本発明は、ストレージシステムに関し、特に、ストレージシステムの給電部分に関する。
ストレージシステムの電源に関する技術として、例えば、特許文献1に開示の技術がある。特許文献1には、例えば、下記のことが開示されている。
図1に示すように、ストレージシステム500は、一以上の筺体501と、冗長化されている電源ユニット503A及び503Bとを有する。電源ユニット503A(503B)には、56V電源(AC電源からのAC電圧を56Vの直流電圧に変換するAC/DCコンバータ)504A(504B)が備えられている。筺体501には、図2に示すように、複数のキャニスタ502が設けられる。各キャニスタ502には、HDD(Hard Disk Drive)509と、12V電源(56Vの直流電圧を12Vの直流電圧に降圧するDC/DCコンバータ)507と、5V電源(56Vの直流電圧を5Vの直流電圧に降圧するDC/DCコンバータ)508、逆流防止素子(例えば、ダイオード)509が備えられる。
キャニスタ502内部では、一方の給電経路(以下、「第1経路」という)は、逆流防止素子509が1つ設けられ、他方の給電経路(以下、「第2経路」という)には、逆流防止素子509が2つ設けられている。通常は、一方の56V電源504Aから第1経路(主給電経路)を介して各キャニスタ502内の電源507及び508に電力が供給され、障害時には、他方の56V用電源504Bから第2経路を介して各キャニスタ502内の電源507及び508に電力が供給される。すなわち、キャニスタ502毎に、電源境界510が形成されるようになっている。ここで、「電源境界」とは、一以上の物理記憶デバイスで構成される記憶デバイスグループ毎に給電系統が備えられているシステムにおいて(図2の例によれば、記憶デバイスグループは一つのHDD509)、或る一つの給電系統における給電経路がショートしたことによりその給電系統に対応した記憶デバイスグループに給電されなくなっても他の給電系統の給電経路を介して他の記憶デバイスグループには給電が継続されるよう、給電系統間に「境界」を持った構成のことである。別の観点で言えば、各電源境界は、各給電系統に対応した各記憶デバイスグループである。
図1及び図2を参照して説明したストレージシステムによれば、HDD509毎に電源507(508)が必要になるので、多くの電源507(508)が必要になってしまう。
これを解決するための方法としては、複数のHDD509で12V電源507及び5V電源508をそれぞれ共通とする方法が考えられる。しかし、そうすると、特に、5Vに関しては、HDDの給電仕様(12V及び5Vの両方についての許容誤差範囲)を守ることが困難になる。なぜなら、一般に、5Vは12Vに比べて電圧が低いため、5Vの許容誤差範囲の方が12Vの許容誤差範囲より狭く、また、電源からHDDまでの電源ラインが長くなるほど、配線インピーダンスによる電圧降下等の影響により、電圧品質が低下しやすいからである。
このような問題は、HDDに代えて他種の物理記憶デバイス(例えばフラッシュメモリデバイス)が搭載された場合にも、生じ得る。
そこで、本発明の目的は、ストレージシステムに搭載する電源回路の数を抑え、且つ、各物理記憶デバイスの給電仕様を守れるようにすることにある。
ストレージシステムは、複数の物理記憶デバイスと、複数の物理記憶デバイスの電源とを有する。各物理記憶デバイスは、第1の電圧の入力と、第1の電圧より低い電圧である第2の電圧の入力とを必要とするデバイスである。電源は、冗長化された第1の電源回路と、冗長化された第2の電源回路とを有する。各第1の電源回路は、各物理記憶デバイスに入力される第1の電圧を出力する。各第2の電源回路は、複数の物理記憶デバイスのうちの、その第2の電源回路に対応した記憶デバイスグループ(複数の物理記憶デバイスのうちの2以上の物理記憶デバイス)に第2の電圧を出力する。各第2の電源回路が、第1の電源回路を有する回路基板から分離されている。
物理記憶デバイスは、例えば、HDD、光ディスク、不揮発メモリ(例えば、フラッシュメモリ、FeRAM(Ferro Electric Random Access Memory)、ReRAM(Resistive Random Access Memory)等)であっても良い。ストレージシステムには、複数種類の物理記憶デバイスが混在しても良い。
図1は、従来のストレージシステムの概要を示す。
図2は、従来のストレージシステムの給電系統の構成を示す。
図3は、本発明の第一の実施形態の概要を示す。
図4Aは、二つの記憶デバイスグループのそれぞれの給電系統が冗長化されていない給電部分の構成例を示す。
図4Bは、二つの記憶デバイスグループのそれぞれの給電系統が冗長化されている給電部分の構成例を示す。
図5Aは、二つの記憶デバイスグループのそれぞれが電源境界とされていない給電部分の構成例を示す。
図5Bは、二つの記憶デバイスグループのそれぞれが電源境界とされている給電部分の構成例を示す。
図6Aは、電源境界の数が2の場合の、最少の電源数で構成された給電部分の構成を示す。
図6Bは、電源境界の数が3の場合の、最少の電源数で構成された給電部分の構成を示す。
図7Aは、電源境界の数が4の場合の、最少の電源数で構成された給電部分の構成を示す。
図7Bは、電源境界の数が5の場合の、最少の電源数で構成された給電部分の構成を示す。
図8Aは、電源境界の数が6の場合の、最少の電源数で構成された給電部分の構成を示す。
図8Bは、電源境界の数が7の場合の、最少の電源数で構成された給電部分の構成を示す。
図9Aは、電源境界の数が8の場合の、最少の電源数で構成された給電部分の構成を示す。
図9Bは、電源境界の数が9の場合の、最少の電源数で構成された給電部分の構成を示す。
図10Aは、冗長化された電源が一つの記憶デバイスグループ毎に備えられる給電部分であって電源境界数が1の場合の給電部分の構成を示す。
図10Bは、冗長化された電源が一つの記憶デバイスグループ毎に備えられる給電部分であって電源境界数が2の場合の給電部分の構成を示す。
図11Aは、冗長化された電源が一つの記憶デバイスグループ毎に備えられる給電部分であって電源境界数が3の場合の給電部分の構成を示す。
図11Bは、冗長化された電源が一つの記憶デバイスグループ毎に備えられる給電部分であって電源境界数が4の場合の給電部分の構成を示す。
図12Aは、図10Bにおける電源B1及びB2が一つの電源B1にまとめられた場合の給電部分の構成を示す。
図12Bは、図11Aにおける電源B1〜B3が一つの電源B1にまとめられた場合の給電部分の構成を示す。
図13Aは、図11Bにおける電源B1〜B4が一つの電源B1にまとめられた場合の給電部分の構成を示す。
図13Bは、図12Bにおける電源R1〜R3が電源R1及びR2に減らされた場合の給電部分の構成を示す。
図14Aは、図13Aにおける電源R1〜R4が電源R1、R2及びR3に減らされた場合の給電部分の構成を示す。
図14Bは、図14Aにおける電源R1〜R3が電源R1及びR2に減らされた場合の給電部分の構成を示す。
図15は、第一の実施形態に係るストレージシステム300の構成の概要を示す。
図16は、ストレージシステム300が有する一つの筐体701における給電部分の構成の詳細を示す。
図17は、第一の実施形態での筐体701内の構成の一変形例を示す。
図18は、本発明の第二の実施形態に係るストレージシステムが有する一つの筐体801における給電部分の構成の詳細を示す。
図19は、本発明の第三の実施形態に係るストレージシステムが有する一つの筐体901における給電部分の構成の詳細を示す。
図20は、本発明の第四の実施形態に係るストレージシステム2001の給電部分の構成を示す。
図21は、3.5インチ筺体の正面図である。
図22は、2.5インチ筺体の正面図である。
図23Aは、HDD単位の消費電力を示す。図23Bは、筐体単位の消費電力を示す。
図24は、3.5インチ筐体での、HDD−PWRの冗長関係を示す。
図25は、2.5インチ筐体での、HDD−PWRの冗長関係を示す
図26は、図25に示した筐体での、AC−DC及びHDD−PWRからの配線を示す。
図27は、図25に示した筐体にRAIDグループを増設したことにより電源境界の数が奇数になったことを示す。
図28は、図27に示した筐体での、AC−DC及びHDD−PWRからの配線を示す。
図29は、図27に示した筐体にRAIDグループを増設したことにより電源境界の数が偶数になったことを示す。
