JP5408109B2 - 閾値決定装置、閾値決定方法およびプログラム - Google Patents
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Description
このGBASのシステムでは、DGPSの地上設備(以下、GBAS地上局と称する)でGPS衛星からの測位信号を受信して衛星との間の距離を測定し、その測定値を基にGBAS補正情報を生成し、VHF(Very High Frequency)帯のデータリンクを用いて航空機(GBASユーザ)にGBAS補正情報を送信する。
ここで、GPS衛星は航空機の位置を算出するのに必要な測位信号を送信し、GBAS地上局はGPS衛星からの測位信号を用いて、航空機の航行の精度や安全性を向上させるため、GBAS補正情報を生成する。そして、航空機は、GPS衛星からの測位信号を受ける受信機と、GBAS補正情報を受ける受信設備とを備えている。
一方、許容誤差を小さくするほど、衛星からのデータを使用不可と判定する確率が高くなるので、航空機の測位に使用可能なデータが不足して、測位を行えなくなってしまう確率が高くなる。
このように、衛星からのデータ(エフェメリスデータ)の使用可否の判定閾値の設定は、航空機の航行の安全性(測位システムの健全性)と測位可能性(測位システムの継続性)を両立させるための重要な処理であるが、上記非特許文献1や上記特許文献1〜3のいずれにも、閾値の設定方法は示されていない。
図1は、本発明の一実施形態におけるGBAS地上局の概略構成例を示すブロック図である。同図において、GBAS地上局1は、基準局100と、GPS衛星選別コンピュータ200と、閾値決定コンピュータ300と、アンテナを含むVHFデータ放送設備400とを具備する。基準局100は、GPS受信用アンテナ110と、GPS受信機200とを具備する。閾値決定コンピュータ300は、インテグリティ閾値算出部310と、継続性閾値算出部320と、閾値決定部330とを具備する。
なお、本発明の適用範囲は、図1に示すGPS衛星の数が5つの場合に限らない。複数のGPS衛星からエフェメリスデータを受信し、新旧エフェメリスデータ(更新前のエフェメリスデータおよび更新後のエフェメリスデータ)と、閾値とに基づいて、測位用のGPS衛星を選択する様々なGPS設備に本発明を適用し得る。また、航空機の数も図1に示す1機に限らず複数であってもよい。
GPS受信機120は、GPS受信用アンテナ110が受信した無線信号に対して復調等の処理を行ってデータを抽出し、GPS衛星選別コンピュータ200に送信する。
閾値決定用コンピュータ300は、GPS衛星選別用コンピュータ200がGPS衛星を選択する際の基準となる閾値(以下、「GPS衛星選別用の閾値」と称する)を決定する。
インテグリティ閾値算出部310は、インテグリティ上の閾値THIを算出する。このインテグリティ上の閾値THIは、航空機の航行の安全性(測位システムの健全性)を満たすための閾値である。
継続性閾値算出部320は、継続性上の閾値THCを算出する。この継続性上の閾値THCは、測位可能性(測位システムの継続性)を満たすための閾値である。
閾値決定部330は、継続性上の閾値THCとインテグリティ上の閾値THIとの範囲内で、GPS衛星選別用の閾値を決定する。
VHFデータ放送設備400は、GPS衛星選別用コンピュータ200が生成する補強用情報を含む無線信号を送信する。
まず、閾値決定コンピュータ300は、最大許容検出失敗確率(あるGPS衛星を、航空機901の測位対象から除外すべきにもかかわらず除外しない確率)PMDを設定する(ステップS101)。
そして、GBAS地上局1の管理者は、決定した最大許容検出失敗確率PMDを閾値決定コンピュータ300に入力し、閾値決定コンピュータ300は、入力された最大許容検出失敗確率PMDを設定(記憶)する。
例えば、GBAS地上局1の管理者が、インテグリティ故障の木解析と同様に、継続性故障(GBAS地上局1として、航空機にデータを提供できなくなる故障)の木解析を行って、最大許容誤警報確率PFAを決定する。最大許容誤警報確率PFAは、例えば、0.02E−6(0.000002パーセント)に決定される。
そして、GBAS地上局1の管理者は、決定した最大許容誤警報確率PFAを閾値決定コンピュータ300に入力し、閾値決定コンピュータ300は、入力された最大許容誤警報確率PFAを設定(記憶)する。
閾値決定コンピュータ300は、例えば、ΔρMERR=0.6メートル(m)とする。なお、最大許容誤差ΔρMERRを求める方法としては、公知の方法を用いることができ、ここでは説明を省略する。
ここでいうエフェメリス誤差とは、GPS衛星から送信されるエフェメリスデータの示す位置情報の誤差である。また、フォルトフリー状態とは、エフェメリス誤差が、所定の許容値以内である状態である。
フォルトフリー状態でのエフェメリス誤差の標準偏差のバウンドモデルを求める方法としては公知の方法を用いることができ、ここでは説明を省略する。
まず、正規化された三次元誤差の規模(エフェメリス誤差の大きさを正規化した値)rの確率密度P(r)は、式(2)のように表される。
