自動車の後部座席は、極小型の自動車を除き、通常3人が着座できる幅を有している。この場合、多くの自動車では、後部座席は、中央部に余裕空間を残し、左右の窓際に沿って一応互いに独立した座席を呈するように作られるが、中央部にもう一人が着座するときにも3人の快適な着座が妨げられないよう、後部座席の中央部にはサイドサポートは設けられず、後部座席はその幅方向に沿って全体がほぼ滑らかに連続した面を呈するように作られている。そして、車種によっては、後部座席に着座する乗員が1人または2人であって、中央部の余裕空間が空いているとき、乗員が欲すれば、左右の座席間の中央部の座部上にアームレストを配することができるよう、後部座席には、その背もたれの中央部に位置する格納部より左右の座席の間にある中央の余裕空間内へ随時回動式に前倒しして用いられるリヤアームレストが組み込まれている。
上記の通り自動車の3人が着座できる後部座席はその幅方向に沿って全体がほぼ滑らかに連続した面を呈するように作られているので、後部座席に1人または2人が着座していて、上記のリヤアームレストが背もたれ中央部の格納部に格納されているとき、自動車の衝突や大きな横滑りにより車体に大きな横加速度度が生じると、後部座席の左右のいずれかに着座している乗員は身体全体が後部座席上を滑って横方向に大きく飛ばされる恐れがある。この場合、リヤアームレストが前倒しされた使用位置にあれば、乗員はリヤアームレストにより腰部にて横滑りを阻止されるが、慣性による横力は上半身と下半身に同方向に作用するので、この力が強いとリヤアームレストを支点として上半身と下半身が強く折り曲げられる恐れがある。また上記の特許文献1に於いて提案されている如く、リヤアームレストが格納位置より前倒し回動の途中の傾斜位置まで回動され、後部座席の乗員の横方向慣性移動を肩部にて拘束する場合には、乗員は肩部を支点としてそれ以下の部分に作用する横方向慣性力により転倒されると同時に肩部に大きな集中荷重を受けて鎖骨の骨折を招く恐れがあると危惧される。
本発明は、自動車の3人が着座できる後部座席に1人または2人が着座していて、自動車の衝突や大きな減速ないし横滑りにより車体に大きな横加速度度が作用したとき、乗員が蒙ると予想される上記の如き種々の不都合に鑑み、これらの点に関し後部座席を更に改良することを課題としている。
上記の課題を解決するものとして、本発明は、3人が着座できる後部座席の背もたれの中央部に、該背もたれに設けられた格納部より随時回動式に前倒しして用いられるリヤアームレストを備え、前記リヤアームレストが前倒しされておらず、また前記後部座席の中央部に人が着座していないことを条件として、車体に所定値を越える横加速度が作用し或いは作用すると予測されたとき、前記リヤアームレストを前記格納部に於ける格納姿勢のまま前記後部座席の背もたれより前方へ押し出すリヤアームレスト押し出し装置を有することを特徴とする自動車の後部座席を提案するものである。
前記リヤアームレスト押し出し装置による前記リヤアームレストの前方への押し出し量は、前記リヤアームレストの厚み以下とされてよい。
前記リヤアームレスト押し出し装置による前記リヤアームレストの押し出しは、火薬の爆発により発生した力により行われるようになっていてよい。この場合、前記火薬の爆発は自動車が衝突したことの検出に基づいて行われてよい。
或いはまた、前記リヤアームレスト押し出し装置による前記リヤアームレストの押し出しは、圧縮空気または電気の如くオンオフ制御可能なエネルギ源により発生した力により行われるようになっていてもよい。この場合、前記のオンオフ制御可能なエネルギ源による前記リヤアームレストの押し出しは、自動車の減速度が所定の減速度臨界値を越えた時、或いは自動車の減速度が前記減速度臨界値を越えないときにも、或は自動車の減速度に関係なく、自動車の横加速度が所定の横加速度臨界値を越えた時行われるようになっていてよい。
そして更に、前記リヤアームレストの押し出しがオンオフ制御可能なエネルギ源により発生した力により行われるようになっているときには、自動車の減速度が前記減速度臨界値以下に下がったとき、或いは自動車の減速度や横加速度がそれぞれの臨界値以下に下がったときには、前記のオンオフ制御可能なエネルギ源によるリヤアームレストの押し出しが解除され、リヤアームレストは格納部に格納姿勢に戻されるようになっていてよい。
