JP5400060B2 - コポリマーを塩にすることによって得られるポリマー添加剤 - Google Patents

コポリマーを塩にすることによって得られるポリマー添加剤 Download PDF

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Description

本発明は、スチレン単位とカルボン酸またはその無水物単位とをベースにした新規なポリマー添加剤(polymeric additives)に関するものである。
本発明はさらに、上記ポリマー添加剤を含む組成物と、その使用、特に製紙分野での使用に関するものである。
現在使用されている印刷/筆記用紙および厚紙の大部分にはコーティングがされている。コーティングがされているという表現は紙の一方または両方の面がコーティングで被覆されているということを意味する。このコーティングの目的は、表面を滑らかにし、紙の白色度を改善し、特定の表面効果(特に光沢)および気持のよい手触りを紙に与えることである。コーティングスリップ(slip)は通常、大部分が微細顔料で、それに種々の添加剤が組み合わされている。
紙のコーティングで紙の特性、例えば疎水性、耐水性、印刷適性または表面外観を改善する添加剤としてスチレン/無水マレイン酸コポリマーを用いることは公知である。この添加剤は紙をサイジングまたはコーティングするための液体組成物中の成分として用いることが多く、さらには粘度の低下、特に高剪断での粘度を低下させ、また、充填剤または顔料の濃度を増加させて紙のレオロジーを改良することもできる。製紙時に紙の処理に用いられる液体組成物は上記のスチレン単位と無水物単位とをベースにしたポリマー添加剤の他に充填剤または顔料を含む水性懸濁液であり、結合剤や他の添加剤をさらに含むことができる。
特許文献1(国際特許第WO 02/48459号公報)に記載のコーティング組成物は、粘度を下げ、しかも、紙に良く接着し、急速乾燥可能な可撓性と耐久性のあるフィルムを形成するために、Hybrane(登録商標)型の高度分岐ポリエステルアミドを含み、必要に応じてスチレン/無水マレイン酸(SMA)ポリマーまたはその塩が組み合わされる。
水への可溶化を促進するためにスチレン/無水マレイン酸コポリマーの塩として無機または有機の塩、特にアミン塩を用いることはよくある。特許文献2(米国特許5,290,849号明細書)にはスチレン/無水マレイン酸/アルキルメタクリレートターポリマーのアンモニウム塩を含む紙サイジング組成物が記載されている。
特許文献3(米国特許4,831,367号明細書)にはエピクロルヒドリンまたは有機酸または無機酸で塩化して得られた紙サイジング剤、すなわち、スチレン/無水マレイン酸コポリマーと塩基、例えばモルホリン、ピリジンまたはピペリジン誘導体とを反応させた生成物が記載されている。
国際特許第WO 02/48459号公報 米国特許5,290,849号明細書 米国特許4,831,367号明細書
しかし、従来組成物と比較して下記利点の少なくとも一つを有する紙のコーティングまたはサイジング用の新しい添加剤を得るというニーズが依然としてある:
(1)疎水性がより高い、
(2)製紙で用いられる顔料および/または充填剤をより良く分散する、
(3)保水性がより良い(これは結合剤および充填剤または顔料と接触したときに水を維持する組成物の能力で定義される)、
(4)製紙で用いられるセルロース繊維との相溶性がより良い、
(5)乾燥後の紙に対する接着性がより良い、
(6)乾燥時間がより短い、
(7)紙上でのフィルムの形成がより容易、および/または
(8)形成されたフィルムの耐久性および/または可撓性がより良い。
さらに、変形例または追加例では、添加剤を含む組成物をコーティングしたコート紙または厚紙が従来組成物と比較して下記の利点の少なくとも一つを付与できるような新しい添加剤が望ましい:
