<第1の実施の形態>
図1は、本発明の第1の実施の形態である空気調和機の制御装置10を備える空気調和機システム1の構成を示すブロック図である。本実施の形態の空気調和機の制御装置(以下、単に「制御装置」という)10は、同一の空間5を空調対象として設置される複数の空気調和機(以下、単に「空調機」という場合がある)20a〜20dを制御する。以下では、複数の空調機20a〜20dが空調対象とする空間、すなわち複数の空調機20a〜20dによる空調対象の空間である前記同一の空間5を「空調対象空間」という。本実施の形態では、壁4で区切られた1つの室内の空間を「空調対象空間5」としている。
空気調和機システム(以下「空調機システム」という場合がある)1は、制御装置10と、複数の空調機20a〜20dとを備える。本実施の形態では、空調機システム1は、4台の空調機20a〜20d、具体的には第1〜第4空調機20a〜20dを備える。以下の説明において、第1空調機20aを「空調機No1」と記載し、第2空調機20bを「空調機No2」と記載し、第3空調機20cを「空調機No3」と記載し、第4空調機20dを「空調機No4」と記載することがある。また不特定の空調機を示す場合には、「空調機20」のように、参照符号の添え字「a」〜「d」を省略して記載することがある。
各空調機20a〜20dは、室内機2a〜2dと室外機3a〜3dとを備える。具体的には、第1空調機20aは、第1室内機2aおよび第1室外機3aを備える。第2空調機20bは、第2室内機2bおよび第2室外機3bを備える。第3空調機20cは、第3室内機2cおよび第3室外機3cを備える。第4空調機20dは、第4室内機2dおよび第4室外機3dを備える。以下の説明において、不特定の室内機を示す場合には、「室内機2」のように、参照符号の添え字「a」〜「d」を省略して記載することがある。また、不特定の室外機を示す場合には、「室外機3」のように、参照符号の添え字「a」〜「d」を省略して記載することがある。
各室内機2は、空調対象空間5の中に配置される。各室外機3は、空調対象空間5の外に配置される。室内機2a〜2dと室外機3a〜3dとは、対応する冷媒配管7a〜7dによって接続される。具体的には、第1室内機2aと第1室外機3aとは、第1冷媒配管7aによって接続される。第2室内機2bと第2室外機3bとは、第2冷媒配管7bによって接続される。第3室内機2cと第3室外機3cとは、第3冷媒配管7cによって接続される。第4室内機2dと第4室外機3dとは、第4冷媒配管7dによって接続される。以下の説明において、不特定の冷媒配管を示す場合には、「冷媒配管7」のように、参照符号の添え字「a」〜「d」を省略して記載することがある。
各空調機20は、制御装置10からの制御に従って、冷媒配管7中を流れる冷媒の圧力を変化させ、冷媒の吸熱および放熱によって、空調対象空間5の空気調和を行う。より詳細には、各空調機20は、空調対象空間5のうち、自機の室内機2が設置される付近の空間(以下「エリア」という場合がある)の空気調和を主に担当する。以下では、各空調機20の担当するエリアを「担当エリア」または「空調エリア」という場合がある。各空調機20は、他の空調機20が運転を停止している場合は、他の空調機20の担当エリアも含めて、空調対象空間5の空気調和を行う。
本実施の形態では、一例として、4台の空調機20を含む空調機システム1について説明するが、空調機20の台数は4台に限定されるものではなく、空調機20はN(Nは2以上の自然数)台でもよい。
また本実施の形態では、一例として、1つの空調機20が、室内機2および室外機3を1台ずつ備える場合を説明するが、これに限らず、1つの空調機20が、室内機2および室外機3を複数台ずつ備える構成であってもよい。
制御装置10は、各室内機2と通信可能に接続される。本実施の形態では、制御装置10と各室内機2との通信は有線通信であり、制御装置10は、各室内機2と通信線8で接続されている。制御装置10は、室内機2および室外機3に設置されている不図示のセンサなどの計測手段によって計測された計測データ、および空調機20の運転状態、具体的には室内機2および室外機3の運転状態に関する情報を、入力情報として室内機2から受け取る。
制御装置10は、ユーザが設定する空調機20に関する設定情報、および制御装置10の内部で演算した結果のデータなどを室内機2および室外機3へ制御信号として送出する。制御装置10から室外機3へ送出される制御信号は、室内機2を介して室外機3に与えられる。
制御装置10は、本発明を適用しない場合の通常のコントロール機能を有する通常のリモートコントローラ(以下「リモコン」という)と一体に構成されてもよいし、通常のリモコンとは別に設けられてもよい。また制御装置10は、計算機によって実現されてもよい。制御装置10と各室内機2との通信は、無線通信であってもよい。
図2は、本発明の第1の実施の形態における制御装置10の構成を示す機能ブロック図である。図2に示すように、制御装置10は、データ格納部11、データ記憶部12、データ設定部13、全体空調負荷演算部14、空調能力配分演算部15、制御信号送出部16、および重み付けデータ設定部17を備えて構成される。
データ格納部11は、データ格納手段に相当する。データ記憶部12は、データ記憶手段に相当する。全体空調負荷演算部14は、全体空調負荷算出手段に相当する。空調能力配分演算部15は、空調能力配分演算手段に相当する。制御信号送出部16は、制御信号送出手段に相当する。重み付けデータ設定部17は、重み付けデータ設定手段に相当する。
データ格納部11は、ユーザから入力された設定データ、通信線8を通じて入力される空調負荷データおよび運転情報データ、演算部で実行する演算途中の中間データ、ならびに演算終了後に得られる制御用の出力データを格納する。各データの内容は後述する。
データ記憶部12は、全体空調負荷演算部14および空調能力配分演算部15が演算に使用する基本的な定義データなどを記憶し、演算で必要なときに参照される。データ記憶部12に記憶されるデータとしては、たとえば、空調能力と消費電力との関係を定義した性能モデルを表す関数の係数データ、ならびに最大空調能力および最小空調能力などの性能モデルデータが挙げられる。係数データおよび性能モデルデータなどのデータは、空調機20毎にデータ記憶部12に記憶される。係数データおよび性能モデルデータの内容は後述する。
データ設定部13は、演算に関する必要な種々のデータをセット、すなわち設定する。またデータ設定部13は、初期化処理を実行する。
全体空調負荷演算部14は、データ格納部11から、次の制御タイミングにおける各空調機20の能力値(以下「空調負荷」という場合がある)を表す空調負荷データを読み出して参照する。そして全体空調負荷演算部14は、次の制御タイミングにおける各空調機20の空調負荷の合計値である全体空調負荷を演算して求める。全体空調負荷演算部14は、演算処理の実行後に得られる全体空調負荷を表す全体空調負荷データを、データ格納部11に書き込む。
重み付けデータ設定部17は、空調対象空間5内を計測して得られた計測データに基づいて、重み付けデータを設定する。計測データは、室内機2に予め設置されている計測手段、たとえば後述の図3に示す室内温度センサ23を利用して取得される。計測データは、室内機2に予め設置されている計測手段とは別に、新たに室内機2に設置される計測手段、たとえばセンサを利用して取得されてもよい。また計測データを取得するための計測手段は、室内機2とは別に空調対象空間5内に配置される計測手段、たとえばセンサであってもよい。計測データは、空調対象空間5内の状況を表す物理量、たとえば温度、熱量、湿度、負荷量などである。また、計測データは、空調対象空間5内に存在する人の数であってもよい。計測データは、空調機20毎に取得され、各空調機20の担当エリア内の状況を表す物理量、または担当エリア内に存在する人の数を表す。
室内機2に予め設置されている計測手段を利用して計測データを取得する場合には、重み付けデータ設定部17は、データ格納部11に格納されている計測データ、たとえば、次の制御タイミングにおける各空調機20の能力値を表す空調負荷データを参照し、次の制御タイミングにおける各空調機20に対する重み付けデータを演算して求める。そして、重み付けデータ設定部17は、演算実行後に得られる重み付けデータを、データ格納部11に書き込む。
重み付けデータ設定部17は、計測データではなく、ユーザがデータ設定部13を通じてデータ格納部11に設定した数値を参照してもよい。重み付けデータ設定部17が参照するデータは、データ格納部11に格納されている他のデータであってもよい。
空調能力配分演算部15は、データ格納部11から、全体空調負荷データと重み付けデータとを読み出して参照する。また空調能力配分演算部15は、データ記憶部12から、性能モデルデータを読み出して参照する。そして、空調能力配分演算部15は、重み付けデータと性能モデルデータとを考慮して、全体空調負荷とのバランスを保持して消費電力を低減する空調能力の各室外機3に割り当てる配分量を演算して求める処理を実行する。空調能力配分演算部15は、演算処理の実行後に得られる空調能力値を、データ格納部11に書き込む。空調能力配分演算部15における処理の詳細は後述する。
制御信号送出部16は、演算結果として得られた各空調機20の空調能力をデータ格納部11から読み出し、読み出した空調能力で動作する指示を表す制御信号を、通信線8を通じて各空調機20に送出する処理を実行する。
全体空調負荷演算部14、空調能力配分演算部15、制御信号送出部16、および重み付けデータ設定部17は、これらの機能を有する回路デバイスなどのハードウェアによって実現することもできるし、マイクロコンピュータ(略称:マイコン)およびCPU(Central Processing Unit)などの演算装置であるコンピュータ上で実行されるソフトウェアとして実現することもできる。
データ格納部11、データ記憶部12、およびデータ設定部13は、たとえばフラッシュメモリなどの記憶装置によって構成することができる。
図3は、本発明の第1の実施の形態における空気調和機20の冷媒回路20Aを概略的に示す図である。各空調機20は、図3に示すように、室内機2と室外機3とが、ガス接続配管71および液接続配管72を介して接続されている。ガス接続配管71および液接続配管72は、冷媒配管7を構成する。
室内機2は、室内熱交換器21、室内送風機22、および室内温度センサ23を備える。室外機3は、圧縮機31、四方弁32、室外熱交換器33、室外送風機34、絞り装置35、および室外温度センサ36を備える。これら圧縮機31、室外熱交換器33、絞り装置35、および室内熱交換器21は、環状に接続され、冷媒回路20Aを構成する。
室内温度センサ23は、第1の温度検出手段に相当し、室外温度センサ36は、第2の温度検出手段に相当する。
室内熱交換器21は、たとえば伝熱管と多数のフィンとによって構成されるクロスフィン式のフィン・アンド・チューブ型熱交換器によって実現される。室内熱交換器21は、冷房運転時には冷媒の蒸発器として機能して、室内の空気すなわち空調対象空間5内の空気を冷却する。また、室内熱交換器21は、暖房運転時には冷媒の凝縮器として機能して、室内の空気すなわち空調対象空間5内の空気を加熱する。