また、上記の課題を解決するものとして、本発明は、3人が着座できる後部座席の背もたれの中央部に、該背もたれの一部を呈する伏せ位置とこれより一対の縦方向軸線の周りに前方へ回動された起立位置の間に回動可能な一対の板状のサイドサポートを備え、前記後部座席の中央部に人が着座していないことを条件として、車体に所定値を越える横加速度が作用し或いは作用すると予測されたとき、前記サイドサポートを前記起立位置に支持するサイドサポート起動装置を有することを特徴とする自動車の後部座席を提案するものである。
この場合、前記背もたれの中央部には格納位置より随時回動式に前倒しして用いられるリヤアームレストが組み込まれていてよく、前記一対のサイドサポートは前記伏せ位置にあるとき前記格納位置にある前記リヤアームレスト上に重なり、前記リヤアームレストが前倒しされたとき、ばねによる前記伏せ位置への復帰力に抗して前記リヤアームレストにより前記起立位置に回動されるようになっていてよい。
前記サイドサポート起動装置による前記サイドサポートの前記起立位置への支持は、火薬の爆発により発生した力により行われるようになっていてよい。この場合、前記火薬の爆発は自動車が衝突したことの検出に基づいて行われてよい。
或いはまた、前記サイドサポート起動装置による前記サイドサポートの前記起立位置への支持は、圧縮空気または電気の如くオンオフ制御可能なエネルギ源により発生した力により行われるようになっていてもよい。この場合、前記のオンオフ制御可能なエネルギ源による前記サイドサポートの前記起立位置への支持は、自動車の減速度が所定の減速度臨界値を越えた時、或いは自動車の減速度が前記減速度臨界値を越えないときにも、或は自動車の減速度に関係なく、自動車の横加速度が所定の横加速度臨界値を越えた時行われるようになっていてよい。
そして更に、前記サイドサポートの前記起立位置への支持がオンオフ制御可能なエネルギ源により発生した力により行われるようになっているときには、自動車の減速度が前記減速度臨界値以下に下がったとき、或いは自動車の横加速度がそれぞれの前記横加速度臨界値以下に下がったときには、前記のオンオフ制御可能なエネルギ源によるサイドサポートの前記起立位置への支持が解除されるようになっていてよい。
上記の如く、3人が着座できる後部座席の背もたれの中央部に、該背もたれに設けられた格納部より随時回動式に前倒しして用いられるリヤアームレストを備え、リヤアームレストが前倒しされておらず、また後部座席の中央部に人が着座していないことを条件として、車体に所定値を越える横加速度が作用し或いは作用すると予測されたとき、リヤアームレストを格納部に於ける格納姿勢のまま後部座席の背もたれより前方へ押し出すリヤアームレスト押し出し装置を有する自動車の後部座席によれば、リヤアームレストが背もたれ中央部の格納部に格納されており、後部座席に1人または2人が着座しており、後部座席の中央部にはもう一人が着座できる程の余裕空間が残されている状態で、もし自動車の衝突や大きな減速ないし横滑りにより車体に大きな横加速度度が生じると、乗員は身体全体が後部座席上を滑って横方向に大きく飛ばされる恐れがある場合にも、格納部に於ける格納姿勢のまま後部座席の背もたれより前方へ押し出されたリヤアームレストは、後部座席に着座した乗員の腰から肩に亙る広い範囲にて乗員を横方向移動に対して支持することができるので、自動車の衝突や大きな減速ないし横滑りにより車体に大きな横加速度度が生じたときの後部座席の乗員の安全性をより高めることができる。
また上記の如く、リヤアームレスト押し出し装置によるリヤアームレストが格納部に於ける格納姿勢のまま後部座席の背もたれより前方へ押し出されるのは、リヤアームレストが前倒しされておらず、また後部座席の中央部に人が着座していないことを条件として行われるようになっていれば、後部座席の中央部に着座している人がリヤアームレストの押し出しにより誤って座席より押し出される恐れや、すでに前倒しされていて、その先端が後部座席の前縁に達しているリヤアームレストが更にそれ以上前方へ突き出されて全部座席との間に物を挟み込む恐れもない。
一方、後部座席の中央部に人が着座していれば、それは通常後部座席に3人が着座していることであり、本発明によるリヤアームレストの押し出しによらずとも、横方向加速度に対する乗員の移動は3人の相互の当接作用により抑制される。
後部座席に着座した乗員は、背もたれに背をつけた状態にあるので、リヤアームレストの前方への押し出し量がリヤアームレストの厚み以下とされても、リヤアームレストは乗員の上体をその側面に沿って十分に支持することができる。リヤアームレストの前方への押し出し量がリヤアームレストの厚み以下とされれば、リヤアームレストが押し出し位置にあっても格納室より完全には出ていない状態とすることにより、リヤアームレストの横方向への動きを格納室の両側縁により抑え、リヤアームレストの押し出しや引き戻しが例えば一つのピストン−シリンダ装置により行われるようになっていても、リヤアームレストの横方向への動きに対する抵抗力を高めることができる。