そして、継続性閾値算出部320は、P(r)をr=0からrの正の方向へ積分した累積確率が1−PFAになるrの値(以下、rCで示す)を求める。この値rCは、最大許容誤警報確率PFAを満たすために、許容すべき誤差の規模(正規化された大きさ)の最小値を示す。
すなわち、継続性閾値算出部320は、標準偏差のバウンドモデルσkおよびσcを、より大きな誤差を示すバウンドモデルσaで置き換えて継続性上の閾値THCを求めるので、設定された最大許容誤警報確率PFAを満たす閾値THCを得ることができ、かつ、バウンドモデルσkおよびσcをバウンドモデルσaで置き換えることにより、計算式を簡単化して計算量を削減できる。
ここで、最大許容エフェメリス誤差rMAEEは、新エフェメリスから算出されるGPS衛星の位置の、当該GPS衛星の真の位置からの誤差として、許容される誤差の最大値を示す。
ここで、図3は、GBAS地上局1(基準局100)と、GPS衛星と、航空機901との位置関係の示す各変数の説明図である。同図に示すように、基準局100とGPS衛星の真の位置との距離をDで示す。また、基準局100と新エフェリメスを用いて算出されるGPS衛星の位置との距離を^D(^はハットを示す。以下同様)で示す。
また、基線ベクトル(基準局100から航空機901へのベクトル)をベクトルxairで示す。
また、3行3列の単位行列をI3×3で示す。
すると、エフェメリス誤差に起因するディファレンシャルレンジ誤差Δρairは式(3)のように表される。
式(3)より、式(4)に示す関係が成立する。
また、式(9)の示す、Dminの値20,000キロメートルは、GPS衛星がGBAS地上局の真上に位置するときの距離の例である。式(4)においてDが右辺の分母に現れており、Dの値が小さいほどディファレンシャルレンジ誤差Δρairが大きくなる。すなわち、Dminは、Dの値に関して、ディファレンシャルレンジ誤差Δρairが最大となるワーストケースを示す。
この場合、閾値決定コンピュータ300は、式(11)のように、最大許容エフェメリス誤差rMAEEを281.7メートルと算出する。
すなわち、閾値決定コンピュータ300は、エフェメリス誤差が最大となる場合である(cos(θ)−cos(β)cos(α))の絶対値=1の場合について最大許容エフェメリス誤差rMAEEを求めるので、航空機901の測位誤差の許容最大値ΔρMERRを満たす最大許容エフェメリス誤差rMAEEを求めることができ、かつ、(cos(θ)−cos(β)cos(α))の絶対値=1とすることにより計算式を簡単化して計算量を削減できる。
ここで、図4は、新エフェメリスを用いて得られるGPS衛星の位置と、旧エフェメリスを用いて得られるGPS衛星の位置と、GPS衛星の真の位置との関係を示す各変数の説明図である。同図に示すように、エフェメリス異常によるバイアスが含まれた検定統計量rfaultは、式(12)によって得られる。
すなわち、通常、GBAS地上局1(閾値決定コンピュータ300またはGPS衛星選別コンピュータ200)は、GPS衛星の真の位置を検出することはできないが、過去のフォルトフリーなエフェメリスデータを用いて、フォルトフリーな新エフェメリスを推定し、この推定された新エフェメリスを用いてGPS衛星の位置を求めることが出来る。
そこで、このGBAS基地局1が推定する新エフェメリスを用いて得られるGPS衛星の位置を基準として、GPS衛星から受信する新エフェメリスを用いて得られるGPS衛星の位置と当該基準との直線距離を最大許容エフェメリス誤差rMAEEとする。
この、ベクトルrfault_freeとベクトルrMAEEとが同じ向きの場合の、ベクトルrfaultの大きさ(rfaultで表す)は、式(13)によって得られる。
そして、この値rIを用いて、インテグリティ上の閾値THIは、式(15)のように表される。そこで、インテグリティ閾値算出部310は、この式(15)に基づいてTHIを求める。
そして、最大許容検出失敗確率PMD=5.71E−4の場合、1−PMD=0.999429である。従って、上述のように、インテグリティ閾値算出部310は、P(r)をr=0からrの正の方向へ積分した累積確率が1−PMDになるrの値を算出して、rI=4.178を得る。
すなわち、インテグリティ閾値算出部310は、インテグリティ上のワーストケースである、ベクトルrfault_freeとベクトルrMAEEとが同じ向きの場合について、インテグリティ上の閾値THIを求めるので、インテグリティリスクの要求を満たすインテグリティ上の閾値THIを得ることができ、かつ、ベクトルrfault_freeとベクトルrMAEEとを同じ向きとすることにより、計算式を簡単化して(特に、ベクトルの式である式(12)を、スカラーの式である式(13)に置き換えて)計算量を削減できる。
上記の例の場合、THC=123.2メートル、THI=199.0メートルであり、THC≦THIを満たす。従って、閾値決定部330は閾値を設定可能と判定する。
また、「コンピュータシステム」は、WWWシステムを利用している場合であれば、ホームページ提供環境(あるいは表示環境)も含むものとする。
