次亜塩素酸水の連続生成器において、希塩酸及び次亜塩素酸ナトリウム水溶液を注入する順番、希塩酸及び次亜塩素酸ナトリウム水溶液を注入する方向(角度)を変えた場合において、水源の流量の変化が殺菌水のpHにどのような変化を与えるかについて検討した結果を示す。なお、以下の実施例、比較例においては8.5%の希塩酸及び12%の次亜塩素酸ナトリウム水溶液を使用し、それぞれの供給量は制御装置19によって、水の流量に応じて制御され、水の供給量が一定の際にpHが約6.2、有効塩素濃度が約50ppmとなるようにした。
〔実施例1〕
上述の装置において、水道水の流量を10L/分から0L/分に切り替えるサイクル及び10L/分から8L/分、5L/分、0L/分と段階的に切り替えるサイクルを繰り返して、生成される殺菌水のpHを測定した。実施例1では酸注入口を上流に、次亜塩素酸ナトリウム注入口を下流に配置した。酸注入口と次亜塩素酸ナトリウム注入口の注入角度はそれぞれ0°に設定した(図2参照)。結果は図4のグラフに示した通りである。
〔実施例2〕
実施例1と同じサイクルで水量を切り替えて、生成される殺菌水のpHを測定した。実施例2では酸注入口を上流に、次亜塩素酸ナトリウム注入口を下流に配置した。酸注入口と次亜塩素酸ナトリウム注入口の注入角度はそれぞれ45°に設定した(図2参照)。結果は図5のグラフに示した通りである。
〔比較例1〕
実施例1と同じサイクルで水量を切り替えて、生成される殺菌水のpHを測定した。比較例1では酸注入口を上流に、次亜塩素酸ナトリウム注入口を下流に配置した。酸注入口と次亜塩素酸ナトリウム注入口の注入角度は90°に設定した(図2参照)。結果は図6のグラフに示した通りである。
〔比較例2〕
実施例1と同じサイクルで水量を切り替えて、生成される殺菌水のpHを測定した。比較例2では酸注入口を上流に、次亜塩素酸ナトリウム注入口を下流に配置した。酸注入口を0°に、次亜塩素酸ナトリウム注入口の注入角度は90°に設定した(図2参照)。結果は図7のグラフに示した通りである。
〔比較例3〕
実施例1と同じサイクルで水量を切り替えて、生成される殺菌水のpHを測定した。比較例3は酸注入口を上流に、次亜塩素酸ナトリウム注入口を下流に配置した。酸注入口を±180°(鉛直上方)に、次亜塩素酸ナトリウム注入口の注入角度は−90°に設定した(図2参照)。結果は図8のグラフに示した通りである。
〔比較例4〕
実施例1と同じサイクルで水量を切り替えて、生成される殺菌水のpHを測定した。比較例4は酸注入口を上流に、次亜塩素酸ナトリウム注入口を下流に配置した。酸注入口を±180°(鉛直上方)に、次亜塩素酸ナトリウム注入口の注入角度は0°(鉛直下方)に設定した(図2参照)。結果は図9のグラフに示した通りである。
〔比較例5〕
実施例1と同じサイクルで水量を切り替えて、生成される殺菌水のpHを測定した。比較例5は酸注入口を上流に、次亜塩素酸ナトリウム注入口を下流に配置した。酸注入口を90°に、次亜塩素酸ナトリウム注入口の注入角度は0°に設定した(図2参照)。結果は図10のグラフに示した通りである。
〔比較例6〕
実施例1と同じサイクルで水量を切り替えて、生成される殺菌水のpHを測定した。比較例6は酸注入口を上流に、次亜塩素酸ナトリウム注入口を下流に配置した。酸注入口を−90°に、次亜塩素酸ナトリウム注入口の注入角度は0°に設定した(図2参照)。結果は図11のグラフに示した通りである。
〔比較例7〕
