JP5404344B2 - スラグ杭造成工法 - Google Patents

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  • Investigation Of Foundation Soil And Reinforcement Of Foundation Soil By Compacting Or Drainage (AREA)

Description

本発明は、特に既設構造物の直下直近など狭いスペースにおいても施工可能なスラグ杭造成工法及びスラグ杭造成装置に関するものである。
特開平6−108449号公報には、セメント及び他の粉粒素材を混合し、低スランプの非流動性であって自己硬化性の固化材を作製し、削孔を介し所定ステージで相互に接合するブロックを積層させる地盤改良方法が開示されている。この地盤改良方法によれば、軟弱地盤を改良できる。しかし、このような低スランプの非流動性物の移送には特殊な圧送ポンプが必要となるという問題がある。
一方、非薬液系注入材の流動化物、例えばセメント、ベントナイト等の懸濁微粒子を含む流動化物をコンクリートポンプやグラウトポンプなどの汎用ポンプを使用し、地中に注入する注入工法も知られている。しかし、一般的には岩盤等、周囲が強固な地山のクラック等の注入(ダムのカーテングラウト等)に用いられるものであるため、このような流動化物を土質地盤中に注入しても、注入時のパッカー効果が得られずに注入管(ロッド)周りから注入材が地上に漏れるか、注入材が地盤中に脈状注入となり設計対象領域に注入材を留める事が困難となるか、地盤改良効果が得られないという問題がある。
また、地盤工学会誌 Vol.57、No.7(2009年7月)第47頁には、砂、塑性化剤及び水を含有した流動化物を地中に圧入する砂圧入式静的締固め工法が開示されている。この工法によれば、汎用の送液ポンプが使用できると共に、既設構造物の直下や直近など砂杭材料供給手段が稼動するスペースを確保できない狭い砂杭造成区域であっても砂杭の造成をすることができ、都合がよい。
しかしながら、砂、塑性化剤及び水を含有した流動化物を軟弱な粘土地盤に圧入し、強制的な置き換え排除によって強度増強を図ったとしても、間隙水が時間の経過とともに、徐々に消失する時間が長いため、設計通りの複合地盤ができず地盤を改良することができないという問題がある。
また、特開2007−309091号公報には、製鋼スラグと高炉徐冷スラグとの質量混合率を8.5:1.5から0.5:9.5とするサンドコンパクションパイル工法用材料が開示されている。この工法によれば、SCP工法によるスラグ杭間の砂地盤の液状化防止ならびに粘土地盤の改良においては高い複合地盤としてのせん断強度・沈下抑制を図ることができるものである。しかしながら、特開2007−309091号公報のSCP工法では、地盤材料に流動性がないため、通常の流動化物送液用の汎用ポンプが使用できないという問題がある。
特開平6−108449号公報 特開2007−309091号公報
地盤工学会誌 Vol.57、No.7(2009年7月)第47頁
従って、本発明の目的は、既設構造物の直下や直近など改良杭材料供給手段が稼動するスペースを確保できない狭いスラグ杭造成区域であっても改良杭の造成をすることができると共に、通常の流動化物送液用の汎用ポンプが使用でき、更に砂質地盤及び粘土質地盤共に、好適な地盤改良が行える改良杭造成工法及び改良杭造成装置を提供することにある。
かかる実情において、本発明者らは鋭意検討を行った結果、スラグ及び流動化剤を、流動状態を保持したまま地盤中に圧入し、地盤中で塑性化させれば、既設構造物の直下や直近などスラグ杭材料供給手段が稼動するスペースを確保できない狭いスラグ杭造成区域であってもスラグ杭の造成をすることができると共に、通常の流動化物送液用の汎用ポンプが使用でき、更に砂質地盤及び粘土質地盤共に、好適な地盤改良が行えることを見出し、本発明を完成したものである。
