JP5406596B2 - ポリマーエマルジョンの製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、重合安定性、機械的安定性、塗膜の耐水性等に優れるポリマーエマルジョンの製造方法に関する。
酢酸ビニル、アクリル酸エステル等のビニル系モノマーの乳化重合によって得られるポリマーエマルジョンは、そのまま塗料、粘・接着剤、紙加工、繊維加工等の分野で使用され、また、分離された重合体はプラスチック、ゴムとして工業的に広く使用されている。
乳化重合には乳化剤として、直鎖アルキルベンゼンスルホン酸塩等の陰イオン性界面活性剤、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテルやポリオキシエチレンアルキルエーテル等の非イオン性界面活性剤が広く使用されてきた。それらは単独で、又は陰イオン−非イオン性界面活性剤の混合系で使用されている。
乳化重合用界面活性剤は、重合の開始反応、生長反応に影響を及ぼすのみでなく、重合中及び重合後のポリマーエマルジョンの物理的及び化学的特性に大きな影響を及ぼすため、重合安定性、生成したポリマーエマルジョンの機械的・化学的安定性が良好で、生成するエマルジョンの粒径が小さく、更には環境問題が発生しないこと等の性能が要求される。
ところで、前記のポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテルは、その生分解生成物に外因性内分泌攪乱物質の疑いがあることが問題となっており、自然環境に排出された場合、生態系に悪影響を及ぼすことが懸念されている。そこで、疎水基にアルキルフェノールを含まないポリオキシエチレンアルキルエーテルのような乳化剤への代替が進められてきている。
特許文献1には、エチレンオキサイドから誘導されるものではないノニオン性界面活性剤として、ポリグリセリン脂肪酸エステルを乳化重合用乳化剤として用いたエマルジョンの製造方法が開示されている。
また、特許文献2には、ポリグリセリンアルキルエーテルを乳化重合用乳化剤として使用するポリマーエマルジョンの製造方法が開示されている。
特表2004−526851号公報 特開2007−56081号公報
近年の環境保護問題において、カーボンニュートラルという観点から、環境中への二酸化炭素排出量を削減するため、従来の石油由来原料から植物由来原料への転換が進められている。しかし、従来の代表的な非イオン性界面活性剤であるポリオキシエチレンアルキルエーテルは、疎水基として植物由来の天然アルコールを使用すると、重合安定性、塗膜の耐水性が不十分で、また、エチレンオキシドは石油由来であり、原料植物化率を向上させることは困難であることが判明した。
本発明は、エチレンオキシドから誘導されるものではないノニオン性界面活性剤を使用したポリマーエマルジョンの乳化重合において、重合安定性、機械的安定性に優れ、塗膜の耐水性に優れるポリマーエマルジョンの製造方法を提供することを課題とする。
本発明者らは、ポリマーエマルジョンの製造に際して、特定のポリグリセリルエーテル組成物を乳化重合の乳化剤として用いることにより、前記の課題を解決しうることを見出した。
すなわち、本発明は、ポリグリセリルエーテル組成物の存在下でモノマーを乳化重合するポリマーエマルジョンの製造方法であって、該ポリグリセリルエーテル組成物が、希土類元素化合物の存在下、炭素数12の脂肪族アルコール(a1)と炭素数8〜18(ただし炭素数12は除く)の脂肪族アルコール(b1)を総量で90質量%以上含み、該脂肪族アルコール(b1)に対する該脂肪族アルコール(a1)の質量比〔(a1)/(b1)〕が60/40〜99/1であるアルコール成分とグリシドールとを反応させて得られるものである、ポリマーエマルジョンの製造方法を提供する。
本発明方法によれば、重合安定性、機械的安定性に優れ、ポリマー粒子の平均粒径が小さく、化学的安定性が良好で、塗膜の耐水性に優れるポリマーエマルジョンを、環境負荷画少なく、効率的に製造することができる。
本発明は、ポリグリセリルエーテル組成物の存在下でモノマーを乳化重合するポリマーエマルジョンの製造方法であり、用いられるポリグリセリルエーテル組成物は、希土類元素化合物の存在下、後述するアルコール成分とグリシドールとを反応させて得られるものである。この特定のポリグリセリルエーテル組成物を乳化重合時の乳化剤として用いることにより、前記の本発明の優れた効果を奏することができる。
<ポリグリセリルエーテル組成物>
本発明で用いられるポリグリセリルエーテル組成物は、下記一般式(I)で表される化合物からなる組成物が好ましい。
1−O−Xm (I)
(式中、R1は、炭素数8〜18の炭化水素基を示し、炭素数12の炭化水素基を60質量%以上含有する。Xは下記式(1−1)及び/又は(1−2)の基を示す。ここで、Zは、水素原子、X、及びYから選ばれる1種以上の基を示し、同一又は異なっていてもよいが、全てが水素原子のものは除く。Yは、前記ポリグリセリルエーテル組成物における下記式(2−1)及び/又は(2−2)の基を示す。mは重合度を示し、1以上の数であり、Yの数をnとすると、(m+n)は2〜10であり、〔(n−1)/(m+n)〕は0.01〜0.18である。)
Figure 0005406596
Xが2以上存在する場合、複数のXは同一でも異なっていてもよいが、前記式(1−1)及び/又は(1−2)の末端のZは、〔(n−1)/(m+n)〕=0.01〜0.18を満たすので、一般式(I)で表される化合物の末端部分は必然的にYとなる。
アルコール成分とグリシドールとの反応においては、アルコール成分とグリシドールの使用割合は、得られるポリグリセリルエーテル組成物における所望の重合度mの値によって、適宜選定される。