室内送風機22は、室内熱交換器21に付設され、たとえば、室内熱交換器21に供給する空気の流量を可変することが可能なファンによって実現される。室内送風機22は、室内機2内に室内の空気、すなわち空調対象空間5内の空気を吸入し、室内熱交換器21によって冷媒との間で熱交換した空気を供給空気として空調対象空間5内に供給する。
室内温度センサ23は、たとえばサーミスタによって実現される。室内温度センサ23は、室内熱交換器21内の気液二相状態の冷媒の温度を検出する。すなわち室内温度センサ23は、暖房運転時における凝縮温度と、冷房運転時における蒸発温度とを検出する。
圧縮機31は、運転容量を可変することが可能であり、たとえばインバータで制御される不図示のモータによって駆動される容積式圧縮機によって実現される。圧縮機31は、前述の図1に示す制御装置10によって制御される。
本実施の形態では、圧縮機31が1台のみの場合を説明するが、これに限定されず、室内機2の接続台数などに応じて、2台以上の圧縮機31が並列に接続される構成であってもよい。
四方弁32は、冷媒の流れの方向を切り換えるための弁である。四方弁32は、冷房運転時には、圧縮機31の吐出側と室外熱交換器33とを接続し、圧縮機31の吸入側と室内熱交換器21とを接続するように、冷媒流路を切り換える。また、四方弁32は、暖房運転時には、圧縮機31の吐出側と室内熱交換器21とを接続し、圧縮機31の吸入側と室外熱交換器33とを接続するように、冷媒流路を切り換える。
室外熱交換器33は、たとえば伝熱管と多数のフィンとによって構成されるクロスフィン式のフィン・アンド・チューブ型熱交換器によって実現される。室外熱交換器33は、そのガス側が四方弁32に接続され、その液側が絞り装置35に接続される。室外熱交換器33は、冷房運転時には冷媒の凝縮器として機能し、暖房運転時には冷媒の蒸発器として機能する。
室外送風機34は、室外熱交換器33に付設され、たとえば、室外熱交換器33に供給する空気の流量を可変することが可能なファンによって実現される。室外送風機34は、室外機3内に室外の空気すなわち空調対象空間5外の空気を吸入し、室外熱交換器33によって冷媒との間で熱交換した空気を室外すなわち空調対象空間5外に排出する。
絞り装置35は、液接続配管72と室外機3との間に接続配置されている。絞り装置35は、絞り開度が可変であり、冷媒回路20A内を流れる冷媒の流量の調節などを行う。
室外温度センサ36は、たとえばサーミスタによって実現される。室外温度センサ36は、室外熱交換器33内の気液二相状態の冷媒の温度を検出する。すなわち室外温度センサ36は、冷房運転時における凝縮温度と、暖房運転時における蒸発温度とを検出する。
次に、データ格納部11に格納される各種データおよびデータ記憶部12に記憶される各種データについて説明する。
[性能モデルデータ]
図4は、空調能力と消費電力との関係の一例を示すグラフである。図5は、本発明の第1の実施の形態における性能モデルデータのデータ形式を示す図である。
空調機20の消費電力は、主に圧縮機消費電力、電子基盤入力電力、室内/室外ファン入力電力などで構成される。空調機20における空調能力と消費電力との関係は、たとえば図4に示す曲線40で表され、たとえば以下の式(1)に示すような二次式で十分に近似することができる。
式(1)において、Wkは、空調機k(k=1,2,3…)の消費電力(kW)を示し、Qkは、空調機kの空調能力(kW)を示し、ak,bkおよびckは、係数データを示す。式(1)の係数データのうち、akは二次係数であり、bkは一次係数であり、ckは定数である。
各空調機20に対する式(1)の係数データと、各空調機20の最小能力値Qmin(kW)および最大能力値Qmax(kW)とを併せて、性能モデルデータと定義する。性能モデルデータは、空調機20毎に、たとえば図5に示すデータ形式でデータ記憶部12に記憶される。図5において、各空調機20の性能モデルデータは、その空調機の番号(以下「空調機No」という場合がある)を添え字として付加して示す。
[運転情報データ]
図6は、本発明の第1の実施の形態における運転情報データのデータ形式を示す図である。各空調機20に対する運転情報データは、次の制御タイミングでの運転状態を表す。次の制御タイミングでの運転状態は、各空調機20の現在の運転状態と、次の制御タイミングにおける外部からの制御情報、たとえばユーザによる主電源オフ(OFF)を表す情報、および空調機20による制御判断、たとえば空調機20のサーモOFF後に機器保護のための強制停止時間があるという判断などとに基づいて設定される。ここで、「サーモOFF」とは、空調対象空間5内の温度が設定温度に達して、圧縮機31が停止することをいい、圧縮機31が運転を開始することを「サーモON」という。
運転情報データは、たとえば、後述する協調制御によって運転する場合を「1」と定義し、協調制御によって運転を停止する場合を「0」と定義し、空調機20の電源がOFFの場合を「−1」と定義し、協調制御の対象外とする場合を「−2」と定義して、図6に示すデータ形式でデータ格納部11に格納される。
運転情報データは、たとえば、協調制御において、次のように扱われる。ある空調機20に対する運転情報データが「1」であるとき、その空調機20は、次の制御タイミングで協調制御によって運転させる状態(以下「バランス運転の状態」という)であり、それ以降に制御機能がサーモON/OFFへ必要に応じて状態を遷移させることができる。
また、ある空調機20に対する運転情報データが「0」であるとき、その空調機20は、次の制御タイミングで協調制御によって運転を停止させる状態(以下「バランス停止の状態」という)であり、それ以降に制御機能がサーモON/OFFへ必要に応じて状態を遷移させることができる。バランス停止の状態においては、圧縮機31のみを一時停止状態とするようにしてもよい。以上の2つの状態、すなわちバランス運転の状態およびバランス停止の状態が、協調制御の対象となる状態である。
ある空調機20に対する運転情報データが「−1」であるとき、その空調機20は、電源がOFFの状態である。電源OFFは、ユーザによって主電源スイッチを含む回路が開放された状態であり、ユーザによって主電源スイッチ含む回路が閉路状態に切り換えられない限り、サーモON/OFF状態または協調制御対象外の状態への復帰はない。
ある空調機20に対する運転情報データが「−2」であるとき、その空調機20は、主電源スイッチを含む回路は閉路状態であり、サーモON/OFFの状態であるが、ユーザによる設定または制御機能による判断によって、協調制御対象となる空調機群から離脱し、協調制御の対象外の状態となっている。
[空調負荷データ]
図7は、本発明の第1の実施の形態における空調負荷データのデータ形式を示す図である。各空調機20に対する空調負荷データは、次の制御タイミングで出力すべき空調能力を表すものであり、各空調機20に具備されているセンサなどの計測手段によって計測される計測データに基づいて決定される。空調負荷データは、電源OFFの状態にある空調機20および協調制御対象外の状態にある空調機20からは得られないものとする。
本実施の形態では、各空調機20の空調能力を、次の制御タイミングにおける各空調機20の空調負荷(kW)とする。たとえば、空調機20の調整するべき温度として設定される温度(以下「設定温度」という場合がある)と、室内温度すなわち空調対象空間5内の温度との差ΔTjに応じて、圧縮機31の回転数(Hz)を決定し、この回転数に応じて空調能力(kW)を求め、求めた空調能力を、その空調機20の空調負荷(kW)とする。
空調負荷データは、通信線8を通じて制御装置10に送信され、図7に示すデータ形式でデータ格納部11に格納される。
図7に示す空調負荷データは、たとえば図6に示す運転情報データのもとで得られた空調負荷データであり、電源OFFの状態である空調機No4以外の空調機、すなわち空調機No1〜3の空調負荷(≧0)を表す。図7では、各空調機20の空調負荷データを、Lk(k=1,2,3…)で表す。ここで、kは自然数であり、空調機Noを表す。電源OFFの状態である空調機20、たとえば空調機No4に対しては、空調負荷データを「−1」と表現すればよい。また、協調制御対象外の状態である空調機20に対しては、空調負荷データを「−2」と表現すればよい。
[重み付けデータ]
重み付けデータ設定部17は、次の制御タイミングにおける各空調機20に対する重み付けデータを決定する。本実施の形態では、重み付けデータ設定部17は、重み付けデータとして、正の値を決定する。重み付けデータ設定部17が、データ格納部11に格納されている各空調機20の空調負荷データを参照して重み付けデータを決定する場合について説明する。
重み付けデータ設定部17は、データ格納部11から、各空調機20の空調負荷データLkを読み出して参照し、以下の式(2)によって、各空調機20の重み付けデータを決定する。
式(2)において、γkは空調機k(k=1,2,3…)の重み付けを示す。式(2)の分母の記号Σのインデックスjは、参照した空調負荷データが「−1」および「−2」以外の値である空調機を表す。
式(2)に示すように空調負荷データLkの逆数に比例した重み付けデータを設定することによって、後述する協調制御処理において、全体空調負荷と運転中の空調機20の空調能力の総和とのバランスを保ちつつ、重み付けデータが小さい空調機20に対して、重み付けデータが大きい空調機20よりも大きい空調能力を割り当てることができる。換言すれば、全体空調負荷と運転中の空調機20の空調能力の総和とのバランスを保ちつつ、次の制御タイミングにおける空調負荷が大きい空調機20に対して、次の制御タイミングにおける空調負荷が小さい空調機20よりも大きい空調能力を割り当てることができる。
本実施の形態では、式(2)に示すように、空調負荷データLkの逆数の総和によって正規化する正規化処理を行っているが、正規化処理は、行わなくてもよい。たとえば、空調負荷データLkが、電源OFFの状態である空調機20に対する空調負荷を表す「−1」であるとき、その空調機20に対する重み付けデータは「0」と表現すればよい。また、空調負荷データLkが、協調制御対象外の状態である空調機20に対する空調負荷を表す「−2」であるとき、その空調機20に対する重み付けデータは「0」と表現すればよい。
以上のように本実施の形態では、重み付けデータを式(2)によって決定しているが、重み付けデータを決定する式は、重み付けデータとして設定することができるものであればよく、式(2)に限るものではない。
図8は、本発明の第1の実施の形態における重み付けデータのデータ形式を示す図である。重み付けデータ設定部17で決定した重み付けデータは、図8に示すデータ形式でデータ格納部11に格納される。
図8に示す重み付けデータは、たとえば図7に示す空調負荷データLkのもとで得られた重み付けデータであり、電源OFFの状態である空調機No4以外の空調機、すなわち空調機No1〜No3の重み付け(>0)を表す。
