現在、光学式測距装置を用いて被測定物までの距離を求める方式として、三角測量方式がある。この三角測量方式を用いた光学式測距装置は、測距対象物に光スポットを照射して、その反射光を受光して三角測距により対象物までの距離を測定するものである。
具体的に、従来の最も一般的な三角測量方式を用いた光学式測距装置90では、図19に示すように、測距対象物91に光を照射する発光素子901と、発光素子901から照射した光を集光にする発光レンズ902と、測距対象物91からの反射光を集光する受光レンズ903と、受光レンズ903で集光した光を結像して光スポット904を形成する受光素子905と、が設けられている。
発光素子901は原点O(0,0)に配置され、発光レンズ902はA点(0,d)に配置され、受光レンズ903はC点(L,d)に配置され、原点Oの基線上であるX軸上に受光素子905が配されている。
受光素子905には、PSD(Positon Sensitive Detector)や、複数のPD(Photo Diode)が配置されたリニアセンサなどが用いられ、受光素子905上に照射されて結像された光スポット904の光重心位置を検出する。
この従来の光学式測距装置90では、発光素子901から測距対象物91に出射された光束921が、発光レンズ902により略平行光束922に集光される。この集光された平行光束922は、Y軸上に沿って射出され、測距対象物91上のB点(0,y)にスポット照射され、測距対象物91で拡散反射する。測距対象物91により拡散反射した光束923は受光レンズ903により集光される。集光された光は、受光素子905上のE点(L+l,0)に結像されて受光素子905上に光スポット904が形成される。
ここで、C点(受光レンズ903中心)を通るY軸に平行な線がX軸上の受光素子905と交差する点をF点(L,0)とするとき、三角形ABCと三角形FCEとは相似形となる。そこで、発光レンズ902から測距対象物までの距離yを、受光素子905により光スポット904の位置を検出して辺FE(距離l)の変位量を測定し、この距離lを用いて、距離y=距離L×距離d/距離lにより検出することができる。なお、これが最も一般的な三角測距の原理である。
ところで、たとえば測距対象物91において基線方向(X軸方向)に明暗の縞があるときや、測距対象物91の端部に光スポット(B点)が照射されるときは、受光素子905上に形成される光スポット904は、図19のようなスポット形状にはならず、歪んだ形状となる。その結果、受光素子905で検出される光重心位置は、図19のE点とは異なる位置(はずれた位置)になる。
この問題を解決するために、従来技術に特許文献1に記載の技術が提案されている。この特許文献1に記載の技術では、受光レンズと受光素子とから構成される受光系を2つ配置してそれぞれの受光素子で検出される変位量の差を演算することにより光重心の移動による測定誤差を解消している。
具体的に、特許文献1に記載の三角測量方式を用いた光学式測距装置93には、図20に示すように、測距対象物94に光を照射する発光素子931(IRED)と、発光素子931から照射した光を集光にする発光レンズ932と、測距対象物94(人)から反射した光を集光する2つの受光レンズ933,934と、2つの受光レンズ933,934でそれぞれ集光した光を結像して光スポット935,936を形成する2つの受光素子937,938と、が設けられている。なお、受光レンズ933と受光素子937とにより第1受光系が構成され、受光レンズ934と受光素子938とにより第2受光系が構成される。
この特許文献1に記載の光学式測距装置93では、図20に示すように、発光素子931から測距対象物94に出射された光束951は、発光レンズ932により略平行光束952に集光される。この集光された平行光束952は、発光レンズ932から距離yだけ離れた測距対象物94(人)にスポット照射され、測距対象物94で反射する。測距対象物94により反射した光束953,954は2つの受光レンズ933,934によりそれぞれ集光され、集光された光は、2つの受光レンズ933,934に対応した受光素子937,938上にそれぞれ照射され結像されて光スポット935,936が形成される。
なお、第1受光系における受光レンズ933中心位置から受光素子937上の光スポット935の位置までの基線方向の距離(変位量)をX1とし、第2受光系における受光レンズ934中心位置から受光素子938上の光スポット936の位置までの基線方向の距離(変位量)をX2とし、2つの受光レンズ933,934から2つの受光素子937,938までの距離をdとし、2つの受光レンズ933,934間の距離をBとすると、発光レンズ932から測距対象物94までの距離yを、この距離X1,距離X2を用いて、距離y=距離B×距離d/(距離X1−距離X2)により検出することができる。
この図20に示す特許文献1に記載の光学式測距装置93によれば、上記した図19に示す従来技術と異なり、測距対象物94に基線方向に明暗の縞があるときや、投光スポットが測距対象物94の一部しか照射しない(いわゆるスポット欠け)ときでも、光重心検出位置は2つの受光素子937,938で同様に起こるので、移動変化(X1−X2)の演算により、光重心位置のずれ量をキャンセルすることができ、その結果、誤測距を防止することができる。
