しかしながら、上記特許文献1の鍵にあっては、鍵を解錠状態から施錠状態へ操作した場合には、小球は解錠状態を表示する位置から施錠状態を表示する位置へ移動し、施錠状態から解錠状態へ操作する場合には、小球は施錠状態の位置から解錠状態を表示する位置へ移動するようになっているが、これを表裏(上下)に関係なく使用する、すなわち、リバーシブル型の鍵として使用する場合には、構造上の関係から小球の移動による施解錠の状態を表示できないという問題がある。
本発明は、このような問題点を解決するためになされたものであって、表裏施解錠表示機能付き鍵においても、施解錠操作を行ったときに、施錠または解錠のいずれの操作を行ったかを表示できる施解錠表示機能付き鍵を提供することを課題としている。
(1)本発明は、リバーシブル鍵ブランクに結合された把持部の内部空間に、移動可能な可動体を収納し、施解錠操作時に前記リバーシブル鍵ブランクを回転させることにより、前記可動体を重力で移動させて保持し、その保持された位置に応じて施錠または解錠の位置が表示されるように構成されたことを特徴とする、施解錠表示機能付き鍵である。
このような構成によれば、リバーシブル鍵ブランク、すなわち、リバーシブル鍵を錠前の鍵穴の差し込んで回転し、施錠または解錠操作を行うとき、可動体が重力により移動する。移動を終えた後の可動体はその位置で保持されることで、リバーシブル鍵が施錠操作または解錠操作されたことを表示できる。係る表示は鍵をリバーシブルに使用することを可能にするので、特にリーバシブル(左右勝手のない)鍵ブランクに好適であり、利便性に優れた施解錠表示機能付き鍵を得ることができるようになる。
(2)本発明は、鍵ブランクに結合された把持部(つまみ部分)の内部空間に、錠前に対する鍵ブランクの差し込み方向に直交する方向に移動可能なボール体を収納し、施解錠操作時に前記鍵ブランクを回転させることにより、前記ボール体を重力で移動させて保持し、その保持された位置が施錠または解錠の位置であることを表示することを特徴とする施解錠表示機能付き鍵である。
このような構成によれば、鍵ブランク、すなわち、鍵を錠前の鍵穴の差し込んで回転し、施錠または解錠操作を行うとき、鍵ブランクの挿入方向に直交する方向に、ボール体が重力により移動する。移動を終えた後のボール体はその位置で保持されることで、鍵が施錠操作または解錠操作されたことを表示できる。係る表示は鍵をリバーシブルに使用することを可能にするので、利便性に優れた施解錠表示機能付き鍵を得ることができるようになる。
(3)本発明はまた、錠前の鍵穴に抜き差しされる鍵ブランクと、該鍵ブランクに結合され内部に空間を形成した把持部と、該把持部の内部空間に設けた施解錠表示手段とを具備する施解錠表示機能付き鍵であって、前記施解錠表示手段を、前記鍵ブランクの長手軸線における延長上の前記内部空間に設けたボール体、該ボール体の移動を許容して保持する保持部、該保持部に対向する前記把持部に形成され、前記保持部を移動する前記ボール体を解錠位置および施錠位置へガイドする案内溝、および該保持部と係脱自在に設けられ前記鍵ブランクが抜き差しされる方向に直交する方向に移動可能なスライダで形成し、前記鍵ブランクを前記錠前の鍵穴に差し込んで施解錠操作するときのみ、前記スライダが前記保持部に対する係合から解脱する一方で、前記保持部と前記スライダとによる前記ボール体の拘束が解除され、前記鍵ブランクの回転に連動して前記スライダと共にボール体が鍵ブランクの挿入方向に対して直交する方向へ重力により落下することにより、前記ボール体が施錠位置または解錠位置に移動して保持されるように構成したことを特徴とする施解錠表示機能付き鍵である。
このような構成によれば、把持部に施解錠表示手段に設けたので、鍵を使用しない状態では、ボール体はスライダと保持部とで移動を拘束され、解錠状態または施錠状態を維持されている。施解錠操作を行うときには、スライダが保持部に対する係合から解脱(解除)され、フリー状態となったスライダは鍵の抜き差しされる方向に直交する方向にスライドする。換言すると、スライダは重力により移動すると、これに応動して、保持部に拘束されていたボール体も拘束が解除され、重力により保持部に沿って移動する。移動した後に、鍵を鍵穴から抜くと、スライダは重力で落下した位置で保持部に拘束される。これにより、ボール体が施錠位置または解錠位置に移動して保持されるので、施錠または解錠操作した状態をボール体が保持される位置で表示できる。係る施解錠表示は、施解錠表示機能付き鍵に装備されるので、利便性に優れた施解錠表示機能付き鍵を得ることができる。
(4)本発明はまた、錠前の鍵穴に抜き差しされる鍵ブランクと、該鍵ブランクに結合され内部に空間を形成した把持部と、該把持部の内部空間に設けた施解錠表示手段と、該施解錠表示手段に係脱する係脱作動手段とを具備した施解錠表示機能付き鍵であって、前記施解錠表示手段を、前記鍵ブランクの長手軸線における延長上の前記内部空間に設けたボール体、前記長手軸線に直交する方向に指向すると共に該ボール体を着座させる保持部、該保持部に対向する前記把持部に形成され、前記保持部を移動する前記ボール体を解錠位置および施錠位置へガイドする案内溝、および該保持部と係脱可能に設けられ前記長手軸線に対して直交する方向に移動可能なスライダで形成し、施解錠操作をしないとき、前記スライダは前記保持部と前記係脱作動手段との間に挟持されて移動を拘束され、かつ、前記ボール体は前記保持部および前記スライダにより移動を拘束され、前記鍵ブランクを鍵穴に差し込んで施錠操作または解錠操作をするときには、前記係脱作動手段が前記錠前に衝合することにより、前記係脱作動手段が前記スライダから離反して前記スライダの拘束を解除し、かつ、鍵ブランクの回転に連動して前記スライダと共にボール体が重力により落下することにより、前記ボール体が前記案内溝にガイドされて解錠位置または施錠位置に移動し、前記スライダおよび前記保持部により拘束保持されるように構成したことを特徴とする施解錠表示機能付き鍵である。