図30は、HDD−PWR2023の構成を示す。
図31は、2つのHDD−PWR#1及び#2でHDD−PWRが冗長化されているときの給電を示す。
図32は、HDD−PWR#2で障害が生じたときの給電を示す。
図33は、サブチャネル回路3003Sの構成を示す。
図34は、コントローラの構成、及び、コントローラとHDDのAC−DCの共通化を示す。
図35は、本発明の第五の実施形態に係る、HDD−PWRへの配線を示す。
図36は、ホットスワップ回路3511を利用した電力遮断機構を示す。
図37は、本発明の第六の実施形態に係る、HDD及びHDD−PWRの搭載を示す。
以下、図面を参照して、本発明の幾つかの実施形態を説明する。なお、各実施形態では、各記憶デバイスグループは各電源境界とされるため、記憶デバイスグループを「電源境界」と言うことがある。また、以下の説明では、ストレージシステムが備える複数の記憶装置のそれぞれは、HDDであるとする。
図3は、本発明の第一の実施形態の概要を示す。
図3によれば、ストレージシステム300が有する複数の電源境界(記憶デバイスグループ)の一例として、4つの電源境界G1〜G4が示されている。電源境界の数が4である場合、ストレージシステム300には、二つの第一電源B1及びB2と、二つの第二電源R1及びR2が備えられる。
第一電源B1は、第一経路110A(及び110B)を介して電源境界G1(及びG2)に接続され、入力1からの電力に基づく電力を電源境界G1及びG2に供給する。第一電源B2は、第一経路110C(及び110D)を介して電源境界G3(及びG4)に接続され、入力1からの電力に基づく電力を電源境界G3及びG4に供給する。なお、第一経路110A、110B、110C及び110Dには、それぞれ、逆流防止素子(例えばダイオード)105A、105B、105C及び105Dが設けられている。また、入力1及び入力2は、上位の電源(例えば、商用電源、又は、AC/DCコンバータ)である。
第二電源R1は、第二経路120A(及び120C)を介して、第一経路110A(及び110C)に接続され、第一電源B1及び/又はB2の障害時に、電源境界G1及び/又はG3に給電を行うようになっている。第二電源R2は、第二経路120B(及び120D)を介して第一経路110B(及び110D)に接続され、第一電源B1及び/又はB2の障害時に、電源境界G2及び/又はG4に給電を行うようになっている。以上のように、第二電源R1及びR2と、第一電源B1とB2とによって、電源電界G1〜G4に対する電源の冗長化が実現されている(つまり、各電源境界G1〜G4について、給電系統が冗長化されている)。なお、第二経路120A、120B、120C及び120Dには、それぞれ、逆流防止素子106A、106B、106C及び106Dが設けられている。また、各第二経路を第一経路の途中に接続する構成に代えて、各電源境界に第一経路及び第二経路を個別に接続する構成が採用されてもよい。
図3に示した、ストレージシステム300の給電部分の一つの特徴は、下記の通りである。すなわち、或る一つの第一電源B1からの給電先となっている電源境界G1及びG3には、同一の第二電源R1(又はR2)からではなく、異なる第二電源R1及びR2からそれぞれ給電されるようになっている。同様に、別の一つの第一電源B2からの給電先となっている電源境界G2及びG4にも、異なる第二電源R1及びR2からそれぞれ給電されるようになっている。
また、電源B1、B2、R1及びR2のいずれからも4つの電源境界G1〜G4のうちの2つに電力が供給されるようになっているため、電源境界G1〜G4の各々に必要な電力を「1」とすると、電源B1、B2、R1及びR2のそれぞれに必要とされる電源容量は、給電先となる2つの電源境界に必要な電力の総和「2」となる。つまり、本実施形態では、電源B1、B2、R1及びR2の電源容量は同じである。
以上の構成により、各記憶デバイスグループについて冗長化された給電系統を実現し各記憶デバイスグループを電源境界とすることを、最少の電源数で実現することができる。
以下、記憶デバイスグループの給電系統を冗長化することと記憶デバイスグループを電源境界とすることについて説明する。
例えば、図4Aに示すように、電源境界の数が2であって、記憶デバイスグループG1及びG2のそれぞれの給電系統が冗長化されていない場合、電源B1と記憶デバイスグループG1とを結ぶ給電経路でグランドショート(GNDショート)が生じると(符号401参照)、電源B1からの給電が停止されるが(符号406参照)、別の電源B2から記憶デバイスグループG2への給電は継続される(符号402参照)。つまり、記憶デバイスグループG1及びG2はそれぞれ電源境界とされている。
しかし、入力1から電源B1及びB2への給電が停止されると(符号403参照)、電源B1から記憶デバイスグループG1への給電も電源B2から記憶デバイスグループG2への給電も停止されてしまう(符号404及び405参照)。また、電源B1及びB2の一方からの給電が停止されれば(例えば、符号406で示すように電源B1からの給電が停止されれば)、対象の記憶デバイスグループ(図4Aの例によれば記憶デバイスグループG1)への給電も停止されてしまう。
そこで、各記憶デバイスグループG1及びG2についての給電系統を冗長化するために、例えば図4Bに示す構成が考えられる。すなわち、記憶デバイスグループG1(及びG2)について、電源B1(B2)の他に別の電源R1(R2)が用意される。これにより、入力1の障害或いは電源B1及びB2の故障等により電源B1及びB2の両方からの給電が停止されても(符号414及び415参照)、電源R1(及びR2)から記憶デバイスグループG1(及びG2)に電力が供給される(符号416及び417参照)。なお、電源B1と記憶デバイスグループG1とを結ぶ給電経路でGNDショートが生じた場合は(符号411参照)、電源B1からだけでなく電源R1からの給電も停止されるが(符号412及び413参照)、電源B2(又はR2)から記憶デバイスグループG2への給電が維持される(符号419参照)。つまり、記憶デバイスグループG1及びG2は、それぞれ、図4Aに示した構成と同様に、電源境界となっている。
図4Bに示した、給電部分の構成によれば、各記憶デバイスグループG1及びG2について冗長化された給電系統を備えることと、各記憶デバイスグループG1及びG2を電源境界とすることの両方が実現される。また、電源B1、B2、R1及びR2に必要な電源容量は同じため、電源は1種類で良い。しかし、電源の数は、図4Aに示した構成における電源の数よりも多くなる。
一方、例えば、図5Aに示すように、電源境界の数が2であって、記憶デバイスグループG1及びG2のそれぞれについて冗長化された電源B1及びR1が備えられている場合、電源B1からの給電が停止されても(符号506参照)、電源R1から記憶デバイスグループG1及びG2のそれぞれに電力が供給される(符号507及び508参照)。しかし、電源B1と記憶デバイスグループG1とを結ぶ給電経路でGNDショートが生じると(符号501参照)、電源B1だけでなく電源R1からの給電も停止する(符号502及び503参照)。このため、記憶デバイスグループ2への給電が停止される(符号504参照)。つまり、記憶デバイスグループG1及びG2が電源境界になっていない。
そこで、記憶デバイスグループG1及びG2をそれぞれ電源境界とするために、例えば図5Bに示す構成が考えられる。すなわち、記憶デバイスグループG1及びG2についての共通の電源R1に代えて、別々の電源R1及びR2が採用される。これにより、電源B1と記憶デバイスグループG1とを結ぶ給電経路でGNDショートが生じて(符号511参照)、電源B1だけでなく電源R1からの給電が停止されても(符号512及び513参照)、電源R2から記憶デバイスグループG2へは電力が供給される(符号514参照)。なお、電源B1からの給電が停止されても(符号516参照)、電源R1(及びR2)から記憶デバイスグループG1(及びG2)へ電力が供給される(符号517(及び518)参照)。つまり、記憶デバイスグループG1及びG2の給電系統は、それぞれ、図5Aに示した構成と同様に、冗長化されている。