ところで、図20に示す特許文献1に記載の光学式測距装置93では、受光レンズ933,934の中心位置を基準にして光スポット935,936位置までの距離(X1,X2)を検出して測距対象物までの距離を求めている。そのため、2つの受光レンズ933,934と、それぞれに対応した2つの受光素子937,938との位置関係が測距結果に大きく影響する。
そのため、光学式測距装置の製造時(具体的に、受光素子937,938のダイボンド時や受光レンズ933,934の実装時)において、第1受光系の受光素子937の基準位置と受光レンズ933の中心位置が誤差Δaだけ実装ズレが生じた時や、第2受光系の受光素子938の基準位置と受光レンズ934の中心位置が誤差Δbだけ実装ズレが生じた時、発光レンズ932から測距対象物94までの距離yの導出式は、距離y=距離B*距離d/((距離X1+誤差Δa)−(距離X2+誤差Δb))となる。
この発光レンズ932から測距対象物94までの距離yの導出式から明らかなように、測距値に誤差が生じることとなり、光学式測距装置93の量産時において個体差ばらつきが大きくなり、この対策として一品ずつ出力を検査して補正する回路等を入れる必要がある。
また、同様に、受光レンズ933,934の実装時にその組み立てばらつきにより受光レンズ933,934間の距離Bも、距離B+誤差ΔBだけズレが生じ、この時も測距値に誤差が生じる(導出式は省略)。
そこで、上記課題を解決するために、本発明は、測距値のばらつきの低減を図る光学式測距装置、及びそれを用いた電子機器を提供することを目的とする。
上記の目的を達成するため、本発明にかかる測距対象物までの距離を求める三角測量方式を用いた光学式測距装置は、測距対象物に光を照射する発光素子と、前記発光素子から照射した光を集光にする発光光学系と、測距対象物からの反射光を集光して2つの光束にする受光光学系と、前記受光光学系で集光した2つの光束から2つの光スポットを形成する受光素子と、が設けられ、前記受光光学系と前記発光光学系は、一体的に設けられ、前記受光光学系は、1つの受光レンズを有し、前記1つの受光レンズは、球面レンズもしくは非球面レンズを、その中心より基線方向に左右対称となるように一定間隔広げ、前記受光光学系における基線長をΔLとし、前記受光素子上における2つの光スポット間の距離を、距離Δxとし、前記受光光学系と前記受光素子との間の距離を、距離dとし、前記発光レンズから測距対象物までの距離を、前記基線長ΔLと、前記距離Δxと、前記距離dとにより測定することを特徴とする。
本発明によれば、光学式測距装置の測距値のばらつきの低減を図ることが可能となり、特に、遠距離まで測距可能な光学式測距装置の測距値のばらつきの低減を図ることが可能である。
具体的に、本発明によれば、前記発光素子と前記発光光学系と前記受光光学系と前記受光素子とが設けられ、前記受光光学系と前記発光光学系が一体的に設けられ、前記発光レンズから測距対象物までの距離を、前記基線長ΔLと前記距離Δxと前記距離dとにより測定するので、前記受光素子や前記発光素子のダイボンドや、一体化された前記受光光学系や前記発光光学系の実装ばらつきがなく、前記発光レンズから測距対象物までの距離を、個体ばらつきを無くして測定することが可能となる。このように、前記発光レンズから測距対象物までの距離を、個体ばらつき無く測定できるので、個体バラツキを無くすために従来必要であった検査工程での出力値を補正するような工程や、ランク分けといった付帯工程を削減することが可能となる。
その結果、本発明によれば、光学式測距装置の測距値のばらつきの低減を図ることが可能であるとともに、当該光学式測距装置の製造工程の簡略化も同時に図ることが可能となる。また、本発明によれば、前記受光光学系は1つの受光レンズを有し、前記1つの受光レンズは、球面レンズもしくは非球面レンズを、その中心より基線方向に左右対称となるように一定間隔広げるので、前記1つの受光レンズは、その中心より基線方向に引き伸ばされた形状をしているため、前記基線長ΔLを小さくすることが可能となり、その結果、当該光学式測距装置をさらに小型化することが可能となる。
なお、本発明と異なり、受光光学系と発光光学系が一体的に設けられていない上記した従来技術のような場合、受光光学系と発光光学系がそれぞれ独立して実装されるので、例えば受光光学系は設計位置より発光素子に対して右方向に、発光光学系は設計位置より受光素子に対して左方向にずれたとき、受光素子の受光面上に結像する反射光の光スポットの中心は設計どおりに配置された場合と比較して大きく異なり、測距値のばらつきが生じる。
前記構成において、前記発光素子と前記受光素子とは、一体的に設けられてもよい。
この場合、前記発光素子と前記受光素子とが一体的に設けられるので、前記発光素子と前記受光素子との位置精度が向上し、測距値のバラツキを抑えるのに好適である。
前記構成において、前記受光光学系と前記発光光学系と前記発光素子と前記受光素子とが、一体的に設けられてもよい。
この場合、前記受光光学系と前記発光光学系と前記発光素子と前記受光素子とが一体的に設けられるので、さらに前記受光光学系と前記発光光学系と前記発光素子と前記受光素子との位置精度が向上し、測距値のバラツキを抑えるのに好適である。
前記構成において、前記2つの光スポットが1つの前記受光素子に直接形成されてもよい。
この場合、前記2つの光スポットが1つの前記受光素子に直接形成されるので、当該光学式測距装置の小型化を図ることが可能となる。