リヤアームレスト押し出し装置によるリヤアームレストの押し出しが火薬の爆発により発生した力により行われるようになっていれば、自動車の衝突時にエアバッグが拡開されるのと同程度の迅速度にてリヤアームレストを押し出すことができ、自動車の衝突時に高い後部座席の横方向支持効果を得ることができる。またリヤアームレストの押し出しが火薬の爆発により発生した力により行われるようになっていれば、弁やスイッチの如き制御手段の機能が自動車の衝突と同時に失われるときにも、リヤアームレストの押し出し機能を確保することができる。但し、この場合には、リヤアームレストの押し出し作用が得られるのは一度限りである。
これに対し、リヤアームレスト押し出し装置によるリヤアームレストの押し出しが圧縮空気または電気の如くオンオフ制御可能なエネルギ源により発生した力により行われるようになっていれば、押し出しの迅速度は火薬の爆発による場合に比して劣るが、圧縮空気溜めと切換え弁或はバッテリとスイッチ等を併設しておくことにより、リヤアームレストの押し出しと引き戻しとを繰り返して行うことができる。この場合、自動車の減速度が所定の減速度臨界値を越えた時、リヤアームレストの押し出しが行われるようになっていれば、衝突に先立っては多くの場合急ブレーキが踏まれるので、衝突に際しては、火薬の爆発に比して劣る迅速性を衝突の予知によって補うことができるとともに、衝突でなくても、急ブレーキが踏まれたときの後部座席の安定性を高めることができ、また自動車の減速度が前記減速度臨界値以下に下がったときには、オンオフ制御可能なエネルギ源によるリヤアームレストの押し出しが解除され、リヤアームレストが格納部に格納姿勢に戻されるようになっていれば、本発明によるリヤアームレストの押し出しを急ブレーキの度に繰り返して行うことができる。
リヤアームレストの押し出しがオンオフ制御可能なエネルギ源により発生した力により行われるようになっている場合に、自動車の横加速度が所定の横加速度臨界値を越えた時、リヤアームレストの押し出しが行われるようになっていれば、自動車にスピンの如き横滑りが生じたときにもリヤアームレストを押し出し、後部座席の安定性を高めることができる。この場合にも、自動車の横加速度が横加速度臨界値以下に下がったときには、オンオフ制御可能なエネルギ源によるリヤアームレストの押し出しが解除され、リヤアームレストが格納部に格納姿勢に戻されるようになっていれば、自動車に所定の臨界値を越えるは横加速度が作用する度に繰り返しリヤアームレストを押し出し、後部座席の安定性を高めることができる。
また上記の如く、3人が着座できる自動車の後部座席の背もたれの中央部に、該背もたれの一部を呈する伏せ位置とこれより一対の縦方向軸線の周りに前方へ回動された起立位置の間に回動可能な一対の板状のサイドサポートが設けられ、後部座席の中央部に人が着座していないことを条件として、車体に所定値を越える横加速度が作用し或いは作用すると予測されたとき、サイドサポートを起立位置に支持するサイドサポート起動装置が設けられていれば、後部座席に1人または2人が着座しており、後部座席の中央部にはもう一人が着座できる程の余裕空間が残されている状態で、もし自動車の衝突や大きな減速ないし横滑りにより車体に大きな横加速度度が生じると、乗員は身体全体が後部座席上を滑って横方向に大きく飛ばされる恐れがある場合にも、サイドサポートがサイドサポート起動装置により起立位置に支持され、後部座席に着座した乗員の腰から肩に亙る広い範囲にて乗員を横方向移動に対して支持することができるので、自動車の衝突や大きな減速ないし横滑りにより車体に大きな横加速度度が生じたときの後部座席の乗員の安全性をより高めることができる。
また上記の如く、後部座席の背もたれの中央部に設けられた一対の板状のサイドサポートがサイドサポート起動装置により一対の縦方向軸線の周りに前方へ回動された起立位置に支持されるのは、後部座席の中央部に人が着座していないことを条件として行われるようになっていれば、一対のサイドサポートが前記伏せ位置にあって後部座席の中央部に着座している人がサイドサポートの上のもたれているとき、サイドサポート起動装置によるサイドサポートの伏せ位置より起立位置へ回動により誤って座席より押し出される恐れはない。