図5Bに示した、給電部分の構成によれば、各記憶デバイスグループG1及びG2について冗長化された給電系統を備えることと、各記憶デバイスグループG1及びG2を電源境界とすることの両方が実現される。そして、電源の数は、図4Bに示した構成における電源の数よりも少ない。しかし、電源B1に必要とされる電源容量と、電源R1及びR2のそれぞれに必要とされる電源容量は異なるので、複数種類の電源が必要となる。
本実施形態では、「給電系統の冗長性」と「電源境界」を両立させる場合、図3を参照して説明した特徴(或る一つの第一電源から給電される二以上の記憶デバイスグループに、異なる第二電源からそれぞれ給電されるような構成)によれば、最少の電源数は、以下の式(1)、
電源数=2×√q・・・・(1)
で表される。ここで、qは、2以上の整数であって、電源境界の数である。√qは、qの平方根である。2×√qの小数点以下は切り上げとされる。また、本実施形態では、各電源境界の給電系統は二重化されているため、√qの係数は“2”であるが、各電源境界の給電系統がn重化されていれば(nは2より大きな整数)、√qの係数はnである。
図6A〜図9Bを参照して、図3を参照して説明した特徴を採用した場合の、記憶デバイスグループの数と最少の電源数との関係を示す。なお、図6A〜図9Bにおいて、或る給電経路上の×マーク(電源境界(記憶デバイスグループ)の傍にある×マーク)は、GNDショートが生じたことを意味し、その他の給電経路上の○マークは、或る給電経路でGNDショートが生じても継続して給電されることを意味する。
以下の説明によれば、上記の特徴が採用された場合、最少の電源の数は、前述の(1)式の通りになることがわかる。
例えば、電源境界の数が2の場合には、図6Aに示す構成(図5Bに示した構成と同様の構成)が採用される。すなわち、第一電源B1から第一経路110A及び110Bを介して二つの電源境界G1及びG2にそれぞれ電力が供給される。それら二つの電源境界G1及びG2には、異なる第二電源R1及びR2から第二経路120A及び120Bを介してそれぞれ電力が供給されるようになっている。以上の構成により、電源境界の数が2の場合、最少の電源の数は3である。上記式(1)によれば、
2×√(電源境界数)
=2×√2
=約2.82
となり、小数点以下を切り上げれば、前述の通り、電源数の最小値は3となる。
電源境界の数が3の場合には、図6Bに示す構成が採用される。すなわち、第一電源B1から第一経路110A及び110Bを介して二つの電源境界G1及びG2にそれぞれ電力が供給される。それら二つの電源境界G1及びG2には、異なる第二電源R1及びR2から第二経路120A及び120Bを介してそれぞれ電力が供給されるようになっている。第一電源B2の給電先は一つの電源境界G2のみであるので、その電源境界G2には、一つの第二電源R1(又はR2)から第二経路120Cを介して給電される。以上の構成により、電源境界の数が3の場合、最少の電源の数は4である。上記式(1)によれば、
2×√(電源境界数)
=2×√3
=約3.46
となり、小数点以下を切り上げれば、前述の通り、電源数の最小値は4となる。
図3を参照して説明した特徴によれば(上記式(1)によれば)、電源境界の数が4以上の場合、最少の電源数は、電源境界の数以下になる。
例えば、電源境界の数が4の場合には、図7Aに示す構成が採用される。この構成に関しては、図3を参照して説明した通りである。上記式(1)によれば、
2×√(電源境界数)
=2×√4
=4
となる。
電源境界の数が5の場合には、図7Bに示す構成が採用される。すなわち、第一電源B1から第一経路110A、110B及び110Cを介して三つ電源境界G1、G2及びG3にそれぞれ電力が供給される。それら三つの電源境界G1、G2及びG3には、異なる第二電源R1、R2及びR3から第二経路120A、120B及び120Cを介してそれぞれ電力が供給されるようになっている。第二電源B2から第一経路110D及び110Eを介してそれぞれ給電される二つの電源境界G4及びG5には、異なる第二電源R1及びR2から第二経路120D及び120Eを介してそれぞれ給電される。以上の構成により、電源境界の数が5の場合、最少の電源の数は5である。上記式(1)によれば、
2×√(電源境界数)
=2×√5
=約4.47
となり、小数点以下を切り上げれば、前述の通り、電源数の最小値は5となる。
電源境界の数が6の場合には、図8Aに示す構成が採用される。すなわち、第一電源B1から第一経路110A、110B及び110Cを介して三つ電源境界G1、G2及びG3にそれぞれ電力が供給される。それら三つの電源境界G1、G2及びG3には、異なる第二電源R1、R2及びR3から第二経路120A、120B及び120Cを介してそれぞれ電力が供給されるようになっている。第二電源B2から第一経路110D、110E及び110Fを介してそれぞれ給電される三つ電源境界G4、G5及びG6には、異なる第二電源R1、R2及びR3から第二経路120D、120E及び120Fを介してそれぞれ給電される。以上の構成により、電源境界の数が6の場合、最少の電源の数は5である。上記式(1)によれば、
2×√(電源境界数)
=2×√6
=約4.89
となり、小数点以下を切り上げれば、前述の通り、電源数の最小値は5となる。
電源境界の数が7の場合には、図8Bに示す構成が採用される。つまり、電源境界の数が6の場合、最少の電源の数は5である。上記式(1)によれば、
2×√(電源境界数)
=2×√6
=約4.89
となり、小数点以下を切り上げれば、前述の通り、電源数の最小値は5となる。
電源境界の数が8の場合には、図9Aに示す構成が採用される。つまり、電源境界の数が8の場合、最少の電源の数は6である。上記式(1)によれば、
2×√(電源境界数)
=2×√8
=約5.66
となり、小数点以下を切り上げれば、前述の通り、電源数の最小値は6となる。
電源境界の数が9の場合には、図9Bに示す構成が採用される。つまり、電源境界の数が9の場合、最少の電源の数は6である。上記式(1)によれば、
2×√(電源境界数)
=2×√9
=6
となる。
以上、電源境界の数が2〜9の場合をそれぞれ例に採り、給電部分の構成を図6A〜図9Bに示した。
電源境界の数に応じて上述したような構成が採用される理由を、図10A〜図14Bを参照して説明する。なお、図10A〜図14Bにおいて、電源の傍に記載されている斜体且つ太字の数字は、電源境界に必要な電力を「1」とした場合の電源容量(保有電力量)を示す。
各記憶デバイスグループを電源境界とし且つ各記憶デバイスグループについての電源を冗長化するための最も簡単な方法は、電源境界の数が1つ増える都度に電源の数を2つ増やす方法である。
具体的には、例えば、図10Aに示すように、電源境界の数が1の場合、その一つの電源境界G1に対して、冗長化された電源B1及びR1が備えられる。図10Bに示すように、電源境界の数が2に増えた場合、増えた電源境界G2に対して、冗長化された電源B2及びR2が備えられる。図10Cに示すように、電源境界の数が3に増えた場合、増えた電源境界G3に対して、冗長化された電源B3及びR3が備えられる。図10Dに示すように、電源境界の数が4に増えた場合、増えた電源境界G4に対して、冗長化された電源B4及びR4が備えられる。
本実施形態の上述した一つの特徴によれば、第一電源からN本の第一経路を介してN個の電源境界に電力が供給され、それらN個の電源境界に、異なるN個の第二電源からN本の第二経路を介して電力が供給される構成となる(Nは2以上の整数)。また、第一電源と第二電源の入力が別の系統にされる。
このため、電源境界の数が2〜4の場合において、第一電源を一つにまとめ、その一つにまとめられた第一電源から全ての電源境界に電力が供給されるようにした場合、給電部分の構成は、図12A〜図13Aに示す通りとなる。すなわち、電源境界の数が2の場合には、図12Aに示すように、一つの第一電源B1から二つの電源境界G1及びG2に電力が供給され、それら二つの電源境界G1及びG2に、異なる二つの第二電源R1及びR2からそれぞれ電力が供給される。電源境界の数が3の場合には、図12Bに示すように、一つの第一電源B1から三つの電源境界G1〜G3に電力が供給され、それら三つの電源境界G1〜G3に、異なる三つの第二電源R1〜R3からそれぞれ電力が供給される。電源境界の数が4の場合には、図13Aに示すように、一つの第一電源B1から四つの電源境界G1〜G4に電力が供給され、それら四つの電源境界G1〜G4に、異なる四つの第二電源R1〜R4からそれぞれ電力が供給される。図12A〜図13Aに示した構成によれば、電源境界の数が2〜4のそれぞれにおいて、電源の数を、図10B〜図11Bに示した構成における電源の数よりも少なくすることができる。