このような構成によれば、把持部に施解錠表示手段を設けたので、施解錠操作をしないとき(鍵を使用しない状態においては)、スライダはボール体と保持部との間に挟持され、ボール体の移動が拘束される。施解錠操作を行うときは、係脱作動手段によりスライダは保持部からフリーの状態となり、鍵の差し込み方向に直交する方向へ重力により移動する。これに応動して、ボール体も拘束が解除され、案内溝にガイドされながら重力により下方へ落下するように移動する。その後、鍵を鍵穴から抜くことで、スライダは再び係脱作動手段により保持部との間に挟持され、ボール体は施錠状態または解錠状態の位置を移動しないようにスライダと保持部により拘束される。これにより、施解錠の状態が表示できるようになる。
(5)本発明はまた、前記保持部を移動する前記ボール体は、第1ボールと第2ボールとの二個で形成したことを特徴とする、前記(3)または(4)に記載の施解錠表示機能付き鍵である。
このような構成によれば、第1ボールおよび第2ボールは、重力を受けて移動するとき、二個のボールが互いに衝合(玉突き)しあいながら案内溝に沿って移動する。このため、鍵を素早く施解錠操作するときでも、各ボールは案内溝にガイドされて円滑かつスピーディに所定の操作状態を表示する位置へ移動できる。これにより、施解錠操作性に優れた施解錠表示機能付き鍵を得ることができるようになる。
(6)本発明はまた、前記保持部の中央部に、前記第1ボールまたは前記第2ボールのいずれか一のボールのみを滞留させる位置決め溝を形成し、前記案内溝を、該位置決め溝に対向する位置に存する中央溝部と、該中央溝部の両側に左右対称な形状を有する第1溝部と第2溝部とで形成し、前記いずれか一のボールが前記位置決め溝に滞留するとき、いずれか他のボールを前記第1溝部または第2溝部に填り込ませることを特徴とする、前記(5)記載の施解錠表示機能付き鍵である。
このような構成によれば、ボールが重力により移動するとき、第1、第2両ボールのうち、いずれか一のボールは保持部に形成した位置決め溝に填り込み、いずれか他のボールは把持部に形成された第1溝部または第2溝部に填り込む。これにより、各ボールは施解錠操作に応じた状態で保持部およびスライダで移動が拘束され、施解錠を表示できるようになる。
(7)本発明はまた、前記案内溝の前記第1溝部および第2溝部は、前記中央溝部からそれぞれ二股状に伸びることを特徴とする、前記(6)記載の施解錠表示機能付き鍵である。
このような構成によれば、第1溝部における二股状のいずれかの溝、または第2溝部における二股状のいずれかの溝に、第1ボールまたは第2ボールが移動して填り込んで施解錠の表示ができるようになっている。このため、鍵をリバーシブルに使用するときでも、施解錠の状態を表示でき、利便性を増すことが可能となる。
(8)本発明はまた、前記スライダは、その両端にフランジを対向配置させたC型チャンネル形状を有し、前記スライダが前記保持部の端面に衝合して停止するとき、前記いずれか一方のフランジは前記第1溝部または第2溝部の溝を塞ぐように前進し、いずれか他方のフランジは第2溝部または第1溝部から後退するように構成されたことを特徴とする、前記(5)〜(7)のいずれかに記載の施解錠表示機能付き鍵である。
このような構成によれば、保持部はスライダの移動を規制するストッパとして機能し、フランジは第1ボールまたは第2ボールの移動を拘束するストッパとして機能する。このため、鍵の把持部を水平方向にして鍵穴に差し込んだ状態から90度回転させるとき、一方のフランジは第1溝部または第2溝部を塞ぐように下降(前進)し、他方のフランジは第2溝部または第1溝部から見えない位置に下降(後退)する。したがって、施解錠操作時に、水平状態の把持部(鍵)を90度回転させると、重力で移動するスライダは保持部に衝合して停止する。このとき、上方に存する一方のフランジは第1溝部または第2溝部に臨む位置、すなわち、中央溝部近傍まで下降(前進)してくる。その一方で、下方に存する他方のフランジは第2溝部または第1溝部にから隠れるようにして完全に後退する。この結果、重力で落下してくる第1ボールまたは第2ボールは第2溝部または第1溝部に填り込んで受け止められる。次いで、把持部(鍵)を90度反対側に回転して水平状態に復帰させると、第1ボールまたは第2ボールのうち、一のボールは第2溝部または第1溝部に填り込み、他のボールは中央溝部に填り込んだ状態となる。すなわち、第1ボールおよび第2ボールは第1溝部または第2溝部のいずれか一方の溝部と中央溝部とに填り込んだ状態となり、施錠または解錠のいずれの操作が行われたかを表示できるようになる。
(9)本発明はまた、前記把持部に、前記保持部と協働して前記第1ボールおよび第2ボールを前記案内溝から脱落しないように覆う透かし窓を設けたことを特徴とする前記(5)〜(8)のいずれかに記載の施解錠表示機能付き鍵である。
このような構成によれば、ボールがどの溝部に填りこんでいるかを、透かし窓を通して視認できので、施解錠を確実に目視により確認できるようになる。
