JP5402962B2 - 橈骨遠位端骨折整復実習模型 - Google Patents

橈骨遠位端骨折整復実習模型 Download PDF

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Description

本発明は、橈骨遠位端骨折の整復技術を習得するための整復実習に用いる模型に関するものである。
柔道整復術は、骨・関節・筋・腱・靭帯など運動器に加わる急性、亜急性の原因によって発生する骨折・脱臼・捻挫・挫傷・打撲などの損傷に対し、手術をせずに手技によって整復・固定・後療等を行う治療術であり、柔道整復師が患部の検査や施術を行う際には、全神経を指先に集中させた指先の高度な感覚が必要になる。
このような指先の高度な感覚を身につける必要がある柔道整復師になるためには、専門学校等での学習・実習が必要であり、学生が急増している現状において、臨床の現場以外で整復技術を習得するための整復実習模型(人体模型教材)の普及が望まれている(例えば、特許文献1参照。)。
また、橈骨遠位端は網目をなす骨質の薄い板(骨稜)が疎に配列した海綿骨の多い部位であり、手掌をついて転倒したり自転車やバイクに乗って転倒した際等に、幅広い年齢層にわたって橈骨遠位端骨折が発生し、その発生頻度は高くなっている。
このような橈骨遠位端骨折の整復技術を習得するための整復実習模型(整復技術習得用の人体模型教材)として、骨状部材の橈骨を金属(強磁性体)製の橈骨遠位端部材と該橈骨遠位端部材に隣接する側に磁石が設けられた橈骨近位端部材とに分離し、この分離面を、丸みを帯びた頂点を有する三角形または半円にし、骨状部材を軟質部材で覆ってなるものがある(特許文献1参照。)。
登録実用新案第3144317号公報
特許文献1のような橈骨遠位端骨折整復実習模型の構成では、橈骨遠位端部材と橈骨近位端部材とが離間することなく磁気的な吸着状態を維持しながらずれるだけであるため、橈骨遠位骨片が橈骨近位骨片の背側に騎乗転位してフォーク背状に変形した状態を再現することができず、よって、このような転位が大きくなった状態の橈骨遠位端骨折を整復する屈曲整復法の実習を行うことができない。
また、橈骨遠位端部材と橈骨近位端部材とを磁気的な吸着状態を維持しながらスライドさせる構成であることから、骨折の固有症状の一つである軋轢音を触知することができないため、実際の徒手整復に近い操作感を再現することがでず、よって指先の高度な感覚を身につけることができない。
そこで本発明が前述の状況に鑑み、解決しようとするところは、騎乗転位を再現して屈曲整復法の実習を行うことができ、軋轢音を触知させて実際の徒手整復に近い操作感を再現することができる橈骨遠位端骨折整復実習模型を提供する点にある。
本発明に係る橈骨遠位端骨折整復実習模型は、前記課題解決のために、橈骨遠位端骨折における橈骨近位骨片及び橈骨遠位骨片の骨折部に相当する部分がそれぞれ形成された橈骨近位骨片模擬体及び橈骨遠位骨片模擬体を備えた、橈骨遠位端骨折の整復技術を習得するための整復実習に用いる模型であって、前記橈骨近位骨片模擬体及び橈骨遠位骨片模擬体間の外周部対向面の少なくとも3箇所に形成された凹凸係合部と、該凹凸係合部が係合した整復完了状態で、前記橈骨近位骨片模擬体及び橈骨遠位骨片模擬体を、これらが近づく方向へ弾性付勢する弾性体とを備え、前記橈骨遠位骨片模擬体が前記橈骨近位骨片模擬体の背側に騎乗転位した状態と前記整復完了状態との間で前記弾性体と干渉しないように、前記橈骨近位骨片模擬体の背側及び前記橈骨遠位骨片模擬体の掌側の少なくともどちらかに逃げ溝を形成してなることを特徴とする。
このような構成によれば、凹凸係合部が係合した整復完了状態で、橈骨近位骨片模擬体及び橈骨遠位骨片模擬体を、これらが近づく方向へ弾性付勢する弾性体を備えているため、橈骨遠位端骨折を整復する際の操作力が、主に弾性体の復元力により再現される。
