JP5403609B2 - 表層密着強度測定方法および装置 - Google Patents

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Description

本発明は、表層密着強度測定方法および装置に関し、特に、基材にコーティングされている表層を切刃により剥離し、切刃に加わる水平力Fhおよび垂直力Fvを測定し、それら水平力Fhおよび垂直力Fvを基に表層の密着強度を定量的に評価し、表層の厚さによる影響を抑制することが出来る表層密着強度測定方法および装置に関する。
基材にコーティングされている表層を切刃で切削・剥離し、剥離した表層の開口長さ、開口変位、曲率半径の少なくとも一つと切刃に加わる水平力Fhとを測定し、公知数式を用いてエネルギー解放率Gを算出し、そのエネルギー解放率Gにより密着強度を評価する方法・装置が知られている(特許文献1参照)。
また、基材にコーティングされている表層を切刃により切削・剥離し、切刃に加わる水平力Fhおよび垂直力Fvを測定する装置が知られている(特許文献2参照)。
他方、基材にコーティングされている表層を引っ張り剥がしたときの単位長さ当たりの界面剥離に要するエネルギー a などを解析した理論が知られている(非特許文献1参照)。
特開2003−344265号公報 特開2006−349398号公報
Kinloch A.J., Lau, C.C, Williams, J.G., International Journal of Fracture 66:45-70, 1994.
特許文献1に記載されたエネルギー解放率Gによる密着強度の評価方法では、塑性変形などによる散逸エネルギーを考慮していないため、剥離した表層が塑性変形を生じる場合などに、表層の厚さによる影響を大きく受け、密着強度を定量的に正しく評価できない問題点がある。
また、特許文献2に記載された切刃に加わる水平力Fhおよび垂直力Fvを測定する装置では、水平力Fhおよび垂直力Fvの測定精度を向上できる。しかし、当該装置を用いてどのように表層の密着強度を評価するかについては特許文献2に開示されていない。
他方、非特許文献3に記載された理論では、表層を引っ張り剥がすことを前提としており、表層を切刃により切削・剥離する場合については考慮されていない。
そこで、本発明の目的は、基材にコーティングされている表層を切刃により剥離し、切刃に加わる水平力Fhおよび垂直力Fvを測定し、それら水平力Fhおよび垂直力Fvを基に表層の密着強度を定量的に評価し、表層の厚さによる影響を抑制することが出来る表層密着強度測定方法および装置を提供することにある。
第1の観点では、本発明は、基材と該基材にコーティングされた表層の界面に沿って切刃を水平移動して前記表層の剥離を行い、前記切刃に加わる水平力Fhおよび垂直力Fvの両方または水平力Fhのみを測定し、これら水平力Fhおよび垂直力Fvの両方または水平力Fhのみを基に外力がした仕事量Gext と散逸エネルギーを算出し、前記外力がした仕事量Gext から前記散逸エネルギーを除去して、界面剥離エネルギー a を得ることを特徴とする表層密着強度測定方法を提供する。
上記構成において、「コーティング」とは、「覆うように形成すること」を意味し、形成の方法は例えば塗装,めっき,蒸着,スパッタリングがあるが、これらに限定されるものではない。
上記第1の観点による表層密着強度測定方法では、まず、基材と該基材にコーティングされた表層の界面に沿って切刃を水平移動して表層の剥離を行い、切刃に加わる水平力Fhおよび垂直力Fvの両方または水平力Fhのみを測定する。次に、水平力Fhおよび垂直力Fvの両方または水平力Fhのみを基に、外力がした仕事量Gext と、散逸エネルギーたとえば摩擦散逸エネルギーGdf や塑性散逸エネルギーGdb を算出する。この算出の具体例は、後で詳述する。そして、外力がした仕事量Gext から散逸エネルギーを除去して、界面剥離エネルギー a を得る。これにより、表層の厚さによる影響を抑制して、密着強度を定量的に正しく評価できるようになる。