前記背もたれの中央部に格納位置より随時回動式に前倒しして用いられるリヤアームレストが組み込まれており、一対のサイドサポートは伏せ位置にあるとき格納位置にあるリヤアームレスト上に重なり、リヤアームレストが前倒しされたとき、ばねによる伏せ位置への復帰力に抗してリヤアームレストにより起立位置に回動されるようになっているときには、常時は、乗員の要求に応じたリヤアームレストの格納位置より前倒し位置への回動および前倒し位置より格納位置への回動は、一対のサイドサポートにより妨げられることなく自由に行える。ただこの場合、リヤアームレストが前倒し位置へ回動されると、一対のサイドサポートはそれに連れて伏せ位置より起立位置へ回動され、リヤアームレストが格納位置に戻されると、一対のサイドサポートはそれに連れて伏せ位置へ戻される。但し、リヤアームレストの前倒し位置への回動に伴って起立位置へ回動された一対のサイドサポートは、リヤアームレストとの接触により伏せ位置へのばねの復帰力に抗して起立位置に保持されているのであり、サイドサポート起動装置により起立位置に支持されているのではない。
サイドサポート起動装置によるサイドサポートの起立位置への支持が火薬の爆発により発生した力により行われるようになっていれば、自動車の衝突時にエアバッグが拡開されるのと同程度の迅速度にてサイドサポートを起立位置へ支持ことができ、自動車の衝突時に高い後部座席の横方向支持効果を得ることができる。またサイドサポートの起立位置への支持が火薬の爆発により発生した力により行われるようになっていれば、弁やスイッチの如き制御手段の機能が自動車の衝突と同時に失われるときにも、リヤアームレストの押し出し機能を確保することができる。但し、この場合には、サイドサポートを起立位置へ支持する作用が得られるのは一度限りである。
これに対し、サイドサポート起動装置によるサイドサポートの起立位置への支持が圧縮空気または電気の如くオンオフ制御可能なエネルギ源により発生した力により行われるようになっていれば、サイドサポートの起立位置への支持の迅速度は火薬の爆発による場合に比して劣るが、圧縮空気溜めと切換え弁或はバッテリとスイッチ等を併設しておくことにより、サイドサポートの起立位置への支持とその解除とを繰り返して行うことができる。この場合、自動車の減速度が所定の減速度臨界値を越えた時、サイドサポートの起立位置への支持が行われるようになっていれば、衝突に先立っては多くの場合急ブレーキが踏まれるので、衝突に際しては、火薬の爆発に比して劣る迅速性を衝突の予知によって補うことができるとともに、衝突でなくても、急ブレーキが踏まれたときの後部座席の安定性を高めることができ、また自動車の減速度が減速度臨界値以下に下がったときには、オンオフ制御可能なエネルギ源によるサイドサポートの起立位置への支持が解除されるようになっていれば、本発明によるサイドサポートの起立位置への支持を急ブレーキの度に繰り返して行うことができる。
サイドサポートの起立位置への支持がオンオフ制御可能なエネルギ源により発生した力により行われるようになっている場合に、自動車の横加速度が所定の横加速度臨界値を越えた時、サイドサポートの起立位置への支持が行われるようになっていれば、自動車にスピンの如き横滑りが生じたときにもサイドサポートを起立位置に支持し、後部座席の安定性を高めることができる。この場合にも、自動車の横加速度が横加速度臨界値以下に下がったときには、オンオフ制御可能なエネルギ源によるサイドサポートの起立位置への支持が解除されるようになっていれば、自動車に所定の臨界値を越えるは横加速度が作用する度に繰り返しサイドサポートを起立位置に支持し、後部座席の安定性を高めることができる。
図1に斜視図にて示されている自動車の後部座席10は、左側座席12と右側座席14とがその間にもう1人の乗員が着座できる程度の余裕空間を残して隔置されている、外観上は通常の形態の後部座席である。左側座席12は座部16と背もたれ18とを備えており、右側座席14は座部20と背もたれ22とを備えている。中央の余裕空間には左右の座部16、20とほぼ滑らかに接続する座部24および左右の背もたれ18、22とほぼ滑らかに接続する背もたれ26が設けられており、図示の状態でこの中央部にもう1人の乗員が着座できるようになっている。中央の背もたれ26は、その下端近くに位置する枢軸28の周りに回動し、図2に示されている如く左右の背もたれ18、22間に設けられた格納部30より引き出されて、座部24上に置かれた位置まで前倒しされ得るようになっているリヤアームレスト32により与えられており、ここまでの構造は周知のものである。