重み付けデータの決定のときに参照するデータの与えられ方が違う場合について説明する。図9は、本発明の第1の実施の形態における重み付けデータのユーザ設定値のデータ形式を示す図である。たとえば、ユーザがデータ設定部13によって重み付けデータを設定する場合には、データ設定部13は、ユーザによって設定された重み付けデータを、ユーザ設定重み付けデータとして、図9に示すデータ形式でデータ格納部11に格納する。図9では、各空調機20のユーザ設定重み付けデータを、αk(k=1,2,3…)で表す。ここで、kは自然数であり、空調機Noを表す。本実施の形態では、ユーザは、データ設定部13によって、重み付けデータとして、正の値を設定する。
重み付けデータ設定部17は、データ格納部11に格納されるユーザ設定重み付けデータを参照して、以下の式(3)によって、各空調機20の重み付けデータを決定する。式(3)の分母の記号Σのインデックスiは、参照する運転情報データが「−1」および「−2」以外の値を有する空調機20を表す。式(3)では、空調機iに対するユーザ設定重み付けデータをαで表す。このとき、重み付けデータ設定部17によって決定される重み付けデータは、図8に示すデータ形式となり、データ格納部11に格納される。
さらに、各空調機20の室内機2に計測手段として新たにセンサを具備し、そのセンサによって、各空調機20の担当するエリアに存在する人の数を計測し、計測した人数を計測データとしてデータ格納部11に格納する場合について説明する。図10は、本発明の第1の実施の形態における計測された人数データのデータ形式を示す図である。計測データは、図10に示すようなデータ形式でデータ格納部11に格納される。図10に示す人数データは、たとえば図7に示す空調負荷データのもとで得られた重み付けデータであり、電源OFFの状態である空調機No4に対する人数データは「−1」と表し、それ以外の「0」または正数で各空調機20の担当するエリアで計測した人数を表す。
重み付けデータ設定部17は、データ格納部11から、上記人数を表す計測データを参照し、式(4)によって各空調機20の重み付けデータを決定する。式(4)の分母の記号Σのインデックスlは、参照する運転情報データが「−1」および「−2」以外の値を有する空調機を表す。たとえば、運転情報データが「−1」または「−2」であるとき、その空調機に対する重み付けデータは「0」と表現すればよい。式(4)では、空調機lで計測した人数をHで表す。このとき、空調機No2の人数「0」は、計算不定を避けるために、たとえば、0.01などの小さい値で置換して取り扱う。本実施の形態では、重み付けデータを式(4)によって決定しているが、重み付けデータを決定する式は、重み付けデータとして設定することができるものであればよく、式(4)に限るものではない。
重み付けデータ設定部17で決定した重み付けデータは、図8に示すデータ形式でデータ格納部11に格納される。
次に、第1の実施の形態の複数台の空調機20による協調制御処理の内容について説明する。前述の式(1)の二次式で表される空調能力と消費電力との関係および重み付けデータを使用して、次の制御タイミングで運転している空調機20、ここでは空調機No1,No2,No3,No4の4台に対して消費電力を低減する空調能力の割り当ては、次のように行われる。
ある全体空調負荷Lに対して、全体空調負荷Lと運転中の空調能力Qk(k=1,2,3…)の総和とのバランスを保ちつつ、各空調機20の担当する空間の負荷状況を反映したときの消費電力の総和を評価する評価関数fを最小にする問題を考える。
式(5)において、Qminは、空調機の最小能力を表し、Qmaxは、空調機の最大能力を表し、γkは、空調機kに対する重み付けデータを表す。
式(5)に示すように、各空調機の重み付き消費電力の和を、各空調機の空調能力Qを変数とした多変数関数(以下「第1の多変数関数」という)fとする。そして、各空調機の空調能力Qの和が全体空調負荷Lとなる制約条件の下で、上記の第1の多変数関数fが極値、具体的には極小値となる各空調機の空調能力Qをそれぞれ求める。この極小値は、制約条件の下での最小値となる。
式(5)の問題の解は、解析的に求めることができる。本実施の形態では、ラグランジュの未定乗数法を用いて求める場合を説明する。式(5)の問題の解を求める方法は、ラグランジュの未定乗数法に限るものではなく、式(5)の問題の解を求められるものであればよい。
まず、式(5)に、各空調機の空調能力Qの和が全体空調負荷Lとなる制約条件を係数とする中間変数μを加え、以下の式(6)のような第2の多変数関数Fを考える。
次に、式(6)の極値条件から、以下の式(7)を得る。
式(7)を整理すると、第2の多変数関数Fの各変数が極値となる条件を満たす中間変数μは、次の式(8)で与えられる。
すなわち、全体空調負荷Lと各空調機の空調能力Qkの総和とのバランス維持を表す制約式である式(5)の、ラグランジュ乗数である中間変数μを用いると、各空調機の空調能力Qkは次の式(9)に示すように代数式で与えられる。
以上のように、中間変数μと、性能モデルデータと、重み付けデータとに基づいて、各空調機20の空調能力Qkをそれぞれ求めることによって、協調制御対象の複数の空調機20で、各空調機20の担当する空間の負荷状況を考慮して、可及的に小さい消費電力で全体空調負荷Lに見合うだけの空調能力を求めることができる。
次に、第1の実施の形態における協調制御処理の動作を具体的に説明する。図11は、本発明の第1の実施の形態における制御装置10の協調制御処理に関する処理手順を示すフローチャートである。本実施の形態では、各空調機20の空調負荷データを参照して重み付けデータを決定する場合について説明する。図11に示す協調制御処理は、制御装置10の各部によって実行される。
ユーザによって主電源がオン(ON)されると、制御装置10は、ステップa1において処理を開始し、ステップa2に移行する。
ステップa2において、制御装置10は、初期データを読み込む処理を行う。初期データを読み込む処理について、以下に具体的に説明する。まず、制御装置10のデータ設定部13は、データ記憶部12に予め記憶されている性能モデルデータD1を読み出して参照する。また、データ設定部13は、データ格納部11に格納されている空調負荷データD2を読み出して参照する。ここで読み出される空調負荷データD2は、協調制御対象であって、計測可能な状態、すなわちバランス運転およびバランス停止の状態の各空調機が計測した、次の制御タイミングにおける空調負荷データD2である。また、データ設定部13は、次の制御タイミングにおいて、バランス運転およびバランス停止の状態の空調機の運転情報データD3を読み出して参照する。
そして、データ設定部13は、参照した性能モデルデータD1、空調負荷データD2および運転情報データD3を、初期データとして設定して、演算の初期化を実行する。
具体的には、データ設定部13は、運転情報データD3に基づいて、制御対象となる空調機の運転台数をメモリ上の変数にセット、すなわち設定し、運転台数分の性能モデルデータを空調機No毎にメモリ上の変数にセット、すなわち設定する。このとき、全体空調負荷Lに対するメモリ上の変数、中間変数μおよび各空調機20の重み付けデータと、空調能力Qk(k=1,2,3…)に対するメモリ上の変数とを「0」に初期化しておく。また、全体空調負荷L、中間変数μおよび各空調機20の重み付けデータと、空調能力Qk(k=1,2,3…)を格納するデータ格納部101の変数とを「0」に初期化しておく。以上のようにしてステップa2の初期設定データを読み込む処理を終了すると、ステップa3に移行する。
ステップa3において、全体空調負荷演算部14は、空調負荷データD2から全体空調負荷Lを求める。全体空調負荷演算部14は、具体的には、次のように演算して全体空調負荷Lを求める。まず、運転情報データD3に基づいて、協調制御対象である空調機20、すなわちバランス運転およびバランス停止の状態の空調機20を得る。そして、空調負荷データD2から、協調制御対象である空調機20の空調負荷を得て、その合計値を全体空調負荷Lとしてメモリ上の変数に求める。得られた全体空調負荷Lをデータ格納部11の変数に書き込む。
たとえば、運転情報データD3が、前述の図6に示すように、空調機No1〜4の順に1,0,1,−1であり、空調負荷データD2が、前述の図7に示すように、空調機No1〜4の順にL1,L2,L3,−1である場合を考える。この場合、協調制御対象であって、空調負荷の計測可能な状態の空調機20は空調機No1〜No3であり、これらの空調機No1〜No3から求められる全体空調負荷Lは、L=L1+L2+L3である。このようにして得られた全体空調負荷Lがデータ格納部11の変数に書き込まれる。以上のようにしてステップa3の処理を終了すると、ステップa4に移行する。
ステップa4において、重み付けデータ設定部17は、空調負荷データD2から重み付けデータγを求める。重み付けデータ設定部17は、具体的には、次のように演算して重み付けデータγを求める。まず、ステップa3と同様に、運転情報データD3に基づいて、協調制御対象である空調機20、すなわちバランス運転およびバランス停止の状態の空調機20を得る。そして、空調負荷データD2から、協調制御対象である空調機20の空調負荷を得て、前述の式(2)に基づいて各空調機20に対する重み付けデータγをメモリ上の変数に求める。得られた各空調機20に対する重み付けデータγを、データ格納部11の変数に書き込む。
たとえば、運転情報データD3が、前述の図6に示すように、空調機No1〜4の順に1,0,1,−1であり、空調負荷データD2が、前述の図7に示すように、空調機No1〜4の順にL1,L2,L3,−1である場合を考える。この場合、協調制御対象であって、空調負荷の計測可能な状態の空調機20は空調機No1〜No3であり、これらの各空調機No1〜No3に対する重み付けデータγ1,γ2,γ3は、次の式(10)に示すようになる。
このようにして得られた各空調機20に対する重み付けデータγが、データ格納部11の変数に書き込まれる。以上のようにしてステップa4の処理を終了すると、ステップa5に移行する。
ステップa5において、空調能力配分演算部15は、性能モデルデータD1と、空調負荷データD2と、運転情報データD3と、ステップa4で求めた重み付けデータとから、前述の式(8)に従って中間変数μをメモリ上の変数に求める。そして、その結果をデータ格納部101の変数に格納する。以上のようにしてステップa5の処理を終了すると、ステップa6に移行する。
ステップa6において、空調能力配分演算部15は、運転している空調機20の中で最初の空調機20、たとえば空調機Noが最も小さい空調機を1つ選択する。このようにしてステップa6の処理を終了すると、ステップa7に移行する。
ステップa7において、空調能力配分演算部15は、ステップa6の処理によって選択した空調機20に対して、データ格納部11に格納されている中間変数μと、性能モデルデータD1と、ステップa4で求めた重み付けデータとから、前述の式(9)に従って空調能力Qkをメモリ上の変数に求める。そして、その結果をデータ格納部11の変数に格納する。以上のようにしてステップa7の処理を終了すると、ステップa8に移行する。