図12A〜図13Aによれば、第二電源の必要とされる数は、一つの第一電源から供給される電力が経由する第一経路(一つの第一電源に対応した第一経路)の最大数である。このため、一つの第一電源に対応した第一経路の最大数を減らせれば、第二電源の数を減らすことができる。
以上の観点から、電源境界の数が3及び4の場合に関しては、下記の通りに、電源をまとめることができる。
すなわち、電源境界の数が3の場合、図13Bに示すように、第一電源B1に対応した第一経路の数が3から2に減らされ、それに伴い、第一電源B2が用意され、第一電源B2から一本の第一経路を介して電源境界G3へ給電されるようにする。これにより、第二電源の数を3から2に減らすことが可能となる。つまり、異なる第二電源R1及びR2から、それぞれ、第一電源B1からの給電先である電源境界G1及びG2に給電され、残りの電源境界G3には、第二電源R1から給電される。
電源境界の数が4の場合、図14Aに示すように、第一電源B1に対応した第一経路の数が4から3に減らされ、それに伴い、第一電源B2が用意され、第一電源B2から一本の第一経路を介して電源境界G4へ給電されるようにする。これにより、第二電源の数を4から3に減らすことが可能となる。つまり、異なる第二電源R1〜R3から、それぞれ、第一電源B1からの給電先である電源境界G1〜G3に電力が供給され、残りの電源境界G4には、第二電源R1から電力が供給される。
電源境界の数が4の場合、図14Bに示すように、更に電源をまとめることができる。すなわち、第一電源B1に対応した第一経路の数が3から2に減らされ、それに伴い、第一電源B2に対応した第一経路の数が、1から2に増やされる。第一電源B2から二本の第一経路を介して電源境界G3及びG4へ電力が供給されるようにする。これにより、第二電源の数を3から2に減らすことが可能となる。つまり、異なる第二電源R1及びR2から、それぞれ、第一電源B1からの給電先である電源境界G1及びG2に電力が供給され、残りの電源境界G3及びG4にも、それぞれ、異なる第二電源R1及びR2から電力が供給される。図14Bに示す構成によれば、電源の数が5から4に減ることになる。
なお、図14Bによれば、電源B1、B2、R1及びR2の電源容量は、それぞれの電源の給電先である2つの電源境界に必要な電力の和「2」である。つまり、電源B1、B2、R1及びR2の電源容量を同じにすることができる。このため、複数の記憶デバイスグループの電源が一種類で済む。
電源の数をなるべく少なくでき且つ一種類の電源で済むようにするために、上記式(1)において、電源境界の数qが、p2であることが望ましい(pは2以上の整数)。例えば、q=9の場合、給電部分の構成を図9Bに示した構成にすることができるが、その構成によれば、電源B1、B2、B3、R1、R2及びR2の電源容量は、電源境界に必要な電力を「1」とした場合、それぞれ「3」となる。つまり、電源境界G1〜G9についての電源が一種類で済む。
以下、第一の実施形態に係るストレージシステムの具体的な構成例を説明する。なお、以下の説明では、
図15は、第一の実施形態に係るストレージシステム300の構成の概要を示す。
ストレージシステム300は、一以上の筐体701で構成することができる。筐体701は、増設又は減設が可能である。各筐体701には、AC(交流)入力1及びAC入力2から給電される。AC入力1及び2は、それぞれ、例えば商用電源である。
図16は、ストレージシステム300が有する一つの筐体701における給電部分の構成の詳細を示す。
ストレージシステム300は、コントローラ(図示せず)と、複数のHDD702とを備える。一つの筐体701に、コントローラと複数のHDD702の全部又は一部とが備えられていても良いし、コントローラは無くても良い。コントローラは、図示しない外部装置(例えばホスト計算機又は他のストレージシステム)から、論理ボリュームを指定した入出力要求を受け、その入出力要求に従い、指定されている論理ボリュームの基になっているHDD702にデータを書き込む、又は、指定されている論理ボリュームの基になっているHDD702からデータを読み出す。論理ボリュームは、RAID(Redundant Array of Independent (or Inexpensive) Disks)グループ703を構成する全てのHDD702を基に形成される。RAIDグループは、ECC(Error Correcting Code)グループ又はパリティグループと呼ばれることがある。RAIDグループには、所定のRAIDレベルに従ってデータが記憶される。
一つの筐体701に、例えば、4つの電源境界(記憶デバイスグループ)G1〜G4が備えられている。各電源境界G1〜G4は、二以上のHDD702で構成されている。図16に示すように、異なる電源境界G1〜G4にそれぞれ含まれているHDD702で、RAIDグループ703が構成されている(図示の例では、例えば、いわゆる3D+1PのRAIDグループ703が構成されている)。言い換えれば、RAIDグループ703が、複数の電源境界G1〜G4に跨っている。なお、RAIDグループ703は、複数の筐体701に跨っていても良い(例えば、電源境界G1〜G4にそれぞれ含まれているHDDと、他の筐体701内の電源境界に含まれているHDDとでRAIDグループが構成されても良い)。
電源境界G1〜G4がそれぞれ有するHDDの数や、各HDDの消費電力は同じである。それ故、電源境界G1〜G4に必要とされる電力は同じである。
電源境界の数が4であり、図14Bに示した構成を採用するため、四つの電源ユニットU1〜U4が備えられる。なお、各電源ユニットU1〜U4内には、第一電源又は第二電源として、高電圧の電源と低電圧の電源のセット、具体的には、例えば、12V電源と5V電源のセットが設けられている。12V(ボルト)及び5Vは、HDDの一般的な要求電圧である。電源ユニットU1内の12V電源(及び5V電源)から、電源境界G1及びG2(具体的には、電源境界内の全てのHDD702)に給電され、それらの電源境界G1及びG2に、異なる電源ユニットU3及びU4内の12V電源(及び5V電源)から給電される。12V電源と5V電源のうちのいずれか一方が電源ユニットに無くても良い。
本実施形態では、前述したように、少なくとも上記式(1)で得られる数の電源(12V電源及び/又は5V電源)が用意される。各電源につき、1系統の入力と、1系統以上の給電経路が用意される。各給電経路には、逆流防止素子(例えばダイオード)が設けられる。そして、複数の電源が入力1系統(AC入力1)と入力2系統(AC入力2)に振り分けられ、各入力系統に接続された電源群ごとに、電源境界の数だけ給電経路(第一経路及び第二経路のそれぞれ)が備えられる。入力1系統からの電力に基づく電力を供給する、電源ユニットU1(U2)内の電源(12V電源及び5V電源のそれぞれ)からは、二本の第一経路を介して二つの電源境界に電力が供給され、それら二つの電源境界には、入力2系統からの電力に基づく電力を供給する、電源ユニットU3及びU4の電源(12V電源及び5V電源)からは、それぞれ二本の第二経路を介して電力が供給される。
本実施形態では、入力1系統及び入力2系統はAC入力のため、各電源ユニット内の電源はAC/DC(直流)電源(AC/DCコンバータ)である。なお、各電源ユニット内の電源の入力は、DC入力であっても良く、その場合には、各電源ユニット内の電源はDC/DC電源(DC/DCコンバータ)であっても良い。
図16に示した構成によれば、一つの筐体701内でRAIDグループが構成されている。このため、例えば、HDDの数が少ないストレージシステムにおいては、筐体701の数を最適にでき、以って、小規模のストレージシステムを実現することが期待できる。また、小規模構成であっても、マザーボードのショート障害等によるHDDの影響範囲(閉塞範囲)を制限でき、以って、信頼性の高いストレージシステムが期待できる。
また、図16に示した構成によれば、電源ユニット内の電源はAC/DC電源であり、別途DC/DC電源を有する必要が無い。このため、給電部分を安価にできるとともに、電力変換の回数が少なく故に電力ロスが少なくなることが期待できる。