第2の観点では、本発明は、前記第1の観点による表層密着強度測定方法において、表層材料の弾性係数Eおよび降伏ひずみεyおよび弾性係数減少率χを用いて、前記散逸エネルギーの一つである塑性散逸エネルギーGdb を算出することを特徴とする表層密着強度測定方法を提供する。
上記構成において、「表層材料の弾性係数Eおよび降伏ひずみεyおよび弾性係数減少率χ」は、例えば表層材料の応力−ひずみ関係から得られる。
上記第2の観点による表層密着強度測定方法では、表層材料の弾性係数E、降伏ひずみεy、弾性係数減少率χを用いて、散逸エネルギーの一つである塑性散逸エネルギーGdb を算出する。この算出の具体例は後で詳述する。
第3の観点では、本発明は、基材と該基材にコーティングされた表層の界面に沿って切刃を水平移動して前記表層の剥離を行い且つ前記切刃に加わる水平力Fhおよび垂直力Fvの両方または水平力Fhのみを測定する切削・剥離手段と、前記水平力Fhおよび垂直力Fvの両方または水平力Fhのみを基に外力がした仕事量Gext と散逸エネルギーを算出し、前記外力がした仕事量Gext から前記散逸エネルギーを除去して、界面剥離エネルギー a を得る演算手段とを具備したことを特徴とする表層密着強度測定装置を提供する。
上記第3の観点による表層密着強度測定装置では、まず、基材と該基材にコーティングされた表層の界面に沿って切刃を水平移動して表層の剥離を行い、切刃に加わる水平力Fhおよび垂直力Fvの両方または水平力Fhのみを測定する。次に、水平力Fhおよび垂直力Fvの両方または水平力Fhのみを基に、外力がした仕事量Gext と、散逸エネルギーたとえば摩擦散逸エネルギーGdf や塑性散逸エネルギーGdb を算出する。この算出の具体例は、後で詳述する。そして、外力がした仕事量Gext から散逸エネルギーを除去して、界面剥離エネルギー a を得る。これにより、表層の厚さによる影響を抑制して、密着強度を定量的に正しく評価できるようになる。
第4の観点では、本発明は、前記第3の観点による表層密着強度測定装置において、前記演算手段は、表層材料の応力−ひずみ関係から得られる弾性係数Eおよび降伏ひずみεyおよび弾性係数減少率χを用いて、前記散逸エネルギーの一つである塑性散逸エネルギーGdb を算出することを特徴とする表層密着強度測定装置を提供する。
上記構成において、「表層材料の弾性係数Eおよび降伏ひずみεyおよび弾性係数減少率χ」は、例えば表層材料の応力−ひずみ関係から得られる。
上記第4の観点による表層密着強度測定方法では、表層材料の弾性係数E、降伏ひずみεy、弾性係数減少率χを用いて、散逸エネルギーの一つである塑性散逸エネルギーGdb を算出する。この算出の具体例は後で詳述する。
本発明の表層密着強度測定方法および装置によれば、基材にコーティングされている表層を切刃により剥離し、切刃に加わる水平力Fhおよび垂直力Fvを測定し、それら水平力Fhおよび垂直力Fvを基に、表層の密着強度を定量的に評価するため、表層の厚さによる影響を抑制することが出来る。
実施例1に係る表層密着強度測定装置を示す構成説明図である。 実施例1に係る表層剥離処理を示すフロー図である。 実施例1に係る表層密着強度測定装置により得られるデータを示す模式図である。 表層が切刃で剥離される状態を示す断面図である。 実施例1に係る界面剥離エネルギー算出処理を示すフロー図である。 表層材料の応力−ひずみ特性の例示図である。 無次元化曲げモーメントと無次元化曲率との関係を示す概念図である。
以下、実施例を説明する。なお、これにより本発明が限定されるものではない。
−実施例1−
図1は、実施例1にかかる表層密着強度測定装置100を示す構成説明図である。