(1)印刷適性がより良い、
(2)印刷解像度がより高い、
(3)レンダリングがより良い、
(4)機械的強度がより強い、および/または
(5)手触りがより改善される。
本発明の対象は、少なくとも一種の環状無水物またはカルボン酸をベースにしたモノマーと少なくとも一種のスチレンをベースにしたモノマーとから得られるコポリマーを、少なくとも一種の窒素複素環基を含む少なくとも一種のアミンを用いて、水性媒体中で、塩にする(salification)ことによって得られる塩化コポリマー(salified copolymer)にある。
本発明の別の対象は、少なくとも一種の環状無水物をベースにしたまたはカルボン酸をベースにしたモノマーと少なくとも一種のスチレンをベースにしたモノマーとから得られるコポリマーを、水性媒体中で、塩にする方法であって、上記コポリマーを、少なくとも一種の窒素複素環基を含む少なくとも一種のアミンと接触させることを含む方法にある。
実施例8の対照シート(添加剤なし)(左)および添加剤溶液を含浸したシート(右)の表面を走査電子顕微鏡(SEM)で観察して得られた2枚の写真(倍率1000×)。
本発明では下記の式(1)〜(6)のいずれか一つに対応する少なくとも一種の窒素複素環基を含むアミンを用いてコポリマーを塩にする:
Figure 0005400060
(ここで、Aは酸素または硫黄原子またはNH基、好ましくは酸素原子を表し、X、YおよびRはそれぞれ第1級または第2級アミン官能基を末端に有する任意の鎖を表す)
本発明の好ましい一つの実施例では、窒素複素環はイミダゾリドン基を含む。
さらに、X、Y、Rはそれぞれ独立して第1級または第2級アミン基を末端に有する剛性鎖または可撓性鎖を表し、この鎖は1〜30個の炭素原子(その少なくともいくつかは置換されていてもよい)と、任意成分としての一つまたは複数のヘテロ原子(特に硫黄、酸素および窒素から選択される)とから成り、この鎖は任意成分として一つまたは複数のエステルまたはアミド架橋を含むのが好ましい。X、Y、Rはそれぞれ別々に直鎖または分岐鎖のC1−C10アルキレン鎖を表すのが好ましく、必要な場合には、一つまたは複数の窒素原子で中断され、第1級または第2級アミン末端官能基を有することができる。
本発明の好ましい一つの実施例では、X鎖は第1級または第2級アミン末端官能基を有する直鎖C1−C6アルキレン鎖である。
本発明の別の好ましい変形例では、Y鎖およびR鎖が第1級または第2級アミン基を表す。
式(1)〜(6)のアミンの好ましい例は下記の通り:1−(2−アミノエチル)イミダゾリジン−2−オン(UDETA)、1−(2−[(2−アミノエチル)アミノ]エチル)イミダゾリドン(UTETA)、1−[(2−{2−[(2−アミノエチル)アミノ]エチル}アミノ)エチル]イミダゾリドン(UTEPA)、3−アミノ−1H−1,2,4−トリアゾ−ル(3−ATA)および4−アミノ−1H−1,2,4−トリアゾ−ル(4−ATA)。本発明ではUDETAを用いるのが好ましい。別の実施例では、アミンを3−ATAにすることができる。
本発明で用いるアミンは、尿素(ウレア)をアルキレンアミンおよびアミンの中から選択される少なくとも一種の化合物と反応させて得ることができる。すなわち、UDETAは尿素とジエチレントリアミン(DETA)とを反応させて調製できる。
本発明で「水性媒体」とは水と任意成分としての一種以上の水溶性有機溶剤、例えばアセトン、メタノール、エタノール、グリセロール、エチレングリコールまたはジエチレングリコール(これらに限定されるものではない)を含む媒体を意味する。
本発明で「環状無水物をベースにしたまたはカルボン酸をベースにしたモノマー」とはそれぞれ環状無水物またはカルボン酸単位を含むまたはこれから成るモノマーを意味する。同様に、本発明で「スチレンをベースにしたモノマー」とはスチレン単位を含むまたはこれから成るモノマーを意味する。スチレンをベースにしたモノマーの例はα−メチルスチレンである。