(10)本発明はまた、前記係脱作動手段は、前記把持部に対して前記鍵ブランクの長手軸線上でスライドする前記鍵ブランク側の第1スライド部と前記スライダ側の第2スライド部、該第1、第2両スライド部の間に設けたパンタグラフ型の合成樹脂製のリンク機構部、および、バネ部材とで形成され、施解錠操作をしないときは、前記バネ部材のバネ力により付勢された前記第2スライド部と前記保持部との間に前記スライダが挟持されて移動が拘束されるが、施解錠操作をするときには、前記バネ部材のバネ力に抗して前記スライダの拘束が解除されることを特徴とする、前記(5)〜(9)のいずれかに記載の施解錠表示機能付き鍵である。
このような構成によれば、係脱作動手段の一構成要素をパンタグラフ型のリンク機構部で形成したので、施解錠表示機能付き鍵を制作するのに好都合となる。
(11)本発明はまた、前記リンク機構部は、前記第1スライド部との間に薄肉で形成した第1ヒンジと、リンク機構自体に薄肉で形成した第2ヒンジと、前記第2スライド部との間に薄肉で形成した第3ヒンジとを有することを特徴とする前記(10)記載の施解錠表示機能付き鍵である。
このような構成によれば、リンク機構に形成した第1ヒンジ、第2ヒンジ、および第3ヒンジは合成樹脂材による薄肉で形成した関節として機能する。このため、リンク機構が把持部の内部空間でパンタグラフのように二つの第2ヒンジが互いに離反するように外側に屈曲したり、二つの第2ヒンジが内側へ接近して伸張したりでき、これにより第2スライド部をスライダを収納する内部空間へ出没させることができる。その結果、係脱作動手段周りにおける把持部の内部構造を簡易化でき、信頼性ある作動を実現できる。
(12)本発明はまた、施解錠の状態を表示する表示部を有する把持部の内部空間に、パンタグラフ機構を有する係脱作動手段と、鍵を回動させる軸線に対して直交する方向に重力により移動するボール体とを設け、施解錠時にのみ、前記パンタグラフ機構の作動により、前記係脱作動手段の前記ボールに対する拘束を解放して前記ボール体を移動させると共に、新しい位置に移動した前記ボール体を、前記係脱作動手段により拘束することにより、前記表示部に施錠または解錠が行われたことを表示することを特徴とする施錠確認表示機能付き鍵である。
本発明に係る施錠確認表示機能付き鍵における把持部(つまみ部)によれば、その内部に、施解錠操作に応じて移動可能なボール体を設けたので、どのような形態の鍵ブランクにも対応して、把持部を取り付けることが可能となる利点がある。
(13)本発明はまた、内部空間にボール体が内蔵され、かつ、小窓を有する把持部と、該把持部の内部に設けられ、前記ボール体に対する圧迫を解放して前記ボール体の移動を許容せしめるパンタグラフ型のリンク機構を有する係脱作動手段と、該係脱作動手段に連動可能に設けられ前記小窓を通して施解錠の状態を表示する施解錠表示手段と、を具備する施解錠表示機能付き鍵であって、前記施解錠表示手段を、前記係脱作動手段の上方に前記把持部の軸線方向に突設された突起手段にガイドされ前記係脱作動手段に浮動的な状態で支持した前記ボール体の受容可能なボールガイドと、該ボール体を挟んで前記ボールガイドに対向する位置に配設され、前記軸線に直交する方向に重力によりスライドするスライドプレートとで構成し、施解錠を行わないときには、前記ボール体は、前記ボールガイドと前記スライドプレートとの間に挟持される態様で拘束されるか、または、前記係脱作動手段と前記スライドプレートとの間に挟持される態様で拘束され、施解錠を行うときには、前記いずれか一の拘束状態が解除され、前記ボール体および前記スライドプレートが前記軸線に直交する方向へ重力により移動することにより、前記ボール体をいずれか他の拘束状態で保持し、かつ、前記小窓を通して施解錠状態を表示するように構成されたことを特徴とする、施解錠表示機能付き鍵である。
本発明によれば、施解錠を行わないときには、ボール体は、ボールガイドとスライドプレートとの間に挟持される態様で拘束されるか、または、係脱作動手段とスライドプレートとの間に挟持される態様で拘束され、施解錠を行うときには、いずれか一の拘束状態が解除され、ボール体および前記スライドプレートが軸線に直交する方向へ重力により移動する。移動後のボール体をいずれか他の拘束状態で保持すると、施解錠操作後の新しい施解錠状態に状態変化をさせることができる。このとき、施解錠の状態は、常に、把持部の内部で作動する係脱作動手段の変位状態が小窓を通して外部から視認することで、施解錠のいずれの操作が行われたかを確認することができて便利である。
本発明によれば、鍵を表裏(上下)に関係なく使用できるリバーシブル型鍵にも適用でき、鍵を素早く回して施解錠してもボール体を誤作動させることなく確実に所定の位置へ拘束して保持することで、施錠または解錠状態を表示でき、信頼性に優れた施解錠表示機能付き鍵を得ることができる。
以下、本発明の実施の形態を図を参照して詳述する。図1〜図5は本願発明の第1実施の形態に係る施解錠表示機能付き鍵に係り、図1は施解錠表示機能付き鍵の外観正面図、図2は施解錠表示機能付き鍵の内部構造を示す図1の縦断面、図3は図1の矢印IIIからみた施解錠表示機能付き鍵の頭部を拡大して示す外観拡大斜視図、図4は上記頭部の内部構造を拡大して示す外観斜視図、図5はリンク機構部を示す外観斜視図である。