この表層密着強度測定装置100は、基台1と、第1辺21を水平(x方向)に保って基台1に支持され且つ第2辺22を第1辺21と平行を保って弾性変形しうる水平用弾性平行リング2と、第1辺31を垂直(y方向)に保って水平用弾性平行リング2の第2辺22にスペーサ12を介して支持され且つ第2辺32を第1辺31と平行を保って弾性変形しうる垂直用弾性平行リング3と、水平用弾性平行リング2の第2辺22の一端に水平ロッド6aを介し水平力Fhを加えて水平用弾性平行リング2を弾性変形させるための水平用フォースコイル6と、垂直用弾性平行リング3の第2辺32の一端に垂直ロッド7aを介して垂直力Fvを加えて垂直用弾性平行リング3を弾性変形させるための垂直用フォースコイル7と、水平変位量を測定するための水平位置センサ9と、垂直変位量を測定するための垂直位置センサ11と、垂直用弾性平行リング3の第2辺32に取り付けられた移動ヘッド4と、その移動ヘッド4の下端に取り付けられた切刃5と、水平面(xz面)内および垂直方向に移動可能なxyzステージ14と、試料Qを固定するためにxyzステージ14に設置された試料ホルダ15と、垂直力Fv=0のときに移動ヘッド4や切刃5の重量で垂直用弾性平行リング3が弾性変形しないように移動ヘッド4や切刃5の重量を支えるための支点41,天秤42および重り43と、出力インタフェース40a,入力インタフェース40bおよび制御部(パソコン)40とを具備している。
試料Qの表層の切削・剥離は、水平用フォースコイル6による切刃5の水平移動および垂直用フォースコイル7による切刃5の垂直移動によって行う。
xyzステージ14は、切刃5に対する試料Qの大体の位置決めを行う。
図2は、表層密着強度測定装置100による表層剥離処理の動作を示すフロー図である。
ステップS1では、極小さな下方への垂直力Fv(例えば10mN)を加えて、切刃5の先端を試料の表層に接触させる。そして、垂直位置を「0」とする。
ステップS2では、切刃5が先端方向へ移動するように水平力Fhを増加させ、所定の水平速度Vh(例えば1μm/秒)で切刃5を水平移動する。同時に、切刃5が下方向へ移動するように垂直力Fvを増加させ、所定の垂直速度Vv(例えば0.1μm/秒)で切刃5を垂直下方へ移動する。これにより、切刃5が試料Qの表層に切り込んでゆく。
ステップS3では、試料の表層の剥離が始まったか否かを判定し、剥離が始まっていなければ切り込みを継続し、剥離が始まったらステップS4へ移行する。
例えば、水平力Fが増加から減少へ転じたことを検知した時に試料の表層の剥離が始まったと判定することが出来る。あるいは、垂直位置の単調増加が見られなくなったことを検知した時に試料の表層の剥離が始まったと判定することが出来る。
ステップS4では、所定の水平速度Vh(例えば1μm/秒)で切刃5を水平移動する。同時に、現在の垂直位置を維持するように、垂直力Fvを制御する。これにより、切刃5が試料Qの基材と表層の界面に沿って水平移動し、表層が剥離してゆく。
ステップS5では、定常剥離状態が始まったか否かを判定し、定常剥離状態が始まっていなければ水平移動を継続し、定常剥離状態が始まったらステップS6へ移行する。
例えば、水平力Fの現在より過去短期間(例えば30秒間)の変動幅が所定幅以内になったなら定常剥離状態が始まったと判定することが出来る。あるいは、垂直力Fvの現在より過去短期間(例えば30秒間)の値がほぼ「0」付近になったなら定常剥離状態が始まったと判定することが出来る。
ステップS6,S7では、データ収集期間(例えば200秒間)が経過するまで、所定のサンプリング周期(例えば1秒)毎に水平力Fhと垂直力Fvのデータを収集する。データ収集期間が経過すると、ステップS7へ進む。
ステップS8では、水平力Fhを「0」とし、切刃5の水平移動を停止する。次に、切刃5が上方向へ移動するように垂直力Fvを増加させ、所定の垂直速度Vv(例えば100μm/秒)で切刃5を垂直上方に移動し、垂直位置が「0」を越えたら垂直力Fvを「0」とし、切刃5の垂直移動を停止する。
ステップS9では、収集した水平力Fhと垂直力Fvのデータを統計処理し、代表値(例えば平均値)を水平力FH と垂直力FV とする。そして、処理を終了する。
図3は、表層密着強度測定装置100により得られるデータを示す模式図である。
切刃5が表層を切り進んでゆく切削段階では、水平力Fh、垂直力Fvおよび垂直位置(深さ)dは単調増加する。
切刃5が基材と表層の界面近傍に達し切刃5の水平移動により表層が剥離してゆく剥離段階では、水平力Fhは一旦減少し、定常剥離状態ではほぼ一定になる。垂直力Fvも、一旦減少し、定常剥離状態ではほぼ0付近の値になる。垂直位置(深さ)dは、界面の深さで一定になる。