また、図16に示した構成によれば、最低限の電源数で、各記憶デバイスグループについての電源の冗長化と所望の数の電源境界を構成することの両方を実現できる。具体的には、電源境界の数が4以上の場合には、それら両方を、電源境界の数以下の電源数で実現することができる。
以上が、第一の実施形態についての説明である。なお、一つの筐体701に存在する電源境界の数は、4に限らず、例えば、図17に示すように、8であっても良い。この場合、八つの電源境界G1〜G8のそれぞれに含まれるHDD702でRAIDグループが構成される。つまり、例えば、3D+1PのRAIDグループ703に代えて7D+1PのRAIDグループ703´が構成される。また、図9Aを参照した説明によれば、第一電源及び第二電源の総数は6個である。このため、図17に示すように、一つの筐体701´に六つの電源ユニットU1〜U6が備えられ、AC入力1からの電力を受ける一方の電源ユニットU1〜U3には、第一電源(12V電源と5V電源のセット)が備えられ、AC入力2からの電力を受ける他方の電力ユニットU4〜U6には、第二電源(12V電源と5V電源のセット)が備えられる。
以下、本発明の第二の実施形態を説明する。その際、第一の実施形態との相違点を主に説明し、第一の実施形態との共通点については説明を省略或いは簡略化する。
図18は、本発明の第二の実施形態に係るストレージシステムが有する一つの筐体801における給電部分の構成の詳細を示す。
図16に示した構成における電源ユニットU1〜U4に代えて、電源ユニットU11及びU22が採用されている。言い換えれば、二つの12V電源と二つの5V電源が一つの電源ユニットにまとめられている。これにより、電源ユニットの数を減らすことができ、以って、給電部分を安価に構成することが期待できる。
また、各電源ユニットU11及びU12では、各セット(12V電源と5V電源のセット)につき、高電圧電源である12V電源が低電圧電源である5V電源の上位に存在する。12V電源が、AC入力1(又はAC入力2)からのAC電圧を12VのDC電圧に変換するAC/DCコンバータである。5V電源が、12V電源からの12VのDC電圧を5VのDC電圧に降圧するDC/DCコンバータである。そのDC/DCコンバータは、例えば、非絶縁型のDC/DCコンバータである。これにより、給電部分をさらに安価に構成することが期待できる。
以下、本発明の第三の実施形態を説明する。その際、第二の実施形態との相違点を主に説明し、第二の実施形態との共通点については説明を省略或いは簡略化する。
図19は、本発明の第三の実施形態に係るストレージシステムが有する一つの筐体901における給電部分の構成の詳細を示す。
各電源ユニットU11及びU12内の電源からの給電先(記憶デバイス)として、HDDの他に、I/F制御回路1905A〜1905Dがある。各I/F制御回路1905A〜1905Dには、HDD702等の活線挿抜(ホットスワップ)において給電経路の電圧変動を抑制するための突入電流防止回路が設けられている。
また、本実施形態では、HDD702の活線挿抜においてHDD702内部に流入する突入電流を突入防止回路(例えば抵抗値)1901A〜1901Dによって制限することができる。このため、HDD702が挿入される際、コンタクトのシーケンスにより、突入防止回路1901Aが最初に接続されることになる。
以下、本発明の第四の実施形態を説明する。その際、第一の実施形態との相違点を主に説明し、第一の実施形態との共通点については説明を省略或いは簡略化する。なお、以下の説明では、xボルトの直流電圧を、「DCxV」と表記する。また、以下の説明では、HDDに必要な第1の電圧を「DC12V」とし、HDDに必要な第2の電圧を「DC5V」とする。
<第四の実施形態の概要>。
図20は、第四の実施形態に係るストレージシステム2001の給電部分の構成を示す。
ストレージシステム2001は、第1の電源ユニット2021と、第2の電源ユニット2023とを有する。
第1の電源ユニット2021は、二重化されている。第1の電源ユニット2021は、商用電源からのAC電圧(例えば200V)をDC12Vに変換するAC−DCコンバータを有する電源回路である。以下、一方の第1の電源ユニット2021を、「AC−DC#1」と表記し、他方の第1の電源ユニット2021を、「AC−DC#2」と表記する。AC−DC#1には、第1の商用電源AC1から交流電圧が入力され、AC−DC#2には、第2の商用電源AC2から交流電圧が入力される。なお、第1の電源ユニット2021の冗長度は、3以上であってよい。
AC−DC#1及び#2からのDC12Vは、各HDD2031の12V系と、各第2の電源ユニット2023とに供給される。
AC−DC#1及び#2がDC12Vを出力する電源ユニット(12V系電源回路)であるのに対し、第2の電源ユニット2023は、DC5Vを出力する電源ユニット(5V系電源回路)である。具体的には、第2の電源ユニット2023は、AC−DC#1又は#2からのDC12VをDC5Vに変換するDC−DCコンバータを有する電源回路である。第2の電源ユニット2023からのDC5Vは、HDD2023の5V系に供給される。そのため、以下、第2の電源ユニットを、「HDD−PWR」と表記する。
本実施形態では、HDD−PWR2023の冗長性を維持しつつ、HDD−PWR2023の数を電源境界の数以下に抑えることができる。図20の例によれば、電源境界の数は4であり(4つの電源境界G1〜G4があり)、HDD−PWR2023の数は4である(HDD−PWR#1〜#4)。1つの電源境界に、その電源境界に対応するHDD−PWR2023から給電されており(実線矢印)、そのHDD−PWR2023に障害が発生した場合に、別のHDD−PWR2023からの給電を受ける(点線矢印)。なお、HDD−PWR2023からの実線矢印と点線矢印の意味は、後の図26及び図28でも同じである。
本実施形態の第1の特徴によれば、商用電源からのAC電圧から、HDDが必要とするDC12Vが得られる。このため、図2を参照して説明した方法(商用電源からのAC電圧を一旦DC56Vに変換しその後でそのDC56VをDC12Vに変換する方法)に比べて、電力変換効率を高くすることができる。
本実施形態の第2の特徴によれば、5V電源回路(HDD−PWR)を有する回路基板が、12V電源回路(AC−DC)を有する回路基板から分離され、それぞれのHDD−PWRが、そのHDD−PWRからの給電先となる電源境界(後述のメインのDC5Vの供給先となる電源境界)の近傍に配置される。これにより、各HDDに高品質のDC5Vを供給することができる。具体的には、各HDD−PWRは、そのHDD−PWRから後述のメインのDC5Vが供給される電源境界にサブのDC5Vを供給する別のHDD−PWRよりも、その電源境界の近くに配置される(図21及び図22参照)。
本実施形態の第3の特徴によれば、HDD−PWRについて、第一の実施形態で説明した原理が適用されており、且つ、AC−DCは冗長化されている。これにより、第一の実施形態と同様に、図2を参照して説明したシステムよりも少ない12V電源回路及び5V電源回路で、電源境界を構成することができる。
本実施形態の第4の特徴によれば、商用電源からのAC電圧からDC12Vが生成され、そのDC12VからDC5Vが生成される。これは、3.5インチHDDと2.5インチHDDで別々に電源回路を設計しなくて済む(電源回路の共通化)という効果を奏する。以下、電源回路の共通化について説明する。
<電源回路の共通化>。
HDDは、DC12VとDC5Vを必要とするが、HDDの種類によって消費電力が異なる。HDD種類は、FC、SATA、SASといったインターフェイスの観点に従う種類もあれば、3.5インチ、2.5インチといったサイズの観点に従う種類もある。本実施形態では、HDD2031として、3.5インチHDDと2.5インチHDDの2種類がある。
本実施形態に係るストレージシステム2001は、3.5インチHDDが搭載される筺体(以下、3.5インチ筺体)と、2.5インチHDDが搭載される筺体(以下、2.5インチ筺体)の両方を有することができる。
図21は、3.5インチ筺体の正面図であり、図22は、2.5インチ筺体の正面図である。