本第1実施の形態の施解錠表示機能付き鍵(以下、単に「鍵」ともいう)10は、主として、鍵ブランク20と、鍵ブランク20と一体に結合された把持部(つまみ部分)30と、把持部30の内部空間に設けた施解錠表示手段40と、施解錠表示手段40に係脱する係脱作動手段50とを主要な構成要素として構成される。
鍵ブランク20は、加工し易く耐摩耗性を有する金属、例えば、洋白等から形成され、不図示の錠前の鍵穴に挿し込んで所要角度回動して施解錠を行う。本実施の形態の場合、鍵10は水平な状態にして鍵穴に差し込み、この状態から時計回り(右)または半時計回り(左)へ90度だけ回転することで施解錠操作ができるリバーシブル鍵である。
把持部30は、合成樹脂材料、例えば、ABSから所要中空形形状に成形される。把持部30は、ケース本体31と、これを覆うカバー32とでなり、ケース本体31にカバー32を被着することで、把持部30に内部空間が形成される。この内部空間には、後述するリンク機構部53の第1スライド部51をスライド自在に支持する第1ガイド口33と、第2スライド部52をスライド自在に支持する第2ガイド部34と、リンク機構部53の動作を円滑にする案内突起35,36と、バネ部材54を保持し、かつ、ロッド部55をスライド可能に支持するバネホルダ兼スライダガイド37と、後述される施解錠表示手段40とリンク機構部53を収納する室とを区画する仕切壁38と、ボール体42,43を保持する保持部41とが形成されている。
上記第1ガイド口33,第2ガイド部34,案内突起35,36,バネホルダ兼スライダガイド37、仕切壁38、および保持部41は、ケース本体31又はカバー32のいずれか一方の内面より突出形成され、かつ、いずれか他方の内面に係合することで所定の強度が確保されるようになっている。
なお、把持部30は合成樹脂材で形成したが、アルミダイキャスト、粉末冶金で焼成して成形するなど、他の樹脂以外の素材を用いて形成することも可能である。
施解錠表示手段40は、図2に示す鍵ブランク20の長手軸線Lにおける延長上の、施解錠表示手段40の機能部を形成する内部空間に設けた第1ボール42、43でなる金属製小球のボール体と、該ボール体の移動を許容すると共にボール体を着座させて保持する保持部41と、保持部41に対向する把持部30頭部に形成した案内溝44と、長手方向Lに直交する方向に移動可能で、保持部41に係脱可能に設けた金属製または合成樹脂製のスライダ45とで形成される。
施解錠表示手段40をより具体的に説明する。図2〜図4において、保持部41はケース本体31から棚板状に突出し、その奥行き幅は二個のボール42,43を並列して着座支持できる寸法を有し、その中央部、すなわち、長手軸線L上にボール体42,43を受容しうる凹状の位置決め溝41aが設けられている。これにより、保持部41上を、すなわち、位置決め溝41aを通過してボール体が左右へ移動(転動)できるようになっている。
案内溝44は図3に示すように、位置決め溝41aの上方に対向する位置に存する中央溝部44aを有し、該中央溝部44aの両側に左右対称に二股状に伸びる第1溝部44bと第2溝部44cとが形成される。これら各溝部44b、44cの溝幅は第1ボール42,第2ボール43の移動を円滑にするため、直径よりもやや大きく形成される。これにより、鍵10を長手軸線L回りに回転させることで、保持部41上を移動(転動)するボール体42,43は重力により、四つ葉クローバーに近似した形状をなす案内溝44にガイドされて円滑に移動できるようになっている。なお、位置決め溝41aに着座するボール体は中央溝部44aによりいずれか一のボール体のみ保持できるようになっている。
案内溝44の上方には、図1,図3に示すように、合成樹脂製の透かし窓46が設けられ、ボール体42,43が外部へ脱落するのを防止し、かつ、ボール体が第1、第2両溝部44b、44cのいずれの溝部に移動したかを視認できるようになっている。
また、案内溝44の近傍には、施解錠操作の状態を示すための、例えば、「開」、「閉」という文字を印刷した表示シール44d、44e等が貼り付けられている。これは、第1ボール42あるいは第2ボール43のいずれかが第1溝部44bまたは第2溝部44cに填り込んだ場合に、填り込んだ側にある文字表示を視認することで、鍵の施解錠操作がいずれの側に操作されたかを確認することができるようになっている。なお、表示シール44d,44eは図3以外の図には煩雑を回避するため、その図示を割愛している。
施解錠表示手段40の一構成要素である上記スライダ45は、図4に示すように保持部41の長さよりも大きな寸法を有するC型チャンネル形状をなし、主体部45bと、その両側から立ち上がる脚部45cと、両脚部45cから対向して屈曲させたフランジ45aとを有する。主体部45bは、把持部30側の仕切壁38と保持部41との間に微少間隙を存して左右へ移動可能にセットされている。換言すると、スライダ45は保持部41に対してフリーな状態にあるときは、長手軸線L方向(上下方向)には保持部41と仕切壁38との間のギャップGの分だけ上下動が可能であり、長手軸線Lに直交する方向には、すなわち保持部41の方向には、いずれか一方の脚部45cが保持部41に当接するまでのギャップHの分だけスライドできるようになっている。これにより、鍵10が長手軸線Lを回転中心に回転操作(施解錠操作)されるとき、スライダ45はその重力により保持部41と仕切壁38とにガイドされて、ギャップGおよびHだけ上下左右に移動できる。