データ収集期間は、定常剥離状態中の所定期間になる。
水平力FH は、収集した水平力Fhの例えば平均値である。
垂直力FV は、収集した垂直力Fvの例えば平均値である。
図4は、定常剥離状態を示す断面図である。
試料Qの表層Qaは、切刃5の刃先から少し離れた位置より基材Qbから剥離し始め、切刃5のすべり面に乗るように上方へ曲がってゆく。
記号を次のように定める。
1.表層Qaが剥離し始める位置P(0,0)をxy座標の原点とする。
2.位置P(0,0)で剥離した表層Qaの曲がりの角度を水平軸からθ0とする。
3.剥離した表層Qaが切刃5のすべり面に接触した位置P(x0,y0)のxy座標を(x0,y0)とする。
4.位置P(x0,y0)から後は、剥離した表層Qaが切刃5のすべり面に沿って上がってゆく。
5.剥離した表層Qaの位置P(0,0)と位置P(x0,y0)の間の位置P(x,y)のxy座標を(x,y)とする。
6.位置P(x,y)で剥離した表層Qaの曲がりの角度を水平軸からψとする。
7.切刃5のすべり面の角度を水平軸からθとし、垂直軸からβとする。
8.表層Qaが切刃5のすべり面から受ける反力Fの方向と垂直軸がなす角度をγとする。
図5は、薄膜剥離評価装置100による界面剥離エネルギー算出処理の動作を示すフロー図である。
ステップS11では、外力がした仕事Gext を求める。定常剥離過程では、切刃5が水平方向にのみ移動している。切刃5が水平力FH で単位距離だけ水平移動したときに外力がした仕事量はFH であり、剥離した表層Qaの幅をwとすると、剥離した表層Qaの単位幅当たりに外力がした仕事量Gext は、
ext =FH /w
により得られる。
ステップS12では、切刃5のすくい面における摩擦散逸エネルギーGdf を求める。剥離した表層Qaは、位置P(x0,y0)で切刃5のすべり面に接触し、すべり面に沿って移動する。剥離した表層Qaが、すべり面に沿った力「FV・cos(β)−FH・sin(β)」で単位距離だけ水平移動したときに外力がした仕事量は「FV・cos(β)−FH・sin(β)」であり、剥離した表層Qaの幅をwとすると、剥離した表層Qaの単位幅当たりの摩擦散逸エネルギーGdf は、
df =|FV・cos(β)−FH・sin(β)|/w
により得られる。
ステップS13では、予め取得した表層材料の応力−ひずみ曲線(図6参照)を基に弾性係数Eと降伏ひずみεy と弾性係数減少率χとを求める。
図6に、表層材料の応力−ひずみ曲線を例示する。
弾性係数Eは、降伏点までの傾きである。
降伏ひずみεy は、降伏点での歪みεの大きさである。
弾性係数減少率χは、降伏点までの傾きを基準とした降伏点以後の傾きの減少率である。
ステップS14では、予め取得した表層材料の無次元化曲率−無次元化モーメント曲線(図7参照)における単位面積当たりに蓄えられる弾性ひずみエネルギーGe max を算出する。
e max =E・εy2・h/2
図7に、表層材料の無次元化曲率−無次元化モーメント曲線を例示する(非特許文献1参照)。
点Dは、降伏開始点である。
点Aは、剥離開始点である。
点Bは、弾性除荷終了点である。
無次元化曲率−無次元化モーメント曲線については後で詳述する。
ステップS15では、次式を満たす最大曲げモーメント点での無次元化曲率 0 を数値計算により求める。
Figure 0005403609
Figure 0005403609
Figure 0005403609
ステップS16では、次式により塑性散逸エネルギーGdb を算出する。
Figure 0005403609
ステップS17では、界面剥離エネルギー a を算出する。
a =Gext −Gdf −Gdb
そして、処理を終了する。
実施例1の表層密着強度測定装置100によれば、界面剥離エネルギー a を指標とすることにより、剥離した表層Qaが塑性変形を生じる場合でも、表層Qaの厚さhによる影響を抑制して、密着強度を定量的に正しく評価できるようになる。
−実施例2−