すなわち、本発明は、粒径0.075mm以下の含有率が15%以下の骨材であるスラグ、水及び流動化剤を含有する流動物を、流動状態を保持したまま地盤中に圧入し、地盤中で塑性化させることを特徴とするスラグ杭造成工法を提供するものである。
また、本発明は、中空管を地盤中の設計深度まで貫入した後、該中空管を通して粒径0.075mm以下の含有率が15%以下の骨材であるスラグ、水及び流動化剤を含有する流動物を地表から地中に圧入し、地中に該流動物を残置し、この化学的塑性化前の残置物の上に、次ぎのステップ分の流動物を圧入し、これを繰り返して行うことにより、地盤中で塑性化させ、所定長のスラグ杭を造成することを特徴とするスラグ杭造成工法を提供するものである。
本発明のスラグ杭造成工法及びスラグ杭造成装置であれば、既設構造物の直下又は直近などスラグ杭材料供給手段が稼動するスペースを確保できない狭いスラグ杭造成区域であってもスラグ杭の造成をすることができる。また、地中に送り込む材料が流動化物であるため、コンクリートポンプやグラウトポンプなどの汎用ポンプが使用できる。また、地中に投入されたスラグは脱水後、物理的塑性化により締め固まり、次いで生じる化学的塑性化の後、固化するため、粘土質地盤においても好適な地盤改良が行える。
スラグ杭造成装置の概略図である。 スラグ杭造成工法の説明図である。 スラグ杭造成作用の説明図であり、(A)はスラグ杭材料の流動化を説明する模式図、(B)及び(C)はスラグ杭材料の塑性化を説明する模式図である。
次に、本発明の実施の形態におけるスラグ杭造成工法及びスラグ杭造成装置の一例を図1〜図3を参照して説明する。図1はスラグ杭造成装置の概略図、図2はスラグ杭造成工法の説明図、図3はスラグ杭造成作用の説明図である。なお、本明細書中、流動化物は流動物の意味である。
スラグ杭造成装置50は、流動化プラント10と、流動化物圧送用の中空管23と、流動化プラント10で製造されたスラグ杭材料(流動化物)を中空管23に送る圧送ポンプ4と、圧送ポンプ4と中空管23とを接続する流動化物供給配管34を備える。
流動化プラント10は、スラグ杭造成区域26より離れた場所にあるもので、流動化物を製造する装置群である。流動化プラント10は、例えば流動化物供給手段1、スラグ杭材料供給手段2、流動化剤供給手段3、必要に応じて設置される塑性化剤供給手段5、スラグ杭材料移送配管31、流動化剤移送配管32、塑性化剤移送配管35及び流動化物移送配管33からなる。なお、それぞれの供給手段には、必要に応じて、貯留タンクや供給ポンプなど設置される。また、スラグ杭材料移送配管31、流動化剤移送配管32、流動化物移送配管33、塑性化剤移送配管35のそれぞれの配管途中に流量計を設置してもよい。また、流動化物の製造に際して、スラグ杭材料の含水比に応じて更に水の添加が必要である場合には、別途の水供給手段を設置すればよい。このような流動化プラント10は、スラグ杭造成区域26に設置しなくてもよく、既設構造物の直下や直近にスラグ杭を造成する際の設置スペースを確保する必要がない点で好適である。流動化物供給配管34は、通常可撓性ホースが使用され、その長さは適宜決定されるが、概ね10m以上、200m未満である。
流動化物供給手段1は、スラグ及び流動化剤、並びに必要に応じて水や塑性化剤を均一に混合する混合器を備えるものである。混合器としては、2軸パドルミキサー等が、各原料を短時間で均一に混合できる点で好適である。
スラグは、鉄鋼スラグを言う。鉄鋼スラグは、製鋼工程で生じる石灰分を主体とした粉粒状の副産物であり、高炉スラグと製鋼スラグがある。高炉スラグには、除冷スラグと水砕スラグがあり、製鋼スラグには、転炉スラグと電気炉スラグがある。徐冷スラグとは、溶融状態の高炉スラグをヤードに流し込み、空気と適度な散水により冷却して生成される結晶質で岩石状のものをいう。また、水砕スラグとは、溶融状態の高炉スラグを加圧水で急冷することにより生成されるガラス質(非結晶)で粒状のものをいう。