また、スライダ45が保持部41に対してスライドし、いずれか一方の脚部45cが保持部41に当接して停止するとき、いずれか一方のフランジ45aは第1溝部44bまたは第2溝部44cを塞ぐように前進し、フランジ45aの自由端はほぼ位置決め溝41a近傍まで前進し、いずれか他方のフランジ45aは第2溝部44cまたは第1溝部44bから後退できるようになっている。すなわち、フランジ45aが前進することで、位置決め溝41aに存するボール体を中央溝部44aで保持し、フランジ45aが後退することで、第1溝部44bまたは第2溝部44cで保持できるようにしている。
施解錠表示手段40は上記のように構成されているので、例えば、図2のように施解錠操作された場合には、スライダ45およびボール体42,43が重力で移動する。落下するボール体は第1溝部44bまたは第2溝部44cで、より具体的には第1、第2両溝部のうち、二股状にあるいずれかの枝溝に填り込んで受け止められる。一方、位置決め溝41aに対応する中央溝部44aに滞留するボール体42(または43)は、保持部41に衝合した側のフランジ45aに当接することでボール体の移動が中央溝部44aで拘束される。これにより、上記枝溝に填り込んだボール体は中央溝部44aに填り込むボール体に邪魔されるので、他の枝溝へ移動するのを阻止される。この結果、施解錠操作の表示をボール体がどの溝に填り込んでいるかを視認することで行うことができる。
次に、主として図2,図5を参照して係脱作動手段50を説明する。係脱作動手段50は、第1ガイド口33にスライド可能に支持される第1スライド部51と、第2ガイド口34にスライド可能に支持される第2スライド部52と、第1、第2両スライド部51,52の間に設けたパンタグラフ型のリンク機構部53と、第1スライド部51とバネホルダ兼スライダガイド37との間に縮設したコイル状のバネ部材54とで形成される。バネ部材54以外の係脱作動手段50の各構成要素は、すべてポリプロピレン等の合成樹脂材料で成形される。
第1スライド部51は、鍵ブランク20の基部に重ねられるように設けられ、その半部が把持部30から外部へ出っ張り、錠前に押しつけることができるようになっている第1スライド部51が錠前に押しつけることで、把持部30内へスライドできる。
第2スライド部52は、長手軸線Lに沿って配置したバネホルダ兼スライダガイド37と第2スライド部34とにスライド可能に設けられる。
リンク機構部53は、ほぼL型の第1リンク53aと第2リンク53bとを有し、第1リンク53aは薄肉の弾性変形を利用したポリプロピレンヒンジ(PPヒンジ)である第1ヒンジP1を介して第1スライド部51に、第1リンク53aは第2ヒンジP2を介して第2リンク53bに、さらに第2リンク53bは第3ヒンジP3を介して第2スライド部52にそれぞれ結合される。リンク機構部53の各部位は長手軸線Lに対して左右対称に配置されパンタグラフ型のリンク機構を形成する。
第1リンク53aには、第1ヒンジP1に結合される屈曲部53cが形成され、施解錠操作をしない通常時は、ガイド口33に着座する。
ケース本体31には、案内突起35,36が突設され、案内突起35は第1リンク53aに設けた角部53dに係脱することで第1リンク53aの動きを規制し、また、案内突起36は第2リンク53bの動きを規制するようになっている。
こうして、図2に示すように、鍵ブランク20を一体に結合した把持部30のケース本体31に、リンク機構部53、バネ部材54,ボール体42,43、およびスライダ45等を適宜に装填してセットする。そして、ケース本体31の上からカバー32で蓋をすることで、施解錠表示手段40を組み込んだ施解錠表示機能付き鍵10を制作できる。
施解錠表示機能付き鍵10は、リンク機構部53にバネ部材54の付勢力が常時作用するため、施解錠操作に伴う操作力(第1スライド部51を錠前に押しつける力))が第1スライド部51に作用したとき、第1スライド部51はバネ部材54の付勢力に抗して把持部30内へ押し込められる。このとき、各ヒンジP1〜P3は関節として機能するので、リンク機構部53は、案内突起52,53に当接してその動きを規制されながらパンタグラフ運動を行う。すなわち、リンク機構部53が屈曲することで、第1、第2両スライド部51,52間の距離が縮められ、あるいは逆に伸張することで該距離が長くなったりする。
換言すると、施解錠操作を行わないときには、リンク機構部53は図2のように伸張状態にあるので、第2スライド部52はスライダ45を介して保持部41に弾接する。その結果、スライダ45は保持部41に対して摩擦抵抗によりその動きが拘束され、ボール体42,43は中央溝部44aと、第1溝部44bまたは第2溝部44cのいずれかに一方の溝部とに填り込んだ状態で移動が拘束される。施解錠操作を行うときは、錠前に第1スライド部51が押しつけられることにより生じる操作力により、リンク機構部53は図7のように、バネ部材54の付勢力に抗して屈曲する。その結果、第2スライド部52をスライダ45から離脱(離反)させ、スライダ45の拘束は解除されてフリーとなり、ボール体の拘束状態も解除され、移動可能な状態となる。
実施の形態について鍵の施解錠操作を、図2,図3、図6〜図10に基づいて説明する。なお、本実施の形態では、錠前の鍵穴に鍵の把持部30を水平に把持した状態で挿入し、その状態から90度の角度で時計回りに、あるいは半時計回りに回転して使用するタイプの施解錠表示機能付き鍵について説明するが、これ以外に例えば上下に把持した状態で挿入して使用する形態の鍵にも適用できるものである。