定常剥離状態では、水平力FH に比べて垂直力FV は小さいから、測定および計算簡略化のため、垂直力FV を無視してもよい。この場合、実施例1において、FV =0とすればよい。
−測定例1−
試料Qは、銅の表層Qaをエポキシ樹脂製の基材Qbにメッキしたものである。
表層Qaの厚さh=15μmである。
切刃5のすくい角β=20゜、刃幅w=0.8mmである。
剥離した表層Qaの幅w=0.8mmである。
水平力FH =1.2N、垂直力FV =0.19Nが得られた。
図5のステップS11で、
ext =FH /w=1.2N/0.8mm=1500J/m2
を算出した。
ステップS12で、
df =|FV・cos(β)−FH・sin(β)|/w
=|0.19N・・cos(20゜)−1.2N・sin(20゜)|/0.8mm
=289J/m2
を算出した。
ステップS13で、「I.S.Park,Jin Yu,Acta Materialia,Vol,46,No.8,(1998),pp2947-2953」に記載された銅の応力−ひずみ曲線から、
弾性係数E=36.5GPa、
降伏ひずみεy=0.01013、
弾性係数減少率χ=0.0001を求めた。
を求めた。
ステップS14で、
e max =E・εy2・h/2
=36.5GPa・(0.01013)2・15μm/2
=28.1J/m2
を算出した。
ステップS15で、
0 =0.45
を数値計算により求めた。
ステップS16で、
db =888J/m2
を算出した。
ステップS17で、
a =Gext −Gdf −Gdb
=1500J/m2 −289J/m2 −888J/m2
=323J/m2
を算出した。
−測定例2−
表層Qaの厚さh=35μmである以外は測定例1と同じ条件で測定した。
水平力FH =2.1N、垂直力FV =0.289Nが得られた。
ext =2625J/m2
df =558J/m2
db =1614J/m2
a =453J/m2
を算出した。
−測定例1と測定例2の評価−
測定例1と測定例2の界面剥離エネルギー a の差は、100×{453−323}/323=40%である。
これに対して、塑性散逸エネルギーGdb を考慮しなければ、100×{(453+1614)−(323+888)/(323+888)=70%になる。
従って、表層Qaの厚さhによる影響を抑制できることが判る。
−測定例3−
試料Qは、ウレタン樹脂の表層Qaを鋼製の基材Qbに塗装したものである。
表層Qaの厚さh=25μmである。
切刃5のすくい角β=20゜、刃幅w=0.8mmである。
剥離した表層Qaの幅w=0.8mmである。
水平力FH =1.6N、垂直力FV =−0.25Nが得られた。
図5のステップS11で、
ext =2000J/m2
を算出した。
ステップS12で、
df =978J/m2
を算出した。
ステップS13で、予め剥離した表層Qaから引張試験法により応力−ひずみ曲線を求め、その応力−ひずみ曲線から、
弾性係数E=1.1GPa、
降伏ひずみεy=0.0496、
弾性係数減少率χ=0.0001を求めた。
を求めた。
ステップS14で、
e max =33.8J/m2
を算出した。
ステップS15で、
0 =0.913
を数値計算により求めた。
ステップS16で、
db =409J/m2
を算出した。
ステップS17で、
a =613J/m2
を算出した。
−測定例4〜測定例9−
表層Qaの厚さh=26μm(測定例4),29μm(測定例5),54μm(測定例6),55μm(測定例7),84μm(測定例8),91μm(測定例9)である以外は測定例3と同じ条件で測定した。以下の数値は厚さhの順に示している。
水平力FH =1.8N,1.9N,2.3N,2.5N,2.8N,3.1N、垂直力FV =−0.25N,−0.25N,−0.3N,−0.3N,−0.4N,−0.4Nが得られた。
また、予め剥離した表層Qaから引張試験法により応力−ひずみ曲線を求め、その応力−ひずみ曲線から、
弾性係数E=1.1GPa(測定例4,5)、0.82GPa(測定例6,7)、0.52GPa(測定例8,9)、
降伏ひずみεy=0.0496(測定例4,5)、0.0611(測定例6,7)、0.0769(測定例8,9)、