本発明で用いるコポリマーは上記モノマーの他に、追加のモノマー、例えばアルキル(メタ)アクリレートを含むことができるということは理解できよう。しかし、このコポリマーは上記モノマーのみから製造するのが好ましい。
本発明の塩化コポリマーを他のポリマー、特にエラストマーポリマーと少なくとも一つの共有結合によって結合することもできる。
スチレンをベースにしたモノマーはスチレンまたはα−メチルスチレンであるのが好ましい。
さらに、このコポリマーの製造に適した環状無水物をベースにしたモノマーは無水マレイン酸、無水イタコン酸、無水アクリル酸および無水メタクリル酸の中から選択されるものを含む。本発明では無水マレインを使用するのが好ましい。
カルボン酸をベースにしたモノマーの例としては、アクリル酸、メタクリル酸およびイタコン酸が挙げられる。
本発明の塩化コポリマーは、上記定義の任意のコポリマーから得られ、好ましくはスチレンまたはα−メチルスチレン単位および無水マレイン酸単位のみを含むコポリマー(SMAコポリマー)またはスチレンまたはα−メチルスチレン単位および(メタ)アクリル酸単位のみを含むコポリマーから得ることができる。このコポリマーの重量平均分子量(Mw)は500〜500,000Da、好ましくは1000〜200,000Da、さらに好ましくは2000〜50,000Daにすることができる。本発明で使用可能なコポリマーの例は、Sartomer社から商品名Sartomer(登録商標)SMA1000で市販されている。
このコポリマーはモノマーの全重量に対して0.5〜70重量%の環状無水物またはカルボン酸をベースにしたモノマーを含むことができる。さらに、スチレンをベースにしたモノマーと、環状無水物またはカルボン酸をベースにしたのモノマーとのモル比は0.5:1〜29:1、好ましくは0.6:1〜6:1にすることができる。
少なくとも一種の窒素複素環基を含むアミンと、コポリマーの環状無水物またはカルボン酸単位とのモル比は0.01〜10、好ましくは0.05〜2にすることができる。
コポリマーを塩にする段階は、コポリマーを含む水性媒体の全部または一部の中に、アミンを数分〜数時間、例えば5分〜6時間の間、70〜95℃の温度で、撹拌下に添加することで実施できる。アミンは連続またはバッチ、例えば一段階で導入できるが、塩化反応によって起こる発熱を制御しなければならない。変形例では、この塩化段階はアミンを含む水性媒体の全部または一部の中に、上記条件下で、コポリマーを撹拌下に添加することによって実施できる。コポリマーは連続またはバッチ、必要に応じて一段階で導入できる。別の変形例では、アミンとコポリマーとを水性媒体の全部または一部の中に連続的に同時導入できる。
本発明の塩化コポリマーには、本発明で用いる前に、上記の塩化、特に塩化および/またはその他の有機または無機塩基または酸との反応以外の化学的改質を施さないことが好ましい。
コポリマーは、アミンと接触させる前に、必要に応じて粉砕できる。続いて、コポリマーを例えば10〜20重量%の比率で水性媒体に導入できる。
アミンとコポリマーとの反応によって、環状無水物単位が存在する場合はこれらが開環し、得られた酸基の少なくとも一部がアミン化塩基によって塩化される。酸塩基による塩化反応が望ましいが、この酸塩基反応に加えて、酸基の一部がアミンと反応してアミド型共有結合を形成すること、および、得られたアミド官能基自体が隣接するカルボン酸官能基と反応してイミド結合を形成できることはありえなくはない。従って、上記の塩化方法で得られた生成物はイオン結合と共有結合の両方によってコポリマーの主鎖に結合した窒素複素環を含むことができる。