一般式(I)において、R1は、炭素数12の炭化水素基が60質量%以上であり、重合安定性と適切な平均粒径のポリマーエマルジョンを製造する観点から、好ましくは炭素数10〜16、より好ましくは炭素数12〜14の直鎖のアルキル基である。炭素数12以外のアルキル基としては、オクチル基、デシル基、テトラデシル基、ヘキサデシル基、オクタデシル基等が挙げられ、またアルケニル基としては、オクテニル基、デセニル基、オレイル基等が挙げられる。
一般式(I)において、重合度mは1以上の数であり、Yの数をnとすると、(m+n)は2〜10の数であるが、重合安定性と適切な平均粒径のポリマーエマルジョンを製造する観点から、好ましくは2〜7、より好ましくは2.8〜5.5である。
〔(n−1)/(m+n)〕は0.01〜0.18の範囲の数であり、これは、本発明で使用するアルキルポリグリセリルエーテル組成物が、直鎖状のアルキルポリグリセリルエーテル化合物を主成分とし、少量の分岐状のポリグリセリルエーテル化合物を含むことを示す。本発明において主成分とは、ポリグリセリルエーテル組成物中、直鎖状のアルキルポリグリセリルエーテル化合物が70質量%以上含有されることを意味する。
アルコールにグリシドールが付加重合する工程で、2分子目以降が付加する場合の反応部位は1級OH基と2級OH基の2つがある。1級OH基の方が2級OH基よりも反応しやすいが、2級OH基とも反応し、分岐構造が生じる。ここで適切な触媒を選択することにより、1級OH基との反応率を高め、選択性を向上させることができる。その詳細な理由は不明であるが、分岐構造を一部含ませることにより、得られるポリグリセリルエーテル組成物は、生分解性樹脂性を維持しつつ、界面活性剤としての特性にも優れるものとなる。
〔(n−1)/(m+n)〕は、好ましくは0.17以下、より好ましくは0.16以下である。また、その下限は好ましくは0.03以上、より好ましくは0.06以上、更に好ましくは0.09以上である。〔(n−1)/(m+n)〕が0.01未満であると、水への溶解性が低下し、0.18を超えると泡立ちが多くなるおそれがある。
〔(n−1)/(m+n)〕のうち、(m+n)は、ポリグリセリルエーテル組成物中のグリセリル骨格を有する基(即ち、炭素数が3であり、前記式(1−1)、(1−2)、(2−1)及び(2−2)から選ばれる1種以上の基)の数を示す。nは、グリセリル骨格のうち2つの水酸基(即ち、炭素数が3であり、前記式(2−1)及び(2−2)から選ばれる1種以上の基)を有する基の数を示す。
また、(n−1)は、グリセリル骨格を有する基の内、水酸基を1つも有しない基の数を示す。したがって、〔(n−1)/(m+n)〕は全グリセリル骨格を有する基の内、水酸基を1つも有さない基の割合を示す。〔(n−1)/(m+n)〕の算出は、13C−NMR測定に基づいて行うことができる(Macromol.1999,32,4240−4246参照)。
本発明のポリグリセリルエーテル組成物の〔(n−1)/(m+n)〕の調整は、アルコール成分と反応させるグリシドールの量や、用いる触媒の種類と量を適宜調節しながら反応させることにより行うことができる。たとえば、〔(n−1)/(m+n)〕を0.01〜0.18にする場合は、アルコール成分、特に脂肪族飽和一価アルコール1モルに対して、前記希土類元素化合物を触媒として用いて、グリシドールを2〜10モルの割合で反応させることにより行うことができる。
ポリグリセリルエーテル組成物中における、一般式(I)における(m+n)が3以上の化合物の含有量は、重合安定性と適切な平均粒径のポリマーエマルジョンを製造する観点から、好ましくは55〜85質量%、より好ましくは60〜80質量%であり、(m+n)が3〜5である化合物の合計含有量は、好ましくは20〜50質量%、より好ましくは25〜40質量%である。
本発明で使用するポリグリセリルエーテル組成物は、特定のアルコール成分とグリセリンから誘導されたグリシドールを原料とし、環境に対する影響が少ない。しかも、植物由来原料を使用することができるため、植物化率を高め、環境中への二酸化炭素排出量を削減することができる。
(ポリグリセリルエーテル組成物の製造)
(アルコール成分)
ポリグリセリルエーテル組成物の製造原料となるアルコール成分は、炭素数12の脂肪族アルコール(a1)と炭素数8〜18(ただし炭素数12は除く)の脂肪族アルコール(b1)を総量で90質量%以上含み、該脂肪族アルコール(b1)に対する該脂肪族アルコール(a1)の質量比〔(a1)/(b1)〕が60/40〜99/1であるアルコール成分である。
炭素数12の脂肪族アルコール(a1)は、ドデシルアルコール(ラウリルアルコール)等の脂肪族飽和一価アルコールである。炭素数8〜18の脂肪族アルコール(b1)(ただしドデシルアルコールは除く)としては、オクチルアルコール、デシルアルコール、テトラデシルアルコール、ヘキサデシルアルコール、オクタデシルアルコール等の脂肪族飽和一価アルコール、オレイルアルコール等の脂肪族不飽和一価アルコール等が挙げられる。
これらの中では、重合時の乳化安定性、得られたポリマーエマルジョンの化学的安定性、塗膜の耐水性等の観点から、ドデシルアルコールを除く炭素数10〜16、好ましくは炭素数12〜14の脂肪族飽和一価アルコール、さらにはデシルアルコール(炭素数10)とテトラデシルアルコール(炭素数14)が好ましい。