ステップa8において、空調能力配分演算部15は、運転している全ての空調機20に対して処理を終了したか否かを判断する。ステップa8において、全ての空調機20に対して処理を終了したと判断した場合は、ステップa10に移行し、全ての空調機20に対して処理を終了していない、すなわち処理を終了していない空調機20が存在すると判断した場合は、ステップa9に移行する。
ステップa9において、空調能力配分演算部15は、未選択空調機選択処理を行う。具体的には、空調能力配分演算部15は、未選択の空調機20の中から次の空調機20を選択して、ステップa7に戻り、前述の処理を繰り返す。
ステップa10において、制御信号送出部16は、制御信号送出処理を行う。具体的には、制御信号送出部16は、各空調機20に対してステップa3〜a5およびステップa7の演算処理の結果として求められた空調能力値を出力データとして、データ格納部11から読み出す。そして、読み出した空調能力値を実現する制御信号を、次の制御タイミングに合わせて通信線8を通じて、各空調機20に送出する。以上のようにしてステップa10の処理を終了すると、ステップa11に移行する。ステップa11において、制御装置10は、全ての処理手順を終了する。
以上のような協調制御によって、各空調機20の担当する空間の負荷状況を考慮して、必要な全体空調負荷Lに見合うだけの空調能力を、運転中の協調制御対象となる各空調機20に対して、消費電力を低減するように配分して運転することができる。したがって、空調機システム1全体として、消費電力を低減するような運転条件を求めて、空調機20を制御することができる。
以上のように本実施の形態においては、性能モデルデータと、全体空調負荷Lと、重み付けデータγとに基づいて、複数の空調機20の空調能力Qの和が全体空調負荷Lとなり、かつ、各空調機20の担当する空間の負荷状況を反映したときの消費電力の和を評価する評価関数が最小となるように、複数の空調機20の空調能力Qをそれぞれ求める。
これによって、空調対象空間5内の全体空調負荷Lと、運転中の空調機20の空調能力Qkの総和とのバランスを保ちつつ、各空調機20の担当する空間の負荷状況を考慮して、つまり、空調負荷の大きい空間に大きな空調能力を割り当て、空調負荷の小さい空間に小さな空調能力を割り当てて、消費電力Wkの総和を低減することができる。
また本実施の形態では、前述の評価関数として、性能モデルデータと重み付けデータとに基づいて、複数の空調機20の消費電力の和を、各空調機20の空調能力を変数とした多変数関数である前述の式(5)で示される第1の多変数関数fを用いている。そして、複数の空調機20の空調能力の和が全体空調負荷となる制約条件の下、第1の多変数関数が極値となる各空調機20の空調能力を求めている。このように最適化問題として定式化した問題を最適な条件の下で解くことによって、消費電力Wkの総和を、より確実に低減することができる。
また本実施の形態では、全体空調負荷Lと、性能モデルデータと、重み付けデータγとを用いて、前述の式(8)に基づいて中間変数μを求め、求めた中間変数μと、性能モデルデータと、重み付けデータγとに基づいて、前述の式(9)によって各空調機20の空調能力Qkをそれぞれ求める。
これによって、空調機20の空調能力Qkの総和が全体空調負荷Lとなり、かつ、複数の空調機20の空調対象とする空間の熱負荷状況を反映したときの消費電力の和を評価する評価関数が最小となる空調能力を、全体空調負荷Lと、性能モデルデータと、重み付けデータγとから算出することができる。
このように最適化問題として定式化した問題を、中間変数を経て解くことによって、低い演算負荷で、効率的に解くことができる。
また本実施の形態では、重み付けデータ設定部17は、図11のステップa4において、データ格納部11に格納される空調負荷データD2から重み付けデータγを求める。データ格納部11に格納される空調負荷データD2は、各空調機20に設けられるセンサなどの計測手段によって計測された計測データに基づいて決定されるものである。計測手段は、空調対象空間5内の状況を表す物理量を計測する。
すなわち重み付けデータ設定部17は、空調対象空間5内の状況を表す物理量を計測する計測手段によって計測された計測データに基づいて、複数の空調機20の重み付けデータをそれぞれ求める。このように計測データに基づいて求められる重み付けデータを用いることによって、予め設定された重み付けデータを用いる場合に比べて、より確実に、各空調機20の担当する空間の負荷状況を考慮して、消費電力の総和を低減することができる。
この効果は、計測データとして、空調対象空間5内に存在する人の数、具体的には各空調機20の担当するエリア内に存在する人の数を計測したデータを用いた場合にも同様に得られる。すなわち、重み付けデータ設定部17が、空調対象空間5内に存在する人の数、具体的には各空調機20が担当するエリア内に存在する人の数を計測して得た計測データに基づいて重み付けデータを求めて用いることによって、予め設定された重み付けデータを用いる場合に比べて、より確実に、各空調機20の担当するエリアの負荷状況を考慮して、消費電力の総和を低減することができる。
以上のように本実施の形態では、図11に示すフローチャートに基づいて、複数台の空調機20による協調制御処理の内容を説明したが、このフローチャートは実質的に協調制御処理の内容を実行するプログラムによって実現されてもよい。このプログラムは、たとえば制御装置10としてリモコンを使用する場合にはリモコンのマイコンに搭載されるが、制御装置10としてリモコンを使用せずに計算機で制御装置10を構成する場合には、たとえば、記録媒体であるハードディスクなどに格納されているものが考えられる。
また、このプログラムを記録したコンピュータ読取可能な媒体は、ハードディスクの他に、CD−ROM(Compact Disk Read Only Memory)およびMO(Magneto-Optical disk)などであってもよい。さらには、記録媒体を介することなくプログラム自体を、電気通信回線を介して取得するようにすることもできる。
<第2の実施の形態>
図12は、本発明の第2の実施の形態における制御装置10Aの構成を示す機能ブロック図である。本発明の第2の実施の形態の制御装置10Aは、前述の第1の実施の形態の制御装置10の機能に加えて、空調機システム1全体の総消費電力を低減するために、空調機20の運転状態、具体的にはバランス運転、バランス停止、電源OFF、および協調制御対象外を考慮して運転する空調機20の選択機能を備える。
具体的には、本実施の形態における制御装置10は、図12に示すように、第1の実施の形態の制御装置10の構成に加え、運転機選択演算部18を備えて構成される。運転機選択演算部18は、運転空気調和機選択手段に相当する。
データ格納部11、データ記憶部12、データ設定部13、全体空調負荷演算部14、空調能力配分演算部15、および制御信号送出部16の機能は、第1の実施の形態と同一であるので、対応する部分には同一の参照符号を付して、共通する説明を省略する。
運転機選択演算部18は、複数の空調機20のうち、運転させる空調機20と、運転を停止させる空調機20との組合せパターンを求める。具体的には、運転機選択演算部18は、データ格納部11およびデータ記憶部12から、演算に必要なデータを読み出して参照し、次の制御タイミングで運転可能な空調機(以下「候補空調機」という場合がある)20の中から、運転させる空調機(以下「運転空調機」という場合がある)と、運転を停止させる空調機(以下「停止空調機」)とを求める処理(以下「運転機選択処理」という場合がある)を実行する。運転機選択演算部18は、前記運転機選択処理の実行後に得られる運転空調機と停止空調機との選択結果を、データ格納部11に書き込む。
図13は、本発明の第2の実施の形態における制御装置10Aの協調制御処理に関する処理手順を示すフローチャートである。以下、図13に示すフローチャートに従って説明する。図11に示す協調制御処理は、制御装置10の各部によって実行される。
ユーザによって主電源がONされると、制御装置10Aは、ステップb1において処理を開始し、ステップb2に移行する。ステップb2において、制御装置10Aは、初期データを読み込む処理を行う。初期データを読み込む処理について、以下に具体的に説明する。まず、制御装置10Aのデータ設定部13は、データ記憶部12に予め記憶されている性能モデルデータD1を読み出して参照する。また、データ設定部13は、データ格納部11に格納されている空調負荷データD2を読み出して参照する。ここで読み出される空調負荷データD2は、協調制御対象であって、計測可能な状態、すなわちバランス運転およびバランス停止の状態の各空調機20が計測した、次の制御タイミングにおける空調負荷データD2である。また、データ設定部13は、次の制御タイミングにおける候補空調機の運転可能情報データD4を読み出して参照する。この運転可能情報データD4については、後述する。
そして、データ設定部13は、参照した性能モデルデータD1、空調負荷データD2および運転可能情報データD4を、初期データとして設定して、演算の初期化を実行する。
具体的には、データ設定部13は、運転可能情報データD4に基づいて、制御対象となる候補空調機の運転台数をメモリ上の変数にセット、すなわち設定し、運転台数分の性能モデルデータD1を空調機No毎にメモリ上の変数にセット、すなわち設定する。このとき、全体空調負荷Lに対するメモリ上の変数と、候補空調機の中から作成される組合せデータを格納するメモリ上の変数と、組合せNo毎の中間変数μ、各空調機20の重み付けデータと空調能力Qkとに対するメモリ上の変数、および総消費電力に対するメモリ上の変数と、最終的に選択された組合せNoに対するメモリ上の変数とを「0」に初期化しておく。また、全体空調負荷L、組合せNo毎の中間変数μおよび各空調機20の重み付けデータと、空調能力Qk(k=1,2,3…)を格納するデータ格納部11の変数とを「0」に初期化しておく。
ここで、候補空調機に対する運転可能情報データD4について説明する。運転可能情報データD4は、次の制御タイミングで運転可能な空調機20を表す。図14は、本発明の第2の実施の形態における運転可能情報データD4のデータ形式を示す図である。図14に示すように、運転可能情報データD4は、各空調機20の運転可能状態を表す数値で構成される。各空調機20の運転可能状態は、たとえば、その空調機20が運転可能な場合、より詳細には、次の制御タイミングでバランス運転またはバランス停止が可能な空調機20である場合に「1」と定義する。この運転可能状態が「1」である空調機20が、候補空調機となる。また、各空調機20の運転可能状態は、その空調機20が運転不可能な場合、すなわち次の制御タイミングで運転を行わない空調機20である場合に「0」と定義する。
また、電源OFFの場合に、運転可能状態を「−1」と定義し、協調制御の対象外とする場合に、運転可能状態を「−2」と定義する。