本発明のさらに別の対象は、上記の塩化コポリマーの少なくとも一種を水性媒体中に含む組成物にある。
この組成物は例えば下記の中から選択できる種々の添加剤を含むことができる:顔料、例えば炭酸カルシウム、タルク、カオリン、ベントナイトおよび二酸化チタン、染料、結合剤、例えばトウモロコシまたは小麦のでんぷん、植物性タンパク質、スチレン/ブタジエンコポリマー、ベルサチン(versatate)ポリマー、スチレン/アクリルコポリマーおよび酢酸ビニルホモポリマーおよびコポリマー、分散剤、例えば脂肪酸せっけんおよびポリ(アクリル酸)誘導体、疎水性改良剤、例えばワックス、防腐剤、粘度調整剤、例えばでんぷん、セルロース誘導体および大豆タンパク質およびこれらの混合物。
この組成物のpHは例えば5〜13にすることができる。
本発明組成物は紙または厚紙の表面処理、特に紙のサイジング、コーティングまたはフィニッシングで使用でき、紙に塗布することでコーティング紙への印刷を容易にし、紙により良い耐脂性または耐水性、他の物質に対する耐性を与えることができる。
本発明のさらに別の対象は、紙または厚紙の表面処理、特にコーティング、サイジングまたはフィニッシングでの上記組成物の使用にある。
変形例では、上記塩化コポリマーをポリマー界面活性剤として使用できる。特に、分散媒体中での重合、例えば直接重合および逆相乳化重合(一般にミニエマルション、マイクロエマルション)、直接重合および逆相懸濁重合および分散重合または沈殿重合を安定させるためのポリマー界面活性剤として使用できる。分散媒体中の各種重合方法の説明は下記文献を参照されたい。
Jean-Claude DanielおよびChristian Pichotによってまとめられた本「Les latex synthetiques. Elaboration-Proprietes-Applications」(合成ラテックス。製造−特性−応用)の第7章、Tec&Doc Lavoisier 2006 ISBN 2-7430-0471-9出版
本発明の新規な塩化コポリマーは、顔料、特にインク配合物の分散剤として、または、顔料の研磨(milling)助剤として、または、水性インク配合物用のアクリル結合剤の乳化重合合成における共界面活性剤としても用いられる。
本発明の新規な塩化コポリマーは、塗料、ワニス、その他のコーティングで用いる配合物、充填紙シートの製造およびグラウト、モルタルおよびコンクリートで、無機充填剤、例えば炭酸カルシウム、カオリン、二酸化チタンまたはセメント用の分散剤としても用いることができる。
本発明の新規な塩化コポリマーは、床用コーティングを製造する基剤としても有用である。床用コーティングは床、特にタイル張りの床に光沢および接着性を与え、形成した塗膜に機械強度を与える。
本発明は以下の実施例からより良く理解できよう。下記実施例は単に説明のためであり、本発明は下記実施例に限定されるものではなく、請求の範囲によって限定されるものである。
実施例1
UDETA(酸基の中和に対してわずかにモル過剰)を用いた水中でのSMAコポリマーの塩化
塩化する前のSMAコポリマーはスチレン:無水マレイン酸単位のモル比が1:1のSartomer SMA 1000 F生成物である。SMA 1000 Fの顆粒をすり鉢またはミルで粉砕して微粉にし、この粉末40gをガラス反応器内で360gの脱イオン水中に撹拌しながら分散する。このガラス反応器は加熱/冷却ジャケット、可変速撹拌器、温度計導入用および必要に応じて窒素のような気体の導入用管と加熱中の水分損失を制限する還流凝縮システムとを備えている。SMAは周囲温度では脱イオン水に溶けないので、最初に水中にSMA粉末の懸濁液が得られる。続いて、反応器の温度を90℃に上げ、純度が80重量%以上の38重量%のUDETAアミンを含む134gの水溶液を20分間かけて添加する。これは51.3gのUDETAアミンの添加に対応する。媒体を5時間、90℃に維持した後、温度を下げ、45℃で反応器を空にする。得られた生成物はpHが9.6で、16.5%の乾燥抽出物を含む、UDETAで塩化したわずかに濁ったSMA溶液である。