その上、橈骨近位骨片模擬体及び橈骨遠位骨片模擬体間の外周部対向面の少なくとも3箇所に凹凸係合部があることから、整復操作の際における凹凸係合により軋轢音を触知することができるため実際の徒手整復に近い操作感を再現することができるとともに、前記外周部対向面の少なくとも3箇所にある凹凸係合部が係合した状態では橈骨近位骨片模擬体及び橈骨遠位骨片模擬体が、その骨軸(長軸)が倒れる方向にがたつくことなく位置決めされるため、整復完了状態を触知することができる。
その上さらに、橈骨近位骨片模擬体の背側及び橈骨遠位骨片模擬体の掌側の少なくともどちらかに逃げ溝が形成されており、橈骨遠位骨片模擬体が橈骨近位骨片模擬体の背側に騎乗転位した状態と整復完了状態との間で弾性体と干渉しないことから、橈骨遠位骨片が橈骨近位骨片の背側に騎乗転位してフォーク背状に変形した状態を再現することができるため、このような転位が大きくなった状態の橈骨遠位端骨折を整復する屈曲整復法の実習を行うことができる。
その上、橈骨遠位端骨折における橈骨近位骨片及び橈骨遠位骨片の骨折部に相当する部分がそれぞれ形成された橈骨近位骨片模擬体及び橈骨遠位骨片模擬体並びにこれらを弾性付勢する弾性体等からなる簡素な構成により、製造コストを低減することができるとともに、繰り返し使用に適した信頼性を確保することができる。
ここで、前記橈骨近位骨片模擬体及び橈骨遠位骨片模擬体間の中央部対向面に凹凸係合部を形成してなると好ましい。
このような構成によれば、橈骨近位骨片模擬体及び橈骨遠位骨片模擬体の中央部間にも凹凸係合部があることから、この凹凸係合部も整復操作の際に凹凸係合するため、さらに実際に近い軋轢音や操作感を再現することができる。
また、前記弾性体の長手方向が、近位方向へ行くにしたがって橈側へ傾斜すると好ましい。
このような構成によれば、橈骨遠位骨片模擬体が橈骨近位骨片模擬体の背側に騎乗転位した状態がより実際に近いものになるとともに、整復操作する際の操作力もより実際に近いものになる。
さらに、前記弾性体の張力を調節する張力調節手段を備えてなると好ましい。
このような構成によれば、張力調節手段を操作することにより、実際の徒手整復に近い操作感を再現するために熟練者が行う調節を容易に行うことができるとともに、製作した多数の橈骨遠位端骨折整復実習模型における整復実習時の操作感のばらつきを小さくすることができる。
さらにまた、前記弾性体が引張コイルばねであり、前記張力調節手段がターンバックルであると好ましい。
このような構成によれば、弾性体及び張力調節手段を、簡素な構成で長期間にわたって動作の信頼性が高く値段が安い引張コイルばね及びターンバックルにより構成しているため、さらに製造コストの低減化及び高信頼化を図ることができるとともに、ターンバックルの胴部を回動させることにより引張コイルばねの張力調節を容易に行うことができる。
また、前記橈骨近位骨片模擬体及び橈骨遠位骨片模擬体の少なくとも前記骨折部に相当する部分周りを、軟部組織を模した軟質素材で被覆してなると好ましい。
このような構成によれば、骨折部に相当する部分周りが軟部組織を模した軟質素材で被覆されているため、橈骨遠位端骨折に相当する状態にした際に実際の橈骨遠位端骨折に近い状態を目視することができ、整復操作をする際の触感が実際に近いものになるとともに、軟質素材が不透明である場合には、内部が見えない状態で整復できたことを確認することが求められる整復実習に好適なものとなる。
その上、透明の軟質合成樹脂素材で形成した軟質素材で骨折部に相当する部分周りを被覆した橈骨遠位端骨折整復実習模型も製作しておくことにより、橈骨遠位端骨折の整復前後の状況を視認することができるため、整復実習をより効率的に進めることができる。
さらに、前記橈骨近位骨片模擬体の近位端部に回転関節を設けてなると好ましい。
このような構成によれば、橈骨近位骨片模擬体近位端部の回転関節により橈骨遠位端骨折整復実習模型の長軸回りの角度を自由に変更することができるため、整復を行う際の実際の腕の姿勢に近い状態を再現しながら整復実習を行うことができる。