前記構成において、前記基線方向に一定間隔広げた部分の少なくとも一部(例えば、表面)が、遮光性材料からなる遮光部で構成されてもよい。
この場合、前記基線方向に一定間隔広げた部分の少なくとも一部(例えば、表面)が前記遮光部で構成されるので、前記受光素子上に結像された2つの光スポットはより急峻なプロファイルを持つようになり、その結果、より高精度に前記受光素子上における2つの光スポットの位置を検出することが可能となる。
前記構成において、前記受光光学系は、1つの受光レンズを有し、前記1つの受光レンズは、2つの曲板部と、前記2つの曲板部に挟まれた平板部とからなり、前記1つの受光レンズは、その中心より基線方向に左右対称に成形されてもよい。
この場合、前記受光光学系は前記1つの受光レンズを有し、前記1つの受光レンズは、2つの曲板部と前記平板部とからなり、その中心より基線方向に左右対称に成形されるので、前記1つの受光レンズは、その中心より基線方向に引き伸ばされた形状をしているため、前記基線長ΔLを小さくすることが可能となり、その結果、当該光学式測距装置をさらに小型化することが可能となる。
前記構成において、前記平板部の少なくとも一部(例えば、表面)が、遮光性材料からなる遮光部で構成されてもよい。
この場合、前記平板部の少なくとも一部(例えば、表面)が前記遮光部で構成されるので、前記受光素子上に結像された2つの光スポットは、より急峻なプロファイルを持つようになり、その結果、より高精度に前記受光素子上における2つの光スポットの位置を検出することが可能となる。
前記構成において、前記受光レンズには、開口数(NA)の大きなレンズが用いられてもよい。
この場合、前記受光レンズにはNAの大きなレンズが用いられるので、当該光学式測距装置の低背化を図ることが可能であるとともに、遠距離までの測距が可能となる。
前記構成において、前記受光レンズの焦点距離をfとするとき、前記距離dは前記焦点距離fより小さくてもよい。
この場合、前記距離dは前記焦点距離fより小さいので、2つの光スポット間の前記距離Δxが前記基線長ΔLより大きくなり、測距精度を高くすることが可能である。
前記構成において、前記受光素子は、1つの受光部と、光スポットの位置を検出する信号処理部を有し、前記受光部は、複数の画素を有するラインセンサもしくはイメージセンサであってもよい。
この場合、前記受光素子は前記1つの受光部と前記信号処理部を有し、前記受光部は前記ラインセンサもしくは前記イメージセンサであるので、2つの光スポット間の前記距離Δxを前記1つの受光部で検出するため、当該光学式測距装置を小型化することが可能となる。
前記構成において、前記受光素子は、2つの受光部と、光スポットの位置を検出する信号処理部を有し、前記2つの受光部は、複数の画素を有するラインセンサもしくはイメージセンサであり、前記受光素子内の両サイド位置に前記2つの受光部を配置してもよい。
この場合、前記受光素子は前記2つの受光部と前記信号処理部を有し、前記2つの受光部は前記ラインセンサもしくは前記イメージセンサであり、前記受光素子内の両サイド位置に前記2つの受光部を配置するので、前記2つの受光部のそれぞれで2つの光スポットの位置を検出し、その間の前記距離Δxを求めることで、前記基線長ΔLや、光スポット間の前記距離Δxを大きく測定することが可能となり、その結果、測定の精度を向上させることができる。
前記構成において、前記信号処理部は、少なくとも前記2つの受光部の間に配置されてもよい。
この場合、前記信号処理部は前記2つの受光部の間に配置されるので、前記受光素子のチップ面積を最大限に活用することが可能となり、その結果、当該光学式測距装置の小型化を図ることが可能となる。
前記構成において、前記受光素子は、2つの光スポットの形状を比較して前記距離Δxを求めてもよい。
この場合、前記受光素子は、2つの光スポットの形状を比較して前記距離Δxを求めるので、測定し易い測距対象物だけでなく、縞模様の測距対象物や、測距対象物へ投光する光スポットの一部にしか測距対象物を照射しない場合でも正確に測距対象物までの距離を検出することが可能となる。
前記構成において、前記受光素子は、2つの受光部を有する位置検出素子(例えば、PSD)からなり、前記受光素子からの出力に基づいて前記2つの光スポットの位置を検出する信号処理部を有し、前記2つの光スポットの位置は時分割により求めてもよい。
この場合、前記受光素子は、前記2つの受光部を有する前記位置検出素子からなり、前記受光素子からの出力に基づいて前記2つの光スポットの位置を検出する信号処理部を有し、前記2つの光スポットの位置は時分割により求めるので、2つの光スポット間の距離Δxを検出するのに好適である。
上記の目的を達成するため、本発明にかかる電子機器は、上記した本発明にかかる光学式測距装置を搭載したことを特徴とする。
本発明によれば、上記した本発明にかかる光学式測距装置を搭載するので、上記した本発明にかかる光学式測距装置と同様の作用効果を有し、光学式測距装置の測距値のばらつきの低減を図ることが可能となり、特に、遠距離まで測距可能な光学式測距装置の測距値のばらつきの低減を図ることが可能となる。具体的に、本発明にかかる電子機器は、デジタルカメラや携帯機器のカメラのオートフォーカス用測距装置として用いるのに好適であり、またカーナビゲーションシステムの非接触スイッチで用いることにも好適である。
本発明によれば、光学式測距装置の測距値のばらつきの低減を図ることが可能となる。