スラグは、最大粒径が10mmを超えないものであることが好ましく、更に好ましくは、粒径1mm以下の含有率が40〜100%、好ましくは45〜98%であり、0.075mm以下(細粒分)の含有率が15%以下、好ましくは10%以下である。スラグの最大粒径が10mmを越えると、大きな粒径のスラグがポンプや配管内で詰まったり、排水性が良すぎて中空管(ロッド)の先端で脱水されて詰まったりし、流動化物の圧送に問題が生じる。一方、細粒分の含有率が多過ぎると、流動化物を地中に圧入する際、脱水作用が弱く、中空管(ロッド)周りからのリークが発生し、規定量を注入できなくなる。
圧送ポンプ4は、公知の送液ポンプが使用でき、例えばピストンポンプ、スクイズポンプなどが挙げられる。また、圧送ポンプ4は、低圧ポンプでも高圧ポンプでもよいが、高圧ポンプを用いると、圧入スラグ杭造成工法が利用できる。
流動化物圧送用の中空管23は、公知の地盤改良機20に取り付けられるものである。地盤改良機20は、従来の圧入砂杭造成工法を実施する装置が挙げられる他、例えばボーリングマシン等も可能である。圧入スラグ杭造成工法を実施する装置は、中空管を地盤中の設計深度まで貫入した後、該中空管を通して地表から地中に流動化物を圧入し、地中に該流動化物を残置し、この未塑性化の残置物の上に、次ぎの流動化物を圧入し、これを繰り返して行うことにより、所定長の拡径のスラグ杭を造成する工法を実施する装置である。圧入スラグ杭造成工法を実施する装置においては、圧送ポンプとは別途で更に高圧ポンプを設置してもよい。スラグ杭造成装置50において、流動化物供給配管34の先端は、中空管23のいずれの部分に接続されてもよく、図1においては中空管23の上部開口である。スラグ杭造成装置50は、原料供給手段が1系統でよいため、小規模の設備とすることができる。「未塑性化」とは物理的塑性化の前の状態あるいは物理的塑性化の後であって化学的塑性化の前の状態である。
なお、前記の次ぎの流動化物の圧入時期は、未塑性化の残置物に対するものに制限されず、化学的塑性化の後であってもよい。
次ぎに、スラグ杭造成工法について説明する。本発明のスラグ杭造成工法は、スラグ及び流動化剤、並びに必要に応じて水や塑性化剤を含有する流動化物を、流動状態を保持したまま地盤中に圧入し、地盤中で脱水した後、物理的塑性化により締め固め、次いで化学的塑性化を経て、固化したスラグ杭を得る工法である。流動化物は、予め予備実験により、スラグ、流動化剤及び塑性化剤の配合割合を決定しておき、これら原料の混合後から塑性化までの時間を把握しておく。塑性化剤はスラグの種類によっては使用を省略できる。スラグの化学成分に含まれる鉄分等のカチオンの作用により塑性化作用を奏するためである。水は、流動化剤に含有する水で足りる場合は不要である。なお、流動化物中には、従来の砂杭造成工法で使用されてきた公知の砂などが、最大70重量%程度含まれていてもよい。この程度の範囲で砂などが含まれていても、流動化を保持できると共に、スラグの締め固め作用に悪影響しない。ただし、砂とスラグの混合物の粒度は、スラグの粒度範囲内でなければならない。なお、明細書中、スラグ及び流動化剤、並びに任意の水や塑性化剤の混合を単に、「原料の混合」とも言う。
流動化剤は、保水性を高めて間隙水の粘性を高めると共に、スラグと水との分離を抑制して、パイプ輸送できるようにするものである。流動化剤が無配合の場合、配管内で目詰まりが生じ、パイプ輸送ができない。流動化剤としては、吸水性ポリマー及び高分子剤等が挙げられる。流動化剤は、これらの1種類又は2種類以上を組み合わせて使用することができる。
吸水性ポリマーとしては、アクリル酸ナトリウム重合体部分架橋物、アクリル酸ナトリウム重合体架橋物が挙げられる。このうち、アクリル酸ナトリウム重合体部分架橋物が好ましい。