実施例2
本発明の塩化コポリマーの特性の評価
実施例1の塩化コポリマーの希釈水溶液の界面活性剤特性を測定するために、1重量%の塩化コポリマーを含む脱イオン水の水溶液を調製する。この溶液を0.8μmフィルタで濾過する。続いて、濾過した1%溶液を連続希釈して0.1重量%、0.05重量%、0.01重量%、0.001重量%の溶液を調製する。これらの溶液の表面張力を直径が20μmの針を備えたWindrop(登録商標)ソフトウェアで制御されたTracker(登録商標)ドロップ張力装置を用いて測定する。実施した測定の結果は[表1]に示す。
Figure 0005400060
この表から、実施例1の塩化コポリマーは両親媒性の特性と界面活性剤特性とが組み合わされた特性を示すことがわかる。従って、この塩化コポリマーは、紙または厚紙のシートにある種の疎水性を与えるのに有用であると同時に、その疎水性部分によって充填剤および顔料を良く分散することができ、紙を構成する(疎水性)セルロース繊維との良好な親和性を有する。
さらに、その界面活性剤特性によって、ラテックスのエマルションまたは懸濁液用の安定剤または共安定剤として使用を考えることができる。
実施例3
UDETA(酸基の半中和用の化学量論率)を用いた水中でのSMAコポリマーの塩化
塩化前のSMAコポリマーはスチレン:無水マレイン酸単位の比が1:1の製品Sartomer SMA 1000である。SMA 1000の顆粒をすり鉢またはミルで粉砕して微粉にし、この粉末40gをガラス反応器内で360gの脱イオン水中に撹拌しながら分散する。このガラス反応器は加熱/冷却ジャケット、可変速撹拌器、温度計導入用および必要に応じて窒素のような気体の導入管および加熱中の水分損失を制限する還流凝縮システムを備える。SMAは周囲温度では溶けないので、最初に水中にSMA粉末の懸濁液が得られる。続いて反応器の温度を91℃に上げ、純度が80重量%以上の38重量%のUDETAアミンを含む60.4gの水溶液を12分間で添加する。これは23gのUDETAアミンの添加に対応する。媒体を5.5時間、91℃に維持した後、温度を下げ、45℃で反応器を空にする。得られた生成物はpHが5.5で、12.9%の乾燥抽出物を含む、UDETAで塩化したわずかに濁ったSMA溶液である。
実施例4
本発明の塩化コポリマーの特性の評価
実施例2と同様に実施例3の塩化コポリマーの表面張力を種々の濃度で測定した。測定の結果は[表2]に示す。
Figure 0005400060
この表から、実施例3の塩化コポリマーは両親媒性の特性と界面活性剤特性とを組み合わせた特性を示すことがわかる。従って、この塩化コポリマーは、紙または厚紙のシートにある種の疎水性を与えるのに有用であると同時に、その疎水性部分によって充填剤および顔料を良く分散することができ、紙を構成する(疎水性)セルロース繊維との良好な親和性を有する。
さらに、その界面活性剤特性によって、ラテックスのエマルションまたは懸濁液用の安定剤または共安定剤としての使用を考えることができる。
実施例5
UDETA(酸基の半中和と完全中和の中間レベルを用いた水中でのSMAコポリマーの塩化