図6(A)は図3を矢印X方向からみた状態を模式的に示した作用説明図、すなわち、施解錠表示機能付き鍵10における把持部30の頭部を上からみた状態を模式的に示した作用説明図であり、同図(A)に続く(B)〜(J)に至る各図は同様に、施解錠操作に応じて位置が変化するボール体42,43、およびフランジ45aの移動を説明する作用説明図である。また、図6の各図に付した符号a1およびb2は、図3に示す案内溝44の第1溝部44bの溝部を、符号a2およびb1は、第2溝部44cの溝部をそれぞれ表すが、第1溝部や第2溝部の指称は相対的なもので、入れ替えても成立可能なものである。以下の説明では、煩雑を避けるため単に溝a1、a2、b1,あるいはb2と呼ぶものとする。同様に、第1ボール42,第2ボール43を総称する場合には「ボール体」、個別に称する場合には「一のボール」、「他のボール」、あるいは「ボール」と適宜に使い分けて表現することとする。なお、図6の各図に示すハッチングの部分はスライダ45のフランジ45aを表す。さらに、図6(A)におけるA−A線の矢視断面図は、図2の縦断面図が相当するものとする。
(解錠状態の鍵を差し込むも錠前に押し付けない場合)
先ず、図2,図3に示すように,ボール体が解錠を示す位置にあり、かつ、施解錠操作を行わない場合にあるときは、リンク機構部53は図2に示す状態にあり、第2スライド部52によりスライダ45は保持部41に圧着され、スライダ45の移動は拘束される。したがって、図6(A)に示すように、一のボールは溝b1で受容され、他のボールは位置決め溝41aに存し、かつ、左方のフランジ45aと中央溝部44aとで支持される。その結果、ボール体は保持部41上で拘束されることとなり、鍵をどのように傾け、動かしても拘束状態を維持し続ける。以下、図6(A)〜(C)の操作順序を説明していく。
(解錠状態の鍵を錠前に押しつけた場合)
図6(A)に示されるように、鍵10を錠前に差し込んで錠前におしつけると、図7に示すように、リンク機構部53はバネ部材54の付勢力に抗して屈曲し、第2スライド部52はスライダ45から後退して離間し、保持部41に対してフリーとなる。
(解錠状態から施錠状態に操作する場合)
図6(A)の鍵を左へ90°回転させると、図6(B)および図8に示すように、スライダ45および一他両ボールは重力により。鍵ブランク20の長手軸線Lに直交する方向、すなわち、下方へ移動して溝a1,b2に填り込む。
この状態から鍵を右側へ90°回転して水平に戻すと、図6(C)および図9に示すように、一のボールは溝a1に、他のボールは中央溝部44aに填り込む。係る状態で鍵を鍵穴から引き抜くと、バネ部材54の付勢力により、リンク機構部53は図10に示されるように伸張し、スライダ45は第2スライド部52により保持部41に挟持され、スライダ45の移動はロックされる。このため、中央溝部44aに存するボールは、右側にあるフランジ45aにより中央溝部44aから脱落するのを阻止され、図(C)に示す状態を維持し続ける。この結果、ボールは溝a1に填り込んでいるので、閉、すなわち鍵により施錠状態への操作が完了したことをユーザーに表示できる。
(A→D→Eの操作順序)
上記と同様に、図6(A)の状態の鍵を右側へ90°回転すると、図6(D)のように中央溝部44aのボールは重力で長手軸線Lに直交する方向へ移動して溝a2に入り込む。図(D)の状態から鍵を左へ90°回転すると、(E)に示すように、溝a2のボールは重力で再び中央溝部44aに落ち込み、図6(A)の状態に復帰する。すなわち、解錠状態の鍵を開方向へ回転操作しても、解錠状態を表示し続けることとなる。
(A→F→G→Hの操作順序)
次に、リバーシブルな使用における施解錠の作用を説明する。図(A)の状態にある鍵を180°回転して鍵穴に挿入すると、図(F)に示す状態となる。すなわち、溝b1のボールは中央溝部44aのボールに邪魔されるので、溝b1に填り込んだままとなる。この状態から鍵を90°左側へ回転させると、図(G)のように一他両ボールは重力作用を受けて溝a2、b1に落下する。これを右側へ90°回転すると、溝b1のボールが中央溝部44aへ落ち込み、図(H)に示すような状態となる。ボールは解錠表示を示す側の溝a2に填り込んでいるので、鍵が解錠操作されたことをユーザーに表示できる。
(F→I→Jの操作順序)
図(F)の状態から鍵を右へ90°回転すると、重力によりスライダ45および一他両ボールは下方へ移動し、両ボールは図(I)のように溝a1,b2に填り込む。次いで、鍵を左へ90°回転すると、図(J)に示されるように、溝a1のボールは中央溝部44aへ落ち込む。「閉」の状態を示す側の溝b2にボールが填り込んでいることから、ユーザーに施錠状態に操作されていることを表示できる。
本第1実施の形態に係る施解錠表示機能付き鍵10によれば、透かし窓46を通してボール体42,43の動きをボール体を脱落させることなく視認できる。したがって、その一のボール、あるいは他のボールが溝a1,a2,b1,b2のいずれの溝に填り込んでいるかを視認することで、鍵が施錠または解錠のいずれの操作状態にあるかをユーザーは知ることができるので便利である。しかも、図6(C)および(J)では施錠状態を、図(E)および(H)では解錠状態にあることを表示する、すなわち、第1溝部の溝a1あるいは溝b2にボール体が存するときは施錠状態にあることを表示し、第2溝部である溝a2または溝b1にボール体が填り込んでいる場合には解錠状態を表示するので、リバーシブル型鍵にも本発明を適用でき、利便性を増大させることができる。