高分子剤としては、ノニオン系高分子剤、アニオン系高分子剤、カチオン系高分子剤及び両性高分子剤が挙げられる。ノニオン系高分子剤としては、ポリアクリルアミドが挙げられる。アニオン系高分子剤としては、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、アクリルアミド2−メチルプロパンスルフォン酸、ビニルスルフォン酸、スチレンスルフォン酸などの単独重合体あるいはアクリルアミドとの共重合体が挙げられる。カチオン系高分子剤としては、アクリルアミドと、N,N-ジメチルアミノエチルメタクリレート又は系N,N-ジメチルアミノエチルアクリレートモノマーとの共重合体が挙げられる。高分子剤は、粉末状及び液体状のいずれのものも使用できる。高分子剤は、天然物又は合成物いずれも使用できるが、合成物とすることが、少ない配合量で流動化物を得ることができる点で好ましい。これらの高分子剤は、特公昭34−10644号公報などに記載の公知の方法で製造することができる。
好ましい高分子剤は、分子量が100万以上、好ましくは200万以上、1000万以下であり、イオン化度が0〜100モル%のアクリル系高分子からなる粉末状と分散粒子径が100μm以下の油中水型エマルジョン形態のものである。
流動化剤の配合割合は、適宜決定されるが、通常、流動化物に対して、重量比配合で0.01〜10.0重量%、好ましくは0.1〜1.0重量%である。流動化剤が水で希釈されている場合、別途の水を添加しなくとも流動化物を流動化させることができる。例えば、水で希釈された6.4%濃度の流動化剤の場合、配合割合は、流動化物に対して重量比配合で好ましくは1.6〜16重量%である。流動化剤の配合割合は少な過ぎると、流動化物が流動化せず、配管内において分離したり、目詰まりしたりして移送できなくなる。また、流動化剤の配合割合が多過ぎても、流動化効果は変わらず、却ってコストを上昇させることになる。
圧送ポンプでパイプ輸送できる流動性とは、日本工業規格(JIS R 5201−1997)で規定される「セメントの物理試験方法」11.フロー試験におけるフロー値が150mm以上のものを言う。フロー試験方法とは、以下の方法を言う。すなわち、試料をフローテーブル上の中央の位置に置いたフローコーンに2層に詰める。各層は、突き棒で全面にあたって各々15回突き、表面をならす。フローコーンを上の方に取り去り、15秒間に15回の落下運動をフローテーブルにより与え、試料が広がった後の径を測定する。
また、流動化物は、「フロー試験」方法以外に、手で把持し、体感で判断することもできる。すなわち、流動化物を手で把持した場合、圧密せず、分離せず、ドロドロ感があり、手に残らないものは好適な流動化物である。流動化物は、図3(A)に示すように、流動化剤42が保水すると共に、砂41の粒子間距離を保持することで内部摩擦を低減するため、流動性が高まるものと思われる。
塑性化剤は、圧送時、圧入時共に流動性を確保すると共に、流動化剤と反応して化学的塑性化を起こすまでの時間を制御するために使用される。塑性化剤としては、分子量10〜10のカチオン系合成高分子剤が挙げられる。これらカチオン系合成高分子剤としては、アンモニア、脂肪族アルキルモノ又はジアミン又はポリアミンとエピハロヒドリンの重縮合物が挙げられる。アルキルモノアミンとしては、モノメチルアミン、モノエチルアミン、ジメチルアミン、ジエチルアミン、トリメチルアミン、n-ブチルアミン、イソブチルアミンが挙げられる。また、ジアミン又はポリアミンとしては、アミノエチル-メチルアミン、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、ペンタエチレンヘキサミン、ヘキサメチレンジアミンなどが挙げられる。また、エピハロヒドリンとしては、エピクロルヒドリン、エピブロモヒドリンなどが挙げられる。