図21及び図22によれば、1つの電源境界を構成するK個のHDDは(Kは2以上の整数)、密に配置される。例えば、K個のHDDは、p行×q列(=K)のマトリクス状に搭載されている(p及びqはいずれも自然数)。具体的には、3.5インチ筺体2101(図21)では、一つの電源境界が、2行×5列のHDDで構成されている。2.5インチ筺体2201(図22)では、一つの電源境界が、2行×4列のHDDで構成されている。筺体2101及び2201のどちらでも、電源境界毎に、HDD−PWRがHDDの近傍に配置されている(上述の第2の特徴)。これにより、一つの電源境界を構成するいずれのHDDにも高品質のDC5Vを供給することができる。なお、電源境界を構成するHDDの前述した数は、一例にすぎない。
また、図21及び図22によれば、第一の実施形態でも説明したが、異なる電源境界に属するHDDが一つのRAIDグループを構成する。例えば、図21によれば、3D+1PのRAIDグループは、太字及びアンダーラインで示すように、4つの電源境界が有する4つのHDD#00(00番の3.5インチHDD)で構成される。また、例えば、図22によれば、7D+1PのRAIDグループは、太字及びアンダーラインで示すように、8つの電源境界が有する8つのHDD#00(00番の2.5インチHDD)で構成される。なお、図21及び図22に示したRAIDグループ構成は、一例にすぎない。すなわち、例えば、3.5インチHDDが、7D+1Pの構成であって、2.5インチHDDが、3D+1Pの構成であっても良い。どちらのタイプのHDDであっても、RAIDグループは任意の構成で良い。
筺体2101及び2201のサイズは同じである。2.5インチHDDの方が、3.5インチHDDよりもサイズが小さいので、2.5インチHDDの最大数の方が、3.5インチHDDの最大数よりも多い。具体的には、例えば、図21によれば、一つの3.5インチ筺体に最大40台の3.5インチHDDを搭載することができ、図22によれば、一つの2.5インチ筺体に最大64台の2.5インチHDDを搭載することができる。
HDD単位の消費電力は、図23Aに例示する通りである。すなわち、12V系については、2.5インチHDDの消費電力が3.5インチHDDの消費電力より半分以上低く、5V系については、3.5インチHDDの消費電力と2.5インチHDDの消費電力は同じである。より具体的に言えば、12V系に関する電力比(3.5インチHDDの消費電力に対する2.5インチHDDの消費電力の比)は、0.45であり、5V系に関する電力比は、1である。
しかし、AC−DCもHDD−PWRも、一つのHDDだけに電力を供給するわけではなく、複数のHDDに電力を供給する。
そこで、筺体単位での消費電力を考察する。図23Aの例によれば、筺体単位での消費電力は、図23Bに示す通りとなる。すなわち、以下の(A)〜(C)の関係が得られる。この関係は、3.5インチ筺体のサイズと2.5インチ筺体のサイズが同じであれば、維持されると考えられる。
(A)一つの筺体に搭載されるHDDの数は、2.5インチ筺体の方が多いため、5V系に関する電力比が、1よりも大きくなる。
(B)しかし、合計電力(12V系に関する消費電力と5V系に関する消費電力の和)に関する電力は、3.5インチ筺体と2.5インチ筺体でほぼ同じである。
(C)また、12V系に関する電力比は、1を超えない。
この関係に着目し、本実施形態では、5V電源回路が、12V電源回路を有する回路基板から分離されて電源境界の数に応じて増減され、且つ、DC12VからDC5Vが生成される。このため、12V電源回路を、3.5インチ筺体及び2.5インチ筺体のどちらでも使用可能であり、5V電源回路は、3.5インチ筺体及び2.5インチ筺体の各々での電源境界毎に搭載される。つまり、3.5インチHDDと2.5インチHDDで別々に電源回路を設計しなくて済む。
以下、3.5インチ筺体及び2.5インチ筺体のそれぞれについて、HDD−PWRの冗長関係、及び、AC−DC及びHDD−PWRからの配線を説明する。
<3.5インチ筺体: HDD−PWRの冗長関係、及び、AC−DC及びHDD−PWRからの配線>。
1つの3.5インチ筺体に40台の3.5インチHDD(つまり最大数の3.5インチHDD)が搭載されているとする。この場合、図24に示す通り、1つの3.5インチ筺体に4つの電源境界が構築される(図24〜図29では、電源境界は破線枠で表される)。各電源境界は、10台のHDDで構成されている。具体的には、下記の通りである。
*冗長化されたAC−DC(AC−DC#1及び#2)が、全てのHDDに共通である。
*10台のHDD毎に、HDD−PWRが設けられている。
*HDD−PWRの冗長関係は、図24に太い矢印で示す通りである。すなわち、各HDD−PWRは、そのHDD−PWRに対応する10台のHDDに隣接する別の10台のHDDに対応する別のHDD−PWRから給電されなくなったときに、その別の10台のHDDに給電する。
図24の例によれば、1つの3.5インチ筺体についての、AC−DC及びHDD−PWRからの配線は、図20に示した通りとなる。
<2.5インチ筺体: HDD−PWRの冗長関係、及び、AC−DC及びHDD−PWRからの配線>。
1つの2.5インチ筺体に64台の2.5インチHDD(つまり最大数の2.5インチHDD)が搭載されているとする。この場合、図25に示す通り、1つの2.5インチ筺体に、8つの電源境界G1〜G8が構築される。各電源境界は、8台のHDDで構成されている。具体的には、下記の通りである。
*冗長化されたAC−DC(AC−DC#1及び#2)が、全てのHDDに共通である。
*8台のHDD毎に、HDD−PWRが設けられている。
*HDD−PWRの冗長関係は、図25に太い矢印で示す通りである。すなわち、各HDD−PWRは、そのHDD−PWRに対応する8台のHDDに隣接する別の8台のHDDに対応する別のHDD−PWRから給電されなくなったときに、その別の8台のHDDに給電する。すなわち、冗長関係を有するHDD−PWRに対応した電源境界セットが、2つの電源境界で構成されており、そのような電源境界セットが、4つある。
図25の例によれば、一つの電源境界セットについての、AC−DC及びHDD−PWRからの配線は、図26に示す通りとなる。
<HDDの増設と、HDD−PWRの冗長関係の変化>。
例えば、2.5インチ筺体が、8台の2.5インチHDDを8組より多く搭載することができるよう構成されているとする。つまり、2.5インチ筺体が、64台の2.5インチHDDよりも多くの2.5インチHDDを搭載できるよう構成されているとする。
HDDの増設(及び減設)は、所定の単位で行われてよい(例えば1台ずつ増設又は減設されてよい)。本実施形態では、増設(及び減設)は、RAIDグループ単位で行われる。なぜなら、RAIDグループに基づいて論理ボリュームが構築されるからである。
例えば、RAIDグループが4台のHDDで構成されている場合、その4台のHDDの各々は、異なる電源境界に存在する必要がある。このため、図25に示した状態からRAIDグループ単位の増設を行うと、少なくとも電源境界が4つ増えることになる。その一例を、図27に示す。図27によれば、4台のHDDで構成されるRAIDグループが8つ追加され、それ故、8台のHDDで構成された電源境界が4つ追加されている。
この場合の、HDD−PWRの冗長関係を、図27で太い矢印で示す。すなわち、冗長関係を有するHDD−PWRに対応した電源境界セットが、HDDの行方向に沿って並んだ3つの電源境界で構成されており(1つの電源境界は8台のHDDで構成されており)、そのような電源境界セットが、4つある。原則、各HDD−PWRは、そのHDD−PWRに対応する電源境界とその電源境界にHDDの行方向に隣接する電源境界とをカバーする。しかし、3つの電源境界のうちの一端にある電源境界に対応したHDD−PWR#3は、その一端の電源境界ではなく、1つの電源境界を隔てた、3つの電源境界のうちの他端にある電源境界を、カバーする。
図27の例によれば、1つの電源境界セットについての、AC−DC及びHDD−PWRからの配線は、図28に示す通りとなる。
さて、図27に示した状態から、さらに、図29に示すように、8つのRAIDグループが追加され、それ故、8つの電源境界が追加されたとする。この場合、HDD−PWRの冗長関係は、図29で太い矢印で示す通りとされ、それ故、1つの電源境界セットについての、AC−DC及びHDD−PWRからの配線は、図20に示した通りとはされず、図26に示した通りとされる。その理由は、次の通りである。