また、本第1実施の形態によれば、重力作用を利用してボール体42,43を移動させるようにしているので、鍵10の回転を素早く行う場合でも、施解錠表示手段40を形成する案内溝44、保持部41、およびスライダ45の協働作用により、ボール体の移動を安定的なものにし、位置ずれするのを確実に回避でき、したがって、迅速な操作性に優れ、誤作動の生じない、信頼性に優れた施解錠表示機能付き鍵を得ることができる。
次に、本発明の第2実施の形態を図11〜図15に基づいて説明する。なお、上記第1実施の形態と同一または均等の部材、部分については、第1実施の形態に付されたと同じ符号を付し、その詳細説明を割愛することとする。
本第2実施の形態では、把持部30に、第1実施の形態におけるパンタグラフ機構と同じリンク機構部53を備えた係脱作動手段50が内蔵され、それにより、リンク機構部53の屈伸により第1ボール42および第2ボール43に対する圧迫(拘束)を解放(解除)してボール体の移動(転動)を許容し、圧迫することでボール体の移動を拘束するという係脱作動手段の基本構造の点では共通するが、施解錠表示手段において大きく構成を相違する。換言すると、第1実施の形態における施解錠表示手段40においては、ボール体42,43を把持部30に一体に形成した保持部41上に移動可能に支持させたが、本第2実施の形態に係る施解錠表示手段90では、長手軸線Lに移動しうるボールガイド94にボール体を支持させる点、また、第1実施の形態では、スライダ45は長手軸線Lに直交する方向にスライドするだけでなく、軸線L方向へも遊びを存して移動可能に形成されたが、本第2実施の形態のスライドプレート96は長手軸線Lに直交する方向にスライドのみが許容される構成としている点、さらに、第1実施の形態では、スライダ45のスライドを保持部41で規制したのに対して、本第2実施の形態では、第2スライド部52に突起手段93を設け、スライドプレート96がスライドするスライド量を、突起手段93に係止させることで規定するように構成している点で主に相違する。
本第2実施の形態における施解錠表示手段90をより具体的に説明していくこととする。施解錠表示手段90は、図12に示す表示部91と図15で示す把持部30に設けた小窓92と、図12の第2スライド部52に突設した突起手段93と、図13に示される突起手段93を介してガイドされ、第2スライド部52に浮動的に設けたボールガイド94と、ボールガイド94に受容される第1ボール95aおよび第2ボール95bで形成されるボール体95、これらボール95a、95bを挟んでボールガイド94に対向する位置に配置され、かつ、図11に示す長手軸線Lに直交する方向へ重力によりスライドするスライドプレート96とから構成される。
上記把持部30のほぼ中央に設けた小窓92に対応して、長手軸線L方向へ変位する表示部91が対面する。表示部91には上半部(ハッチングで示した部分)91aと下半部(ドットで表示した部分)91bとが、例えば緑色と柿色というように区分して色分け表示され、いずれか一方の色が小窓92を通して見えるときには施錠状態を、いずれか他方の色が視認されるときには解錠状態を表示するものとし、係る色を視認することで、鍵保持者に鍵が施錠あるいは解錠のいずれの状態に操作されているかを告知するようになっている。
第2スライド部52の上部に形成した長方形の輪郭を備えた平坦部52aには、3種類の高さの異なる各一対で形成される第1〜第3突起部93a、93b、93cが長手軸線L方向に指向して突設される。第1突起部93aは平坦部52aの中央に対向配置され、長手軸線Lに直交する面における断面がわずかに湾曲面を呈する。第2突起部93bは、第1突起部93aよりも背が低い横断面六角形状の形状を有し、かつ、相対向する一対の第1突起部93aを斜めによぎるようにしてクロス配置される。第3突起部93cは、平坦部52aの両端面で対向配置され、第1、第2両突起部93a、93bよりも長さ(高さ)が一番長く(高く)形成される。第1、第3の各突起部93a、93cの自由端(上端)は先細り形状に形成されるが、第2突起部93bの尖り度合いは、前二者のものよりも低く、ボール体95の周面の一部に面接触が可能な程度の面が形成される。
ボールガイド94には、図13によく示されるように、直方体形状を有し、上記の第1突起部93aを遊挿する円弧状をなす一対の第1貫通穴94aと、上記第2突起部93bを遊挿する六角形状の一対の第2貫通穴94bと、ボール体95を転動(移動)させるX字状のガイド溝94cとが形成される。ガイド溝94cの底部に、上記第1、第2の貫通穴94a、94bが存するようになっている。
ガイド溝94cは、上記第1実施の形態の場合と同様に、鍵10が施解錠のどの操作状態にあっても、いずれか一方のボールはスライドプレート96により必ず第1突起部93aに近接して留まる、すなわちボールガイドの中央部に停留し、いずれか他方のボールはそれ以外の部分に存在するように形成される。
一方、図12(c)の点線で示すように、ボールガイド94を平坦部52aに組み込んだ場合において、第1貫通穴94aに対する第1突起部93aは、リンク機構53の作動により平坦部52aがどのような位置にあっても、第1貫通穴94aに係合している。このため、ボールガイド94は常に第1突起部93aにガイドされる状態で係合する。ボールガイド94は一対の第1突起部93aにより相対移動可能に支持されるので、把持部30が長手軸線L回りに回動されても、ボールガイド94は長手軸線Lから位置ずれしてふらつくことなく、第1突起部93aに浮動的にガイドされる態様で係合され、ボール体95のみが重力によりガイド溝94cに案内されて転動する。