弾性係数減少率χ=0.0001(測定例4,5)、0.0001(測定例6,7)、0.0001(測定例8,9)、
を求めた。そして、
ext =2250J/m2,2375J/m2,2875J/m2,3125J/m2,3500J/m2,3875J/m2
df =1063J/m2,1106J/m2,1336J/m2,1421J/m2,1667J/m2,1795J/m2
db =437J/m2,480J/m2,694J/m2,729J/m2,800J/m2,880J/m2
a =750J/m2,789J/m2,845J/m2,975J/m2,1033J/m2,1200J/m2
を得た。
−測定例3〜測定例9の評価−
塑性散逸エネルギーGdb を考慮しない場合に比べて、表層Qaの厚さhによる影響を抑制できることが判る。
−数式の根拠の説明−
以下、図5の各ステップで用いた数式の根拠を説明する。
単位長さ当たりの界面剥離エネルギー a は、次式(2)で表すことができる。
Figure 0005403609
ここで、dUext は外力がした仕事の変化、dUs は弾性ひずみエネルギーの変化、dUdb は塑性変形による散逸エネルギーの変化、dUdf はすくい面における摩擦による散逸エネルギーである。
剥離が定常的に生じている定常剥離状態では、弾性ひずみエネルギーの変化dUs は0であるから、界面剥離エネルギー a は、次式(3)となる。
Figure 0005403609
外力がした仕事量Gext は、次式(4)となる。
Figure 0005403609
すくい面における摩擦散逸エネルギーGdf は、次式(4)となる。
Figure 0005403609
ここで、βは切刃5のすくい角であり、FH は水平力であり、FV は垂直力である。
また、γは水平力FH と垂直力FV の比から求まる角度である。
γ=π/2−arctan(FV /FH )
塑性散逸エネルギーGdb は、直線硬化則をもつ弾塑性はりの曲げ変形モデルを適用し(非特許文献3参照)て算出する。
図4において、点P(0,0) で曲げモーメントが最大値M0 となり、点P(x0,y0) で曲げモーメントは「0」となる。
点P(x, y) における曲げモーメントMは、次式(6)で表せる。
Figure 0005403609
式(6)より、次式(7)を得る。ψは点P(x, y) における傾きを表す。
Figure 0005403609
一方,点P(x, y) において、はりの軸方向に微小長さdsを考えると、次式(8)となる。
Figure 0005403609
ここで、Rは曲率半径である。
式(8)を式(7)に代入すると、次式(9)を得る。
Figure 0005403609
したがって、点P(0,0) から点P(x0,y0) までの間において、曲げモーメントが表層Qaに対してする単位長さ当たりの仕事Wは、次式(10)となる。
Figure 0005403609
一方、表層Qaは、図7に示すような応力−ひずみ線図に従う弾塑性体であるから、構成式は、
Figure 0005403609
である。ここで、
Figure 0005403609
である。
はりの断面には、曲げ応力σが厚さ方向に分布するので、はりの断面に生じる曲げモーメントMは、
Figure 0005403609
と表せる。ここで、次の無次元量を導入している。
Figure 0005403609
ただし、
Figure 0005403609
であり、MP は弾完全塑性体(χ=0)の全断面降伏時の曲げモーメント、R1 は降伏開始時の曲率半径である。これらを式(13)に代入すると、無次元化曲げモーメントmが得られる。
Figure 0005403609
図7に示す無次元化曲げモーメントmと無次元化曲率kの関係において、剥離開始点Aで曲げモーメントにより断面が降伏する場合、図7における面積DABが塑性散逸エネルギーGdb を表す。そこで、曲げモーメントと曲率との関係を求め、面積DABを求める。
1)弾性負荷過程(図7における区間−D)
この過程では、はりの断面は弾性変形のみである。ε/εy<1より、0<k<1.また、σ/(E・εy)=k・ηから、