したがって、好ましい組み合わせは、ドデシルアルコール(炭素数12)とドデシルアルコールを除く炭素数10〜16の脂肪族飽和一価アルコールとの組み合わせであり、より好ましい組み合わせは、デシルアルコール(炭素数12)と炭素数12〜14の脂肪族飽和一価アルコールとの組み合わせであり、さらに好ましい組み合わせは、ドデシルアルコールとデシルアルコール、ドデシルアルコールとテトラデシルアルコールとの組み合わせである。
前記アルコール成分は、一種単独で又は二種以上を混合して用いることができる。
本発明で用いられるアルコール成分の好適例は、重合安定性と適切な平均粒径のポリマーエマルジョンを製造する観点から前記脂肪族アルコール(a1)と前記脂肪族アルコール(b1)を総量で、アルコール成分中、好ましくは95質量%以上、より好ましくは97質量%以上、より好ましく99質量%以上、更に好ましく実質100質量%含み、脂肪族アルコール(b1)に対する該脂肪族アルコール(a1)の質量比〔(a1)/(b1)〕が、好ましくは65/35〜99/1、より好ましくは70/30〜99/1のものである。
アルコール成分が脂肪族飽和一価アルコールである場合、グリシドールとの反応によって得られるポリグリセリルエーテル組成物のポリグリセリル単位(C362)は、下記式(3)から選ばれる1種以上の構造をとりうる。下記式(3)の構造は、その一部に、下記式(4)から選ばれる1種又は2種の構造を有することができる。
Figure 0005406596
Figure 0005406596
(式中、p、q、r、sは1以上の整数を示し、(C362)は前記と同じである。)
(ポリグリセリルエーテル組成物製造用触媒)
本発明においては、アルコール成分とグリシドールを反応させる際の触媒として希土類元素化合物を使用する。希土類元素化合物としては、反応収率と反応選択性の観点から、希土類元素の単純金属塩が好ましい。ここで、単純金属塩とは複塩や錯塩を除く金属塩をいう。
希土類元素の単純金属塩としては、通常、無機酸塩及び/又は有機酸塩が用いられる。高選択的付加反応の実現及びアルコール成分の転化率向上の観点、即ち、直鎖状成分が多く、ポリグリセリルエーテル組成物の収率を高める観点から、無機酸塩としては過塩素酸塩が好適であり、有機酸塩としてはスルホン酸塩が好適である。
この単純金属塩を構成する希土類元素としては、スカンジウム、イットリウムや、ランタン、セリウム、プラセオジム、ネオジム、サマリウム、ユウロピウム、ガドリニウム、テルビウム、ジスプロシウム、ホルミウム、エルビウム、ツリウム、イッテルビウム、ルテチウム等のランタノイドが好ましく、スカンジウム、ランタン、サマリウム、ユウロピウム、エルビウム、ルテチウム、イッテルビウムがより好ましく、スカンジウム、ランタン、サマリウム、イッテルビウムが更に好ましく、ランタン及び/又はサマリウムが特に好ましい。
希土類元素のスルホン酸塩としては、例えば下記一般式(5)で表される化合物が挙げられる。
M(OSO22)x (5)
(式中、Mは希土類元素、R2は、一部又は全部の水素原子がフッ素原子で置換されていてもよい炭化水素基、アルコキシル基、又は置換基を有していてもよいアリール基を示し、xはMの原子価に等しい整数値を示す。)
一般式(5)において、R2である炭化水素基、アルコキシル基としては、触媒として効率よく作用させる観点から、炭素数1〜12のものが好ましい。その具体例としては、メチル基、エチル基、ブチル基、ヘキシル基、オクチル基、デシル基、ドデシル基、メトキシ基、エトキシ基、ブトキシ基、ヘキシロキシ基、オクチロキシ基、デシロキシ基、ドデシロキシ基、トリフルオロメチル基、ペンタフルオロエチル基、ノナフルオロブチル基、トリフルオロメトキシ基、ペンタフルオロエトキシ基、ノナフルオロブトキシ基等が挙げられる。これらの中では、トリフルオロメチル基が好ましい。
また、R2である置換基を有していてもよいアリール基としては、全炭素数が6〜25のものが好ましい。その具体例としては、フェニル基、トリル基、キシリル基、エチルフェニル基、ブチルフェニル基、オクチルフェニル基、ドデシルフェニル基、ナフチル基、メチルナフチル基、ジメチルナフチル基等が挙げられる。これらの中では、ドデシルフェニル基、トリル基が好ましい。
一般式(5)で表される希土類元素のスルホン酸塩としては、例えばスカンジウム、ランタン、サマリウム、イッテルビウムのトリフラート(トリフルオロメタンスルホン酸塩)及びドデシルベンゼンスルホネート、トルエンスルホネートが好ましく、ランタン、サマリウムのトリフラート及びトリス(ドデシルベンゼンスルホネート)、トリス(トルエンスルホネート)がより好ましい。
前記希土類元素化合物は、単独で又は二種以上を組み合わせて用いることができる。
(反応条件)
希土類元素化合物の量は、短い反応時間で乳化重合に適したポリグリセリルエーテルを低コストで製造する観点から、アルコール成分に対して、通常0.001〜0.2モル倍、好ましくは0.002〜0.1モル倍、より好ましくは0.005〜0.05モル倍である。
反応は、無溶媒で行うこともできるが、原料の混合を助ける目的で有機溶媒を適宣量使用することもできる。かかる有機溶媒としては、ヘキサン、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジクロロメタン、アセトニトリル、ニトロメタン、ベンゼン、トルエン、キシレン、クロロホルム、シクロヘキサン、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド等が挙げられる。また、反応は空気中で行うこともできるが、副生成物の生成を抑える目的で、不活性ガス中、例えば窒素雰囲気下又はアルゴン雰囲気下で行うことが好ましい。