他方、ボール体95のいずれか一は、一対の第1突起部93a間に抱持されるように滞留することが可能であり、いずれか他のボール体が六角形状の第2貫通穴94b上に滞留するときは、下から突き上げられてくる第2突起部93bはボール体が邪魔になって第2貫通穴94bへの進入が阻止されるようになっている。なお、図13(b)における符号94dは、表示部91の上端縁との干渉を回避する逃げ凹部を示す。
スライドプレート96は図11に示すように、長手軸線Lに直交する方向に設けた案内仕切り壁38aに沿って移動するように設けられ、かつ、図12(c)に示すように、ボール体95を挟む態様でボールガイド94に対向するように配設される。スライドプレート96は、図14および図15(b)に示すように、第1突起部93aおよび第2突起部93bの進入を許容する矩形状の進入角穴96aと、第1突起部93aに滞留するボール体をボールガイド94と協働して挟持する押圧部96bと、第3突起部93cが進入可能なストッパ角穴96cとが形成される。これにより、スライドプレート96が施解錠操作時に重力で落下してスライドしても、第3突起部93cがストッパ角穴96cに進入して係合することで、スライドプレート96がスライドする移動量が規定される。
第2実施の形態の作用について説明する。図11(a)〜(c)は把持部30の内部構造の概要を模式的に図示した構成図である。同図(a)のように、鍵10を錠前の鍵穴に深く挿入した場合には、これに応じてリンク機構部53はバネ部材54のバネ力に抗して強制的に屈曲する。これにより、第2スライド部52はボールガイド94から離反するので、ボールガイド94とスライドプレート96との間に挟持されて動きを拘束されていた第1ボール95aおよび第2ボール95bは拘束から解放され、重力により自由にスライドして動きうる状態となる。これと同時にスライドプレート96も重力により自由に動きうる状態となる。
図11(b)のように、第1ボール95aがボールガイド94のガイド溝94cの中央部に、第2ボール95bが第2貫通穴94bの形成されていないガイド溝とに位置する場合には、リンク機構部53は、図11(c)に示すようにバネ部材54のバネ力により、長手軸線L方向へ最大限に伸張する。これにより、第1突起部93aは第1貫通穴94aを貫通し、第2突起部93bは第2貫通穴94bに進入して貫通する。また、第3突起部93は、ストッパ角穴93cを進入して貫通する。スライドプレート96は、ボールガイド94と,第1ボール95aおよび第2ボール95bとを介して案内仕切り壁38a(図11(c)参照)に押圧され、把持部30に摩擦係合し、スライドプレート96のスライド移動が拘束される。これにより、ボール95a,95bは、リンク機構部53を介して作用するバネ部材54のバネ力により、ボールガイド94とスライドプレート96との間で挟圧された状態に維持され、鍵をどのように傾け、あるいは動かしても、小窓92を通して下半部の表示部(ドットにより図示した部分)91bによるカラー表示、つまり、施錠状態あるいは解錠状態を強制的に維持し続けることができる。
また、図11(d)に示すように、第1ボール95aがガイド溝94cの中央部に、第2ボール95bが六角形状の第2貫通穴94bが形成される溝部に滞留する場合には、図11(e)のように、第2突起部93bは第2ボール95bに遮られて第2貫通穴94bへの進入が妨げられる。これにより、スライドプレート96は、ボールガイド94と、第2突起部93cと、第2ボール95b(この場合は、第1ボール95aは関与しない)とを介して案内仕切り壁38aに押圧され、スライドプレート96のスライド移動がロックされる。この結果、リンク機構部53は第2ボール95bの直径に相当する分だけその伸張量が減少した状態で、第2ボール95bはボールガイド94とスライドプレート96との間に挟持されると同時に、小窓92には下半部91bから上半部(ハッチング部)91aに変化したカラー表示を表示し、解錠状態あるいは施錠状態を強制的に維持するようになる。
上記したように本第2実施の形態によれば、図16(A)の水平状態にある把持部を左へ90°回転させると、重力によりボール体95とスライドプレート96は下方へ移動する。このとき、ボール体はガイド溝94cを同図(B)のように移動する。次いで、右へ90°回転させると、ボール体は同図(C)に示すような配置となる。このとき、ガイド溝94cの中央に存するボールBは、スライドプレート96により溝Cへ落ちるのが防止される。これにより、(A)が施錠状態にあるとした場合には、施錠状態にあった鍵は(C)で示すように解錠状態に操作されたことになる。
また、把持部を(A)の状態から右へ90°回転させると、ボール体は(D)のように移動し、次いで、左へ90°回転させると、ボール体のガイド溝94cに対する位置関係は図16(E)に示すようになるが、(A)と同じ位置関係となり、施解錠操作が行われていないのと同等となる。
このように、施錠確認表示機能付き鍵10の施解錠操作により、小窓92を通して表示部91がその都度切り替わって変化することで、施錠確認表示機能付き鍵が施錠状態にあるか、解錠状態にあるかを容易に判断でき便利である。
本発明は、上記実施の形態に限られるものではなく、その趣旨及び技術思想を逸脱しない範囲で種々の変形が可能である。