塩化前のSMAコポリマーはスチレン:無水マレイン酸単位の比が1:1の製品Sartomer SMA 1000である。SMA 1000の顆粒をすり鉢またはミルで粉砕して微粉にし、この粉末40gをガラス反応器内で360gの脱イオン水中に撹拌しながら分散する。このガラス反応器は加熱/冷却ジャケット、可変速撹拌器、温度計導入用および必要に応じて窒素のような気体の導入用ラインおよび加熱中の水分損失を制限する還流凝縮システムを備える。SMAは周囲温度では溶けないので、最初に水中にSMA粉末の懸濁液が得られる。続いて反応器の温度を91℃に上げ、純度が80重量%以上の40重量%のUDETAアミンを含む83.4gの水溶液を10分間で添加する。これは33.6gのUDETAアミンの添加に対応する。媒体を5.25時間、91℃に維持した後、温度を下げ、45℃で反応器を空にする。得られた生成物はpHが7.7、15%の乾燥抽出物を含む、UDETAで塩化したわずかに濁ったSMA溶液である。
実施例6
本発明の塩化コポリマーの特性の評価
実施例2と同様に実施例5の塩化コポリマーの表面張力を種々の濃度で測定した。測定の結果は[表3]に示す。
Figure 0005400060
この表から、実施例5の塩化コポリマーは両親媒性の特性と界面活性剤特性とを組み合わせた特性を示すことがわかる。従って、この塩化コポリマーは、紙または厚紙のシートにある種の疎水性を与えるのに有用であると同時に、その疎水性部分によって充填剤および顔料を良く分散することができ、紙を構成する(疎水性)セルロース繊維との良好な親和性を有する。
さらに、その界面活性剤特性によって、ラテックスのエマルションまたは懸濁液用の安定剤または共安定剤としての使用を考えることができる。
実施例7
UDETAを用いた水中でのスチレン、メタクリル酸およびアクリル酸コポリマーの塩化
2kgのラテックス、スチレン(40モル%)/メタクリル酸(50モル%)/アクリル酸(10モル%)コポリマーを含む乳白色の外観を有するポリマーの粒子の安定なコロイド懸濁液を、加熱/冷却ジャケット、可変速撹拌器、温度計導入用および必要に応じて窒素のような気体の導入用ラインおよび加熱中の水分損失を制限する還流凝縮システムを備えるガラス反応器に導入する。酸の全モル数は1.48である。反応器を撹拌しながら90℃に加熱する。90℃の温度で、純度が80重量%に近い25重量%のUDETAアミンを含む1100gの溶液を計量ポンプによって30分かけて添加する。その後、この系を90℃で5時間放置する。冷却後、得られた生成物は25%の乾燥抽出物を含む透明な黄色溶液である。得られた溶液は激しく撹拌すると発泡する。これによって、得られた塩化コポリマーの界面活性剤能力が証明される。
実施例8
本発明の塩化コポリマーの紙繊維に対する親和性の走査電子顕微鏡による観察
耐湿性を有するように処理した濾紙シートを実施例1に従って調製された塩化SMAコポリマーの水溶液に浸漬して含浸する。用いる紙の特徴は以下の通り:重量58.3g/m2、比体積2.14cm3/g、厚さ125μm、内部凝集力256J/m2。実施例1の塩化SMAコポリマーの溶液を予備希釈して濃度が5重量%の塩化SMAコポリマーを得る。この溶液に紙シートを数分間浸漬し、含浸浴から取り出し、空気乾燥する。乾燥したシートを、続いて、一定の温度および湿度(一般に23℃、湿度50%)で少なくとも半日コンディショニングする。対照として、添加剤を用いずに単純に水に浸漬した濾紙シートを乾燥し、コンディショニングする。
含浸の結果として、対照シート(添加剤なし)の特性および塩化SMAコポリマーを含浸したシートの特性は[表4]に示すように変わる。
Figure 0005400060
添付の図は、対照シート(添加剤なし)(左)および添加剤溶液を含浸したシート(右)の表面の、1000×の倍率の走査電子顕微鏡(SEM)で得られた、2つの写真である。添加剤はその良好な紙との親和性によって、繊維間で架橋しているように見える。
実施例9
カチオン保持剤と本発明の塩化コポリマーの存在下での紙シート(ハンドシート)の調製