反応温度は、使用するアルコール成分の種類や、触媒の種類と量等により左右されるが、実用的な反応時間、収率、製品の品質等の面から、通常0〜200℃程度、好ましくは30〜170℃、より好ましくは50〜150℃、更に好ましくは80〜130℃である。また、反応時間は、反応条件によって左右され、一概に定めることはできないが、通常30分〜100時間程度、好ましくは1〜50時間、より好ましくは1〜30時間である。
反応終了後、反応液を必要に応じ洗浄処理したのち、ろ過、蒸留、抽出等の方法により処理し、目的のポリグリセリルエーテル組成物を得ることができる。また必要に応じて、得られたポリグリセリルエーテル組成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー、蒸留、再結晶等の常法に従って精製することができる。ここで、使用済みの希土類元素化合物は回収して再使用することができるが、そのためには、ポリグリセリルエーテル組成物の取得は抽出によるのが好ましい。すなわち、ポリグリセリルエーテル組成物の抽出後、希土類元素化合物を含有する水溶液を回収し、水を留去することにより希土類元素化合物を単離することができる。更に必要に応じて、単離した希土類元素化合物を精製後、本発明方法に再使用することができる。
<ポリマーエマルジョンの製造>
本発明のポリマーエマルジョンの製造方法は、前記ポリグリセリルエーテル組成物の存在下でモノマーを乳化重合する方法である。本発明のより好適な方法は、下記工程(1)及び(2)を有する方法である。
工程(1):前記ポリグリセリルエーテル組成物の存在下、モノマーを乳化させる工程
工程(2):工程(1)で得られたモノマー乳化液中のモノマー乳化粒子を、前記ポリグリセリルエーテル組成物の存在下で乳化重合させる工程
工程(1)で使用されるポリグリセリルエーテル組成物と、工程(2)で使用されるポリグリセリルエーテル組成物は同一であっても異なっていてもよいが、生産性の観点から同一であることが好ましい。
(モノマー)
本発明で用いられるモノマーに特に制限はないが、得られるポリマーエマルジョンの化学的安定性、塗膜の耐水性の観点から、ビニル系モノマーが好ましい。
ビニル系モノマーの具体例としては、スチレン、α−メチルスチレン、クロロスチレン等の芳香族ビニルモノマー;アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸2−エチルヘキシル等のアクリル酸エステル類;メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル等のメタクリル酸エステル類;アクリル酸、メタクリル酸等のカルボキシル基を有するビニルモノマー;塩化ビニル、臭化ビニル、塩化ビニリデン等のハロゲン化ビニル及びハロゲン化ビニリデン類;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等のビニルエステル類;アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のニトリル類;ブタジエン、イソプレン等の共役ジエン類等が挙げられる。
これらのモノマーは単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
(重合条件)
本発明において、ポリグリセリルエーテル組成物の使用量は、重合時の乳化安定性、得られるポリマーエマルジョンの化学的安定性、塗膜の耐水性の観点から、モノマー100質量部に対して、好ましくは0.1〜20質量部、より好ましくは0.5〜10質量部、より好ましくは0.8〜8質量部、更に好ましくは1〜5質量部である。ここで、モノマーを2種以上用いる場合は、それらの合計を100質量部として、ポリグリセリルエーテル組成物の使用量を決定する。
本発明で用いられる重合開始剤は、通常の乳化重合に用いられるものであればよく、特に制限はない。例えば、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム等の過硫酸塩、過酸化水素、t−ブチルハイドロパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド等の有機過酸化物、アゾビスジイソブチロニトリル、2,2−アゾビス(2−アミジノプロパン)ジハイドロクロライド等のアゾ系開始剤等が挙げられるが、過硫酸塩が好ましい。更に過酸化物に亜硫酸ナトリウム、ロンガリット、アスコルビン酸等の還元剤を組み合わせたレドックス系の開始剤も使用できる。
重合温度は、重合開始剤の分解温度によるが、通常50〜90℃が好ましく、過硫酸塩を用いる場合は70〜85℃が好ましい。
(その他の界面活性剤)
本発明においては、乳化重合時の重合安定性をより向上させ、得られるポリマーエマルジョンの機械的安定性等を向上させる観点から、前記ポリグリセリルエーテル組成物に加えて、更に他の界面活性剤を併用することもできる。
併用できるその他の界面活性剤は特に限定されないが、例えば、ノニオン性界面活性剤としては、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、脂肪酸ポリエチレングリコールエーテル、ソルビタン脂肪酸エステル等が挙げられ、アニオン性界面活性剤としては、脂肪酸セッケン、ロジン酸セッケン、アルカンスルホン酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルスルホコハク酸塩、ポリオキシエチレンアルキル硫酸塩等が挙げられ、カチオン性界面活性剤としてはステアリルトリメチルアンモニウム、セチルトリメチルアンモニウム、ラウリルトリメチルアンモニウム等が挙げられる。