そして、各空調機20の運転可能状態は、図14に示すデータ形式でデータ格納部11に格納される。図14に示す例の場合、空調機No1、No2、No3が候補空調機である。空調機No4は、運転を行わない空調機である。
図13のフローチャートに戻って、ステップb2の処理を終了すると、ステップb3に移行する。ステップb3において、全体空調負荷演算部14は、空調負荷データD2から、候補空調機の空調負荷の合計値である全体空調負荷Lを求める。全体空調負荷Lを求めるための具体的な処理内容は、前述の図11に示すフローチャートのステップa3の処理内容と同様である。ステップb3の処理を終了すると、ステップb4に移行する。
ステップb4において、重み付けデータ設定部17は、空調負荷データD2から、候補空調機の重み付けデータγを求める。重み付けデータγを求めるための具体的な処理内容は、前述の図11に示すフローチャートのステップa4の処理内容と同様である。ステップb4の処理を終了すると、ステップb5に移行する。
ステップb5において、運転機選択演算部18は、候補空調機のうち、運転させる空調機である運転空調機、具体的には次の制御タイミングで運転を想定する空調機と、運転を停止させる空調機である停止空調機、具体的には次の制御タイミングで運転停止を想定する空調機との組合せパターンを求める。本実施の形態では、候補空調機を用いて作成可能な全ての組合せをリストとしてメモリ上の変数に作成する。そして、その結果を、図15に示すデータ形式でデータ格納部11に格納する。
図15は、本発明の第2の実施の形態における空調機の運転組合せリストのデータ形式を示す図である。たとえば、図14で運転可能状態が「1」である候補空調機として与えられた空調機である候補空調機No1、No2、No3から作成される組合せは、図15に示すように、全部で7通りとなる。たとえば、図15に示す組合せNo1は、次の制御タイミングで運転を想定する空調機が候補空調機No1、No2、No3の中で空調機No1だけであり、空調機No2と空調機No3とは、運転の停止を想定することを表す。また、たとえば、組合せNo7は、候補空調機の全台の運転を想定することを表す。
図13のフローチャートに戻って、ステップb5の処理を終了すると、ステップb6に移行する。ステップb6において、運転機選択演算部18は、ステップb5の処理によって作成した組合せパターンの中から、最初の組合せ、たとえば、組合せNoが最も小さい組合せを1つ選択する。ステップb6の処理を終了すると、ステップb7に移行する。
ステップb7において、空調能力配分演算部15は、ステップb6の処理によって選択された組合せにおいて、運転を想定する空調機の空調能力Qの和が、候補空調機の全体空調負荷Lとなり、かつ、各空調機20の担当する空間の負荷状況を反映したときの運転を想定する空調機の消費電力Wの和を評価する評価関数が最小となるように、運転を想定する空調機の空調能力Qkをそれぞれメモリ上の変数に求める。そして、その結果をデータ格納部11の選択された組合せNoに対する各変数に格納する。各空調能力Qkを求める処理は、前述の図11に示すフローチャートのステップa7の処理と同様である。ステップb7の処理を終了すると、ステップb8に移行する。
ステップb8において、運転機選択演算部18は、現在選択されている組合せにおける総消費電力Wallを求める。具体的には、運転機選択演算部18は、データ記憶部12から、性能モデルデータD1を読み出して参照し、データ格納部11から、ステップb6の処理の演算結果が格納されている変数を読み出して参照する。そして、以下の式(11)に従って、各空調機20の消費電力Wkから、総消費電力Wallをメモリ上の変数に求める。そして、データ格納部11の現在選択されている組合せNoに対する消費電力として変数に格納する。
ここで、図15に示す空調機20の運転組合せリストを例に取り、総消費電力Wallを求める具体的な方法を説明する。現在選択されている組合せが、図15の組合せNo5であるとすると、運転を想定する空調機、すなわち運転空調機は、空調機No1および空調機No3であり、運転停止を想定する空調機、すなわち停止空調機は、空調機No2である。この場合、上記ステップb7の処理における演算によって、空調機No1と空調機No3とに対して、空調能力Q1と空調能力Q3とが求められる。
ステップb8において運転機選択演算部18は、前述の式(11)に従って、空調機No1および空調機No3の消費電力Wから、総消費電力Wallを求める。総消費電力Wallは、具体的には、次の式(12)のようになる。
ステップb8の処理を終了すると、ステップb9に移行する。ステップb9において、運転機選択演算部18は、全ての組合せに対して処理を終了したか否かを判断する。ステップb9において、全ての組合せに対して処理を終了したと判断した場合は、ステップb11に移行し、全ての組合せに対して処理を終了していない、すなわち処理を終了していない組合せが存在すると判断した場合は、ステップb10に移行する。
ステップb10において、運転機選択演算部18は、未選択組合せ選択処理を行う。具体的には、運転機選択演算部18は、未選択の組合せの中から次の組合せを選択して、ステップb7に戻り、前述の処理を繰り返す。
ステップb11において、運転機選択演算部18は、組合せ最終選択処理を行う。具体的には、運転機選択演算部18は、データ格納部11から、全ての組合せNoに対する総消費電力Wallを読み出して参照し、たとえば総消費電力Wallが最小となる組合せを選択し、選択した組合せNoをメモリ上の変数に書き込む。そして、その結果をデータ格納部11の変数に格納する。ステップb11の処理を終了すると、ステップb12に移行する。
ステップb12において、制御信号送出部16は、ステップb11で選択された組合せNoに対応する空調機と空調能力値とを、データ格納部11から読み出す。そして、バランス運転またはバランス停止などの運転状態と、空調能力値とを実現するように指示する制御信号を、次の制御タイミングに合わせて通信線8を通じて、各空調機20に送出する。ステップb12の処理を終了すると、ステップb13に移行する。ステップb13において、制御装置10Aは、全ての処理手順を終了する。
以上のような協調制御によって、各空調機20の担当する空間の負荷状況を考慮して、必要な全体空調負荷Lに見合うだけの空調能力を、消費電力を低減するように各空調機20に分配し、分配した空調能力を実現するように各空調機に対して運転状態と運転時の空調能力とを与えて運転することができる。したがって、空調機システム1全体として、消費電力を低減するような運転条件を求めて、空調機20を制御することができる。
以上のように本実施の形態においては、組合せパターンについてそれぞれ、運転させる空調機の空調能力の和が全体空調負荷Lとなり、かつ、各空調機20の担当する空間の負荷状況を反映したときの運転させる空調機の消費電力の和を評価する評価関数が最小となるように、運転させる空調機20の空調能力を求め、運転させる空調機20の消費電力の和が最小となる組合せパターンを選択する。
これによって、空調対象空間5内の全体空調負荷Lと、運転させる空調機20の空調能力Qkの総和とのバランスを保ちつつ、各空調機20の担当する空間の負荷状況を考慮して、つまり、空調負荷の大きい空間に大きな空調能力を割り当て、空調負荷の小さい空間に小さな空調能力を割り当てながら、運転または停止させる空調機の組合せのうち、総消費電力Wallが最小となる組合せで各空調機20を制御することができる。
したがって、第1の実施の形態に比べて、より小さい消費電力を実現するために適切な空調能力と運転台数とを統合的に決定することができる。これによって、各空調機20の担当する空間の負荷状況を考慮して、エネルギー消費量の低減を図ることができる。
また、各空調機20の計測した空調負荷データが小さく、その空調負荷データで表される空調負荷が、その空調機20の最小能力よりも小さい場合に、複数台の空調機20がそれぞれ独立に運転状態と運転時の空調能力とを制御すると、各空調機20が個別にサーモONとサーモOFFとを繰り返す動きとなり、空調負荷に対して非効率なエネルギー消費となる。
これに対し、本実施の形態の複数台の空調機20による協調制御によれば、各空調機20の計測した空調負荷データの和から得られる全体空調負荷に従って、運転状態と運転時の空調能力とが求められて制御が実行されるので、各空調機20が個別にサーモONとサーモOFFとを繰り返すことがなく、必要な全体空調負荷に対して必要最低限のサーモONとサーモOFFとしか行われない。これによって、特に空調負荷が小さい場合に、効率的なエネルギー消費となるように空調機20を制御することができる。
本実施の形態では、図13に示すフローチャートに基づいて、複数台の空調機20による協調制御処理の内容を説明したが、このフローチャートは実質的に協調制御処理の内容を実行するプログラムによって実現されてもよい。このプログラムは、たとえば制御装置10Aとしてリモコンを使用する場合にはリモコンのマイコンに搭載されるが、制御装置10Aとしてリモコンを使用せずに計算機で制御装置10Aを構成する場合には、たとえば、記録媒体であるハードディスクなどに格納されているものが考えられる。
また、このプログラムを記録したコンピュータ読取可能な媒体は、ハードディスクの他に、CD−ROMおよびMOなどであってもよい。さらには、記録媒体を介することなくプログラム自体を、電気通信回線を介して取得するようにすることもできる。
<第3の実施の形態>
本発明の第3の実施の形態の制御装置は、前述の第2の実施の形態の制御装置10Aの機能に加えて、さらにバランス停止時、たとえば圧縮機の一時停止時の消費電力を考慮して、運転する空調機を選択する機能を備える。
本実施の形態の制御装置を備える空調機システムの全体構成は、前述の図1に示す第1の実施の形態における空調機システム1と同様であるので、共通する構成には同一の参照符号を付して、図示および共通する説明を省略する。
本実施の形態による複数台の空調機20による協調制御処理の内容を示すフローチャートは、前述の第2の実施の形態における協調制御処理の内容を示す図13のフローチャートと同様である。本実施の形態における協調制御処理は、図13のステップb8の処理を、バランス停止時の消費電力を考慮して行う点が、第2の実施の形態における協調制御処理と異なる。その他の処理は、第2の実施の形態と同様である。
以下に、本実施の形態における協調制御処理と、前述の図13に示すフローチャートに基づく第2の実施の形態における協調制御処理との相違点を具体的に説明する。前述の第2の実施の形態では、前述の式(12)に示すように、運転中の空調機20の消費電力のみを足し合わせて総消費電力Wallを求めて、組合せパターンを選択している。しかし、実際には、協調制御によるバランス停止時の空調機20では、室内機2の室内送風機22が稼動していたり、再起動時に備えた制御機能が稼動していたりして、電力を消費している。
協調制御によるバランス停止時の空調機20の消費電力をWOFF[kW]として、第2の実施の形態と同様に、図15に示す空調機20の運転組合せリストを例に取り、総消費電力Wallを求める具体的な方法を説明する。