この実施例では、本発明のポリマー添加剤を、保持剤として用いるカチオン性ポリマーの存在下で、紙(ハンドシート)の製造中に添加する。この保持剤は繊維の固体「マット」の形成を促進し、この「マット」による添加剤の保持を促進する。このマットが紙シートになる。このような保持剤の使用は当業者に周知である。分子量が100,000ダルトンに近いpolyDADMACまたはポリ(ジアリルジメチル塩化アンモニウム)を用いた。ハンドシートの製造では、製紙パルプとして50%の硬材繊維と、50%の軟材繊維とから成るパルプValley-beaten to 35°SRを用いた。
ハンドシートの形をしたシートの製造方法は以下の通り:(1)10g/lのパルプのサンプルを2リットル取る、(2)このサンプルを1分間撹拌した後、選択された量のpolyDADMACを添加し、この混合物をさらに2分間撹拌する、(3)この混合物を5分間放置する、(4)1分間撹拌した後、選択された量の本発明の塩化コポリマーを添加し、この混合物をさらに2分間撹拌する、(5)この混合物を5分間放置する、(6)調製物を2g/lの固体に希釈する、(7)ハンドシートを製造する。ハンドシートの製造は当業者に周知な操作であり、この操作はパルプの懸濁液を繊維と添加剤との「マット」用支持体の役目をする浴に通し、同時に、パルプからの水の大部分を通すことを含む。この「マット」はハンドシート機械でプレスされ、紙シートになる。ハンドシート(濡れた紙シート)を製造したら、80℃のフランクドライヤーで真空下に4分間乾燥し、最終の紙シートにする。
種々の量のpolyDADMACおよび実施例1〜7の塩化コポリマーを含むシートを調製した。対照として、添加剤を含まないシートと、polyDADMACのみを含むシートも調製した。これらのシートに対して内部凝集力試験を実施した。この試験でシート剥離エネルギーがわかる。この剥離エネルギーは、シートを13.8barの圧力で60秒間プレスすることによって測定し、結果はジュール/m2で表す。得られた結果は[表5]にまとめた。
Figure 0005400060
これらの結果から、本発明の塩化コポリマーが紙の凝集力にかなり影響を与えることは明らかである。polyDADMACはこの特性に実質的に全く影響を与えないので、このことがpolyDADMACに起因すると考えることはできない。
実施例8および9の結果は、イミダゾリドン型の会合型窒素複素環基を有するアミン(UDETA)によって塩化したコポリマーと紙との良好な親和性を示している。この良好な親和性は、紙の凝集力の大幅な増加によって分かる。これは通常の添加剤、例えば通常のSMAおよびスチレンと不飽和カルボン酸モノマーとのコポリマーでは得ることができない、予期しえないことである。

Claims (20)

  1. 少なくとも一種の環状無水物またはカルボン酸をベースにしたモノマーと少なくとも一種のスチレンをベースにしたモノマーとから得られるコポリマーを、少なくとも一種の窒素複素環基を含む少なくとも一種のアミンを用いて、水性媒体中で、塩にすることによって得られる塩化したコポリマーにおいて、
    上記アミンが下記の式(1)〜(6)
    Figure 0005400060
    (ここで、Aは酸素または硫黄原子またはNH基を表し、Xは一つまたは複数の窒素原子で中断されていてもよい、第1級または第2級アミン末端官能基を有する直鎖または分岐鎖のC 1 −C 10 アルキレン鎖を表し、YおよびRはそれぞれ第1級または第2級アミン官能基で終わる任意の鎖を表す)
    のいずれか一つに対応し、
    スチレンをベースにしたモノマーと、環状無水物をベースにしたまたはカルボン酸をベースにしたモノマーとのモル比が0.5:1〜29:1である
    ことを特徴とする塩化したコポリマー。
  2. Aが酸素原子を表す請求項1に記載のコポリマー
  3. 環状無水物をベースにしたモノマーが無水マレイン酸、無水イタコン酸、無水アクリル酸および無水メタクリル酸の中から選択される請求項1または2に記載のコポリマー。