本発明によれば、リヤアームレスト32は図1に示されている如く格納部30内に格納された状態から図2に示されている如く座部24上に載置された状態に枢軸28の回りに回動され得るとともに、図1に示されている如く格納部30内に格納された状態からその姿勢を保ったまま図3に示されている如く前方へ押し出され得るようになっている。これらの回動および押し出しの両作動を行うためのリヤアームレスト押し出し装置34が、図示の実施の形態に於いては、リヤアームレスト32を枢軸28の周りに回動可能に支持するとともにその後方への傾動を規制するヨーク部材36、これを支持するシリンダ38とピストン40(より詳細には、シリンダ38内にて摺動するピストンの軸)よりなるシリンダ−ピストン装置により構成されている。図4には、リヤアームレスト32とヨーク部材36とシリンダ−ピストン装置とを取り出し、図1と図2に示す状態の間でリヤアームレストが回動される常時(図A)と、図3に示す如くリヤアームレストが前方へ押し出された非常時(図B)に於いて示されている。
これらの図に示されている如く、リヤアームレスト32を回動式に支持するとともにその後方への傾動を規制するヨーク部材36は、シリンダ−ピストン装置のピストン40の先端部により図示の如き傾斜姿勢に支持されており、シリンダ38に対するピストン40の移動により、図Aに示されている常時位置と図Bに示されている非常時位置との間に移動されるようになっている。シリンダ38は溝型部材42の如き適当な支持部材により自動車の車体から支持されている。
リヤアームレスト32の前方への押し出し量は、リヤアームレストの厚み以下とされ、リヤアームレストが押し出し位置にあっても、図3に示されている如く格納部30より完全には出ておらず、リヤアームレストの横方向への動きが格納部の両側縁により抑えられるようにするのが好ましく、これによってリヤアームレストの押し出しや引き戻しが単一のシリンダ−ピストン装置によるリヤアームレスト押し出し装置36により行われるようになっていても、リヤアームレストの横方向への動きに対する抵抗力を高めることができる。
リヤアームレスト押し出し装置36によりリヤアームレスト32をヨーク部材36とともに図Aに示す常時の位置より図Bに示す非常時の位置へ押し出す作動は、シリンダ38内に仕掛けられた火薬を爆発させること、または図には示されていない圧縮空気溜めより図には示されていない切換え弁装置を経てシリンダ38内に圧縮空気を注入すること、またはシリンダ38に代えて適当な電磁アクチュエータによりピストン40を駆動することによって行われてよい。火薬の爆発によれば、自動車の衝突時にエアバッグが拡開されるのと同程度の迅速度にてリヤアームレストを押し出すことができる。但し、この場合には、リヤアームレストの押し出し作用が得られるのは一度限りである。圧縮空気または電気の如きオンオフ制御可能なエネルギ源による場合には、リヤアームレストの押し出しの迅速性は火薬の爆発に比して劣るが、エネルギのオンオフ制御によりリヤアームレストの押し出しと引き戻しとを繰り返して行うことができる。リヤアームレストの引き戻しは、圧縮空気の経路の切り換え、電流のオンオフ、またはばね力により行われればよい。
図5は、リヤアームレストの押し出しを火薬の爆発により行う場合の制御要領の一例を示すフローチャートである。かかるフローチャートに沿った制御は自動車の運転中常時数十〜数百ミリセカンドの周期にて繰り返されてよい。
制御が開始されると、ステップ10に於いてリヤアームレストが使用中であるか否か、即ち、リヤアームレスト32が図2に示されている前倒し位置に引き出されているか否かが判断される。これはリヤアームレストの回動位置を適当なセンサにより検出することによって行われてよい。答がイエス(Y)であれば、この回の制御はこれにて終了する。答がノー(N)であれば制御はステップ20へ進む。
ステップ20に於いては、中央座席に乗員が着座しているか否かが判断される。これは、例えば、中央の座部24上に幼児の体重以上の重量物が載置されているか否かを座部24の中央部に設けられ適当なセンサにより検出することによって判断されてよいが、中央座席に「人」がいるかいないかをより適切に検知できる手段であれば、任意の手段が採用されてよい。答がイエスであれば、この回の制御はこれにて終了する。答がノーであれば、制御はステップ30へ進む。
ステップ30に於いては、自動車の衝突が生じたか否かが判断される。この判断は、例えば自動車の衝突時にエアバッグを拡開させる衝突感知センサと同様のセンサにより行われてよい。答がノーである限り、各回の制御はそのまま終了するが、答がイエスとなったときには、制御はステップ100へ進み、シリンダ40内に仕掛けられた火薬を爆発させ、図1に示す格納位置にあるリヤアームレスト32を速やかに図3に示す位置まで押し出すことが行われる。