図20に示した通りとすると、1つの電源境界セットを構成する電源境界の数は4となり、4つの電源境界のうちの一端にある電源境界に対応したHDD−PWRが、2つの電源境界を隔てた、4つの電源境界のうちの他端にある電源境界を、カバーしなければならない。しかし、そうすると、一端の電源境界に対応したHDD−PWRから他端の電源境界を構成する各HDDまでの電源ラインが長くなり、それ故、高品質のDC5Vを供給することが困難になるからである。
以上、2.5インチ筺体にHDDを増設するケースを例に採って説明したが、2.5インチ筺体からHDDを減設するケースでは、図27〜図29を参照して説明した流れと逆の流れが行われる。また、2.5インチ筺体に対するHDDの増設及び減設に関する説明は、3.5インチ筺体に対するHDDの増設及び減設についても同様である。
以上のことから、本実施形態では、電源境界の数が3以上の奇数の場合、少なくとも1つのHDD−PWRが、そのHDD−PWRに対応した電源境界から少なくとも1つの電源境界を隔てた場所にある電源境界をカバーする。一方、電源境界の数が2以上の偶数の場合、各HDD−PWRは、そのHDD−PWRに対応した電源境界に隣接する電源境界をカバーする。つまり、電源境界の数が偶数であれば、少なくとも1つの電源境界を跨いだ電源境界にDC5Vを給電しなければならないといったことが生じない。
<HDD−PWRの構成>。
図30は、HDD−PWR2023の構成を示す。
HDD−PWR2023は、前述したように、DC12VをDC5V(厳密にはDC5.05V)に変換するDC−DCコンバータ3001を有する電源回路であり、5V系出力として2チャネルを有する。具体的には、HDD−PWR2023は、DC−DCコンバータ3001の他に、メインチャネル回路3003Mと、サブチャネル回路3003Sとを有する。つまり、回路3003M及び3003Sのいずれも、逆流防止回路であり、且つ、メインチャネルの方がサブチャネルよりも重み(出力電圧)が高い。
ここで、いずれの回路3003M及び3003Sも、通常のダイオードによる逆流防止回路ではなく、MOS−FET(Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor)3003M又は3003Sによる逆流防止回路である。
通常のダイオードによる逆流防止回路では、ダイオードのVf(順方向電圧降下)が、0.3Vから0.4V程度であり、ダイオード自身の発熱が大きい。例えば、電流を30A(アンペア)とした場合、Vf=0.3Vで、電力は9W(W=I×V=30×0.3)となり、発熱に対し対策が必要である。対策としては、ヒートシンクなどの放熱部品を取り付けることや、複数のダイオードを並列に接続することが考えられるが、いずれもコストアップが必至である。
また、それぞれのダイオードのVfは、ダイオードのVfは、ダイオードによって若干変動するが、任意に決めることが困難である。
それに対し、本実施形態に係るHDD−PWR2023によれば、各チャネル回路3003M及び3003Sが、MOS−FETによる逆流防止回路である。一例として、電流を30Aとして、MOS−FETのオン抵抗を2ミリオームとすると、消費電力は、1.8W(W=I2×R=30×30×0.02=1.8)と低い。
また、MOS−FETのゲートに供給する電圧を調整することにより、メインチャネル及びサブチャネルでのドロップ電圧(重み)を調整することができる。このため、重みの調整が容易である。本実施形態では、メインチャネル回路3003Mが、コンバータ3001からのDC5.05Vを10mV(ミリボルト)ドロップさせたDC5.04Vを出力し、サブチャネル回路3003Sが、コンバータ3001からのDC5.05Vを50mVドロップさせたDC5.0Vを出力する。この構成により、次のような切り替えが行われる。
例えば、図31に示すように、2つのHDD−PWR#1及び#2でHDD−PWRが冗長化されており、HDD−PWR#1が電源境界G1に対応し、HDD−PWR#2が電源境界G2に対応しているとする。この場合、HDD−PWR#1のメインチャネル回路#11から電源境界G1にDC5.04Vが供給され、HDD−PWR#2のメインチャネル回路#21から電源境界G2にDC5.04Vが供給される。
ここで、図32に示すように、HDD−PWR#2に障害が発生したときは、電源境界G2には、HDD−PWR#2からのDC5.04Vに代えて、HDD−PWR#のサブチャネル回路#21からのDC5.0Vが供給される。
<メインチャネル回路及びサブチャネル回路の構成>。
いずれのHDD−PWRについても、同じ構成の逆流防止回路を、メインチャネル回路3003M及びサブチャネル回路3003Sのどちらにも採用することができる。つまり、回路3003M及び3003Sの構成を同じにすることができる。以下、サブチャネル回路3003Sを例に採り、チャネル回路の構成を説明する。
図33は、サブチャネル回路3003Sの構成を示す。
回路3003Sは、MOS−FET3011Sの他に、オペアンプ3301と、無効回路3303と、重み付け設定用抵抗R5とを有する。
MOS−FET3011Sのソースは、DC−DCコンバータ3001に接続されている。MOS−FET3011Sのドレインは、電源境界側(具体的には、例えば、電源境界を構成する各HDDが接続されるバックボード)に接続されている。
オペアンプの第1の入力端子には、MOS−FET3011Sのソース側にかかっている電圧(ソース電圧)V1に基づく電圧V1´を表す信号が入力される。オペアンプの第2の入力端子には、MOS−FET3011Sのドレイン側にかかっている電圧(ドレイン電圧)V2に基づく電圧V2´を表す信号が入力される。オペアンプ3301の出力端子が、MOS−FET3011Sのゲートに接続されている。オペアンプ3301が起動するまでの間、無効回路3303によって、MOS−FET3011Sのゲートが遮断される。
前述した説明によれば、MOS−FET3011Sのドレイン−ソース間電圧VDSが0Vより大きく(ドレイン電圧V2とソース電圧V1に差が生じ)、且つ、VDSが一定になるようにすることが望まれる。前述の例によれば、このサブチャネル回路3003Sでは、VDS=50mVになるようにすることが望まれる(メインチャネル回路3003Mでは、VDS=10mVになるようにすることが望まれる)。しかし、オペアンプ3301の入力端子間には、イマジナリーショート(仮想接地)になるように制御が働く。つまり、ソース電圧V1がドレイン電圧V2より高くても、V1´=V2´になるように制御が働く。そこで、電圧V1´と電圧V2´に差が出るようにするために、重み設定部材が設けられる。本実施例では、重み設定部材として抵抗R5が採用されている。具体的には、抵抗R5が無い場合、抵抗R1、R2、R3及びR4により、オペアンプ3011の分圧比は等しい(例えば、抵抗R1、R2、R3及びR4の値は同じである)。しかし、この回路3003Sに抵抗R5が挿入され、それにより、オペアンプ3011の分圧比が変わり、V1´とV2´との差が生じ、ソースードレイン間電圧VDSが生じる。抵抗R5の値は、所望のVDSが得られるような値(VDS(ドロップ電圧)の大きさに応じた値)である。
以上の構成により、オペアンプ3301は、ソース電圧V1がドレイン電圧V2よりも高い場合、VDSが一定になるように、ゲート電圧を調整する。この回路3003Sでは、50mVのドロップが行われるので、VDSは50mVである。一方、メインチャネル回路3003Mでは、VDSは10mVである。このように、本実施例では、チャネル回路3003S及び3003Mの構成は同じであるが、重み設定部材としての抵抗の大きさが異なっていることで、回路3003S及び3003Mからそれぞれ出力される電圧の高さが異なる。
なお、ドレイン電圧V2がソース電圧V1よりも高い場合、電圧V1´と電圧V2´の関係が崩れ、オペアンプ3301は、MOS−FET3011Sをターンオフする。つまり、この回路3003Sでは、VDSが、オペアンプ3301で監視され、VDSが一定になるようフィードバックが行われる。ドレイン側(バックボード側)に高い電圧がかかると、瞬時に、MOF−FET3011Sがオフ状態とされる。これにより、逆流が防止される。