塑性化剤の配合割合は、スラグの種類や量、流動化剤の種類や量、施工準備や施工の時間などにより適宜決定されるものである。原料の混合後、化学的塑性化までの時間(以下、「塑性化時間」とも言う。)は、例えば1時間以上、好適には1.5時間以上、28日以下となる範囲で適宜決定される。流動化物の各原料の配合割合は、予め実験室における塑性化時間を求める予備実験により決定される。塑性化時間が短過ぎると、流動化物供給配管途中で塑性化してしまい、円滑なパイプ輸送ができなくなる。
塑性化剤の配合割合は、スラグ1kgに対して5ml以下、好適には0〜0.5mlである。スラグの種類により、塑性化剤の添加が必須の場合にその配合量が少な過ぎると、地中に置かれた流動化物は塑性化せず、設計通りのスラグ杭が造成できなくなる。また、塑性化剤の添加が多過ぎると、コストを上昇させてしまう。化学的塑性化は、図3(A)〜(C)に示すように、流動化剤42が塑性化剤と触れることで分子の結合が分解され保水していた水を吐き出すため、スラグ杭材料41が元の粒度の性状に戻ることを言う。
化学的塑性化の判断は、市販のテクスチャー試験器を用いて行なうことができる。具体的にはテクスチャーによる硬さの測定結果から最大応力値(kPa)に換算し、この最大応力値が15kPa以上のものであれば塑性化されたものと判断する。最大応力値が15kPa以上のものが塑性化物となることは、各種物性試験結果や過去の経験値から判断できる。なお、流動化剤添加前のスラグ単独の最大応力は、概ね150kPa以上である。なお、物理的塑性化とは圧入時の流動化物の脱水と、流動化物の圧入の双方の作用によるスラグ塊及び周辺地盤の締め固め効果を言う。
本発明のスラグ杭造成工法の一例を図2及び図3を参照して説明する。図2(A)は中空管貫入開始状態を、(B)は1回目の圧入の終了を、(C)は2回目の圧入の終了を、(D)は3回目の圧入の終了を、(E)は14回目の圧入の終了をそれずれ示す。先ず図2(B)の1回目の圧入終了までを、図3を用いて説明する。
中空管24を地盤90中の設計深度Xまで貫入した後、中空管24を通してスラグと流動化剤を含有する流動化物61を地表から地中に圧入する。この状態を図3(A)に示す。この時点では、設計深度Xに圧入された流動化物71は周辺地盤の拘束力で弱く圧密化される。この流動化物(残置物)71は、スラグ粒子41間を結合する流動化剤42が伸びた状態である。なお、図3は模式図であり、残置物は実際の形状を示すものではない。
次いで、周辺地盤の拘束力に勝るポンプ圧力によりスラグ杭単位長さ当たりの設計圧入量をポンプ圧力により圧送する。この状態を図3(B)に示す。流動化物71は流動化物のポンプでの圧入により、排水しながら圧密される。しかも残置物71が流動状態であるため、拡径しつつ周辺地盤への応力が効率よく伝わり、周辺地盤への改良性が高まる(物理的塑性化)。このとき流動化物71は、ポンプの圧入により、粒子間を結合する流動化剤が縮んだ状態となり、内部摩擦角が増大する。流動化物の圧入を、化学的に塑性化された砂(残置物)に対して行なうと、該塑性化された砂の圧密により、周辺地盤への圧密力が低下し注入圧に大きな力が必要となり施工性が悪くなる。
次いで、図2(C)に示す流動化物72は、先の流動化物71と同様な手段で造成され、順次図2(D)と繰り返し造成され、その後、圧密された流動化スラグは、時間が経過し流動化剤と塑性化剤又は流動化剤とスラグの反応により、化学的に塑性化し、最終的に図2(E)に示す所定長のスラグ杭を造成する。化学的に塑性化された残置物は硬さが十分であり、そのままスラグ杭となる。また、流動化剤と塑性化剤は電荷中和され不溶化状態になり溶出しない。また、流動化剤及び塑性化剤は中性であり、環境を汚染することもない。なお、所定量のスラグ杭を造成する際、スラグ杭体積の1.2〜1.3倍程度の流動化物が必要となる。これは圧密により体積が減少するためである。
繰り返し圧入により造成された所定長の流動化物が、1バッチで製造された流動化物により行なわれる場合、全ての流動化物71、72・・・は、経過時間とともに塑性化剤が作用し、流動化剤を破断してほぼ同時に化学的に塑性化する。また、繰り返し圧入により造成された所定長の流動化物が、2バッチ以上で製造された流動化物により行なわれる場合、流動化物71、72・・間において、化学的に塑性化する時期が異なることがある。