図6は、リヤアームレストの押し出しをオンオフ制御可能なエネルギ源により行う場合の制御要領の一例を示すフローチャートである。かかるフローチャートに沿った制御も自動車の運転中常時数十〜数百ミリセカンドの周期にて繰り返されてよい。
制御開始後、ステップ10にてリヤアームレストが使用中であるか否かを判断し、ステップ20にて中央座席に乗員が着座しているか否かを判断する制御は、図5に示す制御の場合と同じである。ステップ20の答がノーであるとき、制御はステップ40へ進み、自動車の減速度αが所定の臨界値αc以上であるか否かが判断される。減速度の臨界値αcは、減速度がそれ以上であるときには自動車の衝突が予測されるか、衝突が生じないまでも自動車にスピンによる大きな横滑りを生じる恐れがあるような急ブレーキによる減速度の値である。答がイエスのときには制御はステップを100へ進む。
ステップ40の答がノーであるとき、制御はステップ50へ進み、自動車の横加速度βが所定の臨界値βc以上であるか否かが判断される。横加速度の臨界値βcは、車輌の衝突が起こるか起こらないかに拘わらず、本発明によるリヤアームレストの押し出しによって後部座席の乗員の横方向の安定性を図るのが好ましいような横加速度の発生を検出するための臨界値である。答がイエスであれば、制御はステップ100へ進む。
ステップ100に於いては、シリンダ38に圧縮空気を注入することまたはシリンダ38に代わる電磁アクチュエータに電流を供給することにより図1に示す格納位置にあるリヤアームレスト32を図3に示す位置まで押し出すことが行われる。この場合、制御は更にステップ110へ進み、制御の開始時に0にリセットされているフラグFが1にセットされる。
この制御の例に於いては、一度ステップ40または50の答がイエスとなることによってリヤアームレスト32が図3に示す位置まで押し出された後、自動車に衝突が生じなければ、装置は正常に作動を続け、暫くはステップ40または50の答がイエスに留まることにより、リヤアームレストの押し出しが続けられる。しかし、やがては、ステップ40および50の答はいずれもノーとなるはずであり、そのとき制御はステップ60へ進む。
ステップ60に於いては、フラグFが1であるか否かが判断される。制御が一度もステップ100および110を通っておらず、即ちリヤアームレストの押し出しが行われていないときには、ステップ60の答はノーであり、制御はそのまま終了する。一方、リヤアームレストの押し出しが行われている最中にはフラグFは1であり、答はイエスである。この時、制御はステップ200へ進み、シリンダ38に注入されていた圧縮空気を排出し、またはシリンダ38に代わる電磁アクチュエータへの電流の供給を遮断することにより、リヤアームレストを格納部30内へ引き戻すことが行われる。このとき制御は更にステップ210へ進み、フラグFが0にリセットされ、装置は次回の作動に備えた状態とされる。
尚、ステップ50は省略されてもよく、この場合には、自動車の減速度が減速度臨界値αc以上となるか否かによって、制御はステップ100かステップ60へ進めばよい。また、ステップ40を無くし、ステップ50による横加速度の判断のみによりリヤアームレストの押し出しや引戻しを同様に行わせる実施の形態も考えられる。
次に、図7〜図12を参照して、本発明を他の一つの実施の形態について説明する。図7〜図12に於いて、図1〜図6に示す部分に対応する部分は、図1〜図6に於けると同じ符号ないしステップ番号にて示されている。図7に斜視図にて示されている自動車の後部座席10もまた、左側座席12と右側座席14とがその間にもう1人の乗員が着座できる程度の余裕空間を残して隔置されている後部座席である。左側座席12は座部16と背もたれ18とを備えており、右側座席14は座部20と背もたれ22とを備えている。中央の余裕空間には左右の座部16、20とほぼ滑らかに接続する座部24が設けられている。中央の余裕空間には左右の背もたれ18、22とほぼ滑らかに接続する背もたれ26が設けられており、この中央の背もたれ26は、その下端近くに位置する枢軸28の周りに回動し、図8に示されている如く左右の背もたれ18、22間に設けられた格納部30より引き出されて、座部24上に置かれた位置まで前倒しされ得るようになっているリヤアームレスト32により与えられているが、更にその上に、以下に説明する一対の板状のサイドサポート44,46であって、枢軸48、50の周りに回動可能なサイドサポートが設けられており、これら一対のサイドサポート44,46は、図には示されていないばねにより、リヤアームレスト32により与えられた背もたれ26上に重なりあった伏せ位置に押し付けられた状態に設けられている。図7に示されている状態で、この中央部にもう1人の乗員が着座できるようになっている。