Figure 0005403609
となる。
2)降伏後の負荷過程(図7における区間D−A)
この過程では、はりの断面内の一部は降伏を生じ、一部は弾性変形のままである。すなわち,
[数18]
σ/(E・εy)=k・η (0<η<1/k)
[数19]
σ/(E・εy)=f(ε/εy)=f(k・η) (1/k<η<1)
よって、
Figure 0005403609
3)弾性荷過程(図7における区間A−B)
この過程では、k= 0 でm=m 0 とすると、はりの断面におけるひずみεは、
ε=εy( 0 −k)η
となる。したがって,
Figure 0005403609
また、点Bにおける曲率kは、
Figure 0005403609
となる。
以上より、図7における面積DABから塑性散逸エネルギーGdb は、
Figure 0005403609
上式に、式(17)、(20)、(21)を代入すると次式(24)を得る。
Figure 0005403609
ここで、Ge max は単位幅、単位長さあたりに蓄えられる弾性ひずみエネルギーの最大値であり、
Figure 0005403609
である。
また、式(10)から外力Fと次式(26)、(27)の関係がある。
Figure 0005403609
Figure 0005403609
一方、式(4)より外力がする仕事Gext と次式(28)の関係がある。
Figure 0005403609
式(24)より,塑性散逸エネルギーGdb を算出できるが,点Aにおける曲げモーメントM0 と曲率 0 が未知である。これらは,曲げ変形に要したエネルギーから求めることができる。すなわち,式(20)を式(28)に代入すると、次式(29)を得る。
Figure 0005403609
を得る。ただし、
Figure 0005403609
である。
式(4)と(29)より,式(31)を得る。
Figure 0005403609
上式は曲率 0 に関する非線形方程式であるため、数値計算により解く必要がある。
一方、表層Qaと剥離していない部分(図4の点P(0,0)よりも左側)を弾性床上のはりと仮定すると、点P(0,0)における曲率 0 とベースアングルθ 0 との関係は、
Figure 0005403609
と表すことが出来る(非特許文献3参照)。
得られた曲率 0 を式(20)と(24)から得られる次式(33)に代入することにより、塑性散逸エネルギーGdb が求まる。
Figure 0005403609
そして、式(3)から界面剥離エネルギー a すなわち界面密着強度を表す指標を求めることが出来る。

Claims (2)

  1. 基材と該基材にコーティングされた表層の界面に沿って切刃を水平移動して前記表層の剥離を行い、前記切刃に加わる水平力および垂直力の両方または水平力のみを測定し、これら水平力および垂直力の両方または水平力のみを基に摩擦散逸エネルギーGdfを算出し、表層材料の弾性係数Eおよび降伏ひずみεyおよび弾性係数減少率χを用いて塑性散逸エネルギーG db を算出し、水平力のみを基に外力がした仕事量G ext を算出し、前記外力がした仕事量Gext から前記摩擦散逸エネルギーGdfおよび塑性散逸エネルギーG db を除去して、界面剥離エネルギー a を得ることを特徴とする表層密着強度測定方法。
  2. 基材と該基材にコーティングされた表層の界面に沿って切刃を水平移動して前記表層の剥離を行い且つ前記切刃に加わる水平力および垂直力の両方または水平力のみを測定する切削・剥離手段と、前記水平力および垂直力の両方または水平力のみを基に摩擦散逸エネルギーGdfを算出し、表層材料の弾性係数Eおよび降伏ひずみεyおよび弾性係数減少率χを用いて塑性散逸エネルギーG db を算出し、水平力のみを基に外力がした仕事量G ext を算出し、前記外力がした仕事量G ext から前記摩擦散逸エネルギーGdfおよび塑性散逸エネルギーG db を除去して、界面剥離エネルギーG a を得る演算手段とを具備したことを特徴とする表層密着強度測定装置
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