以下、本発明の実施の形態(実施例1〜3)について図面を参照して説明する。
以下、本発明の実施例1にかかる光学式測距装置について、図1〜3を用いて説明する。
図1は本発明の実施例1(本実施例1)にかかる光学式測距装置1の概略平面図であり、図2は本実施例1にかかる光学式測距装置1の内部を公開した概略断面図であり、図3は本実施例1にかかる光学式測距装置1の光学測定原理図である。
本実施例1にかかる光学式測距装置1は、測距対象物7までの距離を求める三角測量方式を用い、電子機器(例えば図4,5に示す電子機器)に搭載されるものである。
この光学式測距装置1には、図1〜3に示すように、測距対象物7に光(光束81)を照射する発光素子2と、発光素子2から照射した光(光束81)を集光して平行光束82にする発光光学系3と、測距対象物7からの反射光(反射光束831,832)を集光して2つの平行光束841,842にする受光光学系4と、受光光学系4で集光した2つの平行光束841,842から2つの光スポット61,62を形成する受光素子5と、が設けられている。
発光素子2は、図3に示すように原点O(0,0)に配置され、この発光素子2にはLEDやLDが用いられている。なお、この発光素子2から発光光学系3(下記する発光レンズ31)までの距離を距離dとする。
受光素子5は、限定Oの基線上であるX軸上に配されている。この受光素子5には、下記するPSD(Positon Sensitive Detector)や、複数のPD(Photo Diode)が配置されたリニアセンサなどが用いられ、受光素子5上に照射された光スポット61,62(E点、F点)の光重心位置を検出する。なお、この受光素子5から受光光学系4(下記する受光レンズ41,42)までの距離を距離dとし、受光素子5上における2つの光スポット61,62間の距離を、距離Δxとする。
これら発光素子2と受光素子5とは、ともに基線方向(図1に示すX軸方向)に沿ったリードフレーム12上に一体的に設けられ(実装され)、金線により電気的接続がなされている。また、これら発光素子2と受光素子5とは、透光性樹脂13によりモールドされ、リードフレーム12上における発光素子2と受光素子5の位置が確実に固定される。
発光光学系3は、1つの発光レンズ31を有し、発光レンズ31はA点(0,d)に配置されている。
受光光学系4は、2つのNAの大きなレンズからなる受光レンズ41,42を有する。図3に示すように、受光レンズ41はC点(L,d)に配置され、受光レンズ42はD点(L+ΔL,d)に配置され、受光レンズ41,42はC点とD点の中点で左右対称の形状をしており、これら受光レンズ41,42間の距離を、基線長ΔLとする。また、2つの受光レンズ41,42は、基線方向(X軸方向)に沿って、基線長ΔLの1/2(ΔL/2)を中心に左右対称に配されている。
これら発光光学系3と受光光学系4とはケース11に備えられ、これら発光光学系3と受光光学系4はケース11に一体的に設けられている。
なお、ケース11では、図1,2に示すように、発光レンズ31と受光レンズ41,42に対応する部分が透光性樹脂で成形され、その他の箱状体の外周部分が遮光性樹脂で成形され、ケース11は2色成形により一体的に形成されている。また、ケース内部が一方(図2の図示下側)を開放とした中空状態となり、このケース内部に発光素子2と受光素子5を設けたリードフレーム12が配される。その結果、発光素子2と受光素子5と発光光学系3と受光光学系4とが一体的にケース11に設けられている。
上記した構成からなる光学式測距装置1を用いた発光レンズ31から測距対象物7までの距離yを、基線長ΔLと距離Δxと距離dとを用いて、距離y=ΔL*距離d/(Δx−ΔL)により測定して求める。
次に、この光学式測距装置1を用いて、三角測量方式による発光レンズ31から測距対象物7までの距離を求める。なお、ここでの説明には、光学式測距装置の測定原理を示す図3を用いる。
原点O(0,0)に配された発光素子2から測距対象物7に出射された光束81は、A点(0,d)に配された発光レンズ31により略平行光束82に集光される。この集光された平行光束82(出射光束)は、Y軸上を進み、測距対象物7上のB点(0,y)にスポット照射される。測距対象物7にスポット照射された平行光束82は、測距対象物7で拡散反射される。測距対象物7で拡散反射された反射光束831,832は、それぞれC点(L,d)に配された受光レンズ41と、D点(L+ΔL、d)に配された受光レンズ42とにより集光される。これら受光レンズ41,42により集光された平行光束841,842は、1つの受光素子5上にそれぞれ照射され結像されて、2つの光スポット61,62が1つの受光素子5上のE点(x,0)、F点(x+Δx、0)に直接形成される(光スポット像参照)。ここで、三角形BCDと三角形BEFとは相似形となるので、発光レンズ31から測距対象物7までの距離yを、基線長ΔLと距離Δxと距離dとを用いて、距離y=ΔL*距離d/(Δx−ΔL)により測定して求めることができる。