リヤアームレスト32は図7に示されている如く格納部30内に格納された状態から図8に示されている如く座部24上に載置された状態に枢軸28の回りに回動され得るようになっている。かかるリヤアームレスト32の回動構造は周知のものである。リヤアームレスト32が枢軸28の回りに回動されて図8に示されている如く座部24上に載置されると、それに連れて一対のサイドサポート44、46は枢軸48、50の周りに回動し、図8に示されている起立位置に来る。この場合、一対のサイドサポート44、46はリヤアームレスト32との接触により伏せ位置へのばねの復帰力に抗して起立位置に保持されており、リヤアームレストが背もたれ内の格納位置に戻されると、一対のサイドサポートはばねの復帰力により図7に示されている伏せ位置に戻る。
一対のサイドサポート44、46は、図9に示す如くリヤアームレスト32が格納位置にあっても、以下に説明されるサイドサポート起動装置により、図7に示されている伏せ位置より図9に示す起立位置に回動されて、この起立位置に支持され、或いは図8に示されている如くリヤアームレスト32が前倒しされていて、サイドサポートがリヤアームレストにより起立位置に保持されている状態からも、サイドサポート起動装置の作動により起立位置に支持される。ここで、サイドサポートがサイドサポート起動装置により起立位置に支持されるとは、起立位置にあるサイドサポートが横力に抗するよう強固に保持されることを意味する。
図10には、一対のサイドサポート44、46を伏せ位置より起立位置へそれぞれの枢軸48、50の回りに回動させるとともに起立位置に支持するサイドサポート起動装置52が、非作動状態にあってサイドサポートの伏せ位置と起立位置の間の回動を自由に許す常時の状態(図A)と、作動状態にあってサイドサポートを起立位置に支持する非常時の状態(図B)に於いて示されている。
これらの図に示されている如く、サイドサポート起動装置52は、図には示されていない適当な軸受手段により枢軸48、50の周りに回動可能に支持されたサイドサポート44、46のそれぞれの上端部および下端部に固定されたレバー54、56、58、60と、これらのレバーの自由端部に一端が固定されたワイヤ62、64、66、68と、これらのワイヤを案内するよう車体から支持されたプーリ70、72、74、76、78,80と、これらのワイヤの他端を束ねて保持するピストン(そのロッド部が82)と、これを内包するシリンダ84とを含んでいる。シリンダ84も車体から支持されている。
サイドサポート起動装置52により一対のサイドサポート44、46を図7に示す如く格納位置にあるリヤアームレスト上に重なりあった伏せ位置より図9に示す如く起立位置へ回動させて起立位置に支持する作動、或いは図8に示す如くリヤアームレストによりすでに起立位置にもたらされている一対のサイドサポート44、46を起立位置に支持する作動は、シリンダ84内に仕掛けられた火薬を爆発させること、または図には示されていない圧縮空気溜めより図には示されていない切換え弁装置を経てシリンダ84内に圧縮空気を注入すること、またはシリンダ84に代えて適当な電磁アクチュエータによって行われてよい。火薬の爆発によれば、自動車の衝突時にエアバッグが拡開されるのと同程度の迅速度にて一対のサイドサポート44、46を起立位置に支持することができる。但し、この場合には、サイドサポートを起立位置に支持する作用が得られるのは一度限りである。圧縮空気または電気の如きオンオフ制御可能なエネルギ源による場合には、サイドサポートを起立位置に支持する迅速性は火薬の爆発に比して劣るが、エネルギのオンオフ制御によりサイドサポートの起立位置への支持とその解除とを繰り返して行うことができる。サイドサポートの起立位置への支持が解除されたときのピストンの戻りは、圧縮空気の経路の切り換え、またはばね力により行われればよい。
図11は、サイドサポートの起立位置への支持を火薬の爆発により行う場合の制御要領の一例を示すフローチャートである。かかるフローチャートに沿った制御は自動車の運転中常時数十〜数百ミリセカンドの周期にて繰り返されてよい。
制御が開始されると、ステップ20に於いて、中央座席に乗員が着座しているか否かが判断される。これは、例えば、中央の座部24上に幼児の体重以上の重量物が載置されているか否かを座部24の中央部に設けられ適当なセンサにより検出することによって判断されてよいが、中央座席に「人」がいるかいないかをより適切に検知できる手段であれば、任意の手段が採用されてよい。答がイエス(Y)であれば、この回の制御はこれにて終了する。答がノー(N)であれば、制御はステップ30へ進む。