さらにまた、前記橈骨近位骨片模擬体を橈骨の途中までの部分に相当する長さとして上腕から前腕の近位部までを模した腕近位部模型に取り付けて腕模型とし、該腕模型に回転関節を設けるとともに、前記腕模型を人体又は人体模型に装着する装着手段を備えてなると好ましい。
このような構成によれば、装着手段で人体又は人体模型に装着した人の腕に近い橈骨遠位端骨折整復実習模型により、整復される受傷者の実際の姿勢並びに整復を行う術者及び助手の実際の動作を再現することができる。
以上のように、本発明に係る橈骨遠位端骨折整復実習模型によれば、簡素かつ動作が確実な構成により、転位が大きい橈骨遠位端骨折の実際に近い状態が再現され、徒手整復の際における実際に近い操作感を再現することができ、製造コストを低減することができるとともに、繰り返し使用に適した信頼性を確保することができるため、実用的で普及しやすいという顕著な効果を奏する。
本発明の実施の形態に係る橈骨遠位端骨折整復実習模型を人に装着した状態を示す正面図である。 本発明の実施の形態に係る橈骨遠位端骨折整復実習模型における整復が完了した状態を示す部分縦断面斜視図である。 同じく背側から見た部分縦断面図である。 本発明の実施の形態に係る橈骨遠位端骨折整復実習模型における橈骨遠位骨片模擬体が橈骨近位骨片模擬体の背側に騎乗転位した状態を示す部分縦断面斜視図である。 同模型の部分縦断面分解斜視図である。 同模型における橈骨遠位骨片模擬体が橈骨近位骨片模擬体の背側に騎乗転位した状態を示す橈側から見た部分縦断面図である。 同模型における整復が完了した状態を示す橈側から見た部分縦断面である。 (a)は橈骨近位骨片模擬体及び橈骨遠位骨片模擬体の外周部の凹凸係合部を拡大して示す縦断面、(b)は橈骨近位骨片模擬体及び橈骨遠位骨片模擬体の中央部の凹凸係合部を拡大して示す縦断面である。
図1に示すように、本発明の実施の形態に係る橈骨遠位端骨折整復実習模型(以下、単に「実習模型」という。)1は、手Hから前腕の一部までを模して製作されているため前腕全体の長さはなく、上腕から前腕の近位部までを模した腕近位部模型A1に回転関節(回り対偶)11により略骨軸(長軸)まわりに回転可能に取り付けて腕模型Aとされ、腕模型Aは装着手段である装着帯Bにより人体等に装着して使用することができる。
また、腕模型Aは、その全体が、例えばシリコーンゴムやウレタンゴム等の軟質合成樹脂素材で形成した、皮膚、皮下組織及び筋肉等の軟部組織を模した軟質素材Cで被覆される。
前腕骨は橈骨及び尺骨により構成されるが、図2〜図7に示すように、実習模型1の簡素化のため、尺骨を欠損させ、橈骨遠位端を通常の橈骨近位骨片及び橈骨遠位骨片よりも大きく形成しており、実習模型1は、橈骨遠位端骨折における橈骨近位骨片及び橈骨遠位骨片の骨折部に相当する部分がそれぞれ形成された橈骨近位骨片模擬体2及び橈骨遠位骨片模擬体3を備えている。
また、橈骨近位骨片模擬体2の外周部2A(図5参照。)の3箇所には係合凸部5,…が、橈骨遠位骨片模擬体3の外周部3A(図4及び図5参照。)の3箇所には係合凸部5,…に係合する係合凹部6,…が形成され、橈骨近位骨片模擬体2の中央部2B(図5参照。)には係合凸部7が、橈骨遠位骨片模擬体3の中央部3B(図4及び図5参照。)には係合凸部7に係合する係合凹部8が形成され、図2及び図7の整復完了状態では、係合凹部6,…及び係合凹部8に係合凸部5,…及び係合凸部7が凹凸係合する。
すなわち、橈骨近位骨片模擬体2及び橈骨遠位骨片模擬体3間の外周部2A,3A(図5参照。)の対向面3箇所に凹凸係合部が形成され、橈骨近位骨片模擬体2及び橈骨遠位骨片模擬体3間の中央部2B,3Bの対向面1箇所に凹凸係合部が形成される。
図8(a)に示すように、係合凹部6は、例えば遠位方向へ行くにしたがって縮径する丸穴であり、その円錐面状の傾斜面6Aに、例えば丸軸状の係合凸部5先端部の球面5Aが当接した状態で凹凸係合し、位置決めされる。