図16は、本発明の第3の実施の形態における拡張した性能モデルデータのデータ形式を示す図である。協調制御によるバランス停止時の空調機20の消費電力WOFFは、各空調機20に対して設定されるものとし、性能モデルデータを拡張して、図16に示すデータ形式でデータ記憶部12に記憶され、演算で必要なときに参照されるものとする。図16では、図7と同様に、各空調機20の性能モデルデータを、その空調機の番号を添え字として付して示す。
現在選択されている組合せが、図15の組合せNo5であるとすると、運転を想定する空調機は、空調機No1および空調機No3であり、運転停止を想定する空調機は、空調機No2である。運転機選択演算部18は、前述の式(11)に従って、各空調機20の消費電力Wから、総消費電力Wallを求める。本実施の形態における総消費電力Wallは、具体的には、次の式(13)のようになる。式(13)において、符号W2 OFFは、協調制御によるバランス停止時の空調機No2の消費電力を表す。
式(13)に示すように、本実施の形態では、前述のバランス停止時の消費電力WOFFも考慮した総消費電力Wallを使用して、前述の第2の実施の形態と同様に各組合せの比較評価を行い、最終的に組合せを選択する。つまり、運転機選択演算部18は、組合せパターンのうち、運転させる空調機20の消費電力Wと、運転を停止させる空調機20の運転待機時の消費電力WOFFとの和が最小となる組合せパターンを選択する。
以上のように本実施の形態においては、組合せパターンのうち、運転させる空調機20である運転空調機の消費電力Wと、運転を停止させる空調機20である停止空調機の運転待機時の消費電力WOFFとの和が最小となる組合せパターンが選択される。これによって、停止空調機の待機消費電力も考慮することができるので、効率的なエネルギー消費となるように、空調機20をより詳細に制御することができる。具体的には、必要な全体空調負荷に見合うだけの空調能力を、バランス停止時、たとえば圧縮機31の一時停止時の消費電力も考慮して総消費電力を低減するように各空調機20に分配して、各空調機20に対して運転状態と運転時の空調能力とを与えて運転することができる。
したがって、空調機システム全体として、各空調機20の担当する空間の負荷状況を考慮して消費電力を低減するような、実運用状況に対応した運転条件を求めて、空調機20を制御することができる。
本実施の形態では、前述の図13に示すフローチャートに基づいて、複数台の空調機20による協調制御処理の内容を説明したが、このフローチャートは実質的に協調制御処理の内容を実行するプログラムによって実現されてもよい。このプログラムは、制御装置としてリモコンを使用する場合にはリモコンのマイコンに搭載されるが、制御装置としてリモコンを使用せずに計算機で制御装置を構成する場合には、たとえば、記録媒体であるハードディスクなどに格納されているものが考えられる。
また、このプログラムを記録したコンピュータ読取可能な媒体は、ハードディスクの他に、CD−ROMおよびMOなどであってもよい。さらには、記録媒体を介することなくプログラム自体を、電気通信回線を介して取得するようにすることもできる。
<第4の実施の形態>
本発明の第4の実施の形態の制御装置を備える空調機システムの全体構成は、前述の図1に示す第1の実施の形態における空調機システム1と同様であるので、共通する構成には同一の参照符号を付して、図示および共通する説明を省略する。本実施の形態の制御装置は、空調対象空間5内の温度(以下「室内温度」という場合がある)、または空調対象空間5外の温度(以下「室外温度」という場合がある)によって、空調能力と消費電力との関係が変化することを考慮して、消費電力を低減する運転条件を求める機能を備える。
前述の第1の実施の形態で述べたように、空調機20における空調能力と消費電力との関係は、式(1)に示すような二次式で近似される。しかし、ある空調能力に対する消費電力は、室内温度および室外温度に依存して変化する。
ある空調機kの基準温度、たとえば26℃における空調能力Qkと消費電力Wkとの関係式の係数データをabase,k,bbase,k,cbase,kとすると、ある室内温度と室外温度とに対する消費電力Wk(kW)は、以下の式(14)で表すことができる。
式(14)において、ηqは、ある室内温度と室外温度とに対する能力修正係数を表し、ηwは、ある室内温度と室外温度とに対する入力修正係数を表す。また式(14)において、室内温度および室外温度に対応して修正された係数データを、a’k,b’k,c’kとする。
次に、このような室内温度および室外温度の影響を考慮した本実施の形態における協調制御処理を説明する。
本実施の形態による複数台の空調機20による協調制御処理の内容を示すフローチャートは、前述の第1の実施の形態における協調制御処理の内容を示す図11のフローチャート、および前述の第2または第3の実施の形態における協調制御処理の内容を示す図13のフローチャートと同様である。本実施の形態における協調制御処理は、各候補空調機に対して室内温度および室外温度を考慮して修正した係数データによって、図11のステップa5およびステップa7の処理、または図13のステップb8の処理を行う点が、第1〜第3の実施の形態における協調制御処理と異なる。その他の処理は、第1〜第3の実施の形態と同様である。
以下に、本実施の形態における協調制御処理と、前述の図11のフローチャートに基づく第1の実施の形態における協調制御処理、ならびに前述の図13のフローチャートに基づく第2および第3の実施の形態における協調制御処理との相違点を具体的に説明する。
図17は、本発明の第4の実施の形態における性能モデルデータのデータ形式を示す図である。本実施の形態における性能モデルデータD1の係数データは、予め定める基準温度、たとえば26℃における係数データabase,k,bbase,k,cbase,kが、空調機20毎に設定される。
本実施の形態における空調能力配分演算部15は、室内温度および室外温度に基づいて、能力修正係数ηqおよび入力修正係数ηwを取得する。
ここで、本実施の形態では、室内温度と室外温度とを、凝縮温度と蒸発温度とに対応させるものとする。つまり、冷房運転の場合には、室内温度センサ23によって検出された室内熱交換器21の蒸発温度を室内温度として検出し、室外温度センサ36によって検出された室外熱交換器33の凝縮温度を室外温度として検出する。
また、暖房運転の場合には、室内温度センサ23によって検出された室内熱交換器21の凝縮温度を室内温度として検出し、室外温度センサ36によって検出された室外熱交換器33の蒸発温度を室外温度として検出する。
そして、空調能力配分演算部15は、蒸発温度および凝縮温度に応じて、予め設定された能力修正係数ηqおよび入力修正係数ηwを取得する。たとえば、空調能力配分演算部15は、データ格納部11に予め、蒸発温度および凝縮温度に対応する各修正係数の値を設定したテーブルなどを記憶させ、これを参照することによって各修正係数を取得する。
次に、空調能力配分演算部15は、取得した能力修正係数ηqおよび入力修正係数ηwに基づいて、前述の式(14)を用いて性能モデルデータD1の係数を修正する。そして、空調能力配分演算部15は、修正した係数データa’k,b’k,c’kを、新たな性能モデルデータD1として、図17に示すデータ形式でデータ記憶部12に記憶させ、演算で必要なときに参照する。
ここでは、蒸発温度および凝縮温度から性能モデルデータの各係数を取得する場合を説明したが、これに限らず、室内温度および室外温度を検出するセンサなどを設けて、このセンサによって検出された室内温度および室外温度から性能モデルデータの各係数を取得するようにしてもよい。また、ここでは、室内温度および室外温度に基づいて修正係数を求める場合を説明したが、これに限らず、室内温度および室外温度のいずれか一方に基づいて修正係数を求めて、性能モデルデータの係数を修正するようにしてもよい。
空調能力Qkと消費電力Wkとの関係式が前述の式(14)のように表される場合、前述の第1の実施の形態で述べたように、ある室内温度および室外温度において、複数の空調機20によって可及的に小さい消費電力で全体空調負荷に見合うだけの能力を配分する式(8)および式(9)の係数データを、新たにa’k,b’k,c’kで置き換えればよい。
また、前述の第2および第3の実施の形態で述べたように、ある室内温度と室外温度とにおいて、運転する空調機の選択時に評価する総消費電力を表す式、たとえば式(12)および式(13)において、同様に、係数データを新たにa’k,b’k,c’kで置き換えればよい。
以上のように本実施の形態においては、室内温度および室外温度に基づいて、性能モデルデータを修正する。これによって、本実施の形態の複数台の空調機20による協調制御において、室内温度と室外温度との影響によって変化する空調能力と消費電力との関係を考慮して、必要な全体空調負荷に見合うだけの能力を、消費電力を低減するように各空調機20に対して運転状態と運転時の空調能力とを与えて運転することができる。
したがって、空調機システム全体として、各空調機20の担当する空間の負荷状況を考慮して、消費電力を低減するような、実際の室内環境および室外機3の設置環境に対応した運転条件を求めて、空調機20を制御することができる。これによって、エネルギー消費量の低減を図ることができる。
また本実施の形態では、冷媒の蒸発温度および凝縮温度に応じて修正係数を取得し、この修正係数に基づいて、性能モデルデータD1の各係数を修正する。空調サイクルに関連する経年劣化は、蒸発温度または凝縮温度に影響して反映されるので、本実施の形態の複数台の空調機20による協調制御によれば、空調機20の経年劣化の影響は、運転状態および運転空調機の空調能力に動的に考慮されることになる。
したがって、使用頻度の違いによる劣化状況、または複数台の空調機20の構成における使用開始時期の異なる空調機20の混在状況に対応して、消費電力を低減するように各空調機20に対して運転状態と運転時の空調能力とを求めて制御することができる。
<第5の実施の形態>
本発明の第5の実施の形態の制御装置を備える空調機システムの全体構成は、前述の図1に示す第1の実施の形態における空調機システム1と同様であるので、共通する構成には同一の参照符号を付して、図示および共通する説明を省略する。本実施の形態の制御装置は、候補空調機の数が増大したときに、候補空調機に基づいて作成される運転状態の組合せ数を減らして、実効的な運転条件を低演算負荷で求める。
前述の第2の実施の形態で述べたように、前述の図12に示す運転機選択演算部18は、前述の図13のステップb5において、候補空調機を使って作成可能な全ての組合せをリストとして作成する。たとえば、図14で与えられた候補空調機が、空調機No1、No2、No3の場合に作成される組合せは、全部で7通りとなり、図15に示すようになる。