ステップ30に於いては、自動車の衝突が生じたか否かが判断される。この判断は、例えば自動車の衝突時にエアバッグを拡開させる衝突感知センサと同様のセンサにより行われてよい。答がノーである限り、各回の制御はそのまま終了するが、答がイエスとなったときには、制御はステップ300へ進み、シリンダ84内に仕掛けられた火薬を爆発させ、図7に示す伏せ位置にあるサイドサポート44、46を速やかに図9に示す起立位置まで回動させてこの起立位置に支持するか、またはサイドサポート44、46がリヤアームレストにより図8に示す起立位置に回動されているときには、その起立位置に支持することが行われる。
図12は、サイドサポートの起立位置への支持をオンオフ制御可能なエネルギ源により行う場合の制御要領の一例を示すフローチャートである。かかるフローチャートに沿った制御も自動車の運転中常時数十〜数百ミリセカンドの周期にて繰り返されてよい。
制御開始後、ステップ20にて中央座席に乗員が着座しているか否かを判断する制御は、図11に示す制御の場合と同じである。ステップ20の答がノーであるとき、制御はステップ40へ進み、自動車の減速度αが所定の臨界値αc以上であるか否かが判断される。減速度の臨界値αcは、減速度がそれ以上であるときには自動車の衝突が予測されるか、衝突が生じないまでも自動車にスピンによる大きな横滑りを生じる恐れがあるような急ブレーキによる減速度の値である。答がイエスのときには制御はステップを300へ進む。
ステップ40の答がノーであるとき、制御はステップ50へ進み、自動車の横加速度βが所定の臨界値βc以上であるか否かが判断される。横加速度の臨界値βcは、車輌の衝突が起こるか起こらないかに拘わらず、本発明によるリヤアームレストの押し出しによって後部座席の乗員の横方向の安定性を図るのが好ましいような横加速度の発生を検出するための臨界値である。答がイエスであれば、制御はステップ300へ進む。
ステップ300に於いては、シリンダ84に圧縮空気を注入することまたはシリンダ84に代わる電磁アクチュエータに電流を供給することにより図7に示す伏せ位置にあるサイドサポート44、46を図9に示す起立位置へ回動させてその起立位置に支持するか、またはサイドサポート44、46がリヤアームレストにより図8に示す起立位置に回動されているときには、その起立位置に支持することが行われる。この場合、制御は更にステップ110へ進み、制御の開始時に0にリセットされているフラグFが1にセットされる。
この制御の例に於いては、一度ステップ40または50の答がイエスとなることによってサイドサポート44、46が図8または図9に示す起立位置に支持された後、自動車に衝突が生じなければ、装置は正常に作動を続け、暫くはステップ40または50の答がイエスに留まることにより、サイドサポート44、46が図8または図9に示す起立位置に支持された状態が続けられる。しかし、やがては、ステップ40および50の答はいずれもノーとなるはずであり、そのとき制御はステップ60へ進む。
ステップ60に於いては、フラグFが1であるか否かが判断される。制御が一度もステップ300および110を通っておらず、即ちサイドサポートの起立位置への支持が行われていないときには、ステップ60の答はノーであり、制御はそのまま終了する。一方、サイドサポートの起立位置への支持が行われている最中にはフラグFは1であり、答はイエスである。この時、制御はステップ400へ進み、シリンダ84に注入されていた圧縮空気を排出し、またはシリンダ84に代わる電磁アクチュエータへの電流の供給を遮断することにより、ピストンを図10の図Aの位置へ戻すことが行われる。このとき制御は更にステップ210へ進み、フラグFが0にリセットされ、装置は次回の作動に備えた状態とされる。
尚、この場合にもステップ50は省略されてもよく、その場合には、自動車の減速度が減速度臨界値αc以上となるか否かによって、制御はステップ300かステップ60へ進めばよい。また、ステップ40を無くし、ステップ50による横加速度の判断のみによりサイドサポートの起立位置への支持やその解除を同様に行わせる実施の形態も考えられる。
以上に於いては、本発明を、ハードウエアの構造としては2つの実施の形態ついて、またそれぞれの作動および制御の態様としては4つの実施の形態とその一部変更例について詳細に説明したが、これらの実施の形態について本発明の範囲内にて種々の修正が可能であることは当業者にとって明らかであろう。