また、図8(b)に示すように、係合凹部8は、例えば遠位方向へ行くにしたがって縮径する丸穴であり、その円錐面状の傾斜面8Aに、例えば丸軸状の係合凸部7先端部の傾斜面7Aが当接した状態で凹凸係合し、位置決めされる。
なお、これらのような凹凸係合部として、橈骨近位骨片模擬体2に係合凹部を形成し、橈骨遠位骨片模擬体3に係合凸部を形成するようにしてもよい。
ここで、橈骨近位骨片模擬体2及び橈骨遠位骨片模擬体3間の外周部2A,3A(図5参照。)の対向面に形成する凹凸係合部を4箇所以上としてもよく、前記外周部2A,3A対向面に形成される凹凸係合部が3箇所以上であれば、これらの凹凸係合部は一直線上にないため、これらの凹凸係合部が係合状態になると、骨軸(長軸)が倒れる方向にがたつくことがなく、実際の整復完了状態に近い状態を模擬することができる。
また、図2及び図7のように係合凸部5,…及び係合凹部6,…並びに係合凸部7及び係合凹部8が係合した整復完了状態で、弾性体である引張コイルばね9が、その近位端末9A及び遠位端末9Bを、それぞれ橈骨近位骨片模擬体2の中央(係合凸部7に形成された軸方向に伸びる穴の近位壁)に取り付けられたループ状紐体10A及び橈骨遠位骨片模擬体3の遠位の手骨部4中央に固定された受け部材4Aの掛止ピン10Bに掛止することにより取り付けられるため、引張コイルばね9により、橈骨近位骨片模擬体2及び橈骨遠位骨片模擬体3は、これらが近づく方向へ弾性付勢される。
ここで、図3に示すように、引張コイルばね9の長手方向は、近位方向へ行くにしたがって、例えば10°〜20°程度橈側へ傾斜している。
なお、図6に示す橈骨遠位端骨折に相当する状態から図7に示す整復完了状態との間で、引張コイルばね9のストローク(引張コイルばね9の伸びの変化量)が定まるため、材質、線径、コイル径及び巻数を変えて自由長さやばね定数等の特性を変化させた複数の引張コイルばねを付け替えなから、例えば専門学校の柔道整復師学科の教師等の熟練した柔道整復師が、実習模型1を操作して、徒手整復する際の操作力を確認しながら、実際の操作力に近くなる引張コイルばね9を選定すればよい。
また、引張コイルばね9に対して、これと直列にターンバックルを取り付けることや引張コイルばね9の端末を掛止する位置を可変にすること等による張力調節手段を備えることにより、引張コイルばね9の張力調節を行うことができる。
さらに、弾性体は、引張コイルばねに限定されるものではなく、ゴムチューブやゴム紐等の弾性体であってもよい。
さらにまた、図2及び図7に示す整復完了状態と図4及び図6に示す橈骨遠位骨片模擬体3が橈骨近位骨片模擬体2の背側に騎乗転位した状態との間で、引張コイルばね9と干渉しないように、橈骨近位骨片模擬体2の背側には逃げ溝2Cが、橈骨遠位骨片模擬体3の掌側3には逃げ溝3Cが形成される。
なお、このような逃げ溝は、整復完了状態と騎乗転位状態との間で引張コイルばね9等の弾性体と干渉しないように形成されるものであるため、引張コイルばね9等の弾性体の形状やその端末の取付位置によっては、橈骨近位骨片模擬体2の背側及び橈骨遠位骨片模擬体3の掌側に形成する逃げ溝を一方のみとすることもできる。
以上のような実習模型1の構成によれば、係合凸部5,…及び係合凹部6,…並びに係合凸部7及び係合凹部8が係合した図2及び図7に示す整復完了状態で、橈骨近位骨片模擬体2及び橈骨遠位骨片模擬体3を、これらが近づく方向へ弾性付勢する引張コイルばね9を備えているため、橈骨遠位端骨折を整復する際の操作力が、主に引張コイルばね9の復元力により再現される。
また、橈骨近位骨片模擬体2及び橈骨遠位骨片模擬体3間の外周部2A,3A対向面の少なくとも3箇所に凹凸係合部5,6があることから、図6の騎乗転位状態から図7の整復完了状態まで整復する操作の際における凹凸係合により軋轢音を触知することができるため実際の徒手整復に近い操作感を再現することができるとともに、外周部2A,3A対向面の少なくとも3箇所にある凹凸係合部が係合した状態では橈骨近位骨片模擬体2及び橈骨遠位骨片模擬体3が、その骨軸(長軸)が倒れる方向にがたつくことなく位置決めされるため、整復完了状態を触知することができる。
