JP5406770B2 - 放出器から測定空間に放出された活性種の測定対象に対する付着量を求める方法及びそのシステム - Google Patents

放出器から測定空間に放出された活性種の測定対象に対する付着量を求める方法及びそのシステム Download PDF

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本発明は、放出器から測定空間に放出された活性種の測定対象に対する付着量を求める方法及びそのシステムに関するものである。
従来から、霧化電極と、霧化電極に水を供給する供給手段とを備え、霧化電極に高電圧を印加することで霧化電極に保持された水を静電霧化してナノメータサイズの帯電微粒子液を生成する静電霧化器が特許文献1などにより知られている。
この静電霧化器が発生するナノメータサイズの帯電微粒子液はヒドロキシラジカル又はスーパーオキシドアニオン等の活性種(ラジカル)が含まれていて、この活性種による酸化作用で脱臭効果や、ウイルス、カビ菌の除菌、抑制効果などがあることがわかっている。
また、放電電極に高電圧を印加して放電によりマイナスイオン又はプラスイオンを発生させる空気イオン放出器も知られている。
この空気イオン放出器は、静電霧化器に比べると、活性種の発生量は少ないが、放電により空気中の水分を元にしてヒドロキシラジカルのような活性種が発生するといわれている。
特開2006−68711号公報
しかしながら、従来にあっては、前述のような静電霧化器、イオン放出器などのラジカルを発生させる放出器から発生させるラジカルを、付着させようとする対象に対してどの程度付着したかを測定できないという問題があった。
本発明は上記の従来例の問題点に鑑みて発明したものであって、放出器から測定空間に放出された活性種の測定対象に対する付着量を求めることができる方法及びシステムを提供するにある。
本発明の方法は、放出器から測定空間に放出された活性種の測定対象に対する付着量を求める方法であって、前記測定空間に配置した上面が平坦面となった試料台に測定対象である不飽和二重結合を有した脂質を滴下し、その後、前記放出器から少なくとも活性種を放出し、前記滴下直後の脂質の平面積と、放出を開始して所定時間経過した後の平面積を求め、両平面積の差に基づいて前記脂質の加水分解の程度を求め、前記脂質の加水分解の程度に基づいて前記活性種の付着量を求めることを特徴とする。
前記滴下される脂質が、クロロホルムを用いて所定濃度に調整したトリオレインであることが好ましい。
また、前記脂質を滴下する平坦面が鏡面処理されていることが好ましい。
また、前記脂質を滴下する平坦面が親水性処理されていることが好ましい。
本発明のシステムは、放出器から測定空間に放出された活性種の測定対象に対する付着量を求めるシステムであって、測定空間中に少なくとも活性種を放出するための放出器と、前記測定空間に配置され上面の平坦面となった試料台と、前記平坦面に滴下された不飽和二重結合を有する脂質の滴下直後の前記脂質、及び、放出を開始して所定時間経過した後の前記脂質を撮像する撮像部と、前記撮像部で撮像した画像から脂質の平面積を求める平面積算出部と、この平面積算出部で算出した滴下直後の脂質の平面積と、放出を開始して所定時間経過した後の脂質の平面積の差に基づいて前記脂質の加水分解の程度を求める加水分解程度算出部と、この加水分解程度算出部で算出した前記脂質の加水分解の程度に基づいて前記活性種の測定対象に対する付着量を求める付着量算出部を備えていることを特徴とする。
本発明は、不飽和二重結合を有する脂質を、平坦面に滴下して滴下直後と、所定時間後の平面積の差に基づいて前記脂質の加水分解の程度を求めるので、簡単に脂質の加水分解の程度を求めることができる。そして、この脂質の加水分解の程度に基づいて脂質を加水分解する成分の付着量を求めるので、測定空間中に浮遊する不飽和二重結合を有する脂質を加水分解する成分の付着量を求めることができる。
本発明の概略構成図である。 同上の制御部ブロック図である。 同上に用いる静電霧化器の概略構成図である。
以下、本発明を添付図面に示す実施形態に基づいて説明する。
図1には放出器1から測定空間2に放出された活性種の測定対象3に対する付着量を求める方法及び装置の概略構成図を示し、図2にはシステムの制御ブロック図を示している。
測定空間2は外部から遮断された閉空間で、この測定空間2内に放出器1、試料台4、撮像部5を配置する。