前記その他の界面活性剤の中では、重合安定性の観点から、アニオン性界面活性剤が好ましく、塗膜の耐水性を向上させる観点から、ラジカル重合性二重結合基を有するアニオン性界面活性剤、いわゆる反応性アニオン性界面活性剤が好ましい。
反応性アニオン性界面活性剤は特に限定されず、市販品を使用することができるが、オキシブチレン基を有するもの、例えば、ポリオキシブチレンポリオキシエチレンアルケニルエーテル硫酸アンモニウム(花王株式会社製、商品名:ラテムルPD−104等)が好ましい。
アニオン性界面活性剤の使用量は、化学的安定性、塗膜の耐水性、植物化率の向上の観点から、ポリグリセリルエーテル組成物とアニオン性界面活性剤との質量比〔ポリグリセリルエーテル組成物/アニオン性界面活性剤〕で、好ましくは95/5〜60/40、より好ましくは90/10〜70/30、更に好ましくは85/15〜75/25の範囲になる量で用いることが望ましい。
また、乳化重合時の重合安定性を向上させる観点から、公知の保護コロイド剤を併用することができる。併用できる保護コロイド剤としては、完全けん化ポリビニルアルコール(PVA)、部分けん化PVA、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、ポリアクリル酸、アラビアゴム等が挙げられる。
(製造方法の好適態様)
以上の観点から、本発明の製造方法の好適態様としては、以下の(1)〜(4)の手順による方法が挙げられる。
(1)まず、ポリグリセリルエーテル組成物及びアニオン性界面活性剤の合計量として、モノマー100質量部に対して0.5〜10質量部使用し、モノマーを乳化させ、モノマーの濃度が40〜70質量%の滴下用乳化液を調製する。
(2)次に、重合反応容器に水性媒体を仕込み、さらにポリグリセリルエーテル組成物及びアニオン性界面活性剤を合計量で、モノマー100質量部に対して好ましくは0.1〜3質量部、より好ましくは0.2〜1.2質量部、更に好ましくは0.4〜0.8質量部添加して、界面活性剤水溶液を調製する。
(3)上記(2)で得られた界面活性剤水溶液に対して、上記(1)で得られた滴下乳化液を好ましくは2〜10質量%、より好ましくは3〜7質量%添加し、ポリグリセリルエーテル組成物の存在下でモノマーの乳化重合を開始する。
(4)滴下用乳化液は好ましくは1〜10時間、より好ましくは2〜5時間かけて滴下し、モノマーを乳化重合させた後、1〜5時間熟成する。
以下の実施例及び比較例において、「%」は「質量%」である。
なお、13C−NMRの測定は、Varian社製、13C−NMR測定装置「Unity INOVA500 (500MHz)」を用いて、溶媒:CD3OD、測定温度:50℃、測定モード:逆ゲート付デカップリング法(inverse−gated decoupling法)、パルス遅延時間:50secの条件で行った。
製造例1〔アルキルポリグリセリルエーテル組成物(p−1)の製造〕
植物由来の炭素数12の直鎖アルコール(花王株式会社製、ラウリルアルコール、製品名:カルコール2098)93.2g(0.50mol)、植物由来の炭素数14の直鎖アルコール(花王株式会社製、ミリスチルアルコール、製品名:カルコール4098)36.3g(0.169mol)、ランタントリフラート3.93g(0.00669mol)を500mL四つ口フラスコに入れ、窒素気流下、攪拌しながら90℃まで昇温した。次に、その温度を保持しながら植物由来のグリシドール198.2g(2.676mol)を24時間かけて滴下し、そのまま2時間攪拌を続け、アルキルポリグリセリルエーテル組成物(p−1)を含む反応生成物331.6gを得た。
得られた反応生成物をガスクロマトグラフィーによって分析した結果、グリシドールは検出されず(グリシドール転化率:99.9%以上)、また未反応アルコール残量は3.7質量%(アルコール転化率:91%)であった。
得られたアルキルポリグリセリルエーテル組成物(p−1)の13C−NMRの測定結果から、前記一般式(I)におけるmは2.4、nは1.6であり、(m+n)の値が3以上の化合物は全組成物中の72%、(m+n)の値が3、4、及び5である化合物は、全組成物中の30%を占めていた。また、〔(n−1)/(m+n)〕の値は0.15であった。
結果を表1に示す。
製造例2〔アルキルポリグリセリルエーテル組成物(p−2)の製造〕
植物由来の炭素数12の直鎖アルコール(前記カルコール2098)93.2g(0.50mol)、植物由来の炭素数14の直鎖アルコール(前記カルコール4098)36.3g(0.169mol)、ランタントリス(パラトルエンスルホネート)4.19g(0.00669mol)を500mL四つ口フラスコに入れ、窒素気流下、攪拌しながら120℃まで昇温した。次に、その温度を保持しながら植物由来のグリシドール198.2g(2.676mol)を10時間かけて滴下し、そのまま2時間攪拌を続け、アルキルポリグリセリルエーテル組成物(p−2)を含む反応生成物331.8g(グリシドール転化率:99.9%以上)を得た。
得られた反応生成物をガスクロマトグラフィーによって分析した結果、反応液中の未反応アルコールの残量は3.3質量%(アルコール転化率:92%)であった。
得られたアルキルポリグリセリルエーテル組成物(p−2)の13C−NMRの測定結果から、前記一般式(I)におけるmは3.5、nは1.5であり、(m+n)の値が3以上の化合物は全組成物中の71%、(m+n)の値が3、4、及び5である化合物は全組成物中の31%を占めていた。また、〔(n−1)/(m+n)〕の値は0.10であった。
結果を表1に示す。
製造例3〔アルキルポリグリセリルエーテル組成物(p−3)の製造〕