また、「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、フレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、CD−ROM等の可搬媒体、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスク等の記憶装置のことをいう。さらに「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、インターネット等のネットワークや電話回線等の通信回線を介してプログラムを送信する場合の通信線のように、短時間の間、動的にプログラムを保持するもの、その場合のサーバやクライアントとなるコンピュータシステム内部の揮発性メモリのように、一定時間プログラムを保持しているものも含むものとする。また上記プログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであっても良く、さらに前述した機能をコンピュータシステムにすでに記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるものであっても良い。
100 基準局
110 GPS受信用アンテナ
120 GPS受信機
200 GPS衛星選別コンピュータ
300 閾値決定コンピュータ
310 インテグリティ閾値算出部
320 継続性閾値算出部
330 閾値決定部
400 VHFデータ放送設備
Claims (5)
- 複数のGPS衛星の中から、当該GPS衛星から送信されるエフェメリスデータを測位に使用するGPS衛星を選択するための閾値を決定する閾値決定装置であって、
設定される最大許容検出失敗確率と最大許容誤警報確率とに基づいて前記GPS衛星を選択するための閾値を決定する閾値決定部と、
前記最大許容検出失敗確率を満たすインテグリティ上の閾値を算出するインテグリティ閾値算出部と、
前記最大許容誤警報確率を満たす継続性上の閾値を算出する継続性閾値算出部と、
を具備し、
前記閾値決定部は、前記継続性上の閾値以上かつ前記インテグリティ上の閾値以下となるように前記GPS衛星を選択するための閾値を決定する、ことを特徴とする閾値決定装置。 - 前記継続性閾値算出部は、前記GPS衛星の衛星軌道の進行方向であるAlong Track方向と、前記進行方向に垂直かつ水平方向であるCross Track方向と、鉛直方向であるRadial方向との各々についてエフェメリス誤差の標準偏差のバウンドモデルを設定し、前記バウンドモデルのうち最大のバウンドモデルを用いて得られる検定統計量の分布のバウンドモデルに基づいて、前記継続性上の閾値を算出する、ことを特徴とする請求項1に記載の閾値決定装置。
- 前記インテグリティ閾値算出部は、前記エフェメリスデータが更新された際に、更新後のエフェメリスデータに基づいて得られる前記GPS衛星の位置から、更新前のエフェメリスデータに基づいて得られる前記GPS衛星の位置へのベクトルと、過去のエフェメリスデータから推定される更新後のエフェメリスデータ推定値に基づいて得られる前記GPS衛星の位置から、前記更新前のエフェメリスデータに基づいて得られる前記GPS衛星の位置へのベクトルとが、同じ向きである場合について、前記インテグリティ上の閾値を算出する、ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の閾値決定装置。
- 複数のGPS衛星の中から、当該GPS衛星から送信されるエフェメリスデータを測位に使用するGPS衛星を選択するための閾値を決定する閾値決定方法であって、
設定される最大許容検出失敗確率と最大許容誤警報確率とに基づいて前記GPS衛星を選択するための閾値を決定する閾値決定ステップと、
前記最大許容検出失敗確率を満たすインテグリティ上の閾値を算出するインテグリティ閾値算出ステップと、
前記最大許容誤警報確率を満たす継続性上の閾値を算出する継続性閾値算出ステップと、
を具備し、
前記閾値決定ステップでは、前記継続性上の閾値以上かつ前記インテグリティ上の閾値以下となるように前記GPS衛星を選択するための閾値を決定する、ことを特徴とする閾値決定方法。 - 複数のGPS衛星の中から、当該GPS衛星から送信されるエフェメリスデータを測位に使用するGPS衛星を選択するための閾値を決定する閾値決定装置としてのコンピュータに、
設定される最大許容検出失敗確率と最大許容誤警報確率とに基づいて前記GPS衛星を選択するための閾値を決定する閾値決定ステップと、
前記最大許容検出失敗確率を満たすインテグリティ上の閾値を算出するインテグリティ閾値算出ステップと、
前記最大許容誤警報確率を満たす継続性上の閾値を算出する継続性閾値算出ステップと、
を実行させ、
前記閾値決定ステップでは、前記継続性上の閾値以上かつ前記インテグリティ上の閾値以下となるように前記GPS衛星を選択するための閾値を決定させるためのプログラム。
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