候補空調機の数が増えると、組合せ数は増大し、全ての組合せに対して総消費電力の計算を実行すると、演算負荷が高くなる。演算負荷を軽減するためには、組合せ数の削減が必要となる。このとき、実用的に運転効率の高い候補空調機から順に組合せに繰り入れることで、作成される組合せ数を削減することが好ましい。
図18は、空調能力と運転効率との関係を表す効率曲線を空調機毎に示すグラフである。図18において、横軸は空調能力Qを示し、縦軸は運転効率γを示す。図18では、空調機No1(「空調機1」と記載する場合がある)の効率曲線を、記号「○」を結んだ曲線で示し、空調機No2(「空調機2」と記載する場合がある)の効率曲線を、記号「□」を結んだ曲線で示し、空調機No3(「空調機3」と記載する場合がある)の効率曲線を、記号「△」を結んだ曲線で示す。図18に示すように、空調能力と運転効率との関係は、空調機毎に異なるものである。したがって、設定される各空調機の空調能力Qによって、各空調機の運転効率の順序は異なる。しかし、前述の第1〜第4の実施の形態で説明した協調制御においては、中間変数μが等しくなるように各空調機20の空調能力が配分される。
図19は、図18の横軸である空調能力Qを、中間変数μを用いて表した場合の効率曲線を示すグラフである。中間変数μを横軸にして、図18の効率曲線を描くと、図19に示すようになる。図19において、横軸は中間変数μを示し、縦軸は運転効率γを示す。図19では、図18と同様に、空調機No1の効率曲線を、記号「○」を結んだ曲線で示し、空調機No2の効率曲線を、記号「□」を結んだ曲線で示し、空調機No3の効率曲線を、記号「△」を結んだ曲線で示す。
図19から判るように、協調制御によって中間変数μが一定である場合、各空調機20の運転効率の順番は、おおよそ最大効率の大きい空調機20の順番でよいと考えられる。この考え方は、効率曲線がクロス、すなわち交差するときには、必ずしも正確ではない。
上記の結果から、各空調機20の運転効率の最大値(以下「最大運転効率γmax」という場合がある)を求めて、この最大運転効率γmaxの順序に基づいて、各空調機20の組合せパターンを検討すればよいことが判る。
空調機20における空調能力と消費電力との関係が、前述の式(1)に示すように、二次式で十分に近似できるとき、ある空調機kに対する運転効率γkは、次の式(15)のように与えられる。
このとき、最大運転効率γmaxは、式(16)となる。
図20は、空調能力と運転効率γとの関係の一例を示すグラフである。図20において、記号「×」は、最大運転効率γmaxを表す。
さらに、前述の第4の実施の形態で説明したように、運転効率は、室内温度および室外温度によって変化するので、その影響を反映した運転効率を適切に求めることが必要となる。
本実施の形態では、たとえば、次のようにして、室内温度および室外温度を考慮した運転効率を求める。室内温度および室外温度の影響を考慮した場合に、ある空調機kのある基準温度、たとえば26℃の最大運転効率をγmax base,kとすると、前述の式(16)は、次の式(17)に示すように記述できる。
次に、前述のような運転効率の順序に基づいて、組合せパターンの削減を行う本実施の形態における協調制御を説明する。本実施の形態による複数台の空調機による協調制御処理の内容を示すフローチャートは、前述の第2の実施の形態における協調制御処理の内容を示す図13のフローチャートと同様である。本実施の形態における協調制御処理は、図13のステップb5において、各候補空調機に対して室内温度および室外温度を考慮した最大運転効率に基づいて、運転状態の組合せリストを作成する点が、第2〜第4の実施の形態における協調制御処理と異なる。その他の処理は、第2〜第4の実施の形態と同様である。
以下に、本実施の形態における協調制御処理と、前述の図13に示すフローチャートに基づく第2〜第4の実施の形態における協調制御処理との相違点を具体的に説明する。図21は、本発明の第5の実施の形態における拡張した性能モデルデータのデータ形式を示す図である。図22は、本発明の第5の実施の形態における空調機の運転組合せリストのデータ形式を示す図である。
本実施の形態において、データ記憶部12には、たとえば前述の図5に示す第1の実施の形態における性能モデルデータを拡張して、各空調機に対して設定される最大運転効率γmax baseを含めた性能モデルデータが、図21に示すデータ形式で記憶される。そして、この拡張された性能モデルデータが、演算で必要なときに読み出されて参照される。前述の第3の実施の形態に適用する場合には、前述の図16に示す性能モデルデータを同様に拡張してもよい。
本実施の形態では、運転機選択演算部18は、前述の図13に示すステップb5において、前述の式(17)に従って、演算タイミングにおける室内温度および室外温度から求めた係数ηw,ηqと、データ記憶部12に記憶されている最大運転効率γmax baseとに基づいて、全ての候補空調機の最大運転効率を演算する。そして、運転機選択演算部18は、候補空調機を最大運転効率の降順に並べて、最初の候補空調機から順に組合せに繰り入れて組合せリストを作成する。このとき、候補空調機がN個あるときに作成される組合せを、たとえばN通りに削減することが好ましい。つまり、最大運転効率が最も大きい空調機が、運転させる空調機に含まれるように組合せパターンを求める。
たとえば、候補空調機が空調機No1、No2、No3であり、各候補空調機に対して求められた最大運転効率γmax baseが、空調機No1が「2.7」であり、空調機No2が「3.0」であり、空調機No3が「2.3」であるとする。この場合、候補空調機を最大運転効率の降順に並べると、空調機No2、No1、No3の順となる。したがって、組合せリストは、図22に示すように作成される。
このように、候補空調機がN台の場合は、最大運転効率の高い順に、N通りの組合せパターンを対象にして、消費電力量を計算する。以降は、前述の第2の実施の形態と同様の動作によって、組合せパターンのうち、総消費電力が最小値となる組合せパターンで、運転状態および空調能力を設定すればよい。
運転効率の最大値、すなわち最大運転効率を利用しない場合には、各空調機の担当する空間の負荷状況を反映して、次のように重み付けデータを利用してもよい。ここでは、重み付けデータ設定部17が、データ格納部11に格納されている各空調機20の空調負荷データを参照して重み付けデータを決定する場合について説明する。
たとえば、図14で与えられるように、候補空調機が空調機No1、No2、No3であり、図8で与えられるように、各候補空調機に対して求められた重み付けデータの大きさが、γ2(空調機No2)>γ1(空調機No1)>γ3(空調機No3)の順であったとする。
この場合、重み付けデータの大きさが小さい方が負荷は大きいので、たとえば、負荷が大きいエリアを優先して運転することを考えて、候補空調機を重み付けデータの昇順に並べると、空調機No3、空調機No1、空調機No2の順となる。この順に従って、組合せリストを上記のように作成してもよい。
また、これは重み付けデータが各空調機20の担当するエリアの人の数に由来して設定されている場合でも同様に考えることができる。このとき、直接に人の存在するエリアに対して運転空調機を割り当てるのではなく、人の存在しない、もしくは人の少ないエリアの空調機20を優先して運転したい場合には、上記の候補空調機を重み付けデータの降順に並べればよい。
以上のように本実施の形態では、候補空調機がN台の場合は、重み付けデータを基準に、N通りの組合せパターンを対象にして、消費電力量を計算する。以降は、前述の第2の実施の形態と同様の動作によって、組合せパターンのうち、総消費電力が最小値となる組合せパターンで、運転状態および空調能力を設定すればよい。
以上のように本実施の形態においては、運転効率の最大値または重み付けデータの大小の順序に基づいて、複数の空調機20のうち、運転させる空調機20と、運転を停止させる空調機20との組合せパターンを求める。これによって、消費電力を低減するような空調機20の運転状態と運転時の空調能力とを演算によって求めるときに、候補空調機による運転状態の組合せ数を効率的に削減することができる。また、候補空調機による運転状態の組合せ数を削減することによって、演算負荷を低減することができるので、実用上の制約から計算能力が低く、メモリの容量に限界のあるマイコンであっても、協調制御処理を実行する機能を実装することができる。
特に本実施の形態では、運転効率の最大値が最も大きい空調機20、または重み付けデータが最も大きい、もしくは最も小さい空調機20が、運転空調機に含まれるように、前述の組合せパターンを求める。これによって、消費電力を低減するような空調機20の運転状態と運転時の空調能力とを演算によって求めるときに、候補空調機による運転状態の組合せ数を、より効率的に削減することができる。
<第6の実施の形態>
本発明の第6の本実施の形態の制御装置は、ユーザが、協調制御に参加することができる空調機、または協調制御から離脱する空調機を予め設定することができる機能を備える。本実施の形態の制御装置を備える空調機システムの全体構成は、前述の図1に示す第1の実施の形態における空調機システム1と同様であるので、共通する構成には同一の参照符号を付して、図示および共通する説明を省略する。
協調制御からの離脱を表す状態は2種類あり、1つは主電源をOFFにする状態であり、もう1つは協調制御対象外にする状態である。データ格納部11には、空調機20毎に、協調制御の対象であるか否かを示す情報が記憶される。前述の第1の実施の形態のように、複数の空調機の協調制御は、次のように行われる。
ユーザが特定の空調機20の運転を停止させるとき、ユーザは、該当する空調機20に対する主電源をOFFとする。このとき、該当する空調機20から通信線8を介して、主電源OFFの運転状態を示す信号が制御装置10へ与えられる。制御装置10は、運転情報データD3において、該当する空調機20に「−1」を与えて、データ格納部11に格納する。
図23は、本発明の第6の実施の形態における運転状態データのデータ形式を示す図である。たとえば、空調機No1、No2、No3を運転し、空調機No4を停止させる場合には、図23に示すようなデータが設定される。
また、ユーザが特定の空調機20を協調制御対象外として運転させたいとき、制御装置10は、ユーザの設定によって、該当する空調機20に対して協調制御対象外の状態を設定する。つまり、制御装置10は、ユーザの設定によって、運転情報データD3において、該当する空調機20に「−2」を与えて、データ格納部11に格納する。
図24は、本発明の第6の実施の形態における他の運転状態データのデータ形式を示す図である。たとえば、空調機No1、No2、No3を運転し、空調機No4を協調制御対象外とする場合には、図24に示すようなデータが設定される。
そして、制御装置10は、前述の図11に示すフローチャートに従って、協調制御処理を行う。本実施の形態では、全体空調負荷演算部14は、ステップa2において、複数の空調機20のうち、制御対象である空調機20の空調負荷の合計値である全体空調負荷Lを求める。また、空調能力配分演算部15は、ステップa7において、複数の空調機20のうち、制御対象である空調機20の空調能力の和が全体空調負荷Lとなり、かつ、制御対象である空調機20の消費電力の和が可及的に小さくなるように、空調機20の空調能力を求める。その他の動作は、図11に示すフローチャートに基づく第1の実施の形態における協調制御処理と同様である。