上記した発光レンズ31から測距対象物7までの距離yを求める式に関して、基線長ΔLは発光レンズ31および受光レンズ41,42を一体形成したケース11の金型精度で一定値となっている。また、距離dは、ケース11に、発光素子2と受光素子5とを設けたリードフレームを設けた際に決定する光学式測距装置1の既知の値である。そのため、受光素子5上の光スポット61,62間の距離Δxを測定することにより発光レンズ31から測距対象物7までの距離yを測定することができる。このように、上記した発光レンズ31から測距対象物7までの距離yを求める式に関して、実際に測定対象となるのは、受光素子5上の光スポット61,62間の距離Δxであり、E点のx座標値は含まれない。このため、受光素子5が発光素子2やリードフレーム12に対して実装される絶対位置(座標)は無関係である。
さらに、2つの光スポット61,62間の距離Δxは、それぞれ個別に実装された2つの受光素子で検出されずに、1つの受光素子5上に2つの光スポット61,62が形成されるので、測定される受光レンズ41,42間の基線長ΔLは受光素子5の測定精度によることになり、基線長ΔLの測定にリードフレーム12への受光素子5の実装精度は無関係である。
上記したように、本実施例1によれば、発光素子2、受光素子5のダイボンドによるリードフレーム12上における位置ばらつきや、発光レンズ31と受光レンズ41,42を設けたケース11の組み立て時の位置ばらつきを無視することができる。これに対し、例えば上記した従来技術では三角測距の原理より発光軸からの距離で定義されているので受光素子で測定される絶対位置が測定対象の一要素となっており、実装のばらつきが測距結果に与える影響を無視することができない。
また、本実施例1では受光レンズ41,42で集光された光束831,832(反射光束)は直接受光素子5上に光スポット61,62を形成する。そのため、本実施例1では、受光レンズ41,42の径が大きく焦点距離が短かい開口数(NA)の大きなレンズを用いることができる。その結果、本実施例によれば、平行光束841,842を直接受光素子5上に照射させることができるので、受光レンズ41,42を介して集められた光(平行光束841,842)を効率的に利用することができる。その結果、本実施例1にかかる光学式測距装置1によれば、遠距離まで測距可能な小型化、特に低背化させることができる。
また、本実施例1によれば、受光レンズ41,42はC点とD点の中点で左右対称の形状をしているため、光スポット像は略左右対称の形状となる。一般に、測距対象物7の形状や模様などにより光スポット61,62が一様でない場合、ピーク位置や光重心により距離を検出する測距には誤差を含むことになるが、本実施例1によれば、両光スポット61,62の位置の差で光学式測距装置1から測距対象物7までの距離を計算するため、もし光スポット61,62に変形等があったとしても両光スポット61,62は同じ形状をしているので両光スポット61,62の形状(光スポット像)の相関性を検出することにより容易に光学式測距装置1から測距対象物7までの距離を安定して得ることができる。
上記したように、本実施例1にかかる光学式測距装置1によれば、光学式測距装置1の測距値のばらつきの低減を図ることができ、特に、遠距離まで測距可能な光学式測距装置1の測距値のばらつきの低減を図ることができる。
具体的に、本実施例1によれば、発光素子2と発光光学系3と受光光学系4と受光素子5とが設けられ、受光光学系4と発光光学系3が一体的に設けられ、光学式測距装置1(具体的には発光レンズ31)から測距対象物7までの距離を、基線長ΔLと、距離Δxと、距離dとにより測定するので、受光素子5や発光素子2のダイボンドや、一体化された受光光学系4や発光光学系3の実装ばらつきがなく、発光レンズ31から測距対象物7までの距離を、個体ばらつきを無くして測定することができる。このように、発光レンズ31から測距対象物7までの距離を、個体ばらつき無く測定できるので、個体バラツキを無くすために従来必要であった検査工程での出力値を補正するような工程や、ランク分けといった付帯工程を削減することができる。
その結果、本実施例1によれば、光学式測距装置1の測距値のばらつきの低減を図ることができるとともに、光学式測距装置1の製造工程の簡略化も同時に図ることができる。
なお、本実施例1と異なり、受光光学系と発光光学系が一体的に設けられていない上記した従来技術のような場合、受光光学系と発光光学系がそれぞれ独立して実装されるので、例えば受光光学系は設計位置より発光素子に対して右方向に、発光光学系は設計位置より受光素子に対して左方向にずれたとき、受光素子の受光面上に結像する反射光の光スポットの中心は設計どおりに配置された場合と比較して大きく異なり、測距値のばらつきが生じる。
また、発光素子2と受光素子5とが一体的に設けられるので、発光素子2と受光素子5との位置精度が向上し、測距値のバラツキを抑えるのに好適である。
また、受光光学系4と発光光学系3と発光素子2と受光素子5とが一体的に設けられるので、さらに受光光学系4と発光光学系3と発光素子2と受光素子5との位置精度が向上し、測距値のバラツキを抑えるのに好適である。
また、2つの光スポット61,62が1つの受光素子5に直接形成されるので、光学式測距装置1の小型化を図ることが可能となる。
また、2つの受光レンズ41,42は、基線方向に沿ってΔL/2を中心に左右対称に配されるので、2つの受光レンズ41,42間の距離ΔLと、受光素子5上の2つの光スポット61,62の間の距離Δxを用いて測距対象物7までの距離を計算するのに好適である。