植物由来の炭素数12の直鎖アルコール(前記カルコール2098)111.8g(0.60mol)、植物由来の炭素数14の直鎖アルコール(前記カルコール4098)25.7g(0.12mol)ランタントリフラート4.23(0.0072mol)を500mL四つ口フラスコに入れ、窒素気流下、攪拌しながら90℃まで昇温した。次に、その温度を保持しながら植物由来のグリシドール133.3(1.80mol)を24時間かけて滴下し、そのまま2時間攪拌を続け、アルキルポリグリセリルエーテル組成物(p−3)を含む反応生成物275.0gを得た。
得られた反応生成物をガスクロマトグラフィーによって分析した結果、グリシドールは検出されず(グリシドール転化率:99.9%以上)、また未反応アルコール残量は9.8質量%(アルコール転化率:80%)であった。反応生成物より未反応アルコールを蒸留にて除き、アルキルポリグリセリルエーテル組成物(p−3)を得た。
得られたアルキルポリグリセリルエーテル組成物(p−3)の13C−NMRの測定結果から、前記一般式(I)におけるmは1.2、nは1.3であり、(m+n)の値が3以上の化合物は全組成物中の62%、(m+n)の値が3、4、及び5である化合物は全組成物中の33%を占めていた。また、〔(n−1)/(m+n)〕の値は0.12であった。
結果を表1に示す。
比較製造例1〔アルキルポリグリセリルエーテル組成物(p−4)の製造〕
植物由来の炭素数12の直鎖アルコール(前記カルコール2098)55.9g(0.30mol)、植物由来の炭素数14の直鎖アルコール(前記カルコール4098)64.3g(0.12mol)カリウムメチラート8.42g(0.12mol)を500mL四つ口フラスコに入れ、25kPaの減圧条件下、攪拌しながら95℃に昇温しメタノールを留去した。次いで、植物由来のグリシドール177.8g(2.40mol)を窒素気流下、95℃にて24時間かけて滴下し、そのまま2時間攪拌を続けた。反応終了後、硫酸5.88g(0.060mol)と水20gを加え、触媒を中和処理し、アルキルポリグリセリルエーテル組成物(p−4)を含む反応生成物328.3g(グリシドール転化率:99.9%以上)を得た。
得られた反応生成物をガスクロマトグラフィーによって分析した結果、反応液中の未反応アルコールの残量は15.3質量%(アルコール転化率:58%)であった。
得られたアルキルポリグリセリルエーテル組成物(p−4)の13C−NMRの測定結果から、前記一般式(I)におけるmは2.2、nは1.8であり、(m+n)の値が3以上の化合物は全組成物中の72%、(m+n)の値が3、4、5である化合物は、全組成物中の18%を占めていた。また、〔(n−1)/(m+n)〕の値は0.20であった。
結果を表1に示す。
比較製造例2〔アルキルポリグリセリルエーテル組成物(p−5)の製造〕
比較製造例1で得られた反応生成物から未反応アルコールを蒸留により除いて、アルキルポリグリセリルエーテル組成物(p−5)を調製した。
得られたアルキルポリグリセリルエーテル組成物(p−5)における前記一般式(I)のmは2.2、nは1.8、〔(n−1)/(m+n)〕の値は0.20であり、(m+n)の値が3以上の化合物は、全組成物中の85%、(m+n)の値が3、4、5である化合物は、全組成物中の21%を占めていた。結果を表1に示す。
Figure 0005406596
実施例1〜8、及び比較例1〜6
表2に示すように、製造例1〜3、比較製造例1〜2で得られたアルキルポリグリセリルエーテル組成物、その他の非イオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤を準備し、攪拌機、原料投入口を備えた1Lフラスコに、イオン交換水150g、重合開始剤として過硫酸カリウム0.32g、表2に示すポリグリセリルエーテル組成物又は非イオン性界面活性剤を4.32g、アニオン性界面活性剤0.48gを混合し、500r/分で攪拌しながら、アクリル酸ブチル98.5g、メタクリル酸メチル98.5g、アクリル酸3.0gのモノマー混合物を約5分間かけて滴下し、30分間攪拌して乳化物滴下液を得た。
次に攪拌機、原料投入口を備えた1Lセパラブルフラスコ内に、イオン交換水150g、重合開始剤として過硫酸カリウム0.08g、本発明のアルキルポリグリセリルエーテル組成物又は比較の非イオン性界面活性剤0.48g、アニオン性界面活性剤0.72gを混合し、上記乳化物滴下液の5%量(17.76g)を仕込み、80℃に昇温し、30分間乳化重合を行なった。なお、非イオン性界面活性剤/アニオン性界面活性剤(質量比)=80/20であった。
その後、残りの乳化物滴下液を3時間かけて滴下し、滴下終了後、更に2時間熟成し、ポリマーエマルジョンを得た。得られたポリマーエマルジョンを30℃以下に冷却し、200メッシュステンレス金網でろ過し、エマルジョン中の凝集物を回収した。フラスコ内、及び攪拌羽根に付着した凝集物も回収した。
実施例9〜16、及び比較例7〜12
表3に示す本発明の界面活性剤組成物及び比較の非イオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤を用い、使用するモノマーをアクリル酸ブチル97.5g、スチレン97.5g、アクリル酸5.0gとした以外は、実施例1〜8、比較例1〜6と同様にして重合した。
実施例17〜19
製造例1〜2で得られたアルキルポリグリセリルエーテル組成物、アニオン性界面活性剤を準備し、攪拌機、原料投入口を備えた1Lフラスコに、イオン交換水150g、重合開始剤として過硫酸カリウム0.32g、表4に示すポリグリセリルエーテル組成物を4.86g、アニオン性界面活性剤0.24gを混合し、500r/分で攪拌しながら、アクリル酸ブチル98.5g、メタクリル酸メチル98.5g、アクリル酸3.0gのモノマー混合物を約5分間かけて滴下し、30分間攪拌して乳化物滴下液を得た。