その上、実習模型1を用いた橈骨遠位端骨折の整復実習完了後に、再転位を起こさないように注意しながら、クラメル副木等の固定実習も併せて行うことができる。
さらに、橈骨近位骨片模擬体2の背側及び橈骨遠位骨片模擬体3の掌側に逃げ溝2C,3Cが形成されており、橈骨遠位骨片模擬体3が橈骨近位骨片模擬体2の背側に騎乗転位した状態と整復完了状態との間で引張コイルばね9と干渉しないことから、橈骨遠位骨片が橈骨近位骨片の背側に騎乗転位してフォーク背状に変形した状態を再現することができるため、このような転位が大きくなった状態の橈骨遠位端骨折を整復する屈曲整復法の実習を行うことができる。
さらにまた、橈骨遠位端骨折における橈骨近位骨片及び橈骨遠位骨片の骨折部に相当する部分がそれぞれ形成された橈骨近位骨片模擬体2及び橈骨遠位骨片模擬体3並びにこれらを弾性付勢する引張コイルばね9等からなる簡素な構成により、製造コストを低減することができるとともに、繰り返し使用に適した信頼性を確保することができる。
また、橈骨近位骨片模擬体2及び橈骨遠位骨片模擬体3間の中央部2B,3B対向面にも凹凸係合部7,8があり、この凹凸係合部7,8も整復操作の際に凹凸係合するため、さらに実際に近い軋轢音や操作感を再現することができる。
さらに、引張コイルばね9の長手方向が、近位方向へ行くにしたがって橈側へ傾斜しているため、橈骨遠位骨片模擬体3が橈骨近位骨片模擬体2の背側に騎乗転位した状態がより実際に近いものになるとともに、整復操作する際の操作力もより実際に近いものになる。
さらにまた、引張コイルばね9等の弾性体の張力を調節する張力調節手段を備えることにより、張力調節手段を操作して実際の徒手整復に近い操作感を再現するために熟練者が行う調節を容易に行うことができるとともに、製作した多数の実習模型1,…における整復実習時の操作感のばらつきを小さくすることができる。
また、弾性体が引張コイルばね9であり、張力調節手段がターンバックルであると、弾性体及び張力調節手段を、簡素な構成で長期間にわたって動作の信頼性が高く値段が安い引張コイルばね9及びターンバックルにより構成しているため、さらに製造コストの低減化及び高信頼化を図ることができるとともに、ターンバックルの胴部を回動させることにより引張コイルばね9の張力調節を容易に行うことができる。
さらに、橈骨近位骨片模擬体2及び橈骨遠位骨片模擬体3の少なくとも骨折部に相当する部分周りを、皮膚、皮下組織及び筋肉等の軟部組織を模した軟質素材Cで被覆してなると、骨折部に相当する部分周りが軟質素材Cで被覆されているため、図4及び図6に示す橈骨遠位端骨折に相当する状態にした際に実際の橈骨遠位端骨折に近い状態を目視することができ、整復操作をする際の触感が実際に近いものになるとともに、軟質素材Cが不透明である場合には、内部が見えない状態で整復できたことを確認することが求められる整復実習に好適なものとなる。
さらにまた、軟質素材Cを不透明とした実習模型1とともに、例えば高透明シリコンーンゴム等の透明の軟質合成樹脂素材で形成した軟質素材Cで骨折部に相当する部分周りを被覆した実習模型1も製作しておくことにより、軟質素材Cが透明であることから橈骨遠位端骨折の整復前後の状況を視認することができるため、整復実習をより効率的に進めることができる。
なお、軟質素材Cにより橈骨近位骨片模擬体2及び橈骨遠位骨片模擬体3を被覆する構成では、図4及び図6に示す橈骨遠位骨片模擬体3が橈骨近位骨片模擬体2の背側に騎乗転位した状態から図2及び図7に示す状態まで徒手整復する際に軟質素材Cも変形するため、軟質素材Cも操作力を及ぼすことになる。