また、本実施例1にかかる光学式測距装置1は、電子機器に搭載されるので、電子機器は本実施例1にかかる光学式測距装置1と同様の作用効果を有する。具体的に、本実施例1にかかる電子機器は、図4に示すような携帯電話のカメラやデジタルカメラなどのカメラのオートフォーカス用測距装置として用いるのに好適である。また、本実施例1にかかる電子機器は、図5に示すようなカーナビゲーションシステムの非接触スイッチ(非接触コントローラ)として用い、例えば手(測距対象物7)を近づけると音量のボリューム操作を行うなどの各種操作を行うことにも好適である。
なお、本実施例1では、リードフレーム12上に発光素子2と受光素子5を搭載しているが、これに限定されるものではなく、発光素子2と受光素子5が一体的に設けられていれば、発光素子2と受光素子5は当該光学式測距装置1の他の部材(例えばケース11)に設けられても、同様の効果を有する。
次に、本実施例2にかかる光学式測距装置1を図面(図6〜8)を用いて説明する。なお、本実施例2にかかる光学式測距装置1は、上記した実施例1に対して、受光光学系4とケース11の形状が異なる。そこで、本実施例2では、上記した実施例1と異なる構成について説明し、同一の構成についての説明を省略する。そのため、同一構成による作用効果及び変形例は、上記した実施例1と同様の作用効果及び変形例を有する。
なお、図6は本実施例2にかかる光学式測距装置1の概略平面図である。図7は、本実施例2にかかる光学式測距装置1の内部を公開した概略断面図である。図8は、本実施例2にかかる光学式測距装置の光学測定原理図である。
本実施例2にかかる光学式測距装置1は、上記した実施例1にかかる光学式測距装置1と比較してさらに小型化したものである。
本実施例2にかかる受光光学系4は、球面レンズもしくは非球面レンズからなる1つの受光レンズ43で構成されている。
受光レンズ43は、図6〜8に示すように、1枚のレンズの中心線より基線方向(X軸方向)に真っ直ぐ引き伸ばした形状をしている。
この受光レンズ43は、曲率を有する曲板部である第1受光レンズ部431および第2受光レンズ部432と、これら第1受光レンズ部431および第2受光レンズ部432の間に挟まれた平板部433が配された構成となっている。なお、第1受光レンズ部431と第2受光レンズ部432と平板部433とは、同じ材料(透光性樹脂)で形成されている。
また、本実施例2にかかる受光光学系4のケース11には、発光レンズ31と受光レンズ43との間に遮光性材料からなる壁部14が設けられている。この壁部14は、ケース11の高さ方向(図6に示すY軸方向)に延設され、その先端が透光性樹脂13と直接接している。この壁部14により、発光素子2および受光素子5と、発光レンズ31および受光レンズ43(第1受光レンズ部431および第2受光レンズ部432)との高さ方向(図6のY軸方向)の位置決めを行うことができる。さらに、ケース11に壁部14を設けることで、発光素子2からの光がケース11内面で反射して直接受光素子5に入射する迷光を防ぐことができる。
本実施例2によれば、上記した実施例1にかかる光学式測距装置1の作用効果を有するだけでなく、以下に示す作用効果をさらに有する。
本実施例2では、受光光学系4は1つの受光レンズ43を有し、受光レンズ43は、その中心より基線方向に左右対称となるように一定間隔広げるので、受光レンズ43は、その中心より基線方向(X軸方向)に引き伸ばされた形状をしている。
また、本実施例2では、受光光学系4は1つの受光レンズ43を有し、受光レンズ43は、第1受光レンズ部431および第2受光レンズ部432と平板部433とからなり、その中心より基線方向に左右対称に成形されるので、受光レンズ43はその中心より基線方向(X軸方向)に引き伸ばされた形状をしている。
そのため、本実施例2によれば、基線長ΔLを小さくすることができ、その結果、光学式測距装置1をさらに小型化することができる。
具体的に、本実施例2によれば、第1受光レンズ部431と第2受光レンズ部432をレンズ形状とすることにより第1受光レンズ部431と第2受光レンズ部432を近接して配置することができ、測距装置を小型化することができる。より具体的には、図1に示す実施例1の受光レンズ41,42の半径をr、2つの受光レンズ41,42の端部(レンズエッジ)の間の距離をsとすると、本実施例1では、レンズ中心間距離である基線長ΔLは2r+sの距離が必要となる。これに対して、本実施例2によれば、図6〜8に示すように、第1受光レンズ部431と第2受光レンズ部432との間の距離sのみでよい。
なお、本実施例2では、第1受光レンズ部431と第2受光レンズ部432との間の部材を平板部433としているが、これに限定されるものではなく、左右対称の形状で受光素子5上での光スポット61,62が鏡像になるようなであれば、その形状は限定されない。
次に、本実施例3にかかる光学式測距装置1を図面(図9,10)を用いて説明する。なお、本実施例3にかかる光学式測距装置1は、上記した実施例2に対して、受光レンズ43の構成が異なる。そこで、本実施例3では、上記した実施例2と異なる構成について説明し、同一の構成についての説明を省略する。そのため、同一構成による作用効果及び変形例は、上記した実施例1,2と同様の作用効果及び変形例を有する。
なお、図9は本実施例3にかかる光学式測距装置1の概略平面図である。図10は、本実施例3にかかる光学式測距装置1の内部を公開した概略断面図である。