なお、流動化物には更に、消石灰、石膏、セメント等のアルカリ刺激剤が含まれていてもよい。これらのアルカリ刺激剤を配合することにより、固化速度を高めるとともに、固化強度を高めることができる。スラグは潜在水硬性を有するため、固化するものの、固化速度は非常に遅い。このため、アルカリ刺激剤を加えることで、固化速度を速めることができる。また、アルカリ刺激剤を配合する場合、スラグの細粒分の含有率は15%以下としなくてもよい。スラグの細粒分が多くなることで、脱水作用が弱くなっても固化強度を高めることができ、スラグの細粒分が多くなることによる欠点を改善できるからである。また、流動化物には、更に流動化促進剤などが含まれていてもよい。
スラグ杭造成工法が適用される地盤としては、砂質地盤及び粘土質地盤のいずれも可能である。軟弱な粘土質地盤に砂を骨材とする流動化物を地中に圧入し、強制的な置き換え排除によって強度増強を図ったとしても、間隙水が時間の経過とともに、徐々に消失する時間が長いため、設計通りの複合地盤ができないが、スラグを骨材として用いたことで、物理的塑性化による締め固め、化学的塑性化を経た固化杭を得ることができるため、設計通りの複合地盤ができる。粘土質地盤とは、細粒分の含有率が50%以上となるような地盤である。
本発明のスラグ杭造成工法によれば、ロッド(中空管)から地盤に圧入されたスラグは、脱水されて流動化状態が消失する。ロッド周りに良く締め固まったスラグが、ロッド貫入時に生じた周囲の空隙に流動化物が逸走することを防止する(パッカーの)役割を果たすため、流動化物が地上へ噴出(リーク)することを防止できる。このため、規定量の圧入が可能となる。スラグは細骨材であり、このスラグを流動化して地盤に圧入するため、注入工法のように地盤中を割裂して迷走することがなく、ロッド周りで締め固まった状態で成長し周辺地盤を締め固めることができる。地盤に圧入するのは流動化物であるため、特殊なポンプは不要であり、通常のコンクリートポンプを使用することができる。また、スラグを地盤改良材として使用するため、砂と比較して、内部摩擦角が大であるため、また、(スラグ自体の水硬性のため)スラグ杭自体の強度が高くなるため、地盤改良効果が高く、改良率を下げることができ、杭の本数を減らすことができる。また、スラグの化学成分による塑性化機能により、塑性化剤の添加量を削減又は省略することができる。
次ぎに、実施例を挙げて、本発明を更に具体的に説明するが、これは単に例示であって、本発明を制限するものではない。
参考例1
スラグとして、最大粒径5mm、粒径1mm以下の含有率が51%、0.075mm以下(細粒分)の含有率が15%以下の転炉スラグAを、流動化剤として、油中水型エマルジョン形態のノニオン系ポリアクリルアミド(水溶液の濃度6.4%)を、遅効性塑性化剤として、ジメチルアミン・エピクロルヒドリンの重縮合物の4級塩を、水として、上水道水を、それぞれ表1に示す配合量で配合し、流動化物Aを得た。流動化物は、JIS R 5201−1997で規定されるセメントの物理試験方法のフロー試験におけるフロー値を測定した。その結果を表1に示す。
参考例2及び3
転炉スラグAに代えて、最大粒径2.5mm、粒径1mm以下の含有率が68%、0.075mm以下(細粒分)の含有率が11%以下の転炉スラグBを使用し、表1に示す配合量で配合した以外は、参考例1と同様の方法により流動化物を製造した。なお、参考例3は塑性化剤無配合としたものである。その結果を表1に示す。
参考例4
転炉スラグAに代えて、最大粒径0.8mm、0.075mm以下(細粒分)の含有率が13%以下の転炉スラグCを使用し、表1に示す配合量で配合した以外は、参考例1と同様の方法により流動化物を製造した。その結果を表1に示す。
Figure 0005404344