放出器1は、少なくともヒドロキシラジカル又はスーパーオキシドアニオン等の活性種を放出する機能を備えているものであればどのようなものでもよいが、例えば、ナノメータサイズの帯電微粒子水を放出する静電霧化器を挙げることができる。
試料台4は放出器1から所定の距離Lを隔てて配置する。この試料台4の上面は平坦面となっており、測定に当たって、この試料台4の上に測定対象3である不飽和二重結合を有する脂質を滴下するようになっている。
撮像部5は、顕微鏡・カメラにより構成してあって、試料台4の真上に配置し、試料台4の上面の平坦面に滴下した不飽和二重結合を有した脂質を撮像する。
撮像に当たっては、まず、滴下直後の不飽和二重結合を有した脂質を撮像し、次に、この脂質の滴下と同時又は滴下後任意時間後に放出器1の運転を開始し(活性種の放出を開始し)、所定時間経過した後の脂質を撮像するようになっている。
この撮像部5による撮像は、測定空間2の外に配置したパソコンよりなる制御部9からの撮像指令信号により撮像制御が行われ、撮像部5で撮像した画像データが制御部9に入力されるようになっている。
制御部9には、図2に示すように、平面積算出部6と、加水分解程度算出部7と、付着量算出部8を備えている。
平面積算出部6は、滴下直後の脂質の画像データ、活性種の放出を開始して所定時間経過した後における脂質の画像データから、滴下直後及び活性種の放出を開始して所定時間経過した後における脂質の平面積を算出する。
また、加水分解程度算出部7は、平面積算出部6で求めた滴下直後の脂質の平面積と、活性種の放出を開始して所定時間経過した後における脂質の平面積との差に基づいて、脂質の加水分解の程度を求める。
また、付着量算出部8は、加水分解程度算出部7で算出した前記脂質の加水分解の程度に基づいて活性種の測定対象3に対する付着量を求める。
図3には放出器1を構成する静電霧化器の一実施形態の概略構成図を示している。
静電霧化器は、放電電極10と、放電電極10に水を供給する水供給手段11と、放電電極10に供給された水に高電圧を印加して静電霧化により帯電微粒子水を生成するための電圧印加部13とを備えている。
放電電極10に水を供給する水供給手段11は、水溜め部に溜めた水を毛細管現象を利用して供給したり、加圧により水を供給したり、重力を利用して流下又は滴下することで水を供給したり、あるいは、ペルチェユニット11aのような冷却手段により空気中の水分を冷却して結露水を生成することで放電電極10に水を供給するようになっている。
図3に示す実施形態では、ペルチェユニット11aのような冷却手段を用いた例を示している。
また、図3に示す実施形態では、絶縁性を有する略筒状をした本体ケース14の内部を仕切りで仕切り、本体ケース14内の仕切りで仕切った片側半分に水供給手段11であるペルチェユニット11aを内装し、本体ケース14内の他の片側半分が静電霧化室となっている。
ペルチェユニット11aは、一対のペルチェ回路板を、互いの回路が向き合うように対向させ、多数列設してある熱電素子を両ペルチェ回路板間で挟持すると共に隣接する熱電素子同士を両側の回路で電気的に接続している。そして、ペルチェ入力リード線を介して熱電素子に通電すると、一方のペルチェ回路板側から他方のペルチェ回路板側に向けて熱が移動するように構成している。
一方の側のペルチェ回路板の外側には冷却部15を接続している。また、他方の側のペルチェ回路板の外側には放熱部16を接続しており、実施形態では放熱部16として放熱フィンの例を示している。
ペルチェユニット11aの冷却部15側に放電電極10の後端部を接続し、放電電極10を本体ケース14内の仕切り9に設けた孔を嵌通して静電霧化室内に突出している。
筒状をした本体ケース14の先端開口部に環状をした対向電極12が設けてある。
なお、対向電極12は必須の要件ではなく、遠方上としてもよく、また、静電霧化器が格納されるハウジングの他、帯電除去板を対向としてもよい。
放出器1を構成する静電霧化器を運転すると、ペルチェユニット11aに通電されて冷却部15が冷却され、冷却部15が冷却されることで放電電極10が冷却され、空気中の水分を結露して放電電極10の先端に水(結露水)を供給する。このように放電電極10に水が供給された状態で上記放電電極10の先端に供給された水に高電圧を印加することで、該高電圧により放電電極10の先端部に供給された水の水面が局所的に錐状に盛り上がり(テーラーコーン)が形成される。テーラーコーンが形成されると、該テーラーコーンの先端に電荷が集中してこの部分における電界強度が大きくなって、更にテーラーコーンを成長させる。テーラーコーンが成長し該テーラーコーンの先端に電荷が集中して電荷の密度が高密度となると、テーラーコーンの先端部分の水が大きなエネルギー(高密度となった電荷の反発力)を受ける。このように、テーラーコーンの先端部分の水が大きなエネルギーを受けると、表面張力を超えて分裂・飛散(レイリー分裂)を繰り返してマイナスに帯電したナノメータサイズの帯電微粒子水が大量に生成する。