本実施例3にかかる受光光学系4は、球面レンズもしくは非球面レンズからなる1つの受光レンズ43で構成されている。この受光レンズ43は、図9,10に示すように、1枚のレンズの中心線より基線方向(X軸方向)に真っ直ぐ引き伸ばした形状をしている。そして、受光レンズ43は、曲率を有する曲板部である第1受光レンズ部431および第2受光レンズ部432と、これら第1受光レンズ部431および第2受光レンズ部432の間に挟まれた平板部44が配された構成となっている。
第1受光レンズ部431と第2受光レンズ部432とは透光性樹脂で形成され、平板部44は、遮光性樹脂で形成された遮光部で構成されている。
本実施例3によれば、上記した実施例1,2にかかる光学式測距装置1の作用効果を有するだけでなく、以下に示す作用効果をさらに有する。
本実施例2では、基線方向に一定間隔広げた部分である平板部44が遮光部で構成されるので、受光素子5上に結像された2つの光スポット61,62は、図11に示すように、より急峻なプロファイルを持つようになり、その結果、より高精度に受光素子5上における2つの光スポット61,62の位置を検出することができる。
具体的に、図11に示すように、第1受光レンズ部431と第2受光レンズ部432間の平板部44が遮光性樹脂で覆われている場合、平板部44に入射する光は受光素子5上に入射しない。そのため、第1受光レンズ部431により形成される光スポット61と第2受光レンズ部432により形成される光スポット62の間への光の入射を低減させることができる。これに対し、上記した実施例2にかかる平板部44が透光性樹脂で形成されている場合、平板部44に入射した光はそのまま直進して光スポット61,62間にオフセット成分Pcとして検出される。本実施例3によれば、実施例2にかかる平板部44によって生じるようなPc成分を遮光性樹脂による平板部44で除去できるため、光スポット61,62の形状がより明瞭にすることができ、その結果、光スポット61,62の位置をより高精度に検出することができる。
なお、本実施例3では、基線方向に一定間隔広げた部分である平板部44全体を遮光性樹脂で形成しているが、これは好適な例であり、これに限定されるものではなく、基線方向に一定間隔広げた部分である平板部44の表面など位置が、遮光性材料からなる遮光部で構成されていればよい。具体的に、平板部44の上部のみに遮光性樹脂が形成されてもよい。
また、本実施例3にかかる光学式測距装置1では、受光レンズ43の焦点距離をfとするとき、距離dは焦点距離fより小さい方が好ましい。
図12に、受光レンズ43の距離dと焦点距離fと距離Δxの関係を可変させたものを示す。
図12では、左から順に、距離d<焦点距離fの関係の光スポット像(光スポット61,62間の距離Δx1)、距離d=焦点距離fの関係の光スポット像(光スポット61,62間の距離Δx2)、距離d>焦点距離fの関係の光スポット像(光スポット61,62間の距離Δx3)を示している。
図12に示すように、焦点距離fより離れた位置に受光素子5があると、受光レンズ43で集光された光束が基線長ΔLより内側に入射するようになり、各光スポット61,62間の距離Δxは、Δx1>Δx2>Δx3となる。光スポット61,62間の距離Δxが大きいほど検出精度が高くなるので、距離d<焦点距離fの関係が好ましい。ただし、距離dが近すぎるとスポット光61,62の形状がブロード(所謂ピンボケ)になって検出精度は低下するため、焦点距離fに近く若干小さくなるように距離dを設定することが好ましい。
上記したように、受光レンズ43の焦点距離をfとするとき、距離dを焦点距離fより小さくすることで、2つの光スポット61,62間の距離Δxが基線長ΔLより大きくなり、測距精度を高くすることができる。
以上のような各実施例1〜3において、光スポット61,62間の距離Δxを求めるには、イメージセンサを用いて両光スポット61,62の形状を測定し、その形状の相関性よりその間の距離を求めることにより誤測距を防止することができる。
例えば、図13に示すように例えば基線方向に明暗縞のある測距対象物7のとき、光スポット61,62の形状(光スポット像)は、図14に示すように凹凸のある形状となる。このような光スポット像の場合、光重心やピーク位置を求めると反射率の高い領域からの像に偏るため、特に近距離に位置するときの誤差が大きくなってしまう。
そこで、上記した各実施例1〜3にかかる光学式測距装置1において、受光素子5は、2つの光スポット61,62の形状を比較して距離Δxを求めてもよい。この場合、測定し易い測距対象物7だけでなく、図13に示すような縞模様の測距対象物7や、測距対象物7へ投光する光スポット61,62の一部にしか測距対象物7を照射しない場合でも正確に測距対象物7までの距離を検出することができ、上記したような誤差は生じない。
次に、上記した各実施例1〜3において用いる受光素子5について、以下に図面を用いて詳説する。
各実施例1〜3において用いる受光素子5は、図15に示すように、1チップ内に複数の画素を有するラインセンサもしくはイメージセンサである1つの受光部51と、光スポット61,62の位置を検出する信号処理部52とにより形成されている。
上記したように、ケース11内において受光素子5と受光光学系4とは接近して配置され(例えば図2参照)、1チップ内の1つの受光部51に2つの光スポット61,62(光スポット像)が形成される。このように、受光素子5は1つの受光部51と信号処理部52を有し、受光部51はラインセンサもしくはイメージセンサであり、2つの光スポット61,62間の距離Δxを1つの受光部51で検出するため、受光素子5のサイズを小さく(小型化)することができ、その結果、光学式測距装置1を低コストで製造することができる。