参考例1〜4の流動化物のフロー値はいずれも150mm以上であり、良好であった。また、得られた流動化物は圧密せず、分離せず、ドロドロ感があり、手に残らないという良好な流動性を示した。
(流動化物の塑性化時間)
上記参考例2の流動化物を実験室に放置し、時間毎にサンプリングして、テクスチャー試験器TPU−2S(山電社製)を用いて最大応力を測定し、製造日から計算して28日後に最大応力15.0kPa以上となるかを求めた。その結果を表2に示す。なお、最大応力15.0kPa以上の硬さであれば、地中に置かれた場合、スラグ杭として適した強度となることが確認されている。なお、転炉スラグAそのものの最大応力は150kPa以上である。
Figure 0005404344
参考例3は、塑性化剤を配合していないが、スラグ自体に含まれる化学成分の塑性化機能により、化学的塑性化がおこったものである。
スラグ杭造成装置として、圧入スラグ杭造成装置(ボーリングマシン)を使用し、更に下記実施条件で地中にスラグ杭を造成した。なお、流動化物は参考例2のものとした。その結果、流動化物は中空管へ円滑に移送でき、また、十分な強度を有するスラグ杭を造成できた。
(スラグ杭造成装置及び圧入条件)
・ 地盤改良機:圧入スラグ杭造成機(ボーリングマシン)
・ 中空管;内径50mm
・ スラグ杭材料流動化物の中空管への圧送流速;各々30リットル/分〜150リットル/分
・ スラグ杭径:700mm(設計圧入量0.5m/1m当たり)
・ 圧入条件;体積0.1mの流動化物を地中に圧入して残置し(単位長さ20cm)、これを5回繰り返して、合計長さ100cmの流動化残置物を得た。その後、100cmの流動化残置物が塑性化し、上記径のスラグ杭が得られた。
本発明のスラグ杭造成工法及びスラグ杭造成装置によれば、既設構造物の直下又は直近などスラグ杭材料供給手段が稼動するスペースを確保できない狭いスラグ杭造成区域であってもスラグ杭の造成をすることができる。また、特殊なポンプは不要であり、通常のコンクリートポンプが使用できる。また、粘土質地盤においても好適な地盤改良が行えるため、砂を骨材とする工法に比べて利便性が高い。
1 流動化物供給手段
2 スラグ杭材料供給手段
3 流動化剤供給手段
4 圧送ポンプ
5 塑性化剤供給装置
10 流動化プラント
20 地盤改良機
23 スラグ杭造成用の中空管
24 リーダ
25 スラグ杭
26 スラグ杭造成区域
31 スラグ杭材料移送配管
32 流動化剤移送配管
33 流動化物移送配管
34 流動化物供給配管
35 塑性化剤供給配管
50 スラグ杭造成装置

Claims (5)

  1. 粒径0.075mm以下の含有率が15%以下の骨材であるスラグ、水及び流動化剤を含有する流動物を、流動状態を保持したまま地盤中に圧入し、地盤中で塑性化させることを特徴とするスラグ杭造成工法。
  2. 該流動物は、地盤中に圧入されて、脱水して締め固められ、次いで、該スラグが該流動物として配合される前の粒度性状に戻る化学的塑性化を経て、固化することを特徴とする請求項1記載のスラグ杭造成工法。
  3. 該流動化剤は、吸水性ポリマーであることを特徴とする請求項1又は2記載のスラグ杭造成工法。
  4. 該流動物は、更に塑性化剤を含有することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のスラグ杭造成工法。
  5. 中空管を地盤中の設計深度まで貫入した後、該中空管を通して粒径0.075mm以下の含有率が15%以下の骨材であるスラグ、水及び流動化剤を含有する流動物を地表から地中に圧入し、地中に該流動物を残置し、この化学的塑性化前の残置物の上に、次ぎのステップ分の流動物を圧入し、これを繰り返して行うことにより、地盤中で塑性化させ、所定長のスラグ杭を造成することを特徴とするスラグ杭造成工法。
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