静電霧化により生成される帯電微粒子水にはヒドロキシラジカル又はスーパーオキシドアニオン等の活性種が含まれており、この活性種による酸化作用で脱臭効果や、ウイルス、カビ菌の除菌、抑制効果などがある。
前記放出器1を構成する静電霧化器から放出される活性種の測定対象3に対する付着量を求めるには以下のようにして行う。
測定空間2内に配置した試料台4の平坦面となった上面に不飽和二重結合を有した脂質を滴下する。不飽和二重結合を有した脂質としては、例えば、クロロホルムを用いて所定濃度に調整したトリオレインを用いることができる。
試料台4の平坦面に不飽和二重結合を有した脂質を滴下した直後に脂質を撮像部5により撮像し、撮像した画像データを制御部9に入力する。
試料台4の平坦面への不飽和二重結合を有した脂質の滴下と同時又は滴下後任意時間経過後に、放出器1である静電霧化器の運転を開始して測定空間2内にラジカルを含む帯電微粒子水を放出する。
測定空間2内への帯電微粒子水の放出を行うと、測定空間2内を帯電微粒子水が浮遊し、この浮遊した帯電微粒子水が、所定距離L離れた試料台4上面に滴下した不飽和二重結合を有した脂質に付着すると、帯電微粒子水に含まれるラジカルの加水分解力(酸化力)により不飽和二重結合を有した脂質が加水分解される。不飽和二重結合を有した脂質が加水分解されると、濡れ性が良くなり、面方向の面積が大きくなる。
静電霧化器の運転開始によるラジカル放出開始から所定時間経過後に、脂質を撮像部5により撮像し、撮像した画像データを制御部9に入力する。
入力された滴下直後の脂質の画像データと、活性種の放出を開始して所定時間経過した後における脂質の画像データに基づいて、滴下直後の脂質の平面積と、活性種の放出を開始して所定時間経過した後における脂質の平面積を、平面積算出部6で求める。
次に、滴下直後の脂質の平面積と、活性種の放出を開始して所定時間経過した後における脂質の平面積の差を、加水分解程度算出部7で求めると共に、この平面積の差に基づいて、脂質の加水分解の程度を求める。
例えば、滴下直後の脂質の平面積をA、活性種の放出を開始して所定時間経過した後における脂質の平面積をB、その差をCとすると、B−A=Cとなる。そして、Aに対するCの割合を求めると、単位面積当たりの加水分解の割合(程度)を求めることができる。
ここで、試料台4上面の前記脂質を滴下するための平坦面を鏡面処理しておくことがこのましい。このように鏡面処理したものにおいては、凹凸がないため滴下した脂質の加水分解による広がりにばらつきがないようにでき、安定して単位面積当たりの加水分解の割合(程度)を求めることができる。
また、試料台4上面の前記脂質を滴下するための平坦面を親水性処理しておくのも好ましい。このように親水性処理をしたものにおいては、脂質が加水分解によって広がりやすくなるため、測定を精度よく行うことができる。
次に、このようにして求めた加水分解程度算出部7で算出した前記脂質の加水分解の程度に基づいて前記活性種の測定対象3に対する付着量を付着量算出部8で求める。
ここで、あらかじめ、測定対象3である不飽和二重結合を有する単位面積当たりの脂質の加水分解の割合と、加水分解に必要なラジカルの量の関係のデータをあらかじめデータベースに保存してある。したがって、付着量算出部8により、単位面積当たりの加水分解の割合(程度)に対応した単位面積当たりのラジカルの付着量を上記データベースから求める。
求めた単位面積当たりのラジカルの付着量は、制御部9からの出力によりディスプレーに表示したり、あるいは、プリントアウトにより文字で表示したりする。
このようにして放出器1から測定空間2に放出された活性種の測定対象に対する付着量を簡単に求めることができるので、放出器1から放出されたラジカルが、放出器1から所定距離L離れ定置する測定対象3に対する放出開始から所定時間経過後にどれだけ付着したかが簡単に推定でき、これに基づいて放出器1の評価等ができる。