前述の第2の実施の形態のように、複数の運転している空調機20に対して、運転する空調機20の選択および空調機20の能力配分を行う場合には、協調制御処理は、次のように行われる。
ユーザが特定の空調機20の運転を停止させるとき、ユーザは、該当する空調機20に対する主電源をOFFとする。このとき、該当する空調機20から通信線8を介して、主電源OFFの運転状態を示す信号が制御装置10へ与えられる。そして、制御装置10は、運転可能情報データD4において、該当する空調機20に「−1」を与えて、データ格納部11に格納する。
図25は、本発明の第6の実施の形態における運転可能状態データのデータ形式を示す図である。たとえば、次の制御タイミングで運転可能な空調機20が空調機No1、No2であり、運転不可能な空調機20が空調機No3であり、電源OFFの空調機20が空調機No4である場合には、図25に示すようなデータが設定される。
また、ユーザが特定の空調機を協調制御対象外として運転させたいとき、制御装置10は、ユーザの設定によって、該当する空調機20に対して、協調制御対象外の状態を設定する。つまり、制御装置10は、運転可能情報データD4において、該当する空調機20に「−2」を与えて、データ格納部11に格納する。
図26は、本発明の第6の実施の形態における他の運転可能状態データのデータ形式を示す図である。たとえば、空調機No1、No2、No4を運転し、空調機No3を協調制御対象外とする場合には、図26に示すようなデータが設定される。そして、制御装置10は、図13に示すフローチャートに従って、協調制御処理を行う。本実施の形態では、全体空調負荷演算部14は、ステップb3において、複数の空調機20のうち、制御対象である空調機20の空調負荷の合計値である全体空調負荷Lを求める。
また、空調能力配分演算部15は、ステップb7において、複数の空調機20のうち、制御対象である空調機20の空調能力Qの和が全体空調負荷Lとなり、かつ、各空調機20の担当する空間の負荷状況を反映したときの運転を想定する空調機20の消費電力Wの和を評価する評価関数が最小となるように、空調機20の空調能力を求めることになる。その他の動作は、前述の図13のフローチャートに基づく第2の実施の形態における協調制御処理と同様である。
前述の第3〜第5の実施の形態に適用する場合も同様に、データ格納部11の情報に基づいて、協調制御に参加する制御対象である空調機20について、協調制御を行うようにすることができる。
以上のように本実施の形態においては、データ格納部11には、空調機20毎に協調制御の対象であるか否かを示す情報が記憶される。これによって、本実施の形態の複数台の空調機20による協調制御において、協調制御に参加することができる空調機20を予め設定することができる。また協調制御から離脱する空調機20を予め設定することができる。
具体的には、ユーザによって協調制御の対象とするかどうかを設定することができる。また、ある状況で空調が不必要な箇所に設置されている空調機20の電源をOFFしても、それ以外の空調機20で協調制御を継続することができる。また、ある状況で空調が、空調機の性能や環境条件によらずに、必要な箇所に設置されている空調機20を協調制御対象外として設定しても、それ以外の空調機20で協調制御を継続することができる。
したがって、ユーザの判断による省エネルギー設定および快適性の実現に対して、柔軟な制御を実現することができる。
<第7の実施の形態>
本発明の第7の実施の形態の制御装置は、協調制御対象の空調機に対して、設置箇所のセンサ情報と設定情報との乖離が大きいときに、協調制御から離脱させて独立に運転させるように制御する。本実施の形態の制御装置を備える空調機システムの全体構成は、前述の図1に示す第1の実施の形態における空調機システム1と同様であるので、共通する構成には同一の参照符号を付して、図示および共通する説明を省略する。本実施の形態の制御装置は、協調制御処理の具体的な内容が異なること以外は、第1の実施の形態の制御装置10と同様の構成であるので、第1の実施の形態の制御装置と同一の参照符号「10」を付して示す場合がある。本実施の形態では、空調負荷を表すセンサ情報が、協調制御対象の空調機20に対する設置箇所の室内温度である場合を説明する。
前述の第1の実施の形態のように、複数の運転している空調機20の空調能力の配分で協調制御処理を実現する場合、協調制御処理は次のように行われる。具体的には、図11に示すフローチャートに基づいて、ステップa2の初期データの読み込み処理において、データ設定部13は、次の制御タイミングにおいて、バランス運転およびバランス停止の状態の空調機20の運転情報データD3を参照する。
また、データ設定部13は、ステップa1において、バランス運転の状態、すなわち運転情報データD3が「1」の状態となっている空調機20、およびバランス停止の状態、すなわち運転情報データD3が「0」の状態となっている空調機20の空調負荷データD2を参照する。このとき、現段階で、バランス運転またはバランス停止の状態となっている空調機20の空調負荷データD2の大きさが、所定値、たとえば基準空調負荷LTH(kW)よりも大きい場合、運転情報データD3において、現段階で「1」または「0」となっている値を、協調制御対象外を意味する「−2」に修正する。
室内温度と設定温度との乖離は、そのときの空調負荷に反映されるので、本実施の形態では、空調負荷の大きさを判定基準として使用している。判定基準は、これに限定されるものではなく、たとえば計測した室内温度と設定温度との偏差を判定基準としてもよい。
運転情報データD3を修正した後の処理は、修正後の運転情報データD3に基づいて処理を行うこと以外は、前述の図11に示すフローチャートにおけるステップa3以降の処理と同様である。本実施の形態では、全体空調負荷演算部14は、ステップa3において、複数の空調機20のうち、空調負荷が所定値、たとえば基準空調負荷LTH(kW)よりも小さい空調機20を、制御対象である空調機20として選択し、制御対象である空調機20の空調負荷の合計値である全体空調負荷Lを求める。
また、空調能力配分演算部15は、ステップa7において、複数の空調機20のうち、制御対象である空調機20の空調能力の和が全体空調負荷Lとなり、かつ、各空調機20の担当する空間の負荷状況を反映したときの運転を想定する空調機の消費電力Wの和を評価する評価関数が最小となるように、空調機20の空調能力を求める。
前述の第2の実施の形態のように、複数の運転している空調機20に対して、運転する空調機20の選択および空調機の能力配分を行って協調制御処理を実現する場合には、協調制御処理は次のように行われる。
図13に示すフローチャートに基づいて、ステップb2の初期データの読み込み処理において、データ設定部13は、次の制御タイミングにおける候補空調機の運転可能情報データD4を参照する。
また、データ設定部13は、バランス運転の状態、すなわち運転可能情報データD4が「1」の状態およびバランス停止の状態、すなわち運転可能情報データD4が「0」の状態となっている空調機20の空調負荷データD2を参照する。
このとき、現段階で、バランス運転またはバランス停止の状態となっている空調機20の空調負荷データD2の大きさが、所定値、たとえば基準空調負荷LTH(kW)よりも大きい場合、運転可能情報データD4において、現段階で「1」または「0」となっている値を、協調制御対象外を意味する値「−2」に修正する。
室内温度と設定温度との乖離は、そのときの空調負荷に反映されるので、本実施の形態では、空調負荷の大きさを判定基準として使用している。判定基準は、これに限定されるものではなく、たとえば計測した室内温度と設定温度との偏差を判定基準としてもよい。
運転可能情報データD4を修正した後の処理は、修正後の運転可能情報データD4に基づいて処理を行うこと以外は、図13に示すフローチャートにおけるステップb3以降の処理と同様である。具体的には、全体空調負荷演算部14は、ステップb3において、複数の空調機20のうち、空調負荷が所定値、たとえば基準空調負荷LTH(kW)よりも小さい空調機を、制御対象である空調機20として選択し、制御対象である空調機20の空調負荷の合計値である全体空調負荷Lを求める。
また、空調能力配分演算部15は、ステップb7において、複数の空調機20のうち、制御対象である空調機20の空調能力の和が全体空調負荷Lとなり、かつ、各空調機20の担当する空間の負荷状況を反映したときの運転を想定する空調機20の消費電力Wの和を評価する評価関数が最小となるように、空調機20の空調能力を求める。
前述の第3〜第6の実施の形態においても、空調機20の空調負荷が、所定値、たとえば基準空調負荷LTH(kW)よりも大きいときに、運転情報データD3または運転可能情報データD4を、協調制御対象外を意味する値「−2」に修正することによって、同様の動作を行うことができる。
以上のように本実施の形態においては、空調負荷が所定値、たとえば基準空調負荷LTH(kW)よりも大きい空調機20を協調制御対象外として、空調負荷が所定値、たとえば基準空調負荷LTH(kW)よりも小さい空調機20を、制御対象である空調機20として選択する。
したがって、本実施の形態の制御装置による複数台の空調機20の協調制御によれば、ある空調機の主に担当する空調エリアで室温と設定温度との差が大きいときに、空調機20は、協調制御を離脱して専ら空調エリアに対して作用することができる。これによって、快適性がある範囲を逸脱して損なわれている状況に対して、柔軟な制御を実現することができる。
前述の第1〜第7の実施の形態においては、複数の空調機20を制御する空調機の制御装置10,10Aについて説明したが、これに限らず、同一空間を冷却対象として設置された複数の冷凍装置を制御する冷凍装置の制御装置であっても、前述の第1〜第7の実施の形態の動作を適用することができる。
たとえば、冷凍用のショーケースなどの内部を、室内熱交換器21によって冷却する冷凍装置を複数備えるシステムにおいて、第1〜第7の実施の形態と同様に、冷凍装置の冷凍能力と消費電力との関係を表す性能モデルデータを冷凍装置毎に記憶させ、複数の冷凍装置の冷凍負荷の合計値である全体冷凍負荷を求める。そして、性能モデルデータと全体冷凍負荷と重み付けデータとに基づいて、複数の冷凍装置の冷凍能力の和が全体冷凍負荷となり、かつ、各冷凍装置の担当する空間の負荷状況を反映したときの運転を想定する冷凍装置の消費電力Wの和を評価する評価関数が最小となるように、複数の冷凍装置の冷凍能力をそれぞれ求める。これによって、前述の第1〜第7の実施の形態と同様の協調制御を行うことが可能であるので、各冷凍装置の担当する空間の負荷状況を考慮して、冷却対象の空間内の全体冷凍負荷と、運転中の冷凍装置の冷凍能力の総和とのバランスを保ちつつ、消費電力の総和を低減することができる。