また、図2及び図4〜図7に示すように、橈骨近位骨片模擬体2を橈骨の途中までの部分に相当する長さとしてその近位端部に回転関節11を構成する円板11Aを設けており、図6及び図7に示すように円板11Aを腕近位部模型A1の遠位端部の回転関節11を構成するハウジング11Bに収容して図1に示す腕模型Aとし、腕模型Aを装着手段である装着帯Bにより人体(あるいは、人体模型であってもよい。)に装着することができる。
このような構成によれば、装着帯Bで人体又は人体模型に装着した人の腕に近い実習模型1(腕模型A)により、整復される受傷者の実際の姿勢並びに整復を行う術者及び助手の実際の動作を再現しながら、屈曲整復法等の整復実習を行うことができる。
なお、回転関節11は、本実施の形態のような円板11Aをハウジング11Bにより支持する構成に限定されるものではなく、すべり軸受や玉軸受等を用いた構成にしてもよく、略骨軸(長軸)まわりに約180°程度の相対的な回転をすることができる構成であればよい。
さらに、橈骨近位骨片模擬体2の近位端部に回転関節11を設けることにより、回転関節11により実習模型1の長軸回りの角度を自由に変更することができるため、整復を行う際の実際の腕の姿勢に近い状態を再現しながら整復実習を行うことができる。
A 腕模型
A1 腕近位部模型
B 装着帯(装着手段)
C 軟部組織を模した軟質素材
H 手
1 橈骨遠位端骨折整復実習模型
2 橈骨近位骨片模擬体
2A 外周部
2B 中央部
2C 逃げ溝
3 橈骨遠位骨片模擬体
3A 外周部
3B 中央部
3C 逃げ溝
4 手骨部
4A 受け部材
5 係合凸部
5A 球面
6 係合凹部
6A 傾斜面
7 係合凸部
7A 傾斜面
8 係合凹部
8A 傾斜面
9 引張コイルばね(弾性体)
9A,9B 端末
10A ループ状紐体
10B 掛止ピン
11 回転関節(回り対偶)
11A 円板
11B ハウジング

Claims (8)

  1. 橈骨遠位端骨折における橈骨近位骨片及び橈骨遠位骨片の骨折部に相当する部分がそれぞれ形成された橈骨近位骨片模擬体及び橈骨遠位骨片模擬体を備えた、橈骨遠位端骨折の整復技術を習得するための整復実習に用いる模型であって、
    前記橈骨近位骨片模擬体及び橈骨遠位骨片模擬体間の外周部対向面の少なくとも3箇所に形成された凹凸係合部と、
    該凹凸係合部が係合した整復完了状態で、前記橈骨近位骨片模擬体及び橈骨遠位骨片模擬体を、これらが近づく方向へ弾性付勢する弾性体とを備え、
    前記橈骨遠位骨片模擬体が前記橈骨近位骨片模擬体の背側に騎乗転位した状態と前記整復完了状態との間で前記弾性体と干渉しないように、前記橈骨近位骨片模擬体の背側及び前記橈骨遠位骨片模擬体の掌側の少なくともどちらかに逃げ溝を形成してなることを特徴とする橈骨遠位端骨折整復実習模型。
  2. 前記橈骨近位骨片模擬体及び橈骨遠位骨片模擬体間の中央部対向面に凹凸係合部を形成してなる請求項1記載の橈骨遠位端骨折整復実習模型。
  3. 前記弾性体の長手方向が、近位方向へ行くにしたがって橈側へ傾斜する請求項1記載の橈骨遠位端骨折整復実習模型。
  4. 前記弾性体の張力を調節する張力調節手段を備えてなる請求項1記載の橈骨遠位端骨折整復実習模型。
  5. 前記弾性体が引張コイルばねであり、前記張力調節手段がターンバックルである請求項4記載の橈骨遠位端骨折整復実習模型。
  6. 前記橈骨近位骨片模擬体及び橈骨遠位骨片模擬体の少なくとも前記骨折部に相当する部分周りを、軟部組織を模した軟質素材で被覆してなる請求項1記載の橈骨遠位端骨折整復実習模型。
  7. 前記橈骨近位骨片模擬体の近位端部に回転関節を設けてなる請求項1記載の橈骨遠位端骨折整復実習模型。
  8. 前記橈骨近位骨片模擬体を橈骨の途中までの部分に相当する長さとして上腕から前腕の近位部までを模した腕近位部模型に取り付けて腕模型とし、該腕模型に回転関節を設けるとともに、前記腕模型を人体又は人体模型に装着する装着手段を備えてなる請求項1記載の橈骨遠位端骨折整復実習模型。
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