上記実施形態では、放出器1として帯電微粒子水を生成して放出する静電霧化器を例として説明したが、放電電極に高電圧を印加して放電によりマイナスイオン又はプラスイオンを発生させる空気イオン放出器であってもよい。この場合、静電霧化器に比べると、活性種の発生量は少ないが、放電により空気中の水分を元にしてヒドロキシラジカルのような活性種が発生するので、本実施形態の場合も、測定空間に放出された活性種の測定対象に対する付着量を同様にして求めることができる。
なお、放出器1としては、上記静電霧化器、空気イオン放出器にのみ限定されず、少なくともラジカルを放出することができるものであれば、他の放出器であってもよいのはもちろんである。
以下、具体的な実施例につき説明する。
縦2.4m×横3.4m×高さ2.5mの周囲を壁、床、天井で外部に対して遮断した部屋を測定空間2とした。
測定空間2内の環境は、温度:25℃、湿度:40%RHとした。この測定空間2内に放出器1としての静電霧化器と、上面が平坦面となった試料台4と、撮像部5としてのカメラを配置した。静電霧化器と試料台4とは2m離して設置した。
使用する静電霧化器は、パナソニック電工株式会社製の静電霧化装置;09空質仕様(放電距離2.5mm、放電電極の先端が球面となった球面電極、電圧3.5kV、電流8μA)を使用した。
また、撮像部5としてのカメラは、キーエンス社製の顕微鏡・カメラ;VHX−100を使用した。
試料台4は金属(SUS304)製のものを使用した。
測定対象3である不飽和二重結合を有する脂質としてトリオレインをクロロホルム0.05%溶液で調整した溶液を、試料台4の上面の平坦面に0.2μlを滴下した。
滴下直後の脂質を試料台4の真上に配置した撮像部5で撮像した。
また、滴下と同時に静電霧化器の運転を開始して帯電微粒子水を生成し、測定空間2内に放出した。
静電霧化器を1時間運転し、静電霧化器の運転開始から1時間経過後の試料台4上の脂質を撮像部5で撮像した。
上記滴下直後の脂質の面積Aは0.16cmで、静電霧化器の運転開始から1時間経過後の脂質の面積Bは0.192cmで、その差(B−A=C)は0.032cmで、Aに対するCの割合は0.2であり、これに基づき、活性種の測定対象3に対する付着量を求めると、活性種の付着量は9.0×10−14molであった。
1 放出器
2 測定空間
3 測定対象
4 試料台
5 撮像部
6 平面積算出部
7 加水分解程度算出部
8 付着量算出部

Claims (5)

  1. 放出器から測定空間に放出された活性種の測定対象に対する付着量を求める方法であって、
    前記測定空間に配置した上面が平坦面となった試料台に測定対象である不飽和二重結合を有した脂質を滴下し、その後、前記放出器から少なくとも活性種を放出し、前記滴下直後の前記脂質の平面積と、放出を開始して所定時間経過した後の平面積を求め、両平面積の差に基づいて前記脂質の加水分解の程度を求め、前記脂質の加水分解の程度に基づいて前記活性種の付着量を求めることを特徴とする放出器から測定空間に放出された活性種の測定対象に対する付着量を求める方法。
  2. 前記滴下される脂質が、クロロホルムを用いて所定濃度に調整したトリオレインであることを特徴とする請求項1記載の放出器から測定空間に放出された活性種の測定対象に対する付着量を求める方法。
  3. 前記脂質を滴下する平坦面が鏡面処理されていることを特徴とする請求項1又は請求項2記載の放出器から測定空間に放出された活性種の測定対象に対する付着量を求める方法。
  4. 前記脂質を滴下する平坦面が親水性処理されていることを特徴とする請求項1又は請求項2記載の放出器から測定空間に放出された活性種の測定対象に対する付着量を求める方法。
  5. 放出器から測定空間に放出された活性種の測定対象に対する付着量を求めるシステムであって、
    測定空間中に少なくとも活性種を放出するための放出器と、前記測定空間に配置され上面の平坦面となった試料台と、前記平坦面に滴下された不飽和二重結合を有する脂質の滴下直後の前記脂質、及び、放出を開始して所定時間経過した後の前記脂質を撮像する撮像部と、前記撮像部で撮像した画像から脂質の平面積を求める平面積算出部と、この平面積算出部で算出した滴下直後の脂質の平面積と、放出を開始して所定時間経過した後の脂質の平面積の差に基づいて前記脂質の加水分解の程度を求める加水分解程度算出部と、この加水分解程度算出部で算出した前記脂質の加水分解の程度に基づいて前記活性種の測定対象に対する付着量を求める付着量算出部を備えていることを特徴とする放出器から測定空間に放出された活性種の測定対象に対する付着量を求めるシステム。
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