なお、受光素子5は、図15に示す形態に限定されるものではなく、下記する図16に示す受光部を1チップ内で2つに分離する形態であってもよい。
図16に示す受光素子5は、複数の画素を有するラインセンサもしくはイメージセンサである2つの受光部53,54と、光スポット61,62の位置を検出する信号処理部55を有する。この受光素子5では、両サイド位置(平面視長手方向両端部)に、2つの受光部53,54が配置され、信号処理部55が、平面視T字状に形成され、2つの受光部53,54の間にその一部が配置されている。
各受光部53,54は、光スポット61,62がおさまるサイズであり、近距離から遠距離まで測距対象物7が移動するときの光スポット61,62の移動範囲を覆う大きさを有している。
この図16に示す受光素子5は、2つの受光部53,54と信号処理部55を有し、2つの受光部53,54はラインセンサもしくはイメージセンサであり、受光素子5内の両サイド位置に2つの受光部53,54をそれぞれ配置する。そのため、2つの受光部53,54のそれぞれで2つの光スポット61,62の位置を検出し、その間の距離Δxを求めので、基線長ΔLや、光スポット61,62間の距離Δxを大きく測定することができ、その結果、測定の精度を向上させることができる。
また、図16に示す受光素子5では、両受光部53,54の間のスペースは近距離から遠距離までの測距対象物の移動に対する光スポットの走査範囲外であるため、図16に示す受光素子5のように信号処理回路である信号処理部55を2つの受光部53,54の間に配置すると、受光素子5のチップ面積を最大限に活用することができ、その結果、光学式測距装置1の小型化を図ることができる。
また、図16に示す受光素子5によれば、2つの受光部53,54に分離されているが、1チップ内に形成されているため両受光部53,54の位置関係は半導体製造プロセスのアライメント精度で決まっており、その位置ばらつきは非常に小さく測距結果に影響はない。
また、上記した図15,16に示す形態と異なり、受光素子として、図17に示すようにチップの中心に位置する一つのアノードと両サイドに位置する2つのカソードを有する位置検出素子(PSD)を用いることもできる。
図17に示す受光素子5は、2つの受光部(第1受光部56,第2受光部57)を有するPSDからなり、受光素子5からの出力に基づいて2つの光スポット61,62の位置を検出する信号処理部を有し、2つの光スポット61,62の位置を時分割により求める。
具体的に、2つの光スポット61,62は、チップ中心のアノードの両サイドに照射されるようにする。第1時間帯において信号処理部が第1受光部56に切り替えられ、第1受光部56に照射された光スポット61に基づいて第1カソード581から電流I1が出力され、共通アノード582から電流I2が出力される。これら電流I1と電流I2により信号処理部で第1受光部56での光スポット61の位置が演算されて検出される。続いて第2時間帯において信号処理部が第2受光部57に切り替えられ、第1受光部56時と同様に、第2受光部57に照射された光スポット62に基づいて第2カソード583から電流I3が出力され、共通アノード582から電流I4が出力される。これら電流I3と電流I4により信号処理部で第2受光部57での光スポット62の位置が演算されて検出される。このようにして検出された2つの光スポット61,62の位置の差から、光学式測距装置1(発光レンズ31)から測距対象物7までの距離を検出することができる。
なお、上記した図17に示す受光素子5の形態では、PSDの表面電極がカソードで裏面が共通アノードである場合を説明した。しかしながら、極性が逆であってももちろん構わない。
さらに、上記した図17に示す受光素子5の形態では、両受光部(第1受光部56,第2受光部57)間のアノードを共通としたため(共通アノード582)、時分割により第1受光部56と第2受光部57の出力電流を区別したが、図18に示すように共通アノード582ではなく2つのアノード584,585に分割して同時にそれぞれの光スポット61,62に対する電流を出力するようにしてもよい。この場合は同時に出力できる代わりに信号処理部も2つ必要となるが、高速信号処理を行うことができ、応答速度が要求される場合に好適な実施形態となる。この図18に示す受光素子5の形態によれば、イメージセンサなどの複数の画素を有する受光素子を使用しなくて済むので安価に受光素子5を提供することができる。
上記したように、図17,18に示す受光素子5によれば、2つの受光部(第1受光部56,第2受光部57)を有するPSDからなり、受光素子5からの出力に基づいて2つの光スポット61,62の位置を検出する信号処理部を有し、2つの光スポット61,62の位置は時分割により求めるので、2つの光スポット61,62間の距離Δxを検出するのに好適である。
なお、本発明は、その精神や主旨または主要な特徴から逸脱することなく、他のいろいろな形で実施することができる。そのため、上述の実施例はあらゆる点で単なる例示にすぎず、限定的に解釈してはならない。本発明の範囲は特許請求の範囲によって示すものであって、明細書本文には、なんら拘束されない。さらに、特許請求の範囲の均等範囲に属する変形や変更は、全て本発明の範囲内のものである。