  4. 環状無水物をベースにしたコポリマーが無水マレイン酸である請求項に記載のコポリマー。
  5. カルボン酸をベースにしたモノマーがアクリル酸、メタクリル酸およびイタコン酸の中から選択される請求項1に記載のコポリマー。
  6. スチレンをベースにしたモノマーがスチレンまたはα−メチルスチレンである請求項1〜のいずれか一項に記載のコポリマー。
  7. スチレンまたはα−メチルスチレン単位および無水マレイン酸単位のみを含む請求項1〜のいずれか一項に記載のコポリマー。
  8. スチレンまたはα−メチルスチレン単位および(メタ)アクリル酸単位のみを含む請求項1〜のいずれか一項に記載のコポリマー。
  9. スチレンをベースにしたモノマーと、環状無水物をベースにしたまたはカルボン酸をベースにしたモノマーとのモル比が0.6:1〜6:1である請求項1〜8のいずれか一項に記載のコポリマー
  10. 、Rがそれぞれ独立して直鎖または分岐鎖のC1−C10アルキレン鎖を表し、このアルキレン鎖は必要に応じて一つまたは複数の窒素原子で中断されていてもよく、第1級または第2級アミン末端官能基を有していてもよい請求項1〜のいずれか一項に記載のコポリマー。
  11. Xが第1級または第2級アミン末端官能基を有する直鎖C1−C6アルキレン鎖を表す請求項10に記載のコポリマー。
  12. Y鎖およびR鎖が第1級または第2級アミン基を表す請求項1〜のいずれか一項に記載のコポリマー。
  13. 上記アミンが1−(2−アミノエチル)イミダゾリジン−2−オン(UDETA)、1−(2−[(2−アミノエチル)アミノ]エチル)イミダゾリドン(UTETA)、1−[(2−{2−[(2−アミノエチル)アミノ]エチル}アミノ)エチル]イミダゾリドン(UTEPA)、3−アミノ−1H−1,2,4−トリアゾ−ル(3−ATA)および4−アミノ−1H−1,2,4−トリアゾ−ル(4−ATA)の中から選択される請求項1〜のいずれか一項に記載のコポリマー。
  14. 少なくとも一種の窒素複素環基を含むアミンと、コポリマーの環状無水物またはカルボン酸単位とのモル比が0.01〜10である請求項1〜13のいずれか一項に記載のコポリマー。
  15. 少なくとも一種の窒素複素環基を含むアミンと、コポリマーの環状無水物またはカルボン酸単位とのモル比が0.05〜2である請求項14に記載のコポリマー。
  16. 少なくとも一種の環状無水物をベースにしたまたはカルボン酸をベースにしたモノマーと少なくとも一種のスチレンをベースにしたモノマーとのコポリマーを、水性媒体中で、塩にする方法であって、コポリマーを少なくとも一種の窒素複素環基を含む少なくとも一種のアミンと接触させることを含む方法において、
    上記アミンが下記の式(1)〜(6)
    Figure 0005400060
    (ここで、Aは酸素または硫黄原子またはNH基を表し、Xは一つまたは複数の窒素原子で中断されていてもよい、第1級または第2級アミン末端官能基を有する直鎖または分岐鎖のC 1 −C 10 アルキレン鎖を表し、YおよびRはそれぞれ第1級または第2級アミン官能基を末端に有する任意の鎖を表す)
    のいずれか一つに対応し
    スチレンをベースにしたモノマーと、環状無水物をベースにしたまたはカルボン酸をベースにしたモノマーとのモル比が0.5:1〜29:1である
    ことを特徴とする方法。
  17. Aが酸素原子を表す請求項16に記載の方法
  18. 請求項1〜15のいずれか一項に記載の少なくとも一種の塩化コポリマーを含む組成物。
  19. 請求項18に記載の組成物の、紙または厚紙の表面処理での使用。
  20. 上記表面処理がコーティング、サイジングおよびフィニッシングでの請求項19に記載の組成物の使用
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