次に攪拌機、原料投入口を備えた1Lセパラブルフラスコ内に、イオン交換水150g、重合開始剤として過硫酸カリウム0.08g、本発明のアルキルポリグリセリルエーテル組成物0.54g、アニオン性界面活性剤0.36gを混合し、上記乳化物滴下液の5%量(17.77g)を仕込み、80℃に昇温し、30分間乳化重合を行なった。なお、非イオン性界面活性剤/アニオン性界面活性剤(質量比)=90/10であった。
その後、残りの乳化物滴下液を3時間かけて滴下し、滴下終了後、更に2時間熟成し、ポリマーエマルジョンを得た。得られたポリマーエマルジョンを30℃以下に冷却し、200メッシュステンレス金網でろ過し、エマルジョン中の凝集物を回収した。フラスコ内、及び攪拌羽根に付着した凝集物も回収した。
実施例20〜22
製造例2〜3で得られたアルキルポリグリセリルエーテル組成物、アニオン性界面活性剤を準備し、攪拌機、原料投入口を備えた1Lフラスコに、イオン交換水150g、重合開始剤として過硫酸カリウム0.32g、表4に示すポリグリセリルエーテル組成物を3.78g、アニオン性界面活性剤1.02gを混合し、500r/minで攪拌しながら、アクリル酸ブチル98.5g、メタクリル酸メチル98.5g、アクリル酸3.0gのモノマー混合物を約5分間かけて滴下し、30分間攪拌して乳化物滴下液を得た。
次に攪拌機、原料投入口を備えた1Lセパラブルフラスコ内に、イオン交換水150g、重合開始剤として過硫酸カリウム0.08g、本発明のアルキルポリグリセリルエーテル組成物0.42g、アニオン性界面活性剤0.78gを混合し、上記乳化物滴下液の5%量(17.72g)を仕込み、80℃に昇温し、30分間乳化重合を行なった。なお、非イオン性界面活性剤/アニオン性界面活性剤(質量比)=70/30であった。
その後、残りの乳化物滴下液を3時間かけて滴下し、滴下終了後、更に2時間熟成し、ポリマーエマルジョンを得た。得られたポリマーエマルジョンを30℃以下に冷却し、200メッシュステンレス金網でろ過し、エマルジョン中の凝集物を回収した。フラスコ内、及び攪拌羽根に付着した凝集物も回収した。
実施例23〜24
製造例1〜2で得られたアルキルポリグリセリルエーテル組成物、アニオン性界面活性剤を準備し、攪拌機、原料投入口を備えた1Lフラスコに、イオン交換水150g、重合開始剤として過硫酸カリウム0.32g、表4に示すポリグリセリルエーテル組成物を3.24g、アニオン性界面活性剤0.96gを混合し、500r/minで攪拌しながら、アクリル酸ブチル98.5g、メタクリル酸メチル98.5g、アクリル酸3.0gのモノマー混合物を約5分間かけて滴下し、30分間攪拌して乳化物滴下液を得た。
次に攪拌機、原料投入口を備えた1Lセパラブルフラスコ内に、イオン交換水150g、重合開始剤として過硫酸カリウム0.08g、本発明のアルキルポリグリセリルエーテル組成物0.36g、アニオン性界面活性剤1.44gを混合し、上記乳化物滴下液の5%量(17.73g)を仕込み、80℃に昇温し、30分間乳化重合を行なった。なお、非イオン性界面活性剤/アニオン性界面活性剤(質量比)=60/40であった。
その後、残りの乳化物滴下液を3時間かけて滴下し、滴下終了後、更に2時間熟成し、ポリマーエマルジョンを得た。得られたポリマーエマルジョンを30℃以下に冷却し、200メッシュステンレス金網でろ過し、エマルジョン中の凝集物を回収した。フラスコ内、及び攪拌羽根に付着した凝集物も回収した。
実施例及び比較例で得られたポリマーエマルジョンを下記方法で性能を評価した。結果を表2〜4に示す。
なお、表2〜4中の界面活性剤の詳細は、以下のとおりである。
・p−1:製造例1で得られたアルキルポリグリセリルエーテル組成物
・p−2:製造例2で得られたアルキルポリグリセリルエーテル組成物
・p−3:製造例3で得られたアルキルポリグリセリルエーテル組成物
・p−4:比較製造例1で得られたアルキルポリグリセリルエーテル組成物
・p−5:比較製造例2で得られたアルキルポリグリセリルエーテル組成物
・p−6:ポリオキシエチレン(35)ドデシルエーテル(植物化率:10.8%)
・k−1:ラウリル硫酸ナトリウム(花王株式会社製、アニオン性界面活性剤、商品名:エマール2F−30、植物化率:100%)
・k−2:ポリオキシエチレン(18)アルキルエーテル硫酸ナトリウム(花王株式会社製、アニオン性界面活性剤、商品名:ラテムルE−118B、植物化率:18.3%)
・k−3:ポリオキシブチレンポリオキシエチレンアルケニルエーテル硫酸アンモニウム(花王株式会社製、アニオン性界面活性剤、商品名:ラテムルPD−104、植物化率:0%)
・k−4:グリセロール−1−アリル−3−長鎖アルコキシ−2−ポリオキシエチレン硫酸アンモニウム(株式会社ADEKA製、アニオン性界面活性剤、商品名:リアソープSR−1025、植物化率:0%)
<性能評価方法>
(1)重合安定性
回収した凝集物を水洗後26.6kPa、105℃で2時間乾燥・秤量して、凝集物量を求めた。使用したモノマーの総量に対する凝集物の質量%で、重合安定性を表した。
(2)平均粒径
得られたポリマーエマルジョンを25%アンモニア水で中和し、pH8〜9とした。ベックマン・コールター社製の動的光散乱法粒径測定装置、N4 Plusを使用して、中和後のポリマーエマルジョン粒子の体積平均粒径を測定した。
(3)機械的安定性