MOS−FETがオン状態であるときの抵抗(オーム)は低い。例えば、MOS−FETのオン抵抗を2mオームとし、電流を30Aとした場合、MOS−FET3011Sの消費電力は、1.8W(W=I2×R=30×30×0.02=1.8)程度である。つまり、逆流防止を低損失で行うことができる。なお、仮に、逆流防止をショットキバリアダイオードにより実現する場合には、ダイオードをVf=0.3Vとし、電流を30Aとすると、消費電力は、9W(30×0.3=9)になり、それ故、ヒートシンク無しでの運用は困難であり給電損失も大きいと考えられる。
以上、上述したHDD−PWR2023によれば、DC12VをDC5.05Vに変換するDC−DCコンバータ3001の後段(下流側)に、複数のチャネル回路(逆流防止回路)が備えられ、各チャネル回路は、MOS−FETを有する。そして、複数のチャネル回路におけるMOS−FETのドレイン−ソース間電圧VDSを違えることで、チャネル回路の重み(ドロップする電圧の値)を違えることができる。つまり、メイン電圧を供給するメインチャネル回路3003Mと、メイン電圧よりも低い電圧であるサブ電圧を供給するサブチャネル回路3003Sとを生成することができる。メイン電圧は、HDD−PWR2023に対応する電源境界に供給される。サブ電圧は、別の電源境界に対応する別のHDD−PWRからメイン電圧が供給されている間は、そのメイン電圧の電源ラインを介さず、その別のHDD−PWRからメイン電圧が供給されなくなったときに、その電源ラインを介してその別の電源境界に供給される。
さらに、HDD−PWR2023は、メイン電圧及びサブ電圧を作る機能に加えて、逆流防止機能も有する。具体的には、バックボード過電圧が生じた場合には、MOS−FETがオフ状態とされ、他の電源境界への影響もない。
<コントローラの電源回路とHDDの12V電源回路との共通化>。
前述したように、AC−DC2021とHDD−PWR2023は互いに分離されている。一方、コントローラはDC12Vを必要とする。そこで、本実施形態では、HDDの12V電源回路であるAC−DC2021が、コントローラの電源回路としても使用される。具体的には、例えば、コントローラは、図34に示すように、FE−IF(フロントエンドインターフェイス)3401と、BE−IF(バックエンドインターフェイス)3402と、SW(スイッチ)3403と、CM−PK(キャッシュメモリパッケージ)3404と、MP−PK(マイクロプロセッサパッケージ)3405とを有する。各要素3401〜3405には、冗長化されているAC−DC(AC−DC#1及び#2)からDC12Vが供給される。なお、各要素の説明は、次の通りである。
*FE−IF3401は、ホスト3411に接続されるインターフェイス装置である。FE−IF3401は、ホスト3411から、I/Oコマンド(ライトコマンド又はリードコマンド)を受信し、受信したI/Oコマンドを、MP−PK3405に転送する。
*BE−IF3402は、HDD2031に接続されるインターフェイス装置である。BE−IF3402は、HDD2031からデータを読み出してCM−PK3404に転送したり、CM−PK3404からのデータをHDD2031に書込んだりする。
*MP−PK3405は、一又は複数のMP(マイクロプロセッサ)を有する装置である。MPは、FE−IF3401からのI/Oコマンドを処理する。
*SW3403に、複数のパッケージ、すなわち、FE−IF3401、BE−IF3402、CM−PK3404及びMP−PK3405が接続されている。SW3403は、PK(パッケージ)間の接続を制御する。
*CM−PK3404は、揮発性メモリ及び/又は不揮発性メモリを有し、HDD2031に読み書きされるデータを一時記憶する。
以上が、第四の実施形態についての説明である。
以下、本発明の第五の実施形態を説明する。その際、第四の実施形態との相違点を主に説明し、第四の実施形態との共通点については説明を省略或いは簡略化する(これは、後の第六の実施形態についても同様である)。
図35は、本発明の第五の実施形態に係る、HDD−PWRへの配線を示す。
本実施形態では、AC−DCとHDD−PWR内のDC−DCコンバータ3001との間にホットスワップ回路3511が設けられている。図35の例によれば、ホットスワップ回路3511は、HDD−PWR3501に設けられているがHDD−PWR3501の外にあっても良い。
図36は、ホットスワップ回路3511を利用した電力遮断機構を示す。
AC−DCとDC−DCコンバータ3001との間に、直列に接続された抵抗3601とMOS−FET3602が介在する。MOS−FET3602のソースが抵抗3601の一端に接続され、MOS−FET3602のドレインがDC−DCコンバータ3001の入力端子に接続され、MOS−FET3602のゲートが、ホットスワップ回路3511に接続される。ホットスワップ回路3511は、抵抗3601の両端に接続されている。
ホットスワップ回路3511は、抵抗3601を流れる電流を測定する。ホットスワップ回路3511は、その電流が或る閾値以上になった場合、MOS−FET3602をオフ状態にする。これによりDC−DCコンバータ3001の入力が遮断される。
ホットスワップ回路3511では、電流測定の誤差が遮断性能に影響するものの、回路部品の品質のバラツキの影響が少ない。また、MOS−FET3602をオフ状態にすることで電源ラインを遮断するため、即断性能が高い。なお、障害発生時の電力遮断の方法として、ヒューズを用いる方法が考えられるが、ヒューズは、溶断するまでの時間と電流が反比例の関係にあり、且つ、部品バラツキによる影響が大きい。このため、ヒューズは、電力遮断素子として制御しにくい。このため、本実施形態のように、ホットスワップ回路により電力遮断を実現することが好ましい。
以上が、第五の実施形態についての説明である。なお、MOS−FET3602に代えて他種のスイッチング素子が採用されてもよい。
図37は、本発明の第六の実施形態に係る、HDD及びHDD−PWRの搭載を示す。
第四及び第五の実施形態では、3.5インチ筺体も2.5インチ筺体もラックであり、HDD2031は、フロントから搭載される。
それに対し、本実施形態では、3.5インチ筺体及び2.5インチ筺体のうちの少なくとも一方が、ラックではなく、HDDドロワ3701を有する筺体である。この筺体によれば、HDDの増設のために、HDDドロワ3701が引き出され、その後に、HDD2301が下方向へ挿入されドロワ3701が有するコネクタに接続される、又は、HDD2301が上方向へドロワ3701から引き抜かれる。
この筺体によれば、ドロワ3701内のHDDは、フロントからリアへと流れる空気で冷却される。
そこで、本実施形態では、ドロワ3701内の所定の位置に、そのドロワ3701に搭載されるHDD又はHDDユニット(例えば、HDDを収納したキャニスタ)と同じサイズの電源ユニット(HDD−PWRを有する電源ユニット)3711が取り付けられる。具体的には、HDD又はHDDユニットの並び(行又は列)における所定の位置に、電源ユニット3711が取り付けられる。これにより、筐体のフロント側から筐体のリア側への空気の流れが妨げられない。
なお、電源ユニット3711は、その電源ユニット3711に対応した電源境界を構成するHDDの近傍に配置されることが好ましい。
また、第六の実施形態のように、電源ユニット3711がHDDユニット群が配置されるスペース内のいずれかの場所に配置されることは、第四及び第五の実施形態の少なくとも1つで行われても良い。
以上、本発明の好適な実施形態を説明したが、本発明は、これらの実施形態に限定されるものでなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることはいうまでもない。
例えば、第四〜第六の実施形態において、DC12VからDC5Vが得られることに代えて、商用電源からのAC電圧からDC5Vが得られてもよい(つまり、5V系電源回路がAC−DCであっても良い)。
また、例えば、HDD−PWR2023から電源境界への給電については、図20に示す給電方法に代えて、第一の実施形態で説明した原理に従う給電が適用されても良い。つまり、第四〜第六の実施形態の少なくとも1つにおいて、第一〜第三の実施形態に従う給電方法が採用されてもよい。例えば、図7Aにおける電源B1及びB2が、図20におけるHDD−PWR#1及び#2であって、図7Aにおける電源R1及びR2が、図20におけるHDD−PWR#3及び#4であっても良い。
また、例えば、MOS−FETに代えて、バイポーラトランジスタなどの他種のトランジスタが採用されても良い。
300…ストレージシステム