実施例1と同じサイクルで水量を切り替えて、生成される殺菌水のpHを測定した。比較例7は酸注入口を上流に、次亜塩素酸ナトリウム注入口を下流に配置した。酸注入口を0°に、次亜塩素酸ナトリウム注入口の注入角度は±180°(鉛直上方)に設定した(図2参照)。結果は図12のグラフに示した通りである。
〔比較例8〕
実施例1と同じサイクルで水量を切り替えて、生成される殺菌水のpHを測定した。比較例8は酸注入口を上流に、次亜塩素酸ナトリウム注入口を下流に配置した。酸注入口を90°に、次亜塩素酸ナトリウム注入口の注入角度はそれぞれ−90°に設定した(図2参照)。結果は図13のグラフに示した通りである。
〔比較例9〕
実施例1と同じサイクルで水量を切り替えて、生成される殺菌水のpHを測定した。比較例9は酸注入口を上流に、次亜塩素酸ナトリウム注入口を下流に配置した。酸注入口を±180°(鉛直上方)に、次亜塩素酸ナトリウム注入口の注入角度は±180°(鉛直上方)に設定した(図2参照)。結果は図14のグラフに示した通りである。
〔比較例10〕
実施例1と同じサイクルで水量を切り替えて、生成される殺菌水のpHを測定した。比較例10は次亜塩素酸ナトリウム注入口を上流に、酸注入口を下流に配置した。酸注入口を0°(鉛直下方)に、次亜塩素酸ナトリウム注入口の注入角度は0°(鉛直下方)に設定した(図2参照)。結果は図15のグラフに示した。pHは約6.2付近で安定していたものの、給水管内にはスケールが発生した。
〔比較例11〕
特開2005−161142と同様の装置において、実施例1と同じサイクルで水量を切り替えて、生成される殺菌水のpHを測定した。結果は図16のグラフに示した通りである。
以上の実施例1、2及び比較例1〜11の結果により、混合器の給水管に対して下方から、酸及び次亜塩素酸ナトリウムを注入した場合、特に次亜塩素酸ナトリウム注入口と酸注入口の接続角度を等しくなるように(流水方向に対する平行線上に酸注入口と次亜塩素酸ナトリウム注入口を配置した)接続した混合器において、水量が0〜10L/分の範囲で急激に変化しても、殺菌水のpHが変化しないことが確認された。なお、比較例では、水量を変化させた後、だいたい10秒後から酸性側へのpHの変動が生じ、数十秒間酸性側へのpHの変動が続き、その後、変動量は酸性側の場合と比較して小さいものの、塩基性側へのpHの変動が生じ、数十秒間、変動が続いた。
酸注入口を上流側に、次亜塩素酸ナトリウム注入口を下流側に配置し、かつ、次亜塩素酸ナトリウム注入口と酸注入口を接続する角度を等しくした混合器を使用した場合にpHが安定し、かつスケールの発生が抑制されることが証明されたので、次に、酸注入口を上流側に、次亜塩素酸ナトリウム注入口を下流側に配置し、かつ、次亜塩素酸ナトリウム注入口と酸注入口の接続角度を等しく設定し、酸注入口と次亜塩素酸ナトリウム注入口の取付位置を0〜±180°の範囲で変更して、水の供給量を10L/分から0L/分に切り替えた際のpHの変動量(δpH=水量変化後のpH−水量変化前のpH(pH6.2))を測定した。結果は図17のグラフに示した。グラフには各測定角度における、酸性側へのpHの最大変動量と塩基性側へのpHの最大変動量をそれぞれ示した。
図17のグラフから明らかなように、給水管に対して下方から酸及び次亜塩素酸ナトリウムを注入した場合において、特に−75〜75°の範囲で、酸性側と塩基性側へのpHの変動が抑えられていた。また、−45〜45°の範囲では特に塩基性側へのpHの変動が抑えられていた。
また、次に酸注入口と次亜塩素酸ナトリウム注入口の接続角度に差をつけて、酸性水溶液及び次亜塩素酸ナトリウム水溶液を混合器に注入した場合のpHの変動量を測定した。具体的には、酸注入口と次亜塩素酸ナトリウム注入口の接続角度を