上記中和後のポリマーエマルジョン50gをマロン式機械的安定性試験機にて、98N、1000r/minの条件で5分間回転させ、生成した凝集物を200メッシュステンレス金網でろ過し、ろ過残渣を水洗後に、26.6kPa、105℃で2時間乾燥、秤量して、ポリマーに対する凝集物量を質量%で表した。凝集物量が小さいほど機械的安定性が良好である。
(4)化学的安定性
ポリマーエマルジョンをイオン交換水でポリマー濃度3%に希釈し、1mol/L塩化カルシウム水溶液を用いて滴定することにより、凝集物が生じる塩化カルシウム濃度を測定した。凝集物が生じる塩化カルシウム濃度が高いほど化学的安定性は良好である。
(5)ポリマーエマルジョン塗膜の耐温水白化性
上記中和後のポリマーエマルジョンを、透明アクリル板上にアプリケーターを使用して、乾燥膜厚が50μmとなるよう塗工し、熱風乾燥機で100℃、10分間乾燥した。このアクリル板を60℃の温水に24時間浸漬した後、ヘイズメーターを使用して、塗膜のヘイズ値を測定した。耐温水白化性はヘイズ値が小さいほど良好である。
(6)植物化率
ポリマーエマルジョンの製造に使用した界面活性剤の植物化率は、界面活性剤を構成する成分の原料中の有機化合物原料に対する植物由来原料の質量比(植物由来原料/有機化合物原料)として定義される。
例えば、実施例1において、製造例1で得られたアルキルポリグリセリルエーテル組成物は、植物由来のアルコールと植物由来のグリシドールの反応生成物であり、植物化率は100%である。また、アニオン性活性剤(k−1:ラウリル硫酸ナトリウム)を構成する成分のうち、有機化合物原料はラウリルアルコールであり植物化率は100%となる。
実施例1で使用した界面活性剤は、製造例1で得られたアルキルポリグリセリルエーテル組成物とラウリル硫酸ナトリウムを80/20で使用するものであるが、どちらの活性剤も植物化率は100%なので、実施例1で使用した界面活性剤の植物化率は100%となる。
Figure 0005406596
Figure 0005406596
Figure 0005406596
表2〜4から、実施例により得られたポリマーエマルジョンは、比較例により得られたポリマーエマルジョンに比べて、重合安定性、機械的安定性が優れ、塗膜の耐水性も優れている。また、全体的にポリマー粒子の平均粒径が小さく、化学的安定性、植物化率が良好であることが分かる。
本発明の製造方法により得られるポリマーエマルジョンは、例えば、印刷インキ、塗料等のバインダー、インクジェット用表面コート剤、接着剤、粘着剤等として好適に使用することができる。
また、本発明で用いられるポリグリセリルエーテル組成物は、植物由来原料を使用することができるため、植物化率を高め、環境中への二酸化炭素排出量を削減することができる。

Claims (4)

  1. ポリグリセリルエーテル組成物の存在下でモノマーを乳化重合するポリマーエマルジョンの製造方法であって、該ポリグリセリルエーテル組成物が、希土類元素化合物の存在下、炭素数12の脂肪族アルコール(a1)と炭素数8〜18(ただし炭素数12は除く)の脂肪族アルコール(b1)を総量で90質量%以上含み、該脂肪族アルコール(b1)に対する該脂肪族アルコール(a1)の質量比〔(a1)/(b1)〕が60/40〜99/1であるアルコール成分とグリシドールとを反応させて得られるものであり、
    ポリグリセリルエーテル組成物が下記一般式(I)で表され、ポリグリセリルエーテル組成物中における、一般式(I)における(m+n)が3以上の化合物の含有量が55〜85質量%であり、(m+n)が3〜5である化合物の合計含有量が20〜50質量%である、ポリマーエマルジョンの製造方法。
    1 −O−Xm (I)
    (式中、R 1 は、炭素数12〜14の炭化水素基を示し、炭素数12の炭化水素基を60質量%以上含有する。Xは下記式(1−1)及び/又は(1−2)の基を示す。ここで、Zは、水素原子、X、及びYから選ばれる1種以上の基を示し、同一又は異なっていてもよいが、全てが水素原子のものは除く。Yは、前記ポリグリセリルエーテル組成物における下記式(2−1)及び/又は(2−2)の基を示す。mは重合度を示し、1以上の数であり、Yの数をnとすると、(m+n)は2〜10であり、〔(n−1)/(m+n)〕は0.01〜0.18である。)
    Figure 0005406596
  2. ポリグリセリルエーテル組成物と、更にアニオン性界面活性剤の存在下で乳化重合する、請求項1に記載のポリマーエマルジョンの製造方法。
  3. アニオン性界面活性剤が、ラジカル重合性二重結合基を有するものである、請求項に記載のポリマーエマルジョンの製造方法。
  4. 下記工程(1)及び(2)を有する請求項1〜のいずれかに記載のポリマーエマルジョンの製造方法であって、ポリグリセリルエーテル組成物が、希土類元素化合物の存在下、炭素数12の脂肪族アルコール(a1)と炭素数8〜18(ただし炭素数12は除く)の脂肪族アルコール(b1)を総量で90質量%以上含み、該脂肪族アルコール(b1)に対する該脂肪族アルコール(a1)の質量比〔(a1)/(b1)〕が60/40〜99/1であるアルコール成分とグリシドールとを反応させて得られるものである、ポリマーエマルジョンの製造方法。
    工程(1):ポリグリセリルエーテル組成物の存在下、モノマーを乳化させる工程
    工程(2):工程(1)で得られたモノマー乳化液中のモノマー乳化粒子を、ポリグリセリルエーテル組成物の存在下で乳化重合させる工程
    (ただし、工程(1)及び(2)で使用されるポリグリセリルエーテル組成物は、同一であっても異なっていてもよい。)
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