1.酸注入口、次亜塩素酸ナトリウム注入口=0°、0°:注入角度差0°
2.酸注入口、次亜塩素酸ナトリウム注入口=45°、−45°:注入角度差90°
3.酸注入口、次亜塩素酸ナトリウム注入口=60°、−60°:注入角度差120°
4.酸注入口、次亜塩素酸ナトリウム注入口=75°、−75°:注入角度差150°
5.酸注入口、次亜塩素酸ナトリウム注入口=90°、−90°:注入角度差180°
とした混合器を作成しpHの変動量(δpH=水量変化後のpH−水量変化前のpH(pH6.2))を測定した。注入角度以外は実施例1と同様の構成とした。酸性側へのpHの変動量を測定した結果を、図18にまとめた。
図18の結果から明らかなように、酸注入口と次亜塩素酸ナトリウム注入口の角度差(注入角度差)が0〜120°の範囲においてpHの酸性側への変動量が0.5程度に抑えられていることがわかった。
以上より、本発明の次亜塩素酸水の連続自動生成器によれば、水量の変化に対してpHの安定した次亜塩素酸の存在比率の高い殺菌水を連続的に供給できることが証明された。
1 給水管
2 酸注入口
3 次亜塩素酸ナトリウム注入口
4 混合器
5 タンク(希塩酸)
6 ポンプ
7 サイフォン阻止弁
8 電磁弁
9 配管
10 タンク(次亜塩素酸ナトリウム)
11 ポンプ
12 サイフォン阻止弁
13 電磁弁
14 配管
15 水源
16 給水側水質センサー
17 給水電磁弁
18 流量計
19 制御装置
20 吐水側水質センサー
21 吐水口

Claims (3)

  1. 酸性溶液、次亜塩素酸ナトリウム溶液及び水源から流量計を介して供給された水を混合するための混合器と、該混合器の下流に配置され混合液のpHを検知するpH検知手段と、該pH検知手段で検知したpH値及び前記の流量計の流量値に基づいて酸性溶液の供給量及び次亜塩素酸ナトリウム溶液の供給量を制御して所定のpHを維持するための制御手段とからなる次亜塩素酸水溶液の自動生成器において、
    前記の混合器は水平に配置した給水管と、給水管の上流側に下方から接続される酸注入口と、給水管の下流側に下方から接続される次亜塩素酸ナトリウム注入口とからなり、
    当該次亜塩素酸水溶液の自動生成器は、前記酸注入口に酸性溶液を送り込むポンプと、前記次亜塩素酸ナトリウム注入口に次亜塩素酸ナトリウム溶液を送り込むポンプとを備え
    次亜塩素酸水溶液の連続自動生成器。
  2. 水平に配置した給水管の流水方向に対して垂直な断面の管芯から見た鉛直下方を基準の0°とし、水平右方向を90°、鉛直上方向を±180°、水平左方向を−90°としたときに、酸注入口と次亜塩素酸ナトリウム注入口の管芯からの接続角度が共に−60〜60°の範囲に収まる角度で給水管に接続されることを特徴とする請求項1記載の次亜塩素酸水溶液の連続自動生成器。
  3. 水平に配置した給水管の流水方向に対して垂直な断面の管芯から見た鉛直下方を基準の0°とし、水平右方向を90°、鉛直上方向を±180°、水平左方向を−90°としたときに、酸注入口と次亜塩素酸ナトリウム注入口の管芯からの接続角度が共に−75〜75°の範囲に収まる角度で給水管に接続され、かつ、酸注入口と次亜塩素酸ナトリウム注入口の接続角度が相等しいことを特徴とする請求項1記載の次亜塩素酸水溶液の連続自動生成器。
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